天翔ける龍の伝記   作:瀧龍騎

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さぁ、今回から
天竜の復讐劇が始まる!


第三十七話 私は朧である

「高虎〜!高虎〜!」

 

 

岐阜城で天竜の声が響く。

 

 

「?....................羽柴殿?」

 

「おぉ、見っけ!」

 

「どうされたのです?

今は安土城では?」

 

「いいじゃん。いいじゃん。別に」

 

「酔っているのですか?」

 

「なんで〜?」

 

「..........」

 

 

天竜は様子が急変していた。

陰気に満ちていた以前とは真逆に

陽気に満ちている。

 

 

「何の要件で?」

 

「先日の話。

受けてもいいよん」

 

「!?」

 

「織田信奈を討ってあげる」

 

「本当ですか!?」

 

「うん」

 

 

藤堂高虎は歓喜に満ちた。

己の念願がついに叶う。

この方さえ、この方さえ手に入れば!

 

 

 

 

 

「でもこれには時間がかかる。

天竜には考えつかなかった事も.....

私ならできる」

 

 

 

 

「....................え?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

安土城。

 

 

「全く!

どうなってんのよ奴の兵は!」

 

 

信奈は苦悩していた。天竜軍兵士14068人の後処理に追われていたのだ。

 

 

「あいつら一体なんなの!!

本当に狂ってるわ!」

 

 

信奈は14068人の次の仕官先を決めようとしていた。

ある数千人は勝家に。

ある数千人は良晴に。

と、他にも様々な家臣に分配しようとした。

 

だが、駄目だった。

 

14068人全員がそれを拒否したのだ。

全員が従わなかったのだ。

全員が天竜以外の主君を認めなかったのだ。

 

 

「まるで一種の宗教ですね」

 

 

氏郷が言う。

 

 

「天竜教?..........笑えないわね」

 

「ですが、それを言えば

宗徒は14068人に限らないでしょう」

 

「.....雑賀衆ね」

 

 

あろうことか天竜は武器の取り扱いは全て雑賀衆に任せていた。

その為、天竜が失脚した際に、

孫市は武器を全て回収し、

信奈による押収を防いでいたのだ。

 

その為、紀伊の大名である

孫市とは再び対立。

現在睨み合いになっているのだ。

 

 

「それと大和の仏教衆」

 

 

信奈の命令で天竜は大和を追い出され、

彼と仏教衆との仲介役だった

筒井順慶もまた追い出された。

それに怒りあらわにした大和仏教衆は、

紀伊仏教衆と手を組み、

今にも蜂起を起こそうとしているのだ。

 

 

「それと九鬼水軍」

 

 

なんとあの嘉隆が初めて強気に出たのだ。

 

 

「夫である天竜様を蔑ろにし、

主君の姫さまを傷つけた織田信奈には、

もう従うつもりはない。

我々九鬼水軍及び伊勢は織田から

独立する!」

 

 

そう宣言したのだ。

 

すっかり大人しくなってしまった一益に代わり、嘉隆が伊勢・志摩を従えている。

 

 

「それから将軍家」

 

 

天竜はあれで副将軍。

ヘタをすれば織田四天王よりも地位は上。

左遷と同時に彼の地位を奪おうとした。

だがそれも失敗。

前将軍足利義輝の猛反対があったのだ。

彼と天竜は友人関係にある。

それに便乗して、

妹の将軍足利義昭。

妻の大御所足利義元が反対。

義昭は将軍にしてもらった恩義があり、

義元は結婚を取り持ってくれた恩義と

大御所にしてもらった恩義があるのだ。

そして天竜の弟子の今川氏真。

 

4人の反対があっては信奈もどうにもできない。

 

あとは姫巫女様に直接取り持つ他ない。

 

 

 

「1番の問題が毛利ね」

 

 

毛利が降伏した相手はあくまで天竜。

その天竜の主君という事で、

信奈を仮に認めた。

でも、その天竜を己の身の安全の為に廃した。そんな事するような奴は認めるわけにはいかない。

そう考えた両川姉妹は天竜の側室でもあり備中大名清水宗治と組み、

再び織田と対立。

 

 

天竜という枷を外した途端、

前回より強大な

信奈包囲網が出来上がってしまったのだ。

 

おまけに自分の身内にも

信奈への不安感を持っている者までいる。

 

そして十兵衛との対立。

 

 

「なんでこんなことに.....」

 

「所詮奴らには見る目がなかったのです。羽柴秀長という間違った希望を持ってしまった。

共に滅びる運命だとは知らずに.....」

 

「..........ちょっとレオン。

私は天竜を倒す事には協力するけど

他の十兵衛や左近達を巻き込む事には反対するわよ!

