天翔ける龍の伝記   作:瀧龍騎

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天竜と小太郎


第四十四話 未来戦争

それは合戦前夜。

 

 

「じゅっ.....十兵衛!?」

 

 

天竜の部屋を訪れた十兵衛は天竜を思わず驚愕させてしまう。

 

 

「これで文句はないはずです!」

 

「何もそこまで.....」

 

 

十兵衛は従来の着物ではなく、

天竜が与えた軍服を着用していた。

それだけでなく.....

 

 

 

 

髪を短めに揃えていたのだ。

 

 

 

 

 

「これが私の覚悟です!」

 

 

信奈と天竜の間で中立の立場を取っていた彼女はついに覚悟を決めて、天竜に味方する事を決意したのだ。

 

 

「そんな.....そんなに切っちゃったら、

ただでさえだだっ広いおでこがさらに目立ってしまうじゃないか!?」

 

「うっ.....うるさいです!

気にしてるのに.....

天竜の軍は皆が皆髪を短くしてしまっているので、髪が長いと逆に目立つんです!!」

 

「............ふくくくくくく.....

くひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃ!!!」

 

「なっ.....何が可笑しいですか!?

私は貴方のために.....」

 

 

言いきる前に天竜は十兵衛に抱きつく。

 

 

「!!?」

 

「ありがとう。本当に嬉しい」

 

 

天竜は思わずショートヘアの十兵衛を見て、思わず前妻の光を思い出す。

 

 

「キス.....接吻してもいいかな」

 

「ん.....」

 

 

2人は口付けを交わす。

もう何度目のキスだろうか。

 

 

「俺は多分こんな言葉吐くべきではない。言う資格がない。多くの人を殺め、多くの家臣を駒として扱い、多くの女性を道具として扱ってきた俺には.....

でも俺は言いたい!

 

『君を愛している』と!」

 

 

その言葉に十兵衛は感銘を受ける。

そしてその瞳からは涙が.....

 

 

「貴方に会えて.....本当に良かった」

 

「俺もだ。

全てが終わった暁には.....

俺と結婚してくれ。

俺の1番になってくれ」

 

「はい」

 

 

初めて十兵衛が求婚に応じてくれた。

 

 

「では、2番目以下とは縁を切れますね?」

 

「............................................................................................................................................................................................................................................................................................................................................................愛人じゃダメ?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

はたかれた。

 

 

 

 

 

 

 

 

「痛った〜.....」

 

「本当に貴方らしいですね!

その女癖の悪さは異常ですよ!

いつからそんな風になってしまったですか!純真無垢だった頃の貴方に会ってみたいですよ!!」

 

「君も相変わらずだ。会いたいなら14歳以前の俺に会ってくるといい」

 

「はぁ!?

14の時に何かあったですか?」

 

「ちょっとな.....」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

状況は整った。

表の合戦.....

ただの城攻めは、武田や徳川、織田に任せておけばいい。水路からは九鬼と毛利の連合水軍。

北条も里見家なんかと仮同盟を結んで、港の守りを固めていたようだが、所詮は即席の同盟。上手い具合に連携を取ることができずに、港は連合水軍に制圧されつつある。

この分なら放っておいても良いだろう。

多くの者は表の合戦に釘付けになる。

 

 

「その間に我々は裏の合戦を行う」

 

 

特別に兵力など必要ない。

極々少数にて行動し、迅速に終結させる。

 

 

「隠密起動部隊よ.....

隊長、石川五右衛門!」

 

「はっ!」

 

「副長、阿斗!吽斗!」

 

「あ〜い」「にゃ〜い」

 

「臨時隊員、万見仙千代!」

 

「..........」

 

「諸君らには長らく待たせた。

いつもいつも潜入や間者ばかり。

恐らく実力を発揮しきれない事に不満を持つ者も少なくはなかろう。

諸君らは影の存在。

俺、羽柴天竜の影だ!

だがその100人に満たない少数勢力が北条方数万の兵を根絶やしにする功績を見せる事となる影となるのだ!

