天翔ける龍の伝記   作:瀧龍騎

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夏休みなのに、仕事が忙しくて3週ぶりの投稿になりました。遅れて申し訳ありません。


三章 天龍と良晴
第七十八話 九州での血戦


天竜が会津や常陸にて死闘を繰り広げていた頃の事。

豊臣良晴秀吉によって行われた九州征伐。良晴軍10万に加え、天竜軍10万が九州に送り込まれる大戦争となっていた。しかし、大将豊臣天竜秀長は東方にて諸事情の対処にあたっていた為実質、良晴が20万の大軍の指揮をとっていたいたのである。

しかし、その全員が良晴の命令通りに動いたわけではない。半数以上は天竜に忠誠を誓う天竜側の武将達。天竜と半分敵対しているような良晴の命令を聞くわけがない。彼らの指揮は、天竜の代理でもあった治部少輔石田三成が務めた。

しかしながら三成もまた、多くの者から『天竜の右腕を自称する気に食わない奴』と反感を買い、10万の指揮に大変苦労していた。

皆が皆、天竜の帰還を願っていた。

それは良晴も同じだった。彼の力を借りるのは気に食わない事ではあるが、この大軍の指揮を完璧にとれたのは天竜ぐらいであろう。反天竜派の多い良晴軍や織田軍の人間とて、この状況で天竜に反発する程馬鹿ではない。天竜の命令通りにするのが、今最もすべき事であるのなら、仕方なく従うといった所。必要なのは忠誠心ではない。どのような状況であろうとも大将としての行動が取れ、部下の思想にかかわらず、それを従えられるカリスマ性。良晴には圧倒的にそれが欠けていた。忠誠心や絆だけではどうやったって破れない壁がある。大事なのは器なのだ。

とはいえ、それでも豊臣軍の優勢には変わりなかった。始めは九州全体を統治していた島津軍5万は各地で大敗し、残るは薩摩を残すだけとなっていた。

それには4人の力が大きく出た。

日向方面を担当した石田三成、大谷吉継。

肥後・筑前を担当した竹中半兵衛、黒田官兵衛。

『関白の両兵衛』『太閤の両少輔』と対比される4人。本来、敵対する立場にある彼女達も今回ばかりは協力しあい、総大将である良晴をサポートした。三成らも天竜の命令とあらばと、一時的に良晴を上司として扱ったりもしたり.....

良晴もまた、摂津より本猫寺の顕如を連れてきて、九州の浄土真宗を味方につけるなどの働きを見せた。

そのような勢いにより、日向高城や根白坂にて大勝。島津軍の勢力を著しく削っていった。あとは島津軍大将、島津義久の決断次第である。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

4月21日、天竜と朧が同化してから1ヶ月後。

九州攻めは最終局面にあった。

だがあと一息というにもかかわらず、良晴軍はそれに踏み込めずにいた。元は島津方であった龍造寺政家や有馬晴信などの有力武将を仲間にして、九州を濁流の如く飲み込んでいった豊臣軍も最後の難関、薩摩における島津一族の必死の抵抗に苦しめられていたのだ。

 

 

「.....................ふぅ」

 

 

本陣にて冷や汗をかきながら溜息をつく良晴。

 

 

「どうしたんだい良晴?」

 

「どうしたも何もあるかよ官兵衛。

ここまで来て何で落ちないんだ」

 

「しょうがないとも言えるかな。相手は鬼と呼ばれた島津義弘。大将の島津義久だけならまだしも、あれは戦略家にして戦術家。戦力だけで倒せる相手じゃあないよ」

 

「理解してるさ。そこを戦略家たるお前に何とかしてもらいたいんだよ」

 

「むぅ。戦略だけなら鬼島津とも互角。いや、シメオンの方がやや勝る。いや、シメオンが圧倒的に勝るけれど.....」

 

「そんな所で張り合わんでいい」

 

「鬼島津はそれだけでなくとも強いんだよ。彼の兵は猛者が多いし、彼自身も破格級に強いんだ。戦略のみで倒すには少々骨が折れる」

 

「...........いや、ここは桶狭間方式でいけるんじゃないか?」

 

「!?..........なるほど、先に島津義久を屈服させるのか。さしもの鬼島津とて、姉が降伏したとなれば、武装解除せざるを得ない。仮にしなかったとしても、島津義久には無理にでも説得してもらう。

対島津義久の戦略なら容易に立てられるよ」

 

「頼んだよ官兵衛。半兵衛は?」

 

「今は治部少輔の所に状況報告に行ってるよ」

 

「ふぅん。三成ちゃんにも今回ばかりは世話になってるしなぁ」

 

「..........」

 

「どうした官兵衛?」

 

「べっつに〜.....」

 

「どうしたよ官兵衛。ヤキモチかい?」

 

「だっ、誰が!!」

 

「むふふ〜♪相変わらず可愛いなぁ官兵衛は」

 

「ちょっ、抱きつくなぁ!!

