天翔ける龍の伝記   作:瀧龍騎

76 / 124
現在は北海道。
寒くて寒くてサムムムムーン!


第六十話 姉妹弟子

2人の討伐隊は、ここ数ヶ月行方不明の明智左馬助光春こと勘解由小路光を追っていた。天竜が太閤に就任する直前に、氏真の前に姿を現したというが、それ以降はよく分からない。気付いたら消えていた。

武蔵も氏真も、天竜子飼いの将として、ある程度の権力を持っていた。その権力を利用し、光の徹底捜査が行われたのだった。

それから数ヶ月後、奴本人より手紙が来たのだった。

 

 

「ヒコッ!」

 

「うん.....」

 

 

手紙の内容はこうだった。

 

 

『拝啓 宮本武蔵様、今川氏真様

お久しぶりですね。明智左馬助光春です。

今は結婚致しまして、

勘解由小路光と名乗っております。

娘も1人います。

貴方方にはここ数年の話かもしれませんが、私には数百年の時差ありますので、貴方方とは本当に久しぶりなのです。

ですが、今でも当時の思い出は何故か鮮明なのです。武蔵殿や氏真殿。そして、今は亡き友の小次郎との剣の修行は今でも忘れられません』

 

「.....友だとう!?」

 

 

武蔵が怒りを表す。

手紙は2枚目に移る。

 

 

『さて、貴方方はこの私を倒さんと、

ヤッケになってこの私を探し回っておられるようですが、いいでしょう。貴方方が望むのなら、私は貴方方の前に再び姿を見せます。

たかだか人間風情が、このヴァンパイアを倒すというのなら、受けて立ちましょうぞ。

播磨のあの場所で.....』

 

 

それは、以前決闘した地を指していた。

 

 

「ふざけやがって!」

 

 

武蔵は手紙を引き千切った。

 

 

「行くぞヒコ!播磨へ!」

 

「分かった!」

 

 

ピリリリリリリリッ!!!

 

武蔵の懐から機会音が鳴る。

 

 

「あいつか.....」

 

 

武蔵は確信していた。この世に自分に電話してくる奴なんて.....

武蔵は慣れない手付きで電話に出る。

 

 

「なんだ天竜?」

 

『なんだじゃない。電話に出る時は

「もしもし」だ』

 

「..........もしもし?」

 

『お前達、何をする気だ?』

 

「何って.....お前の因縁に蹴りを付けてやるんだよ」

 

『馬鹿が!奴とお前らの実力差をまだ測れないのか!!以前死にかけたのを忘れたのか!!』

 

 

電話の向こうで、天竜は怒っていた。

だが、

 

 

「そんな危なっかしい相手をいつまでも放置してるのはどこのどいつだよ!」

 

『うっ.....!?』

 

「あたしだって無知じゃない。

お前は不死身である左馬助を殺す方法を知ってるにもかかわらず、躊躇してそれをしないって事もな!」

 

『..........』

 

「なぁ、天竜。今やお前は太閤だぞ?

幕府が塵みたく衰退してる今、

日本の頂点はお前だぞ?」

 

「幕府管領である私としては、今の言葉に撤回を求めたい.....」

 

『..........』

 

「国の王は民衆に支えられ、

民衆を率いてかなきゃならない。

だが、お前は民衆を無差別に襲う左馬助を放置している。それはいいのか?」

 

『..........』

 

 

武蔵の知力は乏しい。

だが、このような事に関してはズケズケと言う奴だ。天竜も言葉が出ない。

 

 

「まだ左馬助が好きなんだろ」

 

『.....っ!!?』

 

「.....その反応でガッテンいったよ。

前の決闘でも、異世界に飛ばしちまった左馬助に対してお前は、泣いてまで自身の行動を後悔してたしな」

 

 

あの時天竜は、当時はまだ体内にいた朧に身体を乗っ取られ、気付いた時には無意識といった状況になっていた。

 

 

「しかも聞けば左馬助は、飛ばされた先が400年も経った未来で、そこで出会ったお前と結婚したんだろ?

