実は今回良晴がなんと!?
豊後の戦場にて、睨み合う良晴軍と島津軍。
そこに、場違いとも言っていい程異質な雰囲気を醸し出す鬼。
松山主水。
かつて、大和東大寺の盧舎那仏を操って近畿内を行進し、十数人の家来の幻術師と共に、安土城を襲撃した。
その後、紀伊南蛮蹴鞠大会にて梵天丸に憑依した状態で出場した。
さらにその後、左馬助討伐を控えた天竜の前に現れ、左馬助の正体と、戦う上でのアドバイスのようなものを伝えた。
ついでに性別を暴露した。
先祖は両面宿儺という太古の鬼。
宿儺鬼を蘇らせた奴は、
その肉片を用いて鬼武者軍団を作り上げた。
そして自身も、その肉片を用いて太古の鬼の力を手に入れた。
そして.....上杉謙信の実姉である事が判明した。
ここまでが、こちらが知りうる奴の情報の数々。それ以外は、全くの謎なのだ。
ここ3年間影を潜めて、存在すらも忘れられかけていた奴が、今になって何故突然戻って来た!?
「僕は常に強者を求め続ける。
鬼は戦争に生き、戦争で死ぬ。
根っからの戦闘民族なのさ☆」
これが理由。
「とはいえ、宿敵の天竜くんが何処まで強くなるか影から見てたら、いつの間にか途方もないような存在になってしまった。
能力も権力も僕には遠く及ばないよ☆
まっ、僕の性別を知っている天竜くんに僕は殺せないだろうけどね☆」
「むむっ.....」
「山中鹿之介だっけ?
君は充分に強いかもだけど、それでも僕にとっては有象無象の1人に過ぎないんだよね☆」
「はぁはぁはぁ.....
私もそこらの雑兵の如く、
虫ケラのように斬り伏せられるんですね!
なんて、たまらない!
はぁはぁはぁ!」
「変態☆」
重装備に愛槍を構える鹿之介に対し、
極めて軽装で、刀一本の主水。
にもかかわらず、
力の差は歴然であった。
鬼と人間。
その違いは言うまでもない。
「山中鹿之介〜!」
「官兵衛殿!?」
「おや?☆」
助太刀とばかりに、官兵衛が自作の
『おーとまた7号機』
に乗り込んでやってきた。
試行錯誤の結果、
下半身はキャタピラ式。
腕にはガトリング砲。
肩にはアームストロング砲を装着。
見た目はほとんどガン⚫︎ンクだ。
「そいつは鬼だ!
人間じゃ到底敵わない!」
コックピットから官兵衛が叫ぶ。
「構わない!」
「!?」
「到底敵わない方が、
むしろ萌える(燃える)というもの!
はぁはぁはぁ!」
「..........」
だめだ.....早くなんとかしないと。
「鹿之介さん!
今は取り敢えず退いて下さい!
殿のご命令でもあります!」
官兵衛と一緒にコックピットに乗り込んでいた半兵衛が顔だけを出して叫ぶ。
「むっ、殿のご命令とあらば!」
鹿之介の唯一成長した所と言えば、
良晴に忠実になった所だろう。
鹿之介が退き、迎え合う両兵衛と主水。
「久しぶりですね。竹中半兵衛さん」
主水は半兵衛の元家臣だ。
「お久しぶりです主水さん」
「出世しましたねぇ半兵衛さん。
今や関白殿下の軍師ですか。
おまけに関白殿下の愛人☆」
「なっ.....何故それを!?」
「天竜くんから聞いたんだよん?
彼と僕は宿敵同士だけど、
最近はいい飲み仲間だからねぇ。
前に教えてもらっちゃった☆」
「あの人.....」
敵だろうが、女であればとことん甘いのが天竜の良い所(?)。
「でも僕には関係ないやぁ。
貴方が例え元主君だろうが、
戦場で向かい合った以上、
殺し合うだけ☆」
「主水さん.....
どうしても戦わなくてはなりませんか?
