天翔ける龍の伝記   作:瀧龍騎

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最近キリスト教を悪く書き過ぎて、
クリスチャンの読者や何かの組織から
批判を受けないか心配です。


第七十三話 レオン

蒲生氏郷。渾名は鶴千代。

蒲生賢秀の嫡女として近江日野に産まれた。

元は六角家の人間。

六角家が織田に倒された際に、

まとめて織田家に吸収された。

やがて元服して、氏郷を名乗った。

そしてキリスト教の洗礼を受け、

レオンを名乗った。

ただ問題があったとすれば、

親日派キリスト教系であった官兵衛と違い、

反日派キリスト教系の洗礼を受けた事だろう。

始めはそんな宣教師に洗脳されたように、

憧れを抱いていたのだが、

次第にその闇に気付いていった。

 

そして、それを自ら変えたいという気持ちが生まれていった。

 

ガスパール・カブラル、

ガスパール・コエリオ。

彼女が世話になったこの2人。

どちらも反日派の宣教師。

かなりの人種差別主義者だ。

白人、特にキリスト教徒こそが唯一の人間と考え、それ以外の黒人や黄人などは人間とは思わず、異端者は駆除対象と捉えている。

だから、私も人間とは見られていない事にも、早い段階で気づいた。

ただキリスト教を信仰しているから、

野良犬から番犬と昇級されていたのだと思う。

番犬となった私は、

野良の王、ドラキュラとぶつけられた。

 

ドラキュラは記憶を失っているのか、

当時程の強大な力は出せないようだった。

だが、強い事に変わりはしない。

まともにぶつかれば、

塵のように消されていただろう。

だから私はドラキュラの内面を攻めた。

彼の息子を人質に、彼の勢力を奪った。

心が痛かったが、仕方なかった。

私は国を背負って戦っていたのだ。

失敗すればこの国は滅びる。

常に怯えながら戦っていた。

元々髪の色素が薄いお陰で目立たないが、

私の髪の四割は白髪だったりする。

だが、失敗した。

姉上を巻き込んでの戦争は、

奴が太閤となったことで終結した。

もう彼に勝つ事は不可能だった。

私は左手を食われた。

姉上は私に絶望し、見放した。

私は全てを失った。

痩せ細った番犬は、

役に立たなければもう用済み。

死んで土に還るか、

肉食獣の餌になるかだ。

 

 

通常狩りにおいて、

狩人は仕留めた獲物を犬に取りに行かせる。

だが、今回の場合の彼らは動かない。

私達に狩りを丸投げするのだ。

例えるならば「鷹狩り」。

あれは狩人の腕次第と言われているが、

実際に狩りをするのは鷹だ。

狩りの成績は鷹の実力によるだろう。

基本は馬と同じだ。

騎手が馬に乗るのではない。

馬が騎手を乗せてやるのだ。

馬を信用しない騎手に、

良い騎手など1人もいない。

鷹だって、いかに鷹を信用しているか、

いかに鷹に信用されているかで決まる。

私は鷹だ。

番犬と比べれば聞こえがいいが、

本質は同じ。

所詮は愛玩動物。

でも愛されてなんかいない。

私はただの玩具なのだ。

 

 

 

 

 

 

だから私は、飼い主の手を噛んだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

コエリオが引き金を引いた瞬間、

パァンッという銃声音と重なって、

バシュッ!という肉が抉れる音がした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ぎゃあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「えっ!?」

 

 

氏郷は驚愕した。

確かにコエリオは拳銃を発砲した。

1秒もしない内に氏郷の頭部はポップコーンのように弾ける筈だった。だが.....

 

 

拳銃を持っていたコエリオの右腕が丸ごと消滅していたのだ。まるで食いちぎられたかのように。

 

 

『ヒギャアァァ!!』

 

 

何かの鳴き声が聞こえた。この世にいる生物の鳴き声とはとても思えない異質な化け物の鳴き声。

恐らくコエリオの右腕を食った化け物だ。

近くにいるのか?

なら早く私も逃げなければならない。

まばたきをした一瞬でコエリオの右腕を食ったような化け物だ。私なんてひとたまりもない。

周囲を見回す。

まずが化け物の位置を探らなければいけない。

逃げようにも、どちらの方向へ逃げなければいけないか判断の必要があるからだ。

よもや化け物の方向へ逃げるなど、

阿呆のする事だ。

 

 

『ヒギャアァ!!』

 

「えっ?」

 

 

そんな心配をする必要はなかったかもしれない。逃げるという行為そのものが無駄だったのだ。逃げる必要そのものがなかったのだ。

化け物は氏郷の左側にいた。

失われた左手の方だ。

まるで失われた左手に重なるように.....