その影としての力を存分に発揮せよ!」

 

「「「はっ!」」」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

隠密隊は各々に散ってゆく。本陣にて構える天竜は不敵な笑みを浮かべる。

 

 

「時は来たり」

 

 

天竜の前の机にはある物が

一つ置かれていた。天竜はそれ手に取る。

 

 

「鶯隊、丑の方向へ前進」

 

『了解』

 

 

天竜はそれを別の物に持ち替える。

 

 

「斑目隊、その場で待機」

 

『了解』

 

「木更津隊、午の方向に45度で構え」

 

『目標は杉の木ですが?』

 

「恐らくそこに伏兵がいる。

他の隊からの報告からだ。」

 

『はっ』

 

「撃て」

 

 

遠くの方で鉄砲の爆音が聞こえる。

 

 

「ふっくくくくくく..........」

 

 

天竜が持っていたのは無線機だった。

 

従来までの合戦で最も未発達だったのが情報伝達。合戦の状況はその度に変動する。戦略の変更などをいちいち使い番や忍に伝えてでは、タイムラグが発生し、子みろ未泥となるだろう。狼煙などでそれを解消する事もあるが、それでも詳しい状況は伝えにくい。未来にはそんな面倒な事はない。何故なら通信機があるからだ。

有線機と無線機。

この場合は無線機が有効的。

極々短時間にて詳しい情報を多数に向けて発信する事が可能となる。

 

 

『天竜様、小田原城下南西部にて地下通路の入り口を発見しました』

 

「よし神亀隊は穴に入れ、ただし長縄を持って入れ。中で迷わないようにな」

 

『了解』

 

 

天竜は複数の無線情報を一つの頭で理解し、的確な情報で返している。

人間技ではない。

 

 

「鮫島隊、そこの状況を伝えよ」

 

『はっ.....人気はないようです。

大きめな岩があちこちにあるだけで.....」

 

「ん?そこにはそんなものは無いはずだ.....

その岩は偽物の可能性がある。

岩に向かって撃て」

 

『了解。

......................あっ、敵が隠れていました!』

 

「やはりな。

よし、そのまま岩を撃ってゆけ。

それ以外に樹木や地面に擬態している可能性もある。疑わしきは全てやれ」

 

『はっ!』

 

 

その時、高虎が話しかけてくる。

 

 

「天竜様、ここの近くに本陣に百姓が迷い込んできましたが.....」

 

「殺せ」

 

「なっ!?」

 

「この状況下で本陣に近付いてくる奴など怪し過ぎる。恐らく風魔だろう」

 

「ですが.....」

 

「我が家臣なら言われる前に察せよ!」

 

「そっ.....そんな!?」

 

 

高虎の反応に痺れを切らした天竜はその百姓とやらがいる場所に一直線に向かう。

 

 

「へっ?」

 

「ふんっ」

 

 

天竜は有無を言わずに拳銃で百姓を射殺する。

 

 

「「「!?」」」

 

 

状況の分からない周りの家臣らは困惑する。そんな中、天竜は百姓の上着をひっぺがえして見せる。

 

 

「見ろ。鎖かたびらだ。

こいつは百姓に化けた風魔。

混乱に乗じて俺を討ち取る算段だったか?」

 

「............」

 

 

高虎は驚愕する。天竜は一体!?

 

 

「高虎。お前は十兵衛らの隊へ行け」

 

「え!?」

 

「お前の実力は表の合戦でこそ役に立つ。

俺の隊ではそれが発揮しきれていない」

 

「そんな!?

私が役立たずであると!?」

 

「そう言っている。

私は私でこちらを取り扱ってゆく。

お前は兵を1万程連れて十兵衛を支援しろ」

 

「............」

 

「まぁまぁ。

私も着いて行ってあげるよん?」

 

 

朧が現れる。

 

 

「お前に本陣を離れられるわけにはいかない。何を仕出かすか分かったもんじゃないからなぁ」

 

「あらぁ!

貴方が私に指図するって言うんだぁ?」

 

「ちっ.....」

 

 

奴の実力は未知数。

恨みを買うのは上策じゃないか.....

 

 

「好きにしろ」

 

「そっか!行こ高虎♡」

 

「えっ.....えぇ」

 

「ちっ.....」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

小田原城。

 

 

「どうゆうこと!?」

 

 

氏康には怒りが蓄積されていた。

風魔衆によって展開した敵本陣の急襲戦がことごとく失敗しているのだ。

 

 

「恐らく敵は特殊な情報伝達手段を用いている。それと万見仙千代から得た情報を元に地形をよく調べ上げ、確実にこちら側の攻撃を迎撃している。地下通路の入り口も複数箇所見つかっております」

 

「ぐぐぐ.....表の織田や徳川、武田の軍勢を相手にするのですら苦戦しているというのに.....」

 

「万見仙千代を生かしておいたのは失態でした。あの時に殺しておけばよかった」

 

「彼女は8代目の娘。こちらの情報を多く持った危険人物よ。敵になればこちらが追い込まれるのは分かっていたはず、慢心した私の責任よ」

 

 

天守閣にて構える氏康と小太郎。

 

 

「姫様、私に羽柴天竜と戦闘をする全権を頂けまするか?」

 

「えぇ。私も表の方に集中したいし、そっちは貴方に任せるわ」

 

「はっ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

風魔はとある配置に着く。

 

 

「壱番隊、前へ」

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

天竜もまた.....

