天翔ける龍の伝記   作:瀧龍騎

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モゥダメポ゙━━。゚(。ノωヽ。)゚。━━ォ!!!


第五十二話 東北征伐

宣教師らとの騒乱後。

甲斐のとある牢屋にて。

 

 

「うぅ..........殺して.....」

 

「駄目だ。君を殺したら、君の怖いお兄さんが俺を殺しに来るんだろ?」

 

「兄さんは..........強い。

必ずドラキュラを..........殺す」

 

「うへ〜怖い怖い」

 

「うぅ.....」

 

「君を眷属にする手もあったがやめたよ。

君をこのまま捕虜していた方が、

人質として役立ちそうだしね」

 

「おのれ.....」

 

「拘束を解いてあげよう。

暴れないと約束してくれたらね。

俺は捕虜には寛大でいたい。

ある程度の制限はかけるが、

君を自由にしてあげてもいい」

 

「どういう.....つもりだ?」

 

「ふふっ.....」

 

 

このミッシェルを上手く手懐ければ、そのガブリエルとやらを出し抜く突破口になりえるだろう。

 

 

「この.....ジャップめ!」

 

 

次の瞬間、天竜は小太刀をミッシェルの首筋に突き付けた。

 

 

「男の捕虜ならこのまま掻っ斬っていた。

女だから1度我慢してやった。

次その言葉を吐いてみろ。

死以上の恐怖を味合わせてやる」

 

「くっ.....!」

 

「まっ、カブラルじゃないんだから。やたらと差別用語を使えばろくな事にならないって事。覚えといた方がいいぜ?君が女じゃなければ、もう4回くらい殺してるから」

 

「.....くそっ!」

 

「大人してろよ?俺ちょっと戦争してくるから。次暴れたら、野武士連中の中に素っ裸で放り出すからな」

 

 

そうして天竜はそこを後にする。

 

 

「.....兄さん」

 

 

拘束の解かれた彼女は十字架を握り締め、

ひたすら神と兄に祈った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

甲斐

 

 

「さてさて。東北征伐を始めますかね」

 

 

その為の作戦会議だ。

 

 

「東北.....奥羽における最大の勢力。

それは出羽国の最上義光、

それと陸奥国の伊達政宗だ。

だが同時に相手するには骨が折れる。

幸い両者は対立している。

だから片方に敵を絞り、

もう片方と同盟を組もうと思う」

 

 

最上と伊達か.....

 

 

「普通に考えて伊達では?伊達に味方するとなれば上杉の協力も得られるかもしれませんし」

 

 

幸村が言う。

 

 

「あぁ。梵天丸に一目置いている謙信なら、頼めば増援もくれるかもしれない。

だがな.....」

 

 

相手はあの伊達政宗だ。

 

 

「俺は梵天丸を放置する事にも危機感を持っている。極々短期間にて陸奥の統一を果たした最年少の大名。

対処しなければ後々厄介な相手となる。

それに目的は奥羽の獲得だ。

梵天丸が服従するとも考え難い」

 

 

とても難しい選択だ。逆にここで最上を選べば、上杉が同盟を破棄して攻めてくる可能性もある。

 

 

 

 

 

 

「....................よし、決めた。

手紙を書く。誰か書き物を持ってきてくれ」

 

 

天竜が選択した味方とは.....

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

陸奥、米沢城。

 

 

「政宗様!甲斐の羽柴秀長より文が!」

 

「うぇっ!?」

 

 

使者より手紙を受け取る梵天丸。

天竜とは堺での決闘にて、

天竜の式神の大蛇に飲み込まれて以来、

恐怖しかなかった。

 

 

「どうされたのですか姫?」

 

 

梵天丸の親友にして有能な家臣、

片倉小十郎が尋ねる。

 

 

「羽柴天竜から.....文が来た」

 

「裏切り魔将軍から!?」

 

 

武田信玄程の者を謀反にて倒してしまった事もあり、裏切りの名は日本中に滞っていた。

 

 

「それで、何と?」

 

「羽柴天竜は....................」

 

 

手紙には衝撃の事が記されていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

出羽、山形城。

 

 

「殿!羽柴秀長は何と!?」

 

「ふふっ.....魔将軍め」

 

 

 

 

義光はニヤニヤと微笑む。

 

 

 

 

 

「奴から同盟の誘いが来た。

共に伊達政宗を討とうとな」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

話は米沢城に戻る。

 

 

「羽柴天竜は敵となった。叔父最上義光と組み、この陸奥を攻めてくる」

 

 

手紙を読んだ梵天丸は家臣にそう告げた。

 

 

「魔将軍が.....来る」

 

 

武田を服従させ、上杉すら退けさせた天竜軍。勢いとハッタリだけで成り上がった伊達軍が敵う相手なのだろうか?

