天翔ける龍の伝記   作:瀧龍騎

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とりあえず仮免受かった


第六十二話 また1人.....

第六十二話

 

播磨にて、明智左馬助と武蔵・氏真・吽斗との決闘は、宮本武蔵が死亡した事によって決着が着いた。

だが、生き残った氏真と吽斗もそれぞれ腹部を切り裂かれ、毒針を打たれ、瀕死の状況であった。

 

 

「ヒコッ!!ヒコッ!!」

 

「うぅ.....」

 

 

いつまでも武蔵の事で泣いてもいられなかった。今は、死んだ武蔵よりも生きている氏真達を優先しなければならなかったからだ。

 

 

「阿斗!!吽斗はどうだ!?」

 

「解毒剤は打った!

幸い少量しか入らなかったようだ」

 

「そうか」

 

 

吽斗は一度左馬助に打たれた針を改めて打たれた為に、そこまでの毒は効かなかったようだ。更に、阿吽姉弟は自ら毒を飲んで対抗力を付けるなどの過酷な修行をしている為、トリカブト程度で死亡する事はないという。だから吽斗は阿斗に任せておけばなんとかなるだろう。

 

問題は氏真だ。

彼女は正面から巨大な鬼包丁を刺され、

腹部に大きな穴を開けている。

破れた腸まで飛び出ており、

明らかに致命傷だ。

 

 

「待ってろ!傷は全部受け入れてやる!」

 

 

例えこの傷が天竜に移動しようが、

吸血鬼の強力な治癒力を持つ彼には関係ない。瞬時のうちに再生されるだろう。

 

 

「沙九把・秉無・覇寿于羅!」

 

 

今まで何度も使った術だ。

術をかけた相手の身体の異常を自身に移す慈悲の陰陽術。

これさえ使えば氏真は助か.....

 

 

 

 

 

 

「!?」

 

 

 

 

 

 

 

 

その時、電撃が走った。

術を強制的に弾いたのである。

 

 

「なん...........だ?」

 

 

わけがわからなかった。

しかし、放っておけば氏真は死んでしまう。

彼は再び術をかけるが.....

 

 

「つっ.....!?」

 

 

再び弾かれた。

 

 

「これは.....」

 

 

可能性としては4つある。

一つは、氏真に対抗性がある事。

氏真が術に慣れすぎて.....

もしくは、先天的に術が効かない体質であるがゆえに、術が効かない。

 

 

 

 

 

答えはNoだ。

俺は以前にも氏真らに術を使用している。

この状態異常の移植術も何度か使った。

それなら先天性があるのはあり得ないし、

そんな短時間でいきなり対抗性ができるとは考えられない。

 

 

二つ目は、俺に問題がある事。

自分でも気づかないうちに、

俺の術者としての能力は衰退しており、

術すら発動できない。

 

 

 

 

 

Noだ。

俺の能力はむしろ進化している。

自身が吸血鬼であることに気づき、

吸血行為をするようになってから、

その血を媒介に俺の魔力は格段に増えている。術が使えなくなるなどあり得ない。

 

 

なら、光の仕業か?

鬼包丁を氏真に刺した時に、

何かしらの対抗術をかけ、

俺の術を打ち消した。

 

 

 

 

Noだ。

多少のブランクはあるが、俺と光とでは、術者としての実力差が大きい。

確かに彼女は幻術使いであり、未来の世界で俺の勘解由小路系陰陽術を少しなりとも習ったりもしているが、それでもだ。

第一、この移植術は俺のオリジナル。

元々あったわけではない。

0から作り上げた新術なのだ。

他の誰も知らない術を光が安々と理解できるとは到底思えない。

 

 

なら...........ならだ。

光や俺を超越した術者。

人知を越えたような存在の仕業であるとすれば、どうだろう?

人間には到底できない.....

『人間である俺』には到底敵わない、

創造主の仕業であるとすれば.....

 

 

 

 

「......................」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

Yesだな。

犯人は神だ。

神の仕業なのだ。

神のみぞ知る事柄なのだ。

 

 

「...........アマテラス!!」

 

 

犯人はあいつだ。

あいつが邪魔をしている。

つい先程の光の話.....

完全に信じるのもあれだが、もし本当だとすれば奴は本気で、俺の人間部分を殺しにかかっている。

手始めに氏真を殺す事によって!