あの太閤様だって宗麟さんと和解したんです。私達だって.....」
「違う」
主水は切り捨てる。
「違う違う違う違う違う違う違う違う違ぁう!!
違うよ違うんだよ半兵衛さん!
僕は別に貴方に恨みがあって戦おうとしてるんじゃないんだよ!そこは勘違いしないで!☆」
「じゃあ.....どうして?」
主水は邪悪な表情で返答する。
「言ったでしょ?
僕ら鬼は根っからの戦闘民族!☆
私情なんて戦う理由にはならないんだよ!
僕はただ強い相手が欲しいんだ。
そんじょそこらの努力じゃ勝てないような、
自身の常識を超えた強敵が!
本能的に感じちゃうのさ。
そんな強敵と戦ってみたいって!☆
僕の全力でも倒せないような相手と
戦ってみたいって!☆」
「主水さん.....」
「その為に貴方から離れた。
貴方は天竜くんが現れるまでは、
最強の術師だったからね!☆
天竜くんの次に戦いたい相手なんだ。
だから.....」
主水は刀の切先を半兵衛に向ける。
「天竜くんという料理の、
前菜ぐらいには僕を楽しませてよ☆」
「..........」
「半兵衛?」
急に黙り込む半兵衛に官兵衛が尋ねる。
「つっ!?」
そして怯える。普段とはとても似つかわしくない表情をした彼女を見て.....
「式!十二神将!」
主水の前に十二体の式神が出現する。
「官兵衛さんは退いて下さい」
「半兵衛!?」
「あの人は私が倒します。
これ以上野放しにはできない!」
「くひひひ.....」
半兵衛はおーとまたから降りる。
「勝負です!松山主水!」
「半兵衛.....」
官兵衛はしばらく深く思念し、
そして.....
「式!烏天狗!」
官兵衛の式神が出現する。
「官兵衛さん!?」
「前に言わなかったか?
君とシメオンは一心同体。
2人で1人の最強軍師だ。
戦う時も一緒!死ぬ時も一緒!」
官兵衛はおーとまたを起動させ、
半兵衛をもう一度コックピットに乗せる。
「官兵衛さん.....」
「まっ、シメオンさえ加われば、
死ぬ確率なんて0%だけどね!」
「くすっ.....」
半兵衛は何かを悟ったように微笑する。
「では行きますよ官兵衛さん!」
「シム!」
関白軍の両兵衛が出る。
「ひーふーみー.....
敵さんしめて15人。
その内の1人が絡繰戦車に乗車中。
ちょっと骨が折れるなぁ。
これってイジメじゃない?☆」
とはいえ、負けそうな様子は一切見せない余裕な態度。
「んじゃ、新技でも使いますか☆」
主水はポリポリと頭を掻いたかと思うと、
頭皮に生えていた髪の毛を数本引き抜いた。
「「!?」」
「痛ったぁ〜!☆
えぇ〜とぉ?..........7本ね!
えいっ!☆」
主水は引き抜いた髪の毛を周囲にばら撒いた。
「何を.....」
「驚くなかれ!☆
我が不思議な不思議な異能力の数々!☆」
「まさか!?」
半兵衛は一早く異変に気付く。
「主水さんの妖気が.....
8つに増えた!?」
ばら撒かれた髪の毛は、
次々と主水の姿へと変化していった。
「これは!?」
その妖気は、幻術や魔術には疎い良晴にも伝わった。世にも恐ろしい悪魔の気配を.....
「半兵衛!官兵衛!」
気づいた時には、
良晴は本陣から飛び出していた。
「あっはははははははははは!!!☆
かの『斉天大聖』の如く、
体毛から分身を作ってみたよ!
.....いや『孫悟空』の名は、僕よりサル関白の方がお似合いかな?」
「くっ.....!!」
半兵衛は慄く。無理もない。
ただでさえ強敵の主水が8人に増えたのだ。
「どうだい?
僕は既に鬼の枠を超えた!☆
馬鹿な人間共に蔑まされる事も、
利用される事だってない!
母上のように殺される事も.....