あの子達を不幸にしたら許さないわよ?」

 

「..........分かりました。

まずは羽柴秀長の捕縛を優先しましょう。

包囲網があるとはいえ、奴は今丸腰。

捕まえるなら今が好機」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「どっ.....どうしたんだい天竜くん」

 

「いやぁ、信澄くんに是非とも

確認したい事があってねぇ」

 

 

天竜はいつになく朗らかな表情をしていた。

 

 

「一体なんだい?」

 

「お市とはやってるかい?」

 

「ぶっ!..........突然何を言い出すの!?」

 

「うんや。半年以上禁欲してたんだろ?解放されて、夜は毎日爆発してんのかなって。お市は美人で身体も豊満だぁ。羨ましいねぇ」

 

「きっ.....君に言う事じゃないよ!」

 

「つれないなぁ。

こっちが今禁欲状態なの知ってるくせに」

 

「謹慎中だからでしょ!

それを言うなら良晴くんだって.....」

 

「童貞と一緒にすんな。

お前も分かるだろ?

性交は中毒になる。

毎日やっても飽きやしない」

 

「むぅ.....」

 

 

否定はできない。

 

 

 

 

 

「どうだ?

私としては信澄でもいいんだけど?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「....................は!?」

 

 

 

 

 

 

 

「どうだ?奥さんには内緒で」

 

 

 

 

 

 

「馬鹿!!!

なんで僕が君と!!!」

 

 

まさか天竜くんがこっちの趣味まで

あるなんて!?

 

 

 

 

 

 

 

 

「えぇ〜。桶狭間ではやってたくせに〜」

 

 

 

 

 

 

 

 

「..............................え.....」

 

 

 

 

信澄が急に青ざめる。

 

 

 

 

 

 

 

 

どうして知っている!?

あれは僕の黒歴史。

誰にも教えてないのに!?

何故この男は知っている!?

 

 

 

「そう、君は桶狭間で女装をしていたよね。

今川をあそこに留めるために。

んで、君があまりに可愛いかったものだから、ある今川の兵士が.....」

 

 

 

「やめろ〜!!!!」

 

 

 

「知られたくないよねぇ。

特にお市には。

自分が男にホラれたなんて」

 

「やめてくれ!お市にだけは!

家庭が崩壊しちゃうよ!

なんでもするから!」

 

 

慌てふためく信澄を見て天竜はニヤリと微笑む。

 

 

 

 

「なら、1つだけ願いを聞いてくれますか?」

 

「なんでもするよ!

僕にできる事なら!」

 

 

「ならーーー」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「やぁ、お市殿」

 

「あら、天竜さん」

 

 

似たような時期、天竜はお市とも会う。

 

 

「どうですお子さんは可愛いですかい」

 

「はい。もちろん!」

 

 

最近はお市とも友好な関係を築けている。

 

 

「どんな生き物でも

赤ん坊だけは可愛いですもの」

 

「だな....................いや!

虫の赤ん坊は気持ち悪いし、

ゴキブリの赤ん坊は論外だぞ!?」

 

「まぁ、そうですね。

動物の間違いですね」

 

 

こんな冗談も言い合える中だ。

 

 

「まぁ、自分の子はどんな形であっても可愛いものだ」

 

「えぇ」

 

 

言い方が気になったが、

取り敢えず相槌をうつ。

 

 

「たとえ産まれる前であってもね」

 

「....................え.....」

 

 

何を言っているのだこの男。

 

 

「平井定武の娘」

 

「!!?」

 

「名前はなんだったか〜。確か.....紫苑」

 

「なっ.....なっ.....」

 

「お忘れですかい?

