天翔ける龍の伝記   作:瀧龍騎

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原作はもう打ち切れたのかな?


番外編4

10話 三国志占い

 

これは天竜がまだ織田家中で、比較的信奈との関係も良好であった頃のお話である。

 

 

「三国志占い?」

 

 

良晴が尋ねる。

 

 

「あぁ。学校でもやってやった事あるだろ。あれだよあれ」

 

「ふえ〜。てっきりイカサマだと思ってた」

 

「何してるのよ?」

 

 

兄弟の会話に興味を示した

信奈がやって来る。

 

 

「丁度いいです信奈様。

一緒にやりませんか?

三国志占い」

 

「何なのそれ?」

 

「占った相手の特徴や性格から、

三国志に登場する武将達の中で、

最も近い人物を占う.....まぁ、陰陽術を利用したお遊びです」

 

「インチキ臭いけど面白そうね。

どうせなら他の皆も呼びましょう!」

 

 

こうして、織田家臣団が集結する事になった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「まずは信奈様から占いますね」

 

 

天竜はポンッと水晶玉を召喚する。

 

 

「水晶玉で占うの?

ちょっとダサくねぇか?」

 

 

良晴に言われる。

 

 

「バーカ。

あん時は極小の自の力でやってたけど、

今の俺はだいぶパワーアップしてんだよ」

 

 

すると、水晶玉から謎の光が照らされ、

壁にスクリーンのようなものを映し出す。

 

 

「うひ〜。魔法なのか科学なのか分からん」

 

「分かりやすいように、映像で写しますね。情報ソースは『三国●双』から!」

 

 

ここまでの会話、誰も理解できない。

 

 

「信奈は曹操とかじゃね?」

 

「そうそう?」

 

「シム。三国のうち、魏の皇帝だね。

曹操、劉備、孫権のうち、

最も強い君主だったらしい」

 

 

官兵衛が説明する。

 

 

「へぇ〜」

 

 

それを聞き、

信奈がワクワクして待ち構える。

 

 

「そいやっ!」

 

 

天竜の掛け声と共に、映像が映される。

映っていたのは、

思った以上に肥えたオッサンで.....

 

 

「これが.....曹操?」

 

「いえ、董卓です」

 

「とうたく?」

 

「くすんくすん。まだ後漢の時代の将軍です。帝を誘拐して傀儡にし、逆賊と言われ、国中に嫌われていた方です」

 

 

半兵衛が言う。

 

 

「シム。悪逆非道を好み、

逆らう者は一族諸共皆殺し。

自己中心的の典型だね」

 

「何よそれ!!?」

 

「でも結構似てね?」

 

「何ですってサル〜!!」

 

「でも信奈様と同じように、

董卓にも有名な四字熟語がありますよ?

信奈様の『天下布武』に対して、

董卓は『酒池肉林』」

 

「私.....そんなのと同じなの?」

 

 

完全にブルーになってしまった信奈だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

さて、次は良晴だな。

 

 

「猿みたいな武将はいましたですか?」

 

「十兵衛ちゃん!」

 

「そいやっ!」

 

 

良晴の武将が映される。

それは、ひ弱そうな優男で.....

 

 

「誰これ?」

 

「劉禅だな」

 

「りゅうぜん?」

 

「シム。劉備の息子だね。

蜀の2代目皇帝だけど、戦を好まず、

仕事を全部丸投げして、遊び呆けていた奴だね。魏に襲われてビビって、さっさと降伏しちゃった臆病者さ。

ある意味、董卓より嫌われてるね」

 

「何で俺が劉禅だよ!!」

 

「俺の見解はちょっと違うかな。

父から皇帝を継いで、

孔明と共に10年、孔明の死後も30年、蜀を安定させたんだ。俺は愚帝とは思えないな。

丸投げと言ったって、部下の事を完全に信用して、確たる地位をあげられるのは、いい君主の証だよ。40年間、一度も裏切られる事もなかったしな。

降伏だって、

『民を危険に晒すくらいなら』

という考えからであって、臆病者と言うにはお門違いであると思う!」

 

