天翔ける龍の伝記   作:瀧龍騎

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なんと最終回。
という事で内容も、
普段の倍の量になってます!


第五十六話 革命

京、御所。

 

 

「はぁ〜。1年ぶりかなぁ」

 

 

最後に訪れたのは織田家仕官の直前。

副将軍就任時には、本来ならば御所へ自ら報告しに行くべきであったが、面倒臭がってあえて避けており、足利義輝に任せていた。

 

 

「お待ちしておりました。副将軍様」

 

 

御所より黒装束の連中が何人も出てきて、天竜を取り囲む。これでは連行だ。天竜は両腕を連中に掴まれる。

 

 

「離せ。痛いぞ」

 

「いえ、無理矢理にでも連れて来いとの事でありましたゆえ.....」

 

「一刻も早く、目の前に連れ出せと.....」

 

 

連中の言葉に天竜はカチンとくる。

 

 

「離せと言うのが分からんのかぁ!!」

 

「「「!?」」」

 

 

連中は慌てて天竜より手を離す。

 

 

「急かされんでもすぐに行くわ。

怒り狂った麻呂関白は恐しいからな」

 

「はっ.....はぁ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

天竜は1人だった。

たった1人でこの御所へ来ていた。

何故彼が関白に呼ばれたのか分からなかった信奈らはおろか、家臣や十兵衛も意味が分からず、京周辺にて天竜の様子を伺っていたのだ。

唯一事情を知っていたのは、

天竜の弟子にして古参の家臣。

宮本武蔵のみであった。

 

 

「武蔵殿。天竜が関白様の軍師とは本当の事なのでありますですか?」

 

「....................本当だ」

 

 

天竜家臣へと成り下がった十兵衛。

目立たないが、天竜軍最有力の武蔵は同位の家臣仲間という事になる。

 

 

「3年.....いやもう4年になるか。

宇喜多の客将を辞め、数日だけ御所の麻呂に世話になってた事があるんだ」

 

 

相変もわらず口の悪い武蔵。

 

 

「まっ.....正確には、天竜を助けてくれた姫巫女。天竜はあの小娘に絶対的な忠誠を誓ってる。多くの主君を裏切ったあいつが唯一心から慕ってる奴だよ」

 

「です.....か」

 

 

口が悪過ぎて十兵衛も

冷や冷やとしてしまう。

 

 

「それで、それを利用した麻呂が天竜を軍師に取り立てたんだ。そして第一の命令として、織田への仕官を指示したんだよ」

 

「関白様が.....?」

 

 

あの関白が命令したと聞き、

十兵衛は驚きを隠せなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

二条城。

 

 

「近衛が?」

 

「うん.....」

 

 

信奈、良晴は幕府管領である今川氏真を訪ねていた。佐々木小次郎は死に、左馬助こと光は行方不明のため、昔の天竜を知るのは武蔵を除けばこの氏真だけだ。

 

 

「私は今川。

織田にはまだまだ恨みがある。

愚姉はまだしも.....

私はお前が嫌いだ」

 

「もう2年近い前の話よ。

未だに未練たらしく恨んでるのあんた?

小さいわね〜。

能天気な義元の方が立派に見えるわ

.....わっぷ!?」

 

 

良晴が慌てて信奈の口を防いだ。

 

 

「ごめん、氏真ちゃん!

たしかヒコちゃんだっけ?」

 

「死ねばいいのに」

 

「うえっ!?」

 

「それは友、武蔵と小次郎、天竜のみに許した呼び方。サルに呼ばれる筋合いは毛頭ない」

 

「うぅ.....」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「私は友に入らないのぉ?」

 

 

その時、霧と共に勘解由小路光が現れる。

 

 

「どの面下げてここへ来た左馬助」

 

「懐かしい呼び方。ハルって呼んでくれたらもっと嬉しいね」

 

「死んでも呼ばない。

小次郎の仇が抜け抜けと.....

お前が死んでしまえ」

 

「おや、怖い」

 

 

鋭い睨みをきかせる氏真と、

不気味な笑みを浮かべる光。

 

 

「貴方.....本当に十兵衛にそっくりね」

 

「あらあら、これは織田信奈様。

お久しぶりですね」

 

「確かに十兵衛に瓜二つ。

でも中身は真逆ね。十兵衛には貴方のようなドス黒い下衆さは滲み出てないもの」

 

「うふふ.....」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

御所。

 

 

「来たでおじゃるか.....天竜」

 

「はいはい来ましたよ」

 

「なんでおじゃるか!その態度は!!

麻呂が何故こうも憤っているのか、

理解しておるでおじゃるであろうな!」

 

「織田を裏切ったのに、

信奈を殺さなかった事?

小田原征伐をしたのに、

氏康を生かした事?