貴方の『前妻』の名前ですよ」

 

 

それは、まだ織田と同盟を組む前。

お市が男。浅井長政だった頃。

当時、浅井家は六角家と対立していた。

お互いに人質を送ったりし、

調停を取っていた。

 

そんな時、浅井家に送られてきたのが、

六角家家臣、平井定武の娘、紫苑。

浅井長政の正室として送られてきたのだ。

だが長政には愛など起きなかった。

 

何故なら彼は女だったから。

 

 

「正室に取ったにもかかわらず、

貴方は紫苑を抱かなかった。

いや、抱けなかった。

貴方が同性であったから」

 

「くっ.....どうゆうことです?

そんな事は他の者も知っている!」

 

「そう、貴方『は』抱かなかった」

 

「!?」

 

 

 

 

 

 

「替え玉を使ったのでしょう。

一族の使命を果たすべく、

どうしても貴方のお子を産まなければならなかった紫苑に強く求められて.....」

 

「そっ.....それを何処で!?」

 

「くくく.....

紫苑も哀れだな。

目隠しをしての房事に喜びを感じるが、

正体は全くの別人とは.....」

 

「どっ.....どうして」

 

 

子さえ作らず、

つまり中にさえ出さなければ、

子はできないから大丈夫。

紫苑を出し抜ける。

だけれど、

 

 

「替え玉も男。

欲望には耐え切れず.....

やっちゃったんだよね?

案の定。

紫苑は妊娠してしまう。

自称浅井長政の子を孕んでね」

 

「くっ.....!!」

 

 

敵方の子を産むなど一大事。

しかもその頃、

織田との同盟の話も出ていたのだ。

都合上。

紫苑は邪魔なのだ。

 

 

「だから捨てたんだろ?

六角家に返せば無理矢理

堕胎させられるのを承知で」

 

「わっ.....私は.....」

 

「あんたは全く痛まなかっただろうなぁ。

なんせ自分の子じゃないから。

浅井の血なんて通ってないから。

 

私だったらまとめて面倒みるけどねぇ」

 

「何故貴方がそれを知っている!?」

 

「替え玉は口封じに消したんだろ?

真実を知っているのは

貴方と亡きお父上と.....」

 

「まっ.....まさか!?」

 

「そう。紫苑本人だ」

 

 

この男は何でも知っている。

 

 

「私が陰陽師としての

初めてのお客さんがその紫苑だった。

相当恨んでいたよ?

そこそこは美しい顔達が

引きつった鬼の形相になるまでね。

あれぞ鬼の醜草と言ったところか。

名前も

『紫苑』から『死怨』

と変えるまでね」

 

「そんな.....」

 

「占いで真実を伝えたら

さらに怒ってたよ?

『浅井家に死を!

猿谷者丸に絶望を!』

って呪ってた」

 

「..........紫苑は今は?」

 

「死んだよ。

数ヶ月飲まず食わずに呪い続け、

小谷城の合戦で

浅井が滅んだのを知って

満足そうにこと切れたよ。

呪いは成就されたわけだ。

浅井家は滅び、

『猿谷者丸』も死んだ。

 

残ったのはただの女お市」

 

「..........何が望みだ」

 

「冊子がいいねぇ。

頭のいい子は嫌いじゃない。

私はこのネタを

信澄に教える事もできる」

 

「やめろ!勘十郎にだけは!!」

 

「それは貴方次第」

 

「お願いします!

私にできることなら

なんでもする」

 

 

慌てふためくお市を見て天竜はニヤリと微笑む。

 

「そうかい?だったらーーー」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「「拾と茶々を許婚にしてくれ」」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「貴方は本当に恐しい方だ」

 

「ふふっ.....」

 

 

 

双方の隠し事は対した事じゃない。

 

信澄はお市の罪を許すだろうし、

お市は信澄の黒歴史を気にしないだろう。

 

だが、当の本人らは違う。

心の底から隠し通したいのだ。

 

だからこそ、別々に揺すり、

共通の約束事を取り付けた。

 

それが拾と茶々の結婚。

 

 

「これで拾様は織田信奈の姪の夫。

迂闊には手を出せませんね」

 

