天翔ける龍の伝記   作:瀧龍騎

88 / 124
バイトの面接が忙しくて更新遅れました。

11巻出ましたね。買ったけどまだ未読です。
表紙は隆景とムキムキ良晴ですね(笑)


第七十二話 宣教師との決別

会津若松城天守閣。

ここには蒲生氏郷と豊臣天竜しかいなかった。

 

 

「貴方の.....ものに?」

 

「あぁ、義姉織田信奈より見限られ、

京から遠く離れた会津の地にて、

伊達なんかと争う事しかできない、

惨めで哀れな生活。

いい加減うんざりしてるのではないか?」

 

「私をこんな状態に追い込んだのは貴方だ!

地位も名誉も家族も奪われ、

この左腕まで奪われた!!」

 

 

氏郷はまるで生まれつき生えていないかのような左腕の断面を見せつける。

 

 

「だからさ。俺はお前から多くのものを奪ってしまった。明るい未来もな。

だからその償いをしたい」

 

「うるさい!うるさぁい!!

ドラキュラの言う事など聞けるかぁ!

貴様の二枚舌で一体どれだけ多くの人間が騙されてきたと思っているのだ!!」

 

「人聞きが悪いな。

俺はあくまで選択肢を与えたに過ぎない。

それを選択したのはその者本人だ。

その責任まで取れとは酷い話だ」

 

「おのれ〜.....!!!」

 

 

氏郷は拳銃を取り出した。

 

 

「雑賀製の拳銃か。

そこに拘りは持たないのな」

 

「黙りなさい!

片手で撃つにはこれが丁度いいのだ!」

 

「へぇ〜」

 

「何をヘラヘラしている!?

これは極秘で製作された、

法儀式済み水銀弾頭を装填している!

キリスト教は貴様達吸血鬼を滅ぼす為に、

日々進化し続けているんだ!」

 

「くくく。その技術を提供したのは我々だがな」

 

「うるさい!教会の技術だ!」

 

「どこぞの隣国みたいだな」

 

 

だが、天竜は余裕の表情を見せていた。

 

 

「なぁ、氏郷。

何故未だにバテレン共に媚びを売る?

キリスト教ではないが、サタン教として国で宗教を自由に認めているんだ。

バテレンなどもう必要ないだろう?

ましてや、ガスパール・コエリオなんてウンコをいつまでも匿う必要はないのだぞ?」

 

 

気が合ったな。

 

 

「..........知っていたのだな。

私がコエリオ様を匿っていた事を.....」

 

「俺は何でも知っているからね。

お前がウンコを匿ってる事も、

織部が利休を匿ってる事も、

良晴達がアンダーソンを匿ってる事もな」

 

「..........」

 

 

この男.....

 

 

「全ての情報を知っているからこそ、

今のお前の不遇さも知ってる」

 

「きっ.....貴様に!私の何が分かる!?」

 

「分からないさ。

人間が人間を完全に理解するなんて不可能だ。

まぁ、俺は人間ではないがね。

できるのは共和。そして同情さ。

俺は今のお前の糞のような人生に同情をしてやっているのだ」

 

「くっ.....!!」

 

「だからこそだ。

お前に救いの手を伸ばしてやろうと言うんだ」

 

「ふざけるな!!

私が貴様に何をしたか覚えていないのか!?

私は貴様の産まれたばかりの子供を人質に取り、貴様の全てを奪おうとした!

計画では貴様から何もかもを搾り取り、

最後には子供や家来諸共、

公開処刑にしてやろうと考えていた!

箱館では義弟の豊臣秀吉ごと

殺してしまおうとした!

私と貴様は敵同士だ!

私は貴様が嫌いだ!

今更馴れ合うつもりはない!」

 

「俺だってお前が嫌いだったさ。

いつか食い殺してやろうと思ってた。

だがな.....」

 

 

次の瞬間、天竜が目の前から消えた。

 

 

「なっ!?」

 

 

気づいた時天竜は氏郷の真後ろにいて、

そのまま氏郷を羽交い締めにする。

 

 

「はっ、放せドラキュラァ!!」

 

「や〜だ♡

雄が雌を捕まえてそのまま逃すと思うかい?」

 

「私を.....喰う気か!!?」

 

「ある意味な。俺は今、

お前さんに欲情してしまっている。

お前をとてつもなく犯したい」

 

「なっ!?」

 

「俺は変態なんだよ。

一方的に向けられる好意よりも、

怨念や殺意の方が興奮する。

お前が俺を恨めば恨む程、

お前は俺を喜ばせるのだ」

 

 

天竜は右手を胸元に、

左手を股間に挿し入れる。

 

 

「やめろ.....このケダモノッ!!