 

 

「小十郎.....ちょっと」

 

「姫?」

 

 

弱々しい声の梵天丸。

彼女に連れられ、部屋の外へ出てゆく。

 

 

「小十郎.....元気づけて」

 

「は?」

 

「お願い!」

 

「はぁ.....分かりました」

 

「梵天丸は何者?」

 

「姫は伊達政宗。陸奥の大名です」

 

「違う!ちゃんと!」

 

「はぁ.....」

 

「梵天丸は何者!?」

 

「姫は邪気眼竜伊達政宗!

黙示録のびぃすと!

天上天下最強の魔王です!」

 

「よしっ!やる気出た!!」

 

「はぁ.....」

 

 

溜め息が出る。だがこの程度でやる気が出るなら安い苦労だ。

 

梵天丸は部屋に戻る。

 

 

「クークックックックックッ!!!

よく聞け者共!

我、伊達政宗は魔将軍との決戦を決意したぞ!例え叔父上と魔将軍が結託しようが所詮は烏合の衆!

この黙示録のびぃすとの!

優れた戦略の前に平伏す事となろう!」

 

「「「おおおぉ〜!!!」」」

 

 

伊達軍は大将の気分次第で大きく実力が変化する。だから家臣らは空気を読んでとにかく梵天丸の太鼓を持ってそのテンションを上げさせる。

 

 

「でもさ、相手も戦略を得意にしてる魔将軍。デタラメとハッタリが専売特許の伊達に、奴を出し抜く戦略なんて存在するのか?」

 

 

空気の読めない伊達成実が言う。

 

 

「ククク。それなら心配ない。ある者に魔将軍の弱点をちゃんと聞いておいた!」

 

「「「おおおぉ〜!!!」」」

 

「その為にも、成実。

君の力が必要となる!」

 

「?」

 

 

悪魔の仔、羽柴天竜秀長。

自称黙示録の獣、伊達梵天丸政宗。

 

本物と偽物の戦いが始まる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

山形城。

 

 

「はじめまして最上義光殿。

副将軍の羽柴秀長です」

 

「あぁ。よろしく頼む」

 

 

2人の悪人が手を結ぶ。

 

 

「中部や関東の守護にも人出を回しておりますので我が全軍を導入しての進撃はできませんが、よろしいですか?」

 

「構わない。魔将軍程の者が味方になってくれるだけで頼もしい」

 

「ありがとうございます」

 

 

一礼をし、

天竜はその場を後にする。

 

 

「その.....殿.....」

 

「なんだ?」

 

 

家臣に尋ねられる義光。

 

 

「本当に羽柴秀長と同盟を組むのですか?」

 

「そうだが?」

 

「奴は武田を騙し討ちした

裏切り魔将軍ですよ!?

我らとていつ裏切られるか.....」

 

「だからお前は二流なのだ」

 

「!?」

 

 

出羽国の悪党は言う。

 

 

「裏切られる前に裏切ってしまえばいい。どうせ裏切られるのなら、奴の油断している背後を突き、梵天丸ごと滅ぼしてやる」

 

「!?....................本当に可能でしょうか?」

 

「奴の目的はこの奥羽の侵略。

この伊達征伐。最上に協力するというのは名目だけで、侵略は自分の力だけで全部やってしまうだろう。手柄も独り占めしてな。そして伊達を滅ぼし次第、引き返して逆に攻めてくるだろうな。

そこの虚を突く!!

羽柴が梵天丸を倒す直前の、

まさに最高の状況において、

この俺様が全力で横槍を突く!

これぞ漁夫の利!

羽柴秀長さえ倒せば、あの武田信玄さえ俺を敬うようになる。利用されているだけ上杉謙信も同様にだ。

奴らを担ぎ上げれば関東制圧、

そして京への上洛も、

夢ではなく現実となる!

やり方は裏切り魔将軍と変わらぬのに、奴の悪名の高さのお陰で俺はとんだ英雄様だ。

これは.....一石に対し、二鳥どころでは済まないだろうな。十鳥でも百鳥でも!