「そう。ただでさえ義妹を殺した事になっている信奈はこれ以上身内を殺せまい。

恐らく次やれば、

人道で動く上杉や毛利が出てくる。

信奈だってそれは避けるはず」

 

 

そう、これで拾はただの人質では

なくなった。

自分の身内なのだ。

そして、

 

 

「貴方も信奈の身内」

 

「ふっ.....」

 

 

天竜はこの話術のみで

圧倒的不利な状況を変えてみせた。

 

 

「さぁ、計画は次の段階だ」

 

「はい」

 

 

ここから天竜の快進撃が始まる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あのすみません」

 

「どうした高虎?」

 

「貴方は誰ですか?」

 

「..........」

 

 

それは愚問であった。

天竜に対し「誰か」と問うなど.....

 

 

「知りたい?」

 

「はい」

 

 

だが高虎は確信していた。

 

 

「私は天竜だよ。勘解由小路天竜」

 

「勘解由小路?」

 

 

羽柴ではなく勘解由小路。

 

 

「うん。

『私は』500年間名前変わってないからね」

 

「ごっ.....500年!!?」

 

「そう。

羽柴になったのは3年前からの天竜だからね」

 

「どっ.....どうゆう事ですか!?」

 

 

以前までの天竜とは別人とでも言うのか。

 

 

「あぁ、姿形が同じだから

こんがらがっているのかぁ。

じゃあ、これならいいかな」

 

 

すると、引き締まっていた天竜の身体がやや柔らかくなってゆく。

特に胸部がどんどん豊かになり、

顔達もより女性型になる。

 

 

「これが私」

 

「おっ.....おっ.....女!!?」

 

 

女体化した!?

 

 

「女体化じゃない。

男体化してたのを戻しただけ」

 

「そんな!?

私が憧れた天竜様が

姫武将だったなんて!!」

 

 

高虎にとっては敵。

 

 

「それも違うね。

君の憧れてた天竜は確かに男子。

私はそれとは別の天竜」

 

「??」

 

「私は男天竜とは別世界の未来から

来た女天竜。

人はそれを平行宇宙だとか、

パラレルワールドって呼ぶね。

ところがどっこい

バ神のせいで、男の方と身体をくっつくけられちゃったんだよ。

始めの500年は私が全身を支配できたのに、3年前にツクヨミのせいで男の方に身体取られちゃって.....

まぁ、その時やらかして大怪我しちゃってたからしょうがないけどね。

男の方はその麻痺で、満月のたびに肉体だけ私に変じてたみたいだけど」

 

「..........」

 

 

高虎は理解がほとんどできなかった。

だがなんとなく、

多重人格のようなものだと

解釈する。

 

 

「そうか!

しばらく性別と関係なく生きてたから、

口調もそれっぽくしなければな!

え〜と。

高虎ちゃん?高虎っち?

高虎さぁん♡?」

 

「えぇと.....天竜様?」

 

「待って。

..........普通に高虎でいっか。

じゃあ高虎!

これからよろしくね!」

 

「はっ.....はい!」

 

 

2人は握手を交わす。

 

 

「天竜様?」

 

「ん〜。その呼び方だと男の方とごっちゃになるよねぇ〜。

よし決めた!

今日から朧って名乗るね!」

 

「朧!?」

 

「私の諱!

あっちの天竜も女体化した時は

そっちを名乗ってたみたいだし」

 

「朧.....様?」

 

「なぁに高虎?」

 

 

高虎は思わず顔を赤らめる。

正直可愛いすぎる。

 

 

「ちなみに私は天竜同様

男には興味ないから

手を出したら殺すからね」

 

 

やっぱり天竜だった。

 

 

「やっぱり女の子が1番ね!」

 

 

しかも百合だった。

 

 

「..........はぁ〜」

 

「なーに溜め息してんの。

これから面白いんじゃない」

 

「よろしくお願いします」

 

 

高虎には不安しかなかった。

この女天竜、朧と一緒に己の夢を叶える事なんてできるのだろうか?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「大変です!!」

 

 

安土城で声が響く。

 

 

「どうしたの!?」

 

 

やって来たのは長秀だった。

 

 

「ほっ.....蜂起が起きました!!」

 

「なんですって!?」

 

 

それは突然の出来事。

 

 

「どっ.....何処で!?

