天翔ける龍の伝記   作:瀧龍騎

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心の洗濯♪(ノ*'-')ノ┣心━心━心┫


第五十三話 邪気眼竜

最上義光は絶壁に立たされていた。

味方であったはずの天竜が最初から敵であった事が判明し、一気に劣勢へと立たされていた。

天竜の今回の所業、

裏切り者というより、間者だ。

最上のもとで味方であるかのような顔で近づき、全てを奪っていく。

 

 

「おのれ羽柴秀長!!!」

 

「報告します!

南方より上杉が!!」

 

「なんだとっ!?」

 

 

あの上杉が自ら動いた!?

義理人情はどこに行った!!

 

東方、北方より天竜伊達軍

南方より上杉軍。

西方は日本海であるため逃げ道なし。

 

 

「このままでは武田の二の舞ではないか!」

 

 

裏切られると予見していたにもかかわらず、何もできなかった。「裏切り魔将軍」という名に手玉に取られたのだ。

 

 

「こんな馬鹿な話があってたまるか!

山形城に戻るぞ!

あそこから体制を立て直す!」

 

「報告します!

山形城が落ちました!」

 

 

「..............................は?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

山形城。

 

 

「わぁ〜凄い。

貴方の言う通りに攻めたら

簡単に落ちちゃいました!」

 

 

幸村が歓喜の声をあげる。

 

 

「いえ.....」

 

「何で天竜様のもとを離れてしまったんですか藤堂さん?」

 

「分かりません。ただ、今の私は朧さんに従ってゆくだけ.....」

 

「好きなの?」

 

「.....はい」

 

「分かりますよぉ〜。私も天竜様好きです!いつか結婚してもうために毎日牛乳飲んでます!」

 

「何故?」

 

「そりゃあ成長するためです!

天竜様に相応しいよう背を伸ばしたくて!」

 

「..........牛乳じゃ背は伸びませんよ?」

 

「え!?」

 

「牛乳は骨を丈夫にしますが、

背は伸ばせませんよ?

背を伸ばすなら.....

軟骨とかでしょうか?」

 

 

背を伸ばすならコラーゲンだ。

 

 

「分かりました!!

これからは軟骨を主食にします!」

 

「.....はぁ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

数時間後。

最上義光は山形城を放棄し、他の支城を求めて出羽国中を逃げ回っていたのだが、天竜伊達上杉の連合軍に追い詰められ、ついに捕らえられた。

 

 

「ふえ〜。上杉からの援軍って聞いたから誰かと思ったら、あんたか」

 

「あんたとはなんですか。失礼な」

 

 

愛と正義の甲冑服美少女戦士 直江兼続

 

 

「『謙信に代わってお仕置きよ!』」

 

「..........?」

 

「すまん。なんでもない」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「んで、兼続もここに用か?」

 

 

2人は捕らえられた義光に会う前に、梵天丸らと合流するため、米沢城を訪れていた。

 

 

「呼び捨てにしないで下さい。不愉快です」

 

「面倒臭せぇクソガキだなぁ」

 

「クソガキとはなんですか!!

 

「ガキだガキ。

所詮色恋も知らねぇ未通女(おぼこ)だろ」

 

「うっ.....未通女かどうか別として、

私だって恋心は知ってます!!」

 

「ほほう。じゃあ誰だよ。

お前の想い人ってぇのは?」

 

「そりゃあ、小じゅ..........なっ、何で貴方に言わなきゃならないんですか!」

 

「ちっ!弱みを握れると思ったのに」

 

「どこまで下衆なんですか貴方」

 

「言われ慣れて今じゃもう褒め言葉だよ」

 

「はぁ.....」

 

「それにしても『小じゅ.....』か。

まさか片倉小じゅ.....」

 

「わぁ〜!!!わぁ〜!!!」

 

 

大声で喚き散らす兼続。

 

 

「はいはい頂きました。

見事に引っかかったなお前」

 

「しまった!?」

 

「カッカッカッカッカッカ!