僕は神に限りなく近づいた!!
もう人間共を恐る事なんて.....」
「話長いよ」
「へぶばっ!!?☆」
主水の分身の1人が、おーとまたのガトリング砲によって狙撃され、蜂の巣になる。そして、灰となって消滅した。
「なっ!?☆」
「やはり吸血鬼と同じで、
日本鬼にも銀は有効だね」
「黒田官兵衛ぇぇぇ!!!☆」
「調子に乗り過ぎだよ松山主水。
君がどのような惨めな思いしてきて、
どれだけ人間が嫌いかなんて、
シメオンには知った事じゃない。
おーとまたの射程範囲に入った以上、
何人増えようと、
何度でも射殺してやるさ」
「おのれぇぇぇぇ!!!☆
これならどうだぁ!!」
8人の主水がそれぞれ自分の頭から3本ずつ髪の毛を引き抜き、ばら撒く。すると、その髪の毛もまた主水の分身に変化した。合計32人。
「なっ!?分身も分身を作れるのか!?」
「どうするぅ〜?
その気になれば一個大隊だって作れるよ☆
でもそんなに作っちゃったら禿げちゃうかもしれないけどね☆」
それから.....
主水らと半兵衛らの戦争が始まった。
「オン・アロマヤ・テング・ スマンキ・ソワカ オン・ヒラヒラ・ケン・ヒラケンノウ・ソワカ.....
天候制御!雷電!!」
半兵衛が九字を切り、突如呪文を唱えたかと思うと、上空に暗雲が立ち上り、そこから一本の雷が落ちた。
その雷は数人の主水に直撃し、彼女らを焼き殺す。
「くっ.....流石竹中半兵衛☆
てか、以前より強くなってない?」
「3年で病は完治しました!」
「..........そうか房中術か!☆
関白の愛人になったのはそれが由縁ね」
「べっ、別に!己の寿命欲しさに殿の寵愛を受けたのではありません!」
やや頬を紅潮させながら叫ぶ。
「そうなのぉ〜?
主君から精気を盗むなんて、
乙な事してると思ったのにぃ〜」
「あうあう.....」
「気にする事ないよ半兵衛。
所詮は敵の挑発さ」
官兵衛よりフォローを受ける。
「官兵衛さん.....」
「でも少し自重しないと、
いつか右大臣様に殺されるぞ?」
「うぅ.....」
一応、階級だけなら天竜の次に偉いのが信奈だったりする。だが、最近の彼女は表舞台に出てくる事はあまりないので、一般的に天竜の次に偉いのは良晴という事になっている。
「いやはや。でもサル関白だって君程の美女とやれて、代償が精気程度なら安いものかもね!☆」
「うぅ......!!」
「君だって人の事言えないじゃないか!
僕ら鬼や天竜くん達吸血鬼は生きる為に人を食べる!牛や豚では吸収しきれない精気を得ないと僕らはいとも簡単に死んでしまう!その精気は人間からしか取れないんだ!☆
君だって同じさ!
生きる為に主君の命を喰ったんだ!
君だって吸血鬼!
いや..........吸精鬼か!☆」
「女性を泣かせるとは.....悪趣味だな」
「「「!?」」」
誰もが気付かなかった。
気付いた時には、彼はそこにいた。
主水らと半兵衛らの間に立ち、
身体は主水らの方へ向いていた。
「ガブリエル・アンダーソン!?」
主水の1人が言う。
「君とは会った事はなかったが、
私はこの国で有名人になっているようだな」
彼は両手に西洋の銀の双剣を持っていた。
「くっ.....!!耶蘇がぁ!!☆」
主水の1人がクロウに刀で斬りかかった。だが、その斬撃をクロウは片手剣で受け止めた。
「なっ!?」
それはあり得ない事だった。
両手で持った刀の斬撃を.....
しかも鬼の力による斬撃を.....
両面宿儺の太古の鬼の力の斬撃を.....
彼は片手で防いだ。
ただの人間の彼が.....
「まさか!?」
クロウの瞳は紅く輝いていた。
そして、額には1本の角が.....