良晴、最近酷いぞ!

どんどん豊臣秀長に似てきていいる!!」

 

「そうかぁ?」

 

「そうだよ!女癖の悪さなんてそっくりだ!」

 

「侵害だ。俺はあいつとは違うんだ!」

 

「何処から湧いてくるんだいその自信は?」

 

 

そんな馬鹿みたいな会話をしている最中の事、その情報は入った。

 

 

「報告します!敵軍より奇襲!

この本隊が襲われておりまする!!」

 

 

使い番の報告が入る。

 

 

「何っ!?」

 

「敵は誰だい?」

 

「はっ!恐らくは島津義久が弟、島津家久かと思われまする!」

 

「島津家久だって!?」

 

「シム。島津兄弟の四男坊だね。奴は島津義弘と違って頭は悪いけれど、彼と同じく一騎当千の化物。厄介な相手だね」

 

「くそっ!.....こんな土壇場になって!」

 

「島津家久に対抗しうるこちらの武将がいるとしたら、山中鹿之介か柴田勝家か。どちらも島津義弘の方に回ってしまっているから、呼び寄せている時間はない。むぅ.....」

 

「こうなったら、また俺が変身して.....」

 

「それは感心しないな。君は豊後での戦い以降も何度か人狼になっているようだけども、その度に自我をなくしている。保っていられたのは臼杵城から島津を追い出した時ぐらいだ。あれは島津を殺したくないっていう君の強い意志があったからこそ出来た事なんだろうけど、それ以外はてんで駄目。生半可な気持ちで人狼になれば、死ぬのは味方の方だよ」

 

「ならどうすればいい!!?」

 

「シム。こういう事もあろうかと、既に伏兵を忍ばせたよ。シメオンに戦う力はなくとも、考える力はある。戦況を変えるのはいつだって、ここの強い者さ」

 

 

そう言って、己の頭を指す。

 

 

「官兵衛.....」

 

「報告します!伏兵部隊壊滅!」

 

「えぇぇ!!?」

 

 

官兵衛が間の抜けた声を上げる。

 

 

「しっ.....ししし.....島津家久めぇ!!

戦略が戦術に負けてたまるかぁ!!!」

 

 

たった今格好つけた事もあり、彼女の堪忍袋の尾が切れた。

 

 

「落ち着け官兵衛!」

 

「本隊を魚鱗の構えにて敵を迎え撃つ!

長宗我部隊に援軍命令を出せ!

部隊を2つに分けた上でこの本隊と挟み撃ちにするんだ!

三方向から敵軍を追い詰めよ!

そして石田隊に連絡を取り、半兵衛を連れ戻せ!」

 

「はっ!」

 

「おふ.....」

 

 

キレてても正確な命令を出す官兵衛に呆気を取られる。

 

 

「報告します!」

 

「今度は何だい!!!」

 

「ひぃ!?」

 

「いいから落ち着け官兵衛。

俺が聞くよ。何があったんだ!?」

 

「はっ!所属不明の部隊が敵軍の奇襲を食い止めております!」

 

「「!?」」

 

「更に薩摩より南方の海岸より、正体不明の軍が現れ、島津軍と交戦中。その数1万!!」

 

「正体不明の軍だって!?

一体何処の輩なんだい?」

 

「..........」

 

「良晴?」

 

 

良晴はブルブルと震えていた。

 

 

「何度も.....何度も.....俺はこの感じを味わった」

 

「?」

 

「この全てをもぎ取られるような感覚.....」

 

「良晴.....もしかして.....」

 

「あぁ、間違いない。この嫌味な雰囲気.....」

 

「..........まさか!?」

 

「あいつが帰ってきた!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

島津家久軍。

 

 

「げひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃ!!!

殺せ殺せぶち殺せぇぇぇ!!!!