精々俺の機嫌を損なわないよう、

気をつけるこった!」

 

「ぐぐぐ.....!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

米沢城本丸。

そこにて2人の魔王(?)が会見を行う。

 

 

「クックックック!

よくぞ来た魔将軍!

我こそが黙示録のびぃすと!!

邪気眼竜、伊達政宗である!!」

 

「はじめまして。

副将軍の羽柴秀長にございます」

 

「....................ありっ?」

 

 

中二病全開の部屋で中二病全開の挨拶をする梵天丸だったが、普通の返し方をされた梵天丸は一気にペースを崩される。

 

 

「この度は最上征伐にあたり、

我が羽柴軍と同盟を組んで頂き、

誠にありがとうございます」

 

「うっ.....うん」

 

「今回における策略。

順調に遂行できるに当たったは、

伊達殿の全面協力によるもの。

とても感謝している」

 

「.....うん」

 

「この秀長。今戦において其方との間に友情なるものが見えました。これ以降も良きお付き合いをば.....」

 

「..........」

 

 

梵天丸は凄いつまらなそうな表情をしていた。折角出会った自分と同じ臭いの者が思ってた以上に普通過ぎてガッカリしているのだ。

 

 

 

 

 

 

「.....んなわけなかろう!!」

 

「!?」

 

「我は魔将軍なるぞ!!

乳臭きガキ風情などと

友情があるなど虫唾が走る!

我と友になれるは地獄の閻魔のみ!

断じて貴様ではない!!」

 

 

急に天竜が中二病モードになる。

 

 

「おっ.....おのれ魔将軍!」

 

 

咄嗟に小十郎が反応するが、

 

 

「.....クク

クーーーーーーーークックックック!!!

そう!それでこそ魔将軍!!

この黙示録のびぃすとの

永遠の宿敵であろう!!

魔王織田信奈の前に、

貴様から倒してくれよう!」

 

 

梵天丸復活!

 

 

「ったく、これでいいのかい片倉殿?」

 

「おっ..........恩にきます」

 

 

中二病の遊びに乗るのは大変だ。

 

 

「とはいえ、最上が倒れたばかりの陸奥で、この俺が貴様と戦争を起こすとなると、調整も効かず、あやふやな戦闘となり得よう。今だけは勘弁してやろうではないか!」

 

「ククク、同義である。

だが、我はまだ未完成体!

完全体のびぃすとへと覚醒し時、

魔将軍すらをも飲み込む化け物となろう!

それまで精々御祈りでもしておけ!」

 

「はいはい」

 

 

今の所は仮同盟を組む事となった。

 

 

「ところで.....

兼続さん!用があるのでは?

片倉殿に!!」

 

「へあっ!?」

 

 

キッと兼続が天竜を睨み付けるが、

彼は知らん顔をしている。

 

 

「何でしょう直江殿?」

 

「へっ.....そのっ.....あのっ.....」

 

「小十郎に何の用だ『かねたん』」

 

「かねたん言うな!」

 

「へぇ〜、かねたん。

くっくっくっく.....」

 

「うぐぐぐ.....」

 

 

ニヤニヤ見てくる天竜に殺意を覚える。

 

 

「直江殿?」

 

「あっ.....ええと.....

そう!めご殿に会いに来ました!

めご殿に会わせて下さい!」

 

「はぁ.....」

 

「ふっくくくく.....」

 

 

必死に笑いを堪える天竜に更なる

殺意を覚える。

 

 

「めごには会わせん。

かねたんは越後に帰れ」

 

「なっ!?」

 

「そうだ帰れ帰れかねたん」

 

「死ね!!」

 

 

悪乗りし始める天竜に思わず

抜刀しそうになる。

 

 

「まぁまぁ。

そう言っては直江殿に失礼ですよ」

 

「小十郎殿.....」

 

「お優しいですね片倉殿!!

