天翔ける龍の伝記   作:瀧龍騎

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前回のを習い、
出番なかった人たちに
役を与えてゆくことにしました。


第三十九話 武田の軍師

摂津。

 

 

「あ〜あ。久々に来たな〜」

 

 

天竜は摂津の本猫寺を目指していた。

 

 

「にゃ〜」

 

 

そして何故かその傍に

1匹の黒い子猫が着いている。

 

 

「さぁ着いたぞ」

 

「にゃっ!」

 

 

黒猫は天竜の身体を登り、

頭の上に乗っかる。

 

 

「たのも〜」

 

「どなたですにゃ?」

 

 

門番に話しかけられる。

 

 

「顕如に会いにきた」

 

「そんな話は聞いておりませんにゃー」

 

「はぁ!?

ったく顕如め。

ちゃんと伝達しなかったな!」

 

「兎に角出直し下さいにゃー」

 

「にゃ!」

 

「うっ.....!」

 

 

美少年が頭に子猫を乗せている。

門番の少女は思わずよがってしまう。

 

 

「どっ.....どうしても入りたくば!

漫才で私を笑わせてみなさいにゃ!」

 

「なっ.....なんだと!?」

 

 

俺にはお笑いのセンスなどない!!

見るのは好きだが見せるのは苦手だ。

 

 

「でっ.....」

 

「で?」

 

「電話に.....出んわ?」

 

「でんわとは何ですにゃ?」

 

「あぁそっか。

えぇと.....

アルミ缶の上にある蜜柑!」

 

「あるみかんとは何ですにゃ?」

 

「のわっ!!

くっ.....

よし!召喚!!」

 

 

天竜はそこに何故か布団を用意する。

 

 

「布団が〜」

 

 

布団に何やらダイナマイトを仕込む。

 

 

 

ドッカーーーン!!!

 

 

「吹っ飛んだ!!」

 

 

 

何故こんな大掛かりにした?

 

 

「あ.....え?..........」

 

 

爆発に気をとられ、

洒落が通じなかったようだ。

 

 

「くそ〜!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

2時間後。

 

 

「おやおや。一体どうしたの?

寿限無 寿限無 五劫の摺り切れ

海砂利水魚の 水行末 雲来末 風来末 食う寝る所に住む所 藪柑子 ブラコウジ パイポ パイポ パイポの シューリンガン シューリンガンのグーリンダイ グーリンダイのポンポコピーのポンポコナーの長久命の長助くん。

あぁ、怪我したのだな。

でも大丈夫。

お前は

寿限無 寿限無 五劫の摺り切れ

海砂利水魚の 水行末 雲来末 風来末 食う寝る所に住む所 藪柑子 ブラコウジ パイポ パイポ パイポの シューリンガン シューリンガンのグーリンダイ グーリンダイのポンポコピーのポンポコナーの長久命の長助

って名前なんだから、

丈夫にできてるに決まってるだろ?

ところで今日は何食べるの

寿限無 寿限無 五劫の摺り切れ

海砂利水魚の 水行末 雲来末 風来末 食う寝る所に住む所 藪柑子 ブラコウジ パイポ パイポ パイポの シューリンガン シューリンガンのグーリンダイ グーリンダイのポンポコピーのポンポコナーの長久命の長助くん?」

 

「ぷっくくく.....」

 

「笑った!笑ったぞ!」

 

 

結局漫才ではなく、

落語で笑わせる至った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「おい顕如!あの制度廃止しろ!

入るだけでどれだけ時間かかったと思ってるんだ!」

 

「ごめんごめんにょ。まさか天竜がお笑いに疎いとは思ってなくてにょ」

 

「ったく.....ホレ土産だ」

 

「にょにょっ!?

この和菓子は何なのだにょ!?」

 

「八ツ橋だ。黄黄に頼んで本来より半世紀早く作らせた。そのうち京でも売れるよ」

 

「はむ、はむ、はむ、

にょ〜!!美味いにょ!!

是非とも本願寺の名産にしたいにょ!」

 

「京で売るっつただろ!」

 

 

基本自分勝手な顕如である。

 

 

「んで。今日は何しに来たにょ?」

 

「人を紹介してほしい」

 

 

天竜は頭の上の子猫に

八ツ橋をやりながら言う。

 

 

「けんにょは知り合いが多いにょ!