 

 

「翡翠隊、子の方向へ歩を進めよ!」

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

「肆番隊、そこに伏せなさい」

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

「翡翠隊止まれ!!

そこに伏兵がいる!!」

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

「かからない?

.....淕番隊、弍番隊と合流し、

敵の追撃に備えなさい」

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

『ぐああぁぁぁ!!!』

 

「班目隊!!..........くそっ!

鶯隊は班目隊の補強へ廻れ!

墨川隊は寅の方向へ斉射!」

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

「なるほど鉄砲を.....

弾道を読み、射撃手を居場所を突き止めなさい。懐に飛び込めば鉄砲などただの鉄棒」

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

「墨川隊が全滅しただと!?」

 

『はっ!さらに風魔は墨川隊の鉄砲を鹵獲して使用している模様!』

 

「くっ.....!!

極楽隊!!援軍として向かえ!」

 

『はっ!

..........!?.....何だここは!?

ぐああぁぁぁ!!!』

 

「!?.....一体どうしたのだ!?

他の隊!状況を説明せよ!」

 

『何てことだ!?

ここは爆弾で囲まれて.....

ガガガッ!!ピーッ!ピーッ!』

 

「翡翠隊もやられた!?

嘘だろ!?.....まさか!?」

 

「羽柴天竜!!」

 

 

その時、天竜の元に仙千代が戻ってくる。

 

 

「全軍総崩れだ!

一度起動隊を戻した方がいい!!」

 

「仙千代.....これはまさか.....」

 

「あぁ.....風魔小太郎が出てきた」

 

「これが.....風魔小太郎?」

 

「うむ。武田や上杉と敵対した際も奴はこのやり方で.....」

 

 

そう、実際に対峙して思った事.....

それは奴の戦い方が俺の戦い方によく似ているという事だ。その上で俺は押されている.....

 

 

『こちら米夜隊!

我らの隊を突破し、本陣に風魔が!』

 

「くっ.....!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その時、各地全ての無線機に声が聞こえる。

 

 

『全軍!停止せよ!

........................よく聞け。

 

敵もまた無線機の使用が見受けられる!

条件は我々と風魔で平等になった!

もう有利である点はない!

慢心は控えよ!

情報は正確に伝達せよ!

 

風魔小太郎は.....

 

 

 

未来人だ!!』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「死ねぇぇぇ!!!」

 

 

本陣に風魔が入り込んでくる。

 

 

「切り裂け!!」

 

 

その時、仙千代の鋼の糸が唸り、その風魔者を真っ二つにする。

 

 

「「「死ねっ!!!」」」

 

 

又もや風魔がくる。

 

 

「皐月!!」

 

 

高速の剣撃にて風魔者の頭蓋を割る。

 

 

「くっ.....!切りが無い!!

羽柴天竜!援軍はいつ到着する!?」

 

「もうすぐ凪の隊が来る!

それまで持ちこたえろ!」

 

 

その時だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「見つけた。勘解由小路天竜!」

 

 

 

 

 

 

 

 

「つっ.....!?」

 

 

風魔小太郎見参。

 

 

「羽柴天竜下がれ!ここは私が!」

 

「よせ仙千代!!」

 

 

小太郎は懐から複数本の刃物を取り出し、

仙千代に向かって放つ。

 

 

「くっ.....!?」

 

 

鋼の糸を器用に操り、刃物を弾く仙千代。

 

 

「遅いな」

 

 

だが、気づいた時には視線の下方で小太郎が刀を構えている。

 

 

「なっ.....!?」

 

「死ねっ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

金属同士がぶつかり合う音が響く。

 

 

「殺らせるかよ」

 

 

小太郎の剣技を天竜が抑えていた。

 

 

「羽柴.....天竜」

 

「こいつぁ、俺が弾正から預かった女だ!

仙千代を不幸にさせれば俺と弾正との間の約定が破棄された事になる!そんな事あってならない!