 

 

「お前は.....何だ?」

 

『ヒギャア?』

 

 

つい質問してしまった。

おかしな状況だったのだろう。

自分を襲ってくるかもしれない化け物に対して、質問するなど。

 

 

「この化け物めぇぇぇぇ!!!!!」

 

 

コエリオが叫んだ。始めはこの化け物に対して言ったのかと思った。

でも違う。

化け物と示した対象が違う。

私だ。私を左人差し指で指し示していた。

私を化け物扱いしたのだ。

 

失礼な男だ。

私は人間の父母から産まれた、

人間の少女だ。人間として生きてきた。

その私が化け物だと?馬鹿馬鹿しい。

犬や玩具、奴隷と言われた方がマシだ。

.....なんて思う私も可笑しいか。

 

 

『ヒギャアァ!』

 

「お前は誰だ?」

 

 

質問を変えてみた。

こいつには意思がある。

だからこの二人称にしてみた。

 

 

「そいつはお前自身だ」

 

「!?」

 

 

突如彼は現れた。まるで霧のように。

 

 

「そいつはお前のもんだ。

何故ならお前自身だからな」

 

「私の.....もの?」

 

『ヒギャアァ!』

 

 

それは答えた。見方を変えれば可愛くも見えてくるから不思議だ。

 

 

「私の.....左手?」

 

 

この生物を左手と呼称していいか分からないが、私はこいつを左手と呼ぶ資格がある。そうと呼ぶしかないのだ。

この化け物は氏郷の失われた左手から生えていた。食いちぎられた断面から生えていた。

 

 

「これは.....」

 

「吸血寄生獣、クリムゾン」

 

「くりむぞん?」

 

 

そんな差中。

 

 

「どっ.....どどどドラキュラ!!?

レオン貴様ぁ!!

貴様、ドラキュラと手を組んでいたのか!!

悪魔に魂を売ったのか!!」

 

「そっ.....その.....」

 

「ひいいぃぃぃ!!!?

よるな化け物ぉぉぉ!!!」

 

「うっ.....」

 

『ヒギャアァァァ!!!』

 

「ひいいぃぃぃ!!!?」

 

 

クリムゾンは氏郷を貶したコエリオを威嚇する。

 

 

「クリムゾンは氏郷の感情に合わせて、

その性質を大きく変化する。

氏郷を怒らせない方が身の為だ」

 

「とっ.....豊臣秀長!

私に一体何をした!?

私に何を植え付けた!?

一体いつ植え付けたんだ!」

 

「植え付けたのは3年前。

箱館湾での海戦の時にだ」

 

「あの時!?」

 

 

そうだ。氏郷はその際、卑怯な手で天竜を倒そうとした結果、左手を食われる羽目になったのだ。

 

 

「その時に植え付けたんだ。俺の鬼歯をな」

 

「鬼歯!?」

 

「そう鬼歯だ。吸血鬼としての妖力が最も詰まった部分。その内の一本をその左手に植えたんだ。さながら種子のように.....」

 

「種子.....」

 

「謙信や梵天丸のような即席とは違う原理で移植したんだ。たっぷりと時間をかけて熟成させたのだ。

他の誰よりも高い性能を誇る。

これを只々悪魔の手と命名するには申し分ない。

だから、俺をそれをクリムゾンと呼ぶ」

 

「熟成.....?」

 

「気づいてねぇみたいだな。ホレ」

 

 

天竜は鏡を召喚し、氏郷を写してやる。

 

 

「なっ!!?」

 

 

氏郷は紅の瞳をしていた。

 

 

「クリムゾンの種はゆっくりと時間をかけてお前の肉体を改造したんだ。人間の肉体から吸血鬼の肉体へとな。

だが、ただの吸血鬼じゃない。

生まれながらの吸血鬼だ。

 

俺はこの国で何人もの眷属を作った。

内藤昌豊、真田昌幸、大友宗麟を始め、

数多くの人間の人間の部分を殺してきた。

だがお前はその誰とも当てはまらない。

お前は眷属とはまた違う。

正真正銘の真祖の吸血鬼。

俺と同位の高等吸血鬼。

俺と同じくNo Life King。

俺と同じくDay Walker」

 

「私が.....吸血鬼に!?」

 

 

氏郷は訳が分からなくなっていた。

彼女が倒すべき存在に、

彼女自身がなってしまったのだ。

 

 

「おのれドラキュラめっ!

