天翔ける龍の伝記   作:瀧龍騎

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新キャラ登場の予感。


第四十九話 川中島の合戦

山本勘蔵が殺された。

それが天竜の手によるものであると、彼自身がすんなり暴露したため、武田家中にて不穏な空気が流れていた。

 

 

「お前が殺したのか?」

 

「えぇ」

 

「何故だ」

 

「勘蔵殿は非道にも罪なき遊女を殺しました。さらに、危険な非人道的薬物にも手を付けました。

だから粛清した」

 

 

天竜は昌豊の事件の関与をあえて隠す。

 

 

「まぁ、それはいいとして.....」

 

 

いいんだ.....

 

 

「それは何だ」

 

 

信玄は天竜の腰あたりを示す。

 

 

「主さまぁ〜o(*゚▽゚*)o」

 

 

昌豊が天竜にすがりついていた。

 

 

「ま.....ま.....まさ..........

えぇと.....まさと..........なんだっけ?

そいつが何でここにいる?」

 

 

まだ覚えられてないのか。

 

 

「内藤昌豊。修理ですよ」

 

「そうそう!修理だ修理!

............だからなんでここにいる!?」

 

「私のご主人はドラキュラ様ただ1人ですぅ」

 

「は?」

 

「病気かなんかだと思って下さい」

 

 

正直説明が面倒臭かったし、

説明すると人斬り事件にも繋がってしまうので、あえて省いた。

 

 

「ところで、対上杉戦ですが.....」

 

「そうだ。それを伝えに来たんだ。

天竜。お前は昌幸に追軍しろ」

 

「昌幸.....殿?」

 

「真田昌幸だ」

 

 

真田昌幸。

武田家臣の中で最も優れた武将。

四天王には入らずとも、その実力は桁違いだ。後に、関ヶ原の合戦と同時進行で行われた上田合戦では、徳川秀忠の大軍を2度も退かせ、その圧倒的強さを示してみせた人物。

 

 

「おっ、丁度来たぞ」

 

 

昌幸が2人のもとへ近づく。

 

その見た目は腰まで伸びる赤黒い髪。グラビアアイドルとも思えるプロポーション。30代前後といったところか?

 

 

「ごきげんよう信玄様。

そちらは新しい軍師様でしたかしら?」

 

 

お嬢様のような口調の昌幸。

 

 

「羽柴秀長です。はじめまして」

 

 

天竜は手をさしだす。

 

 

「ふふっ」

 

 

昌幸もまたその手を取り、握手する。

 

 

「ふふっ。小田原征伐における貴方のご活躍。よく聞いておりますわよ?良い頭をお持ちですねぇ?」

 

「それは.....光栄の限り」

 

「どさくさに紛れて常陸を取るだなんて、とても私にはできませんわ」

 

「なっ.....!?」

 

 

こいつ.....!!

 

 

「何か勘違いをなされてますね昌幸殿。

常陸は私の元家臣、朧が独断で取ったもの。それでは私が朧を差し向けて常陸を強奪したかのような言い方ではありませんか!」

 

「あら?

てっきりそうだと思っていましたわ」

 

「くっ.....!!」

 

 

真田昌幸.....面倒な女だ。

 

 

「待ってくだ〜い!」

 

 

すると、遠くから昌幸を縮めたような少女が走ってくる。

 

 

「信繁。挨拶しなさい」

 

「はぁ.....はぁ.....はぁ.....コホンッ!

真田信繁です!

よろしくお願いします!秀長殿!」

 

 

真田信繁。

もう一つの名の方が現代人には馴染み深いだろう。昌幸の後継者として破格の才能を持ち、大坂の役においては、特に夏の合戦では、大軍で攻め寄せた徳川軍を真逆に追い詰める功績をみせた。

 

だが、信繁の最初の家臣は上杉景勝。

もう生まれているのか.....

武蔵や政宗みたく、神のいたずら.....いや、悪魔のいたずらで早くに誕生した英雄の1人か。

 

 

「はじまして信繁殿。

信繁殿は昌幸殿の妹さんかな?」

 

「あら、嬉しい。娘ですのよ」

 

 

あっそ.....

