天翔ける龍の伝記   作:瀧龍騎

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明後日に本免試験!
スピードコースを選んだので、
もう免許会得です!
でもテスト自信ない.....



第六十五話 宗教

白軍服、逆立った髪、鋭い鬼歯、

小さくも立派に生えている角、

紅く輝く瞳、白銀の巨大な翼。

これが天竜のドラキュラ化。

だがこれでも半分程度だ。

完全体になれば全体的に筋肉が隆起し、

顔も化け物じみたものとなる。

だが、完全体は霊力の消費も激しい事もあり、天竜はこの状態を保っているのだ。

 

 

「..........少しよろしいですか?」

 

 

宗麟が尋ねる。

 

 

「宣教師様のお話ではDRACULAは、

Black(黒)なWing(翼)を持つとお聞きしました。

ですが貴方のはWhite color(白色)。

そして、服装もBlackを好むと聞いていましたが、貴方はWhiteを好むよう。

どういう事なのでしょう?」

 

「ふっ.....伝記とは、

人々が何度も何度も伝え合い、

それが長くなればなるほど、デマや誇張によって、その姿は本来のものから大きくかけ離れてしまうものなのだ。

まっ、もしかしたら奴は本当に黒かったのかもしれないがな」

 

「?」

 

「俺はドラキュラではない」

 

「はぁ!?」

 

 

この後に及んでどんな言い逃れだ。

 

 

「といっても、俺もまたドラキュラ。

俺はドラキュラであって、ドラキュラではない。あいつは俺であって俺ではない。

あいつがドラキュラだからといって、

俺までドラキュラであるとは言えないし、

そうであるとも言える。

俺は偽物であって、本物であるとも言える。

だが、あいつの証言では俺は偽物であるというのだから、俺は偽物であいつは本物なのであろう。

それもまた違うと言えるがな」

 

「What??」

 

 

全く理解できない。

 

 

「俺は個の『天竜』を持ち、

個の『ドラキュラ』を持つ。

あいつも個の『天竜』を持ち、

個の『ドラキュラ』を持つ。

だがあいつは個の『天竜』を捨て、

新たに『朧』という個を持ったがな」

 

「「「???」」」

 

「もういい!!

さっさと戦いますよ!!」

 

 

周りの良晴らも理解できない。

 

 

「まぁ、結論を言うとだ。

俺は偽物だ。偽ドラキュラだ。

だが.....偽物が必ずしも、

本物より劣るとは限らない!

偽物の方が強くたっていいのだ!」

 

 

白いドラキュラは構える。

 

 

「大友宗麟よ。

宣教師に何を聞いたかは知らんが、

聞いた話よりも大袈裟に捉える事だな。

そうでなければ、

実力の差に腰を抜かすぞ?」

 

「Keep your mouth and say to the death!

(死ぬまでほざいてろ!)」

 

 

宗麟はナノマシンを構える。

 

 

「私の宝具『Mercury』は無敵!」

 

「Mercury.....意味は水銀か。

『Nanomachine』という名称も嫌いではないが、いい名付けをする」

 

 

戦闘の最中に敵を褒めている。

 

 

「ふっ.....」

 

 

天竜は槍を地面に刺す。

 

 

「串刺城壁(ガズィクル・ベイ)」

 

 

マーキュリーを狙って技をかける。

しかし.....

 

 

「むっ!?」

 

 

槍が自分の真下から生えてきたのだ。

天竜は慌てて避ける。

 

 

「カウンター術か何かか?

これじゃあ直接攻撃系の術は使えないな」

 

「Shot!!」

 

 

宗麟がマーキュリーを如意棒のように伸ばしてくる。

 

 

「おっと!」

 

 

天竜は華麗に空へ飛ぶ。

 

 

「Go Find a Psychic(曲がれ)!」

 

 

マーキュリーは急展開して、

空に逃げた天竜を追う。

 

 

「しつこいぞクズ鉄が!」

 

 

天竜は方天画戟でそれを薙ぎ払った。

 

 

「かかった!」

 

「!?」

 

 

マーキュリーは、斬撃を食らう直前に急に形を変え、天竜を包み込むような形になる。

こんなのに巻き込まれれば、

10割の確率で死ぬ!