武田を裏切ったのに、

信玄を殺さなかった事?

上杉を騙してでも

服従させよという命令に背いた事?

最上を裏切り、伊達の信用を得て、

倒す機会があったにもかかわらず、

それをしなかった事?

蝦夷を、北海道国として統一した事?

多くの命令に背いた事?」

 

「全部でおじゃる!!」

 

 

近衛は激怒していた。

だが、恩人でもある。

関白が姫巫女の名を使って出した勅使により、北海道での戦闘は中断され、伊達も陸奥へ退いたのだ。

 

 

「今挙げたもの以外にも、

数多くの麻呂の命令を無視し、

多くの同僚を殺したでおじゃる!

その1人として、土御門久脩!!」

 

「あんた阿呆だろ。対立してる二族を同時に雇おうなんて、無理があるだろう。必ず抗争が起き、どちらかが倒される」

 

「黙るでおじゃる!!

土御門に限らず、松山主水、荒木村重等にも勝手に対立し、本猫寺とは共闘せずに倒してから勝手に懐柔したでおじゃる!!」

 

「織田包囲網。あんたにゃあ絶好の状況だったんだろうが、逆に俺にゃあ不都合があった。だから織田の味方のフリを続けた。猫ちゃんらは目下に置いといた方が色々と都合がいいしな。にゃあにゃあ」

 

「黙るでおじゃる!黙るでおじゃる!!

貴様程主君の言う事を聞かぬ軍師は

初めておじゃあ!!」

 

「.....御言葉ですが関白様。

貴方の命令もなかなかですがね」

 

「おじゃ!?」

 

「これですよ」

 

 

天竜は懐よりとある複数の書状を取り出す。

 

 

「これらは全て、俺がどこかの大名の世話になっていた時に送られしものばかり。

内容は全て『そいつを裏切って権力や領土を奪ってしまえ』だとか『今の主君を騙して殺してしまえ』だとかそんなの。

忠実に実行してたら、裏切り魔将軍なんて呼ばれるようになりましたよ」

 

「嘘つくなでおじゃる!!

貴様は殺せと命じた大名の多くを生かし、自身の配下に加えたでわないでおじゃるか!」

 

「それが頭のいい人のやり方だよん。

全部が全部を破壊すれば殺戮者。

それになりたくない俺は、

侵略者に留まっただけの事。

.....にしても、あんたも罪なお人だ。

前までは利用してた大名らを、

自身の都合で全部滅ぼすなんてねぇ」

 

「黙れでおじゃる!!

この国を本来の形に戻そうと尽力した麻呂に罪などあるものか!!」

 

「典型的な保守思想。

お前が戻したいのは、

源平などの武士が現れる前。

貴族の貴族による貴族のための政治

が行われてた頃だろう?」

 

「当たり前でおじゃる!!」

 

「それで藤原天下にしたいわけだ!」

 

「そうでおじゃ.....違う!姫巫女様を中心とした国家を作りたいのでおじゃる!!」

 

「ふくくくくくく.....

本音が出かかったな」

 

「ぐぐぐぐ!!」

 

 

 

 

 

 

近衛は刀の鞘を持ち、

それでいきなり天竜に殴りかかる。

 

 

 

 

 

 

「たかが陰陽師の分際で!

この関白に無礼な態度を!!

分をわきまえるでおじゃる!!」

 

 

近衛は何度も天竜を殴打する。

 

 

「..........その賀茂家を、たかが陰陽家に成り下げたのはどこのどいつだ.....皇族であった我らを除外したのは.....手前ぇら藤原家だろう」

 

「まだそんな口を聞くか!」

 

 

骨が割れるような音がしても、

近衛は殴打をやめない。

 

 

「気味の悪い奴じゃ.....

傷つけても傷つけても、

すぐに回復するとは.....」

 

「当たり前だ.....俺は月読命の仔だぞ」

 

「まだ言うか!!」

 

 

近衛は再び鞘を振り上げる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「よせ近衛!

それ以上の暴行は朕が許さぬ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「!?」

 

 

その言葉を聞き、

近衛は慌てて鞘を投げ捨てる。

 

 

「めっ.....滅相もないでおじゃる!