 

 

「源四郎は..........じゃない、

私は秀長殿にとても憧れてたんです!」

 

「ほう」

 

「あの小田原城を全壊させた爽快さ!

それまで戦の風潮を無視した大胆さ!

素晴らしいです!」

 

「ベタ褒めは嬉しいがね」

 

「はい!結婚して下さい!」

 

「..............................は?」

 

 

突然のカミングアウトに、

天竜と信玄はおろか、

親である昌幸まで驚愕する。

 

 

「のっ.....信繁!!

なんて事言うのですか!!」

 

「母上。私も13歳!

充分結婚できる年齢です!

だから秀長殿を夫に選びたい!」

 

「側室でいいかな?」

 

 

天竜も面白がって参加する。

 

 

「秀長殿(怒)!!」

 

 

昌幸が叫ぶ。

 

 

「正室希望で!!」

 

「残念ながら正室の座は埋まってる。

それに俺の女になりたいなら、

あと3年分は成長してくれ」

 

「..........分かりました!

それまでに母上のように

ボンキュッボンになりますね!」

 

「いや、俺としては

キュッキュッポンの方が.....」

 

「秀長殿(怒)!!!」

 

 

真田昌幸.....

始めは面倒臭いだけかと思ったが、

娘の信繁を利用すれば.....くくくく。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「さて、今回もまた

川中島での合戦となろう。

その戦略、俺に一任させてほしい」

 

「できるのか?」

 

 

信玄が問う。

 

 

「おいおい勝千代。

俺は戦略で小田原城を落としたのだぞ?

実力はその際に確認済みだろう」

 

「むっ.....むぅ」

 

「分を弁えたらどうなの坊や」

 

「ほう?」

 

 

昌幸が反論する。

 

 

「貴方は軍師であって、

総大将は信玄様。

最近調子に乗り過ぎではなくて?」

 

「それは俺より強くなってから言うんだな。

僻みにしかならんぞ?」

 

「なっ!?」

 

「それに坊やじゃない。

俺は見た目より老けててな。

実年齢はあんたと対して変わらん」

 

 

怪物としてなら500歳以上だし。

 

 

「くっ.....!

信玄様。この男は危険ですわ。

この男は織田を裏切った男。

武田に忠誠を誓うとは到底思えません!」

 

「うえーん。助けてくれ信繁-。

君の母上が虐めるよー」

 

 

超棒読みで信繁に助けを求める。

 

 

「母上!秀長殿を虐めたらこの源四郎.....じゃない。私が許せません!」

 

「うっ.....うぅ.....」

 

「天竜と呼ぶ事を許可しようではないか信繁くん!代わりに源四郎と呼んであげよう!」

 

「わぁぁ!ありがとうございます!」

 

「ぐぐぐ.....」

 

 

わざと演技調に言うことで

昌幸をおちょくる。

 

 

「という事だ。

よろしくお願いしますよ。

お嬢ちゃん」

 

「ぐぐぐ.....おのれ羽柴天竜」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

越後にて。

 

 

「謙信様?」

 

 

上杉謙信の懐刀、直江兼続は問う。

 

 

「先程、武田から宣戦布告があった。

また戦になる」

 

「また.....ですか」

 

「しかも今回は、小田原征伐を果たした魔将軍が出てくる。前回のようにはいかないでしょう」

 

「魔将軍.....羽柴秀長」

 

「ある意味、魔王織田信奈よりも厄介な相手かもしれない。私には奴の考えが読めぬ。織田を裏切り、武田に着いたかと思えば、直様北条と戦を起こして滅ぼし、関東を平定してしまった」

 

「謙信様.....」

 

「だが私は負けない。

イタズラに戦ばかりを起こす羽柴秀長を許すわけにはいかない!」

 

 

毘沙門天の再来は立ち上がる。

 

 

「軍備を整えよ!

これより正義の戦を行う!