 

 

「式、鉤爪竜!!」

 

 

咄嗟に式神を召喚。

 

 

「ギャアアアアアア!!?」

 

 

鉤爪竜はそのまま、天竜の代わりにマーキュリーに巻き込まれてしまった。

 

 

「なんて奴!自身のServant(使い魔)を囮にするなんて!」

 

 

「グゲッ!グガガガガッ!」

 

 

巻き込まれた鉤爪竜は金属に押し潰され、

バキバキと骨を折られている!

 

 

「よくも俺の式神を.....許さない!」

 

 

いや、あんたが殺したようなもんだろ。

と、良晴が内心で思う。

 

 

「召喚!!」

 

 

天竜が今度召喚したのは、

なんと『RPG(ロケットランチャー)』だった。

 

 

「Cannon(大砲)!?」

 

「喰らえクズ鉄!!」

 

 

天竜はそのまま発射させる。

 

 

「なっ!?」

 

「花火を上げるぞ!!」

 

 

ロケットランチャーはミサイルの如くマーキュリーに向かって行き、マーキュリーを鉤爪竜ごと破壊した。

 

 

「ひゅ〜!!」

 

「Mercury!?」

 

 

大爆発を起こし、上がった煙のせいで状況がどうなっているか分からない。だが、マーキュリーが粉々になっている事は誰でも想像できた。だが.....

 

 

「何っ!?」

 

 

爆炎の中から、マーキュリーの破片が飛び散って来ているのが分かった。爆風に乗せられて来ているのではない。自らの意志でこちらに飛んで来ているのだ。

 

 

「こなくそっ!!」

 

 

天竜は方天画戟を目の前で回転させ、防壁を作る。

弾丸のように飛んでくるマーキュリーの破片をいくつもいくつも弾いていったが、その内の数個を取りこぼしてしまう。

 

 

「ぐっ!?」

 

 

マーキュリーの破片が天竜の前面に複数突き刺さる。

 

 

「やばっ.....!!」

 

 

体内に入り込んだマーキュリーの破片がうにゅうにゅと更に奥底へ潜り込もうとしている。このまま体内で暴れる気なのだ。

 

 

「させるかっ!!」

 

 

天竜は全身に力を加える。

すると、天竜の身体の穴という穴から鮮血が噴き出した。同時に、傷口に潜り込んでいたマーキュリーも弾き出された。

 

 

「はぁ.....はぁ.....はぁ.....」

 

 

全身から血液を垂れ流す天竜。

だが、一向に再生が始まらない。

 

何故だ.....ナノマシンの主成分は、

鋼60%に水銀が40%だったはず。

その程度で吸血鬼の王である俺が!?

 

 

「!?」

 

 

今になって気づく。マーキュリーは銀色である織部のナノマシンと違い、金色に近いのだ。

 

 

「.....金が含まれている?」

 

 

金も銀も鬼の弱点だ。

 

 

「金と銀の合金.....琥珀金か!

くそったれ!!」

 

 

それなら再生が極端に遅くなるのも理解できる。あれは.....マーキュリーという名の化物は.....

『吸血鬼を殺す為だけに作られた兵器だ』

特に俺にとっては天敵とも言っていい。

 

 

「こうなってくるとだ.....

『宗麟を生かした状態で』マーキュリーを倒すのは限りなく難しいぞ!」

 

 

ただのナノマシンだったなら、ナノマシンを弱らせてその間に術者を捕らえれば良かったのだ。だが、マーキュリー相手にはそうはいかない。

マーキュリー単体と戦うには骨が折れ過ぎる。この場合は術者を狙うのが有力であるが、宗麟は殺したくない!

