火竜の遷悠   作:通りすがりの熾天龍

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丸々1年も放置してるバカはここだァ!





長らくお待たせして本当に申し訳ございません。


それぞれの戦い

「――――呪力解放」

 

普段は体の奥底に封じている悪魔の力を引き出し、体に文様が浮かぶ。

 

「呪法《ブレイズランス》!」

 

炎の槍を老人に向かって投擲。

 

「おっと、危ないですねぇ」

「まだだ! 《フレアジェット》!」

 

炎を体に纏い突貫。

しかしこれも避けられた。

だが・・・これでいい。

まずは一番危険そうなこいつをここから引き離す。

幸い、老人もこの場から離れるように移動している。

罠かもしれないが、何れにせよ俺の役目は変わらない。

呪法で生み出した炎を脚に纏い、加速する。

しかし、突如足元が崩れた。

俺の呪法で崩壊したのではなく、突然風化したような感じだ。

 

「舐めるなっ!」

「うっ・・・なかなかやりますね」

「今の魔法・・・物体の時間の先送りか。俺達を遺跡の入り口から突き落としたのもその魔法だな」

「いえ、違いますが?」

「え?」

「え?」

 

ほんの僅かな間だが、気まずい沈黙が流れる。

 

「そういえば、貴方のお仲間には体格の良い男の方がいましたよね。その方を含めた貴方方の体重に床が耐えられなかっただけでは?」

「全然罠とかじゃなかったのかよ」

「ふぉっふぉ、当の大穴は私が直しておきましたよ」

「そうかい。そいつはご苦労・・・様ッ!」

「おっと。不意打ちとはやってくれますねぇ」

「ほざけ! てめぇもいつまで正体隠してやがる。俺の鼻は誤魔化せねぇぞ」

「おや、ばれてる様で。そうですねぇ、この島を去るまで、と答えておきましょう、かっ」

 

飛んできた球体を避ける。

横目でその正体を確認すると・・・

 

「水晶玉、か?」

「ご名答。では、そろそろ本腰を入れていきましょうか」

「そうかい。なんにせよ、ぶっ飛ばさせてもらうぜ!」

 

炎の槍と水晶玉がぶつかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「「アイスメイク――――」」

 

グレイとリオンがそれぞれの造形魔法を発動させる。

 

「《槍騎兵(ランス)》!」

「《大鷲(イーグル)》!」

 

氷の槍と鷲がぶつかり、爆ぜる。

 

「おい、リオン。なんで片手なんだよ。ウルの教えはどうした?」

「そんなもの、当の昔に乗り越えたに決まっているだろう」

 

再びぶつかり合う氷。

 

「両手を使っているお前は所詮その程度だ。片手での造形魔法はこんなことだってできる。アイスメイク《白虎(スノータイガー)》! 《白獅子(スノーレオン)》!」

「っ!? 二つ同時にだと!?」

 

それぞれの手で別々の造形魔法を発動させるリオン。

 

「これが実力の差だ。沈め、グレイ」

 

リオンの合図で襲い掛かる氷の虎と獅子。

リオンは勝利を確信していた。

しかし・・・

 

「アイスメイク《騎士鎧(ナイトアーマー)》! アイスメイク《楯斧剣(チャージアックス)》!」

「っ!? 連続の造形でその速度だと!?」

 

グレイも負けじと高速の造形で全身鎧と武器を造り、氷の獣達の攻撃を止めた。

当然ながら、武器も造形した以上それだけでは終わらない。

 

「《エネルギーブレイド》!」

 

楯と剣が合体して斧と化しその先端からグレイの魔力を凝縮放出。

その魔力がそのまま刃となり、氷の獣2頭を切り裂いた。

 

「ふざけるな・・・!」

 

声に怒りを滲ませるリオン。

対してグレイは分離した剣を無言で構える。

 

「未だ両手の造形から脱せていないお前のほうが上などと・・・あってたまるか! アイスメイク《三凍狼(ブリザードケルベロス)》!」

 

氷の三頭犬がグレイに飛び掛かり、吹き飛ばした。

 

「ぐ・・・!? まだだ・・・! アイスメイク《戦神槍(グングニル)》!」

 

武器と鎧を破壊され、それでも新たな武器を造り、三頭犬を破壊する。

 

