天翔ける龍の伝記   作:瀧龍騎

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さてさて、今日から新章への
布石が始まります。


第四十六話 未来からの使者

未だ生きていた無線によって、

小太郎の指示が全体へ伝わる。

 

 

『我々は敗北した。

武装解除をし、投降せよ。

これ以上の戦闘は許可しない!』

 

 

当然、氏康が反発する。

 

 

「どうゆうことよ風魔!!

私はまだ負けてないわ!!」

 

「『まだ』でしょう?

時間次第で敗北は訪れる」

 

「くっ.....!」

 

「どうやら多大な情報漏洩があったようです。始めは万見仙千代だけかと思っていましたが、敵に情報を流していたのは他にもいたようですね」

 

「なんですって!?」

 

「成田氏長ですよ。

彼女が裏切り者の代表格です。

戦が始まる前にはもう、敵方に通じて降伏の手筈を取っていたようです」

 

「今.....あいつは?」

 

「見当たりませんね。小田原城崩壊のどさくさで逃げ出したようですね」

 

 

それを聞き、

氏康の怒りがさらに込み上げる。

 

 

「おのれ!おのれ!おのれ!

妹のように可愛がってやった恩を、

こんな仇で返しやがってぇ!!!」

 

 

そんな氏康を見て、小太郎は.....

 

 

「降伏しましょう姫様。

こんな抵抗戦は無意味です」

 

「うるさい!うるさい!うるさい!

あんたは所詮、忍よ!!

主の命令を黙って聞きなさい!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その言葉にプツンときたのか、

小太郎は思いっきり氏康の頬を殴った。

 

 

「がふっ!?」

 

 

突然の事態に氏康は理解できない。

 

 

「餓鬼ですかあんたは?

もう疲れましたよ。

あんたのおもりはね」

 

「なっ!?」

 

 

小太郎は態度を翻し、氏康を見下す。

 

 

「あなたにはもう、

総大将の資格はない。

兵を無駄に死なせ、

イタズラに抵抗戦を行い、

勝てる見込みのない騒乱を続ける。

私が仕えるのは小田原城の城主。

城も資格も失った貴方に、

私が仕える事はもうない。

自害でも自滅でも、

1人で好きにするといい」

 

「そんな.....風魔!私は.....

貴方にまで見捨てられたら.....」

 

 

氏康はまるで命乞いするかのように小太郎にすがりつく。涙を流しながら。

 

 

「触るな弱者が。

強くなくなった北条氏康に興味はない」

 

 

そう言って切り捨てられた。

 

 

「風.....魔.....」

 

 

信頼していた者に見限られた彼女は、

それ以上の生気を取り戻す事はなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そうして、北条方に白旗が挙がる。

 

 

「やっと降伏したか」

 

「「うらぁ!うらぁ!」」

 

 

融合人間の真柄直竜はまだ暴れている。

 

 

「おい直竜!もう終わりだ!」

 

「「うらぁ!ちぇあっ!!」」

 

「お〜い!!」

 

「「くははははははははは!!!」」

 

 

 

 

 

 

 

プツンと切れた天竜はその場にあった石を持って直竜に投げる。

石は後頭部に直撃した。

 

 

「「痛った!?」」

 

「いい加減しやがれ!!

壊れたオモチャか手前ぇは!!」

 

「「うぅ.....」」

 

 

直竜は涙目になりながら天竜の方へ近寄り、か細い声で謝りながら彼にしがみつく。

 

 

「知能が低下してるってレベルじゃないな。むしろ幼児退行してないか?」

 

 

でっかい赤ちゃんを拾った気分だ。

 

 

「ったく。躾もしないといけないか」

 

 

以前より成長してるのは、

武士としての強さぐらいだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その後、一階だてくらいの地まで落とされた小田原城の天守閣より、北条氏康が出てくる。

後ろに風魔小太郎をつけて.....

 

 

「無様なものだなぁ北条氏康」

 

「くっ.....羽柴秀長!!」

 

 

天竜の顔を見て、また氏康に怒りがこもる。

 

 

「大大名北条早雲の孫にも関わらず、

お前はパッと出の武将に敗れた。

自身の強さの象徴でもある小田原城まで失った。甲羅を無くした亀は何をする。ただただ鈍いトカゲに成り果てるか?」

 

「ぐぐぐ.....殺せ」

 

「?」

 

「殺しなさい!!

私は出家するつもりも、

あんたの側室になる気もない!

武士として、

立派に果ててみせる!!」

 

「はぁ〜.....」

 

 

それに対し、天竜は溜め息をつく。

 

 

「立派な死?何ソレ?