よくも私の奴隷を奪いおったなぁ!!」

 

「何が奴隷だ。氏郷は誰のものでもない。

いや、たった今俺のものとなった!

クリムゾンの発動がその証拠だ!」

 

「何っ!?」

 

「クリムゾンの発動条件は、

氏郷が本気で俺を求める事だ。

つまり.....

今の氏郷は俺に惚れてるってこった!」

 

「..........はぁ!!?」

 

 

今の台詞を理解するのに一瞬遅れてしまった氏郷である。

 

 

「てか俺も惚れてる!」

 

「馬鹿ですか貴方は!!!」

 

「!!?」

 

 

コエリオはこの状況を理解できない。

それ以前に出血多量で意識が朦朧としている。

 

 

「まぁいいや。先に真っ青で死にそうなこいつの始末が先だな。このまま死なれるには、勿体無さ過ぎる」

 

「おのれぇぇぇ!!!」

 

 

床に落ちていた拳銃を左手で拾い、

天竜に向ける。

 

 

「死ねドラキュラァァァ!!!」

 

「ふっ.....」

 

 

天竜は微笑した。

何故なら拳銃を向けた瞬間、

コエリオの左腕までもが消滅したのだ。

 

 

「ぎゃああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!?」

 

「左腕で構えるまでが自然な動きだったな。

もしかして両利きかい?

結構おいしい人材ではあるな。美少女か、最低でも美少年だったなば是非臣下に加えたかったな。

まっ、肉玉じゃ到底無理だがな」

 

「いっ.....今!何をしたっ!!?」

 

「俺じゃないさ。

やったのは氏郷の方だ」

 

「なんだとっ!?」

 

「えっ?」

 

 

氏郷には見覚えがないようだ。

 

 

「やっぱり愛されてるなぁ!!

惚れた男の為に無意識で能力を引き出してくれるとはぁ!俺は嬉しいぞ!」

 

「五月蝿い!!」

 

「まっ、それは置いといて.....」

 

「置くな!捨てろ!!」

 

「クリムゾンの能力だ。

3年もかけて育てさせていたからな。

予想以上に強くし過ぎて俺も怖い。

氏郷はもう二度と敵にしたくないなぁ」

 

「私は今だって敵だ!!」

 

「はへ.....」

 

 

コエリオはさらに出血して青白くばっている。

 

 

「おっと勝手に死ぬなよ?」

 

 

天竜は術をかけてコエリオの両腕の傷を塞いだ。

 

 

「クリムゾンは食しん坊な蟲だ。

だが、こいつはただ食べる訳じゃない。

こいつは敵が攻撃に移る以前の敵を食うんだ」

 

「?」

 

「クリムゾンが攻撃するのは過去の敵。

一瞬だけタイムスリップができる。

さっきのは拳銃を握って発砲してくる以前の右腕を食ったのだ。だからこそ、発砲したという事実が消滅した。

腕を食われては発砲はおろか、

拳銃も握れないからな。

弱点があるとすれば、クリムゾンが発動するのは殺意をもって攻撃してきた相手のみ。まぁ、弱点というべきでもないがな。

クリムゾンは剣であって盾でもある。

爆レアなもんだから俺も欲しいよ」

 

「..........」

 

「それもさて置きだ。

貴様に聞きたい事があるコエリオ」

 

「な.....にぃ!?」

 

「フランシスコ・ザビエルの事だ」

 

「なっ!?」

 

「その様子じゃ知ってるな。

ザビエルがどこで何をしていて、

何をしようとしているのかを」

 

「ぐぐぐ.....」

 

「ゲロってもらおうか。

こっちも事前に対処して、

撃退したいからな」

 

「そんな.....言うわけないであろう!!」

 

「チョメ」

 

「はぐぅあああぁぁぁぁぁ!!!!?」

 

 

天竜は指をコエリオの右目に突き刺す。

そしてそのまま眼球を引き出した。

 

 

「早めにゲロる方がいいぞ?

でないと、貴様の大事なもの全部なくすぞ?」

 

 

天竜は眼球をブチュリと潰した。

 

 

「俺は貴様の腐った血肉など、

一片たりとも口にしたくないよ」

 

「ふぐぐぐ.....」

 

「次は睾丸でも踏み潰すか」

 

「言う!言うから!!