俺は意地でも仙千代を守ってやる!」

 

「.......!」

 

「んでもってこいつは、俺がこれからゆっくりと調教してやろうと思っているじゃじゃ馬だ!俺に惚れ込む前に死なせるかよ!!」

 

「なっ.....!?」

 

 

天竜節が炸裂する。

 

 

「ふっくくくくくく.....

やはり貴方は面白い」

 

「!?」

 

 

小太郎が覆面の下で笑っている?

 

 

「気色悪いんだよお前!

俺の前で素顔を隠していいのは、

姫巫女様と紀之介だけだ!!」

 

 

 

 

「如月!!!」

 

 

 

天竜の放った剣撃は小太郎の刀を粉々に粉砕した。

 

 

「ぐっ.....」

 

 

「文月!!!」

 

 

目にも留まらぬ一閃が小太郎が目掛けて発射される。刀は一直線に小太郎の心臓部を突き刺す。

 

 

「あぐぅあ!!?」

 

「やった!?」

 

 

仙千代が歓喜する。

因縁の宿敵が、父の仇が.....

 

 

「ふぅ.....ふぅ.....ふぅ.....」

 

「勝利を確信するにはまだ早すぎるのではないか万見仙千代!」

 

「!?」

 

 

心臓を刺されたはずの小太郎が胸に刀を刺した状態で再び覆面の下で笑みを浮かべている。

 

 

「お前は化物か?」

 

「そうですが何か?」

 

「ちっ.....

お前は未来人だな?」

 

「否定はしませんよ」

 

「誰だお前は!

俺の知ってる奴か!?

俺を恨んでいる奴か!?」

 

「いいえ?

確かに私と貴方は知り合いですが、

恨んではいません」

 

「なら何故!?」

 

「楽しいからですよ」

 

「なっ!?」

 

「戦争とは素晴らしい!

殺人が許可された状況!!

公然と血肉を啜れる環境!

殺した数だけ称えられる世界!

それを味わいたいが為に、

私はこの世界に来た!!」

 

「くっ.....外道が!」

 

 

こいつは朧とよく似ている。

 

 

「ですが興ざめしました。

私は一度城に戻ろう。

改めて私の血を存分に熱くして貰いたい」

 

「くっ.....!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

小太郎が去って1分も経たないうちに凪の隊が到着する。

 

 

「申し訳ありません!遅くなりもうした!」

 

「凪、命令だ。

戦略を大きく変える」

 

「は!?」

 

「まず一つ。

本陣を進軍させる。

小田原城のすぐ真正面にな」

 

「なっ!?

死ぬ気ですか!?

そんな事したら.....」

 

 

 

 

 

「大将が命を賭けずに、

何故家臣に死ねと言えるか!!」

 

 

 

 

 

「!?」

 

「ふと思った事だ。

そんな幾つもの地下通路の入り口を作ってしまっては.....

例え中で迷ってしまってもいつかは城内への入り口を見つけてしまうかもしれない。もし正確な道順を突き止められれば、誰でもかれでも入り込み放題になる。

だが、未だかつて小田原城内に忍を送り込めた者は1人もいない。

 

そうなれば答えは単純。

 

地下通路は城に繋がっていない」

 

「なっ!?そんなはずは.....」

 

 

仙千代が否定する。

 

 

「お前が抜けた直後にそう直されたのだろう。それをきっかけに小田原城は本物の難攻不落となった」

 

「............」

 

「現状にて見つかっている地下通路入り口は8つ。残った勢力を集結させよ!」

 

「はっ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

小田原城天守閣。

 

 

「うふふ。

連合軍は未だに表の合戦で右往左往。

羽柴軍は風魔と激突して中枢部が壊滅している。もうちょこまかとやって来る事はない。羽柴秀長を討ち取れるのも時間の問題!

 

さ〜て!羽柴秀長がどんな吠え面をかいているかを見てみま.....」

 

 

南蛮の望遠鏡で羽柴軍を眺めた

氏康は驚愕する。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「そらそら!もっと掲げろ!!」

 

 

軍を率いていた武蔵は生き生きしていた。

彼女は掲げていたのは軍旗。

その軍旗の模様は.....

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「全く.....武蔵には困ったものだ。

北条を焚きつけろとは言ったが、

よもやあんな方法を取るとは.....」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「洗濯板.....?」

 

 

氏康は望遠鏡を覗きながら

プルプルと震えていた。

 

 

「おのれ.....おのれ.....」

 

 

軍旗には洗濯板の絵が描かれていた。

それと.....