「.....天竜さん。劉禅好きなの?」

 

「わりとな。いい事してるのに嫌われてる人とか、結構同情してしまう」

 

「へぇ.....」

 

 

天竜のフォローもあってか、

そこまで傷つかなかった良晴。

 

 

「信奈もフォローしてやれよ」

 

「いや、董卓は救い用のないクズだし.....」

 

「ああぁ.....」

 

 

益々落ち込む信奈である。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「おっ?半兵衛はやっぱり諸葛亮だ」

 

「ほっ.....」

 

 

流石、今孔明と呼ばれているだけある。

 

 

「官兵衛は.....司馬懿だな」

 

「シム。まぁ、妥当だね」

 

「司馬懿は諸葛亮と互角の才能を持った持ち主だ。しかし、司馬懿は魏が3代目皇帝の時に革命を起こして、

君主を押しのけて魏の大将になっちまってるな」

 

「まさか官兵衛!!」

 

「そっ.....そんな事するわけ、

なっ.....ないじゃないか!!」

 

 

危なく謀反予定犯にされる所だ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その後、

勝家が脳筋繋がりで張飛。

長秀は文武両道で関羽。

犬千代はアニマル繋がりで孟獲。

五右衛門は何故か魏延。

 

 

「何故でござりましゅるか?」

 

「さぁ?ちゃんと言葉話せないからじゃね?」

 

「むむむ.....」

 

 

鹿之助は典韋だった。

 

 

「典韋は騙し討ちされた曹操を逃がすために身を盾にし、全身に矢を受けて立ち往生した忠臣だな」

 

「全身に矢..........はぁはぁはぁ」

 

「この人怖い」

 

 

天竜の本音が飛び出た。

 

 

 

 

 

 

 

 

「ねねも知りたいですぞ!」

 

「ねねかぁ.....ねねは.....小喬だな」

 

「しょうきょう?」

 

「呉の将、周瑜の嫁さんだ。

姉の大喬と並んで、三国一の美人だって言われていたんだ」

 

「えへへ」

 

 

ねねは満足そうだった。

 

 

「辰は誰なのです?」

 

 

天竜のもう1人の妹、羽柴秀俊。

 

 

「シンは.....周瑜!」

 

「周瑜なのですか?」

 

「あぁ、ねねとペアになるとは驚いたな。

蜀の軍師が諸葛亮なら、

呉の軍師は周瑜だ。

2人が協力して

曹操の大船団を追い払った事もある。

今じゃあまだまだ未熟だが、

そのうち頭のいい大将になれるかもな」

 

「おぉ!なのです」

 

 

秀俊も嬉しそうだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「十兵衛は.....貂蟬だ」

 

「朝鮮ですか?」

 

「違う違う。王允ていう武将の娘だ。

その美しさと踊りから

董卓を誘惑したらしい」

 

「へぇ〜。

あまり目立つ人ではないんですね」

 

「まっ.....まぁな」

 

 

貂蟬が1番目立つ所など、

信奈の前で言えるはずがない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

大方の人物の占いが終わった時。

 

 

「あんたは誰なのよ?」

 

「へ?」

 

 

信奈に聞かれる。

 

 

「ん〜。自分を占った事はないので.....」

 

「確かに気になるな。

天竜さんが誰なのか」

 

「自分で自分を占えますですか?」

 

 

良晴や十兵衛まで興味を示す。

 

 

「できない事はないです。

やってみますね。ちぇあっ!」

 

 

すると、そこに映ったのは今まで出てきた武将の誰よりも強そうな武将である。

 

 

「誰よこれ?」

 

「りょ.....呂布です」

 

 

天竜が大量の汗をかく。

 

 

「あちゃ〜」

 

 

それに良晴も気づいたようだ。

 

 

「その呂布ってのはどんな奴なの?」

 

「その.....」

 

 

天竜は言い渋る。

言えるはずがないのだ。

 

 

「シム。呂布は董卓の家臣だね」

 

「あら。そうなの」

 

「こらっ!官兵衛!」

 

 

官兵衛があっさり喋ってしまう。

 

