天翔ける龍の伝記   作:瀧龍騎

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第四十一話 戦争宣言

「ちっ.....冥土の土産がこれほど厄介とは.....」

 

 

松永久秀の土産、朧との分離。

 

 

「本当に嫌になるわ」

 

「黙れくそアマ!」

 

「.....半分は自分だよん?」

 

「黙れ。吐き気がする」

 

「自分の顔だよぉ?私が出る前は、身体だけ変化してた事もあったでしょ?」

 

「鏡で見るのと、生身とでは大違いだ。女装した自分を他人の視線で見る程気色の悪いものはない」

 

「生物学的に女子なんだけど.....

なんで毛嫌いするのかな〜」

 

「自分自身だからだ!自分の両手でジャンケンをしているような、そんな虚しさがある」

 

 

その言葉に朧はくすくすと微笑する。

 

 

「ジャンケン?

両手での殴り合いでしょう?

右手と左手の」

 

「右手と.....左手?」

 

「そう。私は右手で左手は貴方。

勘解由小路天竜という個人は右利き」

 

「俺よりお前が優れていると?」

 

「500年働き続け、

3年間休んでいた右手と、

500年休み続け、

3年間しか働いてない左手。

どちらが強いかは明確」

 

「..........」

 

 

これがジャンケンか.....

 

 

「くだらないな。

所詮はドングリの背比べ。無意味だ」

 

「ふふっ.....そうゆうこと。

切っても切れないんだよ。

私達は」

 

「ちっ.....」

 

 

 

 

これは事実上の和解なのだろうか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ようやく大人しくなったか」

 

「くっ.....」

 

 

万見仙千代は拘束されていた。

逃亡を図ったからだ。

 

 

「真柄といい、お前といい、

弾正の土産はどうも使い勝手が悪い。

手こずらせやがる」

 

「っ.....!解放しろ!もう私は捕虜になるなど御免だ!」

 

「甘えるな!!

いい加減部をわきまえよ!」

 

「ふんっ!」

 

 

仙千代が何やら力を込めた。

すると突然仙千代がグッタリとする。

 

 

「これが風魔の能力か.....だが」

 

 

天竜がパチンと指を鳴らす。

 

 

「くはぁっ!!」

 

 

仙千代が目を覚ます。

 

 

「なっ.....なんで!?」

 

「心臓を自力で止めて自らの口を塞ぐか。

だが無駄だ。

お前の魂は俺が握っている。

俺の許可なくして、

生きる事も死ぬ事もできぬ」

 

「くっ.....!」

 

「どうした?

また心臓を止めるか?

無限に繰り返す事になるぞ」

 

「くっ!.....私は何を言えばいい?」

 

 

仙千代は観念したようだ。

 

 

「まず一つ。お前は何故近衛なんかに

雇われていた」

 

「拾われたからだ。

風魔から追い出された私をな」

 

「何故?」

 

「風魔衆の政権が変わったからだ」

 

「政権?」

 

「風魔.....その頭領風魔小太郎は、

1人ではない。

常に強い者へと受け継がれている。

私を追い出したのは、

今の小太郎。

9代目風魔小太郎だ」

 

「何者だ?そいつは」

 

「分からない。顔も、正体も。

知っているのは北条氏康ただ1人。

先代を殺してその地位を得た新参者」

 

「どうゆうことだ?」

 

「小太郎を受け継ぐには、

先代を殺さなければならない。

そうして代を重ねる毎に小太郎は強くなる。

8代目も確かに強かった。

でも.....」

 

 

仙千代は暗い様子を見せる。

 

 

「瞬殺だった。

何人か勝負を見学してたのだけれど、

.....気づいたら終わっていた。

あれは.....異質だった。

全身を刃物で串刺しにされ、

胴体を真っ二つにされていた。

人間業じゃない!」

 

「串刺しに.....真っ二つ!?」

 

 

どんな奴なのだ?

風魔小太郎は.....