かねたん殿を嫁に貰ってあげては?」

 

「本当に死ね貴様!!」

 

「かねたん五月蝿い。早く帰れ」

 

「貴様も黙れ梵天丸!!」

 

「えぇ〜.....」

 

「くひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃ!!!」

 

 

梵天丸のテンションは下がり、

兼続は顔が真っ赤にになり、

天竜は爆笑している。

小十郎は話について行けない。

 

 

「っひゃひゃひゃひゃ..........ん?」

 

 

天竜が小十郎を見て何かに気づく。

 

 

「何か?」

 

「....................まさかな」

 

「いいから帰れ!

いつまで居座る気だかねたん!」

 

「かねたん言うな!

言われなくても帰る。

だが、その前にだ。

コホンッ、

謙信様は其方をとても気にかけおられる。魔王に堕ちるか、正義の竜となるか」

 

「我は魔王となる!」

 

「いいから聞け!精々魔将軍のような外道には決してなるなという事だ!」

 

「悪い子代表が俺か」

 

「自覚ないんですか!」

 

「あるよん」

 

「ぐぐぐ.....」

 

 

もう殺意しか湧かない。

 

 

「うん分かった。帰れかねたん」

 

「そうだ。帰れかねたん」

 

 

気がピッタリ合っている2人。

 

 

「うわ〜〜ん!!」

 

 

涙目で飛び出していく兼続だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「さぁて。五月蝿いかねたんも帰った所で、こっちの本題に入らしてもらおうか」

 

「ほう」

 

「その前に.....片倉殿」

 

「?」

 

 

天竜は立ち上がり、

小十郎の前までやって来る。

 

 

「あの.....?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

天竜は小十郎の股間に触れた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ひゃっ!!!?」

 

「やっぱお前女か」

 

 

悟空のような性別の確かめ方だ。

 

 

「男って聞いてたのに、

女にしか見えないからどっちかなと」

 

「なっ!?.....なっ!?.....なっ!?」

 

「流石は俺の神眼!

美少女を見分けるのは確実だな!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

真っ赤になった小十郎にはたかれる天竜。

 

 

「痛っ..........!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

痛がる小十郎。

 

 

「すまん。また無意識に.....」

 

 

天竜を殴れば逆に怪我するのでタブーだ。

 

 

「うううぅぅぅ....................!!

いやあああああぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」

 

 

泣きながら出て行く小十郎。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「最低だなぁ〜お前」

 

「お褒め頂きありがとう」

 

「..........それで、小十郎を追い出してまで我に尋ねたい事とはなんだ?」

 

「気づいてたか」

 

「ククク。

この邪気眼で見えぬものはない!」

 

「見えねぇだろ。眼帯してるし」

 

「うっ!..........我が邪気眼は眼帯の下からでも通ずるのだ!!」

 

「それは邪気眼じゃない。

遺伝による眼球の異常だ」

 

「違う!これは邪気眼!」

 

「いや、日本人の母と南蛮人の父から産まれたお前が持ち得た特徴だ」

 

 

梵天丸の主張をあくまでも否定する天竜。

 

 

 

「嘘だ!我は邪気眼竜政宗!」

 

「お前はただの人間だ!!」

 

 

 

その言葉が矢となり、

梵天丸の胸に突き刺さる。

 

 

 

「お前はただの弱い人間だ。本物になれないからこそ、演技をして本物に近づこうとするだけの偽物!」

 

「違う..........我は.....本物」

 

「偽物だ!」

 

「うぅ.....」

 

 

涙を流す梵天丸。今日天竜が泣かせた女性3人目であるが、これが一番深い意味をなしていた。

本物を演じる事で生きる糧にしてきた。

偽物となってでも生き抜いた。

その根源を否定されたのだ。

 

 

「お前は本当ではない。偽物だ」

 

「うぅ.....」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「だが、偽物が本物より劣るとは限らない。必ずしも本物が強いとは言えない」

 

「!?」

 

「トンビが鷹を産むという言葉があるように、親の背中を見習って真似をした子供が絶対に親を越えられないとは言えない。

ハッキリ言うが、

お前の父の伊達輝宗より、

娘の伊達政宗の方が優れていると言える」

 

「.....?」

 

 

天竜の言いたい事が全く分からない。

 

 

「えぇと..............................。

あぁ〜!まどろっこしい!

