天翔ける龍の伝記   作:瀧龍騎

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又もや新キャラ登場の予感。
あんまり増やしてもねぇ.....


第四十三話 石田堤

「「いざ、出陣!!」」

 

 

両大将の号令により、

双方の軍が一斉に動いた。

 

 

「「「うおおぉぉぉ!!!」」」

 

 

正木丹波率いる先魁が、

石田軍に対し、強行をかける。

 

 

「敵は田舎武将だ!

我ら天竜軍鉄砲隊の力を見せてやれ!」

 

 

鉄砲隊長の大吾(久々)が号令をかける。

 

 

「止まるな、進め〜!!」

 

「撃て〜!!!」

 

 

成田軍に向けての一斉掃射。

土煙が巻き上がる。

 

 

「ふん。蜂の巣だな」

 

 

まだ姿は見えないが、

勝利を確信する大吾。

 

 

「だあああぁぁぁぁ!!!」

 

 

何処からか掛け声が聞こえる。

 

 

「どっ.....何処だ!?」

 

「うらあぁっ!!!」

 

 

突如空から落ちてきた武将が、

鉄砲隊に対し、急襲をかける。

 

 

「まっ.....まさか!?

上方へ跳んで弾を避けただと!?」

 

 

ドス黒い鎧に、紅の槍。

 

 

「漆黒の魔人、正木丹ぼあぁ!!」

 

 

丹波の朱槍が大吾の喉元を貫く。

 

 

「隊長ぉ!!」

 

 

急に怯え出す兵達。いくら単独射撃が可能の天竜軍鉄砲隊とはいえ、長年連れ添ってきた隊長が討ち取られたとなれば、大混乱である。

 

その時、成田軍側から馬が大量に出現する。騎手の後ろに射手を乗せて.....

 

 

「ひぃっ!?」

 

 

種子島の銃口が混乱した石田方の鉄砲隊に向けられる。能力は石田方が高いとはいえ、これでは.....

 

 

「撃て〜!!!」

 

 

雨あられの如く

石田方に鉄砲玉が降り注いだ。

 

 

「むっ!?」

 

 

石田方の兵は弾丸が頭部に直撃した者を除き、胴などに直撃した者は怯んでいるものの、大した損傷は与えられていなかった。

 

 

「南蛮服の中に鎧を!?」

 

 

天竜軍は軍服の中に防弾チョッキを着込んでいたのだ。

 

 

「頭だ!頭を狙え!

敵軍は弾丸を弾く鎧を着込んでいる!」

 

 

丹波は既に倒れた敵兵の胴に

槍を突き刺す。

 

 

「ふむ。奇妙な鎧だ。

鉄砲玉は弾くが刃物は通すとは.....」

 

 

戦うと同時に情報分析をする。

 

 

「懐に飛び込めば怖くはない!

刀槍で突き刺せ!!

だが斬っては意味がない!

確実に突き刺すんだ!!」

 

 

防弾チョッキの弱点は刃物。

斬る攻撃には耐えられても、

刺す攻撃には耐えられない。

それを一瞬で見抜いたのだ。

 

これが猛将にして智将、正木丹波。

 

 

「そこの者!

正木丹波守とお見受けする!」

 

 

その時、石田方から声があがる。

 

 

「拙者は、村崎五十郎!

一騎打ちを申したてる!」

 

「いいだろう!」

 

 

丹波は再び馬に乗り、

五十郎と真っ正面に立ちはだかる。

 

 

「ええいやあぁぁぁ!!!」

 

「だあああぁぁぁぁ!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

勝負は一瞬であった。

素早く繰り出されし丹波の朱槍は、

そのまま五十郎の喉元を貫き、すれ違い様にて五十郎の首を跳ね飛ばした。

 

 

「あれが.....漆黒の魔人か」

 

 

離れた地にて指揮をとっていた

吉継が呟く。

 

 

「退け!態勢を整える!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

吉継はまず装備を変更する。

天竜が用意した防弾チョッキはその名の通り対鉄砲対策。織田との決戦の為に越しられたものだ。鉄砲が普及している小田原城なら兎も角、中途半端な忍城では意味をなさない。

ここは従来の甲冑でいくべき。

 