 

 

「だが、何でお前は追い出されたのだ?」

 

「狙ったのよ。10代目を」

 

「ほう」

 

「でも駄目だった。

勝負にすらならなかった。

辛うじて命を取り留めた私は、風魔衆を離れる事を命じられた。

父上を殺したあいつに!!」

 

「するとお前は8代目の.....」

 

「えぇ。だから私があいつが憎い!!パッと出の存在で、全てを手に入れたあいつが!!」

 

「ならばお前はそうしろ!」

 

「!?」

 

 

そう言い、天竜は仙千代の拘束を解く。

 

 

「俺は北条氏康を倒したい。

お前は風魔小太郎を倒したい。

協力して損はない」

 

「.....私は、お前の部下になるつもりはない!」

 

「構わない」

 

「!?」

 

「ただの共犯者さ。

成し遂げた後、どうしようと勝手だ」

 

「..........変わってるな」

 

「壊れているだけだ」

 

「ふん。

..........協力は小田原攻めまでだからな」

 

「あぁ、ありがとう。感謝する」

 

 

2人は握手を交わした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「「羽柴天竜!!!」」

 

「今度はこっちか.....」

 

 

仙千代以上に真柄は面倒だった。

会話で諌めようとしても暴れてしまって拘束するのがやっとなのだ。

 

 

「「がああぁぁぁぁ!!!」」

 

「どうしましょう天竜様?」

 

 

任されていた高虎もお手上げだった。

 

 

「「天竜!!!!」」

 

「ふんっ!」

 

 

天竜は真柄の腹部を蹴り上げた。

 

 

「「がはぁっ!!?」」

 

 

真柄はその場に疼くまってしまう。

 

 

「やっ.....やり過ぎでは?」

 

「悪ガキには拳骨が一番だ。

バカは痛い目を見んと学ばない。

昨今の体罰の問題など甘過ぎるのだ」

 

「はぁ.....」

 

 

拳骨じゃねぇだろ!腹蹴りは!

 

高虎は心の中でそっと呟く。

 

 

「粋がるなよ雌ガキが」

 

 

天竜は真柄の髪を掴んで引き上げる。

 

 

「「うぅ.....」」

 

「その2人分の脳味噌によく叩き込め。

俺は確かに朝倉義景の生命を奪った。

だが、それ以前に義景個人を滅ぼした奴がいるだろう?それは俺か?違うだろう?」

 

 

真柄はハッと思い出す。

義景と正面から衝突し、

彼の求婚も無視して

朝倉家を壊滅に追い込んだ張本人。

 

 

「「織田.....信奈!!」」

 

「精々奴を恨んでおけ。

そしてそれを戦場で発揮しろ」

 

 

天竜は真柄の拘束を解く。

 

 

「真柄直隆、直澄は死んだ。

お前は新たなる姫武将。

俺の名の一字をやる。

直竜。真柄直竜。

そこそこよかろう」

 

「「真柄.....直竜」」

 

「阿呆が二乗されて大阿呆になったか。

高虎、あれを持ってこい!」

 

「はっ!」

 

 

そう言われて高虎が持ってきたのは、

 

 

「これをやる」

 

「「.....刀?」」

 

「『備前長船長光』

天下の剣豪、佐々木小次郎が使っていた長太刀だ。お前ら用に少し改造して、少し刀身を太くしている。

お前らの大太刀は姉川で折れたと聞いてな。

亡き妻の形見でもある。

大事に扱え」

 

 

直竜は刀をそっと受け取る。

 

 

「「ありがとう.....ございます」」

 

「礼儀を弁えただけよしとしようか」

 

 

天竜軍主戦力。

真柄直竜の誕生である。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

小田原城。

 

 

「ようこそ武田信玄」

 

「あぁ」

 

 

北条氏康はニヤニヤした表情で待ち構えている。信玄が今日しようとしている事を知っているのだ。

信玄は思わず冷汗をかく。

 

 

「大丈夫ですか信玄様?