これだから説明は苦手だ。

聞くぞ梵天丸!

貴様は偽物で構わない!

偽物でも充分強い!優れている!

正直このままでも構わないさ!

だが.....

貴様が本物を望むというなら.....」

 

「我は.....」

 

 

梵天丸は涙を拭き、叫ぶ。

 

 

「我は邪気眼竜政宗!!

始めから偽物も本物もないわ!!

どうしても我を本物にしたいというのなら、やってみるがよい!」

 

「いいのか?」

 

「構わん!!

....................というのか何をするのだ?」

 

「了解と受け取った」

 

 

天竜は梵天丸の眼帯を外す。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

天竜は梵天丸の左目に指を突き刺した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「!!!?」

 

「お前の左目を頂く!」

 

「ぎゃあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!」

 

 

梵天丸が悲鳴をあげる。

 

 

「姫!?」

 

 

騒ぎを聞きつけ、小十郎が飛び込む。

 

 

「なっ!!?」

 

 

小十郎の目に飛び込んだのは、丁度天竜が梵天丸の紅の眼球を引き千切った所の光景であった。

 

 

「よっ.....よくも貴様!!!」

 

 

刀を抜く小十郎。

 

 

「動くなっ!!!」

 

「!?」

 

「術式の途中だ。失敗はしたくない!」

 

「術式!?」

 

「ぎゃああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!」

 

 

梵天丸は今もなお泣き叫んでいる。

 

 

「すまない。麻酔を使ってやりたかったが、それでは成功率は限りなく低くなる..........ふっ!」

 

 

すると、天竜は自身の左目にも指を突き入れ、眼球を引き出した。天竜と梵天丸双方の鮮血が辺り一面に飛び散る。

 

 

「偽物が本物になる時だ」

 

 

自身から引き出した左目を、

梵天丸の左目の穴に嵌めた。

 

その瞬間!梵天丸の左目の傷が回復する。

 

 

「あっ.....あっ.....」

 

「おめでとう.....

これで君は邪気眼竜政宗だ」

 

 

片目を失った天竜が言う。

 

 

「あっ.....あれ?」

 

 

今までの痛みが嘘のようにも無くなり、

不思議だけが残る梵天丸。

 

 

「ふぅ.....」

 

 

逆に体力を使い果たしたらしい天竜は血だまりの上に腰を落とす。

 

 

「片倉殿。すまないが包帯かなんかを持ってきてくれないかい?」

 

「..........」

 

「持ってきてやれ小十郎」

 

「はっ.....はい!!」

 

 

 

 

梵天丸に言われ、

小十郎が慌てて包帯を取りに行く。

 

 

 

 

「....................我に何をした!?」

 

「言っただろう。

本物の邪気眼をくれてやった」

 

「本物!?」

 

「俺はサタンの実子だ。

その目玉の力はまさに邪気眼と言える」

 

「サタンの.....実子!?」

 

「包帯持ってきました!

めご様よりお借りしたのですが.....」

 

「すまない」

 

 

天竜は包帯を受け取ると、

自身の左目の穴を覆うように頭に巻く。

 

 

「ほれ。これやるよ」

 

 

それは梵天丸から引き千切った元の目玉。

 

 

「うぇっ!」

 

「受け取ってやれ。これはお前の実父から受け継ぎしお前の財産だ。

いらねぇなら俺が食うが?」

 

「....................いる」

 

 

天竜から目玉を受け取る。

そしてそのまま口に入れてしまった。

 

 

「あっ.....」「姫!」

 

「うえぇ.....ぶにゅぶにゅしてる。

鉄の味がする.....」

 

「吐き出して下さい姫!」

 

 

だが、梵天丸は目玉を

ゴクリと飲み込んでしまった。

 

 

「クークックックックック!!

大義であるぞ魔将軍!!

この新しき邪気眼は大変調子が良い!