敵は魔将軍、羽柴秀長!」

 

「はっ!」

 

 

軍神が来る。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

武田軍。

相手は軍神。規律の取れた武田の大軍団をものともしない戦略にて、いつも武田を追い詰めてきた。あの山本勘助ですら上杉謙信には敵わなかった.....か。

通常の戦では勝機は0。

 

 

「ふっくくくくく.....

面白い。面白いぞ!!

この俺があの上杉謙信を相手に牙を向いているとは!素晴らしい!

我が戦術をとくとご覧あれい!!」

 

 

天竜は再び無線機を手に取る。

 

小田原征伐では、風魔衆までもが無線機を所有していたために少々手こずったが、今回はその心配がない。

 

 

「こちらはズルしまくりだが、

戦において卑怯も何もない!よって俺はいくらでもズルして勝ってやる!

それが羽柴天竜の行動である!」

 

 

無線機のスイッチを入れる。

 

 

「全軍!進撃だぁ!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

上杉軍。

 

 

「始めは敵をおびき寄せよ。その上で左右に配置した伏兵にて敵軍を囲む!」

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

天竜軍。

 

 

「隊を2つに分けよ。隠れていると思われる伏兵部隊を先に叩け!」

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

「策を読まれた?

では、本隊を3つに分離。

第壱隊は敵軍を正面から足止め、

弐隊、参隊は敵軍の背後を取れ!」

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

「ほう。では分割した軍はそれぞれ左右に移動せよ。囲まれる前に檻から脱出しろ」

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

「くっ.....敵を例の地点へ誘い込め!」

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

「となると.....次は罠を仕掛けてくるか。

深入りはするな!

その位置から遠距離射撃に入れ!」

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

「なっ!?」

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 

 

 

 

 

 

「見事なものだ.....」

 

 

信玄は無線機を持ち、地図を睨みつけながら的確な指示を出している天竜の後ろから見守っていた。

 

 

「小田原征伐では近くでその采配を見ることは出来なかったが.....ここまでとは」

 

 

天竜の未来的戦争術に驚愕する。

 

 

「さらにあの情報技術に加え、奴の軍。

騎乗しながらにして鉄砲の発砲ができる騎馬鉄砲隊。さながら織田が誇る鉄砲隊と、我ら武田が誇る騎馬隊が合体したかのようだ」

 

 

天竜軍騎馬隊鉄砲隊は今までは織田の痩せ馬を暗示をかけて利用して戦をしていたため、やや機動力に欠けていた。

それに対応するために、紀伊でサラブレッドの量産にも挑戦していたが、まだ全軍に配備するまでは整っていなかった。

だが天竜は今や武田軍師。

武田家にて多数飼育されているペルシャ馬を自由に出来た。この事で天竜軍の機動力は劇的に進化した。

 

 

「天竜が持ってきたサラブレッドという馬.....我らが所有する馬とまたどこか違い、さらに優れていた。信濃の広大な地を利用すれば、サラブレッドの更なる量産も可能であろう」

 

 

天竜軍は丹波戦からの歴戦の雄姿達の集まり。今や大将クラスまで成長し、強くなった者も多くいる。

 

信玄はそんな時、

思わず天竜に恐怖した。

 

 

「つくづく味方で良かった」

 

 

敵であったらと考えるだけで恐ろしい。

北条家の二の舞にはなりたくない。

 

 

「よし、今度はこっちが攻めだ。

各隊、両翼に陣を開け!」

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

「まっ.....まさか!?

退け!敵があの陣を作る前に!」

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

「遅い。

そして翼は開かれる」

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

「くっ.....!」

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

「くひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃ!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

「これは.....鶴翼の陣!?

あの男、こんな短時間でどうやって.....」

 

 

昌幸が言う。

 

 

「やっぱり天竜殿は素晴らしいお方!」

 

 

そう言いながら信繁が出る。

 

 

そんな中.....