死に良いも悪いもあるかよ。

死はいつだって平等。

どんな方法を取ろうが、

死は死だ。

それに、

俺は女子は殺さないんだよ。

目覚めは悪いし、勿体無いし」

 

「なんですって!?」

 

 

天竜の考えが分からない。

 

 

「なぁ氏康。

甲羅の無くしたお前はただのトカゲ。

だが、もう一度甲羅を与えれば、

また亀になれるか?」

 

「何っ!?」

 

「お前の防衛能力はこの時代においては桁違いだ。この俺も半分ズルをしなきゃ勝てなかった。

堅城さえあれば、お前は無敵だ」

 

「何が言いたい」

 

「今度は俺の為にそれを使ってはくれないか?お前を失う事は非常に惜しい。財政政策にも、貿易にも優れたお前を手に入れれば、我が天竜軍は更なる発達を遂げることができるであろう」

 

「私がそれを承認するとでも?」

 

「思わない。

だが、承認してもらわねば困る」

 

「ぷっくく..........

あっはっはっはっはっはっはっは!!!

承認してもらわないと困るぅ?

馬鹿じゃないの?

世界は貴方を中心に

回ってるとでも思ってるの?」

 

「あぁ、その通りだ」

 

「呆れた。

こんなうつけ者に負けたってゆうの?」

 

「もう一度言う。俺のものとなれ」

 

「もう一度言う。断る」

 

「ぶれないな〜。

なら側室になってくれ」

 

「同じ事じゃないっ!!」

 

「ふ〜む。

君程魅力的な女性を手に入れれば、

俺は大変幸せなのだがな?」

 

 

天竜の言葉に氏康が一瞬止まる。

 

 

「なっ.....なっ.....なっ!?

ふざけないで頂戴!!

大体、以前に私の事を馬鹿にしていたじゃない!!今更そんな戯言を述べ立てた所で騙されないわ!」

 

「あぁ、あれか。あれは君を炊きつける為に挑発したのだが、勘違いしてしまったようだな」

 

「なっ.....何よ?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「俺は貧乳フェチだ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「は?」

 

「俺は貧乳が大好きだ」

 

「はぁ!?」

 

「貧乳が好きだ。

ちっぱいが好きだ。

ペタンコ胸が好きだ」

 

「うううっ.....嘘よ!!

あんたの側室って大きい奴が多いじゃない!!雑賀孫市とか九鬼嘉隆とか!!」

 

「別に巨乳だから結婚したんじゃない。

政略結婚だし、俺はあいつらの別の場所に惹かれて嫁に選んだだけだ。

まぁ、巨乳も嫌いじゃないがね。

だが、どちらかといえば貧乳が好きだ」

 

「うううぅ.....」

 

「幼女の貧乳とはまた違う。

君ぐらいの年齢だからいいのだ。

言うなればスレンダーか?

貧乳はいいぞ?

感度はいいから房事は楽しいし、

何より大事なのは、

将来的に垂れない事だ!」

 

 

何やら天竜が熱演を始める。双方の軍の兵も見ているにも関わらず、彼はそれを全く気にしていない。

 

 

「それだけでなく君は美しい。

つむじから爪先まで完璧だ!」

 

「うっ.....嘘言わないで!!

もっ.....蒙古斑だって馬鹿にしてたでしょ.....」

 

「そんな君の臀部に口付けをしたい」

 

 

ただのセクハラだ。

 

 

「さらに積み重ねて言おう!

我がものとなれ氏康!

俺はお前と共に天下を取りたい!」

 

 

その言葉が氏康の胸に突き刺さる。

 

 

「羽柴.....秀長.....」

 

「天竜だ。

そう呼ぶ事を許そう!」

 

「天.....竜」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「天〜竜ぅぅぅ!!!!」

 

 

 

 

 

 

 

その直後早馬に乗って、

十兵衛が剛速球のように駆けてきた。

 

 

「ういっ!?十兵衛!?

もう聞きつけて来たのかよ!?

どんだけ地獄耳なんだよ!?

流石は魔将軍の妻!!」

 

「誰がですか!!!

貴方は言った先からもう浮気して!!

よもや敵軍の大将まで口説くだなんて!!

というか貧乳好き!?

それは私の胸が小さいと言いたいですか!!

今日という今日は許さないですぅ!!」

 

「いやいや。

お前はB〜Cカップくらいあるだろ。

俺がいいのはAカッ.....」

 

「五月蝿いDEATH!!」

 

 

すっ飛んで来ていきなり夫婦喧嘩だ。

今度は氏康が置いていかれる。

 

 

 

 

 

 

 

 

「ぷっ.....くすくすくすくす.....