 

「天竜様が別離に用意されていた西洋甲冑を着用させる」

 

 

日本製の部分甲冑ではなく、

西洋製の全身甲冑。

 

弾丸を防ぐ程の耐久性はないが、

刃物はもう通らない。

 

 

「それから雨陰千重洲陀に

銃剣を取り付けさせる。

これで敵の槍に対抗させよう」

 

 

遠距離武器と近距離武器の融合。

天竜の案である。

 

 

「反撃開始だ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「石田軍が引き返して来たぞ!」

 

「和泉!交代だ!」

 

「よっしゃ!」

 

 

丹波に代わり、

今度は筋肉質の大柄な姫武将が出てくる。

 

 

「あたしは、成田家最強の武将!

柴崎和泉守なりぃ!

死にたい奴ぁ、前に出やがれ!!」

 

 

その威圧だけで石田軍を怯えさせる。

 

 

「怯むな!

我らは天下の軍、天竜軍であるぞ!

撃つのだ!刺すのだ!

その鎧に敵の槍は通らぬ!」

 

 

フルプレートともなると重さが尋常にないものとなり、移動速度限りなく遅くなる。だが、

 

 

「遅くて構わない!確実に前進せよ!」

 

「ノロマな亀がぁ!」

 

 

和泉の槍が甲冑兵士の鎧を貫く。

 

 

 

 

 

 

 

 

.....かと思われたが、

激しい金属音が鳴っただけで、

和泉の攻撃は防がれる。

 

 

「くっ.....!?」

 

「田舎侍が粋がるな!」

 

 

先頭の兵士が和泉に銃剣先を向ける。

 

 

「柴崎和泉守を舐めるなぁ!!」

 

 

和泉の二撃目が走る。

 

 

「無駄無駄ぁ!!」

 

 

 

ブスッ!

 

 

 

「無.....駄?」

 

 

なんと貫通する。

 

 

「なっ!?

力技だけであの装甲を!?」

 

 

それ以降も、和泉は石田軍の甲冑部隊を物ともせずに貫いてゆく。

 

 

「ありえない.....

我が軍が押されているのか!?

たった500人の集団に!?」

 

 

ピリリリリッ!

 

 

吉継の懐から電子音が聴こえる。

 

 

「えっ.....えぇと.....」

 

 

吉継は慣れない手つきでそれを操作する。

 

 

『もしもし。紀之介?』

 

「もっ.....もしもし?

というか佐吉。

私はこのような機器には疎いのだ。

君と違ってな」

 

『まぁ、慣れだよ。

取り敢えず報告するね。

島を送ったから』

 

「しっ.....島!?

あの男をもう使うのか!?

まだ.....」

 

『もう使わないとだめだよ。

大吾も五十郎も討たれ、

西洋甲冑部隊も効かない。

このままでは我が軍が負ける。

ここで出し惜しんだ所でどうするの?

だからこそここで、

切り札の一つ目を使う』

 

 

その時、向こう側からギリギリという音が聞こえる。三成が携帯電話を握り締めている音だ。

 

 

「...........」

 

『私は言ったはず!

この戦に命をかけてると!

敵軍を全力で倒すと!

手を抜く事こそが無礼な行為である!』

 

「.....分かった。君の好きにしろ。

私は黙って従うよ」

 

 

そう言って電話を切る。

次の瞬間、吉継の視界にある男の姿が写る。

 

 

「島か?」

 

「あぁ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「オラオラッ!どうしたぁ!

この和泉様に敵う者はいねぇのか!」

 

「では拙者がお相手しよう」

 

「あぁん?誰だ手前ぇ!」

 

「島左近勝猛」

 

「知らねぇなぁ!

手前ぇも一突きだ!」

 

 

和泉の槍が突かれる。

 

 

「ふんっ!」

 

 

それに対し、島も槍を突く。

そうして.....

