天翔ける龍の伝記   作:瀧龍騎

59 / 124
さぁ、新章です!
今日も張り切って行こー!


七章 魔将軍天竜
第四十七話 吸血者の選択


俺の正体はドラキュラ伯爵。

それが分かった今、俺は.....

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「くひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃ!!!!」

 

 

 

「「!?」」

 

 

突然の高笑いに、光(左馬助)アマテラスも驚愕する。

 

 

「私を殺してくれ?

不死者を喰って強くなれ?

バーカか!!

この俺が他人の指図を受けると思うか?

そんなわけがない!

俺は自由に生きている!

自由に生かし、自由に殺す!

他人の願いなどいちいち聞いてられるか!

 

そうだ.....

俺はドラキュラだ!

俺は魔王ドラキュラだ!

 

俺に命令する事は許さぬ!

それが例え不死者だろうと、

それが例え太陽神だろうと、

それが例え魔界公爵だろうと!

 

俺は俺だ!

他人が決める事ではない!」

 

「うふっ.....

うふふふふふふふふふふふ.....」

 

「ふくくくくくくくくくくくく.....」

 

 

光(左馬助)とアマテラスが

それぞれで笑っている。

 

 

「流石は我が旦那様!

それでこそ貴方ですわ!」

 

『天ちゃんはそれで充分。

好きに暴れて好きに殺すといい。

でも、それが結果的にわっちらの思惑通りになるでありんす』

 

 

2人の女共が邪悪な表情で見下す。

 

 

「黙れ売女共」

 

 

天竜は中指を立てる。

 

 

「そんなに死にたいなら殺してやる。

そのままヌクヌク生きていた方が幸せだったと思える程の最凶の死を与えてやる!」

 

「この子に対してもこれが言えるかしら?」

 

 

すると、光(左馬助)の影から何やら少女が現れる。その瞳は紅玉のようで.....

 

 

「まっ.....ままま.....まさか!?」

 

 

少女を見た瞬間、天竜は確信してしまう。

 

 

「この子の名前は勘解由小路闇(ヤミ)。

貴方の娘よ」

 

「俺の.....娘.....」

 

 

可能性としては考えた。

光は妊娠中に死亡した。

そう思い込んでいた。

だが光は生きていた。

だから胎児もまた

生きているかもしれない。

そんな希望のようなものがあった。

 

 

「お父.....さん」

 

 

3〜4歳ぐらいの見た目の幼女は天竜に向かってそう呟く。

天竜に途端に涙が出る。

 

 

「生きていて.....くれた」

 

「羽柴拾はただのダンピール。

だけれどこの子は純粋なヴァンパイア。

次世代のドラキュラよ」

 

『天ちゃ〜ん。

本物の魔王になりたくば、

自分の娘を殺すがいいでありんす』

 

「くそぉ〜!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

武田本軍。

 

 

「馬鹿な!?

北条が降伏しただと!?」

 

 

泥仕合となって双方が衰退し、そこで和平の役に入ろうと目論んでいた武田信玄。だが、天竜があっさりと戦勝してしまったが為に、その計画は水の泡となってしまった。

 

 

「羽柴殿は箱根で駐留しており、

信玄様にそこまで来て欲しいとか」

 

「ほう」

 

 

使者の報告を受ける信玄。

 

 

「無礼な!

主君に自ら来いと言うのか!」

 

 

山県昌景が言う。

 

 

「いや!

あいつはよく分かっている!

箱根温泉で会談をしようというのだな!

やはりあいつは面白い!」

 

 

信玄はかなりの温泉好きだ。

 

 

「.....そうでしょうか?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

箱根にて。

 

 

「天竜様は温泉に入っておられます」

 

「まさか本当だったとは.....」

 

 

織部から報告を受けた昌景は呆れ顔になる。一方、信玄は入る気満々だ。

 

 

「そうかそうか!

いくぞ昌景!お前も脱いで入れ!」

 

「うぅ.....また男と混浴.....」

 

 

実に3回目だ。

 

 

「てっ.....ててて天竜様が又もや混浴!?

この古田織部!

共に入って彼の方の貞操を守らねば!」

 

 

織部まで脱ぎ出し、混浴の準備をする。

 

 

「あいつもモテモテだなぁ」

 

 

信玄が呟く。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「邪魔するぞ天竜」

 

「あぁ、これはこれは信玄様。

お迎えもしないですいやせん.....」

 

「全くです!

信玄様!この助平にお仕置きを!」

 

「うるさいな昌景」

 

「なっ!?

