天翔ける龍の伝記   作:瀧龍騎

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(*・.・)ノ'★.。・:*:・゚'☆スリープ♪ (((-_\)三(/_-))) ネムイ・・


第五十五話 天竜vs良晴(後編)

織田軍、鉄甲船10隻。

天竜軍、蒸気船1隻。

1世紀以上の性能の差がある船。

果たして、どちらが勝るか。

 

 

「ふぅ.....ふぅ.....」

 

 

天竜は黒船の船頭でやや息切れをしていた。黒船と一体化した事により、通常の倍以上の魔力を浪費する。

 

 

「ふぅ.....ふぅ.....ふぅ.....」

 

 

そして喋れない。

言語能力だけではない。

その他多くの機能が制限されている。

喋れず動けず、他の術も使えない。

黒船の支配で一杯一杯なのだ。

 

ふっ.....!

 

 

 

黒船が蒸気を上げ、

急速にて進行。

 

 

「敵軍船!こちらへ進行!」

 

「待ち構えて、大筒で狙いなさい!」

 

 

10隻全てが大筒を発泡する。

巨大な鉄の塊が黒船に向けて飛んでゆく。

 

 

「がぅあっ!!」

 

 

だが、黒船はさらにスピードを上げ、大筒の砲丸を次々と避けてしまう。

 

 

「くっ!!

第二弾装填!!」

 

 

だが、間に合わない。

 

 

「ががごあぁっ!!」

 

 

黒船は鉄甲船のうちの1隻に

正面衝突した!

 

 

「なっ!?」

 

 

鉄甲船は鉄板を貼り付けたとはいえ、

材質は木だ。

鉄製の軍艦などに正面から衝突なんてされれば、一溜まりもない。

この数分のうちに、

織田軍鉄甲船1隻が沈没する。

 

 

「くっ!!

船を横に向け、

再度敵軍船に大筒発射!」

 

 

黒船は正面衝突に伴い、

動けずにいる。

 

 

「ふぐぅ!ふぐぅ!ふぐぅ!」

 

「発射!!」

 

 

残った軍船より大筒が発射され、

動けない黒船に命中する。

 

 

「があああぁぁぁ!!!」

 

 

旧式の弾丸とはいえ直撃すれば、

黒船へ強烈な一撃を加えられる。

 

 

「がげごぎがぐがぐげへご!!!」

 

 

言葉にならない叫びを上げる。

天龍源一郎の方がまだ聞き取れる。

 

すると黒船に搭載された『ダルグレン式前装填滑腔砲』が鉄甲船に照準を向ける。

 

 

「よっ.....避けろ!!」

 

 

良晴が危険を察知し叫ぶが、

もう遅い。

 

 

「ばがぼごごがぁ!!」

 

 

全12門からなる砲門より、この時代にはない最新型の弾丸が発射される。

 

 

「そんなっ!?」

 

 

9隻中5隻が命中。うち2隻が沈没。

 

 

「馬鹿な.....嘘でしょ.....」

 

 

たった一撃で沈没する程の威力。

直撃を免れたものの、黒船の攻撃を受けた鉄甲船は、その防御力を活かす事すらできずに、大破してしまっている船もある。

 

信奈はその圧倒的な差に、膝を付く。

 

 

「これが.....本当の魔王の.....力」

 

 

恐怖のあまり、震えだす信奈。

信奈は表が強いのとは対象的に、

精神はすこぶる弱い。

そんな時。

 

 

「バトンタッチな」

 

 

良晴が気遣うかのように、

信奈の肩をポンッと叩く。

 

 

「良晴.....?」

 

「ここから俺がやるよ。

今度は俺が天竜さんと戦う」

 

 

良晴出る。

 

 

「理解しているのですか羽柴秀吉。

貴方は秀長は愚か、私達の誰よりも劣っている貴方が、あの羽柴天竜秀長に、魔将軍に本当に敵うとお思いで?」

 

「思わないよ?全く」

 

 

キッパリ言う。

 

 

「でも、戦えないわけじゃない。

俺がやれる限度をやり切るだけだよ」

 

「.....どうやって戦うおつもりで?