念の為に何人か忍ばせてますが.....」

 

「ふっ.....恐れているわけではない。

ただ緊張してな。

同盟を組んでいた頃から侮れぬ相手だったが、いざ敵対するとな」

 

「ふ〜ん。

ただの小娘にしか見えませんがね」

 

「馬鹿っ!奴は北条早雲の孫娘だ!

あの見た目で破格の才能を持っている!

攻めで最強が武田なら、

守りで最強は北条だ!」

 

「ふっ.....その2つが戦とは、

まさに矛盾ですね」

 

「何をヘラヘラしている!」

 

「ちょっと?

何をコソコソしてるのかしら?」

 

 

信玄と天竜の様子を見ていた氏康が口を挟む。

 

 

「あ.....あぁ」

 

 

信玄は焦っていた。

何故なら、

 

この戦に大義名分がないからだ。

 

天竜に挑発されて勢いで決めてしまったが、

『上洛に邪魔だから裏切る』

など大義名分でも何でもない。

 

だが、

 

 

「ようは、裏切り者が武田にならなくすればいい。私に任せて頂きたい」

 

「?」

 

 

天竜はすでに何らかの策を

打っているらしい。

 

 

「そっちの男を見るのは初めてね」

 

 

氏康は天竜に興味を抱く。

 

 

「初めまして氏康殿。私は.....」

 

「羽柴秀長。元織田の武将かしら?」

 

「.....よくご存知で」

 

「あんたらの情報全部把握してるわ」

 

「お得意の風魔衆でですか?」

 

 

天竜は氏康のすぐ横に付く、

全身を黒衣に包んだ者を睨む。

 

こいつが風魔小太郎か。

 

 

「.....そうよ」

 

「そうですか。

では、私が今ふと思った事を

率直に述べたててもよろしいですか?」

 

「構わないわ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「めっちゃ貧乳っすね」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「..............................は?」

 

「おい、天竜!?」

 

 

それは外交の場にて言ってはならぬ言葉。

 

 

「一瞬、男かと思いましたよ。

 

あれ?本当に女の子?

 

我が主人は豊かであるゆえに

その差があり過ぎて気の毒に思う。

 

そんなに貧しければ、

サラシを巻く必要もありませんよね?

隠す程のものもないし。

 

豊かな方はいつも肩コリに悩むそうですが、

貴方はそんな心配もなさそうだ。

やったね!

 

そうゆうのを何て言うんでしたっけ?

 

そう!『洗濯板』!!

 

お願いですよ〜。

肋骨が浮き出てそうな

貴方のゴリゴリのちっぱいで

洗濯をさせてくださ〜い」

 

「おのれ.....いい気になって」

 

「ま、さ、か、

実は幼女並みの年齢とか?

年より老けてるだけとか。

それなら胸が小さいのも自然だし、

『蒙古斑』が消えない理由も

納得がいく」

 

 

「羽柴秀長ぁ!!!!!!」

 

 

氏康がブチ切れた。

 

 

「風魔!!こいつを殺しなさい!!」

 

「はっ!」

 

 

氏康の叫びと共に、小太郎とそれに連なる数人の風魔忍が動く。

 

 

「やれ」

 

 

それに対し、天竜もまた呟く。

 

すると何処からか糸が数本飛んで来る。

 

 

「むっ!?」

 

 

小太郎はいち早く察知し退いた。

だが、他の風魔忍はそれに巻き込まれる。

 

 

「弾けろ」

 

 

糸が網のように引かれる。

 

 

「あぎゃあ!」

 

「かぐぅあ!」

 

「へぎょっ!」

 

 

糸が鋭利な刃物のように風魔忍を斬り裂き、

バラバラに刻んだ。

 

 

「鋼の糸!?まさか!?」

 

 

彼女は現れる。

 

 

「風魔の女郎蜘蛛.....