殺す!!貴様を殺す!!

銀の杭を心臓に突き立ててやる!!

聖水の風呂で溺死させてやる!!

ニンニクを腹一杯に詰め込んでやる!!

生皮を剥いで日光を直に当ててやる!!

十字架で磔の刑にしてやる!!」

 

「くひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃ!!!!

いいぞ蒲生氏郷!

その殺意だ!いいぞ!

股ぐらがいきり立つ!!」

 

「うぅ.....!!」

 

 

興奮した天竜がなお一層激しく氏郷を弄る。

 

 

「おのれぇ!!」

 

「はむっ」

 

「ひゃんっ!!♡」

 

 

耳を咥えられ、変な声が出た。

 

 

「ん〜?耳が弱いのかぁ〜?」

 

「やんっ..........やめっ!」

 

 

甘噛みをされ、感じてしまう。

 

 

「可愛いよ鶴千代」

 

 

下着の中にまで手を伸ばした。

 

 

「いやんっ♡」

 

「ふんどしじゃなくて、

南蛮製のパンティーか。

いいぞっ!そそるぞっ!」

 

「このっ!!」

 

 

氏郷は無理矢理天竜を振り払った。

そして、再び拳銃を向ける。

 

 

「死ねドラキュラ!!」

 

「くくく」

 

「AMEN!!」

 

 

氏郷が発砲する。

 

 

「がぁっ!!?」

 

 

弾丸は天竜の右目に直撃する。

その勢いで、右顔面が抉り取られた。

 

 

「やった!!」

 

「どころがギッチョン!」

 

「なっ!?」

 

 

右顔面が崩壊しているにもかかわらず、

天竜はまだ平気な様子だった。

 

 

「酷いなぁ。顔がグチャグチャだよ」

 

「くっ!!.....やはり心臓でないと駄目か!」

 

 

氏郷は今度、胸部に拳銃を向ける。

 

 

「死ねぇ!!」

 

 

再び発砲される。

 

 

「残念」

 

 

天竜は瞬時に刀を抜き、弾丸を斬り伏せた。

 

 

「馬鹿なっ!?」

 

「くくくく。

凪に『斬鉄剣』を教えたのは俺だぞ?

おまけにこいつは『天羽々斬剣』

我が母をも斬った神剣だ。

といっても偽物だがな」

 

 

その通り偽物。

本来は両刃の剣であるそれは、

日本刀の形をしていた。

 

 

「俺は陰陽師であり、侍でもある。

剣より刀の方が使いやすいんだよ」

 

「くっ.....」

 

「そうそう!神剣で思い出したよ。

お前が盗んだ草薙剣。返してもらおうか?」

 

「何故それを!?」

 

「あと八咫鏡と八尺瓊勾玉もな。

何に使うつもりかは知らんが、

それは朝廷が管理すべきものだ。

お前如きにやるわけにはいかん」

 

「くっ.....!!」

 

 

氏郷は振り返り、走り出した。

 

 

「アレの事までバレているなんて!

もう遅いというのか!!」

 

 

只々、ある物がある部屋へ走った。

 

 

「くくくく.....」

 

 

天竜は余裕な表情でゆっくりと歩いていく。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「はっはっはっはっは.....!!!」

 

 

急ぎ足にて例の部屋の前に駆け込む。

その部屋の前には巨大な南京錠がかかっていた。氏郷は十字架と一緒に首にかけていた鍵を用いてその南京錠を外した。

 

 

「はぁ.....はぁ.....はぁ.....」

 

 

殺風景な部屋だった。

それを祀る以外には全く活用されてない部屋。

部屋の中央、祭壇に祀られし、

三つの神器。

 

 

「くっ.....!!」

 

 

 

伊勢神宮や熱田神宮。

もしくは村上武吉から神器は回収した。

当初、その目的は決まっていた。

 

 

"相良良晴"を未来へ返す事"

 

 

未来より現れ、この時代の摂理を破壊した男。

彼は無意識だろうが、この時代の流れは確実に変化してしまった。

だが、それ以上に問題の男が現れた。

 

それが"勘解由小路天竜"

 