麻呂はただこの愚者を躾ていただけで.....」

 

「もうよい。下がれ」

 

「はっ.....はいでおじゃる!」

 

 

関白をこのように扱える人物はただ1人。

 

 

「大事ないか天竜?」

 

「姫.....巫女様」

 

 

所々に怪我をする天竜を気遣う姫巫女。

 

 

「心配入りません。

死ににくいのが取り柄です」

 

 

その言葉の通り、天竜の怪我はみるみるうちに回復してしまう。

 

 

「ふっ.....天竜が朕と同族であるという話は本当のようであるな」

 

 

穏やかな表情で、

姫巫女は天竜の頬に触れた。

すると、怪我の回復が倍以上に早くなる。

 

 

「なんて.....暖かい。

1年前と同じ。貴女様の御手は素晴らしき温もりを感じまする」

 

「すまぬ.....天竜。

朕が弱いばかりに近衛の横暴を許した。

お陰で其方にも、東の日の本の者達にも大いな迷惑をかけた。許せ」

 

「滅相もございませぬ。

関白の命令とはいえ、

東日本を征服したは自らの意志。

決して姫巫女様に責はありません」

 

「ふっ.....姫巫女とは不便じゃの。

皆が朕を恐れて、朕に気遣う。

誰も朕を責めず、朕を怒らぬ。

いっそ怒られた方がどれだけましか.....」

 

「姫巫女様.....」

 

「変わったな天竜。

もう朕をあの名で呼んでくれぬのか?」

 

「それは.....恐れ多い」

 

「ふっ.....其方が何を恐れる。

己以外を一度も恐れた事もないお前が」

 

 

 

「..........では失礼ながら、

方仁(みちひと)様」

 

 

 

 

それはこの姫巫女の諱だった。

 

 

 

 

「朧命よ.....」

 

「その名は残念ながら譲りました。

今はただの天竜にございます」

 

「そうか、天竜。

約束せよ。他者がいぬ時は、

互いにこの呼び方じゃ。

其方は朕の数少ない友であるからな」

 

「方仁様.....」

 

 

天竜は涙を流した。

そして、彼女以外には絶対に見せる事のない。憧れの眼差しを浮かべた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして、とある計画を思いついた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

二条城に話は戻る。

突如現れた光の他に、さらに驚くべき人物がそこを訪れる。信奈も良晴も想像しなかった.....

 

 

「武田信玄!?」「勝千代ちゃん!?」

 

「久しぶりだな織田信奈。

それから羽柴良晴」

 

 

天竜に裏切られ、天竜の配下に成り下がった信玄。遭われに思いつつも、強敵が1人いなくなった事に安堵をおぼえつつもあった。

それと.....

 

 

「貴方は.....?」

 

 

信奈は彼女を見る。

白い服装とは裏腹の綺麗な黒髪。

右手だけにした手袋。紅玉の瞳。

会った事のない美女。

 

 

「私の名は、上杉謙信」

 

「「えっ!?」」

 

 

驚くしかなかった。

只々訪れたならまだしも、

宿敵の信玄と共に現れたのだ。

 

 

「羽柴天竜がこの京にいるはずです」

 

 

謙信は言う。

 

 

「.....えぇ。御所にいるらしいわ」

 

「くっ.....止めなければいけません!」

 

「どうしてよ?」

 

 

謙信は手袋をした右手を押さえ、

汗を流しながら言う。

 

 

「私は.....この国を卑怯なやり方で支配し、人々に悪夢を見せ続ける魔王は織田信奈。貴方だと思っていました。

でも違った。真の魔王は天竜。

羽柴天竜秀長。魔王天竜。

その魔王が、姫巫女様に接触してしまった。なんとしても止めねばなりません!」

 

 

女神と魔王の接触。

 

 

「分かってるわ。でも止めようとしても、関白近衛が邪魔で近づけないわ」

 

「関白様か.....それは困った」

 

「ふん!場合によっては近衛だって無理矢理蹴飛ばして、姫巫女様を救出するわ!」

 

「そんな事ばかりしてるから誤解されるんじゃないのか?」

 

 

信玄が言う。

 

 

「これは.....」

 

 

良晴は驚いた。天竜を倒すという共通の目的のために、戦国最強の3人の大名が集結したのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「殿〜下〜」

 

「!?」

 

 

先程とは打って変わって、にこやかな表情で近衛に近付く天竜。

 

 

「うぅ.....貴様が麻呂を殿下と呼ぶ時は、何か良からぬ事を考えたに違いないでおじゃる!!」

 

「そんな馬鹿な事を。もしそうなら、姫巫女様に触れられた時に全部ばれているではありませんか」

 

「そうで.....おじゃるが.....」

 

 

姫巫女は神通力を持っており、触れた相手の怪我を治すだけではなく、心まで読み取る事ができる。

 

 

「それはそうと殿下。

私、貴方の養子になるので、

関白職を譲って下さい」

 

「はっ....................はぁ!!?」

 

 

突然の提案に驚愕する。

 

 

「話を聞けば殿下。

以前信奈脅されて、良晴を養子にして、良晴に関白職を譲るよう恐喝されたとか。そんな事になれば、藤原良晴が誕生し、信奈はさらなる権限を持ってしまう。そう嘆いていましたね」