左目を中心に身体中がカァーッと熱い!」

 

 

梵天丸の左目は相変わらずの紅色であったのだが、瞳孔の色が黒色から黄金に輝いていた。

 

 

「そりゃどうも。その目は黄金や金剛石なんかよりも高価なものなんだから大事にしろよ」

 

「うむっ!」

 

「ふぅ.....」

 

 

天竜は小型の水筒を取り出し、それを飲む。

中身は血だった。

 

 

「あぁ〜〜〜.....少しばかし楽になった。でも先日に式神の大量召喚した副作用なのか、再生速度が驚くぐらい遅いな」

 

 

天竜が包帯を外すと、目玉の形だけは形成されていたが、瞳の色もない、ただの球体の状態であった。

 

 

「..........」

 

「心配するな。

血さえ飲めばあと2日で治る」

 

「心配は全くしてない」

 

「あっそ.....」

 

 

天竜は立ち上がる。

全身血だらけで、白軍服も台無しだ。

 

 

「眠たい。一泊止まらせてくれ」

 

「じゃあ馬小屋を貸してやる」

 

「もうそこでいいや」

 

「姫.....流石に失礼しすぎませんか?」

 

「むぅ.....邪気眼をくれた恩もあるしな.....

部屋を一つ用意させよ

あそこがいい。我の祈祷部屋だ」

 

「あの髑髏やら剥製やらがたくさんある不気味な部屋ですか!?」

 

「そこでいいよ寝られるなら」

 

 

小十郎に連れられ、フラフラしながら付いて行く天竜。

 

 

「一つ聞く魔将軍」

 

「ん?」

 

「何故我にコレをよこした?」

 

「ふふっ.....」

 

 

やや微笑して彼は答える。

 

 

「昔の俺に似てんだよお前は」

 

「魔将軍に?」

 

「俺も元中二病だ。ある意味今もな。

だから本物を求める側の気持ちは

よく分かるつもりだ。

だから.....お前に与えてやりたかった。

同時に、

本物の苦しみを共有してほしかった。

それはお前の武器であると同時に、

お前に課せられた楔だ。

どう使おうともお前に任せるよ。

いらなくなったら言うがいい。

また引きちぎってやるから」

 

「....................うっ.....うむ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

翌朝。

 

 

「刀よ浮け!

..............................むぅ。

料理よ出ろ!

..............................むぅ。

魔物召喚!

..............................むぅ」

 

「姫?」

 

「小十郎。魔将軍を起こしてくれ。

邪気眼の使い方が分からぬ」

 

「はぁ。その前にめご様を知りませんか?朝から見えないのですが.....」

 

「めごが?....................まさか!?」

 

 

慌てて祈祷部屋に飛び込む。

 

 

「めごっ!!」

 

「姉者?」

 

「ひゃふへてふれ!」

 

 

そこには、

めごとミイラ男状態の天竜がいた。

 

 

「姉者。仲間がいた」

 

「違う!それはただの怪我人だ!」

 

「ひいはらほほへっ!」

 

 

 

 

 

やっと解放される天竜。

 

 

 

「まだ.....か」

 

 

眼球は瞳とおぼしき濁りが出るまで回復したものの、まだ失明状態である。

 

 

「邪気眼の使い方を教えろ?」

 

「うむ。全然仕組みが分からぬ」

 

「ふぅ。じゃあ行くか。

実験体に会いに」

 

「実験体?」

 

「行くぞ山形城に」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

山形城。

幸村と高虎によって落とされた後、

捕らえられた義光が収容されていた。

 

 

「よう義光、お久!」

 

「ぐぐぐ.....羽柴!」

 

「惨めだなぁ。奥羽を1度は掌握するかとまで言われた

悪党が、姪っ子とどこぞの陰陽師に滅ぼされてん

だからなぁ」

 

「ぐぐぐ.....!!」

 

「さぁ梵天丸。こっちへ来い!」

 

 

梵天丸が状況も分からず、

恐る恐る近づく。

 

 

「梵天丸、叔父を恨め。怨念を込めろ。

憎悪こそが、その邪気眼に力を与える」

 

「憎.....悪?」

 

「ふざけんな!こんなチビガキ連れ出して何をやるつもりだ!!」

 

「チビガキじゃない!!