まぁ.....あいつの事だから、自然を装って計画的に結婚に持ち込んだんだろうけどな。夫婦生活もそこそこ円満だったらしいじゃねぇか」

 

『..........』

 

「その後何があったかは知らないが、

お前はこの時代に来た。

それを追って奴も来た。

いくら小次郎を殺された過去があるからといって.....自分のカミさんの正体が分かったからといって.....それまでの思い出まで消え去るとは到底思えない。

愛情とか友情ってさ、ちょっとの事では壊れるもんじゃねぇだろ。例え喧嘩したって、結局は仲直りする」

 

『ふっ.....小次郎と喧嘩ばっかだったお前からそれを聞かされるとはな。競い合ってるのは表だけで、裏では大親友だったのかい?』

 

「好敵手だ。お互い認め合ってた』

 

『ふっ.....』

 

「お前は大の天邪鬼だ。昔からな。

口ではあいつを殺すとかほざきながら、内では真逆の事を考えて.....

お前は優し過ぎる。

小早川隆景にも、北条氏康にも、

武田信玄にも、上杉謙信にも、

伊達政宗にも、長宗我部元親にも、

豊臣秀吉にも、織田信奈にも.....

鬼のような卑怯な所業をしておきながら、なんだかんだで奴らの事を思って、何かしらの対処をする。

誰にも褒められない。

誰にも理解されない。

なのにお前は必ず他人の為に動く」

 

『ふっ.....お前には俺はそう写ってんのか』

 

「そのまんまだろ。

何年分の付き合いだと思ってんだ?」

 

 

武蔵はその身体の小ささとは裏腹に大人だった。精神はとてつもなく大きかった。

 

 

「あたしらが死ねば、お前はあいつ本気で殺そうと考えるのか?」

 

『なっ!?.....お前らまさか!?』

 

「バーカ。ただで殺されるとでも思ったか?

あいつに敵わない事ぐらいは理解してる。

でも、でもな。

前回の戦いであたしは生き延びた。

それは私が逃げおうせたんじゃない。

織部やお前に助けられたからだ。

この宮本武蔵がお荷物になったんだ。

こんな事.....納得いくわけがない!」

 

『馬鹿が!

そんな下らないものの為に、

己が命を捨てるのか!!』

 

「お前は陰陽師だからな。

侍の志なんか分からんだろ」

 

『剣豪という名の無職だった奴が何を言う!』

 

「天竜.....あたしは.....まだ小次郎の仇をこれっぽっちもとれてないんだ」

 

『うっ.....』

 

「復讐したって、何もならないのは分かっている。でも、友を殺した奴が今ものうのうと生きて、無実な民を殺し続けている事に.....

あたしは我慢ならない!」

 

『武蔵.....お前は小次郎と約束したはずだ。

拾を立派な剣士に育て上げ、

いつかあいつの代わりに決闘すると.....』

 

「....................ごめん。それは無理になった」

 

『この単細胞の大馬鹿が!!』

 

「そんな怒るなよ。お前らしくもない。

いつもみたく冷静に対処してくれ」

 

『俺の弟子は皆馬鹿だ!

悪魔に唆されて魂を売ったり、

自分を殺した相手を許そうとしたり、

自殺行為に近い事を、誇りだ仇討ちだなんて理由で、平気でやろうとして.....』

 

 

天竜の言動は震えていた。

電話の向こうで泣いているようだった。

 

 

「お前の弟子だからだよ。

お前と会わなければ、あたしはいつまでも、奇襲とかの卑怯な戦法しか取らなかった。小次郎とだって、まともに戦う事だなんてなかっただろう。

仇討ちだとか、他人の為に刀を振るいたいなんて思えるようになったのはお前のお陰だ。ありがとう」

 

『馬鹿が.....全然嬉しくもないぞ』

 

「そんじゃ、もう切るぞ?

そろそろ約束の刻限だからな」

 

『駄目だ、切るな!

場所を教えろ!俺も向かう!』

 

「それこそ駄目だよ。

今の動揺してるお前じゃあ、

多分、左馬助を殺せない。

あたしらの死を受けて、

気持ちが落ち着いて、

覚悟が決まった時に、

あいつを殺しに行け」

 

『何を言ってるんだ武蔵!!』

 

「それじゃあな..........

どうやって切るんだっけ?