 

 

「!!!!!!?」

 

 

 

 

 

 

 

 

桃。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

青い痣模様の入った桃。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

それはまさに氏康の臀部を示していた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「うううううおおおおおののののれれれえええぇぇぇいいいいい!!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『全軍に命じる!

現在、地下通路入り口に向かって行った調査隊との通信が途絶えてしまっている。持った行かせた縄もするりと抜けてしまった。

恐らく彼らはもう生きてはいない。

 

穴に火を放ち、穴を塞げ!

 

中にいるゴキブリ共を

炊き出してやるのだ!』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そうして、各地で煙が上がる。

 

 

「一酸化炭素中毒で穴の中の風魔衆は全滅。我が隊にも生き残りがいるかもしれないが、この際しょうがない.....許せ。

煙が上がっているのは、まだ見つかっていない穴だ。これでよし」

 

 

進軍中の本陣にて天竜が微笑む。

 

 

「天竜様!風魔衆が!!」

 

「来たか.....

本陣を四方に展開!

後退しつつ、敵を中央に追い込め!」

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

「敢えて敵の戦略に乗り、中央へ」

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

「どうせ敵にもバレている。

同時ではなく、

左陣から時計回りに時差を開けながら突き進め。敵軍を翻弄させるのだ!」

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

「むしろ正面から来たか.....

ではこちらは、

右陣を逆時計回りに展開せよ。

同じ忍者衆ではあっても烏合の衆である奴らと違い、我ら風魔は統率の取れた軍集団である!

この状況下において優勢であるのは何れにしても我らに勝利は変わらない!」

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

「罹った!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「本当に素晴らしいな

未来の技術とやらは.....」

 

 

煙が充満した地下通路内において、

凪の部隊はガスマスクを着用して突き進んでいた。

 

 

「防毒面.....

これ無しでは皆窒息死だな」

 

「だよね〜お姉さん」

 

「でもこの防毒面格好悪いよね。

『火傷ちゃん』みたいな仮面だったら格好良かったのにねぇ」

 

「こらっ!

吉継殿をそのような呼び方で呼ぶな!

あの方も好きで火傷されたのではない!」

 

「は〜い」

 

 

隠密において上方にいる3人。年の差から、双子から凪はお姉さんと呼ばれている。

 

 

「それから私の事は『お姉様』と呼べ」

 

「「は〜い」」

 

 

凪もなかなか変な奴だった。

 

 

「ええと.....

これ.....ダイナ.....

ダイナなんとかでしょ?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あぁ。『ダイナマイト』だ。

焙烙玉なんかよりずっと性能のいい、

破壊力に特化した爆弾。

やはりあの方は素晴らしい!」

 

「.....ねぇ、お姉様?」

 

「なんだ?」

 

「どうして天竜にそうも付き従うの?」

 

「だよね〜。

忠義なんて今時古いでしょ?」

 

「なっ!?お前達もあの人に命を助けられた恩があるのだろう!?」

 

「ん〜でもね〜。

命の恩人って印象は持てないんだよ。

天竜には.....」

 

「そうそう。

天竜は恩人でも、主君でもなく.....」

 

 

 

 

 

 

 

「「面白い奴!」」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『天竜様、ダイナマイトの設置が終了致し、地下通路から脱出しました』

 

「そうか。ご苦労だ。

他の者もそこから見ていろ。

これが『浄火』だ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

爆散。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

小田原城天守閣。

 

 

「なっ!?」

 

 

自分の身体が急に軽くなった気がした。突然自分の身体が浮いたような感じだった。

 

 

「姫様!!」

 

 

覆面の上からでも分かる、

慌てた表情で駆け寄ってくる。

 

 

「小田原がっ!!落ちます!!」

 

「なっ!?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「くひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃ!!!!!」

 

 

天竜はまた何時ものように

高笑いを上げる。

 

その凶悪な面相を浮かべながら.....

 

 

「小田原城は文字通り落ちた!

 

俺が!私が!僕が!

 

初めて小田原城を落とした武将なり!

 

俺が最強の武将なり!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

小田原城はグチャグチャに粉砕していた。

城の下部から崩れ落ち、

倒壊したビルのように.....

 

 

表の合戦で戦っていた連合軍も、

必死に居城を守ろうとしていた北条軍も、

遠くの丘で様子を見ていた武田軍も、

 

皆が皆、驚愕する。

 

 

 

 

 

 

 

小田原城は壊滅した。

 




4人目の未来人、風魔小太郎。
その正体はいかに!?
次回予告
成田長親
〜大将の器〜

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