天翔ける龍の伝記   作:瀧龍騎

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過去編2

4話 小学生天竜。

 

「見せなさい!」

 

「やだ!」

 

「お姉ちゃんの言うこと聞けないの?」

 

「やだ!」

 

 

とある曇りの日。勘解由小路家で珍しく姉弟喧嘩が勃発していた。

 

 

「お姉ちゃん怒るよ!」

 

「怒ったお姉ちゃん

そんなに怖くないからいいよ」

 

「うっ.....」

 

 

ブラコンの青蘭は弟が可愛い過ぎて本気では怒れないのだ。

 

 

「お姉ちゃんには関係ないもん!」

 

「なんでそんな事言うの!」

 

「誓約書を書いて他言無用を約束してくれたら、関係者になる事を特別に許可してもいいよ!」

 

「何処で覚えたのそんな言葉!?」

 

 

天竜は一般的な小学生とは何かが違う。やはり、ろくに学校に行けてないせいだろうか?

 

 

「それが出来なきゃ教えないもん!

犬を隠して飼ってるなんて教えないもん!」

 

 

謎は全て解けた。

こんなおっちょこちょいな所も可愛いかったりするのだ。

 

 

「やばっ!」

 

「ふーん。ワンちゃん飼ってたんだ」

 

「駄目だよ!?

ワンちゃん食べちゃ駄目だよ!?」

 

「私を何者だと思ってるの!?」

 

 

ショックを受ける青蘭。

 

 

「名前は?」

 

「え?」

 

「ワンちゃんの名前」

 

 

青蘭は朗らかな表情で問う。

 

 

「ポシンタン」

 

「犬肉料理でしょそれ!?」

 

 

こっちの方が酷いな。

 

 

「駄目なの?」

 

「それは子豚にベーコンって名付けるぐらい駄目よ」

 

「じゃあ『猫』にする」

 

「ややこしい!」

 

「ケジャンクック」

 

「また犬肉料理!?」

 

 

だから何処で覚えたのだ!?

 

 

「じゃあケルベロス」

 

「なんだって魔獣の名前に!?」

 

「しょうがないからオルトロスで妥協する」

 

 

3つ頭から2つ頭になっただけだが?

 

 

「おいでオルトロス!」

 

 

どうやらそれで決定したようだ。

まぁ、ポシンタンよりはましか.....

 

 

「ガウッ!」

 

「おいでおいで〜」

 

「へぇ。ハスキー犬?」

 

「多分」

 

「結構可愛いね。お手するかな。

はいお手!」

 

 

ガブッ!

 

 

「うっ.....」

 

 

おもいっきり噛まれた。

あれ?

これ本当に犬?

 

 

「ねぇ.....これ.....」

 

「ウオォーーン!」

 

 

遠吠え。

 

 

「狼じゃん!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「すっかりシベリアンハスキーかと思ってたよ!なんだって野良狼なんて拾ってくるのよ!」

 

「お姉ちゃん。狼は本来ならペット用じゃないから普通に狼でいいんじゃないかな?」

 

「うるさい!」

 

 

妙に理屈っぽいな。

 

 

「でも、どうせペットだったのが捨てられたのが野生化したんでしょ!

野良狼でもいいじゃない!」

 

「だろうね」

 

「というかお姉ちゃん、

さっき噛まれたよ!?

やばい!狂犬病になる!?」

 

「大丈夫。まともな飼い主なら狂犬病の予防接種ぐらいさせてるでしょ」

 

「狼を捨てて野生化させてる時点で、

とてもまともな飼い主とは思えないよ!」

 

 

明日病院で見てもらおう。

 

 

「でも、お父さんには言わないで!

多分、修行の一貫とか言って

食べさせられちゃう!」

 

「ありえるね.....」

 

「やだよ!オルトロスを食べるなんて!

もし、お父さんにバラしたら、

責任取ってお姉ちゃんを肉にするから!」

 

「怖いな!?」

 

「大丈夫。ちゃんと残さずに食べるから」

 

「だから怖いって!」

 

 

これを無邪気に言うのだから恐しい。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「..........りゅう....................天竜!」

 

 

向こうから青龍の声が聞こえる。

 

 

「わぁ!お父さん帰ってきた!?」

 

「とりあえず狼隠しなさい!」

 

「ええと.....ええと......