先輩に対してなんて言い草を!!」

 

「落ち着け.....

天竜。小田原征伐誠に御苦労だった。

改めて礼を言いたい」

 

「それは勿体無きお言葉だねぇ」

 

「信玄様!前を隠して下され!

この助平に視姦されますよ!?」

 

 

それに対し、待機していた織部が反論する。

 

 

「大丈夫です!

天竜様は貧乳好き!おっぱいお化けにはちっとも興味など持っていないのです!」

 

 

天竜の貧乳好きが露見した事で、

織部の機嫌はだいぶ良かった。

 

 

「織部」

 

「ひぃっ!?.....申し訳ありません!」

 

 

天竜にギロリと睨まれ、

引き下がってしまう織部。

 

 

「ん?」

 

 

湯気で始めは見えなかったが、

天竜の他に別の人物も入浴している。

 

 

「そいつは..................氏康!!?」

 

 

信玄には予想外すぎた。

北条氏康は誇り高き姫武将。

敗戦したともなれば、二度と人前には顔を出さないような奴だと思っていたからだ。

 

 

「お前がここにいるとはな、氏康」

 

「............?」

 

「その様子じゃ天竜に服従したか?

どうゆうつもりだ?」

 

「..........あぅ」

 

「おい!何か答えたらどうなんだ?」

 

「うぅ.....」

 

 

なんだか氏康の様子がおかしい。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「貴方はどなたですか?」

 

 

 

 

 

 

 

 

「は?」

 

 

こいつ、今なんて言った?

私が誰かだと?

この武田信玄が分からないのか!?

 

 

「おい氏康!

私だ!武田信玄だ!

私はお前の宿敵だろう!?」

 

「あぅあぅ.....

ごめんなさい!ごめんなさい!」

 

「..........どうなっている?」

 

 

見た目は完全な北条氏康だ。

洗濯板な胸も、臀部の蒙古斑も.....

なのに、中身だけが別人だ。

 

 

「氏康が降伏を承諾した後のこと.....」

 

 

天竜が口を開く。

 

 

「彼女を裏切った風魔小太郎によって、彼女は1度射殺された。だが、肉体が死を迎える前に俺が引き戻した。

..........肉体だけな」

 

 

だが、魂は置き去りになってしまった。

 

 

「抜けた魂の代わりに生まれてきたのがこの子だ。氏康の娘と言ってもいい。いや、多重人格と考えれば妹か.....」

 

「つまり.....氏康は死んだのか?」

 

「うんや?微かではあるが、氏康の霊気が感じられる。多重人格は精神的な問題だ。時間次第で戻ってくる事もできる。だから今回は、無理矢理戻すような事はしなかった」

 

「.....そうか」

 

 

信玄は哀しみの表情を浮かべる。

 

 

「御主人様?」

 

 

氏康は俺をこう呼ぶ。己を俺の召使いかなんかと認識しているのだろうか?

 

 

「まっ、何れにせよ」

 

「ひゃっ!?」

 

 

天竜は氏康の頭を己の胸に引き寄せる。

 

 

「こいつは俺の女だ。

こいつは俺が守ってやる。

そう、決めたんだ」

 

 

氏康はカァーッと顔色を赤める。

 

 

「その覚悟は誠か?」

 

「あぁ」

 

 

すると信玄は大きく息をつく。

 

 

「まぁ、いいか。

戦が終わった暁には、あいつと共に酒でも飲み交わそうと思っていたが、それもだいぶ先になったようだな!」

 

「信玄様.....」

 

 

昌景が呟く。

 

 

「んで、そっちのは?」

 

 

信玄は温泉の奥の方で

静かに泳いでる幼女を指す。

 

 

「あぁ、娘っす」

 

「娘ね。はぁ..........娘!?」

 

「そうです。血の通ったね」

 

「お前の子供は、今織田信奈に人質になってる息子だけじゃなかったのか!?」

 

「最近見つかったんす。

名前は羽柴闇」

 

「闇」

 

 

自己紹介のつもりなのか、闇がそう言う。

 

 

「母親は?」

 

「風魔小太郎」

 

「はぁ!?」

 

「他に明智左馬助光春。

それと勘解由小路光。

そんな名前もあります」

 

「..........事情がありそうだな」

 

「はい」

 

 

信玄は察してくれたのか、

それ以上聞いてくることはなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「さて、お前に恩功を与えねばなるまいな。望みはあるか?」

 

「はい。では失礼をして.....」

 

 

 

 

 

天竜は言い放つ。

 

 

 

 

 

 

 

「北条家が領有していた地を頂きたい」

 

「何っ?」

 

「なんとっ!?」

 

 

信玄も昌景も驚く事だ。

 

 

「無礼にも程がある!