「ならば・・・これで沈めぇっ! アイスメイク《氷河双頭竜(ブリザードツインドラゴン)》!」

 

片手で発動した二つの造形魔法を融合させ、さらに強大な造形魔法にするリオン。

 

「こいつの鱗はドラゴンと同じ強度を誇り、機動力も高い。動かぬ『静』の造形ではこいつには勝てない。無論、さっきの鎧や武器も無力だ。・・・これで終わりだ、グレイ!」

「――――それはどうかな」

「なんだと・・・!?」

 

グレイが両手を構える。

一見、普通の造形魔法の構え。

しかし、構えは同じでもそこから先はただの《動かぬ形》ではない。

 

「確かに俺の造形は動物のようには動かない。だけど形を固定したまま動かすことはできる。この魔法はそれを突き詰めた、俺だけのオリジナルだ。アイスメイク――――」

 

その造形の大きさは、リオンの竜とほぼ同じ・・・

 

「《機構氷竜(フリーズ・ドラゴマキナ)》!」

 

「GIAAAAAAAAAAAAAA!」

 

氷でできた機械の竜がここに形を成した。

 

「っ!? 馬鹿な、『静』のまま『動』を造り上げただと・・・!?」

「どうしたリオン。勝負はここからだろう?」

「おのれ・・・俺はウルを超えるんだぞ・・・! だというのに弟弟子なんぞに負けるなんて、あっていいわけがないんだ!」

「随分と追い詰められた顔だな。そんなんじゃウルを超えるなんて一生かかってもできねぇぞ」

「っ・・・黙れ! いい加減に沈めグレイ!」

「とっとと止めてやるよ、リオン!」

 

それぞれが造り上げた氷の竜がぶつかり合った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「えい! やぁ!」

「くっそー、ちょこまかと!」

 

ハッピーが高速で飛び回り、獣人改めトビーの攻撃を避けながら体当たりや蹴りを加える。

トビーの魔法は両手に生やした爪だが、高速で動くハッピーに当てることができない。

体重が軽いハッピーは一撃の威力はかなり低い。

しかし、攻撃を何度も当てれば当然ダメージは蓄積されていく。

 

「だったらこいつでどうだ! ぐっ」

「っ!? 体が・・・痺れ・・・」

 

トビーがしたのは簡単なこと。

ハッピーの攻撃に合わせて自分の体表に気化した麻痺毒の膜を張っただけ。

それにより、自分も攻撃を食らうが確実に麻痺毒を当てることができる。

しかし、爪の毒に比べ効力が弱く、すぐにハッピーは動けるようになり、距離をとる。

とはいえ、繰り返し食らえば毒が体内に蓄積され、効果も強くなるだろう。

普通なら、毒が蓄積されることをわざわざ明かすなど愚の骨頂。しかし、

 

「どうする? さっきみたいに体当たり攻撃を繰り返したところで麻痺の効果が蓄積してどんどん強くなるだけだぜ?」

「・・・っ。それじゃあ、このままだと手が出せない・・・!?」

 

この状況においては十分に牽制できる手段となる。

このことは事実ではあるがハッピーには真偽がわからない。

いずれにせよ、ハッタリだと決めつけるのは危険が大きいのだ。

 

「でも、オイラだって妖精の尻尾(フェアリーテイル)で、ナツの相棒なんだ! こんなところで負けてられない!」

 

ハッピーの姿が、水色の髪の少年の姿に変わる。

ただし、耳と尻尾は元の猫のままである。

 

「何!? 変身魔法!? 猫が喋るのも二本足で歩くのも飛ぶのも普通じゃないってのに変身魔法まで使えるのかよ!? ・・・いや、待てよ。そっちの姿の方が本当の姿なんじゃ!?」

「オイラは正真正銘生まれつきの猫! そしてナツの相棒のハッピーだ! 《換装》!」

 

ハッピーが換装で籠手を装備する。

 

「《メガクラゲ》! お前の正体はともかくこれでようやく対等にやれるな! 今度は勝つ!」

「オイラだって負けないぞ! 絶対に止めて見せる!」

 