 

アマテラスとの戦いにも備えている為、

力はあまり使いたくない.....

 

 

「殺すしかないのか!宗麟を!!」

 

 

天竜は地団駄を踏む。

今の大友宗麟は危険人物だ。

天竜のいつもの理論が通るなら、ここで殺してしまった方が、世の為人の為になるというものだ。

 

 

「やなこった!!」

 

 

この状況においてのみ、

そんな理論は破棄する。

女を殺すくらいなら世界を滅ぼした方がマシだ。でなくとも、俺は絶対にやりたくない!!

 

 

「くそおおおぉぉ!!!」

 

 

天竜は再度突撃する。

 

 

「ギギギギガガガガガガ!!!」

 

 

機械のような金切り声をあげるマーキュリーが応対する。

 

 

「糞鉄がぁ!!

『マーキュリー』なんてややこしい名前しやがって!琥珀金なら『エレクトラム』って名前にしやがれ!!」

 

「あっ.....それもGoodなNameですね」

 

 

宗麟がボソりと呟く。

 

 

「ガガガガゲゲ!!」

 

 

マーキュリーが天竜の両足に巻き付く。

 

 

「ちっ!」

 

 

天竜は両足を槍で斬り取った。

 

 

「Mercury!DRACULAを逃がさないで!」

 

 

宗麟の命令に従い、空へ逃げようとする天竜を何処までも追うマーキュリー。

良晴達見学者は、

それを見ている事しかできなかった。

 

 

「しまっ.....!?」

 

 

回り込みされた天竜はマーキュリーに取り込まれてしまう。マーキュリーは天竜はバキバキと締め付ける。

 

 

「がぁっ!?..........くそっ!!」

 

「Die(死ね)!DRACULA!!」

 

「No Thank You(やなこった)!!」

 

 

天竜は手榴弾を召喚し、

その場で自爆した。

 

 

「なっ!?」

 

 

爆発には弱いらしいマーキュリーは天竜と共に爆発し、解放された天竜はバラバラの状態で飛ばされて来る。

 

 

「天竜!!」

 

 

バラバラになった天竜を受け止めたのは良晴。だが天竜は、顎から上と四肢が完全に消滅していたのだった。

 

 

「あっ...........」

 

 

服も皮膚も引き千切られ、

肋骨の大部分が剥き出し状態に.....

とても元人間の身体とは思えない。

だがそれでも確実に動く心臓が、

破れた皮膚の間から見えた。

 

 

「..........今なら」

 

 

良晴は右手に握っていた拳銃を見る。

実は銀の弾丸が装填されている。

このまま心臓を撃ち抜けば天竜は死ぬ。

この魔王を殺せるのだ。

 

良晴はふと後ろを向く。

仙千代は先程のダメージが大きいのか、

まだ倒れている。

そして隠れているかもしれない3人の忍。

天竜がこんな状況にも関わらず、未だ姿を見せないという事は、先程の天竜の言葉はハッタリであり、本当はいないのではないか!?

 

なら今こそが、天竜を殺る最大の好機!

 

 

「あんたさえ死ねば.....

信奈にも...........再び天下が.....」

 

 

3年前に全てを奪ったこの男を.....

『好きでもないのに』ヘラヘラしてずっとあの男の側に付いてきた苦痛が、やっと解放されるのだ!

 

 

「俺が...........殺れば」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そうして、良晴は.....

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

拳銃を仕舞った。

 

 

 

 

 

 

そして、代わりに小太刀を取り出す。

 

 

「蘇れ天竜!!」

 

 

良晴はそのまま小太刀で自分の腕を傷付け、流れ出た血を天竜に掛けた。

 

 

「うがっ!!?」

 

 

急に天竜が叫び声をあげ、次の瞬間には天竜の身体がまるで生え変わるかの如く再生されていく。衣服も同時に再生されているようだった。

 

 

「はぁ!!はぁ!!はぁ!!」

 

 

流石の天竜も、今のには生死を彷徨ったのか、多量の汗を流していた。

 

 

「よっ.....良晴か.....すまない」

 

「いや.....」

 

 

良晴は寸前で思い留まったのだ。

このまま天竜を殺せば、

向かってくる宗麟を誰が倒す?