あっはっはっはっはっはっはっはっはっはっはっはっはっはっはっはっは!!!」

 

「「!?」」

 

 

また突然笑い出した氏康に揉み合いになっていた2人が振り向く。

 

 

「くすくすくす.....本当に.....

本当に面白い男ね。

羽柴秀長.....いや、天竜」

 

「ふんっ、外からじゃ分からんさ」

 

「そうね。内から寝首を狙ってみるのも面白いかもしれないわ」

 

「おいおい」

 

「冗談。では正室にでもなって尻に敷いてやろうかしら?」

 

「残念ながら先着がいる」

 

「そう。でも私が側室で満足するかしら?

その中で下剋上を起こして上位に立ち、夫である貴方の権利を全て掠め取るかもしれないわよ?」

 

「くくく.....くひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃ!!!

面白い!望むところだ!

そんな気も立たぬ程まで蕩けさせてやる!」

 

 

天竜も氏康もニヤリと微笑む。

十兵衛は複雑な表情だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「やっぱり.....

貴方はそうゆう人なのね」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「氏康っ!!危ない!!」

 

 

いち早く気付いたのは天竜だった。

氏康もそれに気付き後ろに振り返る。

 

そこに写っていたのは予想もしていなかったことであった。

 

 

風魔小太郎が拳銃を持って、

こちらに銃口を向けているのだ。

その表情は至って平坦で、

凍てつく殺気をこちらに向けている。

 

 

「小太郎.....何で?」

 

「姫様。お世話になりました」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一発の銃声が響く。

 

 

 

 

 

 

 

 

「氏康っ!!」

 

 

拳銃の弾丸が通過し、

倒れた氏康に駆け寄る天竜。

彼女は頭部から血を流し、

グッタリしている。

直撃ではないが、このままでは.....

 

 

「ちっ.....

沙九把・秉無・覇寿于羅!」

 

 

氏康の頭の傷が消えてゆく。

その直後、天竜の頭部から鮮血が。

 

これは例の他人の傷を己に移す術だ。

 

 

「がぐぐぐ.....

風魔.....小太郎.....

何故氏康を.....

何故自身の主君を撃った!!」

 

 

頭部から流血しながら、

天竜が怒りを露わにする。

 

それに対して小太郎は、

覆面の下で邪悪な笑みを浮かべている。

 

 

「勘解由小路天〜竜。

貴方は何故、小田原城を崩壊させた?」

 

「何っ!?」

 

「史実において、豊臣秀吉は石垣山に一夜城を建てる事で北条を屈服させた。貴方もまた同じ方法を取ればよかった。

でも貴方は小田原城の崩壊を結構した。

それは何故?」

 

「それは.....」

 

「答えは簡単。弟への対抗心でしょう?

ここで石垣山一夜城を建てた所で、

墨又一夜城を建てた相良良晴の前例がある限り、どう精巧に作ろうが、素晴らしき勝ち方をしようが、結局は真似であると判断される。

だから自分なりの新しい戦法を作り出した。

違います?」

 

「くっ.....」

 

「そう。貴方はいつも他人より優位に立ちたがる。高位に着く事に興味はないくせに、他人より優れている点を強調したがる。

貴方は他人を追い抜く事こそに喜びと楽しみを覚えている。だからこそそれより上のない1位には興味を持てない。

だからこそ、姫巫女だけには絶対的な忠誠を誓う。そのすぐ下に最終目標を起き、それ以下を全て蹴落としてね」

 

「なっ.....何故!?」

 

 

何故こいつはここまで俺を知っている。

 

 

「貴方は常に嘘をつく。

他人にも、自分自身にも。

騙される辛さを知っているからこそ、

貴方は大勢を騙す。

死の恐怖を知っているからこそ、

貴方は大勢を殺す。

戦争を愚かさを知っているからこそ、

戦争を起こす。

貴方はそんな人間。

世界は自分を中心に回っていて、

それ以外は自身が行うゲームの駒。

妻だろうと子だろうと。

貴方は平等に考えている。

平等に生かし、平等に殺す」

 

「お前.....」

 

「貴方が何より嫌っているのは、

何でもない。

自分自身なんです。

だからこそ自分自身が悪であるといつも主張する。そう言い放つ事で自分を誤魔化している。

どれだけ非難されようと、

自分は魔王であると開き直る!」

 

 

 

 

 

 

 

 

「そうか.....そうだったか」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

天竜は懐より愛用の拳銃を取り出す。

 

回転式マグナム拳銃。

 

それを真っ直ぐ風魔小太郎に向ける。

奴は全く動じない。

 

 

 

 

天竜は小太郎に対し発砲した。

 

 

 

 

 

 

 

 

弾丸は小太郎の真横を過ぎる。

その覆面を巻き込みながら.....