爪と籠手、互いに近接特化の戦闘手段が、今、幕を開けた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

エルフマンが衝撃波を受け吹き飛ばされる。

正確には衝撃波ではなく斥力であるが。

一見劣勢ではあるが、今回のメンバーで、この金髪の男、リゼリク・アルゴートと最も相性が良いのがエルフマンだ。

しかし、何度近づいても斥力で弾かれ、攻撃を当てることができない。

それでも、気合と根性だけで食い下がる。

 

「ほう、タフネスだけは桁違いの様だな、下民」

「下民ではない! 漢だ!」

 

エルフマンが再び突撃する。

リゼリクはそれを呆れたように見下ろし、斥力で吹き飛ばす。

だが、戦いというものは同じことが延々と繰り返すようなものではない。

 

接取(テイクオーバー)獣王の脚(ビーストレッグ)――《シムルグ》!」

 

脚を巨大な鳥のものに変化させ、地面に深く埋める。

そうして斥力に耐え、再び足を進める。

今はルーシィと戦っているユウカの魔法《波動》と違い、リゼリクの斥力は一瞬しか効果がない。

しかし、連続で放つことはできる。

 

「いい加減に吹き飛ばぬか!」

「断る! 漢として! 獣王の腕(ビーストアーム)《ノフ=ケー》!」

 

それでも、エルフマンは脚だけではなく腕も変化させて地面に突き刺し、進んでいく。

 

「ならばこれでも食らえ! 《二重斥力(デュアルヴァイス)》!」

 

両手を重ね、これまでの数倍以上の斥力を放つリゼリク。

これにはエルフマンも腕を突き刺した地面ごと剥がされて吹き飛ばされる。

だが、これでは終わらない。終わるはずもない。

 

接取(テイクオーバー)獣王の腕(ビーストアーム)――《ゴゴモア》!」

 

猿、獅子、蜘蛛の魔獣の力を組み合わせて作り上げた複合型の接取(テイクオーバー)

左腕に宿したその力で腕から糸を噴射し、リゼリクの腕に巻き付ける。

 

「なんだこの糸は!? 全く切れないだと!?」

 

リゼリクはナイフを取り出して糸に突き立てるが、全く歯が立たない。

更にこの糸は、伸縮自在である。

エルフマンが前方に跳躍すると同時に、糸が急速に縮む。

 

接取(テイクオーバー)獣王の腕(ビーストアーム)《鉄牛》!」

 

機械獣と化した右手で、殴った。

 

「っがぁ!?」

 

同時に、左腕の摂取(テイクオーバー)が解け、糸が消える。

故に、今度はリゼリクが吹き飛ばされた。

 

「ぐ・・・おのれ下民・・・否、下郎が! 《引力(シュヴァルツ)》!」

「ぬぉっ!?」

 

今度は逆に引き寄せられていくエルフマン。

これまで使われていた斥力とは違い、引力の効果は一瞬ではない。

 

「《斥力拳(ナックル・ド・ヴァイス)》!」

「ぐぬぉっ!?」

 

引き寄せられたところを斥力を纏った拳で殴り飛ばす。

再び吹き飛ばされ、地面に叩き付けられた。

 

「おのれ下郎・・・! 王子たる余の顔に傷を付けたな! 不敬極まりない貴様は死刑に処す!」

「お前が王子だろうと関係ない! 俺は漢として! お前を倒す!」

 

この二人の戦いは、ここからが本番となる・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「行きなさい、《木人形(ウッドドール)》!」

 

ゴスロリの女、シェリーが近場の木を人形の如く操り、カナに攻撃を仕掛ける。

 

「《反転(リバース)》」

 

しかし、木の人形の攻撃はカナの魔法により自身へと返る。

直後にカナはよろめいた人形に1枚のカードを投げる。

「喰らいな! 《降雷(ライトニングフォール)》!」

 

木の人形に雷が落ち、焼き焦がす。

火が付き、縦に避けて木は沈黙した。

 

「あんたの魔法はおそらく非物質は操れない。ならこっちは物質を介さない攻撃をすればいい」

「この短時間でそこを理解できるとは、なかなかやりますわね。ですが、まだこの木人形(ウッドドール)は終わってはいませんよ?」

「何!?」

 

二つに裂けた木が燃えながら元の形に戻っていく。

シェリーの手により人形となった大木は炎を纏いながら復活した。

 