芋づる式に利益が出てくるであろう!

この俺様の『裏切り返し』の策略。

一流であるとは思わんか?」

 

「すっ.....凄い!!

そこまでお考えだったんですね!!」

 

「そして!梵天丸が死ねば!

お義も帰ってくる!

天下人になれば.....

義姫との結婚だって.....夢ではなくなる!!」

 

「..........」

 

 

義光のシスコンぶりに

何とも言えぬ家臣だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「所詮は三流の小悪党だ」

 

 

誰かがボソりと呟く。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

数日後、天竜軍。

天竜は手にした無線機に叫ぶ。

 

 

「いざ進軍!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

だが今回の戦。前回の上杉同様にいきなりの戦闘には至らなかった。それどころか、天竜軍に異変が起こっていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『この獣には、また、大言を吐き汚しごとを語る口が与えられ、四十二ヶ月のあいだ活動する権威が与えられた。

 

また、大いなるしるしを行って、人々の前で火を天から地に降らせることさえした』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「「「「あぁ〜!!

邪気眼が来る!!

邪気眼が来る!!」」」

 

「「666の謎を解き明かせねば〜!」」

 

 

 

 

伊達側がバラ撒いた怪文書により、

天竜軍側の兵が混乱していた。

 

 

 

 

「なるほど。あのやり方で成り上がったのか。ここまでくるとむしろ立派だな」

 

「大変です!この三成にも解けません!」

 

 

三成まで混乱していた。

 

 

 

「「「666の謎〜!!!」」」

 

 

 

 

 

天竜は無線機に叫ぶ。

 

 

 

 

 

 

「聞け阿呆共!!!

666の謎はこの羽柴天竜が解いた!!」

 

 

「「「!!!?」」」

 

 

 

「ヨハネの黙示録を読み解くと、666は、

将来現れるソラトという悪魔の名だ。

シュタイナーによると、この名は、400+200+60+6=666の太古の暗号法から、太古では数字をアルファベットで記し、

400はT(タウ)、200はR(レシュ)、

6はW(ヴァウ)、60はS(サメク)

を表すという。

TRWSの子音体に、母音を補い、右側から発音することで、「ソラト」となるのだ。

 

ソラトは、

またの名をサタンという。

 

666はサタンと最も関係の深い者に与えられる獣の数字。この数字を与えられし者こそサタンの仔を示す!

 

ちなみに俺は、

6月6日の6時に産まれた!

俺こそが666!

獣の仔なり!サタンの仔なり!

 

伊達政宗は

俺の真似事をしているに過ぎない!

伊達政宗などただの中2病の偽物だ!

 

嘘つきに罰を与えよ!!!」

 

 

 

「「「おおおぉ〜!!!」」」

 

 

これがキッカケとなり、

天竜軍は一気に士気を取り戻す。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「天竜様、

6月6日が誕生日だったんですか!?

先月は知らなかったとはいえ、

お祝いをできず、申し訳ありません」

 

「いいよいいよ。嘘だし」

 

「....................は?」

 

「伊達さんのやり方を利用してもらっただけだよ。お陰で自軍は士気が戻り、真逆に敵軍の士気は駄々下がりだ」

 

「はぁ....................

では本当のお誕生日は?」

 

「俺が産まれたのは、

4月4日の4時。

『死』の3連星。444だ」

 

「不吉すぎます!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

伊達軍。

 

 

「報告します!

敵に666の謎を解かれました!」

 

「にゃにおぉ〜!!?」

 

 

梵天丸は驚きのあまり椅子から転げ落ちる。いつか自分で解こうと思っていた謎をあっさりと解かれてしまったのだ。

この中2病対決は天竜に軍配が上がる。

 

 

「ク..........クク。

仕方あるまい。成実!」

 

「用意は出来ているぞ」

 

 

成実は数台の投石機の隣りにいた。

 

 

「よし発射!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

天竜軍。

 

 

「ふふっ.....」

 

『報告します!

敵軍から投石が!!』

 

 

無線機からの報告がくる。

 

 

「ほう。では用意してある盾を用い防げ」

 

『そっ、それが.....

飛んできてるのは石ではなく.....

うわぁっ!?

うわああああああぁぁぁ!!!!』

 

「!?.....おい!どうした!?」

 

『黒いのが!!

黒い奴らが!!!