月読命の子孫を自称し、

この国.....いや世界に混乱をもたらした。

相良良晴と違って自らの意思にて世界改変を実行しようとし、それを認めようとしない十字教と対立した。

 

終いにはだ。

自らがツクヨミの実子であると言い、

ツクヨミ=龍=魔神サタン。

ツクヨミの仔=龍の仔=サタンの仔。

ドラゴンの仔、だからドラキュラ。

ワラキアでヴラド3世と名乗った彼は、

ドラキュラ伯爵として、

100年に渡って戦争を続けた。

 

 

ただしだ。最初からドラキュラが十字教と対立していたかと言うと、そうではない。

 

 

何故なら、ドラキュラは元キリスト教徒。

仲間であったはずなのだ。

 

 

だがそのドラキュラのあまりの強さに、

キリスト教はドラキュラを恐れた。

そして裏切った。

 

 

ドラキュラは大敗北した。

そして処刑された。

 

 

 

だが、死ねなかった。

いや違う。人間として死んで、

悪魔として生まれ変わったのだ。

 

 

魔王として、ワラキア軍を再編成した彼は、

欧州全土を敵に回した。

オスマン帝国を中心とするイスラーム。

ローマ帝国を中心とするカトリック。

イギリスを中心とするプロテスタント。

彼の敵はそこらじゅうにいた。

 

結局、それ以降は均衡が保たれた。

逆に言えば、100年間誰も彼を倒せなかったのだ。

 

 

数年前に特殊能力を持った少年、

ガブリエル・クロウ・アンダーソンが、

ドラキュラと死闘の末に勝利した。

だが、それでも命までは奪えなかった。

 

 

彼は日本に戻って来て、今に至る。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「隠してるかと思えば、

ご大層に飾ってるたぁね」

 

「くっ.....!!」

 

 

天竜が到着する。

 

 

「ふぅ.....ふぅ.....ふぅ.....」

 

 

恐らく機会は一回のみだ。

失敗した瞬間、私は彼に殺される。

 

 

「焦るなよ。俺は"まだ"何もしない」

 

「!!?」

 

 

 

天竜のその言葉に、氏郷は反射的に動いた。

 

 

 

「うわああああああああぁぁぁ!!!」

 

 

草薙剣を手に取り、切先を天竜に向ける。

 

 

「神よ!!我に力を与えたまえ!!」

 

 

その号令と共に、草薙剣が輝きだす。

後ろの八咫鏡と八尺瓊勾玉もだ。

 

 

「ほう。天岩戸を開くつもりか?

時空の道を無理矢理開き、

俺を未来へ強制送還するつもりか?」

 

「違う。貴様は存在するだけで、

この世に破滅をもたらす破壊魔。

未来へ返した所でそれは同じ。

むしろ危険なはずだ。

より発達した科学力を利用して、

世界大戦を引き起こすに違いない!」

 

「安心しろ。

俺がいなくとも世界大戦は起きる。

2回は起きる。

その内の1回で日本は1度滅びかけるがな。

そして3回目もやがて.....」

 

「うるさいっ!!

だから未来には送らない!

過去にだって送らない!」

 

「なるほど。"狭間"か」

 

 

天竜は何でも知っていた。

 

 

「そうだ!

貴様を時空の狭間に送る!

絶対に抜け出せない異次元に閉じ込めてやる」

 

「くくくくくく.....不可能だ。

一方的に送り出すならともかく、

狭間に送るなんて複雑な術.....

一般人のお前にできるはずがない。

"穴"を開ける事はできても、

閉じる技術を持たねば、

お前も吸い込まれるぞ?

時空の穴はブラックホールそのものだ」

 

「構わない!」

 

「何っ!?」

 

「私の人生は既に腐る所まで腐った!

夢も希望も全て失った!

私が消えようとも悲しむ者などいないだろう!

だからこそだ!

私は貴様を道ずれに狭間に飛び込んでやる!

貴様と時空の狭間で永遠に過ごしてやる!」

 

「中々ロマンチックな事を言ってくれる。

俺もお前のような美少女と永遠に暮らすなんて、願ったり叶ったりだ」

 

「ほざけぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!!」

 

 

氏郷は剣を振り下ろした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「.....い..........おい!..........起きろ!!」

 

「うぅ.....」

 

 

頬をペチペチと叩かれる。

 

 

「起きたかいお嬢さん?」

 

「豊臣秀長!!?」

 

 

目を開いていきなり飛び込んできたのは彼の顔だった。相変わらずの美少年で一瞬うっとりとしてしまったが、すぐに我に返り、離れる。

 

.....ていうか、膝枕されていたのか!?