..........その代わりだ。保証してくれ」

 

「何をだ?」

 

「私の命をだ。

私の身の安全を条件に、

ザビエル様の事を言う!」

 

「ほう。散々俺の邪魔をしてきた分際で、

よくもそんな口が聞けたな」

 

「ふぐぐ.....」

 

「まぁよかろう。約束する」

 

「口約束では信用できん!」

 

「えぇ〜」

 

「裏切り魔将軍を信用しろというのが、

難しいのでは?」

 

 

氏郷が言う。

 

 

「仕方ないな」

 

 

天竜は何かの書類を召喚した。

 

 

「!?....................なんだそれは!?」

 

「『セルフギアススクロール』

これがある限り、俺は貴様を殺せない。

これは魂の盟約。

破れば俺は死ぬだろう。

だから、俺は貴様を絶対に殺さない」

 

「なるほど.....」

 

 

天竜の言葉に安堵する。

 

 

「では話してもらおうか」

 

「分かった.....では」

 

「別に言葉にする必要はない」

 

「なっ!?」

 

 

天竜はコエリオの腕の断面に噛み付いた。

 

 

「はぐっ!!?」

 

「記憶を見るだけだから、

盟約には違反されんよ。

安心しろ鬼歯は立てん。

貴様なんぞを眷属にしたくない」

 

「ぐぐぐ.....」

 

「なるほど。理解した」

 

 

天竜はコエリオの腕から口を離すと、

すぐさま喉の奥に手を入れ、掻き回し、

強制的に嘔吐した。

今しがた飲んだ血を吐き出したのだ。

それ程までにコエリオの血が嫌なのだ。

 

 

「なんだか、侮辱されてる気分だ」

 

「俺はスカトロ趣味はないよ」

 

 

そう言いながら、歯磨きを始める天竜。

完全にウンコ扱いだ。

 

 

「まぁ、いいや。

必要なものは全て手に入れた。

貴様にもう用はないよ」

 

「私を..........逃がしてくれるのか!?」

 

「ふふふ.....」

 

「豊臣秀長?」

 

 

氏郷がふと天竜の方を見た。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「そんなわけないだろう。この汚物が!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

邪悪の権化のような表情で言う。

 

 

「なっ!?」

 

「貴様を生かして逃したとなれば、

俺も名折れだ。殺してやるよ」

 

「馬鹿なっ!!?

それではさっきの盟約は.....」

 

「そうだ。その通りだ。

俺には貴様を殺す事が絶対にできない。

....................俺にはな」

 

 

その時、部屋にドタドタと2人組が入室する。

 

 

「貴様を始末するのは俺じゃない。彼らだ」

 

 

2人は黒人奴隷の紳助と喜助だった。

 

 

「レオンを泣かせたな!

絶対に許さない!!」

 

「お前に酷い目に合わされた他の奴隷達の分まで、お前を痛めつけてやる!」

 

 

2人の目は殺気に満ちていた。

 

 

「ひいぃっ!!?」

 

 

コエリオは慌てて逃げ出す。

だが.....

 

 

「はぎゃっ!!!?」

 

 

ガキンッ!!とコエリオの片足に何かが食い込む。その影響によりコエリオはそのまま倒れこんだ。

 

 

「ごみ〜ん。"虎バサミ"置きっぱだったわ」

 

「なっ!?なっ!?なっ!?」

 

 

虎バサミは塗装してあり、

一見分からなくなっていた。

 

 

「それを仕込んだのは盟約の前だ。

だから盟約違反じゃありませ〜ん♬」

 

 

捕らえられたコエリオを見下すように、

紳助と喜助が立つ。

 

 

「ひっ!!ひっ!!ひっ!!..........!?」

 

 

コエリオは気付く。

部屋の入り口にジョバンナがいるのを.....

 

 

「ジョバンナ!!助けろ!!

私は宣教師極東支部の代表であるぞ!!

金は払う!!名誉だってくれてやる!!

だからさっさと助けるんだ!!

この野蛮人共を殺せぇ!!!」

 

「無理です」

 

 

ハッキリと拒否する。

 

 

「その2人が赤の他人なら話は別ですが、

彼らは私の"兄"なので無理です」

 

「なっ!?」

 

「この国ではですね、

血の繋がりはあまり重要ではないらしく、本人達の同意次第で簡単に兄弟や親子になれるらしいんです。

私も誠に不愉快ではあるが、

豊臣秀長のせいでその2人と、

半強制的に義兄妹にされてしまった。

だがなってしまった以上、

私は2人を兄と呼ばなければならない。

破れば騎士道に反する」

 

 

ジョバンナこと、山科勝成は言う。

 

 

「俺もこいつと家族になるのは不愉快だが、

兄として目上に立てるのは気分がいい。

ふん。今度風呂で背中でも流してもらおうか!」

 

「義妹という表現がなんとも.....