豊臣の虫けら共を駆逐しろぉ!!!」

 

 

この島津家久。文武両道の兄島津義弘とも、礼儀正しい娘島津豊久とも似ない、とてつもなく下品な男だった。

 

 

「や~や~我こそは!黒田官兵衛が家臣!

伊東正右衛門である!

島津家久殿とお見受けする!

いざ尋常に勝ぶっ.....ぐげぇっ!!?」

 

 

名乗り切る前に槍で喉を突かれ、

そのまま首を飛ばされる正右衛門。

 

 

「げひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃ!!!」

 

「「「...........」」」

 

 

その卑劣さは敵からも味方からも恐れられていた。

 

 

「げひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃ!!!」

 

「下品な高笑いはやめにしなさいのです」

 

「ひゃひゃひゃ..........んん?」

 

「微妙にあの方と被っているのが余計に癇に障りますなのです。高笑いはあの方の専売特許なのですから、貴様のようなクズがそれをするのは万死に値するなのです」

 

「誰だおめぇ?」

 

 

その者は声や体格から姫武将である事が分かったが、顔が隠れる形の兜を被っている為、顔が分からない。巨馬に跨がってはいるが、身長はかなり低いようだ。

 

 

「今から貴様を滅ぼす者です」

 

「はぁ?」

 

「いざ尋常に勝負!!」

 

 

その姫武将は駆ける。その手に槍を携え.....

 

 

「げひゃっ!!姫武将を殺るのは久々だぁ!

手足を斬り裂いて、衣服を引き千切り、

全身を小太刀で傷付けながら、

死ぬまで犯し続けてやるわっ!!」

 

 

そう叫びながらヨダレを垂らし、槍を振り回す家久。

 

 

「下衆め!なのです」

 

 

小さな身体で、巨大な馬と槍を操る彼女。ややヨタヨタしていて、家久程の猛将を相手にするには大分無理があると思われた。その決闘を見守っていた双方の兵は皆、首が飛ぶのは姫武将であると思った。しかし.....

 

 

 

 

「あり?」

 

 

 

 

家久は気付いた。自分は槍を持っていたはずだ。だが、愛用の殺人道具は向こうに転がっている。そして、その槍には自分の右腕も握られている。

 

 

「ひぇええぇあああああああああ!!!!?」

 

 

その事実を認証したと同時に、激痛が家久の右腕の斬り口より生じる。

 

 

「やった!捕れたなのです!」

 

「このガキィ!!!」

 

 

家久は懐から左手で短筒を取り出し、彼女に向ける。

 

 

「くたばれっ!!!」

 

「ツグちゃんお願いなのです」

 

『はいはい』

 

「!!?」

 

 

家久は気付く。馬の頭部に何かが乗っている。

 

 

『ごめんなお馬さん。すぐ降りるからの』

 

「ばっ.....化物!!!?」

 

 

家久の目の前に現れたのは小型の人狼だった。

 

 

『可弱い美少女に失礼だの〜ぬし。

そんな輩はこうじゃ!』

 

「いっ.....!!!?」

 

 

その人狼が軽く家久の左手を叩く。その瞬間、家久の左腕が吹き飛んだ。

 

 

「あああああああああああああぁぁぁぁぁ!!!!!」

 

『うるちゃい、うるちゃい』

 

 

人狼は耳を塞ぎながら、家久を馬上から蹴り落とした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ううううぅぅぅ.........うああっぁぁ......」

 

 

瀕死状態の家久を見下すように二人の少女が見下す。

片方は鎧装備の姫武将。

もう片方は人狼から人間体に戻った少女。

 

 

「だっ..........誰なんだ..........おめぇ.....」

 

 

すると、人狼だった少女はニッコリと笑って。

 

 

「あたしは豊臣石丸秀次。太閤殿下の義妹だよ♪」

 

「太閤の...........妹?」

 

 

更に兜を被っていた姫武将も兜を外し、素顔をあらわにする。

 

 

「我が名は小早川秀秋。小早川隆景公の義妹なのです」

 

「こっ............小早川だと!?