 

 

和泉の攻撃を相殺したのだ。

 

 

「なっ.....!?」

 

「ちっ.....」

 

 

左近の槍は今の一瞬でボロボロになっている。

 

 

「所詮はナマクラか」

 

「へっ.....へへ.....

丹波以外で初めて防がれた.....

何者だ手前ぇ」

 

「お前はまだまだ未熟だな。

怪力だけで戦はできん」

 

「んだとっ!!」

 

 

こんな言葉がある。

「治部少に過ぎたるもの二つあり。

佐和山の城と島の左近」

佐和山城は近江国の城。

元は丹羽長秀の城で、

長秀が抜けた後に天竜が受け取るという予定であったが、その前に織田を抜けてしまった為に諦めざるをえなかった城。

 

そして島左近。

元は筒井順慶の家臣。

三成が三顧の礼をもって勧誘し、

最終的には自身の領土の半分を与えてまでして手に入れた武将。

その力にも知にも長けており、

三成の切り札である。

 

 

「女を斬る気はないが、

我が主の命とあらば!」

 

 

左近は刀を抜く。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「墨炎(すみほむら)」

 

 

 

 

 

 

 

左近の強烈な居合は、

和泉の槍を粉々に砕き、装備していた鎧すらも割る。

 

 

「がぁっ!!?」

 

 

和泉は左近のたった一度の攻撃に

弾き飛ばされる。

 

 

「柴崎様が負傷された!

助けに入るぞ〜!」

 

「「「おおおぉぉぉ〜!!!」」」

 

 

城内から農民達が農具を武器に見たてて飛び出してくる。

 

 

「敵は500騎程度という話だったが、

よもや農兵も参加しているとは.....

情報不足だ。敗戦の元だぞ主よ」

 

 

左近は刀を仕舞う。

 

 

「拙者の仕事は敵の猛将を倒す事。

これ以上の殺傷はあるまい」

 

「まっ.....待て.....」

 

「槍と鎧を砕いただけだ。

傷は無いだろうが、

しばらくは衝撃で動けまい。

名を聞かせろ」

 

「柴崎.....和泉守.....」

 

「分かった。

この島左近に刀を抜かせた者として

その名を称えよう」

 

「くっ.....!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「だらしないですねぇお姉さん?」

 

「くっ.....小娘が!」

 

 

城内に戻った和泉は靱負にからかわれていた。

 

 

「まっ、戦は戦術が全てではない事を証明してみせますよ。僕の戦略を持ってね」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「敵の勢いが止まった!

そら突っ込め〜!」

 

 

先頭の兵の号令を合図に、

石田軍が忍城に攻め込む。

 

 

「酒巻様!なだれ込んで来ます!」

 

「よし!入れてやれ!」

 

 

靱負の命令で忍城の門が開けられる。

 

 

「よっしゃ!

松田籐右衛門一番乗り〜!」

 

 

籐右衛門が忍城に入り込んですぐの事である。足元が急に不安定になり、横転してしまう。

 

 

「あり?」

 

 

それ以降も兵が次々と足をとられ、

横転していく。

籐右衛門は足元に巻かれていた黒々しく、

特殊な臭いの液体を見る。

 

 

「あっ.....油!?」

 

 

そして向こう側、

ある少女がこちらに弓を向けている。

そう.....火矢を構えて。

 

 

「どうです?僕の戦略」

 

「やっ.....やめっ.....」

 

 

矢は射たれる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ドカーーーンッ!!!

 

 

 

 

 

「なっ!?」

 

 

近くで見ていた左近も吉継も、

本陣から眺めていた三成も驚愕する。

 

忍城に先陣部隊が流れ込んだ直後に、

凄まじい爆発音。

そしてキノコ状の火煙。

 

そして、燃え盛りながら忍城から飛び出してくる石田軍の兵達。

 

それが城外の兵達にも恐怖を与える。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

また、別の隊は.....

 

 

「なんだここは?