 

 

 

 

覆面が引き裂かれる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「そうか.....やはりお前か」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「そっ..........そんな」

 

 

隣で見ていた十兵衛は唖然とした。

何故なら.....

 

 

 

 

 

 

 

 

 

風魔小太郎の顔が己と瓜二つだったのだ。

 

 

 

古今東西いおいて、十兵衛と同じ姿形の人物はたった1人しかいない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「.....光」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

勘解由小路光。

明智光。

天竜の前妻。

 

 

「久しぶりだな。光」

 

「こちらこそ」

 

 

光は頭を下げる。

 

 

「お前は.....」

 

「『死んだはず』なんて安い台詞でも吐くおつもりで?ですが私はここにいる。

私がここにいて、貴方はそこにいる。

今も昔も私は変わらない」

 

 

俺は光が死んですぐにタイムスリップした。俺が彼女の死亡報告を聞いたのは、その直後の.....

 

 

「!?」

 

 

そうだ!

あいつは何故嘘をついた?

それでもって何故こいつはこの時代に?

 

 

「まさか.....」

 

 

そうかそうか。

そうゆう事だったのか。

これなら説明がつく。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「久しぶりだな。左馬助」

 

 

 

 

 

「!!!?」

 

 

十兵衛が驚愕する。

 

 

確かに、明智左馬助もまた十兵衛に顔が似ていた。もう少し成長すれば、十兵衛と瓜二つになるであろうという面相をしていた。

 

 

「よく気づきましたねぇ。

私は貴方を何と呼べばいいのでしょう?

竜ちゃん?天竜さん?天竜様?」

 

「理由は何通りかある。

まずは一つ。

先程俺はお前の心臓を確かに突き刺した。だが死ななかった。未来人でそれが可能な人物は俺が知る限り、誰もいない。

可能性があるとすればたった1つ。

吸血鬼明智左馬助が数百年の転生地獄から目覚め、明智光として生まれ変わり、俺と関係を結ぶ。

そしてタイムスリップした俺を追うようにお前もこの時代にやって来た。全て俺の空想だが.....違うか?」

 

「パーフェクト!!

全て正解ですよ!」

 

「それとだ。

俺はとある神にこう言われた。

『勘解由小路光は死んで地獄に落ちた。理由は教会で結婚式を挙げたから。光は西洋の神が作った地獄で苦しんでいると.....

救うためには『十字教』を滅ぼせとな。

だが、お前は生きている。

 

 

そうだろう!アマテラス!!」

 

 

すると、奴の影からアマテラスが出現する。

 

 

『今更気付いたでありんすか』

 

「怪しいとは思ってた。

ツクヨミと違ってお前は裏がありすぎる。

完全な味方じゃないくらい、

最初に気づいていたさ」

 

『ふっくくくくくく..........

その通りでありんす。

明智左馬助に魔人マグラを植え付け、

其方に輪廻の鎖を使わせ、

此奴を不死者にし、

400年後の其方に引き合わせたのは、

全てわっちでありんすよぉ!

くひゃひゃひゃひゃひゃひゃ!!!』

 

「全部お前が首謀者か!」

 

『侵害でありんすなぁ。

わっちが私欲の為だけに、

ここまでやるとでも?』

 

「何っ?」

 

『全ては其方の為。

そして、この日の本の為でありんす』

 

 

どうゆうことだ?

何を言っている?

 

 

「天竜さん」

 

 

今度は光(左馬助)が口を開く。

 

 

「天竜さん。私を殺してくれます?」

 

「なっ!?」

 

「この通り私は不死者。

死ぬ事もなければ、老いる事もない。世界の終わりまで血を啜り続ける吸血鬼となってしまいました。

そう.....全ての元凶は貴方」

 

「.....俺が?」

 

「だってそうでしょう??

私をこ〜んな性格にしたのも!

私をこ〜〜んな身体にしたのも!

全て貴方なんですから」

 

「くっ.....!」

 

「それから姉上!」

 

「うっ.....」

 

「調子にのって天竜さんと一緒になろうとしてますねぇ本当に目障り。

でも私は気にしませんよぉ?

なんと言ったって、

天竜さんの初めては私なんですから♡」

 

「うぅ.....」

 

「やめろ!!

死にたいなら首を括れ!