それこそ太閤の妹じゃ.....」

 

 

 

 

 

次の瞬間、秀秋の手によって家久の喉元に槍が突き立てられた。

 

 

 

 

 

「私はあの方の妹ではないのです。私はあの方の.....」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「※何っ!?家久が討たれただと!?」

 

「??」

 

 

※翻訳済み

日本語が喋れない島津家の総大将、義久が叫ぶ。

 

 

「どうされますか姫!!」

 

「※待て!今考えている!!」

 

「??」

 

 

こんな些細な命令まで通じていない。翻訳係でもあった弟の島津義弘は他の城の守護に回っており、誰も彼女の言葉が分からないのだ。

 

 

「報告します!!南方より現れた敵軍の対処にあたっていた桂忠詮殿の軍が壊滅。忠詮殿は降伏したとの事です!!」

 

「※忠詮までもが.....」

 

 

義久は力が抜けたようにその場に腰を下ろした。

 

 

「※もう...........潮時だな」

 

 

そう言った義久はやや微笑していた。

 

 

「※秀吉殿に伝えておくれ。

『私、島津義久は其方に降伏する。各所で抵抗している義弘、歳久等の者にもすぐにでも武装解除し、降伏するように説得しよう。代わりに、島津一族を含めた全家臣の身の安全をお願いしたい。それがなされるのであれば、この義久の首を取っても構わぬ』とな」

 

「???」

 

「..........」

 

 

義久は黙って紙に今言った事柄を書く。

 

 

「ん!」

 

「えっ.....と.........あっ、はい!かしこまりました!」

 

 

字が下手だったために読解に手間取っていた家臣だったが、やっと理解して部屋を出ていく。

 

 

「ふぅ..........」

 

 

義久は明後日の方向を見ていた。

 

 

「※良晴と結婚したら、まず標準語を教えて貰おう」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

5月8日。島津義久が豊臣家に正式に降伏。

ところが、弟の島津義弘、歳久は末弟である家久を討たれた恨みから抵抗を続けていた。義久が説得したのだが、

"2人は納得せず、降伏はしなかった"。

これは良晴にも予想外だった。

 

 

「くそっ!歴史通りなら、"虎寿丸"の説得で義弘と歳久は納得して降伏するはずだったんだ!何で家久を殺したんだ天竜!!」

 

 

謎の援軍が天竜の軍である事に良晴は直感で気付いていた。だからこそ、天竜の不可解な行動により歴史が変えられ、戦争状態が未だ継続している事に、良晴は理解できなかった。

 

 

「君が言ってる事は理解できないけど、今の状況が芳しくない事は確かだね」

 

「くそっ!どう収集つけるんだよ」

 

「シム」

 

「お前と違って、何も考えずにやったわけではないよ」

 

「そうかよ.....................ん?」

 

「シム!?」

 

 

良晴と官兵衛の間に天竜がいた。

 

 

「なんだ?」

 

「なんだじゃねぇ!!何でいるんだ!?」

 

「何でも何も、お前を迎えに来たのだぞ?」

 

「!?」

 

「島津方とある程度話はつけた。

一時的に停戦協定を結んだよ。

明後日、日向高城にて連中と落ち合う事になっている」

 

「シム。島津義弘や島津歳久がよく応じたね」

 

「なぁに。"従わなければ義久を殺す"と言ったら、すんなり言う事を聞いてくれたよ」

 

「天竜!!手前ぇぇぇ!!!」

 

「よしなよ良晴。それが戦国の習いというものさ」

 

「官兵衛!?」

 

「それよりも豊臣秀長。勝算はあるんだろうね。君の行動が今の状況をより一層悪化させるものに繋がるというのなら..........シメオンとて容赦はしないよ?」

 

「おやおや、怖い怖い。

天下二の軍師の片棒とは争いたくないものだな」

 

 

睨みつける官兵衛に対し、天竜は邪悪な笑みにてそれを返した。

 

 

「........................?」

 

 

良晴がとある事に気付いた。

元より中性的な顔たちの天竜であったが、今の天竜は本当の女性にしか見えない。

長髪だし、服装もどちらとも言えない。

むしろ一般的女性よりもずっと.....

 

 

「どうした良晴?人の顔をジロジロと?」

 

「あっ、いや」

 

「惚れたのかい?良晴のエッチ」

 

「ふざけんな!殺すぞ!!」

 

「怖い怖い」

 

 

今ふと浮かんでしまった感情を必死に忘れ去ろうとする良晴であった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

5月10日、日向高城。

この日この場所にて、九州征伐最後の会談が行われる。

参加人物は、

豊臣方より天竜、良晴、大友宗麟。

島津方より義弘、歳久、義久が参加。

だが義久はすでに降伏済みな為、実質の相手は、2人だけという事になる。

 

良晴と義久が協力し、現状説明と、降伏後の島津家の安否についてを説明。決して悪い方向に持っていく事はないと、必死に伝えた。だが.....