よくも抜け抜けと!!」

 

「天竜。お前は自らの手で小田原を落とし、北条を降伏に追い込んだ。確かに自ら取った地を領有する権利はあるかもしれない。

だが、お前は武田家の軍師だ。

手柄を独り占めにするつもりか!

ここは管理を任せていた駿河あたりで.....」

 

「それは徳川にでもやって下さい。

それに独り占めではない。

港は里見家が落ち次第、九鬼や毛利に任せる。その他の地も、戦に協力してくれた者たちへ分配する」

 

「何れにせよ、お前の手の内の者だろう。待機していた武田本軍へはビタ一文払わぬと申すか!」

 

「まぁ、話を聞いてくれ。

常陸国を知ってるか?」

 

「あぁ、佐竹の地の.....

今の領主は佐竹義重だったか.....」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「その常陸国が、先程落ちた」

 

「なっ!?」

 

 

佐竹家の常陸国は伊達や北条と、周囲を敵に挟まれた国であったが、それでも絶対に落とされないという自信を持っていた国だった。

 

 

「まさか.....」

 

「落としたのは当然、俺じゃない。

羽柴朧という名の姫武将だ」

 

「羽柴.....朧!?」

 

「あんたが双子の妹を影武者に置いたように、俺も瓜二つの姉のような存在を影武者に置いていた。だが俺は、あの時迂闊にも側から離してしまった。奴は受け取った1万の軍をそのまま率いて連合軍から離散。

その勢いで常陸国を襲撃。

極々短期間にて佐竹家を屈服させた」

 

「なんという事を.....」

 

「奴は元天竜軍参謀の藤堂高虎まで連れて行きやがった。佐竹義重は朧に服従してしまっている。恐らく、そこから北条の領地や伊達、武田を狙うつもりだ」

 

「強いのか.....そいつは?」

 

「少なくとも俺より.....

今の戦力でも勝てる自信はない。

恐らく武田でも勝てない」

 

「それ程までの奴か!?」

 

「えぇ。俺が聞いた話が正しければ、

奴は欧州でも戦争を起こしている。

欧州の最大勢力、オスマン帝国相手にね。

史実では相手にもならなかったようだが、

フロイスの話では、

オスマン帝国は衰退の意図を辿っているらしい。多分あいつによるものだろう」

 

「.....北条の地があれば、

そいつに勝てるのか?」

 

「何もないよりはましだ」

 

「そういう事情があるのなら仕方あるまい。我ら武田がその朧とかゆうのに勝てないというのは腑に落ちないが.....

武田家軍師、羽柴天竜秀長。

お前に小田原を中心とする、

元北条氏の領土をお前に与える。

常陸国を奪った、羽柴朧を討て!」

 

「はっ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

信玄が去った後の脱衣所にて、

氏康の身体拭いてやる天竜。

 

 

「ごっ、御主人様。

これぐらい1人で.....」

 

「お前は俺の側室だ。

それに多くの迷惑をかけてしまった。

罪滅ぼしには軽すぎるが.....」

 

「お父さん。闇も」

 

「だよな。闇も拭いてやらんとな」

 

 

天竜は闇の頭をゴシゴシと拭いてやる。

 

 

「光と.....闇か.....」

 

 

あいつは

この闇を置いていなくなってしまった。

何のために俺にこの子を?

 

 

「まぁ、いっか」

 

 

この子だって俺の子供。

拾と同じで愛する我が子だ。

平等に接し、平等に愛そう。

 

 

「痛っ!

お父さん.....痛いよう」

 

「あっ、ごめん。

大丈夫だったか?」

 

「うん。お父さん」

 

 

紅玉の瞳が無垢に見つめてくる。

 

 

「そうだな。

俺はお前の父ちゃんだ」

 

「?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

忍城。

忍城が開城した。支城より前に、本城の小田原が落ちてしまった。その為、後ろ盾を失った忍城勢は開城しざるをえなかったのだ。

この日、石田三成は開城した忍城に大将自ら赴くという選択をとる。

 

 

「自ら敵の陣地に踏み込むなど、

危険すぎるぞ佐吉」

 

 

吉継が止めたが聞く耳を持たなかった。

 

 