オルトロスを布団に隠して、

お姉ちゃんを肉にして..........」

 

「私はいい!」

 

 

完全にパニクっている。

 

 

「ここか?」

 

 

青龍が天竜の部屋に入ってくる。

しかも運の悪い事に、オルトロスを見られてしまったのだ。

 

 

「そいつはまさか.....狼か?」

 

 

ばれた!万事休す!

そう青蘭が思った矢先、

天竜が異様な行動をとる。

 

 

「ふははははははははははははははは!!!」

 

 

笑いながらカッターナイフを首筋に当てる。

まさか狂ったのか!?

 

 

「この場を見逃さねば、

ここで命を絶ってやろう!

僕が死んで1番困るのはお父さんだからな!」

 

「!?」

 

「..........」

 

 

自分自身を人質に取りやがった!?

確かに、最強の後継者を育成する事に拘る青龍には効果的かもしれないが.....

 

 

「ついでに修行の一貫としているゴキブリ料理も改めてもらおうか!

ふははははははははははははは!!!」

 

「アホか!」

 

「ぎゃっ!?」

 

 

青龍にゲンコツを貰い、

カッターを取り上げられてしまった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「これはお前が拾ったのか?」

 

 

青龍はオルトロスを猫のように掴んで天竜に尋問する。

 

 

「ううぅ..........」

 

 

天竜は涙目で正座させられている。

 

 

「お前の動物好きは知ってたが、

まさか狼を拾ってくるとわなぁ.....」

 

「ううぅ..........

ペットに施しができるのは、

富裕層の勝ち組だけで、

貧困層の僕ら負け組は、

施す権利すら与えられないって言うの!?」

 

 

10歳児が何の境地に至ってるの!?

 

 

「そうだ!!」

 

 

青龍は迷いもなく肯定した。

 

 

「だがお前、

その狼を猛獣になるまで

育てる事は可能か?」

 

「.....可能か不可能かは、

その時にならないと分からない。

狼は幼少であろうと成体であろうと

猛獣には変わらないよ?

只々幼少のオルトロスを、

成体にまで成長させる事が、

お父さんの指す事なのだとするのなら。

不可能という事はないよ?

僕がオルトロスを殺したり、

オルトロスの食事の妨害をしたり、

そのような虐待行為をしない限りは、

オルトロスは確実に成長するよ?

でもオルトロスも生き物だからね。

『僕がオルトロスを成長させる』

と言うよりは、

『オルトロスの成長を僕が助力する』

と言うのが正しいね。

それなら僕も努力するつもりだよ?」

 

 

妙に理屈っぽいが、

「頑張って育てるよ!」

って事なのだろう。

 

 

「猛獣使いの陰陽師か.....

それも良い!!

ではその狼を成体まで育て上げる事が

次の修行である!!」

 

「あいあいさ」

 

 

すんなり認められてしまった。

 

 

「お父さんありがとう!

オルトロス飼うことも、

ゴキブリ料理も改めてくれて!」

 

「何を言っている!!

今日も晩飯は蜚蠊の佃煮だ!!」

 

「ぎゃあ!!」

 

 

どさくさに紛らそうとしたが、

失敗したようだ。

 

 

「可哀想な天竜.....

お姉ちゃんのおかず分けてあげるからね」

 

「お姉ちゃんのオカズって、

ただの沢庵じゃん」

 

「沢庵なめんな!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「これはイナゴ。これはイナゴ。

これはイナゴ。これはイナゴ。

これはイナゴ。これはイナゴ。

これはイナゴ..........」

 

 

必死に自己暗示をかける天竜だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

5話 18歳天竜

 

 

「あんたが明智のお嬢様か」

 

「ええ。明智コンチェルン当主令嬢。

明智光です」

 

 

天竜は、明智家の豪邸に招待されていた。

 

 

「かの明智光秀の正統な子孫が、

こんな僕に何のようだ?」

 

「先に伝えているはずです。

勘解由小路天竜さん。

私と結婚して下さいますか?」

 

「断る」

 

 

即答だった。

 

 

「..........それは何故で?」

 

「俺はあんたみたいな成金どもが嫌いでね。

僕ら貧困層にとっては妬みの象徴だ。

第一意味が分からない。

大富豪明智家が

ヤクザ組の勘解由小路家と

釣り合うわけがない」

 

「あら?