「Amen!」
クロウは主水を真っ二つに斬り裂いた。
「お前ぇ!!同族かぁ!!☆」
「一緒にしないでほしい。
私は貴様らヴァンパイアとは違う」
クロウに斬られた主水の1人は灰となって消滅していた。
「第一貴様が何だって構わないさ。
私はただ女性の味方だ」
「僕だって女だ!☆」
「うぇっ!!?」
急にクロウの態度が変わる。
「性別を知らなかったとはいえ.....
相手がヴァンパイアとはいえ.....
女性を斬ってしまったなんて!」
クロウはどんどんブルーになる。
「私離脱します.....」
「「!?」」
せっかくの助っ人かと思ったクロウがスピードで現れ、スピードで離脱。
「ちょちょちょっ!!
何をやってるんだい神父ガブリエル!」
官兵衛が叫ぶ。
「いや.....女性は絶対に殺さないって主義で生きてるんで、勘弁して下さい」
「相手の大半は髪の毛から生まれた分身だ!
女以前に生物としても微妙な存在だぞ!?」
「いや.....私の脳内で女性を認識してしまった時点でもう無理なんです」
「この軟弱者ぉ!!!」
結局、何をしに出てきたのだ?
「ちょっと待ってよ☆」
退却しようとするクロウを主水が呼び止める。
「僕の分身を斬った罪は僕をちゃんと女扱いしてくれた事でチャラにしてあげるよ。今まででは君と天竜くん以外いなかったしね」
それでいいんだ。
「その代わり教えてよ。
君は確かにさっきの一瞬、
吸血鬼になっていた。
なのに今の君は本当にただの人間だ。
どゆこと?☆」
「なんで敵方に教えなきゃいけないんです?」
「そりゃそうだ☆
じゃあ.....おっぱい見せたげるから教えて♡」
「なっ!?」
「「..........」」
十二神将や他の主水らが必死に戦闘を行う中、4人の周りの時間は完全に停止していた。
「いいです!結構です!」
真っ赤な顔で拒否するクロウ。
「あら、純心で可愛い〜☆
もしかして童貞君なのかなぁ?」
「ほっといて下さい!!」
「いいよぉ?☆
お姉さんが始めての相手になってあげても♡」
「秘密なら教えるので勘弁して下さい!」
主水のペースに持っていかれてしまっている。
「なぁ、半兵衛。神父ガブリエルの性格が全くと言っていい程掴めないんだけれど.....」
「大丈夫ですよ官兵衛さん。私もです」
置いていかれている両兵衛。
「私の力は.....生まれついての呪い。
相手の異能の力のみを複写する.....」
相手の力をコピーする。
「!?..........すると君はさっき、
僕の鬼の力を複写したの!?
それで君は一時的に鬼になってたの!?」
「はい.....」
「待ってよ!いくら複写したからったって、"僕は"さっき僕の力を超える力で君に斬られたよ!?☆
複写して同じ力になるんならおかしくない?」
「私の力は相手の力の150%を複写できるんです。複写した相手を確実に上回って倒せるように」
相手が強ければ強いほど、クロウはそれ以上の力を手にできる。
「ドラキュラに勝つわけだ.....」
官兵衛が呟く。
彼女も始めてクロウの能力を知った。
「ふ〜ん☆」
「尚更君と戦いたくなっちゃった☆」
「!?」
邪悪な表情で主水は言う。
「だって君は必ず僕より強いんでしょ?
僕がどれだけ強くなろうと、
君はさらに強くなるんでしょ?
何度も何度も何度も何度も何度も、
僕が君に向かっていっても、
君はそれ以上の力で受け答えてくれるんでしょ?
それって、最高じゃなぁい?☆」
舌でペロリと唇を舐め、
虚ろな目で、顔を火照らせ、
息遣いが荒くなっている。
何かのスイッチが入ったようだ。
「いただきまぁぁぁす!!!☆」
主水の1人がクロウに斬りかかる。
「なっ!?」
「ほらっ!ほらっ!ほらっ!ほらっ!!