その腑抜けた能力をどう使うつもりで?」

 

 

皮肉たっぷりで言う。

 

 

「俺の好きなシュミゲーが戦国ものだけじゃないって事を見せつけてやんよ!

あと口の聞き方に気をつけろよ。お前は将来、俺の義妹にもなるんだからな!」

 

「なっ!?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「壱の船と弐の船!

黒船の両側になんとか付けてくれ!」

 

 

良晴の指令通り、鉄甲船が動く。

 

 

「がぎぎぎぐげごご!!?」

 

 

追いかけて来る鉄甲船を蒸気の力で振り切る天竜。だが、そのスピードがドンドン落ちていく。

先程の鉄甲船から放たれた砲丸が黒船のエンジンに損傷を与えたのだ。

 

 

「がぎぎげげぐががごぶば!!!」

 

 

天竜は踏ん張るが、黒船は減速する一方であり、逆に鉄甲船に追いつかれてしまう。

 

 

「両側からぶつけてやれ!!」

 

「ちょっと!

鉄甲船が壊れちゃうじゃない!

安くはないのよ!?」

 

「いいんだ!

あれで黒船は止まる!」

 

 

良晴の命令で、鉄甲船2隻が黒船の両側から衝突する。鉄製の軍艦に無理矢理衝突したせいで鉄甲船2隻は双方とも大破してしまう。だが、その衝撃により、良晴の目論見通り黒船の進行は停止した。

 

 

「よし!黒船に乗り移って天竜さんを確保しろ!」

 

 

そう命令する良晴。

誰もが諦めかけた中、良晴だけが正しい判断をして、逆に天竜を追い詰めてみせた。未来の知識とは違う、新たな才能を見せる良晴に、信奈はおろか、氏郷や利休までもが驚愕する。

 

両側から挟んだ鉄甲船より多数の兵が黒船の甲板上に乗り込む。

 

 

「いたぞ!羽柴秀長だ!」

 

 

兵達は船頭にて爪を突き立て構える天竜を取り囲む。

 

 

「「捕らえろ!!」」

 

「ぐがががが.....」

 

 

命令は生け捕り。

兵達は網やら縄やらを用いて天竜を捕縛しようと一斉に飛びかかった。

 

 

 

 

「ばがべ!!」

 

 

 

 

言葉になるかどうか微妙な言葉を叫ぶ。

そして兵達は気付く。

 

 

「これは.....!?」

 

 

船内に設置された、侵入者を射殺する為に設置された大量のバルカン砲を.....本来なら黒船に搭載されていなかった代物だ。天竜は黒船召喚時において同時にこれらも召喚し、黒船の武器としてこれらもまた操っていたのだ。

 

 

「じね!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「なっ!?」

 

 

良晴は目撃する。黒船に乗り込んでいった兵達が次々と蜂の巣にされ、倒されていく様子を.....

 

 

「羽柴秀吉。貴方の責任です!

どう責任を取るおつもりですか!!」

 

「くっ.....!!」

 

 

氏郷の指摘はもっともだった。

良晴は自分の命令で死なせてしまった兵達の事を思い、苦渋の決断を下す。

 

 

「この船を黒船に近づけてくれ。

俺自らが乗り込む!」

 

 

それは自殺行為に等しい。

 

 

「やめなさい良晴!!

レオンの言った事はそこまで重く受け止めなくてもいいのよ!?」

 

「姉様!!」

 

「大丈夫さ信奈。

俺なら天竜さんはすぐには殺さない。

ギリギリまで説得をしようと思う。何も天竜さんを倒すのは殺す事だけじゃないからな」

 

「良晴.....」

 

「この船を黒船へ!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

黒船に降り立った良晴。

甲板上に大量に転がる蜂の巣の兵達からは目を逸らし、まっすぐと天竜のいる船頭まで歩を進める。

 

 

「天竜さん.....」

 

 

良晴は思わず息を飲む。

天竜は異形な形相をしていた。

 

 

「がるぐぐぐぐぐぐぐ.....!!」

 

 

口は耳まで裂け、鬼歯が剥き出しになり、

黒船に繋がった爪から肩にかけては、この世の生物とは思えない程邪悪に変化して、

その瞳は血のように紅色。

 

 

「よ.....じ.....ば.....る.....」

 

 

地の底から絞り出したような低音波の声が引き出される。

 

 

「あんた.....何やってんだよ。

あんたがやりたかった事は.....