 

 

「失敗..........した!?」

 

「いんや成功してたよ。

俺とお前は確かに時空の狭間に入った」

 

「なら何で!!?」

 

「簡単だよ。1度入って一緒に出てきたんだ」

 

「あり得ない!狭間の中から出てくるなんて!」

 

「そうでもないよ。これを使えばね」

 

 

天竜は自身の右手中指にはめた指輪を示した。

 

 

「それは.....」

 

「こいつの名は『天叢雲指輪』

草薙剣から産まれた子供だな」

 

「なっ!?」

 

「ちょっと神話を話そう。

八岐大蛇伝説の話だ。

俺の愛剣の天羽々斬は八岐大蛇を斬った剣だ。

その際、大蛇の尾の中にあった草薙剣に当たって天羽々斬は刃こぼれしてしまったという。

その欠片を利用して、

賀茂家が独自で製作したのがコレ」

 

「それが何の関係が.....」

 

「本題はこれからだ。

天羽々斬が刃こぼれした際、

草薙剣の持つ妖力が欠片に流れ込んだんだ。

その影響で、

欠片は草薙剣と同等の存在となった。

だから天叢雲指輪。この指輪もまた神器。

神器だからこそ、狭間の中から出てくる事ができたんだ。そして、八岐大蛇であったツクヨミの仔である俺だからこそこの指輪を使いこなせる」

 

「そんな.....」

 

 

氏郷にはそれ以上の手は無かった。

 

 

「殺せ」

 

「は!?何で!?」

 

「ふざけるなっ!!

私は三種の神器まで使ったのだ!

にもかかわらず失敗した!!

これ以上生き恥を晒せるか!!

貴様が殺さぬのなら、自ら果ててやる!」

 

「お前が言う生き恥とは何だ?

それは日本人としてか?

それとも、コエリオの飼い犬としてのか?」

 

「うっ.....」

 

「いい加減目を覚ませ氏郷。

お前の生き様は犬であり続ける事か?

所詮どれだけ努力しようとも、

最期は絞り尽くされて、

ボロ雑巾のように捨てられるだろう。

自分の人生を見つめ直してはどうだ?

お前が犬のままでいたいというのなら、

それで構わんがな」

 

「..........」

 

「よく考える事だ。

これも貸してやるよ」

 

 

天竜は黒聖書を置いていく。

 

 

「またな鶴千代ちゃん」

 

「..........」

 

 

天竜はそのまま出ていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あれっ?」

 

 

天竜が若松城から出てすぐ、

見知った顔を見つける。

 

 

「ドミニク!アンドレ!」

 

「「天竜!?」」

 

 

氏郷に仕えし黒人奴隷だ。

 

 

「久しぶりだな天竜」

 

「なんて懐かしい」

 

「お前らも日本語上手くなったな」

 

「ドミニクと呼ばれたのも久しぶりだ。

我は紳助と言っただろう?」

 

「我は喜助だ」

 

「いや、むしろそっちの名前を忘れちまっててな。カタカナの方が覚えやすいんだ」

 

「可笑しな男だ」

 

 

2人の服装は上品な南蛮服に、

そこそこは上物の武具を身につけていた。

 

 

「意外と裕福な暮らししてんだな。

氏郷に食わしてもらってんのか?」

 

「レオンはいい主君だ。

彼女は人種差別は決してしない。

我らを同じ日本人として扱ってくれる」

 

「日本人は優しい。白人とは大違い。

レオンに買われて感謝している」

 

「そっか」

 

 

意外だな。あの氏郷が.....

 

 

「レオンも気の毒だ。

あのウンコ白人にこき使われて.....

あのままじゃ壊れてしまう」

 

「いつか我らが救出しようと時を探ってるんだ」

 

「ふ〜ん」

 

 

いい家臣を持ったな。

 

 

「レオンも最近どんどん女らしい身体付きになって楽しい。というか段々色気づいてきた」

 

「普段はツンケンしているが、

時よりデレっとするのが堪らない!」

 

「..........」

 

 

変な道に入っているな。

 

 

「あの綺麗な素足で踏まれてみたい!」

 

「あの声で非難罵倒してもらいたいな!」

 

 

M奴隷と化している!?