敵兵が一人もいないぞ!?」

 

 

思えば林に囲まれた溝のような地に入ってしまい、引き返す事も出来なくなっている。

 

 

「構え!」

 

 

靱負の号令で林の影から弓矢や鉄砲を持った兵が大量に出現する。

 

 

「ふっ.....伏兵!?」

 

 

「撃て〜!!!」

 

 

石田軍は為す術もなく、蜂の巣にされる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「大谷殿。これは撤退した方がいい」

 

「あぁ。これはもう戦にもなっていない」

 

 

左近と吉継の判断で石田軍は退却。

この忍城の戦い、

初戦は石田軍の大敗北となった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「くそっ!くそっ!くそっ!

くそぉ〜!!」

 

 

負けた三成は本陣で怒り狂っていた。

 

 

「私は舐めていたのか!?

驕れていたというのか!?

口で言いながら、

本気になっていなかったのか!?

中途半端な思想だったのか!?」

 

「落ち着け佐吉」

 

「落ち着けられますか!

こんなもの.....後世の笑い者だ!

ふざけるな!ふざけるな!

ふざけるな!ふざけるな!

ふざけるな!ふざけるな!」

 

「佐吉.....」

 

「我が主.....」

 

「ふざけるな!!

私はまだ負けてない!」

 

「いや、一度退くべきだ。

天竜様の本隊と合流し、

再起を図るのが妥当だろう」

 

「否。退く必要はない」

 

「佐吉!」

 

 

三成は正気の目をしていなかった。

 

 

「地形を改めて調査しよう。

 

兵の装備を整えよう。

 

敵の情報を洗い上げよう。

 

新しい戦略を考えよう。

 

そうだ。水攻めをやろう」

 

 

「なっ!?」

 

 

「そうだ。そうだそうだ!!

 

何時ぞやの天竜様のように!

 

あの高松城の水攻めの時のように!

 

私はあんな豪快な戦に憧れていた!

 

あんなに素晴らしく、美しい.....

 

私が憧れ、敬い、想う、彼の方のように!」

 

 

その言葉に左近が反応する。

 

 

「私は負けない!

負けてたまるか!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

忍城。

 

 

「ふぅ.....ふぅ.....ふぅ」

 

 

戦勝の知らせを聞いた長親は、

上座から崩れ落ち、

汗だくの状態で息を切らしていた。

 

 

「何で何もしていないお前がバテてるのだ?」

 

「いやぁ.....大将なんて初めてで、

思ってた以上に.....ふぅ.....緊張した」

 

「ふふっ.....お前らしい」

 

 

丹波も戦場に出ていた時と打って変わって朗らかな表情をしていた。

 

 

「ふぃ〜.....和泉は大丈夫?」

 

「あぁ。槍と鎧を破壊されたが、

身体に大事はない」

 

「よかった〜」

 

 

本当に大将とは思えない。

 

 

「.....死者は何人出た?」

 

 

急に長親が暗い顔をする。

 

 

「戦勝したとはいえ、

死者も多く出た。

成田兵も農兵も.....」

 

「そうか.....これで私は戦争犯罪者だな」

 

「長親.....」

 

「だが私はもう退かん。

百姓らのためにも!

この籠城戦、意地でも乗り切ってみせる!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

小田原。

 

 

「朧さん!風魔です!

風魔衆が本陣近辺に大量に出現しました!」

 

「ふ〜ん」

 

 

高虎が慌てるが、朧は玉座で呑気にジュースをストローでチューチュー飲んでいる。

 

 

「殿っ!」

 

「私は影武者よ。

本物の方からもうすぐ連絡くるから大人しくしてなさい」

 

「しっ.....しかし!」

 

 

その時何者かが本陣に突入する。

 

 

「羽柴秀長覚悟!!」

 

「ふっ.....風魔!?」

 

 

刀を持ち、

朧を刺殺しようと果敢に襲ってくる!