 

 

「貴様のその顔が納得いかぬ!!」

 

 

島津兄弟の三男坊、島津歳久が言う。

 

 

「姉上と秀吉殿の言葉はまだ理解できるものがある。

だがしかし!貴様はなんじゃ豊臣秀長!!

先程より何も口にせず、ただただこちらを眺めてクスクスと笑うばかり!見下しているつもりなら、こちらにも考えがあるぞ!!」

 

「ふっくくくくく..........いやいや、見下しているわけではない。ただ.....ただな?(笑)

これから起きる事を先に予想していたら、笑うのを我慢できなくなってしまったのだよ!(笑)

ぷっくくくくくくくくく.....!!!」

 

「これから起こる事!?」

 

 

黙っていた義弘が何かを察知した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「おっ、お料理をお持ちいたしました」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そう言い、天竜の料理人『黄黄』が他の料理人を引き連れて入室する。彼女は普段では見られないような、怯えきった表情をしていた。料理が淡々と皆々の前に並べられていく。

 

 

「「「「!!!?」」」」

 

「...........」

 

 

状況を理解できない4人と、知っているために、黙って目を瞑っている宗麟。

その料理とは.....

 

 

「なぁっ!!!?」

 

 

良晴はつい叫んでしまった。

一見、綺麗に盛りつけられた料理。

だが、それはすぐに分かった。普通の料理との違いが.....

 

 

「こいつは.....」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

"人肉料理だ"

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「こいつは"とある人物"の心臓を圧縮機にてすり潰して作った葡萄酒だぁ!」

 

 

そう言って、天竜は血の入ったグラスを一口飲んでグラスを壁に投げつけ、割る。

 

 

「それからこれは奴の長舌のサラダ!

まっずいから食う気もせん!

こっちは奴の腹部の皮で包んだスズキのパイ!

真っ黒な脂肪だらけで身体に悪い!」

 

 

これらは口にもせず、皿ごと投げ捨てて料理をあたりに撒き散らす。

他の者はそれを見ている事しかできなかった。

 

 

「そしてこいつは.....」

 

 

天竜が最後に手にした皿は、運ばれたものの中でも特に大きく、『ドームカバー』と呼ばれる丸皿用の蓋が被せられ、一際印象があった。

 

 

「ではご開帳!!♪」

 

 

天竜がフタを外した。

 

 

「うわあぁぁぁ!!!!!!!?」

 

 

良晴は恐怖のあまり叫んだ。

 

 

「※そん.............な..............」

 

 

義久は力が抜けたように腰を落とした。

 

 

「そんな.....馬鹿な............」

 

 

義弘もそれには面を食らったようだ。

 

 

「うっ、嘘だ!嘘だ!!嘘だぁぁぁ!!!」

 

 

歳久は発狂する。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

皿の上にあったのは、島津家久の生首だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「島津家久の頭とぉ〜!

リンゴのオーブン焼きでございま〜す!♪」

 

 

天竜は笑顔で紹介する。

 

 

「殺す!!この男は絶対に殺す!!!」

 

 

歳久が涙を流しながら刀を抜く。

 

 

「食事中は〜お静かに!!」

 

 

すると、歳久の目前に移動した天竜は彼の顎を掴み、無理矢理口を開けさせる。

 

 

「あがっ、あががががぁぁ.....!!!?」

 

 

そして、彼の口に生首を無理矢理捩じ込む。

 

 

「ほぅら島津歳久ぁ!愛弟が呼んでるよぉ?

『お兄ちゃんお兄ちゃん!僕を食べてぇ!』ってねぇ!

くひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃ!!!!!!!!!!」

 

「やめろ天竜!!!!!!」

 

 

良晴が殴りかかってくる。

それを天竜はいとも容易く後ろ蹴りにて飛ばす。

 

 

「ぐはあああっぁぁ!!!!?」

 

 

壁に激突する良晴。

 

 

「馬鹿な..........人狼の........俺が......避けきれなかった!?」

 

「※良晴!!」

 

 

義久が駆け寄る。

 

 

「やめるのじゃ豊臣秀長!!」

 

「義弘ぉぉぉ♪頭のいいお前だったら分かるよなぁ?