 

「シム。呂布は劉備、関羽、張飛が束になっても互角の戦闘を見せる程の豪傑で、彼こそが三国無双であるという話があるね」

 

「まんまシロじゃない」

 

「うぅ.....」

 

 

問題はその続きだ。

 

 

「でもそんな呂布も恋をした。

その相手こそが貂蟬」

 

「へっ?」

 

 

十兵衛も驚く。

 

 

「だが、その時すでに貂蟬は董卓のものだった。この三角関係が原因で董卓と呂布はドンドン不仲になった。

一時期、呂布に貂蟬を渡す事でその不仲になった関係を修復しようとしたんだけど、董卓がその約束を一方的に反故にしてしまった。それが決定打。

呂布はそんな董卓を.....」

 

「わぁーー!!わぁーー!!」

 

 

大声をあげて誤魔化そうとする天竜。

 

 

「殺しちゃったんだよ」

 

「へぇ.....」

 

 

信奈の様子がガラリと変わる。

天竜もビビる程の黒さ。

 

 

「そうなんだ.....あんた、私を裏切って殺すつもりだったんだ.....」

 

「違〜〜う!!

これはただの占い!

ただのお遊び!!」

 

「呂布の裏切りは凄いよ。董卓の前は、自分の養父も裏切って殺してる」

 

「へぇ〜」

 

「官兵衛黙れ(怒)!!」

 

「その後、劉備の客将になったりもしたんだけど、それすらも裏切って.....」

 

「違う!!それは呂布が気に入らなかった張飛が無理矢理裏切らせたんだ!」

 

「えっ!?あたし!?」

 

 

勝家まで巻き込む。

 

 

「まぁ、董卓と呂布を不仲にし、

引き裂いて、両方を没落させようと計画した黒幕は貂蟬だけどね」

 

「わっ.....私ですか!!?」

 

「そうなの.....あんたも裏切るの」

 

「違うですぅ〜!!」

 

 

官兵衛はさっきの仕返しなのか、

ベラベラと喋り尽くす。

 

 

「くすんくすん。今、1番織田の結束を引き裂こうとしてる悪人は官兵衛さんです」

 

 

もう半兵衛にも止められない。

 

 

「ちょっと、落ち着けよ信奈!」

 

 

良晴がフォローしようとする。

 

 

「五月蝿い!

臆病者劉禅のくせに!!」

 

「えぇ〜.....」

 

「そこに並びなさい!

シロ!十兵衛!

裏切られる前に打ち首してあげるわ!」

 

「「ひえ〜!!!」

 

 

刀を振り回しなが追ってくる信奈から、必死に逃げ惑う2人であった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして現在。

 

 

「まさか、

あれが現実になろうとは思わなかったな」

 

 

昔を懐かしむ天竜。

 

 

「だからって、信奈様を殺したら、絶対に許さないですよ!」

 

「全く、君はどこまで信奈が好きなんだ?

董卓だぞ?」

 

「むぅ.....」

 

「だが、信奈は倒すよ。

その生死に関わらずな。

それが俺の目標でもある」

 

「天竜.....」

 

「十兵衛。君はその軍服を着用し、

髪まで切った。俺に着いてくる事を明白にした上で、まだ信奈を思えるんだね。大した忠臣だ。

信奈は家臣を見る目だけはあったらしい。

俺を除いてな」

 

「私は貴方の味方です。

それが貴方の意思なら、

私も信奈様を倒しますです。

ですが、私は信奈様を同時に救いたい。

.....間違っているでしょうか?」

 

「いいや。君らしい」

 

 

天竜は十兵衛にキスをする。

 

 

「う.....ん.....」

 

「キスの先はいつさせてくれるかな?」

 

「まっ.....まだ!心の準備が!」

 

「ふふっ。いつでもいいよ。

でもあんまり待たせると、

いつか押し倒してしまうかもしれない」

 

「うぅ.....」

 

 

これはおしどり夫婦と

言って良いのだろうか?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

11話 四ヶ国会議。

伊勢にて。

 

 

「はっ.....ハローなのです!」

 

 

緊張する秀俊。その相手とは.....