 

 

「豊臣秀長!」

 

「ん?」

 

 

向こうから、赤髪の白人女性が近付いてくる。

 

 

「ジョバンナか!」

 

「今は勝成だ」

 

 

旧名ジョバンナ・ロルテス。

新名は、山科羅久呂左衛門勝成。

正式に日本人になった白人だ。

今は氏郷の与力である。

 

 

「元気かい?

蒲生家での生活はどうだ?」

 

「飯は美味い」

 

「....................それだけ?」

 

「うむ」

 

「まぁ、いっか」

 

 

そんな時、紳助と喜助が恨みの篭った瞳でジョバンナを睨み付けていた。

 

 

「何の用だ白人。

冷やかしに来たならすぐに帰れ」

 

「お前の態度は気に入らない。

いつも見下されているようだ」

 

「頭2つ分は高い身長で仁王立ちしてるくせに、

そんなデカブツをどうやって見下すのだ?」

 

「やめろお前ら!」

 

 

このままでは乱闘になりそうだ。

後で知ったがこの3人は特に仲が悪く、

いつも大喧嘩しているらしい。

 

 

「白人黒人など関係ない。

お前らはもう同じ日本人だろうが」

 

「「「しかしっ!」」」

 

 

ハモった。

 

 

「言っとくが俺は日本人と白人のハーフだ。

紳助と喜助は俺も軽蔑するか?」

 

「「それは.....」」

 

「それは白人が黒人にしてきた事と同じじゃあないか?」

 

「「..........」」

 

「ジョバンナもだ。お前は人種や肌の色で優劣を決めるような糞のような奴に成り下がったのか?」

 

「そんな事はない」

 

「ならだ.....」

 

「「「?」」」

 

 

悪魔は言う。

 

 

 

「真の敵を見つけるべきだろう?

人種差別を罪とも思わない、

糞のような存在を.....」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「コエリオ様」

 

「あぁ?」

 

 

コエリオの自室にて。

玉座に座る、百貫デブがそこにいた。

 

 

「なんだ飯の時間か?」

 

「いえ.....」

 

「愚か者!私が空腹の時には、

察して料理を用意せよ役立たずが!」

 

「.....申し訳ありません」

 

「じゃあ何だ?」

 

「実はドラキュラと.....」

 

「ドラキュラを倒したのか!?」

 

「いえ.....」

 

「は?」

 

「最後の手段として神器を使いましたが、

失敗に終わりました」

 

「何をやってるんだ貴様ぁぁぁ!!!」

 

 

コエリオはそこらにあった茶碗を氏郷に投げつけた。茶碗は氏郷の額に直撃する。

 

 

「つっ.....!!」

 

 

その茶碗は利休から貰った高価な茶碗であったのだが、

コエリオからすればただのコップに過ぎないのだ。

 

 

「前にも言ったはずだぁ!

ドラキュラとは刺し違える覚悟で挑めと.....

にもかかわらず、

むざむざと生き残りおって!!」

 

「私もそのつもりで挑みました!しかし.....」

 

「言い訳をするなぁっ!!」

 

 

今度は皿を投げてくる。

皿はフリスビーのように飛んで、

壁に当たって割れた。

ってか!

あれは姉上から頂いた有田焼の皿じゃないか!

 

 

「ぐぐぐぐぐ.....!!」

 

「全く.....これだからジャップは」

 

「ぐぐぐ..........のくせに.....」

 

「はぁ?」

 

「全部人任せのくせにっ!!」

 

「!?」

 

 

氏郷は爆発した。我慢の限界だった。

全てをぶっちゃけた。

 

 

「レオン!?」

 

「ドラキュラ討伐だけじゃないです!

普段の生活においても、

やれ面倒臭いやれ面倒臭いと言って、

全部私に任せるじゃないですか!

私は貴方の召使いじゃないんです!!」

 

「貴様はクリスチャンだ。

この私から教えを被ったのだぞ?

それくらい当たり前ではないか」

 

 

コエリオは悪びれる様子もない。

 

 

「第一、こんなカビ臭い城なんぞに住まわせ、貧乏臭い飯を食わせ、臭い生活ばかりではないか。

これのどこが世話だ?