あんたがなりたかったのは、

そんな化け物みたいな奴かよ!」

 

「ぎざまにだにがばがる!

(貴様に何が分かる!)」

 

「分かるさ!

俺だって同じ未来から来て.....

この時代を愛して.....

この時代を変えようと必死に努力した!」

 

「どろぐだげでばがべでだいごどぼばる

(努力だけでは変えられないものもある)」

 

「確かにそうかもしれないさ」

 

 

何故か聞き取れる良晴。

普段五右衛門のカミカミ語を聞いているお陰なのか、オンドゥル語を理解しているためなのか。

 

 

「でもやり方がだってあるだろ!

皆を不幸にして、そこまでして得る天下って何なんだよ!!」

 

「※貴様の言う不幸な者とは誰だ?

信奈か?勝千代か?氏康か?

謙信か?梵天丸か?貴様か?

指でも数えられる程度であろう。

日本国民全員と比べれば、

ほんの些細なものだ」

 

 

※翻訳済み

 

 

「多くの幸運の為には小さな不幸はしょうがないって言うのか!」

 

「※当たり前だ」

 

「そんなの俺は認めねぇ!

俺は全ての幸せを願いたい!」

 

「※甘えるな!!」

 

「!?」

 

「※幸運だけの世界などあってたまるか!

幸運と不幸はコインの裏表。

幸運があるから不幸がある。

不幸があるから幸運がある。

この因果関係は何よりも大切だ。

当然、貴様の行動の中にも

不幸な者はいたはずだ!

今川家はどうだ?

義元はともかく、残された一族の多くは殺され、氏真も浮浪者になった。

朝倉家はどうだ?

元は友好があった浅井は、まだ善処されたのに対し、完全に対立していた朝倉は一族ごと皆殺しだ。

六角は?三好は?宇喜多は?

毛利は?長宗我部は?伊達は?

武田は?北条は?伊達は?

貴様の行動で不幸にならなかった者は1人もいなかったのか?

.....十兵衛はどうだ?」

 

「くっ.....!」

 

「※貴様が信奈を求めるあまり、

十兵衛を蔑ろにし続けた。

それこそ本能寺の変の原因になるのではないか?俺が十兵衛を求めなければどうなったであろうな?」

 

「..........分かってるよ」

 

「...........」

 

「俺だって無知じゃない!全部の幸運を拾うなんて無理だって事くらい分かるさ!

でも守りたいんだ!」

 

「※なら、貴様はそれを極めてみろ」

 

「えっ?」

 

「※貴様の歴史の変え方。

俺の歴史の作り方。

どちらも当たっていて、

どちらも間違っている。

正解など存在はしない。

俺は貴様に俺の中の常識を押し付け、

貴様もまた貴様の中の常識を押し付ける。

それでいいだろう。

俺を倒しに来い良晴。

俺に貴様の常識を押し付けろ。

この俺様を貴様の常識で屈服させてみせろ。

この俺様を否定してみせよ!

俺もそれに全力で応えて

叩き潰してやる!!」

 

「天竜.....さん」

 

 

良晴は刀を抜く。

 

 

「分かったよ.....

俺はあんたを倒す!」

 

「※構えがなっちゃいないな。

時間があれば鍛えてやったのに.....