 

 

「ふふっ.....」

 

 

朧が微笑を浮かべたかと思えば、風魔者の真下から急に2つ現れる。同時にその風魔者の両腕を斬り飛ばす。

 

 

「がぁっ!!?」

 

「これが風魔?弱っい〜」

 

「吽斗達の方が強いよね〜」

 

 

それは土遁の術で隠れていた

阿斗と吽斗だった。

 

 

「ご苦労さん」

 

「は?阿斗達は天竜の命令に

従ってるだけだし!」

 

「影武者の分際で調子に

のってほしくないし!」

 

「.....つれないな〜」

 

 

阿吽はあくまで天竜の忍。

 

 

「ただいま〜」

 

 

天竜が戻った。

 

 

「おかえり〜」

 

「あぁ。何か問題は.....

あるみたいだね」

 

 

そこには両腕を失い、大量の血液を噴出させながら悶え苦しむ風魔者がいた。

 

 

「勇気と忠誠心だけでここまで来たのは褒めてあげる。でも.....」

 

 

天竜は風魔者の頭部に拳銃を向ける。

 

 

「相手が悪かったね」

 

 

そのまま風魔者を射殺した。

 

 

「天竜様.....北条方の情報を吐かせた方が良かったのでは?」

 

「無駄だよ。どうせ何も喋らない。

拷問した所で自分で心臓止めちゃうし。

ほっといても失血死だ。

こっちの方が彼の為にもいい」

 

「.....天竜様」

 

「ん?」

 

「一体何処へ行ってらしたのです!?

今は戦時中ですよ!?

指揮官としての責務を放棄して外部で惚けている貴方に、この小田原征伐を仕切る資格があるだろうか!?」

 

 

高虎は純粋な文句を述べ立てる。

 

 

「戯け」

 

「なっ!?」

 

 

天竜はその一言で返した。

 

 

「俺がただ気晴らしに遊びに行ったと思うか?我が家臣であるならば、その先も読め愚か者」

 

 

そう言うと天竜は何やら地図を取り出す。

 

 

「こっ.....これは.....」

 

「この小田原城近辺の情報だ。

罠の位置、地図には載ってない地、

地下空洞の出入口が記してある。

出入口は数あるうちの4つを発見。

隠密起動と協力して手に入れた情報だ。

忍城の視察はもののついでだよ」

 

「..........」

 

「あはは〜!一本取られたね高虎」

 

「朧。あれはお前の命令か?」

 

「何が〜?」

 

「表の串刺しだ!!」

 

 

朧の命令は異質だった。

捕らえたり、殺したりした北条兵や風魔者を長槍の先端に突き刺し、天高く掲げているのだ。小田原城天守閣にいるであろう北条氏康にも見えるように..........

 

 

「これで相手側にも充分に恐怖を与えられるでしょう?串刺しって私好きなの♡

お団子や焼き鳥が美しく美味しいように、

人間串も美しく美味しい♡」

 

「..........」

 

 

天竜は思わず狂気を覚えた。異世界とはいえ、自分自身の姿がこれなのだ。

狂気に満ちた殺人鬼。

血に飢えた魔界人。

 

 

「お前は影武者。大将は俺だ。

勝手な行動は謹んでもらいたい。

まぁ、串刺しは完全な駄案ではない。

俺の視野の中で続けて構わない。

だがそれ以外は俺を通してからにしてもらおう」

 

「ふっ.....」

 

「さてさて。

佐吉ちゃんが頑張ってるんだぁ、

先生も頑張らなくちゃな!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「決壊せよ!!」

 

 

三成は以前の天竜と同じ言葉を叫ぶ。

堰き止められていた利根川の大量の水が濁流となって忍城に攻め寄せる。

これが水攻め。

兵士だろうが農民だろうが、

男だろうが女だろうが、

大人だろうが子供だろうが、

生物だろうが非生物だろうが、

そこにある全てのものを飲み込む。

それが天下人に許された戦い方。

 

 

「忍城.....浮城と言ったか?水攻めで囲まれて本当に浮くかどうか試してやろう!」

 

 

三成は軍配を振り下ろす。

 

 

「我こそは石田三成。

天竜軍参謀にして、羽柴天竜秀長が側近。

天竜様より忍城征伐を担った

今戦の総大将である!