まぁ、いいや」

 

『おい、武蔵!!』

 

 

武蔵は携帯をへし折った。

 

 

「もういらないしな.....」

 

「覚悟は決まった?」

 

 

氏真が問う。

 

 

「勿論。そっちは?

お前は新しい家族ができたんだ。

なのに、わざわざあたしに付き添わなくていいんだぞ?」

 

「いい。刹那の時間だったけれど、

幸福は実感できた。

姉上とはまだ蟠りがあったけど、

私はもう、許した」

 

「そっか〜.....あたしは一度でいいから男と一発やってみたかったなぁ」

 

「なら、素っ裸で歩けばいい。

荒くれ者が処女を奪ってくれる」

 

「いや!犯され願望があるわけじゃねぇよ!?どうせだったら天竜と.....」

 

「つまり弟子の中で天竜に抱かれなかったのは武蔵だけ..........ぷっ」

 

「あっ、手前ぇ笑ったな!?

..........ちょっと待て!

お前はどうなんだよ!」

 

「私は塚原卜伝の弟子時代に.....

あの頃は同期で対等だったし.....」

 

「ズルいぞお前!!

唯一のおぼこ仲間だと思ってたのに!!

というかその頃のお前ってガキだろ!

やっぱあいつ幼女好きだったか!」

 

「うるさい。死ねばいいのに」

 

「あぁ〜、押し倒してでも天竜とやればよかった」

 

「そんなに言うなら股を開いて。

鞘で刺せば、膜なんてすぐ破れる」

 

「そんな事したら、痛くて決闘どころか馬にも乗れねぇよ!第一あたしは処女を失いたいんじゃなくて、男とやりたいの!」

 

「そんな、女子が大声で.....」

 

 

氏真は呆れ顔をする。

 

 

「それなら僕が抱いたげよっか?」

 

 

突然声が聞こえ、煙玉と共に彼は現れる。

 

 

「「吽斗!?」」

 

 

双子忍者の片割れ、吽斗。

当時は全く判別できなかった2人だが、成長期に入り、姉の阿斗の方は大分女らしい身体つきとなり、誰が見ても、2人を判別できるようになっていた。

だが、通じなくなったのは入れ替わり術のみであり、2人の強さには更なる磨きがかかっていた。

とはいえ吽斗が女装すれば、またもや阿斗との判別がつかなくなるのだが.....

 

 

「天竜から姫武将殺しを習ってるから、女の子の抱き方くらいわかるよん?」

 

 

主に阿斗が男性を、吽斗が女性を相手にし、籠絡や暗殺をしたりする。まぁ、吽斗が女装して男性を相手にし、そのまま暗殺してしまう事もある。

 

 

「いや、やっぱいい.....」

 

 

阿吽姉弟の恐しさは天竜軍に広く知れ渡っている。あの双子に関わると、命の危機だとの事.....

 

 

「えぇ〜.....僕は武蔵お姉さんとやりたいなぁ。お姉さんはもう直ぐ死ぬんでしょ?勿体無いじゃん?

年貢の納め時って事で処女くれない?」

 

 

軽く言うが、とんでもない事である。

 

 

「うぅ.....」

 

「武蔵、抱かれれば?

吽斗なら、天竜と同じ美少年だし、

先導してくれる..........ぷっ」

 

「なんだったら、天竜に連絡入れてもいいんだよん?携帯持ってるし」

 

 

吽斗は自身が天竜から貰った携帯を見せびらかす。

 

 

「決闘は明日でしょ?

今日一晩楽しめるじゃん」

 

「うぅ.....あたし処女喪失がこんな形になるなんて.....鞘突っ込まれるよりはマシだけど.....」

 

「毎度あり!」

 

「頑張ってね武蔵..........ぷっ」

 

「どうせならヒコお姉さんも一緒に楽しもうよ!」

 

「..............................は?」

 

「そうだ!1人じゃ心細い!

お前も付き合え!命令だ!」

 

「私の方が格上だし.....