他人を巻き込むな!!」

 

「死ねない身体にしたのは

貴方じゃないですか?」

 

「くっ.....!」

 

「私が400年間どんな気持ちだったか分かりますか?気もおかしくなりそうな世界を五つも回らせ、やっと戻って来た時には、もう私の知っている世話は無くなっていた。

貴方だけが心の拠り所だった。

ですが貴方は再び離れた。

もう生きる希望などない。

だからこそ死を渇望した。

でも死ねない。

死にたくても死ねない。

平等の権利である死の剥奪。

生と隣り合わせである死を奪われた私は.....

もう生物としての

構成要件を満たしてないんですよぅ」

 

「だからアマテラスに魂を売ったのか!

その性悪な魔人に!!」

 

『失礼でありんすなぁ。

これでも全知全能の太陽神でありんすよ?

それもこれも全て其方の為。

不死者の殺害こそが、

其方を次の段階へと登る。

其方をより一層、

悪魔の道へと導ける』

 

「..........どうゆうことだ?」

 

『またまた〜。

もう気づいているはずでありんすよ〜?』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そう。

俺はとっくに気づいていた。

自身の正体という奴を.....

 

 

 

 

 

 

 

「まぁ、ヒントなら散々出てたからな」

 

 

 

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

ツクヨミ化.....

悪魔に極限まで近づいた俺は、

無意識に人間の血肉を求めた。

それが当たり前のように.....

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

左馬助と対峙した時の事。

朧に身体の支配権を奪われた時、

 

 

「貴方も血肉を求めるのですか。

貴方だって吸血鬼と

変わらないじゃないですか?」

 

『そうだが?』

 

「!?」

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

主水との会話。

 

 

「俺ら魔族とお前ら鬼族。

元は同じ一族だ。

転じて俺も鬼だし、お前も悪魔だ」

 

「嬉しい言葉だねぇ」

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

俺の真名、

ドラクエル・バスティーユ

ヘルライド・サタン。

 

これが全ての答えでもある。

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

俺が何故、十字教徒共と対立しているのか。

 

そして、朧としての500年間。

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

サンジェルマン伯爵の存在。

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

先程の戦闘。

 

朧が行った串刺し行為を、

野蛮であるはずの行為を、

俺は許してしまった。

そこに何か、懐かしさを感じて.....

 

 

串刺し公.....

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

『母が仔を世話して何が悪い?

我は貴様の母であり、

貴様は我の仔であるぞ?』

 

 

俺は月読命の子孫。

龍神様の生まれ変わり。

魔王サタンの息子。

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『ヴラディスラウス・ドラグリア』

俺はかつてこの名を名乗った。

通称はヴラド。ヴラド3世。

ヴラド2世の養子になった事で、

我が義父は『竜公』

と呼ばれるようになった。

そして俺は『小竜公』

 

東洋では、

龍は神として祀られるが、

西洋では、

龍は悪魔として恐れられる。

 

俺は悪魔、

サタンの息子。

俺は龍神、

月読命の息子。

 

ドラゴンの息子だから。

俺の呼び名は多々あった。

 

ドレイクとか、

ドラコとか。

 

でも世界的にも有名な呼び名が一つある。

 

それが俺の正体。

 

俺、勘解由小路天竜の本質。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『ドラキュラ』

吸血鬼の王。

ヴァンパイア・ロード。

ナイトウォーカー。

 

 

人々は俺を敬意を評してこう呼ぶ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「『ドラキュラ伯爵』.....か」

 

 

それが俺だ。

 

 

『全て理解したでありんすか。

その通りでありんすよドラキュラ。

最も魔人に近づいた人間よ。

魔王の称号を持つに最も相応しき豪傑よ。

全ては其方の覚醒の為。

全ての因果はそこに繋がっている』

 

「ど.....らきゅら?」

 

 

十兵衛は理解出来ずに首を傾げる。

 

 

「大丈夫。君は分からなくていい」

 

「天竜さん。

私を殺せるのは、

呪いをかけた貴方だけなの」

 

『ドラキュラよ!

不死者の魂を喰らい、

更なる進化を遂げよ!!』

 

「俺は.....」

 

 

 

 

 

 

孤高の魔王は何を思うか.....

 




途中までギャグだったのに、
一気にシリアスに引き戻しました。
風魔の正体は勘解由小路光。
さらにその正体は明智左馬助。
でもって天竜の正体はドラキュラ!
詰め込みすぎて話がグッチャリ。
伏線の回収は本当に大変です。
次回予告
吸血者の選択
〜我はドラキュラ伯爵なり〜

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