勘解由小路だって元は貴族でしょう?」

 

「何百年も前はな。

土御門に滅ぼされた以降は

ずっと没落したままだよ」

 

 

 

「..........この世界ではそうなんだ」

 

 

 

「ん?なんだって?」

 

「なんでもありません」

 

 

この娘は時々分からない。

 

聞けば、

彼女は数年前に自家用機が墜落し、

数名が乗客していたうちの唯一の生き残りなのだとか。

その際に記憶も失っていたという。

ある程度の知識は残っていて、

周囲の人物、時事問題、歴史等をしつこく質問していたのだとか。

 

そんな彼女から出た言葉が、

「勘解由小路天竜と結婚したい」

記憶を失う前ですら、彼女は天竜と出会ってない。全く接点がなかったのだ。だが、彼女はあらかじめ知っていたかのように、天竜の名前を出した。

 

 

「ヤクザといえど、

貴方も只者ではないでしょう?」

 

「ん?」

 

「父青龍から受け継ぎし朧組を、

小規模な組織から、

たった一代で大組織に仕立て上げた強者。

その主な活動内容は、

「他ヤクザ組織の殲滅」

薬物や高利貸、

俗に暴力団と称されるクズの軍団。

それをロハで潰す、新組織。

 

それが正義の組織、『朧組』」

 

「くすっ.....正義のヤクザか」

 

「警察ですら匙を投げた、『川口組』

それすら潰した朧組は名実ともに、

日本最大の大組織に上り詰めた。

クスリも扱わなければ、

市民への暴力も振るわない。

真っ白なヤクザ。

警察に出来ない事を朧組がする。

警察が政府の番犬なら、

朧組は市民の番犬。

 

これを正義の組織と言わずして、

何というのかしら?」

 

 

すると光の言葉に我慢のきかなくなった天竜が吹き出してしまった。

 

 

「くっははははははははははははは!!!

面白い事を言うな君は!」

 

「!?」

 

「朧組が正義だって!?

ぷっくくくくくくくくくく.....

こんな組織程、悪いものはないよ」

 

「!?..........どうゆう事です?」

 

「考えてごらん?

反政府組織は朧組の出現でほとんど残っていない。多くは壊滅したか、朧組に吸収されたかだ。

そんな膨れ上がった組織を政府が放っておくと思うか?

否、現に政府は警察を利用して朧組を潰しにかかっている。

恐れているのだ。

自分自身が喰われる事を.....」

 

 

天竜は邪悪な表情をする。

 

 

「革命だよ。

僕は本気で日本を変えようと思っている。

敗戦後の日本は悲惨だった。

自称世界のリーダー国に対し、

子分のようにペコペコし、

自称発展途上国に対し、

押されても押し返せずにいる。

自称戦勝国には、

未だ血を吸われ続けている。

 

僕は日本が好きだ。

多分、この地球上の誰よりも。

 

だからこそ、

弱い日本はもう見るに堪えない!

僕は日本を強くする。

何も世界一になりたいとは思わない。

でも、列強と並ぶ大国である事を

世界に示したいのだ!!」

 

「その足がけとして朧組を?」

 

「その通り!

悪でいい。悪で構わない。

悪に落ちてでも、

僕はさらに大きな悪を倒す!

保守という名の凶悪を!!

 

必要なのは正義の味方じゃない!

 

悪の敵だ!」

 

 

 

 

 

これだ!

これこそが天竜様。

私の..........

 

 

 

「では、その為に明智家を利用したらどうです?」

 

「?」

 

「明智家は政界にも繋がっている。

明智コンチェルンの力を利用すれば、

革命への道がさらに縮まるのでは?」

 

 

天竜はニヤリと微笑む。

 

 

「確かに。

今の力では道はまだまだ遠い。

面白い。

君達明智家に利用されるのは気に食わなかったが、逆に明智家を利用か。

 

君は僕の考えには完全に賛成かい?

僕に完全に服従するかい?」

 

 

光はにこやかに返答した。

 

 

「勿論です。

私は貴方の為にあります。

貴方の為に生き、貴方の為に死にましょう」

 

 

お互いに意志を尊重しあった。

邪悪な2人が手を取りあった。

 

 

 

 

「よろしくお願いしますね。旦那様♡」

 

「ふっ.....おしどり夫婦となるか、

仮面夫婦となるか.....