誰の紹介でもできるにょ!」

 

「じゃあ武田信玄はできるか?」

 

「むぅ。難しい所をつくにょ」

 

「何でだ?

お前と信玄は親戚通しだろ?

義姉妹だっけ?」

 

「従姉妹だにょ。

いや再従姉妹(はとこ)?」

 

「そんな離れてるのか?」

 

「父上や母上なら仲良かったかもしれないけど、けんにょ自身は遠い親戚って感じにょ」

 

 

史実なら、

武田信玄の正室、三条夫人の

弟が顕如という事もあり、

2人は義兄弟の関係だった。

 

 

「お前姉ちゃんいたっけ?」

 

「あぁ、三条かにょ?

父上に勘当されて寺を追い出されて、

何処かに駆け落ちしたにょ」

 

「あらら」

 

 

交流はほとんどないか.....

 

 

「でも信仰心は熱いにょ!

毎年欠かさず来てくれるし、

勝も猫好きで話は合うにょ!」

 

「仲はいいんだな」

 

「う〜ん。でもけんにょが織田側に着いてからは交流はほとんどないにょ」

 

「そりゃあな」

 

「まぁ話は通しておいてくれ。

近々会いに行くって」

 

「何しに行くにょか?

講和ですもするにょかにょ?」

 

「いんや亡命するから」

 

「にょにょっ!?

織田を裏切るのかにょ!?」

 

「というかこのままだと

殺されそうだから、

逃げ道作っとくんだよ」

 

「天竜も色々と大変だにょ.....」

 

「ところで最近調子はどうだ?」

 

「絶好調にょ!

雑賀衆とも和平を結んで以来、

漫才も再結成して蹴鞠大会も合同で

楽しんでるにょ!」

 

 

天竜が孫市を側室にとった事で

両国間に再び交流が深まり、

顕如と孫市が親友同士ということもあり、

以前のわだかまりは消えていた。

 

 

「それで.....

さっきの勝の事なんだけどにょ.....」

 

「ん?どうした?」

 

「条件として.....

そのニャンコをモフモフ

してもよいかにょ〜?」

 

 

顕如はずっと天竜の頭の上の子猫を見て

うずうずしていたのだ。

 

 

「いいけど.....大丈夫かなぁ」

 

「大丈夫にょ!

けんにょは猫神様子孫にょ!

ニャンコの扱いだけは得意にょ!」

 

 

そう言って子猫を触ろうとする顕如。

だが.....

 

 

 

 

 

 

『気安く我に触れるな小娘』

 

 

 

 

 

「..........にょにょっ!?」

 

 

子猫が喋ったのだ。

 

 

『我に触れて良いのは我が仔のみよう』

 

「じゃあ何で来たんだよ?」

 

「てっ.....天竜!!その猫は.....」

 

「ん?俺の御先祖様。月読命」

 

 

すると黒子猫が人間態の

元のツクヨミの姿に戻る。

 

 

『ほう。お前が顕如か』

 

「にょにょっ!?」

 

『ふむ。何百年経とうとも

我が血を色濃く残すとは、

流石であるぞ』

 

「にょ?」

 

「は?」

 

 

それはまさしく。

天竜ではなく顕如に向けて

言われた言葉。

 

 

「どうゆう事だツクヨミ?」

 

『どうゆうも何も.....』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『顕如も我の子孫だ』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「にょにょにょっ!!?」

 

「はあぁぁ!!?」

 

 

 

 

 

 

 

衝撃の事実である。

 

 

『何故我が猫に変じられるか

疑問に思わなかったのか?』

 

「いや思ってたけど.....

まさか.....なぁ」

 

「ちょちょちょ.....

ちょっと待つにょ!

つまり貴方.....貴女様が、

..........猫神様?」

 

『まぁ間違いではない』

 

「こっちも待てい!!

お前は俺の御先祖様だろ!?」

 

『そうだ』

 

「じゃあなんで!」

 

『では我のエジプトでの話は

知っているか?』

 

「エジプト?

確かセクメトって名乗って.....