剣道の先生の経験はないが、

貴様相手ならできたかもしれない」

 

「弟子いたんじゃなかったっけ?」

 

「※あれは弟子という肩書きで仕えさせていた家臣だよ。あいつらは始めから基礎以上のものが出来上がっていたからな。技を盗み、教えてもらってたのは俺の方だ」

 

「へぇ〜」

 

 

そう言って良晴は走り出す。

 

 

「天竜ぅ!!!」

 

「よじばるぅ!!!」

 

 

勇者と魔王は向かい合う!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「準備は整った」

 

「「!?」」

 

 

良晴は動きを止める。

黒船の上空にあるものを見つけたからだ。

 

 

「あれは!?」

 

「でぃぎゅう!!」

 

 

天竜はそれに気付く。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「利休!?」

 

 

信奈もまた気付く。

黒船上空に浮かぶ黄金でできた巨大な剣が利休によって作られた事を。

信奈らが乗った鉄甲船はすでに黒船を離れており、その黄金の剣が発動した所で信奈らには何の影響もない。それを承知で信奈の言い分を無視し、氏郷らの判断で黒船より距離を開けさせられたのだ。

 

 

「利休!!何をするつもり!?」

 

「..........(秀長は止まった。動きの遅い私の攻撃も通じるはず。今こそが秀長を殺す絶好の機会)」

 

「あの船にはサルもいるのよ!?」

 

「..........(秀長の退治がいかに重要か彼も理解しているはず)」

 

「なっ!?」

 

「姉様。秀長を倒す為に殉死する事はとても名誉であります。神も彼を許すでしょう」

 

「..........狂ってるわ。貴方達」

 

 

利休や氏郷の言葉に信奈は思わず恐怖心をおぼえる。

 

 

「この妄執者が!」

 

 

その女は信奈と氏郷らの

中間に立ちはだかる。

 

 

「蘭丸!?」

 

「「..........」」

 

「貴様らの下衆さは目に余るものがある。

とても弟を侮辱できたものではないな!」

 

「忘れてました。羽柴秀長と秀吉。

それに継ぐもう1人の来訪者。

同じく未来より現れ、この世の規律を乱す異端者。

森水青蘭。いや、森蘭丸」

 

「私はただの観察者。歴史を変えるつもりも作るつもりもない」

 

「どうですかね」

 

「ちっ!」

 

 

蘭丸は刀を抜く。

 

 

「余計な真似はするな!

いざとなれば、私は観察者から殺戮者になる覚悟はある。今ここで貴様の首を刎ねてやる事もな!」

 

「くっ.....!」

 

「..........(残念ながら。術式はとっくに発動している)」

 

「なっ!?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「嘘だろ!?

あれを黒船にぶっ刺す気かよ!」

 

「ばぼぐぞばま!!

(あのクソアマ!!)」

 

 

天竜も良晴と戦闘する余裕はなかった。

 

 

「くそっ!!」

 

「よじばるぅ!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

そして黄金の剣は降下する。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「良晴ぅ!!」

 

 

遠く離れた鉄甲船の上で、黄金の剣により貫かれた黒船が真っ二つになり、沈没していく様子を信奈は絶望した表情で見ていた。

 

 

「.....してやる」

 

「?」

 

「殺してやる!!」

 

 

信奈は利休の襟元を掴み上げる。

 

 

「信.....奈.....」

 

「死んで良晴に謝りなさい!!」

 

 

そして利休の細い首を握り締める。

 

 

「かっ.....かはっ!!」

 

「落ち着いて下さい姉様!

そんな事をしても意味がありません!」

 

「黙りなさいレオン!!

貴方も殺すわよ!!」

 

 

信奈は涙を流していた。

瞳も充血し、吸血鬼のようだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「駄目だな。それを殺すのは俺の仕事だ」

 

「「「!!?」」」

 

 

真上から声が聞こえた。

 

 

「天竜!!?」

 

 

天竜はいた。背中に蝙蝠の翼を生やし、腕で良晴を拘束している。

 

 

「..........(まさか、剣が突き刺さる直前に船との接続を切ったのか!?)」

 

「その通り、そっちが海戦で挑んできたから海戦で応じてやったのに、途中で別の戦法使って来るんだもんな。だから俺も本来の戦い方をさせてもらうわ」

 

「くっ.....良晴を離しなさい天竜!」

 

 

信奈が叫ぶ。

 

 

「やなこった。

こいつは丁度いい人質だ。

利用させてもらうよ!