 

 

「Buon giorno」

 

「ぼっ.....ぼぼぼ.....ぼんじょるの!?」

 

 

天竜から習った英語の挨拶が通じず、

混乱する秀俊。

 

 

「こんにちは。お嬢さん」

 

「にっ.....日本語話せるなのですか!」

 

「そうだが?」

 

 

相手は赤髪のイタリア人、ジョバンナ。

 

 

「うぅ.....」

 

「秀俊。日本人なら

堂々としていて下さい」

 

「貴方は?」

 

 

秀俊の付き添い、金髪碧眼の美女。

 

 

「ジャンヌダルクです」

 

「ジャッ.....!?」

 

 

フランス人のジャンヌダルク。

 

 

「それは.....オルレアンの?」

 

「はい。話せば長くなりますが.....」

 

 

 

 

 

ジャンヌはサンジェルマンや天竜との出会いを簡潔に語る。

 

 

 

 

 

「本当に長い...........眠くなってきた」

 

「それよりもお腹空いたなのです」

 

「同感ですね。昼食にしましょう」

 

「私もお腹が空いた」

 

「眠たいのでは?」

 

「それとこれとでは別だ」

 

「ふふっ......」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「デキタアル〜!」

 

 

明国人の黄黄の料理が運ばれる。

 

 

「これは.....日本や支那の料理

だけではないですね」

 

 

ジャンヌが言う。

 

 

「天竜ニ色々教ワッタアル。

他ニモ朝鮮料理ヤ、

フランス料理ヤイタリア料理モアルアル」

 

「ほう」

 

 

ジョバンナも興味を示す。

懐かしの郷土料理もあるのだ。

 

 

腹ペコ3人官女が一斉に食べ始める。

 

 

「むしゃむしゃむしゃ!」

 

「はむはむはむ!」

 

「ガツガツガツ!」

 

 

会話もせず、只々食べ続ける3人。

 

 

「何ニモ喋ラレナイノモ、

不思議ナ気分アル」

 

「あっ.....すみません。

黄黄。天竜に教わったとはいえ、

ここまで各国の料理を再現させるとは.....

感服入ります」

 

「谢谢!」

 

「むぅ.....」

 

 

なんとジョバンナが涙を流す。

 

 

「ドウシタアルカジョバンナサン!?」

 

「本当に.....本当に、

久しぶりに口した故郷の味。

母を思い出した」

 

「ソッ.....ソウアルカ。谢谢」

 

 

初めて会うが、こんな人だったんだ。

 

 

「むしゃむしゃむしゃ」

 

 

秀俊はまだ無言で食している。

 

 

「ドウデスカ、シンチャン?

シンチャンノ為ニモ、

歯応エヲ工夫シタリ、

逆ニ柔ラカクシテミタリシタケド.....」

 

「とてもおいしいなのです!」

 

「谢谢!」

 

 

黄黄は、味覚障害を持つ秀俊への料理はいつも人一倍気を使っているのだが、純真無垢な秀俊の感想により、いつも癒やされている。

 

 

「ところでジョバンナ。

貴方は何故この日本国に来たのですか?」

 

 

ジャンヌが切り出す。

 

 

「私は.....オルガンティノに護衛で着いてきただけ。特に目的はない」

 

「では、本国に帰りたいという願望は?」

 

「特にはない。貴族の家に生まれ、

ヨハネ騎士団にも所属していたが、

何も感じるものはなかった」

 

「.....つまらないですね貴方」

 

「何?」

 

「目標のない人生など、

死んでいるのと変わりありません。

誰かに決められて動くなど、

犬でもできる」

 

 

そう言われ、ジョバンナの目付きが変わる。

 

 

「そういう貴方はどうなのだ?

あの男に着いてゆく事が、

本当に正しい事と言えるのか!?