天竜でも勝てない相手をだ。

それに、豊臣軍の大将が死亡したとなれば、

島津は余計に勢いづくだろう。

混乱する豊臣軍は逆転されるかもしれない。

そう考えて、殺すのを踏み止まったのだ。

 

 

「どれ.....」

 

「えっ!?」

 

 

天竜が自身の親指を歯で傷付け、

そこから出た血を良晴の腕の傷に塗ってやる。

すると見る見るうちに傷が治ってしまった。

伝説通りだ。

 

 

「良晴」

 

「なっ.....なんだ?」

 

「先程の暴言は聞かなかった事にしてやる」

 

「...........」

 

 

バレていたようだ。

 

 

「それはともかくだ.....

そろそろ宗麟がヤバい」

 

「!?」

 

「ナノマシンは見た目以上に高度でな。

術者への反動が限りなくでかい。

織部は経験からそれを抑えるすべを学んだようだが、宗麟は恐らく初心者。何も理解してない。それに2回もマーキュリーを爆発されれば、術者には相当の苦痛がいくだろう」

 

 

良晴はふと彼女の方へ視線を向けると、

青白い顔で胸を押さえながら、

激しい動悸の中で戦う姿が見えた。

 

 

「このままじゃ.....先に死ぬのは宗麟だ」

 

「そんな.....」

 

「あぁ〜面倒臭せぇ!」

 

 

天竜はフラフラの状態で立ち上がる。

 

 

「良晴!官兵衛!」

 

「「!?」」

 

「お前達に頼みがある!

この作戦はお前達無しには成功しない!」

 

「何をするんだ!?」

 

 

良晴が尋ねる。

 

 

「ふっ.....」

 

 

天竜は微笑した。

 

 

「この世で最も格好悪い勝ち方だ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

この世で最も格好悪い勝ち方とは?

天竜は思考を重ねた。

宗麟との勝負に蹴りを付けるには、

124通りの方法がある。

だが宗麟を殺さずに済むには、

31通りとなってしまう。

犠牲者を全く出さずにするなら、

5通り。

今現時点で、最も有力とされている方法は.....

 

 

「よしっ!行くぞ!!」

 

 

天竜は翼を広げ、

低空飛行にて突進してくる。

 

 

「Mercury!!」

 

「ガガガガゲゲギギギギギギ!!!」

 

 

マーキュリーも再び応対する。

 

 

「式、鉤爪竜!!」

 

「ギャア!」

 

 

再び鉤爪竜を召喚し.....

 

 

「ギャア!?」

 

 

再び捨て駒に使った。

 

 

天竜の代わりに身代わりになった鉤爪竜はマーキュリーに捕まり、バキボキと締め付けられている。

マーキュリーを掻い潜った天竜は、

まっすぐ術者の宗麟のもとへ.....

 

 

「なっ.....」

 

「Γεια σας(こんにちは)!」

 

 

何故かギリシャ語で挨拶した天竜はそのまま宗麟を抱えて空高く飛び上がる。

 

 

「後は任せた!」

 

「えっ!?」

 

 

そのまま何処かへ行ってしまった。

 

 

「「...........」」

 

「ガギギギ!?」

 

 

取り残された良晴らと、

主人を失ったマーキュリー。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あいつ逃げやがった!!!?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

逃げるが勝ちという言葉があるが、

確かに格好悪い.....