万見.....仙千代!?」

 

 

氏康が言う。

 

 

「お久しぶりです氏康様。

8代目が嫡子。

元風魔衆後継者、万見仙千代です」

 

「あんた.....出奔したと思ったら

武田にいたの?」

 

「勘違いしないで下さい!

私は羽柴天竜に協力する立場ですが、

部下になったつもりはない!」

 

「くっ.....」

 

「へぇ〜」

 

 

この惨事にむしろ驚いていたのは

天竜だった。

 

 

「仙千代〜。

お前って意外と強いのな。

良晴の忍に手も足も出なかったって聞いたもんで、てっきり頭だけかと.....」

 

「あの時は不意を突かれた上に、

武器は刀しかなかった!

迂闊だったと今も後悔している!」

 

「つまりおっちょこちょいなのな。

可愛いねぇ〜」

 

「うるさい!!」

 

「黙りなさい!!」

 

 

無視されていた氏康が再び叫ぶ。

 

 

「潰してあげるわ!

あんたも!信玄も!」

 

「その宣戦受け取った!」

 

「「「!?」」」

 

 

天竜の言葉に周りの全員が困惑する。

 

 

「てっ.....天竜!?」

 

「まさか氏康殿が我ら武田をそのように思っていらしたとは.....誠に残念でなりません。

しかし!宣戦布告をされた以上!

無視はできません!

正々堂々と、そちらの先攻を打ち破ってご覧に入れましょう!」

 

「なっ.....!?」

 

「何よそれ!?」

 

「私は副将軍!

征夷大将軍様に代わり其方を

退治してくれよう!

征夷大将軍の本職は幕府の構築にあらず!

朝廷に仇なす、エミシ、俘囚の討伐なり!

私は今より、北条家をエミシと断定する!

副将軍の名において、この小田原攻め。

朝敵の討伐を大義名分にさせて

もらおうか!」

 

 

信玄、氏康と2人とも驚愕した。天竜は開戦の悪行を北条になすりつけようとしているのだ。あくまで戦を始めたのは北条方。それに勝って、これが正義であろうと示そうとしているのだ。

 

信玄は思わず天竜に恐怖する。

息をするように嘘を吐き、

人の心情を駒を回すように操り、

掌で踊らすように人で遊ぶ。

 

魔王、天竜。

 

 

「いや、魔将軍が正しいか.....」

 

 

魔王信奈が手放す程の厄介者。

 

 

「この外道め!」

 

「ふっくく.....くひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃ!!!!」

 

 

氏康の熱い威圧に、

天竜は凍てつく威圧で返す。

 

 

「では、今度は戦場でお会いしましょう」

 

 

天竜は信玄と共に、そこを離れた。

 

 

「キッ!」

 

「..........」

 

 

仙千代はずっと小太郎を睨んでいたが、

小太郎は.....

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

天竜だけを終始見つめていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「何処で知った?」

 

「はい?」

 

「とぼけるな!『蒙古斑』だ!」

 

「あぁ。大御所様です」

 

「義元から!?」

 

「『三国同盟はもう終わっているのだから今更顕著に約束を守る事なんてありませんわよ!オーッホッホッホ!』

だそうです」

 

「..........」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あの糸、本当凄かったなぁ」

 

「まだ言いますか」

 

 

駿府に戻り、部屋に2人きりになる

天竜と仙千代。

 

 

「だって斬り裂く糸なんて、

バジ⚫︎スクの夜叉丸とか

ヘル⚫︎ングのウォルターみたいじゃん!」

 

 

ちょいオタクが入っている天竜.....