ぎゃああああああああああぁぁ!!!』

 

 

そこで通信が途切れてしまう。

 

 

「..........一体何が?」

 

「天竜様投石が!!」

 

 

三成に言われ上を見上げると、

何かが頭上から降って来てるのに気づく。

投石かと思い、兵達は咄嗟に避ける。

 

 

「あれは.....」

 

 

石ではなかった。風呂敷状のものであり、何故かガサゴソと蠢いている。

 

 

「まっ.....まさか!?」

 

 

本能的に天敵の存在を察知する。

 

 

「撤退だ!!

全軍撤退せよ!!!」

 

 

天竜が叫ぶ。

 

 

風呂敷の中から飛び出たのは.....

 

 

 

 

 

 

 

 

数百匹のゴキブリだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

伊達軍。

 

 

「いや〜。いつか役に立つかと思って繁殖させていた10万匹のゴキブリがここで活躍するとは」

 

 

指の上にゴキブリを乗せて遊ぶ成実。

 

 

「ククク。まさか魔将軍の弱点が

ゴキブリとはな」

 

「姫も苦手じゃないですか」

 

 

小十郎の影で怯えている梵天丸。

 

 

「いい情報を感謝する」

 

「あら、どうも」

 

 

彼女は魔将軍に瓜二つの女性。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

天竜軍。

 

 

『報告します!

常陸の朧殿が伊達側に付いております!』

 

「あいつか〜!!!

この俺の弱点をバラしたのは!!

ゴキブリに塗れて死ね!!」

 

 

だが、実際死にそうになってるのは天竜だった。優勢だったにも拘らず、天竜の発狂によって一気に劣勢に陥る。

 

 

「のわ〜!!!

こっちに飛んできた!!

むっ.....!?動けないぞ!?

まさか金縛り!?

梵天丸め。まさか本物の!?」

 

「天竜様!

それは腰が抜けているだけです!」

 

 

 

 

 

 

 

 

スパッ!

 

 

 

 

 

 

 

今まさに天竜に飛びかかろうとしていたゴキブリが突然

輪切りとなって真下に落ちる。

 

 

「!?」

 

「全く。お前は何をしてるんだ?」

 

 

それは風魔の女郎蜘蛛。

 

 

「仙千代!?」

 

「久しぶりだな天.....」

 

「どこほっつき歩いてた!!

小田原征伐終わった途端に消えやがって!」

 

「そういう約束だったろう」

 

「あれはツンデレ的な何かで、

『今後もあんたを守ってあげるわ。

勘違いしないでね!

借りを返すだけなんだから!』

みたいなものかと.....」

 

「断じて違う!!」

 

「でもいい!

ツンデレでいいから助けてくれ!」

 

「だから違うって!!」

 

「お前しかいないんだ!!」

 

「!?」

 

 

その言葉に仙千代がやや赤くなる。

ここに来たのもやはり、

「借りを返すだけだからね!」

的理由だった。

 

 

「お前の糸で数万匹のゴキブリを

全部斬ってくれ!」

 

「それは流石に無理!!」

 

 

天竜も混乱して、

おかしな命令を出してしまっている。

 

 

「小田原の時を思い出せ。風魔の予想外の進撃でお前は何をした?頭を使ってお前に勝てない相手などいないだろう!」

 

「むっ.....むぅ」

 

「それまでは私が盾になってやる。

借りを返すだけだ」

 

「やっぱツンデレやん」

 

「違う!!!」

 

「....................よし」

 

 

天竜は思考を重ねる。

 

敵は俺の天敵としてゴキブリを出してきた。となればこちらもゴキブリの天敵を用意すればいい。

 

 

『大変です!日が沈みます!!』

 

 

くそっ!夜になればゴキブリが闇に隠れ、進軍がさらに困難になる。

夜のゴキブリの天敵.....

 

 

「はっ!!..........そうか!!」

 

 

天竜は大量のお札を用意する。

 

 

「出でよ式神!!!」

 

 

数千枚はあろうというお札を一気にばら撒く。するとお札が次々に式神に変身していく。

 

 

「あっ.....あれは!?」

 

 

仙千代も驚愕する。

それは白色の蝙蝠達だった。

 

 

「蝙蝠は夜行性。

目で見るのではなく、

超音波で捉えた獲物を獲って食す。

さぁ、

『飢える蝙蝠(ハングリーバット)』共よ!