せいぜい努力してみるさ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

この光景を、

邪悪な神がニヤニヤと観察していたという。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

6話 教師天竜2

 

ある日、鉄道警察から電話がかかってきた。

生徒を預かっているとの事だ。

俺は仕事を終え、帰宅の途中だったが、

急遽その駅に向かう事になった。

 

 

「お待たせしました!」

 

「あぁ、担任の先生ですか」

 

「うちの生徒がどんなご迷惑をかけたのでしょうか?」

 

 

その生徒は、何やら納得いってないらしく、不貞腐れた表情だった。

 

 

「良晴!!

お前何やった!!」

 

「何もやってねぇよ!!」

 

 

彼は容疑を否定した。

 

 

「この子は電車内で痴漢をしたようなのです」

 

「痴漢!?」

 

 

鉄道警察からは驚くべき話が出る。

 

 

「もうすぐ母親が来られるようなんですが.....」

 

「それは本当ですか?

証拠はあるのですか?

良晴がやった所を見ていた

目撃者でもいたんですか?

どうなんですか?」

 

「ちょちょちょ.....」

 

 

まるで尋問だ。

 

 

「被害者の方は何処ですか?

会わせてください」

 

「別室におられますが、

それはプライバシーですし、彼女の心を傷付けてしまう可能性もありますので.....」

 

「真実を確かめる必要があるのに、

それじゃあ意味がないでしょう!!」

 

「ひぃっ!?」

 

 

いつもとケースが違う為、

その男は戸惑ってしまっている。

天竜は今度は良晴向き直る。

 

 

「良晴。本当にやってないんだな?」

 

「やってねぇよ」

 

「本当だな!?」

 

「本当だよ!!」

 

「後から、『実はやってました』なんてぬかしやがったら、前歯へし折るぞ?」

 

「うえぇっ!?」

 

 

とても教師の台詞とは思えない。

 

 

「どうなんだ?」

 

「.....俺はやってない!」

 

 

真っ直ぐ、天竜の目を見て言う。

 

 

「そうか.....」

 

 

天竜は納得し、もう一度鉄警の前に向き直る。

 

 

「良晴は無実だ。帰らせてもらう」

 

「ちょっ!?」

 

 

天竜は良晴を完全に庇っている。

 

 

「ですから、被害者の女性の証言では.....」

 

「だから会わせろと言ってんだ!

そんなあやふやな証拠だけで、

俺様の生徒を犯罪者呼ばわりするたぁ、

いい度胸だな!!」

 

「だっ.....だだだ.....だって」

 

 

 

「いいか、良晴は変態だ!」

 

 

 

 

 

「「へ?」」

 

 

 

 

 

「頭の8割が煩悩でできてるぐらいスケベだ!

やらしいものを見ればすぐ鼻の下を伸ばす

ムッツリだ!

スマホの写真の中は、

エロい写真やエロ漫画ばっかり入ってる

ド変態だ!

巨乳好きで、

ちょっぴりロリにも興味を持ってる

救い用のないアホだ!

最近は和服フェチに目覚めて、

『大奥系』『姫様系』『くノ一系』

のAVばっか集めてやがる!!」

 

「何で知ってんだよ!?」

 

 

逆に疑いが深まった気がする。

 

 

「でも、自分からは何もできねぇだ!

美女に迫られたら舞い上がいやがる!

興味はあっても、する度胸がねぇんだ!

そんなチキンな良晴が、

痴漢なんてするわけがない!!」

 

 

良晴はつい涙が出そうになった。

性癖を暴露され、貶された。

もう死にたい。

 

 

「いや待てよ!?

良晴は同時に押しにも弱い。

『私のを触れ!』なんて言われれば、

触っちまうかもしれない.....」

 

「えぇ!?

ここで弱気になっちゃうの!?」

 

 

 

現にここから約一年後、良晴は迫られた末に勝家のおっぱいを揉んでいる。

 

 

 

「いやいや、待てよ..........

そうか!痴漢詐欺だな!!」

 

 

急に閃く。

 

 

「よし!その女に会わせろ!」

 

「ですが.....それは.....」

 

「さっさと会わせやがれ!ぶっ殺すぞ!!」

 

 

鉄警の襟首を掴んで締め上げる。

 

 

「...............はい..........ぐすっ」

 

 

いい大人が泣かされてしまった。

やはり怒った先生は怖い。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ほう」

 

 

被害者女性の顔を見て、

ニヤリと微笑む。

 

 

「なっ.....何ですか貴方!?」

 

「俺はお前が痴漢扱いした男の

担任の先生だ」

 

「担任!?」

 

「お前さんが痴漢詐欺で追い込んだ男のだよ。

だろ?