我は邪気眼竜政宗なるぞ!」

 

「邪気眼?はぁ?馬鹿か?

そんな嘘をまだ通してんのか?」

 

「嘘じゃない!!

我は本物になったのだ!」

 

「はっ!偽物だろう。

幻想ばかり見て現実を見れないガキが!」

 

「我は本物だ!!!」

 

「いい加減認めろよ!

この父親殺しがっ!!」

 

「!?」

 

 

梵天丸は真実を知らない。

 

 

「うぅ.....うぅ.....

うわああああああああああああああ!!!」

 

「!?」

 

「叔父上など死んでしまえ〜!!!」

 

 

梵天丸が眼帯を外す。

 

 

「窒息して死ねぇ!!!」

 

「がふっ!!?」

 

 

急に義光に異変が起きる。

 

 

「ぐがっ!!?」

 

「死ね!死ね!死ね!死ねぇ!!」

 

「がぶぁっ!!?」

 

 

泡まで吹いて苦しむ義光。

 

 

「ククククククク!!」

 

「ががががぐぐぐぐがが!!」

 

 

痙攣まで始まっている。

 

 

「はい。ストップ」

 

 

天竜が左手で梵天丸の邪気眼を覆う。

 

 

「ぷはぁっ!!!

はぁ!.....はぁ!.....はぁ!.....はぁ!.....」

 

「どうだ義光?

これでも梵天丸は偽物か?」

 

「羽柴..........梵天丸に何しやがった!」

 

 

梵天丸の背後に憑く天竜は死神にも見えた。

 

 

「この子を本物の獣にしたまで。

本物の魔獣にな」

 

「くっ.....!!」

 

「手を離せ魔将軍!

我は叔父上を殺す!!」

 

「ダ〜メ♡

義光にはまだ使い道あるんだ。

お前の一念で抹殺する事は許されない」

 

「この化け物が!!」

 

「「!?」」

 

「化け物が!

そうだ!お前は人間じゃねぇ!

化け物の人間同士の争いに

関わるんじゃねぇ!」

 

「..........」

 

「よせ!本当に死にたいのか!?

これ以上この子を追い込むな!」

 

「消えろ!消え失せろ化け物!

死にさらせぇぇ!!」

 

「うわああああああああああああ!!!」

 

 

涙を流しながら彼女は叫ぶ。

 

 

「そうだ!我は化け物だ!

黙示録のびぃすとだ!

死ね、人間んんんんん!!!!」

 

 

 

 

 

 

 

その時!

天竜の手を突き破って何かが出た!

 

それがそのまま義光の肩を貫通する。

 

 

 

 

 

 

「痛った!!」

 

 

それは天竜の手すらも突き破る威力。

 

 

「これは.....」

 

 

無意識に出した梵天丸も驚いている。

 

 

「ぐあああああああああ!!!!」

 

 

肩に穴の空いた義光は痛みのあまり、

転げ回る。

 

 

「『空裂眼刺驚』

眼球内の体液に高圧力をかけ、瞳の向ける先に発射する技だ。原理的には水圧カッターのようなものだな。

痛ってててて.....」

 

「これが.....邪気眼」

 

 

梵天丸が不気味に笑みを浮かべる。

 

 

「クークックックックック!!!

素晴らしい!素晴らしい!

これで我は魔王にまた一歩近づいた!」

 

 

梵天丸はまた視線を義光に向ける。

 

 

「くたばってしまうがよい!」

 

「よせ!梵天丸!!」

 

 

これは天竜にとっても誤算だった。

制御しきれない強大な力を持ってしまった者がどのような末路を辿るのか、理解していたつもりなのに。

 

 

 

 

 

「魔帝波状鮮血刺殺光線!!!」

 

 

 

 

 

なんか変な名前付けやがった!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「!!?」

 

 

義光には当たらなかった。

2人の間にある者が入り込んだからだ。

 

 

「梵天丸!!」

 

「はっ.....母上!?」

 

 

梵天丸から放たれた技は義姫の頬をやや傷付けていた。

 

 

「梵天丸!」

 

「ちっ.....近づくな母上!