というか、最低な勝ち方だ。

 

 

「聞かなかった事にするとか言って、

やっぱ怒ってたんじゃねぇか!!」

 

 

こんな事なら助けるんじゃなかった。

 

 

「いやこれで、術者のいなくなったマーキュリーの能力は著しく低下するはず!

力も弱くなるし、頭も悪くなる。

術者からの霊力の供給がない限り、

マーキュリーは特殊な攻撃もできない!

ある意味いい方法かもね」

 

 

官兵衛が言う。

 

 

「とはいえ、見捨てた事には違いないだろ!」

 

「そうかもね.....」

 

「ぬしらを信用したとは考えぬのか?」

 

「「!?」」

 

 

良晴が慌てて振り返ると、そこにいたのは刀を持った美女。忍と侍の中間のような服装をした人物。

 

 

「石川五右衛門!?」

 

「久しいな関白秀吉」

 

「なんで君が!?」

 

「太閤様から聞いていないのか?

我らは常に4人で太閤様の周りを護衛してるという事を」

 

 

ハッタリじゃなかったのか!?

もしあのまま天竜殺してたら、

俺は今頃.....

 

 

「先程貴様が太閤様によからぬ事をしようとしていた時も太閤様は『てれぱしぃ』で余計な事はするなと仰られたのだ。そして、貴様らを手助けしろともな」

 

「そうだったのか.....」

 

「私は聞いていないぞ!」

 

 

遠くの方で仙千代が叫ぶ。

 

 

「『敵を騙すなら味方から』

だって仙千代お姉さん!」

 

「『仙千代は独断で命令外の事もする節があるからまだまだだな』だって仙千代お姉さん!」

 

 

仙千代の左右の地中から阿吽姉弟が出てくる。

 

 

「あんの腹黒太閤め〜!!」

 

「はい傷薬。

天竜の血で作ってるから塗れば一発だよ!」

 

「代わりに塗り塗りしたげよっかぁ?」

 

「屈辱!!」

 

 

どうやらちゃんと3人いたらしい。

全く気配が無かったのに.....

 

 

「それでどうするんだい?

弱くなったとはいえ、

相手はあの鋼の化物だよ?」

 

 

官兵衛が言う。

 

 

「相手が金やら銀程度なら、問題はない」

 

 

凪は答えた。

 

 

「「!?」」

 

 

凪はマーキュリーの目の前に出る。

鞘に仕舞った刀を一本もって.....

 

 

「ギギギギギギギガガガガガ!!!」

 

 

金切り声をあげ、暴走したマーキュリーがまっすぐ凪のもとへ突進してくる。

 

 

「私はただの抜け忍。

ただのしがない泥棒だ」

 

 

凪は居合の状態で構える。

 

 

「私ができるのはただの窃盗。

敵の情報を盗み、敵の宝を盗み、

時には敵の命を盗み.....」

 

「ギギギギギギギガガガガガ!!!」

 

「お命頂戴致す!」

 

 

そして、凪は刀を抜く。

 

その技の名は、『残鉄剣』

 

 

「ギギギッ!?」

 

「またつまらぬものを斬った」

 

 

何処かで聞いたような台詞だぞ?

と良晴。

 

 

「ゲガッ!!!」

 

 

マーキュリーは4つに分断されてしまった。

 

 

「私の残鉄剣で斬れぬものはない」

 

「「「「ギギギギギガガ!!」」」」

 

「あ.....」

 

 

分断されたマーキュリーはそれぞれで動き始めてしまった。

 

 

「敵増やしてどうすんだ!!」

 

「かたじけない!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その頃の天竜。

ひたすら東へ飛んでいた。

 

 

「Tied(離せ)!Drop(降ろせ)!」

 

「いいけど、俺が手を離したら死ぬぞ?」

 

「うぅ.....」

 

 

天竜の飛行速度はなんと時速1224km。

マッハ1だ。

これも保護結界を張っているからできる事で、それがなければ宗麟の方が持たないだろう。

 

 

「俺の羽だけじゃこんなに早くは飛べん。

重力操作も使っているんだ。

土御門小僧の受け入りだがな。

重力を横向きに上へ転換させてるから.....」

 

「You do not know the meaning!