死ねばいいのに!」

 

「さぁ!行こう行こう!」

 

「「うぅ.....」」

 

 

近くの茶屋(ラブホ)に連行される2人だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

翌日、播磨。

 

 

「多少なりなら補助したげる。

2人合わせて6回分の手伝いをね」

 

 

中々の性豪である。

 

 

「まぁ、やばくなったら逃げるけど」

 

「「..........」」

 

 

味方になってくれるのは、ありがたいが、そこまでの期待はしない2人。吽斗が参戦したくらいで左馬助との決闘に変化が起きるとは思えないからだ。

 

 

「「「..........!?」」」

 

 

そんな差中彼女は突如現れた。

霧のように、煙のように、

そこには存在しなかったはずのそれは、

突然そこに形を成した。

 

 

「あら?懐かしいお顔がもう一つ。

お久しぶりね。忍者ちゃん。

貴方は阿斗かしら吽斗かしら?」

 

「弟の方だよ。

..........左馬助のお姉さんこそ、しばらく見ない間に、ますますおっかなくなってらぁ」

 

「ふふふ.....」

 

 

その女は微笑する。

 

 

「この場合においてのみ、

私は旧名を名乗りましょうか。

私は明智左馬助光春。

最強にして、最大にして、

最悪にして、最凶の吸血鬼です」

 

「「「..........」」」

 

「とはいえ、私も正確には吸血鬼ではない。

私は、果心居士から得た幻術を利用し、

己に封印されし茨木童子を引き出した。

さらに、魔界からの異邦人。

血の神マグラを喰らうた事で、私の身体は九割九分九厘が血.....液体となった。

さらにさらに。天竜さん.....いや、この場合は朧さんに輪廻の呪いをかけられ、異次元へと飛ばされ、400年間も輪廻旅行をする羽目になった。終わった時、私は不死身になっていた。

私はあの人から吸血鬼であると命名されたが、実際の所では、和製鬼なのか、悪魔なのか、哀れな人間もどきなのかも分からない、中途半端な存在になってしまった」

 

 

左馬助はそう言う。

 

 

「さて、今宵はどんな闘争をしましょうか?

今の私は大分気分が良いので、そちら側の条件で乗ってあげましょう」

 

「..........あたしらは.....」

 

 

武蔵が呟く。

 

 

「あたしらの力は、お前には到底及ばないって事は理解してる。戦えば確実に負け、殺されるって事がな」

 

「おやおや。さしもの武蔵も、ようやく学習という能力を身につけたようですね。パチパチパチ」

 

 

左馬助は軽く拍手する。

 

 

「..........お前を殺すのはあくまで天竜だ。

あたしらじゃあない」

 

「当たり前ですね」

 

「しかし、あいつの全力がお前の全力に及ばない事もあるかもしれない。だから、あいつの為にあたしらはお前の力をギリギリまで下げる事にする」

 

「へぇ」

 

「だからこれは決闘じゃない。

ただの嫌がらせだ」

 

 

 

武蔵は二刀を抜き、構える。

氏真もまた、愛刀と特殊鞠を構える。

吽斗はその手に謎の暗器を構える。

3人の腰には予備の刀が数本刺さっていた。

 

 

「前のようなヘマはしない!

しかも今回はただのイジメだ!

3人同時にかかるぞ!」

 

 

武蔵が叫ぶ。

 

 

「勿論!」

 

「異存はないよ」

 

 

氏真と吽斗も承知する。

 

 

「くふふふふふふ.....

くひひひひひひひひ.....」

 

 

だが、左馬助は邪悪な表情でケタケタと笑っていて.....

 

 

「御三人方。イジメの定義というものはちゃんとご存知で?」

 

「「「!?」」」

 

 

左馬助は言う。

 

 

「イジメというものは、加害者側に悪意があろうがなかろうが、被害者側がその悪意を感じ取ってしまった瞬間、それはイジメになる。

逆に言えば、被害者が悪意を感じ取らない限り、加害者が何をやろうが、それはイジメには値しない。

..........今の私は、悪意など微塵も感じない。むしろ好調である。

御三人方から伝わる殺気により、

私は興奮してしまっている。

素晴らしい。素晴らしいまでに濡れる」

 

 

邪悪な笑みを浮かべながらに言う。

 

 

「特別サービスです」

 

 

すると、左馬助の右手には愛刀『鬼包丁』。

左手には手持ち包丁が4本出現する。

 