「さしずめ、《燃える木人(ウッドマン・フレイム)》といったところでしょうか。さて、貴女の魔法、そのカードは一度使ったものは暫く使えないのでしょう? 使い捨てではないようですが」

「あんたもやるじゃないか。同じ言葉を返すけど、この短時間でそこを理解するなんて」

「ふふ、それが愛ですわ」

「そんな愛があってたまるかい!」

 

会話を交わしながらも戦闘は続く。

殴りかかる燃える木の腕を避けてカナは次のカードを取り出す。

 

「《爆砕(エクスプロード)》」

 

今度は完全に砕き、木の人形はもう動かない。

 

「やりますわね。それなら、これはどうでしょう?」

 

今度は一度に10本の木を人形化させて操る。

一度に複数を操れるシェリーの魔法に、カナは心の中で舌打ちをした。

 

「同時に10体も操れるのかい!? 厄介だねこれは」

「私が同時に操れるのは両手の指の数と同じ10体まで。ですが、1体倒されてもすぐに追加で補充できますわ。諦めれば楽に愛して(死なせて)差し上げますわよ?」

妖精の尻尾(あたしたち)がそれで屈するとでも? 随分と舐められたもんだね」

「別に舐めてはいませんわ。貴女に勝ち目はない。その事実を言ったまでですとも」

「それを舐めてるって言うんだよ!」

 

10体の木人が襲い掛かる。

シェリーは勝利を確信し、笑みを浮かべる。

しかし、それは突如地面が爆ぜて木人の半数が吹き飛んだことによって消えた。

 

「な、なにが起こったんですの!?」

(トラップ)カード《万能地雷グレイモヤ》」

「っ! さっきまでのカードと違う・・・!?」

「このカードの力に《複製(インクリース)》を使って数を増やしたのさ。下手に動くと地雷を踏んでドカン、さ。もちろんあたしは全ての地雷の場所が見えるよ」

「まさかこのような手を隠していたとは・・・なら、これでどうでしょうか!」

 

シェリーが全ての木の人形化を解除し、操られていた木が全て静止する。

その後、シェリーは両手を地面に向けた。

 

「おいでなさい、《岩盤巨人兵(ロックギガント)》!」

 

地面が盛り上がり、地雷が飲まれて爆ぜる。

ここに、岩の巨人が誕生した。

 

「これで地雷は撤去しましたわ。そして――――《形態変化(フォームチェンジ)》」

 

巨人の姿が変わる。

 

「《岩石竜(ロックドラゴ)》」

 

岩でできた龍の姿へと。

 

(ドラゴン)・・・!」

「流石に本来の(ドラゴン)には強度やパワーは及ばないでしょう。ですが、それでもなかなかの強度を誇りますし重量がある分パワーもかなりのものですわよ? 果たして、あなたに倒せますか?」

 

シェリーの挑発に・・・

 

「フフッ」

 

カナは不敵に笑った。

 

「・・・どうやら、自信がおありのようですわね」

「そりゃそうさ。これくらいを倒せなきゃ《妖精の尻尾(フェアリーテイル)》の名折れだからね」

「その自信がいかほどのものか、試させていただきますわ!」

 

シェリーの操る岩の竜が動き出し、カナは新たなカードを手に取る。

カード使いと人形遣いの戦いは、まだ始まったばかりだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「お仕置きですね!」

「出てきてすぐに何を言ってるんだこの星霊は・・・」

「なんか・・・ごめんなさい」

 

開幕謎発言のバルゴに若干引いてるユウカになぜか謝るルーシィの図。

 

「気を取り直して・・・と。戦闘よ、バルゴ!」

「かしこまりました、姫!」

 

バルゴが地中に潜る。

一方のユウカはバルゴの言った言葉に興味を持ったようだ。

 

「姫、か。もしかして君はどこかの国の王女だったりするのかな? リゼリクみたいに」

「そういうわけじゃないわよ。契約時になんやかんやあってその呼び方に決まっただけ」

「そうなのか。じゃあそろそろ俺も動こうかな!」

 

手から衝撃波、《波動》を放ち攻撃するユウカ。

ルーシィは横に飛びのいて避け、攻撃の動作で隙ができたユウカにバルゴが地中から飛び掛かる。

ユウカはとっさに開いた手を地面に向け、《波動》で空中へ逃げた。

攻撃に失敗したバルゴは悔しがることもなく再び地中に潜る。

 