あぁ..........そうゆうこと」

 

 

 

エジプト神話において、

太陽神アメンラーは、

人類を滅ぼすべく、

セクメトという獅子の神を

送りこんだ。

一時はナイル川を紅に染めるほどの

死者を出したが、

オシリスらの反対によって

アメンラーは根負けし、

セクメトは獅子神から

凶暴的な性格を奪われ、

猫神のバステトに変わったそうな。

 

 

「それが日本に伝わって、

猫神様伝説の始まりか。

なるほどな」

 

『まぁ、我の行動邪魔だてしたのは

オシリスではなくゼウスだったがな』

 

「いつも思うけどゼウスなの?

デウスじゃなくて」

 

『ゼウスもデウスXマキナも同一だよ。

むしろゼウスがデウスという名で

世界中に広告しているのだ。

そのおかげでゼウスは

ただの天空神から全知全能神に

進化しおった!』

 

「そっちの話は分からん」

 

 

基本そっち系の話は神達に任せている。

参加しようとしても足手まといだろうし。

 

 

 

「まだこっちの話にょ!

つまり何か!?

猫神様と月読様は同一で、

けんにょと天竜は

元は同じ一族だったのかにょ!?」

 

「考えてみりゃそうだな」

 

『あぁ、その通り』

 

「おいおい。

お前一体何人子供いるんだよ!?」

 

『2人だけだ。

龍神を祀る一族と、猫神を祀る一族。

今では遠く離れたが、

本質は同じだよ』

 

「ふ〜ん」

 

 

天竜は興味なさげである。

 

 

「でも猫に変身できても、

それ以外の点でお前から

猫っぽさが見当たらないんだけど?」

 

『..........』

 

 

ツクヨミから猫耳と尻尾が生える。

 

 

「なんでもありだなおい!」

 

『顕如よ。

極楽猫土なるものに行きたくば、

天竜に従っておけ。

間違うことはあるまい』

 

「分かりましたにょ!猫神様!」

 

『ふむ。天竜もこれだけ素直なら

可愛いのだがのう?』

 

「うるせぇ」

 

 

一見すれば家族のようにも見える。

 

 

「いいか顕如。

命を大切にしないと極楽猫土には行けん。

寿命を真っ当するのがそれだ。

戦で死んだりなんかしたら、

極楽蜚蠊土に落とされるぞ!」

 

「にょにょっ!?」

 

 

勿論嘘である。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

結局顕如の推薦は上手くいき、

天竜は晴れて武田入りを果たした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ふ〜んふふ〜ん」

 

「あの.....天竜様?」

 

「どった高虎?」

 

「何をされてるので?」

 

「明後日は武田本軍への顔見せだからな!」

 

 

天竜の14068人の兵はまだ

武田の領地の端に待機していた。

天竜の武田入り調整をしていたからだ。

 

 

「せっかく顔見せだ。驚かせてやらんとな」

 

「そのままでもいいのでは?」

 

「たわけ。織田兵はただでさえ田舎者だと思われている。そんな俺らがいくら格好つけた所で、猿が舞台で衣装着てると思われる程度だよ。

その根本から変えねばならん」

 

「はぁ.....」

 

「まっ、俺も衣装に頼るだけだけどな」

 

「?」

 

「呉服屋に頼んだ物が明日届く。

天竜軍はまた一歩進展するのだ」

 

 

すると天竜は小太刀を取り出し、

後ろで縛った己の髪を掴む。

 

 

「時代は先に進む」

 

 

そう言い、天竜は髷を斬り落とした。

 

 

「なっ!?」

 

「高虎!俺について来るというのなら髷を落とすがいい!落として俺に対する忠誠心を見せてみよ!」

 

 

天竜は小太刀を高虎に放る。

 

髷もまたサムライの魂。

武士にとっては刀の次に大事。

 

 

 

 

だが、高虎は後腐れなく

堂々と髷を落として見せた。

 

 

 

「私は古くからの風習に固執するつもりはありません。例え貴方が私に、着物ではなく南蛮服を着ろと言おうとも、私はそれに従いましょう。

真のサムライとは、

形ではなく、志なのですから」

 

 

高虎の返答に天竜はそっと微笑む。

 

 

「よろしい!

お前の覚悟確と受け取った!

以後も俺の側で仕えるがいい!」

 

「ははっ!」

 

「んで.....早速で悪いが

南蛮服を着てくれないか?」

 

「へっ?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

3日後。甲斐にて。

 

 

「今日は織田からの新入りが来るそうじゃ」

 

「所詮田舎侍だろう?