 

 

「アマテラス!!」

 

 

再び叫ぶ。

奴がせせら笑う様子が目に浮かぶ。

 

 

「くそっ!!くそっ!!」

 

 

何度も移植術をかけようとするが、

その度に弾かれる。

 

 

「神よ!!貴様ら我々に対して、

どこまでも残酷なのだ!

何故こんな力を与えた!!

人々を救う為ではないのか!

世界を変える為ではないのか!」

 

 

だが、当の神は答えない。

 

 

「くっ.....!!

黙殺するならばそれでいいさ!

俺はもう西洋や東洋だとかで貴様らを区別するのはやめにする!

纏めて駆逐してやる!!

貴様ら神を喰ってやる!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

だが結局、神が答える事はなかった。

 

 

「くそっ!!」

 

「うっ.....」

 

 

氏真は今尚死にかけている。

 

 

「俺に.....力があったら!!」

 

 

小次郎と武蔵に引き続き、

また失うのか!?自分の家族を!!

 

 

「いや...........あるじゃないか。

俺には...........力が!!」

 

 

天竜は自身の口内の、鬼歯を確認する。

 

 

「氏真を眷属にすればいい.....」

 

 

それがいい。

それしか方法はない。

眷属作りは魔力を介さない。

吸血鬼のウィルスを直接流し込むのだ。

これならアマテラスとて邪魔はできない。

 

 

「なら善は急げだ!」

 

 

早速、吸血に取り掛かる天竜。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「だ.....め.....」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「!?」

 

 

噛み付こうした天竜だったが、

それは氏真本人によって阻止される。

 

 

「何故だ氏真!!

まっ.....まさかアマテラス!!

氏真を操ってまで.....」

 

「違う.....これは私の.....意志」

 

「!?」

 

 

氏真の本心が眷属になる事を拒否している!?

 

 

「人間として...........死なせて」

 

「駄目だ!!

ここでお前にまで死なれたら.....

今度こそ俺は自分自身を許せなくなる!」

 

「ごめん.....なさい.....

ごめんなさい...........」

 

「謝るな!

...........謝らなくていいから

...........生きてくれ」

 

 

氏真の手を握り、

涙を流しながらに訴える天竜。

 

 

「...........分かった」

 

「じゃっ...........じゃあ!」

 

「でも条件がある...........

先に.....先に姉上達に.....会わせて」

 

「義元達に!?」

 

 

義元、義昭、義輝は未だ二条城にいる。

 

 

「あそこに行けば、

眷属になるんだな!?

生きてくれるんだな!?」

 

「...........うん」

 

 

か細い声で答える。

 

 

「よしっ!!」

 

 

天竜は氏真を抱き上げ、

開いた腹部を布で隠してやる。

 

 

「高速で行く。

多少風圧が強いが我慢してくれ」

 

 

天竜は背中に巨大な翼を広げる。

 

 

「阿斗!吽斗を頼む!」

 

「分かった!」

 

 

その直後、瞬時に飛び立つ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

時速は500kmは出ていた。

先程ので学習した為、

今度は氏真に保護結界をかけ、

負担を軽減させている。

 

 

「待ってろよヒコ!

ほんの数分で着くからな!」

 

「...........」

 

 

氏真は静かだった。

顔に色をなくし、呼吸も限りなく小さい。

 

 

「天...........竜」

 

「喋るなヒコ。もう少しだから!」

 

「ありがと.....」

 

「!?」

 

「天竜が...........拾ってくれた。

姉上とも...........仲直り.....できた。

全部...........天竜のお陰.....。

家族ができたのも...........」

 

「もういい。喋るなヒコ」

 

「でも...........意識とびそ.....」

 

「分かった!

なら今度は俺が喋ってやる!」

 

 

氏真が眠れば、そのまま二度と帰ってこないような気がしたので、天竜は焦って口を動かす。

 

 

「俺が初めてこの時代に飛ばされて来た時の話でもしようか」

 

「うん.....」

 

「あれは今から4年.....5年前か。

何の前触れもなく、突然過去に遡った俺は、いきなり近くの兵にとっ捕まったんだ。

まぁ、当時は未来の服をそのまま着て来てたから、そいつらも不気味に思ったんだろうな。とっ捕まって早々、処刑されかけたんだよ」

 

「うん.....」

 

「そんな時に通りかかったのが、

俺とお前の師匠でもある塚原卜伝先生。

先生はどうやったかは知らないけど、

その兵達を説得してくれたんだ。

まぁ、説得したというよりは剣の腕で黙らせたというのが正しいかな。と言っても、先生が現れてなきゃ兵達は俺に殺されてただろうな。

かははははははは.....」

 

「うん.....」

 

「最初は蟠りがあったが、そんな時間がかからない内に弟子になった気がする。

しばらくしてだ。

長良川戦で敗走した左馬助と会い、

桶狭間戦で家が没落したお前と会い、

京で決闘してた武蔵と小次郎を諌めて.....