 

 

「『風魔の女郎蜘蛛』だって。

かっくいい〜」

 

 

ベタ褒めである。

 

 

「ふんっ!」

 

「冷たいな〜。仙千代ちゃん」

 

 

天竜が後ろから抱きつく。

 

 

「!!?」

 

「あぁ。やっぱり美女と血は合うなぁ。

さっきから興奮が止まらん」

 

「ちょっ!!.....何を」

 

「久々にお前の匂いを嗅いだ。

やはり馨しい」

 

「ひっ.....久々って!?」

 

「お前に弾正が取り憑いてた時に何度かね。

君の具合は最高だったよ」

 

「ひっ.....!?」

 

 

天竜は仙千代の耳を甘噛みする。

 

 

「やんっ.....」

 

「戦の前はいつも滾る。

そんな時に目の前に美女がいれば、

すぐに押し倒して抱きたくなる。

相手が泣き叫ぼうが、

己が精が尽きるまでやり続けたくなる」

 

「やめっ.....」

 

 

天竜は耳にしゃぶりつきながら、

仙千代の胸や股をまさぐっていく。

 

 

「いただきます」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「天竜。いるですか?」

 

 

 

 

「ん?」

 

「ひっ!?」

 

「..........」

 

「じゅっ.....じゅじゅじゅ.....

十兵衛!!?」

 

「そうですか。そうですか。

織田を抜けて傷心中かと思って

来てみれば.....

そんな心配は全くないようですね!!」

 

「何でお前が!?」

 

「私が織田の援軍を志願したのです!

でもやっぱり帰ります!!」

 

 

襖を乱暴にバンッと閉め、

プンスカしながら帰ってゆく十兵衛。

 

 

 

 

 

「あれって確か.....明智光秀?」

 

「あぁ。俺の正室だ」

 

「違うです!!」

 

 

戻って来た。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「確認するぞ。

十兵衛のお陰で若干のゆとりが出来た!

だが、戦力的に不利なのは変わらない!

しかしだ。

俺は戦において重要なのは、

戦力でも戦術でもない!戦略だ!!」

 

「でっかい声出さなくても分かるです」

 

「.....そうか」

 

 

駿府にて作戦会議。

 

 

「北条氏康は戦略にも長けている。

だが、それ以上に風魔小太郎が厄介。

奴は北条に鉄砲を持ち込んだ張本人」

 

「鉄砲?」

 

「恐らく織田と同時期に.....

それで小田原城の守りをさらに強固にした。

そして地下通路」

 

「地下通路!?」

 

「小田原城の地下に

迷路の如く広まっている。

迷路は何里にも渡ってあり、

出入口も大量にある。

そこに避難したり、

それを利用して敵に奇襲をかける事もある」

 

「迷路の正確な道順は分かるか?」

 

「分からない。

小太郎の命令で迷路は定期的に

改築するように言われてる。

風魔を離れていた私には.....」

 

「むぅ.....」

 

「それから小田原城を本城に、

いくつもの支城がある。

それらを同時に攻略しなければ.....」

 

「なるほど.....」

 

 

仙千代の説明を受け、天竜は思案する。

 

 

「2万の軍勢を持って、

別働隊に支城の陥落を行わせよう。

.....三成!」

 

「はっ!」

 

「お前を総大将に命じる。

全ての支城を落とせ!」

 

「承知!」

 

「吉継!お前は三成に付き、支えてやれ」

 

「承知しました!」

 

「佐吉はドジだからな。

馬鹿な真似をしないよう、

見守ってくれ紀之介」

 

「ちょっ!.....天竜様!?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「孫市が明日、

鉄砲と大砲を大量に届けてくれる。

それが到着され次第、

軍備を再編成しよう」

 

「「「承知!!」」」

 

「仙千代。お前は凪が纏めている

隠密機動隊に付き添え。

共に奇襲を仕掛けてくるであろう

奴ら風魔を足止めしろ!」

 

「はいはい」

 

「..........」

 

「どうした十兵衛?嫉妬か?」

 

「違うです!!」

 

 

十兵衛じっと仙千代を睨んでいたのだ。

 

 

「どうしてこいつがいるですか?

こいつは以前、信奈様を騙し、

織田を乗っ取ろうとしていた奴ですよ!