 

「うおおおぉぉ!!!」

 

 

1人の姫武将が馬で駆けてくる。

 

 

「では、あれから倒します!」

 

 

信繁がそれに向かえる。信繁の朱色の十文字槍が向かってくる姫武将を捉える。

 

 

「だあぁ!!!」

 

 

だが、姫武将はそれをいとも簡単に槍で返してしまった。

 

 

「なっ!?」

 

「むっ.....六銭紋。

貴方は真田の人間ですか?」

 

 

彼女は信繁の兜からそう判断する。

 

 

「.....真田昌幸が娘、真田信繁。

そっちは?」

 

 

その姫武将は、白色を中心とした鎧を纏い、兜には『愛』の一字。

 

 

「謙信様が懐刀、直江兼続!」

 

「へぇ〜」

 

 

信繁はニヤリと微笑む。

 

 

「あんたを討てば

天竜殿に褒められるかもねぇ!!」

 

 

信繁は再び槍を振るう。

 

 

「ふんっ!」

 

 

兼続もまた応戦する。

 

ここより2人の一騎打ちが始まる。

 

 

「だあぁ!!!」

 

「はあぁ!!!」

 

 

2人の実力はほぼ互角。

周りにいた両軍の兵も思わずその一騎打ちに見入ってしまう。

 

 

「強っ.....!

こんなのが上杉にいたんだ!」

 

「くっ.....!

私より幼そうなのに.....

なんだこの攻撃の重さは!」

 

 

お互いに決め切れず、

時間だけが過ぎてゆく。

その時、

 

 

「オラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラァァァ!!!」

 

 

何者かが2人の一騎打ちを邪魔するかのように突撃してくる。

 

 

「ういっ!?」

 

 

その勢いで信繁は落馬してしまう。

 

 

「おうっ!大丈夫か兼続!」

 

「慶次殿!武士同士の一騎打ちを邪魔するとは何事か!」

 

「えぇ〜。負けそうになってたじゃん」

 

「うるさい!」

 

「うぅ.....ズルいぞ直江兼続.....

2対1だなんてぇ!」

 

「あっ.....あう.....」

 

「命をかけた戦に

卑怯も何もないんだよ小娘」

 

 

巨馬に跨り、その身体も強大な姫武将。

 

 

「誰だよあんた!」

 

「前田慶次だ」

 

「はぁ!?.....なんで織田の人間が上杉に味方してるの!?」

 

「あたしゃ織田じゃねぇよ。

ただの不浪人さ」

 

 

前田慶次。

史実では、前田利家の義理の甥である。

相当な歌舞伎者であり、

叔父の利家や豊臣秀吉と仲違いし、

上杉景勝のもとへ亡命した。

 

 

「何処にいるかと思って犬千代に何度か聞いたが、まさかもう上杉にいるとはな。

やはり先の読めぬ歴史程面白いものはない」

 

「「「!?」」」

 

 

3人とは別の所から、その男は現れる。

 

 

「天竜殿!」

 

「よう源四郎。元気か?」

 

「これは驚きました。

敵軍の軍師が最前線に出てくるとは.....」

 

 

天竜は例の白夜叉の鎧と兜を着用し、

巨大な馬に跨っていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

武田本陣。

 

 

「むっ?

天竜は何処にいった?」

 

「あの.....先程前線に行かれましたが?」

 

「なにぃぃぃ〜〜〜!!?」

 

 

天竜の悪い癖を知らない信玄は驚愕した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「話には聞いていたが、本当にお前、

犬千代と同い年か?」

 

「チビの犬千代と一緒にすんな!