「私は会いたい。

この私が勝てなかった成田長親に!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

大広間にて、

腕を吊った長親を含めた、忍城勢の幹部が集合する中で、上座に用意された席に、三成・吉継、それと軍使の長束正家が座った。

それとは別に、広間の外にて、護衛の為に着いてきた島左近と、城主弟の成田甲斐が睨み合っていた。

 

三成はじっと、忍城勢の先頭で頭を下げる長親だだけを見つめていた。

 

 

「貴方が、忍城の城代。

成田長親殿ですか?」

 

「そんな大層な者ではありません。

ただの木偶の坊ですよ」

 

「..........」

 

 

これが、田楽踊りと敦盛を唄った舞姫か。

 

 

「では、先の約束を果たさせて貰おうか」

 

 

軍使の長束正家が切り出す。

 

 

「忍城勢の者は全員、財一切を置いて城から出て行く事!」

 

「なっ!?

そんな約束をしたのですか!?」

 

 

それは三成にも初耳だった。

正家には忍城勢を挑発する事を期待していたのだが、まさかそんな卑劣な手を使っていたなど、思いもしなかった。

 

 

「少しでも手柄がないと、

副将軍殿に顔が立たぬだろう」

 

「くっ.....!」

 

 

天竜様は弱者を虐めるようなやり方は絶対しないし、許さないだろう。

 

 

「あの〜?」

 

 

そんな中、長親が手を挙げる。

 

 

「なんだ木偶の坊」

 

「えぇと〜.....何て言えばいいかなぁ」

 

「シャキッとしろ長親!」

 

 

丹波に突っ込まれる。

 

 

「なんでぇ!まだ戦は終わってねぇとでも言うつもりかよ!」

 

 

和泉が言う。

 

 

「そう、それ!」

 

「「「!!!?」」」

 

「長束殿」

 

 

長親は目付きを変えて宣言する。

 

 

「石田方の水攻めは凄まじいものであった。だが、幸い忍城の本丸は無傷。

我が軍の優秀な武将正木丹波、柴崎和泉、酒巻靱負、皆健在!

再戦をする準備はいつでも出来ている!

初戦で見せた武功を再びそちらに見せつける事となろうが、どうだろうか!!」

 

 

それは忍城勢3千人の思いを背追い込んだ、強烈な宣告である。

 

 

「いっ.....痛たたたたた.....」

 

 

力強く宣言したのが

肩の傷に響いたらしい。

 

 

「長束殿、貴様が蒔いた種だ。

自身で収集をつけよ」

 

 

吉継が言う。

 

 

「うぐぐぐ.....くそっ!

財の持ち出しは自由とする!」

 

 

その返答を聞き、

一同の表情が朗らかになる。

 

 

「長親殿、あまり虐めないで下さい。

素晴らしい戦ができたお礼として、

そちら側の主張はできる限り聞いてあげるつもりです」

 

 

三成もまた穏やかな表情をしていた。

 

 

「では、失礼ながら2つ。

そちらが行った水攻めにて、私達の田圃に大量の土俵が流れ込んできました。あれを.....片付けてはくれませんかね?あのままじゃ百姓らが田植えを出来ませんので」

 

「ぷはっ!.....あははははははは!!

財の持ち出しにはあれだけ激昂していたというのに、それと同等に田植えも心配するとは.....

宜しい!兵達に片付けさせましょう!」

 

「ありがとうございます」

 

「して、もう1つは?」

 

「..........」

 

 

 

 

その時、また長親の顔つきが変わる。

 

 

 

 

 

 

「貴君の兵に降伏した百姓を斬った者がいる。その者の首を.....」

 

「なっ!?」

 

 

それも三成には初耳だった。

兵の規律が乱れていたのは知っていたが、まさか殺しをする迄とは予想していなかった。

 

 

「それは誠に許し難い!

約束しましょう長親殿!

必ずや見つけ出し、

その首を私自ら届けよう!」

 

「ありがとう.....ございます」

 

 

長親は心の底から満足な気持ちで礼を言う。

 

 

「いっ.....石田殿。例の件は?」

 

「あぁ.....」

 

 

三成の本心、忍城勢にこれ以上の追求はしたくなかったのだが、約束事である以上仕方がない。

 

 

「成田長親殿を副将軍様の側室にするという話がありましたが、どうですか?」

 

 

三成は長親がどちらを答えようが、それを受け入れてやるつもりだった。

 

 

「..........お受けします」

 

 

だが、彼女は拒否しなかった。

その時広間の外で誰かが崩れ落ち、

その場を走り去って行った。

 

 

「そう.....ですか」

 

 

三成はそれを厚く受け止める。

 

 

「一つお聞きしても宜しいですか石田殿?」

 

「なんです?」

 

「この忍城の他に、残った支城はいくつありましたか?」

 

 

その問いに、三成は再び吹き出す。

 

 

「ぷっぷぷ.....