 

「うぅ.....そうでおじゃる」

 

「では、私が関白に先になってしまえばいいでしょう。私は殿下の軍師ですし、心配は全くございませんよ?」

 

「うぅぅ.....そう言われても」

 

「良晴が関白になり、

もし信奈が太政大臣になったら、

どうするおつもりで!?」

 

「おっ.....織田信奈が、

太政大臣になるでおじゃるか!?」

 

 

太政大臣。

太政官の長。何の権限も持たない為、本来なら空き職になる事が多く、平安時代から不人気であったこの職は、多くの貴族らが嫌々押し付けあっていたという。

だが、それはある時を境に

大きく変わったのだ。

平氏の平清盛が太政大臣になった。

兵力、領地、財力。

ありとあらゆる力を備えていた彼が太政大臣の職を手にした事で、その職は初めて効果を発揮した。序列上、関白よりも高い地位にあるため、朝廷は完全に平清盛の乗っ取られてしまったのである。帝も奪われ、それまで威張りくさっていた関白らは完全に蔑ろにされたという。

 

 

「織田家は平氏。

太政大臣になる資格はあります。

天魔と呼ばれた平清盛の恐怖が、その再来である信奈によって再びもたらせられますよ?」

 

「ひっ.....ひぃ!!

どうすればいいでおじゃるか!!?」

 

「簡単です。私に関白職を譲り、

代わりに貴方が太政大臣になりなさい。

そうすれば、誰も手出しできなくなる。

東日本に絶大な権力を持つ私が関白になれば、もう誰も逆らえなくなる。

その上官として東日本を統治するのは貴方です殿下。そうなれば、殿下の天下統一の夢も、遠い未来ではなりますまい」

 

 

その天竜の提案に近衛は歓喜した。

 

 

「お前は天才でおじゃる!

麻呂が太政大臣!

麻呂が天下統一!

これ程素晴らしい策略は

他に聞いた事がないでおじゃる!」

 

「それはなにより」

 

 

和やかに答える。

 

 

「だが、お前の事じゃ。

他意があるのではないでおじゃるか?」

 

「そんなもの.....

あるわけないじゃないですか」

 

「念の為でおじゃる」

 

 

 

 

 

 

近衛は天竜の手を引き、

姫巫女のもとへ連れてゆく。

 

 

「姫巫女様、この者が良からぬ事を考えていないか、もう一度触れて確かめてはくれませぬでおじゃるか?」

 

「姫巫女.....様」

 

 

姫巫女はじっと天竜を見つめ、

行動に出る。

 

 

「許せ、天竜」

 

 

再び彼の頬に触れる。

 

 

「!?」

 

 

そして、

姫巫女は天竜の心から何かを感じ取った。

 

 

「何か分かったでおじゃりまするか?」

 

「..............................いや。

天竜に他意はない。

よきにはからえ」

 

「はっ.....ははぁ!」

 

 

近衛が土下座をし、

天竜もまた同じ行動をする。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その天竜を姫巫女は、

哀しげな表情をしながら見ていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

翌日。

なんと、中国の小早川隆景。

陸奥の伊達政宗。

三河の徳川家康までもが京を訪れる。

皆、関白の命によって呼び出されたのだ。

 

 

「ククク。魔将軍を倒すために皆が皆出てきて躍起になるとは、まとめてこの邪気神眼竜伊達政宗が根絶やしにしてくれるわ!」

 

「お静かに姫!

我ら伊達はただでさえ秀長様を裏切って印象が悪いのです。もっと弁えて下され!」

 

「ん?..........秀長様?

小十郎。いつからお前は魔将軍にそんな呼び方をするようになった?それといつもの服はどうした?なんか華やかなものなんか着て」

 

「これは.....その.....」

 

 

男装には違わないが、普段の地味な服装ではなく随分と可愛らしくなっていた。

実はこの小十郎。以前天竜に股間をまさぐられてからずっと彼の事を想い続けており、北海道での伊達の裏切りを誰よりも阻止しようとしていた人物でもある。

 

 

「股間なんか触られたら.....

嫁に行くしかないじゃないですか.....」

 

「ん?何か言った?」

 

「何でもありません.....」

 

 

その時、上杉ら一行と遭遇。

謙信の付き添いは直江兼続。

 

 

「あっ!小十郎殿!」

 

「げっ.....かねたん」

 

「かねたん言うな!