まるで昨日のように鮮明だ。

その後、堺で弥九郎のゴタゴタに巻き込まれて.....その時、阿吽姉弟と仲間になって.....」

 

 

弥九郎とは小西行長。

豪商小西ジョウチンの娘だ。

直家死亡後は、

秀家と共に良晴の家臣となっている。

 

 

「中国では宇喜多家の世話になって、

卜伝先生が亡くなって...........あれ?」

 

 

唐突に思った。

ありえないはずであるのに.....

 

 

「先生って.....

どんな顔だっけ?」

 

 

ただど忘れしたというわけではない。

卜伝と過ごした思い出がそっくりそのまま抜けているのだ。自分自身が塚原卜伝弟子であったという根本的情報はあるのに、彼がどのような存在であったのか、全く分からないのだ。

 

 

「...........天竜」

 

「!?」

 

「二条城...........見えた」

 

 

氏真に伝えられる。言われなければ通り過ぎていたかもしれない。

 

 

「おっ.....おう。

降りるから衝撃に備えてくれ!」

 

「.....天竜」

 

「ん?なんだ?」

 

「大好き」

 

「...........あぁ、俺もだ」

 

 

天竜は速度を落とし、

そのまま二条城の門前に降りる。

 

 

「ヒコッ!着いたぞ!ヒコッ!」

 

「...........」

 

「.....ヒコ?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

二条城。飛び出てきたのは義元だった。

 

 

「天竜さ...........太閤殿下!

氏真は!?彦五郎は何処に!?」

 

 

大御所といえど、身分制度はしっかりと守っている彼女。

 

 

「...........」

 

「殿.....下?」

 

 

天竜は呆然と立っていた。

その瞳は光を失っていて虚ろだった.....

 

 

「殿下......................!?」

 

 

義元は気づく。天竜が腕に抱く少女に.....

 

 

「彦.....五郎?」

 

 

布に隠されてはいたが、その下が酷い状態である事はすぐに気付いた。布の上にも滲み、大量の血が下に流れ出ていた。

氏真は完全に血相を失っており、

真っ白な顔をしていた。

手足はダランと垂れ下がり、

見るからに重そうになっていた。

 

 

「...........彦?」

 

 

義元が氏真の頬に触れてみる。

だが、その肌は冷たくて.....

 

 

「.....嘘...........嘘!!」

 

 

義元はその場に腰を落とした。

次第に大粒の涙が流れ出る。

 

 

「氏真!!」

 

「天竜!?」

 

 

後ろから義昭と義輝も飛び出てくる。

 

 

「ごめん.....間に合わなかった」

 

 

天竜は眠りついた氏真をそっと地面に腰を下ろした義元に渡してやる。

やはり、眠りについた氏真はズシっとくるほど重たくなっていた。

 

 

「なんだかな.....ははっ.....」

 

 

天竜は微笑する。

 

 

「俺より若い命がドンドン消えていく。

俺が死に導く。俺が殺す。

俺は死神なんだろうか」

 

 

感情のない声で呟く。肩の力も抜け、完全にやる気が失われている。

 

 

「疲れた.....もう疲れた.....」

 

 

長時間に及ぶ飛行による身体の疲れ。

2人の家族を同時に失った精神の疲れ。

それらが天竜を押し潰した。

 

 

「どうしたのですか氏真?

こんなにグッスリと眠ってしまって.....

...........そうですか。はい。

それは、愉快ですわ」

 

「「!?」」

 

「義輝様。氏真が今度の蹴鞠大会に一緒に出ようですって。是非応援に来て下さいます?」

 

「何を言ってるんだ菊!?」

 

 

夫の義輝は義元の異常に気づく。

彼女の瞳もまた、虚ろになっていた。

 

 

「見て下さい義輝様。氏真がこんなにお花を持ってきてくれたんですよ?」

 

 

義元は氏真より流れ出た血を掌に溜め、

義輝に見せつけた。

 

義元は壊れていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「死ねばいいのに.....」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

それは氏真の口癖でもあった。

 

 

「お前が死ねば良かったのに!!」

 

 

それを叫ぶのは足利義昭。

 

 

「何でお前が生き残るのじゃ!!」

 

「義昭!!」

 

 

兄が諌めようとするが、義昭は止まらない。

 

 

「お前は氏真の師匠じゃろ!!