あの悪魔の化身のような男に!」

 

「確かに.....天竜は真っ当な人間ではありません。しかし、彼には夢がある。目標がある」

 

「夢?」

 

「天竜の理想の中に、

日本国や支那国やフランス王国やイタリア王国など、国一つ等の小さい思想に留まらない。織田信奈などいう者ですら亜細亜統一程度の思想しかない。

ですが天竜は、放っておけばこの星も出て行くかもしれない」

 

「.....貴方もまた、十字に身を委ねる存在であったはず、その天竜に実力があるとして、逆十字を掲げる悪魔に魂を売ったというのか!」

 

「ふふっ.....悪魔に魂を.....ですか」

 

 

すると、

ジャンヌは懐から十字架を取り出す。

 

 

「私は、夢の中でミカエル様と出会った。

目覚めた時、枕元にこの十字架が置いてあった事から、それが現実の事であると認識できた。

だが、ミカエル様はサタンだった。

今思えば、これは逆十字だったのかもしれませんね」

 

「...........」

 

「信じていたものがサタンであったなら、

私はそれに従います。

悪魔であるからと捨てられるものではないですから。私のあの方への憧れは.....」

 

「ふんっ.....」

 

 

ジョバンナは呆れかえる。

 

 

「私と黄黄はこの日本国にて骨をうずめる覚悟をしています。本国では私は数百年前に死んでいる事になっていますしね」

 

「黄黄ハ明国デハ重罪人アル。

帰ッタラ殺サレルカラ、

帰ルニ帰レナイアル。

マァ、親族ハトウニ殺サレテルダロウシ.....」

 

 

ジャンヌはフッと微笑する。

 

 

「ジョバンナ。

私は、日本人になってもいい」

 

「!?」

 

「この日本国は自由な国です。

例え生まれが他国であっても、

この国では志さえあれば日本人になれる。

貴方はどうですかジョバンナ」

 

「私に日本人になれと?」

 

「このまま目的もなく過ごし続けるよりはいいのでは?」

 

「くっ.....」

 

 

 

 

 

 

「むしゃむしゃむしゃ」

 

 

 

 

 

 

秀俊はそんなのもお構いなしにむしゃむしゃ食べている。

 

 

「ヒデトシ。君はアレの妹だとか。

君は.....兄は好きか?」

 

「好きなのです!」

 

「...........何故好きだ?」

 

「テン兄様はとても優しいなのです。

辰だけにじゃない。

立場の弱い皆の味方なのです。

だから、それを脅かす者の敵なのです。

兄様のやり方は確かに野蛮なのです。

でも、それが最後に皆の為になるのなら、

辰はいくらでも応援するなのです」

 

「...........」

 

 

ジョバンナは黙って何かを思う。

 

 

「私は騎士だ。だから騎士道に従い、

私も国の為ではく弱き者の為に、

その剣を振るいたい。

この子のような者達の為に」

 

 

そう言って秀俊の頭を撫でてやる。

 

 

「だが、私はあの男の為に剣を振るうのではない。たまたま道が同じだったから協力するまで!アンチに組する事もない!」

 

「それでも嬉しいです」

 

 

ジャンヌは手を差し出す。

 

 

「ようこそ、魔道へ。

道は険しいですが元西洋の騎士同士、

共に切り開きましょう」

 

「ふん.....死人が生意気だ」

 

 

そうして、2人は握手を交わした。

 

 

「シンチャン、イマイチ2人ノ会話ガ分カラナインダケド、分カルアル?」

 

「辰も分からないなのです」

 

 

そう答えて、

秀俊はまたむしゃむしゃと食べ始めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

12話 宗教同盟

これは、ジョバンナやジャンヌ達による食事会が行われていた場所とは別の場所で行われた会談。

そこで2人は話し合っていた。

 

天竜とオルガンティノ。

 

 

「そんな.....!?」

 

「もう一度言うオルガンティノ。

伊勢イスパニア島を放棄せよ」

 

 

この島の名義はオルガンティノにある。

だがこれは、良晴が勝手に了承してしまった事で、この島は日本国が手放したという事になってしまった。

 

それを天竜は許さなかった。

 

 

「何も日本から出て行けというわけではない。その島が何処の国の領土であるか、ハッキリさせたいのだ」

 