.....それはそうと梵天丸。魔将軍のやつに目を抉られたとは本当か?」

 

「ふん!逆に奴の目を毟り取って、

己の目の穴に埋め込んでやった!」

 

「違うでしょ姫。秀長様はわざわざ自身の目をもいででも、姫を本物にしてくださったのではないですか」

 

「だから何でお前は魔将軍を

擁護するにょだ!」

 

「いっ.....いや.....」

 

「あぁ、小十郎さまぁ」

 

 

うっとりする兼続。

 

兼続→小十郎好き。天竜嫌い。

小十郎→天竜好き。兼続を信頼。

天竜→小十郎可愛い。兼続可愛い。

というおかしな三角関係に.....

(注:この場合の「可愛い」は好意ではなく、いじり甲斐があって可愛いとの事)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして、この日。

近畿の織田。

甲斐の武田。

越後の上杉。

陸奥の伊達。

といった重鎮が御所に呼ばれたのだった。

そこには十兵衛の姿も.....

 

 

「十兵衛!」

 

「信奈.....さ.....殿」

 

 

「様」と言いかけたが、あえて言い直す。

 

 

「あんた天竜から聞いてないの?」

 

「いっ.....いえ、天竜とはあれ以来会っていないですから.....私も分からないです」

 

「そう.....」

 

 

大広間のような場所に呼び出された。誰も状況が掴めず、不安な表情をしていた。

 

 

「むぅ.....彼は一体何をする気

でしょうか.....」

 

 

同種であるせいか、側に服部半蔵を付けた家康は、天竜の気配をひしひしを感じ取っていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「関白殿下、おな〜り〜」

 

 

号令がかけられ、

騒がしい室内に関白が入場する。

だが、

 

 

「なっ!?」「えっ!?」

 

「そんなっ!?」「馬鹿な」

 

「嘘っ」「なんたる事!」

 

 

そこにいた誰もが驚愕する。

現れた直衣の格好をしていたのは、

天竜であった。

 

 

「くっ.....やられた!」

 

 

家康はすぐそれに気づく。

 

そして、彼はやがて口を開く。

 

 

「私が、新たに関白に就任した、

藤原天竜秀長にございます」

 

 

天竜はそう言った。そしてその直後、ドヤ顔の近衛が入室する。

 

 

「そして麻呂が、太政大臣に就任した近衛前久でおじゃる」

 

「太政大臣!?」

 

 

信奈も驚く。

 

 

「知っての通り、麻呂はこの天竜の主君でおじゃる。だから、天竜が管理している東方の日の本の管理は全て、この麻呂が持つでおじゃる!」

 

「「「!!?」」」

 

 

全て近衛前久の野望。

 

 

「そして、近畿の織田。四国の毛利も、麻呂に忠誠を誓えでおじゃる!この日の本を姫巫女様に代わって管理するのは余ぞ!」

 

「「「くっ.....!!」」」

 

 

隆景も、この事態に苦悶する。

 

そして、全員が理解する。天竜の裏にいた黒幕こそが、近衛であると。

 

 

「おう、天竜。

お前も何か言ってやれでおじゃる!」

 

「ふっ.....では」

 

 

そう言われて、彼はまた口を開く。

 

 

「俺は知っている。

毛利が織田に船を貸した事を」

 

「くっ.....!」

 

 

隆景がうねる。

 

 

「俺は知っている。

北海道攻めに上杉が協力していた事を」

 

「くっ.....!」

 

謙信がうねる。

 

 

「俺は知っている。

蜂起しようと、武田が裏で動いている事を」

 

「くっ.....!」

 

 

信玄がうねる。

 

 

「俺は忘れない。

伊達の裏切りを」

 

「ククク.....」

 

 

梵天丸は強がっているようで、

ガタガタと震えていた。

 

 

「俺は忘れない。

織田が俺にした、数々の無礼を」

 

「「くっ.....!!」」

 

 

信奈、良晴がうねる。

 

 

「俺は関白になった!

その俺が、最初に言いたい事がある!

それは.....」

 

 

皆が死を覚悟した。

 

 

「おじゃじゃじゃじゃじゃじゃじゃ!!!」

 

 

近衛が高笑いをした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「俺は関白を辞す事とする」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「........................................おじゃ!?」

 

 

事を理解した近衛。

 

 

「どっ.....どどどどういうつもりでおじゃるか天竜!?関白を.....辞す!?」

 

「はい。そしてその権利を譲りましょう。

我が弟、良晴に」

 

「えっ!?」

 

「だからといって、職なしになるわけじゃない。だから俺は、太閤になる!」

 

「「「!!?」」」

 

 

関白を辞した者がなれる太閤。

 

 

「太閤命令だ。近衛前久、

貴方から太政大臣職を剥奪する」

 

「おじゃあ!!?

どういうつもりでおじゃるか天竜!