まさか..........美濃!?」

 

「いえ..........尾張です」

 

「尾張!?」

 

 

信奈の故郷。予想外すぎた。

 

 

「天竜め..........まさか私の故郷で

謀反を起こすなんて.....」

 

 

いつかはやってくると確信していた。

その時に徹底的に潰すために.....

 

 

 

 

 

 

「あの.....謀反を起こしたのは天竜殿ではありませんよ?」

 

「え?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「首謀者は土田御前様です」

 

 

 

 

 

 

「は?」

 

 

それは信奈と信澄の実母。

実の娘を忌み嫌い、

「黄金の髑髏事件」で

事実上絶縁した母親。

 

 

「なんで.....母上が!?」

 

「さらにそれに連なり、

濃姫様、生駒吉乃様、お鍋の方様が

それぞれ兵を従えてます」

 

「帰蝶達が!?どうして!?

あの子達は姫武将じゃないでしょ!」

 

「私も.....分かりません!」

 

 

濃姫(帰蝶)は斎藤道三の娘。

尾張と美濃の同盟の際に、

義妹として送られた。

 

だが、信奈が京に移った際

正式に土田御前の養子にされたのだ。

それ以外にも、信奈の知らぬ所で

2人も養子にとり、

織田家はより華やかとなっていたのだ。

 

だが、その3人の義妹は反信奈派。土田御前の養子となったのが所以なのだとか。

 

 

 

 

 

「なんで.....どうして.....」

 

 

この状況でそんな事ができる者.....

 

 

1人しかいない。

 

 

 

「美濃へ行くわよ!!」

 

「え!?」

 

 

尾張で起こっている蜂起を無視し、

美濃へ向かう?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あいつしかいない!!

母上を唆して私に楯突くような奴は!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

尾張、清洲城。

 

「え〜と.....朧さん?」

 

「なんでしょう御前様?」

 

 

朧は煌びやかな着物に身を包み、

軽くではあるが化粧もしている。

何処からどう見ても美少女だ。

 

 

「私は貴方言う通りに兵を動かさせた。

これで本当に勘十郎を?」

 

「勿論です。ですが、まずは現当主の信奈を倒さねばなりません」

 

「えぇ」

 

「そこで問いておきたい事があるのですが.....」

 

「なんでしょう?」

 

 

 

 

「信奈を討つ事に抵抗はありますか?」

 

 

それは実の娘を殺す覚悟。

 

 

「..........私にはそもそも、

我儘を言う権利がないのです。

あんな化物を世に送り出してしまった。

お願いです朧さん。

 

信奈を殺して下さい」

 

 

朧はニヤリと微笑み、

スッと立ち上がる。

 

 

「ではいいでしょう!

この尾張から!

信奈を討ち果たしてご覧にいれましょう!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

美濃、岐阜城。

 

 

「天竜!天竜!!」

 

 

信奈の怒号が鳴り響く。

確信しているのだ。

天竜が真の首謀者だと.....

 

 

「!?」

 

 

ある部屋の前に、

ジッと座って待機している少女がいた。

 

 

「三成!?」

 

 

天竜軍参謀、石田三成。

何故奴がここに!?

 

 

「貴方!

何でここにいるのよ!

許可は与えてないわよ!!」

 

「でっ.....ですが.....」

 

「何その部屋。

そこに天竜がいるの!?」

 

「だっ.....駄目です入っちゃ!」

 

「どきなさい!

天竜!いるの!?」

 

 

三成を押し退け、

天竜がいると思われる部屋に突入した。

 

 

 

「天竜!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ゴホッ!ゴホッ!ゴホッ!」

 

 

 

「....................え?」

 

 

 

 

 

そこには予想外の姿があった。

「天竜」はいた。

だが布団に寝たきりで、

額に濡れた布を当てていた。

 

 

「ゴホッ!..........のっ.....信奈様.....」

 

 

掠れた声。

天竜は病床についていた。

 

 

「どっ.....どうしたの!?」

 

「すみませぬ..........