「こっ.....ここは、僕が良晴さん及び織田信奈様の了解を得て.....」

 

「黙れ」

 

「.....!?」

 

「あの非国民の馬鹿共の了解でなんとかなると思うな!ここは元は志摩の九鬼嘉隆の領土。その夫である俺が改めて調査をした結果、お前らは不法滞在している事になった。さっさと明け渡せ!」

 

「そんな無茶苦茶な!」

 

「別に浮浪の旅をしろと言っているわけではないのだ。君らの居場所くらいは用意している。差し上げるのではなく、貸し与えるのだがな。

その上で伊勢イスパニア島は正式に日本固有の島に戻す事とする」

 

「くっ.....!」

 

 

だが、オルガンティノは揺るがない。

 

 

「駄目です!

僕は神に仕える身!

悪魔の下僕である貴方の要求など、

断じて受けない!」

 

「ちっ!.....これだから耶蘇は面倒だ」

 

 

天竜オルガンティノの襟元を掴み、

釣り上げる。

 

 

「この俺様が優しく対応してやれるのは美少女限定だ!糞餓鬼にも同じであると思うなよ!!」

 

「うぐぐぐっ!

やだ!悪魔なんかに屈するか!」

 

「ほう」

 

 

天竜は急に手を放す。

 

 

「げほっ!.....がはっ!.....」

 

「いけない、いけない。

これでは暴力団系ヤクザと対して変わらぬな。ここはもっと大人の対応をせねばなるまい」

 

「!?」

 

「なぁ、オルガンティノ。

君は何故この極東の地まで来た?」

 

「そっ.....それは.....、

イエス様の教えを、この国の方達にも知って頂きたいと!」

 

「それ以外の思いはないと?」

 

「はい!」

 

「おかしいなぁ。

では君らが宣教した国が次々と欧州の植民地にされている。それは何故だ?」

 

「それは.....」

 

 

オルガンティノには痛い質問だ。

 

 

「それは一部の宣教師がやっている事です。僕達は真から宣教を.....」

 

「自分がやってなければ、

同僚が何やっててもお構いなし。

本当に幼いな。お前は」

 

「なっ!?」

 

「お前は逃げているだけだろう。

同僚のやっている下衆に塗れた宣教活動が、悪であると認めてしまう事を恐れて、見て見ぬ振りをしている。悪事を黙認してしまっている。それは悪徳宣教師と対して変わらないんじゃないか?」

 

「くっ.....!」

 

「お前達のような偽善者が人々を狂わせる。お前達が広めようとする悪徳宗教が、目的もない闘争を生む。

そんな悪の権化、

俺が滅ぼしてくれる!」

 

 

天竜はウィンチェスター銃を召喚する。

 

 

「!!?」

 

「お前の死が平和の世の布石になるのなら、俺は遠慮なく引き金を引かせてもらおう!」

 

「僕は!僕はイエス様の.....キリスト十字教を信じている!十字教こそが世界に調和をもたらすと!」

 

「馬鹿が!歴代の戦火は宗教が由縁によって起こされた悲劇ばかりだ!そんな戦争の種など俺が摘んでやる!」

 

「なら貴方は!

そんなにも戦争を憎んでいるのに、何故自ら戦争を起こそうとするのですか!」

 

「戦争を終わらせるには戦争しかないのだ!話し合いという外交手段が途絶えてしまっては、もうどちらかが一方を打ち倒すしかないのだ!

そうして争いが終結すれば、

平和が訪れる」

 

「その為に世界に敵を回して、全てを打ち倒して平和を手に入れるのですか!」

 

「そうだ!俺は世界征服をする!

世界征服をして、世界平和をもたらす!」

 

「貴方は.....間違っている.....」

 

 

天竜は引き金に指をかける。

 

 

「もう一度聞く。

お前にとっての十字教は?」

 

 

涙目になっているオルガンティノは大声で返答する。

 

 

「世に調和と平和をもたらすものです!」

 

「そうか。それがお前だな。

グネッキ・ソルディ・オルガンティノ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

パァァンッ!!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あぐっ!?」

 

 

オルガンティノはキョトンとする。

てっきり天竜のウィンチェスターから発砲されたものだと思っていた。だが、そのウィンチェスターは天竜手から離れ、天竜は右腕から流血している。

 

 

「がぐぐぐぐぐ.....!