いくら従姉妹といえど、

あたしとあれは育ちが違うんだよ!」

 

 

身長差だけなら親子ととってもいい。

 

 

「どうでもいいさ。

俺の友人の親戚といえど、

敵なれば討ち倒すのみ」

 

「「「だあぁぁ〜!!」」」

 

 

その時、上杉方の足軽らが天竜に向かって突撃してくる。

 

 

「五月蝿い」

 

 

天竜はそれを虫ケラを蹴散らすかのように槍で撫で払う。

その槍は方天画戟。呂布の得物だ。

 

 

「ふぇ〜。軍師ってこんな強いの?」

 

 

慶次が言う。

 

 

「羽柴.....秀長!」

 

 

兼続が睨む。

 

 

「天竜.....殿?」

 

「源四郎。兼続の方を頼む」

 

「えっ?」

 

「俺は久々に運動だ」

 

 

天竜が最後に最前線に出たのは、

対村上水軍戦以来であろう。

「人間」としてなら若狭戦以来だ。

 

 

「へぇ。武田の軍師さんはあたしとの一騎打ちをご所望かい?じゃあ、やめときな。あたしはそんじょそこらの軍師が敵う相手じゃ.....」

 

「武士なら黙ってかかって来い。

ベラベラ喋ると実力の低さが滲み出るぞ」

 

「あぁ?」

 

 

挑発された慶次はその勢いのまま

天竜に襲いかかる。

 

 

「ははっ!すぐに怒る所がまた弱々しいな!」

 

「手前ぇ!!」

 

 

だが天竜はそれを風のように

全て受け流す。

 

 

「くひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃ!!!

犬千代に毛が生えた程度の貴様がぁ!

俺様に勝てるわきゃねぇだろぅ!」

 

「うわっ.....!?」

 

 

逆に押されている。

 

 

「慶次!」

 

「余所見してちゃ駄目ですよぅ!!」

 

 

兼続に信繁が襲いかかる。

 

 

「くっ.....!!」

 

「源四郎っ!兼続は殺すなよ!

生け捕りにして俺のもとで調教.....

いや、再教育させる!」

 

「ですって、直江兼続!」

 

「おのれっ!!」

 

 

 

 

 

 

この2対2の攻防戦が繰り広げられる最中、ある異変が起こった。

 

 

 

 

 

 

 

「兼続様!本陣が襲われています!

至急お戻りを!」

 

「なっ!?」

 

 

いつの間に本陣を!?

先程まではそんな事.....

 

 

「まさか.....私達をここに釘つけて、

その間に本陣を!?」

 

 

ほんの数分だけの戦闘だと思っていた。

しかし、想像以上の時間が経っていた?

それとも、敵の進軍が早過ぎた?

 

 

「羽柴秀長〜!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

この戦、天竜という情報を得ていなかった上杉側の最大の失態。

 

 

「どうする?

ここで主君の最後を見届けるかい?」

 

「ぐぐぐっ.....!!」

 

「いいぜ。見逃してやる。戻って主君に俺という存在を伝えてくるがいい」

 

「くっ!退くぞ慶次!」

 

「くそっ!」

 

 

彼女らは急ぎ足で本陣の救援へ向かった。

 

 

「よし。そろそろよかろう」

 

 

天竜は無線機で命令を下す。

 

 

「全軍、撤退せよ。

これ以上の交戦は許可しない!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして彼らは自軍の本陣まで

撤退していった。

 

 

「何故だ!何故追軍しない!」

 

「上杉側にはこちらの強さを充分示せた。となれば次は上杉謙信も本気になる。無理に攻めれば真逆にこちらが追い詰められる。

今まで同じ手で上杉に

やられていたのだろう?」

 

「むぅ.....」

 

「心配せずとも、これで終わらせるつもりはない。軍備を整え次第、再び攻める」

 

「.....それともう一つ。

お前は常に最前線に出るのか?」

 

「いいや?時と場合によるよ。

まぁ俺から言えるのは、

『命を賭けない大将に、

部下に死ねと言える資格はない』

事かな」

 

「.....ふむ」

 

 

なんだか天竜に説教されている気分の信玄だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「な〜んか。ここも居心地悪いなぁ」

 

 

誰も聞いていない中で、

誰かが呟いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

翌日。

天竜軍。2度目の侵攻である。

だが今回はいきなりの戦闘に突入することはなく、前日の事もあるため、互いに様子見をし、少しずつ陣を動かしあっている。

 

武田本陣。

 

 

「くっ.....もう三刻(6時間)は経つぞ」

 

 