貴様が麻呂になってくれと頼んだではないでおじゃるか!!」

 

「それは関白になるために、

お前を煽てただけの事。

なってしまった後はもう必要ない。

第一貴様のような強欲の塊に、

この俺が国を任せるわけなかろう」

 

「おじゃじゃじゃじゃじゃ!!!」

 

 

近衛は歯ぎしりをし、

ちゅうちゅう歯を吸う。

 

 

「姫巫女様じゃ!!

姫巫女様が許すはずないでおじゃる!」

 

 

近衛は言う。

 

 

「どこまで馬鹿なのだお前は?

あの時、俺の心を読んだ姫巫女様が何故何も言わなかったと思う?」

 

「まっ.....まさか!?」

 

「黙認されたのだ。俺がこうやってお前を追い詰める事をな.....」

 

 

近衛は大量の汗を吹き出す。

顔に塗りたくった白粉が落ちる程に。

 

 

「天竜.....さん?」

 

 

良晴が尋ねる。

 

 

「もうちょい待ってろ。

すぐに終わるからな」

 

「!」

 

 

すると、近衛は刀を抜いた。

 

 

「許さぬでおじゃる.....

よくも麻呂を裏切ってくれたな.....」

 

「裏切り魔将軍を作ったのはお前だろう」

 

「おぉぉのぉぉれぇぇ!!!!!」

 

 

刀を構え、向かってくる近衛。

丸腰だった天竜には絶体絶命!

 

 

「ばいちゃ!」

 

 

するといきなり、

天竜の前の空間に時空の穴が空いた。

 

 

「おじゃあ!!!?」

 

 

近衛は穴に向かって一直線に走り去り、やがて穴は閉じてしまった。

 

 

「てっ.....天竜さん!?

近衛は何処へ!?」

 

「『どこ』?『いつ』って聞いてくれ」

 

「!?」

 

「暦道陰陽術の最高峰。

『時空転移術』だ。

やっとのことさで

発動できるようになった。

まぁ、行き先がランダムだからいつに飛ばされるか分かったもんじゃないから、自分にも使えないがね」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

近衛が飛ばされた先.....そこは、

 

 

「ここは.....何処でおじゃるか?」

 

 

何やら見知らぬ時代に飛ばされていた。

周りの皆が皆の服装が古い。

 

 

「誰だ貴様!!」

 

「おじゃあ!?」

 

 

誰かに叫ばれる。

振り向いてみると、その者は自分にそっくりな顔をしていた。

 

 

「お前は入鹿の仲間のものか!!」

 

「いっ.....入鹿!?」

 

 

そう言われて見てみると、遠くの方で誰かが倒れて死んでいる。そして、この男。入鹿を斬ったと思わしき剣を持っていた。

 

 

「というと.....つまりお前は.....」

 

「怪しい奴め!

斬り伏せてやる!!」

 

「まっ.....待つでおじゃる!!

麻呂は関白の.....」

 

「でまかせを言うでない!」

 

「おじゃあ!!!?」

 

 

近衛はそのまま首を刎ねられてしまった。

 

 

「.....たり殿〜!.....鎌足殿〜!」

 

「おう巫女様!」

 

 

少女が走ってくる。

 

 

「中臣鎌足殿。それは?」

 

「分かりませぬ。だが、蘇我入鹿の手の者の可能性がありましたからな」

 

「うむ.....だがこの顔、其方に似てないか?」

 

「はっはっは!

ご冗談を、中大王巫女様。

こんな気色悪い白顔がわしに似てるわけないではありませぬか!」

 

「それもそうかな」

 

 

己の祖先に殺され、

生涯を終える近衛であった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

現代に戻る。

 

 

「さてと.....」

 

 

近衛は消え、ここは天竜の独壇場となる。

 

 

「小早川隆景にも、

上杉謙信にも、

武田信玄にも、

伊達政宗にも、

俺は言いたい事が沢山ある」

 

「「「「くっ.....!」」」」

 

「だが、後回しだ。

先に決着をつける相手がいる。

織田信奈!!」

 

「..........えぇ、分かってるわ」

 

 

信奈は分かっていた。

この2人こそが、

誰にも劣らない宿敵同士であるからだ。

 

 

「信奈。俺は貴様に感謝こそしている。

俺がこの地位に立てたのは、

最初に貴様が俺を召し抱えたお陰だ。

毛利でも武田でも上杉でも北条でもない。

貴様を選んだからこそ今がある。

そして、最愛の女性とも出会えた」

 

「そりゃあ良かったわね」

 

「信奈。俺は不思議な事に、貴様から何の魅力も感じなかった。確かに美人だが、女としてはとても見られなかった。何故良晴が好いたのか、疑問に感じる程にな。

それは.....貴様は俺が倒す者であると心が決めていたからであると思う。貴様を倒す事が、この日本における最大の目標であったと。

倒す事は殺す事ではない。

殺す事は幼子でもできるが、

倒す事は優れた者にしかできん」

 