ゴキブリを食いつくせ!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

翌日、夜明けがた。

 

 

「おぉ.....」

 

 

周囲にゴキブリホイホイで結界を作り、

拳銃片手に一睡もできなかった天竜が戦場を見た時、そこにゴキブリは一匹も残ってはいなかった。

 

 

「よくやった.....よくやったぞ」

 

「天竜様!!」

 

 

緊張が解けた天竜はそのまま倒れるように気絶してしまったのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

最上軍。

 

 

「ぐぐぐぐ.....なんだこれは!!」

 

 

天竜に待機を指示されていた義光は歯痒い思いをしていた。それもそうだ。

天竜軍は伊達軍とろくな戦闘をしていないのだ。伊達軍が天竜軍に対して謎の怪文書をばら撒き、天竜がそれを解き明かし、伊達軍がゴキブリボールを放ち、天竜軍がその駆除を行う。

死傷者も出ないような随分平和な戦だった。

 

 

「どういうつもりだ羽柴。これでは俺が仕掛ける機会が掴めぬではないか!」

 

 

裏切る気満々の義光にとっては納得いかない状況だ。今もなお、天竜伊達の戦は睨み合いが続いている。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その東北の地で、

2人の魔王がニヤリと微笑む。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「報告します!!

北から伊達軍が!!!」

 

「なっ!?」

 

 

報告を受けた義光は驚愕する。

それもそうだ。天竜軍と睨み合っていたはずの伊達軍が何故突如北から出現する!?

 

 

「それと.....

北からは伊達軍だけではなく、

天竜軍もまた攻めて来ました!!」

 

「なんだとっ!?」

 

 

魔将軍が裏切った!?

いや、待て。何かがおかしい。

伊達軍は俺の目を盗んで北に分軍を送っていた。だが、同時期に天竜軍もまた分軍を北に.....

 

奴はいつから裏切っていた!?

 

北方まで分軍を送るにはそれなり時間がかかる。開戦して間も無くか!?いや、まさか.....

 

 

「開戦前.....最初から裏切っていた!?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

それは宣戦布告の手紙を送られた時の事。

 

 

「ククク」

 

「姫」

 

 

小十郎と2人だけの時。

 

 

「これを読んでみよ」

 

「..........これは!?」

 

 

手紙には、梵天丸より伝えられていた内容の他に、驚くべき内容が書かれていた。

 

 

 

『私、羽柴天敵秀長は其方、伊達政宗との戦を

決意をした....................

 

と言いたい所だが、それはない。

その前に最上を潰すべきと判断した。

だが、そのままでは倒すには少々時間がかかる。だから特殊な戦法を考えついた。

 

俺は始め、最上に付く。

最上に味方であると思わせる。

その上で.....いや、裏でお前と組む。

 

戦争においては、最上を効率よく騙すため、死傷者を出さぬように戦況の均衡状態を作りたい。その方法はそちらに任せる。

 

そして、今回の作戦は情報の漏洩が命取りとなろう。この作戦は極力、味方にも広めないでほしい。広めずに作戦を遂行してほしい。

『敵を騙すなら味方からだ』

 

この私が其方を信用していたからこそ、

この作戦を提案した。

良い結果を望むよ。

 

 

魔将軍より、

黙示録のビーストへ』

 

「..........これは」

 

「格好いい!!

『敵を騙すなら味方から』!!

魔将軍天竜.....敵ながら天晴れ!

いや、味方か。ククク」

 

「本当に乗る気ですか姫!?

相手はあの裏切り魔将軍ですよ!?」

 

「奴が始めから裏切るつもりなら、

こんな回りくどいやり方はせず、

こちら側に付いていたはず。

だが、それがないという事は.....」

 

「!?」

 

「この手紙は信用できるという事。

ククク.....

というより、我がそう解釈すると予見した上でこの作戦を考えたようだぬ」

 

 

小十郎は息を飲む。

梵天丸の戦略家としての成長に驚く。

 

 

「また会ってみたい。

あの魔将軍に!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

天竜軍。

 

 

「どうだ。

これこそが一流の裏切りであるぞ。

三流の貴様が勝てる道理があるはずない!

小悪党が魔王に勝てるかよぉ!

くひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃ!!!」

 




不思議な裏切り方をした天竜将軍。
これが、天竜と梵天丸との間に、
今後どのような関係性を持つのか。
次回予告
邪気眼竜
〜偽物が本物になる時〜

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