くひゃひゃひゃひゃひゃひゃ!!!」

 

「天竜ぅ!!!」

 

「..........天竜さん?」

 

 

信奈が憤る中で、良晴だけが冷静に疑問に抱いていた。

 

天竜の言う理論が通れば、自分なんかはさっさと殺して、まとめて信奈らも殺してしまえばいいのだ。

だが、彼は黄金の剣が突き刺さる直前、全力で自分を助けたのだ。

その天竜の行動が疑問なのだ。

 

 

「構いません。鉄砲隊用意」

 

「何っ!?」

 

「レオン!!」

 

 

人質ごと俺を殺す気か!?

 

 

「ふざけないでレオン!!

良晴まで殺す気!?」

 

「言ったでしょう。

ここで羽柴秀長を逃がせばもう倒せる機会など早々やって来ない。その絶好の機会を恋沙汰などで潰す気ですか?」

 

「本当に狂ってるわ貴方!!

貴方も利休と同じなのね!!」

 

「撃ち方用意!」

 

 

もはや信奈の命令すら聞かない。

 

 

「姉様をここまで弱くしてしまったのは、やはり羽柴秀吉。ここでまとめて始末しなければ.....」

 

 

複数の鉄砲の銃口が

天竜と良晴に向けられる。

 

 

「おいおい!マジかよ!!?」

 

「ちっ.....!」

 

 

すると天竜は何を思ったか、

良晴の拘束を解いてしまう。

 

 

「えっ?」

 

 

良晴はそのまま鉄甲船の甲板上に落ちる。

 

 

 

 

 

 

 

 

「てっ.....天竜さん!?」

 

「ふっ.....俺らしくない」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「撃てぇ!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

複数発の銀の弾丸が天竜の身体に撃ち込まれる。翼にも穴が空き、天竜もまた甲板上へ落下した。

 

 

「かっ.....ぐはぁっ!!

....................痛つつつ.....」

 

 

それでも死なない。

いや、死ねない。

 

 

『天竜様大変です!』

 

 

そんな時、天竜の服の懐の中で奇跡的に無事だった無線機に通信が入る。相手は蠣崎慶広だった。

 

 

「何だ..........こんな時に.....」

 

『伊達が同盟を破り、北へ進軍!

箱館が襲撃されております!』

 

「なっ!?」

 

 

梵天丸の裏切り。

 

 

「なんだってこんな時に!!」

 

 

確かにかかって来い的な事は言ったが、

このタイミングか!?

ここまで卑怯だとは思わなかった!

次から自分の裏切りは自重しよう!

 

だが次があるかどうかも微妙な状況だ。

 

 

「次弾発砲用意!」

 

「くっ!!」

 

 

陸に逃げ道もなく、

泳げない彼には海への逃げ道もない。

翼は折られ、空にも逃げられない。

 

死こそがこの恐怖からの逃げ道。

 

 

 

 

 

「.....クソッタレ!」

 

 

 

 

 

「撃てぇ!!!」

 

 

氏郷の号令と共に、

銀の粒が天竜の身体を抉っていく。

 

 

「ごぼあぁっ!!!」

 

 

噴水のような吐血が天竜より発せられる。

 

 

「はぁ!.....はぁ!.....はぁ!.....」

 

 

鉄砲による衝撃で右脚が千切れ、

左腕が原型を留めぬ程ズタズタにされ、

顔の右側の頬肉が抉られている。

とても人間が生きていられる

状態じゃない。

 

 

「くっ.....!!

まだ生きているのか!?」

 

「98..........94.........................88.....」

 

「!!?」

 

 

何を数えている!?

まさかここからまた再生するのか!?

 

 

「.....73.....70..........66....................59」

 

「うっ.....撃てぇ!!!」

 

 

再び銀の弾丸が天竜に撃ち込まれる。

 

 

「44...............39.....36....................28」

 

「うわあああああああぁぁ!!!」

 

 

恐怖にかられた氏郷は自ら鉄砲を持って天竜のもとまで駆け寄る。

 

 

「.....17..........14....................9」

 

「死ねっ!!ドラキュラァ!!」

 

「..........7.....5..........3.....」

 

「だっ!!」

 

「いっ.....」

 

 

氏郷の発砲した弾丸は一直線に天竜の頭部に直撃し、口から上を粉々に破壊した。

 

 

「..........」

 

「はぁ.....はぁ.....はぁ.....」

 

「..........」

 

「死ん..........だ?」

 

「..........」

 

 

死人に口無し。

 

 

「あはっ.....あはははははははは!!!」

 

 

氏郷は高笑いをする。

 

 

「そんな.....」

 

 

良晴は変わり果てた姿の天竜を見て

愕然とする。

 

 

「やった!ドラキュラが死んだ!