「ふぅ〜ん」

 

「信奈。俺は貴様を倒す」

 

 

天竜は宣言した。

 

 

「戦でも起こす気?」

 

「それがどれだけ無意味であるか、

理解してないわけではあるまい」

 

「そうね.....」

 

 

今までの織田が好き勝手やれたのは、朝廷の後ろ盾を得ていたからだ。だが、今の天竜は朝廷そのもの。日本国を敵にするのだ。天竜の一言で国中の大名が織田になだれ込むだろう。

 

 

「でも、貴方を認めないのは

私だけじゃないわよ?」

 

 

ここには各国の『天竜の敵』

が集まっている。

唯一無二の味方は十兵衛ぐらいで、

四面楚歌状態となっている。

 

 

「それはそれは、怖い怖い。

一度は倒した強敵が合体して戻ってくるか。俺を独裁者にしたてて、姫巫女様救出を大義名分に俺を殺すか.....

 

 

 

笑死!

 

 

 

仙千代!凪!」

 

 

その時、鋼鉄の糸が何処からともなく飛び出す。大広間にいた信奈を除いた全員の首筋に巻き付く。

 

 

「「「!!?」」」

 

 

その中には十兵衛まで混ざっていた。

 

「私がちょいと糸を引けば、

全員の首が飛んじゃうぞ♡」

 

 

女郎蜘蛛現る。

 

 

「仙千代!?」

 

 

信奈は驚愕した。

1年前に目の前で自決した人物が

再び現れたからだ。

 

 

「くっ.....!こうなったら、

魔帝波状鮮血刺殺光線で.....」

 

「そうはいかない!」

 

「にゃっ!?」

 

 

邪気神眼による力で天竜を攻撃しようとした梵天丸の延髄に、凪が手刀を入れた事で彼女を気絶させてしまう。

 

 

「凪まで!?」

 

 

凪に至っては生首まで見た人物だ。

死んだとばかり思っていた2人が同時に信奈の前に現れたのだ。それだけで精神をおかしくさせる。

 

 

だが、何より気にかけなければならないのは、自分を除いた大広間の全員の首を鋭利な糸が締め付けているという事だ。

 

 

「あんたどういうつもり!?

良晴や.....十兵衛まで殺す気!?」

 

「そんな気ないさ。良晴と十兵衛の命を奪うのはお前の意志だよ。だから殺さないでくれ」

 

「天竜!!あんたは最後まで!

どこまで卑怯に腐り続けるつもりなの!?」

 

「何とでも言え。

戦国時代を終わらす為ならば、

いくらでも卑怯になってやる!」

 

 

良晴と十兵衛だけではない。

信奈には、

武田信玄。付き添いの高坂昌信。

上杉謙信。付き添いの直江兼続。

徳川家康。付き添いの服部半蔵。

伊達政宗。付き添いの片倉小十郎。

計10人の命がかかっている。

信奈の返答次第で、

10人の首が同時に飛ぶのだ。

 

 

「こんな手を使ってくるとは.....」

 

「逃げたいです〜!!」

 

「無念です」

 

「こんな所で死にたくはないぃ!」

 

「お姉様は隠れ博愛主義者。

きっと助けてくれるはず!」

 

「申し訳ありません姫。

この半蔵、一生の不覚!」

 

「すやすやすや.....」

 

「うぅ.....秀長様に殺されるなんて!」

 

「天竜さん!人質は俺1人で充分だ!

皆を解放してくれ!」

 

「信奈殿!天竜は誰も殺したくないんです!素直に彼に従って下さいです!」

 

 

それぞれのバラバラの言葉が、

信奈の精神をさらに狂わせる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ただ従えというのもあれだな。

.....よし、決めた。

土下座しろ信奈。

この俺に向かって、

他の大名らがいる前で。

この俺が安土城でしたように.....」

 

「くっ.....!」

 

「頭を惨めに地に着け、

そして降伏を宣言しろ!

そして、

俺の息子を返せ!!」

 

 

そう、天竜が織田を裏切るキッカケとなった出来事。卑怯にも、天竜の息子、拾を人質に天竜と立ち向かい、天竜は降伏したにもかかわらず、息子の返還はなかった。

天竜はそれを1度も忘れた事はなく、

いつか信奈を完全に屈服させ、

息子を奪い返そうと決心していた。

 

それが今なのだ。

 

 

「土下座しろよ信奈。

されで全てが終わる」

 

「うぅ.....」

 

「じゃあ皆には死んでもらおうか」

 

「!?.....待って!!」

 

「ふんっ.....」

 

 

信奈は尋常じゃない程の汗を垂れ流す。

天竜に降伏するという事は、

天下統一を諦めるという事。

今まで死んでいった、

義父の斎藤道三。

義母の松永久秀。

実母の土田御前。

 