母上も殺してくれる!」

 

「この馬鹿娘!」

 

 

義姫は梵天丸に抱きつく。

 

 

「えっ....................」

 

「この馬鹿娘!馬鹿娘!

まだ幼く、未熟なのに、

ここまで追い詰められて.....」

 

「母上?」

 

「私が悪かった。

私がお前を追い詰めてしまった」

 

「..........うううぅぅぅぅ」

 

 

梵天丸が泣く。

 

 

「うわあああああああああああ!!!」

 

 

赤子のように母の胸で泣く。

 

 

「羽柴殿。この子を支え、

助けて頂いた事には感謝します。

ですが、この子をこれ以上危険な道に追い込めようというのなら、私は貴方を殺す!絶対に許さない!」

 

「ふっ.....これが母親の力か」

 

 

天竜はふと義光のもとへ歩み寄る。

 

 

「男を噛むだけで気持ち悪いが、

腕で妥協しとくか」

 

 

義光の腕に噛み付く天竜。

 

 

「がふっ!?」

 

 

しばらく痙攣していた義光はやがて大人しくなると、天竜のもとに跪く。その瞳は紅色で.....

 

 

「ご命令を我が主」

 

「今日から梵天丸に仕えよ。

梵天丸を主として忠誠を誓え」

 

「はっ!」

 

 

今度は梵天丸に跪く義光。

 

 

「これで義光はお前の眷属だ。

煮るなり焼くなり好きにしろ。

まぁ、俺なら利用するがね」

 

 

天竜は落ちていた梵天丸の眼帯を拾い、彼女に投げ渡す。

 

 

「..........魔将軍?」

 

「天竜だ。迷惑かけたな。体制を整え次第移動するよ。伊達家とは同盟関係継続でいいのかな?」

 

「魔将軍.....天竜。これから何処へ?」

 

「蝦夷」

 

「蝦夷!?」

 

「蝦夷も東日本の一部だ。

陸奥から薩摩までが天下と言われているが、俺なら蝦夷から琉球まで取る。場合によってはそれ以上もな」

 

「..........」

 

「一緒に来るかい?」

 

「!?」

 

 

梵天丸はしばらく思考を重ねた後、

義姫の顔を見て、覚悟を決める。

眼帯をつける。

 

 

「クークックックックック!!!

我は黙示録のびぃすと!

邪気神眼竜伊達政宗である!!」

 

 

邪気眼から邪気神眼に

グレードアップしてる。

 

 

「貴様は我を倒すもにょだ!」

 

「逆だ逆」

 

「あっ.....我は貴様を倒すもにょだ!

精々首を洗って待つがよい!」

 

「ふふっ....................

くひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃ!!!

笑死!貴様如きが私を倒すだとぅ?

馬鹿も休み休み言え!

我こそは魔将軍!

いや.....魔神ドラキュラである!

何人も寄せ付けぬ、

森羅万象の侵略者である!!

軽くあしらってやろう!!」

 

 

天竜もまた中二病で返した。

 

 

「という事だお母さん。

梵天丸はもうとっくに子離れした戦士だ。

充分に立派だよ」

 

「その.....ようですね」

 

「それでは、また会おう」

 

 

霧となって彼は消えた。

 

 

「ククク」

 

「羽柴.....秀長!」

 

 

義姫はじっとそこを睨みつけてた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「すまん。

やっぱ蝦夷攻略に協力してくんね?」

 

 

格好つけて去ったのに、

また戻ってきた。

 




中間でなんかゴチャゴチャしてた気がします。
なんかおかしな描写があるかもしれません。
なんだかんだで、
敵なのか味方なのか分からない立場になった梵天丸。
今後のお付き合いに期待。
今回は色んなパロが混じってた.....
次回予告
天竜vs良晴(前編)
〜まだこれは始まりに過ぎない〜

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