成田長親よ。

私は貴殿に敬意を払おう。

少数の勢力でよく初戦を勝ち抜いた。

お陰で己の無能さを改めて確認できた。

だが、私は学んだ。

戦に卑怯も何もない。

敵が強者だろうと雑魚だろうと、

全力で争い合うのが戦争だ!

それこそが天竜様の意志。

例え初戦がキリキリで、

貴殿にもう打つ手がなかったとしても、

私は気に留めない。

これは私と貴殿との戦争だ。

どちらかが死ぬか白旗を挙げるまで、

泥試合になろうとも、

私は貴殿と全力で戦争しよう!

石田三成は成田長親と戦争をしよう!」

 

「戦争に酔い痴れると

痛い目を見るぞ佐吉」

 

 

吉継が言う。

 

 

「それは初戦で味わった。

同じ轍は踏まない」

 

「我が主が言うならば、

拙者はそれに従おう」

 

 

左近もまた言う。

 

 

「貴方の忠誠心も大概ですね。

私と貴方で分けた所領も、

織田を抜ける際に無くなってしまったというのに.....

何故今もなお、私に?」

 

「拙者は所領ではなく、

その誠意に惚れたまで。

それと貴方に.....」

 

 

左近は微笑を浮かべる。

 

 

「叶わない想いもまた良し.....

1人善がりもたまには良し」

 

「?」

 

「..........むぅ」

 

 

島左近の想いに気づいている吉継は複雑な表情をする。

 

 

「変な所で君も鈍感だな」

 

「??」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

忍城。

 

 

「お前も可笑しな奴だな」

 

「ん〜?」

 

 

忍城の長親の部屋。

 

 

「女の子の部屋に勝手に入っちゃ駄目だよん甲斐くん?」

 

「うっせ!

俺の部屋は俺の部屋!

お前の部屋も俺の部屋!」

 

「うひ〜」

 

 

これがジャイアニズムである。

 

 

「百姓達全員本丸に入れたんだろ?

お陰で誰も水死しなかったけどよう.....」

 

「うん!良かったねぇ」

 

「廊下汚しちまうのを気にしてた百姓らの為にわざと泥に飛び込んで廊下を泥だらけにしたりよう」

 

「甲斐くんも付き合ってくれたじゃん」

 

「お前が無理矢理引き入れたんじゃねぇか!」

 

 

バシッ!と長親に手刀を食らわす。

 

 

「痛〜い.....」

 

「あのさ.....長親」

 

「ん?」

 

「戦始めた理由って.....俺のためか?」

 

「は?」

 

「羽柴秀長の側室になれって言われた直後に宣戦したんだろ?

それってつまり.....

俺とまだ一緒にいたいからか?」

 

「..........」

 

「お前が良かったらいいんだぜ?

戦に勝った暁には、

俺がお前を貰ってやってもいいぞ!

どうせお前を貰おうなんて物好きは今後一切絶対に現れねぇだろうからな!

そうだろ!?

俺と結婚したいんだよな!?」

 

 

それに対し、

長親は極々笑顔で返答する。

 

 

「んなわけないじゃん」

 

「は?

俺と結婚したいからなんだろ?」

 

「だから違うって」

 

「違う!

俺と結婚したいんだろ!」

 

「だからそんな事無いって!」

 

「絶対か!?」

 

「もちろん!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ぶたれた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「女の子叩いちゃ駄目だよ甲斐くん」

 

「うるせー!!」

 

 

プンスカしながら部屋を出てゆく甲斐。

 

 

「ふふっ.....

勝ったら結婚。

負けても結婚かぁ。

だから私は甲斐くんとは結婚できないんだ」

 

 

長親は悟る。

 

 

「この戦。

多分勝てない。

 

そして勿論。

負ける事もない。

 

 

最低最悪にして、

最強にして最凶の.....

 

 

 

 

 

 

ドロドロ試合になるね」

 

 

 




題名詐欺でしたね。
水攻めより初戦にピックアップしすぎた。
小田原城と同時進行にしてるしね。
さてさて果たして戦は!?
島左近の内なる想いは!?
次回予告
未来戦争
〜チートを使って何が悪いのだ?〜

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