そして、今もなお信奈の帰りを待つ

織田家臣団の皆々。

 

 

彼らの想いを全て踏み躙る事となるのだ。

「もののふ」ならば、良晴らを見捨てでも、天竜は倒さなければならない。

魔王には魔王で挑まなければならない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

だが、それは不可能だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

信奈は正座で床に手を着いた。

そして、徐々に頭を下げていく。

 

 

彼女は愛を知ってしまった。

最愛の者を失う苦痛を実感してしまった。

もう失いたくないという気持ちが、

勝ってしまった。

 

 

「信奈!!」

 

 

良晴が叫ぶ。

 

 

「ごめん良晴。ごめん.....皆」

 

 

信奈は頭を床に着けた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「降伏するわ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

信奈敗北。

 

 

「もう一度いえ。丁寧に」

 

「私、織田信奈は

太閤殿下に降伏します」

 

「俺に謝れ」

 

「数々の無礼をお許し下さい。

全て謝罪致します」

 

「最後にだ.....息子を返せ」

 

「承知しました」

 

 

丁寧な言葉とは裏腹に、

信奈は血が滲む程拳を握り締め、

瞳からは悔し涙が零れ落ちた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「....................終わった」

 

 

天竜はふと呟く。そして、

 

 

「終わった!終わったぁ!!俺の4年の歳月をかけた大計画がここに終結したぁ!俺の望む世界が!

今、この手の中に!!

俺の太閤殿下!

俺の日本国!

全てが俺のものなりぃ!

くひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃ!!!!」

 

 

 

 

 

 

天竜は恒例の高笑いをする。

だが、今回はどこか哀しげで.....

 

 

 

 

 

 

「ひゃひゃひゃひゃひゃひゃ..........

はぁ........................................

凪、皆の拘束を解け」

 

「はいはい」

 

 

大広間の全員に巻きついていた鋭利な糸が外れる。

 

 

「ふぅ.....」

 

 

天竜の緊張が解ける。

 

 

「本当に.....終わったのか」

 

 

そう呟いた天竜は、

身なりを整え、その場に正座する。

 

 

「織田信奈殿。

降伏宣言、お受け致します」

 

 

そう言い、天竜もまた頭を下げた。

 

 

「良晴の左大臣関白就任に伴い、

信奈殿には右大臣に就いてもらう」

 

「えっ?」

 

 

死をも覚悟していた信奈には予想もしなかった状況だ。

 

 

「なにぶん、私も未熟者。

1人で日本国をどうのこうのするには無理があると思われる。是非御力添え頂きたい」

 

「天.....竜?」

 

 

もう、天竜の言っている事が嘘なのか本当なのかも分からなくなっていた。

ただどちらにせよ、信奈に決定権がない事は明白であった。

 

 

「私はあんたに負けたわ。

好きになさい」

 

「ふっ.....協力感謝する」

 

 

天竜は立ち上がる。

 

 

「他の者に宣言しよう!

私に協力すれば、

いつでも好きなものをくれてやる!

地位も名誉も、金も領土も!

そして最後には平和な世をくれてやる!

だが、それを妨害したいなら、

いくらでも名乗り出るがよい!

私自ら叩き潰してくれる!」

 

 

だが、異議を唱える者は出ず。

 

 

「あぁ、私はなんたる魔王なのだろうか。先代の魔王すら、人々の記憶から消し去る程の邪悪ぶり。我ながらに悍ましい!」

 

「えっ?」

 

 

天竜の謎の言葉に良晴はふと反応する。

 

 

「いいだろう!

障害が消えたのなら、進むのみ!

目指す最初の目標は天下!

蝦夷の先から琉球の先まで征服しよう!

そして真の日本帝国を築こうではないか!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

太閤天竜。

 

彼は後に、姓を『豊臣』に変え、

豊臣天竜秀長が誕生する。

 

北海道から本州全土を掌握した彼は、

その後四国を屈服させ、

九州征伐に取り掛かった。

 

そして、海戦の末に琉球を落とす。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

太閤殿下就任からたった4年間で、

天竜は天下統一を果たした。

 

 

 

 

 

 

 

第一部 : 完

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして1人の神父は、

大天使の名を背負い、

魔王を殺す為に挑む。

 

 

 

 

そして1人の勇者は、

同じ人間として、

魔王を救う為に挑む。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

第二部に続く。

 




ご都合上、続きは二部に持ち越し。
別枠にしようかとも思いましたが、
面倒なのでそのままの枠で続きます。
2クールみたいなもんです。
では、第二部で再びお会いしましょう!
次回予告
あれから3年
〜嫌われ者か好かれ者か〜

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