何故だか勝成が急に可愛く.....

いや、そんなのありえない!!

好きになんかなってないんだからな!」

 

 

こいつら危ねぇな。色んな意味で.....

 

 

「まぁいいや。紳助、喜助。

なるべく酷い目に合わせてやれ。

武器はあまり使うなよ?

すぐに死なれちゃツマらないからな」

 

「「おう!」」

 

「ひぃぃぃぃぃ!!!?」

 

 

天竜は氏郷を連れて部屋から出て行こうとする。

 

 

「ドラキュラァァァ!!!

このケダモノ!!この化け物め!!」

 

「化け物?.....違うな。俺は悪魔だ」

 

「くっ.....!!

地獄に落ちろクッソタレめぇ!!」

 

「聖職者が下品な事を言う。

地獄上等だ。悪魔の故郷は地獄だからな。

貴様は天国に行けるのか?

良かったな。

なら、死こそが快楽と思える程に

大いに苦しむがいい!

ふっくくくく.....くひゅひゅひゅひゅひゅ.....

くひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃ!!!!!」

 

 

悪魔は邪悪な笑顔で嗤う。

 

 

「誰か!!誰か助けてくれ!!

レオン!?.....助けてくれレオン!!」

 

 

往生際の悪いコエリオは、先程まで侮辱して、殺そうとしていた氏郷にまで助けを求める。

 

 

「助けてくれ!私を助けるんだ!

金だって名誉だってくれてやる!

そうだ!お前が言っていた、

日本の植民地計画だって私がなんとかしてやるさ!

私は約束は守る!

お前をこの国の王にしてやる事もできる!」

 

「王?」

 

「そうだ!王だ!

我がイスパニア王国の力ならば可能だ!」

 

「それは.....日の本を完全に征圧し、

本来の王である天皇陛下を殺し、

征服された状態になった日の本を、

仮初の王位によって治めさせるのではないのですか?

他の諸国のように。

それは植民地と何が違うのですか?」

 

「それは.....」

 

「もううんざりなんです。

罪を罪とも思わない。

悪を悪とも思わない貴方の主張は。

開き直ってる太閤の方がまだマシです!」

 

「おいおい」

 

「レオン!!私が全部悪かった!!

いいから早く助けろぉぉぉ!!!」

 

「どうする氏郷?涙と鼻水とヨダレでグチャグチャになりながら叫んでるぞ?」

 

 

天竜が言う。

 

 

「..........うん」

 

 

氏郷は軽く頷くと、

無言でコエリオの方へ近づく。

 

 

「ああああぁぁ..........

ありがとう!ありがとう!!」

 

 

命乞いが通じたと思ったのか、

コエリオは心から謝礼を言う。

だが.....

 

 

「コエリオ様」

 

「ぶぇ?」

 

「最後はあんなんでしたが、

私は貴方方のお陰でキリスト教に会えました。

貴方自身から得た教訓は何もありませんが、

貴方のお陰で色々と成長できました」

 

 

氏郷は頭を下げて礼をする。

 

 

「れっ.....レオン?」

 

「一応色々とお世話になりましたしね。

今まで"よくもありがとうがざいました"」

 

 

邪悪な表現で言う。

 

 

「レオン!!?」

 

 

氏郷は振り返り、部屋から出て行こうとする。

 

 

「レオォォォォン!!!!

見捨てないでくれぇぇぇ!!!

助けてくれぇぇぇ!!!!」

 

 

そうして部屋の扉がゆっくりと閉じられる。

コエリオが最期に見たのは、

扉の隙間から見えた、

怨念の篭った表情の氏郷と、

邪悪な笑顔の天竜であった。

 

 

「ふんじゃ。始めますかい」

 

「すぐ死ぬなよ?」

 

「私は自室で寝るから、

後は任せたぞ義兄上達よ」

 

 

紳助と喜助は関節をボキボキと鳴らし、

ジョバンナは欠伸をしながら部屋を出ていく。

 

 

「ひぃっ!!ひぃっ!!ひぃっ!!」

 

 

これにてコエリオの腐った人生は幕を閉じる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ぎゃあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

コエリオの悲鳴は1時間程続き、

やがて聞こえなくなったという。

 




本当はもっとコエリオの拷問の様子を描写を書く予定でしたが、途中で面倒臭くなってカットしました。
さてガスパール・コエリオを倒し、
氏郷を手に入れた天竜。
迫り来るザビエルの脅威にどう立ち向かうか!
次回予告
レオパルド
〜神の使徒と悪魔の使徒〜

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