本当に何も知らないんですね。

ここだけですよ。落ちなかったのは。

小田原城を含めた多くの城が落ちた中で、この忍城だけが落ちませんでした」

 

「そう.....ですか」

 

 

それを聞いた幹部連中が盛り上がる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「その通り!

お前は氏康に継いで、

素晴らしき総大将であった!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「「「!!!?」」」

 

 

謎の声と共に、そこに不気味な霧が出現する。そしてその中から.....

 

 

「天竜様!!?」

 

「よう佐吉!お疲れさん」

 

 

小田原征伐連合軍総司令である天竜が現れたのだ。只事ではない。

 

 

「それっ」

 

 

天竜は何かが入った袋を2つ程前に投げ捨てる。それは人間のアレが丁度入りそうな大きさで.....

 

 

「その中身は生首だよ。

例の百姓を斬った不届き者のな」

 

「「「!!!?」」」

 

「こっちの情報は式神を通して殆ど入ってきてる。こっちに来てすぐに首を刎ねた。当然、あの舞いもちゃんと拝見させてもらったよ」

 

 

天竜の肩に何やら小動物が出現する。最初は白い鳩だと思われたが、それはなんと白い蝙蝠だった。

 

「..........」

 

「長親殿」

 

「ひゃっ.....ひゃいっ!」

 

「ふふ.....君が真から嫌なら、

わざわざ俺の側室にならなくてもいい。

どうする?」

 

 

長親はしばらく惚けていたが、

次第に朗らかな表情になる。

 

 

「大丈夫ですよ。

これは約束ですし、けじめです。

それに、副将軍様が想像と違って、優しそうな方で良かったです」

 

「俺はどんな奴だと思われてたのだ?」

 

「まぁ、魔王だね」

 

 

靱負がボソッと言ったのを和泉が慌てて口を塞がせる。

 

 

「全く、面白い連中だ」

 

 

天竜は術を唱え、また霧を出す。

その中から出てきたのは.....

 

 

「くそっ!放せ〜!」

 

「氏長!?」

 

 

それは荒縄で拘束された

忍城城主、成田氏長だった。

 

 

「羽柴・北条の両方を敵に回し、

逃げ回っていた所を捕らえた」

 

「うぅ.....忍城城主としてなんたる屈辱か!」

 

「残念ながらその権利はもうない」

 

「!!?」

 

「忍城の管理権は俺にある。

よって命じよう!

成田氏長から忍城城主の座を剥奪。

その権利を城代の成田長親に与える。

今日より成田長親こそが忍城の新城主。

よって、城内の者の自由は長親に委任するものとする!」

 

「そんな!?」

 

 

当然、氏長は納得できない。

 

 

「私が.....城主.....」

 

 

反対に長親は自信なさげだった。

 

 

「いいんじゃねぇの?」

 

 

和泉が言う。

 

 

「氏長さんよかマシでしょ」

 

 

靱負が言う。

 

 

「できるか.....長親?」

 

 

丹波が言った。

 

 

「..........分かりました。お受けします」

 

「長親!!」

 

 

氏長が叫ぶ。

 

「氏長.....君は器じゃなかったんだよ。

私に器があるかは分からないけどね」

 

「くっ.....」

 

 

氏長はその場に崩れ落ちた。

 

 

「なぁ、長親」

 

「はい?」

 

 

天竜は長親に近寄り、キスをする。

 

 

「!!!?」

 

「のぼうの姫の味。

特殊な美味さであるな」

 

 

そう言うと天竜は再び霧に包まれる。

 

 

「いやぁ、幸せだ。

美人さんが2人も手に入るとはね」

 

 

そう言って消えてしまった。

 

 

「羽柴.....天竜か」

 

 

のぼうの姫は今日も朗らかな表情であった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「くそぉ〜!いつか絶対に

長親を取り戻してやるからなぁ〜!」

 

 

元城主弟は決意を固めた。

 

 




小田原征伐と忍城戦。
2つに分けて書いてきた戦争がやっと終結しました。
さて、次回は少し平和編です。
次回予告
吉原
〜小田原の支配者天竜〜

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。