弟子を盾に生き残るなど外道じゃ!」

 

 

忘れていた。

義元とは蟠りがあった氏真も、

義昭とは仲が良かったのだ。

本来なら氏真がやや年上だったのだが、

義昭が妹が欲しいと我儘を言った為、

わざわざ義昭の言うことを聞いて妹になってやる程に氏真は義昭を信頼し、期待に応えた氏真を心から家族として認めた義昭。

義昭が怒るのも無理ない。

 

 

「氏真を返せ!!彦を返せ!!」

 

 

義昭は憤る。

 

 

「よせ義昭!!

天竜とて傷ついている!

全ての責が天竜にあるというわけではない!」

 

「五月蝿い五月蝿い五月蝿い五月蝿い五月蝿い五月蝿い五月蝿い五月蝿い五月蝿い五月蝿い五月蝿い五月蝿い五月蝿い五月蝿い五月蝿い五月蝿い!!!!

兄様は黙るのじゃ!!

第一こやつは元副将軍!

それなのにわらわ達を差し置いて、

上位の関白やら太閤になるのがおかしい!

幕府を蔑ろにする売国奴なのじゃ!」

 

 

義昭はここで全ての不満をぶつける。

将軍就任時は天竜に感謝し、

ある程度は彼を認めていた義昭も、

天竜が太閤となった事で態度を一変。

裏切り者として彼を非難した。

 

 

「わらわは宣戦布告する!

魔王天竜を討ち果たすのじゃ!

わらわの手紙にて集結した各地の大大名が魔王退治を目標にお前の野望などケチョンケチョンにのしてくれるのじゃ!」

 

 

なんだかんだで人任せの義昭。

 

 

「馬鹿な事を口走るな義昭!!」

 

 

義輝も呆れて叫ぶ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ふっくくくくくくくくく.....」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「!!?」

 

 

天竜が突如笑い始めた。この光景をあまり見ない義昭は急に怯え出す。

 

 

「くひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃ!!!!」

 

「ひいぃっ!!?」

 

 

義昭は天竜の威圧に押し負け腰を抜かす。

 

 

「この俺が売国奴だとう?

貴様如き雑種がよくぞそんな戯言を叩けたものよのう、この太閤に向かって!」

 

「ひいぃっ!?」

 

「太閤は陛下の代わりを務める身。

そして陛下は日本国そのもの。

貴様は日本国に刃を向けているのだぞ!

それこそ売国奴ではないのか!!」

 

「うぅ.....」

 

「本気で勝てると思うのか?

本気で大大名が味方すると思うのか?

衰退した幕府と.....

栄え始めた朝廷.....

皆々はどちらに味方するであろうな。

どちらが有利と思うだろうな。

どちらが有益と思うだろうな。

お飾り将軍と太閤。

どちらが良いと思う?」

 

「うぅ.....五月蝿い五月蝿い五月蝿い!!

わらわは第16代征夷大将軍!

足利義昭であるぞ!

成り上がりのエセ太閤なんぞに、

負けるはずがないのじゃ!

勝負なのじゃ豊臣天竜秀長!!」

 

「分をわきまえない雑種が!

戦う前に勝手に自滅するのがいいオチだ」

 

「なんてことだ.....」

 

 

義輝は頭を抱えた。

2人の性格は知っているはずだった。

義昭は自己中心的であり、

一度興奮すれば何をしでかすか分からない。

天竜は普段常に冷静沈着だが、

身体的、精神的に追い込まれると、

豹変して、わけがわからなくなる。

善悪の区別すらつかなくなり、

自身の障害を徹底的に排除する。

 

相性の悪い2人が完全に瓦解してしまった。

 

 

「義輝様。彦は蹴鞠の新技を編み出したようですわ。勝負するのが楽しみですね」

 

 

氏真の死体を抱き現実逃避した義元は虚ろな目をしつつも、朗らかな表情をしていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

結果は天竜の言った通りだった。

 

義昭は各地に手紙を書き、

各地の大大名に援軍を求めた。

だが.....