「地中からか、やりずらいな」

 

《波動》を操り、ユウカは離れた場所へ着地する。

しかし、着地した瞬間に再びバルゴが彼の足元の少し後ろから飛び出した。

 

「何!? 早すぎる!」

「これで・・・終わりです!」

 

バルゴがユウカに背後から組み付き、意識を断つべく首を絞める。

 

「ぐっ・・・なら、これで!」

「カハッ!?」

「バルゴ!」

 

ユウカがしたことはたった一つ。

自分の手をバルゴに押し当て、零距離で《波動》をバルゴの体内に叩き込んだのだ。

とっさにバルゴは地中へ退避し、ルーシィの元へ戻る。

 

「っ・・・申し訳ありません、姫。彼を落としきれませんでした」

「気にしないで、バルゴ。あれは仕方ないでしょ? 貴女は戻って休んでて」

「いいえ。確かにかなりのダメージを受けましたがまだ大丈夫です」

「・・・うん、わかった。行くよバルゴ!」

「かしこまりました、姫!」

 

再び地中に潜るバルゴ。

今度はルーシィも自分の唯一の武装である鞭を手に駆け出す。

 

「ケホッ、その手はもう使わせないよ!」

 

対するユウカは咳込みながらも両手を地面に押し当て、《波動》を地面に叩き込む。

再び尋常ではないダメージを受け、バルゴはたまらず地上に飛び出した。

 

「バルゴ!」

「く・・・なかなか厄介ですね。地中はもう使えない、ということですか」

「そうみたいね。バルゴ、もう戻って休んでて。相性も良くないし、貴女はダメージを受けすぎてる」

「っ、そう、させていただきます。申し訳ありません、姫」

「大丈夫よ。貴女はよくやってくれたわ。しばらく休んでて」

「ありがとうございます、姫」

 

バルゴが星霊界へ帰還する。

 

「さて、次はどんな星霊が出てくるのかな・・・?」

 

ユウカはバルゴに与えられたダメージに息を切らしながらも、不敵な笑みを浮かべた。

 

「だったらお望み通り次を見せてあげるわ! 開け!」

 

新たな星霊の召喚とともに第二ラウンドが始まった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

転移を終えたミストガンはゆっくりと目を開く。

突然彼が現れたことにより村人達は騒めく。

 

「ミ、ミストガン殿・・・? 転移、してこられたので? 他の方はどうされましたかな?」

 

村長が戸惑いながらミストガンに尋ねた。

 

「敵が現れた。一人がここを襲撃するために向かってきている」

「な、なんと・・・!」

 

村長の驚愕の声とともに村が一気に騒がしくなる。

 

「静かに!」

 

しかしその騒ぎも、ミストガンの一喝で静まった。

ミストガンは、背中の杖を一本取り出し、地面を突く。

その一点から光の円が広がった。

大きさは、大体半径400メートルほど。

 

「村人全員にこの円の中に入るように指示を。建物の中に入るのは構いませんが、円の中にある建物に入るように。円の外に出てしまえば、守ることは難しいでしょう。急いでいただきたい。もう時間がない!」

「わ、わかりました!」

 

村長が急いで指示を飛ばす。

村人達が慌ただしく動きまわる中、ミストガンは更に数本の杖を取り出し、地面に突き立てる。

しばらく集中して陣を構築、そして、時は来た。

気配を感じたミストガンが目を開けると、遠くに禍々しい悪霊が見えた。

 

「・・・来たか! 村長! 避難の状況は?」

「はい! 全員避難完了しました!」

 

答えたのは村長ではなく村人の男性。

なんと、当の村長は縛られて転がされている。

 

「どういう・・・ことだ・・・」

「いえ、実は村長の息子さんのお墓が円の外側にありまして・・・。それに気づいた村長が発狂してしまい、どうしても墓を守ると・・・」

「そ、そうか・・・。いや、今はそれどころじゃない。ここから先はあまり見ていいものではないから円の中の家に入ることを勧める。屋外で見るのは構わないが円から出ずに、決して私の邪魔はしないように!」