風邪を拗らせてしまって.....」

 

 

天竜はフラフラの状態で、

それでも必死に起き上がった。

 

こんな状態の男が謀反を起こした?

そんな話があってたまるか!

 

 

「風邪が移るからと、

私も部屋の外で待機させられていたのです」

 

 

三成が言う。

それなら辻褄が合う。

 

だが、尾張の蜂起は誰が?

 

 

 

 

「姉さま!!

黒幕の正体が分かりました!!」

 

 

そこに、氏郷が走ってやってくる。

 

 

「一体誰!?」

 

「『朧』という名の姫武将です!」

 

「朧ですって!?」

 

 

信奈は朧を知っていた。以前温泉にて天竜家臣団と鉢合わせした際に、その中で唯一信奈に対して強気な姿勢を見せ、挑発してきた女。

 

 

「あいつが!?」

 

 

しばらく所在不明とされていた女だ。

.....いや、待て。

朧だって天竜の家臣じゃないか!

 

 

「あんたが朧をけしかけたの?」

 

「..........」

 

「答えなさい!」

 

「.....確かに朧は以前、私の家臣でした。

ですが、今は違う」

 

「はぁ?」

 

「突然いなくなったのです。

数ヶ月以上前に.....

それ以来彼女とは連絡すら取れていない」

 

「なんですって!?」

 

「それは本当です。

とても不思議な人でした。

しかし、今となっては天竜様と朧殿は何の関係もありません!」

 

 

三成が補足した。

 

 

「ちっ.....!」

 

 

この分では天竜は本当にシロだ。

今はこっちより.....

 

 

「レオン行くわよ!

当てが外れた以上、

蜂起を直接鎮圧するしかないわ!」

 

「待って下さい姉さま!

..........羽柴秀長を捕らえるなら今では?」

 

「馬鹿言わないの!

今は天竜より朧よ!!

..........それから天竜!!」

 

「ゴホッ!..........はっ!」

 

「今後もその顕著な態度を緩めないのなら、

少しだけ罰を緩めてあげる。

拾だけなら返却してもいい」

 

「!?」

 

「姉さま!!」

 

「黙りなさいレオン。

あんたが裏で何をしてるかは知らないけど、私は誰にも指図されるつもりはないわ!私を無理矢理キリシタンにでもしたいのなら、ちゃんと行動で示しなさい!」

 

「..........」

 

「..........有難うございまする」

 

「ふん。行くわよレオン」

 

「.....はい」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

信奈らが去った後、

 

 

「上手くやり過ごせましたね」

 

 

三成が言う。

 

 

「そうですね。

仮病はいい案でした」

 

 

天竜?は言う。

 

すると天竜の肌が突然銀色に変色する。

マネキンのような状態に返じた後、

表面が溶けるように剥がれてゆく。

 

中から出てきたのは.....

 

 

「ぷはぁっ!」

 

 

織部だった。

 

 

「ナノマシンの擬態能力。使えますね」

 

 

織部はナノマシンを完全に引き剥がすと、汗でグッショリ濡れた己の肌を布で拭う。

 

 

「術師のやる事は分かりません.....」

 

「ただ声は変えられないのでね。

風邪で声が掠れてるという設定が上手くいきました」

 

「声以外は丸々本人でしたよ」

 

「あぁ♡まさか天竜様の肉棒まで複製してしまうなんて!

いつかあのたくましいナニで激しく突いて貰いたいものです♡」

 

「っ!..........お下劣やってないで

早く準備しますよ!!」

 

「はいはい」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

尾張の蜂起軍を前に、信奈は采配を振るう。

 

 

 

「反逆者朧から、母上を救うのよ!

逆らう者は尾張兵だろうと斬り伏せなさい!」

 

 

 

 

 

信奈軍2万と尾張兵4000の

無理がありすぎる合戦が始まった。

 

 

 




ちょっと信奈を悪人にし過ぎたので、
少しだけ汚名返上。
信奈は本人が悪いというよりは、
周りの悪人に流されちゃうタイプなんですね。

朧は天竜とは別人に捉えて下さい。
女天竜と考えると
複雑な感じになると思うので.....
次回予告
ざまあみろ
〜朧の初戦線〜

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