毛利・長宗我部はそれを黙殺。

徳川は拒否。

武田はそもそも没落状態。

伊達は蒲生と対立しており援軍をする余裕がなく、蒲生もそれは同じだった。

上杉は期待ができたものの、

『豊臣と争うにはまだ早い』

と判断した謙信は援軍を泣く泣く拒否。

最後の望みで織田を頼ったが、

豊臣と同盟状態にあった為、

これも拒否される。

それ以外の大名は全員豊臣傘下。

 

義昭の味方大名は1人とていなかった。

さらに、義昭に着いて行く事に絶望した彼女固有の兵らも次々に離れて行った。

 

 

そして兄の義輝は.....

 

 

「くそぉ〜!

こうなったら九州の大友に!

いや、島津に手紙を書くのじゃ!」

 

「もうやめよ義昭!イタズラに戦を起こすな!天竜が治めた日の本を再び乱世に陥れる気か!!」

 

「乱世なんてどうでもいいのじゃ!

問題なのはわらわの将軍としての立場が危ぶまれていることなのじゃ!」

 

「......................は?」

 

「わらわが将軍になれぬのなら、

乱世のままでよいのじゃ!」

 

「なんて...........愚かな」

 

 

何故こんな子になってしまったのだ?

将軍という肩書きそうさせたのか?

こうも捻くれてしまって.....

父上よりこの子の世話を任されて.....

一体何処で間違えたというのか!?

やはり明に逃げた私が悪いのか?

これから私はどうすればいい?

妹を取るべきか、友を取るべきか。

人としてなら.....

前将軍としてなら.....

妹を支えるべきなのだろう。

 

 

 

 

 

いや.....違うだろう。

 

 

 

 

 

前将軍であるからこそ、日の本の未来を考えて正しい選択をしなければならないのでないか?

なら答えは一つ。

 

 

「...........縁を切る」

 

「えっ?」

 

「お前との兄妹の縁を切る!」

 

「......................どうして?」

 

 

義昭は信じられない表情で兄を見る。

 

 

「己の胸に聞いてみよ。

私は天竜側に付く。

その後お前がどうなろうと、

他人である私はもう知らぬ!」

 

 

そう言って、腰に刺していた将軍家に伝わる宝刀を叩きつける。

 

 

「足利家は終わりだよ」

 

 

そう言って義輝は義元を連れて二条城を後にした。

 

 

「兄...........様?」

 

 

兄に見限られた義昭はただただ呆然としていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

結局、義昭は戦すらも始められずに自滅した。これも天竜の予言通りだった。

 

 

「義昭と縁を切ったのか?」

 

「あぁ」

 

 

「義昭は京で捕らえた。

すでに将軍職は剥奪している。

奴は今や戦犯だ。

義昭を処刑せよという声が多く出てる」

 

「そうか.....」

 

「いいのか?」

 

「構わない」

 

「嘘を付くな。顔に出てる」

 

「...........」

 

「山城慎島1万石をやる。

3人で隠居するには丁度いいだろう」

 

「かたじけない.....」

 

 

 

 

 

こうして、室町幕府は正式に滅亡した。

 

 

 

 

 

その後義元は大御所を辞め、

隠居地で家族と静かに暮らしている。

だが、心の病は未だ治らない。

氏真が葬られた後も彼女が死んだ事を認めようとはせず、もういない氏真をひたすら探し続けていた為、天竜が氏真そっくりに作った人形を送った。義元はそれを氏真だと信じ込み、それ以降肌身離さず抱き続けている。

その後、義元と義輝の間に男子が生まれた。

だが、病が治らない限りは母親としての責務は未だ果たせていないという。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

それから数日後.....

伊勢神宮が焼き討ちされる事件が起きた。

 

実行犯は天竜。

 

 

氏真が死んだのはアマテラスせいであると考え、彼女を祀る神社をを滅ぼそうとしたのだ。

だが、神主らによって止めらた為

半焼に済んだという。

三成らによる後処理で、

この件はただの事故という事にし、

真実は闇に葬られたという。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「武蔵...........ヒコ...........」

 

 

弟子を全員失った彼は完全に意気消沈し、

数ヶ月間大坂城に引きこもっていた。

四国や九州戦に踏み込むのが遅かったのはこれが原因だという。

 

 

「おのれアマテラス...........」

 

 

天竜はひたすら神を呪った。

 




過去編終了。
また姫武将殺してしまった。
しかも義元を鬱状態に.....
しばらくは自重します。
次回あたりは平和編です。
次回予告
兄弟和気藹々
〜将来の夢は何か〜

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