面白い.....面白いではないか!

お前はどこまで俺を楽しませてくれる?

なぁ、良晴」

 

「ふぅ.....ふぅ.....ふぅ.....」

 

 

発砲したのは、駆けつけた良晴だった。その手には火縄銃が握られていた。

 

 

「よくぞ一発で当てたな。

孫市も驚くであろう。

それともまぐれ当たりかな?」

 

「天竜さん.....もうやめてくれ.....」

 

「銀の銃弾か。

誰の差し金か知らんが、我が弱点を正確に突くとは、恐れ入った。日本製の吸血鬼、鬼には金が有効だが、吸血鬼には銀が有効だ」

 

「吸血.....鬼?」

 

「紹介がまだだったな。

俺は副将軍にして武田軍師。

羽柴天竜秀長。そして.....

ドラキュラ伯爵である」

 

「何を言って.....」

 

 

天竜は落ちていたウィンチェスターを左手で拾い、良晴に対し構える。

 

 

 

 

 

 

 

 

ドーーンッ!!

 

 

 

 

 

 

 

 

「!!!?」

 

 

だが、何も起こらない。

 

 

「空砲だよ。元よりオルガンティノを撃つ気などないさ」

 

「なっ!?」

 

「えっ?」

 

「俺が知りたかったのはオルガンティノの誠意。命乞いでもしたら、本当に殺すつもりだったよ。でもその必要もなさそうだ」

 

 

天竜が右手に力を込める。すると右手の怪我が逆再生されるかのように完治する。

 

 

「俺が滅ぼすのは悪しき十字教だ。

正しい事をしてる者まで害する事はない。俺は宗教が嫌いだが、同時に必要である事も理解はしている。

納得はしないがな.....」

 

「天竜さん.....」

 

「オルガンティノ。

お前が真から正義の為に宣教しているのなら、もう逃げるな。戦え。

自身が思う本当に道を切り開け。

もし君が決意するなら、

俺は快く手を貸そう。

その為ならば、この逆十字。

一時ならばさらに返しても構わん」

 

 

天竜は持っていた逆十字を本来の十字架に戻してみせる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「分かりました。僕はもう迷いません!戦ってみせます!戦って、正しい教えを広めてみせる!」

 

「いい答えだ。

縁があればまた会おう。それまでは今まで通り伊勢イスパニア島を任せよう」

 

「はい!」

 

 

そうして天竜は霧のように消えてしまった。

 

 

「............」

 

 

この時良晴は、何が正しいのか分からなくなっていたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

帰り際。

 

 

「ジョバンナの勧誘ご苦労ジャンヌ」

 

「はい。しかし、オルガンティノ達はどうなされるのです?」

 

「ふっくっくっくっく.....

しれたこと事よう.....」

 

 

天竜は邪悪な表情になる。

 

 

「正面から突進する牛に立ち向かうのは愚か者のする事。俺なら生贄を使って足止めさせ、牛が油断している所に横槍を突いてまとめて始末する」

 

「全く.....本当の悪魔ですね」

 

「ガスパール・カブラル。

裏で色々と嗅ぎ回っているようだが、全部バレバレだよ。俺は貴様をどう料理できるか楽しみにしている」

 

「オルガンティノには嘘を?」

 

「いいや?

確かに宗教は必要だ。

だが、複数あるから駄目なのだ。

一つあればいい。

世界を一つにまとめ上げ、

その上で国家神道を置く。

そうなれば争いは消え失せる。

それまでは精々利用させてもらうぞ人間共」

 

「まるで人間を超越した者の言葉ですね」

 

「そうとも」

 

 

天竜は言う。

 

 

 

 

 

 

「俺は人間である事に耐え切れなかった化物なのだからな」

 




キンタマ━━━ωヾ(`・ω・´)ノω━━━!!!

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