「は、はい!」

 

外にいる村人たちが一部を残して建物に入る。

ミストガンはそれを確認せずに自らの集中を高めた。

悪霊の群れが迫り、光の円まであとわずかのところまで迫った時、ミストガンの目が見開かれた。

 

「《守護方陣・五行神獣結界》!」

 

ちょうど光の円をなぞる形で、結界が起動した。

迫っていた悪霊の群れの先頭にいた数体が、結界に衝突して大きくはじかれた。

この結界は浄化目的の結界ではないが、聖なる結界であるため、副効果として浄化力がある。

故に、結界に衝突した数体の悪霊は浄化され、消滅した。

 

「なんで・・・?」

 

悪霊が消えたことに愕然とするアリス。

一番大きな悪霊の首の上にまたがっている彼女は、結界越しにミストガンを見た。

 

「・・・貴方がやったの? 貴方が、私のお友達を奪ったの?」

 

ミストガンは一時目を瞑り、アリスを見る。

 

「私は、彼らを本来居るべき『家』に戻したに過ぎない」

「嘘つき・・・! 皆は私のお友達だもん・・・! ずっと私と一緒に居るんだもん・・・!」

「どちらにせよ、私はこの村の者達を守るだけだ」

 

冷静さを崩さないミストガンにアリスの機嫌は落ちる一方だ。

 

「貴方は要らない・・・! 今すぐ消えて・・・! どっかに行って・・・! 貴方以外をお友達にするの・・・! ちょっと見た目が変だけど、お友達になれば一緒なんだから・・・!」

 

再び悪霊の大群が襲い掛かる。

しかし、ミストガンの結界には歯が立たず、悪霊たちは浄化される。

力のある悪霊は弾かれて力を削られるだけに過ぎないが、弱いものは消滅する。

悪霊の更なる消滅により、アリスの怒りは大きくなった。

 

「許さない・・・! 許さない許さない許さない許さない! 消えて! 死んで! 今すぐ!」

「ふぅ・・・聞き分けのない子には説教が必要なようだな」

 

こうして、それぞれの戦いがここに始まった。

月が昇るまで、残り――――――――――




『ナツの呪法』

炎の槍を多用する戦闘スタイル。
フレアジェットのモデルはポケモンのアクアジェット。
呪法の技名はカタカナ語表記。
なお、ザルティが呪法そのものに関して触れてこないのは尺の都合。次回を待て。





『グレイ特製チャージアックス(氷)』

ナツの依頼である兵装開発補助の副産物。
グレイの担当は造形魔法による機械構造モデルの研究および作成。
ナツのアイデアという名の前世の知識によって造形のレパートリーは急増中。
狩技の中ではエネルギーブレイドが一番好き。





『ハッピーヒューマンモード』

大体14,5歳くらいを想定。
換装で呼んだ籠手はナツ特製の超頑丈な奴。
エルザの剣すら通さないほど強い。





『ゴゴモア'sアーム』

この世界にゴゴモアなんていない。
もちろん元ネタはモンハンシリーズである。
蜘蛛の糸を束ねてロープみたいにしたらかなり頑丈になるイメージがあるが真偽は知らぬ。
作者が猿、獅子、蜘蛛を選んだのはなんとなくそれっぽいから。
なお、ナイフは護身用。





『リバースカードオープン』

言わずと知れた一番人気のカードゲーム。
ただフェアリーテイルの世界に導入しようとすると選べるカードが限られる。
モンスターカードは召喚だからNG。理由は召喚魔導士が要らない子になっちゃう。
魔法、罠だって似たようなもん。
カードを手持ち全てから選んで使うのにサーチやドローは無意味。
それ以外のカードだって制限賭けなきゃ無敵になっちゃう。
カードゲームのカードを魔法化するって難しいんじゃよ。





『守護方陣・五行神獣結界』

元ネタは風水。
東は青龍(木)、南は朱雀(火)、西は白虎(金)、北は玄武(水)、中央は麒麟(土)が守護する。
説によっては中央が黄龍だったり全部龍だったりするっぽいけど解説省略。
気になる人はググるなり書物探すなりすれば大体見つかると思う。
Wikiで五行思想のページを見れば大体わかる、はず。










すまない、遅くなって本当にすまない。

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