斬り返してよぉ!!
僕の身体を傷付けてよぉ!!
僕の勝利の確率を著しく減らしてよぉ!!
僕に絶望を与えてよぉ!!☆」
ドMなんだかドSなんだか分からない。
狂気状態の主水は鋭い斬撃を何度もクロウにぶつける。クロウはそれに応対するだけ。
「やめて下さい!!
私は女性だけは殺したくない!!」
さっきとは打って変わってクロウが劣勢。
「くけけけけけけけけけけけけ!!!☆」
「くっ!!」
「神父ガブリエル!!!」
「がひゅっ!!?☆」
誰かの叫びの直後、無数の弾丸がその主水を蜂の巣にし、肉を抉った。そして、また灰となって消滅する。
「なっ!?」
「この軟弱男!!殺意を持って向かってくる相手に対して何だいそれは!
うちの主君じゃあないんだから、
勇者としての誇りを見せたらどうだい!」
官兵衛が珍しく怒っている。
主水をガトリング砲で射殺したのは彼女。
「余所見しちゃだめぇぇぇ!!!☆」
別の主水がクロウに斬りかかる。
「式!摩虎羅さん!」
「ぎゃぼっ!?☆」
ウサギの頭を持った武神がその主水の首を斬り落とす。同時に灰となって消滅した。
「クロウさん!邪魔です!
戦わないなら退却して下さい!」
式神を操りながら、半兵衛も叫ぶ。
冷や汗を流し、彼女も焦っていた。
「主水さんのあの状態を見るのは2回目.....
"あの子"と喧嘩して以来.....
危うく美濃を滅ぼしかけました。
あの時は前鬼さんの仲介で何とかなりました。
でも彼はもういない!
私が止めないと!」
彼女はもう弱い頃の彼女ではない。
心身共に成長した彼女は、
愛する者全てを守る為に戦う!
「無駄だよ半兵衛さん☆」
「「「!?」」」
気付いた時はもう遅かった。
主水は既に100人以上に増加していた。
「お戯れはもうやめにするよ☆」
主水が急に戦法を変えた。
今までの主水は応戦する十二神将に対し、
1対1で戦っていた主水。
恐らくそれはお遊びだったのだろう。
武神1人に十数人の主水が斬りかかった。
『ガアァァァァ!!!?』
頞儞羅という名の羊の武神が喰い殺される。
その他の武神も次々に喰い殺される。
それは魔獣のようにも見えた。
『クアアァァァ!!!』
官兵衛の烏天狗も喰い殺される。
「「なっ!?」」
「ごちそうさま☆」
「このっ!!」
官兵衛のおーとまたがアームストロングが火を吹き、弾丸がまっすぐ主水に向かって飛ぶ。しかし.....
「無駄無駄無駄無駄無駄ァ!!!☆」
「なっ!?」
なんと1人の主水にその弾丸を止められてしまったのだ。しかも片手で。
「痛ってててて.....
骨が折れちゃったじゃないか。
お返し!!!☆」
逆に弾丸を投げ返してきた。
弾丸はそのままおーとまたに直撃した。
「馬鹿なっ!?」
たった一発。たった一発でおーとまたが操縦不能になったのだ。
「半兵衛さ〜ん☆官兵衛さ〜ん☆」
「「!?」」
コックピットを引き千切るようにこじ開ける主水。邪悪な笑みを浮かべながら、凍てつくような殺気をぶつけてくる。
両兵衛はただ震える事しかできなかった。
「ガブリエル君はやる気ないし、
先に君達を先に食べるね☆
君達の霊気を食えれば、
天竜くんとも互角に戦えそうだしね」
「「くっ.....!!」」
その直後の事だ。
「がぐぐぐぐぐぐぐ.....!!!☆」
主水は首の後ろから剣を刺され、
虫の息になっていた。
「ガブ.....リエル君。
戦う気なったのは嬉しいけど、
後ろから襲うのは関心しない...............!?」
主水も驚愕する。
クロウは両目に大穴を開け、失明していた。
「貴方が誰であるかは分からないが、
今この戦場で殺気を出している者は全員私の敵となる。斬られても文句を言わないでほしい」
彼の両耳からも血が出ている。
戦いの為に光と音を捨てたのだ。
「そんな.....☆」
主水は灰となって消滅する。
「竹中さん!黒田さん!