後藤佐知子さん?」

 

「!?」

 

 

天竜は彼女を知っていた。

 

 

「大鐘女学園高校。

2年4組の後藤佐知子で間違いねぇだろ?」

 

「なっ.....何でそれを!?」

 

「まさかお前とはなぁ、

痴漢詐欺の常習者さん?」

 

「!?」

 

 

彼は何でも知っている。

 

 

「被害総額は既に40万を越えてる。

うちの組は痴漢詐欺の対処もしてる。

お前のようなクズに人生を破滅させられた哀れな男達の為にな。

警察は役立たずだからな。

うちの裏ルートで取り扱ってる」

 

「くっ.....組!?」

 

「そんでもって、

彼らの情報を元に、お前を割り出した。

皆凄い形相してたぜ?

後藤佐知子を酷い目にあわせろってな」

 

「何を言って.....」

 

「それからお前美人局もやってるだろ。

海原篤志。

色黒のチャラチャラした奴」

 

「なっ.....何でそれを!?」

 

 

天竜はニヤリと微笑む。

 

 

 

 

 

「ごめ〜ん。

そのチャラ男、廃人にしちゃった」

 

「!!?」

 

「?」

 

 

良晴はこの会話が全く理解できない。

 

 

「早めに認めろよ。

『私がやりましたごめんちゃい』

ってな。

あんま遅くなるとキレちゃうよ?」

 

「ちっ.....違う!

私がやるわけないじゃん!」

 

「正直に言っておいた方がいいぞ〜?

僕ちん短気だし」

 

「だから私じゃないって.....」

 

 

 

 

 

天竜がダンッと机を叩いた。

 

 

 

 

 

「もうネタはあがってんだよマヌケ。

ここまで善処してるというのに、

まだしらばっくれるというのなら、

海原篤志同様に廃人にしてやろうか?

 

お前の人生、

メチャクチャにしてやろうか?」

 

「ひぃっ!?」

 

 

良晴には見えなかったが、

後藤佐知子は見てしまった。

まるで殺人鬼のような、

本物の悪の目を.....

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「....................した」

 

「ああ?」

 

「ちょっと、あんた!」

 

 

鉄警が天竜を制止しようとする。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「私がやりました!!」

 

 

認めた。

 

 

この瞬間、良晴の無実が証明された。

 

 

 

 

「ふん」

 

 

天竜は携帯電話を取り出し、

何処かに電話をかける。

 

 

 

「あぁ、俺だ。

..........前に言っただろう.....

後藤だ。後藤佐知子だ。

..........すぐに来てくれ。

..........埋め合わせはいずれする.....

..........そう言うな。姉弟だろ.....」

 

「ちょっと.....何を?」

 

 

後藤佐知子が聞いてくる。

 

 

「ん?

知り合いの刑事呼んだんだけど?」

 

「そんな!正直に言ったじゃない!」

 

「はぁ?

誰が正直に言ったら許すって?

許すわけないだろう?

うちの組の若いのだって1人、

お前らに人生狂わされてんだ。

まぁ、そいつは馬鹿だから

自業自得だけなどな。

お前にはきちんと罰を受けてもらう。

だが与えるのは俺じゃない。

日本の法だよ。

 

安心しろ。

森水青蘭はいい警察官だ。

他の奴と違って投げやりにしない。

 

ちゃんとお前を懲らしめてくれるさ。

 

なんせ鬼女だからな」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「もしもし。勘解由小路です。

.....はい。.....はい大丈夫です。

良晴君は何も悪くないです。

.....はい。..........では、私がそちらにお送り致しますので.....はい。はい」

 

 

天竜は良晴の母親に連絡を入れ、

自分の車の助手席に良晴を乗せる。

 

 

「何で俺の事色々と知ってたんだよ!」

 

「お前だけじゃない。

武は熟女好きだし、敬太は男好き。

それから陽子はショタコン。

瑠璃はBL趣味だ」

 

「なんでそんなに知ってるの!?」

 

「生徒1人1人を平等に見てんだよ」

 

 

良晴はそのうちの1人。

 

 

「組って何?」

 

「ん?」

 

「さっき組って.....」

 

「う〜ん。

カウンセリング専門の自営組織?」

 

「嘘だろ」

 

「まぁな。

そのうち分かる時がくるさ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

半年後、2人は時代を飛んだ。

 




さて次回は
美濃へ左遷された天竜の後日談です。

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