汚らしい格好を眺めてやろうぜ」

 

「信玄様の命で、

我らは全員赤塗りの武装で迎えるらしい。

多分それで織田もんをビビらすんだろうさ」

 

「というか織田から来るのは誰じゃ?」

 

 

その時、兵の中でも一際上品な

鎧を身につけた男が現れる。

 

 

「羽柴天竜秀長。副将軍にして、

あの毛利を降伏させた男だ」

 

「かっ.....勘蔵様!?」

 

「ちっ.....!」

 

 

山本勘蔵。山本勘助唯一の跡取り。

ずっと隠されていた子のため、歴史の表舞台には出てこなかったが、父親の死を機会に出てこようとしてたが、良晴を軍師にする事に拘る信玄のせいで出世が遅れ、パッと出の天竜に軍師の座を横取りされてしまった者である。

 

 

「ちっ.....信玄様は何故あんな男を!」

 

 

地位を奪われた彼にとって天竜は泥棒猫のようなものだ。

 

 

 

 

「おっ?来たぜ。

さてさてどんな奴らが....................

........................................え?」

 

「何だ.....アレ」

 

「本当に織田兵.....か?」

 

「嘘だろ?」

 

 

 

 

 

天竜軍は、

なんと全員が洋式の服装だった。

皆が皆、黒い軍服を着用しているのだ。

馬に乗り、腰には帯刀

腕には新型の鉄砲。

全員が髷を落とし、

足は草鞋ではなく靴を着用。

従来の武士の姿は

面影すら残していなかった。

 

 

特にその先頭。

天竜軍の総帥。羽柴天竜。

彼は特別な白い軍服を着用。

背中にはビロードのマント。

馬も一際大きな新種に乗り、

1番の威圧を見せていた。

 

 

それは、驚かせようとしていた武田軍側が呆気に取られる程の光景である。

武士=和式という見解を覆す結果となる。

 

 

「あれが.....羽柴.....」

 

 

勘蔵もまた思わず後退りしてしまう。

 

 

 

「あっはっはっはっはっは!!!!

あれが天竜か!!

羽柴良晴の兄だけあって、

奴もまた面白い!!」

 

 

丘の上から、

信玄は天竜軍を愉快そうに見ていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そうして.....

信玄の居館、躑躅ヶ崎館。

 

 

「天晴れだ。天竜!

お前の軍備は誠に見事であった!」

 

「はっ!」

 

 

玉座に座る信玄が問う。

 

 

「聞くが天竜よ。

奴らのほとんどが鉄砲を所持していたが、

皆が皆使えるのか?」

 

「はい。騎乗したままの発砲が可能なように鍛えております」

 

「それはそれは.....

我が武田騎馬隊とお前の騎馬鉄砲隊

が合わされば武田は次の段階に進化するやもしれぬ」

 

「少しよろしいですか?」

 

「おう。何だ?」

 

 

 

 

 

 

 

「お遊びはそれぐらいにして

出てきて下さい」

 

 

 

 

 

 

天竜が言い放った。

 

周りの武田兵はよく分からず困惑する。

 

 

「影武者でしょう?貴方」

 

 

目の前の信玄に対して言い放つ。

 

 

「「よくぞ見破った」」

 

 

目の前の信玄と、

玉座の後ろに隠れていたもう1人の

信玄が言う。

 

 

「下がっていいぞ」

 

「はい姉上」

 

 

影武者信玄は煙のようにいなくなる。

 

 

「何故気づいた?」

 

「一度会った美人さんの顔は

忘れない気質でしてね」

 

 

天竜が穏やかな表情で冗談気に言う。

 

この男.....只者じゃない。

 

 

「あれは双子の妹だ。

見破ったのはお前が初めてだぞ?」

 

「それは光栄です」

 

 

天竜は信玄に頭を下げる。

 

 

「先程のは武田逍遙軒殿ですかな?」

 

「..........何故そこまで知っている」

 

 

信玄の表情が急に険しくなる。

逍遙軒は武田家の隠し子。

産まれた時から影武者になる事が決められていた影の人物。

部外者が知る由もないのだ。

 

 

「私は歴道の陰陽師。

千年間の躍動を生き抜いた

ラストマジシャン。

過去も未来も深く見通す。

時の流れを作るも自由自在」

 

 

その最後の表現に信玄が反応する。

 

 

「むぅ?