 

「私は人間として貴方達と戦いましょう。私の得物はこれだけで、これ以上は増やしません」

 

「「「!!?」」」

 

「再生能力も使いません。

あくまで人間として.....」

 

「どういうつもりだ?」

 

 

武蔵が聞く。

 

 

「これは決闘でも嫌がらせでもイジメでもない。ただの遊び。ただの『暇潰し』です」

 

 

唇をペロリと舐め、挑発をしてくる。

 

 

「洒落せェ!!」

 

 

武蔵は出る。

 

 

「相変わらず挑発に弱い!」

 

「はっは〜!」

 

 

氏真と吽斗も出た。

 

 

 

 

 

 

 

そうして、暇潰しと称された合戦が始まった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

関東地方、上空。

 

 

「くそっ!播磨とは盲点だった!

お陰で日本中を飛び回る羽目になった!」

 

 

天竜は巨大な蝙蝠の翼を生やし、

高度3000Mの高さを羽ばたいていた。

 

 

「てっ.....天竜!!

もっと低く飛んで!!」

 

 

天竜の背中には吽斗の双子の姉、

阿斗がしがみついていた。

 

 

「大丈夫だ。落っこちてもちゃんと拾ってやるよ!」

 

「やだぁ!高過ぎるぅ!!

怖いよぉ!!降ろせぇ!!」

 

 

普段は生意気な阿斗も、人生初の超高度飛行には完全にビビってしまっているようだった。

 

 

「暴れると余計に危ないぞ」

 

「というか.....なんか息苦しい.....」

 

「やばっ!酸素薄くなってんのか。

500Mぐらい下がるか」

 

 

そうして高度2500Mの位置に低下する。

 

 

「ちょっと待ってろ」

 

 

天竜は飛びながら何かを召喚する。

そして、それを阿斗に渡す。

 

 

「これ何!?.....眼鏡!?」

 

「ゴーグルだ。ちょっくら速度上げるから、目がキツくならないように装着してろ」

 

「..........うん」

 

 

慣れない手付きでゴーグルをつける阿斗。

ついでに、彼女をベルトで固定する。

 

 

「そらっ!スピードアップ!!」

 

 

蝙蝠の形の翼が、鳥のような形になる。

それは燕の翼の形のようだった。

天竜は急加速し、

その速さは、およそ時速150km。

 

 

「ひゅ〜!!!」

 

「うぎぎぎぎぎぎ!!!」

 

 

人外の天竜はともかく、生身の阿斗にはかなりの負担だった。

 

 

「天竜天竜天竜天竜天竜!!!

止めて止めて止めて止めてぇ!!!」

 

「駄目だ!!1秒でも遅くなるだけで、武蔵達の寿命が縮まってしまう!

今は一刻も早く播磨に辿りついて、武蔵達を殴り飛ばしてでも光から引き離さなければ!!」

 

 

さらに時速180kmに加速する。

 

 

「せめて地上を走ってぇぇぇぇ!!!!」

 

「駄目だ!空の方が早い!」

 

 

さらに時速200km。

 

 

「ぎゃあああああああ!!!」

 

 

 

 

 

 

天竜は滑空しながら、冷や汗をかいていた。いくら剣豪の武蔵と氏真、一流忍の吽斗といえど、化け物の光に敵うとは到底思えない。

光の性格を考えて、武蔵達を一方的に追い詰めるような事はしないだろうが、始めは相手に勝たせて徐々に追い詰めて絶望を与えていくような奴なので、余計たちが悪い。

 

 

「まだ死ぬなよ!!

武蔵!ヒコ!吽斗!」

 

 

最高速度時速300kmに加速。

 

 

「助けてぇぇぇぇ!!!!」

 

 

阿斗の涙や鼻水やらが宙を舞った。

 

 




武蔵、氏真の捨て身の攻防。
面白半分で着いてきた吽斗。
邪悪な笑みを浮かべる左馬助。
時速300kmで滑空する天竜。
初フライトで死にかける阿斗。
次回あたり過去編決着。
次回予告
天竜一門の惨劇
〜左馬助と武蔵と小次郎と氏真〜

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。