これからお前がすべき事をよぉ!!!」

 

「!?....................そうか...........そういう

意味か」

 

 

咄嗟に理解した彼は突然その場に跪き、そのまま土下座の体制になった。

 

 

「私、島津義弘は太閤殿下様に降伏致しまする」

 

「「「なっ!!!?」」」

 

 

彼の突然の行動に、誰も理解できない。

 

 

「何故じゃ兄上!!!?

ここまで酷い挑発をされて、引き下がるのか!!?」

 

「違う!!これは挑発じゃない!!」

 

「!?」

 

「これは.........."警告"なのだ」

 

 

 

 

『家久と同じ目に遭いたくなければ、さっさと降伏しろ。でなければ、島津家はおろか、島津に加担した者は問答無用に皆殺しにしてやるぞ』そう伝えているのだ。

 

 

 

 

「わしは獅子の.....いや、魔獣の眠りを覚まさせてしまったようじゃ。最早、わしらの都合だけで争いを起こせば、それこそ罪。これ以上無駄な血を流す事は許されぬ。

わしらの負けだよ」

 

「....................................嫌だね!!!」

 

 

歳久が再び刀を持って天竜に突撃した。

 

 

「待て!歳久!!」

 

「うおおおおおぉぉぁぁぁぁぁ!!!!!」

 

「ベルフェゴール」

 

「はい」

 

 

次の瞬間宗麟の背中から鞭のように翼が生え、歳久の両腕を斬り裂いた。

 

 

「うxjぅjckぇっfxj!!!!!?」

 

 

声にならない悲鳴があがる。

 

 

「感謝しろ。命は助けてやる。

よく猛省するこった。行くぞベル」

 

「はい」

 

「歳久ぁ!!」

 

 

義弘が歳久が弟を抱き寄せる。そして、自身の不甲斐なさを悔やんだ。

 

 

「待て!!!」

 

 

呼び止めたのは良晴。

 

 

「何が目的だ!何のためにこんな事をした!!」

 

「................良晴よ。元親の弟を知っているか?」

 

「!?....................あぁ、信親か?」

 

「今回が初陣だったらしい。だが運悪く討死してしまった。彼を討ち取ったのは島津家久だ」

 

「あぁ、俺も知っている。だが、それが?」

 

「それが理由さ」

 

「はぁ!?」

 

「信親が死に、元親はショックで狂ってしまった。無理もあるまい。愛すべきたった一人残った肉親が死んでしまったのだから。

だから敵討ちだ。これでも彼女の夫でね」

 

「だからって!これだけの人を傷付けていい理由にはならない!!家久だけならともかく、義久達まで.....」

 

「自分の女の悔いを晴らす事が!!

理由になっちゃいけないのかよ!!!?」

 

「!?」

 

 

天竜の叫びに、良晴は言葉が詰まる。

 

 

「だから味合わせてやったのさ。大事な家族を奪われる苦しみを百倍返しにしてなぁ!!」

 

「..........天竜」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「な〜んてね♪」

 

「!?」

 

「ぶっちゃけ、そんなの理由にならんのは当たり前だよねぇ?いかなる理由があろうとも、殺しは殺し。大義名分は存在しない。

だからこの行動は〜元親の為じゃなくてぇ!

自分が楽しむ為ってのが本音かなぁ?」

 

「っ.....!?」

 

 

良晴もまた腰が抜け、その場に座り込む。

 

 

「あんた誰だよ?」

 

 

そう言った。

 

 

「う〜ん。"天竜"とは少し違うんだよねぇ。

天竜と朧の融合体。

..............だから、『天龍』とでも名乗ろうか?」

 

「天.....龍.....?」

 

 

その時だ。

 

 

「ぷっ.....あっはっはっはっはっはっはっは.....

やっぱあんたはあんただ。

いつも冷静に冷酷に残酷に.....

人の二歩三歩手前を歩き、

俺達足の遅い奴らを置いていく。

これで九州は落とされた。

そのうち琉球や朝鮮も同じように落とすのか」

 

 

力無い笑いをあげる良晴。どれだけ変わろうと、どれだけ力を手に入れても勝てない、圧倒的存在を前に疲労したのだ。

 

 

「..........良晴」

 

 

天龍は口を開く。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「"琉球ならもう落としたぞ"?」

 

 

 

 

 

 




途中、うみねこネタ入ってました。
これにて九州戦終了!
だが残る謎、小早川秀秋、豊臣秀次。
琉球王国が落ちた理由とは!?
次回予告
天下統一
〜戦国時代終結の時〜

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