先程は無様な姿を見せてしまい、失礼した!
今度は私の番だ!
貴方達は退いてほしい!」
何処にいるか分からない2人に対して、
大声で叫ぶクロウ。
「うるさいなぁ!目の前にいるよ!」
至近距離で叫ばれ、鼓膜が破れそうだった。
官兵衛は持っていた十字架をクロウに持たせる事でその存在を知らせる。
「..........勝てるのか!!」
官兵衛は今度、クロウの脳に直接響くように叫んでやる。
「大丈夫だ!」
「全く.....君は強いのか馬鹿なのか分からん。
うちの主君とそっくりだ」
「頑張って下さいクロウさん!」
「?」
「半兵衛.....もっと大声出さないと聞こえないよ?」
そのまま両兵衛は撤退した。
「半兵衛!官兵衛!」
すれ違いに良晴が到着する。
「あれいないぞ?.....って、クロウ!?」
目と耳を失ったクロウを見て良晴がギョッとする。
「むっ.....敵か!?」
「うわっ!?」
いきなり斬りかかってきた。
「俺だよ!俺!」
「くっ!すばしっこいな!」
「駄目だ気づかねぇ!」
良晴はあるものをクロウの手に触らせた。
「むっ!?
.....この猿の尻尾のような触り心地。
まさか良晴か!?」
「..........」
これでしか自分の存在は認識できないのかと、ややナーバスになる。
「サル関白が前線なんて珍しい〜☆
人間のくせに度胸ある〜☆」
「松山主水か..........安土城以来だ」
本当は紀伊南蛮蹴鞠大会でもあっているが、良晴は知らない。
「クロウ!聞こえてるなら返事しやがれ!
今から俺も参戦する!
だが、ここにおける秘密は誰にも言うな!
いいか?誰にもだ!」
「良晴?」
脳でその音を聞き取ったクロウ。
「変身!!」
「「「「くけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけ!!!!!☆」」」」
その光景を見ていた主水らは全員爆笑した。
「本当に愉快だよ!!☆
君なんて今まで僕の眼中に無かった!
なのに君こそが大穴だったとは!
本当に面白よ!素晴らしいよ!
素晴らしいまでに気持ち悪い!!☆」
主水は言う。
「あの糞女め.....僕をはめたな?この僕を!!☆」
「..........」
何を言っているか分からない。
だが、良晴だけはそれが理解できた。
「天竜くんは気付いてるのかな?
君の事だろうから内緒なのかな?☆
でも天竜くんなら、既に気付いてるかも☆」
『..............................ガルルル』
「でも因果なものなのかねぇ。
兄弟で"大妖怪"だなんてなぁ☆」
『黙れ』
「兄が吸血鬼ヴァンパイアでぇ.....☆」
主水は言う。
「弟が『人狼ウェアウルフ』だなんて☆」
『いいからさっさとやろうぜ』
彼は獣になっていた。
尻尾のみが猿のままの奇妙な狼。
『気をつけろよ松山主水。この状態の俺は理性があんま働かないから、殺されても知らねぇからな』
喉の奥から響くように良晴の声が鳴る。だがその口は耳まで裂けた、鋭い牙だらけの獣の口。
良晴は人狼になっていた。
クロウのキャラ迷走中.....
良晴が人狼になってしまいました。
できれば人間のままで、良晴には天竜に立ち向かわせたかったのですが、天竜が強くなり過ぎた為にこの状況に.....
いずれ良晴がこうなった理由も執筆します。
男ばっかり目立って姫武将置いてけぼりですね。
どうか迷走中の今作を見守って下さい。
次回予告
人狼良晴
〜こうなったのは俺の意志。後悔はない〜