この国は本当に未発達だ。

文化どこまでも貧乏臭いし、

国民も皆貧乏臭い。臭い臭い」

 

「ぐぐぐぐぐ.....」

 

「分かったらもう一度ドラキュラに挑んでこい。そしてもう帰ってこなくていい。奴を道ズレにするんだ。

奴は地獄に落ちるが、

殉教する貴様は天国に行けるだろう。

なんとしてでもガブリエルより先に、

ドラキュラを倒さねばならん」

 

 

クロウとコエリオは対立している。

ただ使命を全うしたいクロウと、

手柄を独り占めにしたいコエリオで、

馬が合わなかったのだ。

 

 

「一つだけ.....一つだけお聞きしても?」

 

「なんだ。まだあるのか」

 

「約束は守って下さいますよね?」

 

「約束?」

 

「ドラキュラ討伐を了承した時にした約束です!

私がドラキュラを倒せば、

"日の本の植民地化計画を見直してくれるって!"」

 

 

これが氏郷の願望であった。

ずっとドラキュラと対立していたのは、

時には卑怯な手でも使ってでも、

彼に勝ちに行こうとしていたのは、

全てこの国の為だったのだ。

氏郷も宣教師の目的は理解していた。

 

だから、天竜のように外から破壊しようとするわけではなく、内からそれを変えようとしていたのだ。

その為に、命まで投げ打って.....

 

 

 

 

 

 

 

 

「そんな約束したか?」

 

 

 

 

 

 

 

返ってきた答えに、氏郷は絶望した。

 

 

「あ〜、頭の固そうな貴様を説得する為に、貴様からの要望を適当に了承してた時期があったっけなぁ」

 

「そっ.....そんな!!

じゃあ日の本の植民地化計画は!?」

 

「勿論実行する。

これは俺の意思ではなく、

イスパニアの意思。

フェリペ2世様の意思である。

これは決定済みの計画だ。

貴様のわがまま一つで覆るわけなかろう」

 

「そんなっ!!」

 

「言っておくがこれはビジネスだ。

この極東を得る事はイスパニアの最大の利益となる。今更こんな美味い話を手放すわけなかろう」

 

「そんな.....」

 

 

じゃあ私は何の為にずっと奮闘していたのだ?

姉上からは嫌われて、

左手まで食われたというのに、

地位も名誉も失ってまで、

ずっと戦い続けていたのに!

 

全て無駄だった。

希望は潰えてしまった。

私の存在価値もなくなった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「..........てやる」

 

「はぁ?」

 

「キリシタンなんて辞めてやる!!」

 

「!?」

 

 

氏郷は首にかけていた十字架を引き千切り、

床に叩きつけた。

 

 

「キリスト教が私から幸せを奪うなら!

キリスト教が私に絶望しか見せないのなら!

私はそんなもの、もういらない!

今まで散々貴方の犬に成り下がっていた!

全ては愛すべき故国の為!

貴方達の腐った野望の為なんかじゃない!

日の本を本気で救いたかったから、

私は人生を売ったんだ!!」

 

 

氏郷は涙を流しながら訴える。

 

 

「私は自由になりたい!

もう貴方の犬になりたくはない!

地位や名誉がなくたっていい。

裕福な富が欲しいわけでもない!

私は生きたい!

人間として幸せに生きたい!

心から幸せと思える生き方をしたい!

 

"私は人間になりたい"!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

パァンッ!!

と一発の銃声が鳴り響いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あぐぅあああああ!!!!」

 

「全く.....」

 

 

左肩に大きな穴を開けた氏郷が叫ぶ。

 

 

「何が人間になりたいだ愚か者め。

キリスト教を否定した時点貴様は、

畜生以下。ゴミ同然だ。

貴様もドラキュラと同類という事だ。

このどうしようもないクズめ」

 

「うううぅぅぅ.....」

 

 

コエリオが脂肪だらけの重い腰を上げ、

氏郷の目の前に立った。

そして、拳銃を氏郷の頭に向ける。

 

 

「最後まで面倒臭い"奴隷"だったな。

目障りだからもう死ね」

 

「私は.....」

 

 

引き金がゆっくりと引かれた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「私は生きたい!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『ならばその願い。聞き届けよう!』

 

 

それは神の声にも聞こえた。

 




氏郷を殺さなかった当時の私に感謝です。
だからこそこの展開に持ち込めました。
氏郷とのフラグが立った分、
コエリオが想像以上にウンコになりましたね。
さて、どう殺してやろうか。
次回予告
蒲生氏郷
〜レオンは死んだ。お前は新たに生まれた.....〜

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。