昼頃始まった合戦であるが、特に目立ったような動きはほとんどなく、もう日も沈みかけていた。

 

 

「天竜と昌幸は?」

 

「はっ、最前線にて陣を張っております!」

 

 

信玄はその時、

天竜の前日の言葉を思い出す。

 

 

「命を賭けない大将に部下に死ねと言える資格はないか.....まさにその通りだな。

よし、本陣を動かすぞ」

 

「信玄様!?」

 

 

側に着いていた昌景は驚愕する。

 

 

「な〜に。敵の矛先が届く位置まで行くわけじゃない。まぁ、鉄砲の流れ弾は飛んでくるかもしれぬが.....」

 

「えぇ〜.....」

 

 

不安しかない昌景である。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その時間。その瞬間。

異変は起こった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「むっ!?」

 

 

こちら側の軍の様子がおかしい。

戦闘が始まったようではあるが、

これでは.....

 

 

「同士討ち!?」

 

 

武田の兵同士が戦いあっている。

いや、あの兵は.....

 

 

その時、使者が駆け込んでくる。

 

 

「お伝えします!

謀反が発生!謀反が発生!」

 

「なっ.....なんだと!?

一体誰が!?」

 

 

 

 

 

 

「謀反者は、

真田昌幸殿!真田信繁殿!

内藤昌豊殿!.....」

 

「昌幸がっ!?何故だ!?」

 

 

だが、さらに驚くべきは次の人物だ。

 

 

 

 

 

 

 

「.....羽柴秀長殿!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「は?...................天竜が!?」

 

 

彼は織田を裏切った過去がある。

だが、私は織田信奈と違って彼を蔑ろにしたり、屈辱を与えた覚えはない。むしろ、優秀な家臣として、ある程度の勝手事も見逃してやっていた。

なのに何故!?

 

 

「何故裏切った!天竜〜!!!」

 

 

その時、別の使者が駆け込む。

 

 

「報告します!織田・徳川軍がそれぞれ、西方、南方より侵攻して来ました!!」

 

「なっ!?」

 

「更に関東からも羽柴軍!

東方常陸より朧軍襲来!」

 

「馬鹿なっ!?」

 

 

羽柴朧は天竜と敵対していたのでは!?

まさか昌幸の指摘通り、

本当に影で繋がっていたのか!?

 

東西南北全方向より囲まれた武田軍。

武田包囲網の完成である。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

天竜軍。

 

 

「我が軍は上杉軍に合流し、

北方より武田本陣を叩く!

高坂昌信、山県昌景、馬場信房ら

残りの四天王は生け捕りにせよ!

武田信玄、武田逍遥軒も同様である!

降伏する兵は直ちに自軍に加えよ!

武田の勢力を残らず吸い付くせ!」

 

「羽柴天竜万歳!

羽柴天竜万歳!」

 

 

昌幸が叫ぶ。

その瞳は紅に輝き、

首筋には噛み跡があった。

 

 

「あっはっはっはっはっは!!!

天竜殿.....いや、天竜様はやはり恐ろしく、

素晴らしいお方だ!

天竜様万歳!天竜様万歳!」

 

 

信繁には変化が見当たらなかったが、

天竜に絶対的な忠誠を誓っていた。

 

 

「勝千代。貴様には何の恨みもない。

だが、俺の前で隙を見せてしまった。

俺の前で弱さを見せてしまった。

天竜軍の更なる活性化の為に、

倒れて貰うぞ武田信玄!!」

 

 

 

 

 

これが「呂布」に最も近いとされた男の本質であった。この時より天竜は、『裏切り魔将軍』の渾名をつけられる事となる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 




新キャラ、真田昌幸と真田信繁と前田慶次。
信繁は元気の良さから、
無双よりバサラの幸村を参考。
でも、誰かと被ってる気がする。
なんだか強くなった三成みたい。
さて、はたまた裏切った天竜。
こりゃまた天竜ファンと天竜アンチに分かれますな。
次回予告
謙信との会見。
さてさて、国と妹。どっちを取る?〜

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