お前は天命を動かすとでも言うのか?」

 

「ふっ.....」

 

 

信玄は自らを救った良晴こそがそれに当たる者だと信じている。

 

 

「動かすだと?

そんなものは生温い」

 

 

天竜は邪悪な表情で言う。

 

 

「歴史は変えるものではない!

作るものなのだ!

歴史をなぞり、その一部を改善する程度の良晴と同一に見るでない!

俺は歴史を作る側、製作者だ!

天命すら我が手中に収めてくれよう!」

 

 

それは想像を絶する覇道の塊。

天下の信玄と唄われた彼女も

冷や汗をかくほどの.....

 

 

「ぶっ.....無礼者!!

信玄様になんて口の聞き方を!」

 

 

勘蔵が耐えきれずに前に出る。

そして天竜の胸ぐらを掴もうと.....

 

 

 

 

 

 

 

「..........!?」

 

 

勘蔵の動きが急に止まる。

 

 

「だ〜め。天竜に手出しちゃ」

 

「吽斗たちがおじさんを殺しちゃうよ?」

 

 

突如現れた双子の忍、阿斗吽斗が暗器にて勘蔵の動きを無理矢理止めていた。

 

 

「おう阿吽。久々の護衛任務はどうだ?」

 

「今までが退屈過ぎたよ。

他の家臣に混ざって偵察とかばっか」

 

「天竜は恨まれ易いし、

護衛が1番やりがいあるかな〜

あと暗殺」

 

「おいおい」

 

 

その光景を見て、信玄が目を輝かせた。

 

 

「ほう。それはお前の忍か?」

 

「はい。天竜軍隠密起動部

実行班の隊長2人。阿斗と吽斗にございます」

 

 

天竜軍は既に大きな軍隊なのだ。

 

 

「ふっ.....織田信奈がお前を

明け渡した理由がようやく分かった。

お前は.....『革命』や『下剋上』という言葉をそのまま具現化した存在なのだな」

 

「ふっ.....」

 

「だが私は奴とは違う!

例え蛇だろうが鬼だろうが

私は飼いならしてみせる!

全てを制覇してこその天下人だからな!」

 

「はい、だがまずは最初の障害を」

 

「うむ。亀のように篭るばかりの小娘をちったあ懲らしめてやろうぞ」

 

 

周りの家臣らは目を疑った。

 

 

『武田信玄』は冷徹に物事をやり、

只々突き進む。

勝利という結果だけを残して。

だが、今の彼女は『勝千代』だった。

1人の少女として、

新しい武器を手に入れ、はしゃぎ、

未来に希望を抱くような.....

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ふぅ。今日は緊張したな」

 

 

天竜自身、武田信玄の前でよく態度を一定に保てたと、自分を褒めていた。

 

 

「あれが武田信玄ねぇ。

信奈とはまた違う、

特殊な迫力を持っている」

 

 

天竜は山中を歩いていた。

 

 

「この辺りだが.....」

 

 

地図を見ながら呟く。

 

 

「おぉ。あった!」

 

 

湯気を見つけ、

少し上機嫌になる。

 

 

「ここが下部温泉か。楽しみ」

 

 

これが目的だ。

天竜は何かと温泉によく入り、

有馬温泉にもよく訪れていた。

生粋の温泉好きである。

 

 

「あの.....本当に大丈夫ですか?」

 

 

高虎も付き添っていた。

 

 

「ん?」

 

「そこは武田方が使う温泉でしょう?

私達のような部外者が勝手に使っては.....」

 

「つれないな〜。

温泉はいいぞ〜?肌もキレイになるし」

 

「私は男なので、肌など気にしません!」

 

「俺らが気にしなくても女が気にすんだよ。

抱く相手が汗臭かったら嫌だろ?」

 

「そんなこと.....」

 

「ごっ.....ごめん。

まさか.....経験ないとは.....」

 

 

高虎は恥ずかしそうに顔を紅潮させる。

 

 

「結構ウブなのな」

 

「うるさい!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「お?」

 

「あ」

 

「うわっ!」

 

「きゃ!」

 

「きゃあ!!」

 

「いや!」

 

「うわぁ!」

 

 

先客がいた。

そこには武田信玄と、

少女が4人に幼女が1人。

完全にリラックス状態だった。

 

 

「おやおや。

温泉で妖精に出会うとは」

 

 

だが天竜は特に慌てる事なく、

いつもの調子を保っている。

 

 

「おう天竜!