というか、何故生きているのですか!?」

 

「「「..........」」」

 

 

周りが急にしんとする。

 

 

「恐れながら光秀殿」

 

 

三成が口を開く。

 

 

「貴方はいつまで織田に忠誠を誓う気ですか?」

 

「は?」

 

「だってそうでしょう。

私達は皆、織田信奈に蔑ろにされた身です。そんな皆が手を取り合い、天竜軍という集団を作った。

織田信奈の不当な態度への反感を持ちながら.....貴方もそう思ったからこそ、奴を殴ったのでしょう?」

 

「わっ.....私は.....」

 

「貴方はどっちなのですか?

味方か敵か.....

それがハッキリしない限り、

私達は貴方を信用できません!」

 

「よせ。十兵衛を責めるのは

お前の役目じゃない」

 

「.....すみません。で過ぎた真似を」

 

 

三成は頭を下げる。

 

 

「でも実際、どっちなんですかね?」

 

 

織部もまた言う。

 

皆疑っているのだ十兵衛を.....

 

 

「私は.....」

 

「十兵衛。ちょっと.....」

 

 

天竜は十兵衛だけをそこから連れ出し、

2人きりになる。

 

 

「皆、信奈を嫌っているんだ。

そんな中で中途半端な志の者が

混ざっていると士気に乱れが生じる。

十兵衛。

君がまだ信奈に忠誠を誓うのなら、

今すぐ帰れ」

 

「天竜.....」

 

 

天竜はある服を用意する。

 

 

「それは.....」

 

「我が軍の軍服だ。

君のものも用意してある。

それを着るというのなら、

俺の下で一生涯働いてもらう。

だがそんな気がないなら、

今すぐこの軍服を破棄する。

そして君との縁も切らせてもらう。

そうなれば復縁する事は二度とない」

 

「..........」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

結局、十兵衛はその日に

答えを出すことはなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

安土城。

 

 

「光秀殿が羽柴秀長の援軍に向かいました」

 

「そう」

 

「もう、裏切ったと考えて

よろしいのでは?」

 

「..........」

 

 

信奈は遠い目をしていた。

 

 

「失礼する」

 

 

その時襖が開けられ、

何者かが信奈の部屋に入る。

 

 

「え?」

 

「何で.....貴方が.....」

 

 

その人物は.....

 

 

「この度、信奈様の小姓に

任じられました.....」

 

 

魔将軍の姉。

 

 

「森水青蘭。改名致しまして、

森蘭丸と申します」

 

 

小姓と言うにはやや大柄な女であった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

甲斐。

 

 

「天竜は本気で北条を潰すらしいな」

 

「どうしましょう?」

 

 

山県昌景が問う。

 

 

「倒せんよ。あの小田原城と風魔小太郎がいる限り.....奴は私だけでなく、謙信まで出し抜いた奴だ」

 

「では何故任せたのです?」

 

「天竜は恐らく負け知らず。

そんなのは真の強者とは言えん。

だから奴を、

わざと負けさせる」

 

「いいのですか?」

 

「あぁ、時期を見て謙信に仲裁を頼む。

多分、泥試合となるだろうからな」

 

「.....上手くいくでしょうか?

武田軍の中にも天竜を応援する側の者も多くいる。修理なんて名前を覚えてもらってから、ずっと夢中になってますし.....」

 

「修理??」

 

「..........いつか裏切られますよ?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「小田原城はワニガメだな。

いくら叩こうとも硬い甲羅に守られ、

油断すればこちらが噛まれる。

防御だけでなく、

反撃にも特化している。

だからこそ難攻不落。

北条氏康が籠城戦を選んだ時点で

この戦..........

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

俺の勝ちだ」

 

 




なんか仙千代とのフラグが立っちゃいました。
はたして風魔小太郎の正体は?
この小田原攻め、勝者はいかに?
次回予告
忍城のでくのぼう
〜降伏はしません。戦います〜

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