(意味がわからないぞ!)」

 

「あっそ.....................!?」

 

 

その時、ガクンッと高度とスピードが落ちた。

 

 

「What!?」

 

「すまん。魔力使い果たした.....

無理矢理な再生とマッハ飛行で.....」

 

「Lie(嘘)でしょ!?」

 

「良かったじゃねぇか。Drop(降下)できるぞ?」

 

「Fall(落下)の間違いでしょ!!」

 

 

天竜と宗麟はそのまま、

富士山の頂上近辺に墜落した。

とりあえずは無事だった。

 

 

「はぁ.....はぁ.....はぁ.....」

 

「生きてっか?」

 

「Shut up(黙れ)!」

 

 

天竜が何かしらの術を使って、宗麟にかかる負担を極限まで抑えたのだ。そのせいで、逆に天竜は動けずにいる。

 

 

「今こそがChance(好機)!」

 

 

宗麟は懐から短筒を取り出し、

天竜へ向ける。

 

 

「命の恩人を殺すのかい?」

 

「Shut up!Shut up!!

DRACULAは殺さなければならない!」

 

「何故俺の殺害に拘る?

誰にどんな告げ口をされた?」

 

「貴様が今後我らキリシタンにしようとしている事だ!」

 

「むっ?」

 

「貴様はまず、日本におられる宣教師様達をDeportation(国外追放)するんだ!」

 

 

俗に言う『バテレン追放令』だ。

 

 

「そして日本における、キリストの教えを完全に

Ban(禁止)にするんだ!」

 

 

『禁教令』だろう。

豊臣は許可制までだったが、

徳川は全面的に廃止しようとし、

挙句の果てには鎖国をしてしまった。

 

 

「さらに貴様は!

26人に及ぶChristian believer(キリスト教信者)を処刑するんだ!」

 

 

『日本二十六聖人殉教事件』

メキシコに向かおうとしていたスペインの船

サン・フェリペ号が台風にて日本に流された。奉行の増田長盛らが船員らを尋問し、彼らから『スペインが日本を植民地にしようとしている』という事を知った秀吉は、京都に住むフランシスコ会員とキリスト教徒全員24人を捕縛して処刑するよう命じた。

さらに共に死ぬ事を希望した2人を加えて、

26人が磔にされた。

 

 

「何故お前が知っているんだ!?」

 

 

それは未来に起きる.....

史実において、これから起きる事になっている出来事の数々だ。

ひょっとして宗麟を誑かしたのは未来人か?

 

 

「女性キリシタン100名を次々にRape(強姦)して、何人もの女性を孕ませては堕胎させ、孕ませては堕胎させ、その子供のMeat(肉)を喰らうんだ!」

 

「誰の話だそれは!!?」

 

 

デマまで流してるのか!?

いくらなんでも誇張し過ぎだ。

 

 

「よくもまぁ、自分達が完全な被害者のように言えるな」

 

「!?」

 

 

天竜は反論した。

 

 

「キリシタン共が.....

全く何もしなかったと思うのか!?

キリシタン大名やキリシタンによって寺社が焼き払われてしまったり、僧侶が迫害されてしまったりした事もある!逆もある事はあるが.....

さらにポルトガル商人によって日本人が奴隷として海外に売られている事例だってあるんだ!

それからバテレン共!

奴らは日本人を人間だと思ってない!

キリスト教において、

神は自分に似せて人間を作ったとある。

だが、神は白人だ!

異教徒達や、白人以外の黒人・黄人達は人間として

認識されていないんだ!

だから植民地支配や奴隷貿易を平気で行える!」

 

「そんなのLie(嘘)だ!