宣教師様すら倒せなかった化け物を!

この私が!!」

 

 

勝手に1人で演説を始める。

 

 

「この手柄があれば.....日の本も.....」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その時だった。1隻の鉄甲船が信奈らが乗る鉄甲船に突進してきたのだ。

 

 

「なっ.....何っ!?」

 

「一体何で!?」

 

「嘘っ!?」

 

「..........!?」

 

 

氏郷、信奈、良晴、利休も状況が

掴めない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「本当に、私がいないと

駄目駄目な夫ですね!!」

 

 

衝突してきた鉄甲船の船頭に乗っていたとある姫武将。額のとても広い.....

 

 

「十兵衛!?」「十兵衛ちゃん!?」

 

 

天竜の正室第一候補、

明智十兵衛光秀。

 

 

「私の夫を返してもらうです!!」

 

 

江戸湾より船を進行させ、

北海道まで天竜を救出しに来た十兵衛。

 

 

「残念だったな明智光秀!

ドラキュラはすでに死した!」

 

 

自信満々に言い放つ氏郷だったが、

十兵衛は笑顔で返す。

 

 

「馬鹿ですね。天竜がその程度じゃ死なないくらい、私が1番よく知ってますです。

天竜!

いい加減に死んだフリをやめなさい!」

 

「はいはい」

 

「「「!!?」」」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

バリッ!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「!!?..........うぎゃあああああああああああああああああああああああ!!!」

 

 

氏郷が悲鳴を上げる。

氏郷の左腕より大量の鮮血が噴き出る。

 

 

「なんぼか楽になった」

 

 

氏郷の左腕をボリボリと食べながら、天竜は立ち上がる。右脚も左腕も再生され、食事をする口の上も徐々に再生されていく。

 

 

「沙九把・秉無・覇寿于羅!」

 

「うぐっ!?」

 

 

氏郷の腕の傷口が塞がる。

 

 

「腕代だよん。

処女の肉だから結構美味かったし」

 

「ぐぐぐ.....」

 

「十兵衛、海戦のリベンジマッチだ。

こいつらに泡吹かせてやれ」

 

「はいです!」

 

「くっ!」

 

 

信奈はうねる。

 

 

「十兵衛.....ちゃん」

 

 

良晴はふとある事を後悔した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「双方待たれよ!!」

 

「「「!!?」」」

 

 

織田水軍と天竜水軍を割って入るようにとある小舟が出現される。

 

 

「何よっ?」

 

「何だ?」

 

「あれは?」

 

「何です?」

 

 

信奈、良晴、天竜、十兵衛

誰も分からない。

 

 

 

 

 

「我らは関白様、近衛前久様の使者です。

双方共刀を納め、武装を解除しなさい!

これ以上戦闘を続ければ、

双方を朝敵と見なして処分する!」

 

「くっ.....!」

 

「ちっ!」

 

 

信奈も天竜も構えを解いた。

 

 

「何で.....近衛が?」

 

 

だが、使者の言葉は続く。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「なお、関白様が軍師。

副将軍、羽柴天竜秀長様は、

至急、御所に戻れとの事!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「「「....................えっ?」」」

 

「ちっ!..........余計な事を.....」

 

 

そこにいた全員.....いや、蘭丸を除いた全員が、初情報に驚愕する。

 

 

 

 

 

「いいだろう。帰ってやるよ。

姫巫女様のもとへ.....」

 




またもや中身がゴチャゴチャの中で、
異例の最後となりました。
次回何故か最終回!?
次回予告
革命
〜時代は変えるものではなく、作るもの〜

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