どうした?覗きか?」

 

 

信玄は酒を飲んでもう出来上がっている。

 

 

「いえ。入りに来ました。

混浴してもよろしいですか?」

 

「おう!入れ!入れ!」

 

「「「えええぇぇ!!?」」」

 

 

4人の少女と高虎が反対する。

 

 

「信玄様!なんでまた!」

 

「嫌です!逃げましょう!」

 

「もう.....やだ」

 

「また裸を見られるのは嫌です!」

 

「天竜様!女と混浴なんて恥ずかしくはないんですか!?」

 

「このムッツリめぇ。折角上司が風俗連れてってやるつってんだぁ。素直に従え!」

 

「何の話ですか!?

というか酔っ払ってますよね!?」

 

 

天竜もまたここに来る前に

日本酒を飲んでできあがっている。

その勢いで温泉まで来たのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

結局、高虎も道ズレに混浴。

 

 

「すみません.....お嬢さん方」

 

「「「いっ.....いえ.....」」」

 

 

男が入ってきたとはいえ、

美少年2人で満更でもないようだ。

 

 

「まぁ、飲め!」

 

「いただきます」

 

 

お猪口で信玄から酒を貰う天竜。

 

 

「どうだ天竜?

こいつら可愛いだろう?」

 

「えぇ」

 

「軍師になるにあたって1人やろうと思う。

誰がいい?」

 

「全員です」

 

「いっ.....いや1人だけ.....」

 

「全員です!」

 

「まだどんな奴らかも紹介してない.....」

 

「全員です!!」

 

「しつこいな!」

 

 

天竜は相当酔っ払っている。

 

 

「では紹介して下さい」

 

「むぅ.....

まずはあの背の高いのが

馬場信房。

4人の中じゃ1番いい身体をしてる」

 

「ど.....どうも..........」

 

「逆にちっこいのが

山県昌景。

気は強いんだけど、

ちっこくて可愛いだろう?」

 

「小さい小さいしつこいです!」

 

「んであっちが

高坂昌信。

臆病な奴でな。

普段から逃げる事しか考えてない」

 

「逃げたい.....」

 

「それからこっちが

...........................................................

...........................................................

...........................................................

......................................誰だっけ?」

 

 

「ええぇ.....」

 

「内藤昌豊では?」

 

「そうそれ!

....................何で知ってるのだ?」

 

「彼女達は武田四天王だろ?

馬場信房、山県昌景、高坂昌信、

あと1人は内藤昌豊でしょう?」

 

 

それを聞いて昌豊がパァーッと明るくなる。

 

 

「んで。

その子は武田勝頼かい?」

 

「.....はい」

 

「俺は子持ちさんでも大丈夫っすよ?」

 

 

信玄に対して言う。

 

 

「いや!四郎は私の妹だぞ!?」

 

「そうなの?へぇ〜」

 

「で、誰にする?」

 

「全員」

 

「ぶれないな」

 

「いっそここにいる全員ほしい」

 

「わっ.....私もですか!?」

 

「ここにいる女全員だバカ虎」

 

「四郎も手にするとは.....

すごいな.....」

 

「よし!種づけしたる!皆股開けぃ!」

 

「酔っ払い過ぎです天竜様!」

 

「覚えられた.....私の事覚えられた.....」

 

 

昌豊だけがワクワクしていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あ〜あ。酔い覚めた」

 

 

まだ10分しか休んでいない。

 

 

「私もだ」

 

「こんなに楽しげに風呂に入ったのは久しぶりだ。やはり風呂は大勢入るが1番だ」

 

「同意だ。

....................んで、

約束の件はどうだ?」

 

「大丈夫ですよ〜」

 

「まだ酔ってないか?」

 

「うんや。大丈夫っだ。ヒック.....

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『良晴を連れてくる』んだろ?」

 

「うむ」

 

「私の目的は

『織田信奈を倒し、

羽柴良晴を手に入れる事』

お前の目的は

『織田信奈を殺す事』

さほど変わらん」

 

「それまでの

仮初めの武田家軍師。

頑張りまっすよ〜」

 

「ふふふ.....」

 

 

 

 




武田家の中に何気無く溶け込んだ天竜
だが.....これは?
次回予告
果心居士
〜貴方は鬼?魔王?それとも.....〜

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