だって..........宣教師様達は.....」

 

「だからだ。お前だってあいつらに人間扱いなんてされていない。あいつらにとってお前は、都合がいいから側にいさせているだけの愛玩動物(ペット)に過ぎない!」

 

「なっ.....!?」

 

 

宗麟はその言葉に絶望する。

そして、大粒の涙を流した。

 

 

「いいか、よく聞け宗麟。

人間とは脆い生き物だ。

何かに頼らなければ、

生きてはいけない弱い存在だ。

自身を裏切らない宗教に身を委ねたい奴の気持ちだって分かってるつもりだ。

だがな.....

宗教を作ってるのもまた人間なんだ!

それは弱きを助ける為だけじゃない。

罪をなすり付ける為にも宗教は使われる。

宗教を理由に多くの人間が殺された!

宗教を理由に多くの戦争が起きた!

宗教が多くの不幸を作り上げた!

俺の友人の1人にそんな奴がいた。

彼女は戦争に負けて、主君に裏切られ、

でも聖人だから処刑はできなかった。

しかし邪悪な人間共は、

宗教を使って意図的に彼女を異端者『魔女』に仕立て上げ、火炙りにしやがった!」

 

 

それは『オレルアンの乙女』

 

 

「うぅ.....」

 

「宗麟、神はいないんだ。

人間が創り上げた妄想に過ぎない。

例え人知を超えるような存在が現れたとしても、それはそういう存在であって、宗教で教えられているような神々しい奴らではない!」

 

 

少なくとも天竜は、

アマテラスやツクヨミに対して、

このような感情を抱いている。

 

 

「人間を救えるのは神じゃない。

人間を救える事ができるのは、

人間しかいないんだ!」

 

「じゃあ.....」

 

 

宗麟が弱々しく尋ねる。

 

 

「貴方は私を助けてくれますか?」

 

「..........」

 

 

それは心からの叫びだった。

 

 

「私を救えるのがHuman(人間)しか駄目なのなら.....

貴方は私を助けられますか?」

 

 

人間でない天竜に.....

 

 

「俺は.....」

 

 

天竜は人間ではない。

 

 

「俺は化物だ」

 

 

天竜は答える。

 

 

「ただし、人間のような化物だ」

 

「えっ?」

 

「この世には化物のような人間が数多くいる。そのような奴らがこの世を乱すのだ。

なら俺は何だ?

俺もまた、世を乱す化物の1人。

だが人間ではない。

人間の定理とはなんだ?

特殊な異能の力を持たない者の事か?

なら、お前や官兵衛まで化物になっちまう。

だから俺は思う。

人間とは、『愛』を持つから人間なのであるという事を.....」

 

「ら..........Love(愛)?」

 

「俺の言い分を戯言と捉えるならそれでいいさ。だが俺はな、人間と同じように多くの者を愛している!

この国を愛している!

この世界を愛している!

お前も愛してやろうか!

くひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃ!!!」

 

「ぷっ.....」

 

 

宗麟は微笑する。

 

 

「豊臣秀長.....いえ、太閤様。

もう貴方が化物で構わない。

私を助けて下さい」

 

「俺は助けないさ」

 

「えっ?」

 

「俺が導いて、お前自身が自ら助かるんだ。

お前の世界を創り上げるのは、

お前自身だからな」

 

「Yes.....」

 

 

宗麟は向けていた短筒を降ろす。

 

 

「戦争ってのは話し合いで解決しきれなくなった時に起こす外交行為だ。

だが、俺達は全く話し合ってない。

これからは先に話し合おう。

俺達の事も.....

キリシタンの事も.....」

 

「Yes!」

 

 

2人は握手を交わした。

 




最後はトントン表紙で和解した2人。
真意を表に出し始めた良晴。
さて、次回は取り残された良晴達の戦いです。
4体に分裂したマーキュリーを果たして
倒す事ができるのか!?
そして、今件の黒幕とは!?
次回予告
サタン教
〜キリスト教に代わる新たな.....〜

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