天翔ける龍の伝記   作:瀧龍騎

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ここ最近、この小説を書くことが一番の娯楽になってますね。
いつか番外編として、天竜と塚原卜伝の出会いと旅も書いて見たいですね。


第四話 丹波平定(前編)

ある教え子が虐められている現場に遭遇した。

虐めていた者達は私の姿を見ると一目散に退散してしまった。そこにはボロボロの生徒と私だけが残った。

私は彼を保健室に連れて行き、彼を介抱する。

私には彼の気持ちが痛い程分かった。

私も昔はこの苗字と性格のためにいじめられ、ろくな思春期を送っていない。

私は彼を家に送った後、彼のクラスの担任に詰め寄った。するとその教師は見るからに面倒臭そうな顔で「検討する」と言った。

だがその後も虐めは続き、

その度に私が相談に乗っていたのだ。

(これは担任の仕事では?)

だがそれも束の間、

その生徒は首を吊って帰らぬ人となった。

私が遺族に呼ばれて行くと、そこには彼から私へのお礼の手紙が。それに涙しているともう一つ別の手紙を手渡された。

『遺書』だ。そこには驚愕の事実があった。

『いじめはクラス単位で行われていたのだ。

首謀者を中心に39人が1人をいじめていた。

それだけではなく、担任もいじめ側であったという事実もそこにはあった』

そこから先は覚えていない。気づいた時にはその担任と首謀者の生徒を殴り倒した後だった。

逮捕はされなかった。自分の一族の者がなけなしの財産から保釈金を出してくれたからだ。その結果、私はこの3年間で二度目の転勤をする事になった。

何故この世界は弱者にはとことん厳しいのだ?

 

 

 

 

 

 

 

第四話

「いや~ほんまおおきに信奈はん!」

 

「荒木殿.....姫さまの前ですのでもう少し礼儀を.....」

 

「おぉ~丹羽はん!えろぉ~すまんな~!」

 

 

長秀は頭を抱え、信奈は苦笑い。

この荒木村重という少女。

関西人らしいハキハキとした性格で、

同じ関西弁の今井宗及らのずっしりとしたものとは違い、相手に話させるタイミングを失わせる程なのだ。

 

 

「その.....弥助?使者から聞いてると思うけど、

貴方に若狭を.....」

 

「おぉ!ありがたいありがたい!

これから精進してきますさかい、

よろしゅう!」

 

「うっ.....うん」

 

 

信奈はいつも彼女との会話に疲れるらしい。

織田家で信奈に対しこれ程堂々と話すのは良晴と一益を除けば他にいないだろう。年齢は信奈と同い年でもある。

 

 

「改めて聞くけど何で摂津は嫌なの?」

 

「嫌も何もあそこはうるっさいねん。

商売やろうと思ても、

全部堺の商人に横取りされるやろし、

本願寺は毎日のように黄色い声が響くわ!

蹴鞠は騒がしいわ!

溜まったもんじゃあらへん!

一緒にいる一益はんもブーブー文句

言うとりますし.....」

 

 

現在、滝川一益は毛利攻めのために伊勢を離れ、摂津の堺にいる。

村重は今時の関西人と違って静かな所を好むらしい。それはむしろ京の者達に近いのかもしれない。

 

 

「ところで今日は茶会はありまへんの?

今日も沢山名茶器持ってきましたさかい!」

 

「嫌よ。あんた茶器の自慢ばっかりで全然落ち着けないもの.....

この間、左近から苦情が来たわよ?

『むらっしーはくれもしない茶器を見せびらかしてくるので面倒臭い』ってね」

 

「あんな潮臭い連中にはやるだけ無駄やん!

名器は名君が持ってこそ意味があるやろ」

 

 

そう言って、村重は懐から何やら布で包まれたものを取り出し、信奈に差し出した。

 

 

「これ信奈はんにやるわ!」

 

「何これ?」

 

「開けて見や。

きっと、ぎょ~さんたまげるで!」

 

「あんたが私に?

雪でも降るんじゃないかしら」

 

 

恐る恐る包みを開けると、

中から出てきたのは茶入れだった。

だが、その茶入れにはどこか年代ものような風流を魅せるものがあった。

信奈が凝視しても分からない中、

長秀がそれに気づき、目を見開く。

 

 

「まっ.....まさか、これは『新田』では?」

 

「さすが丹羽はんや!」

 

「本当なの万千代!?」

 

 

長秀はゴクリと息を飲み、

『新田』の説明を始めた。

正式には『新田肩衝』天下三大肩衝の一つ。

他にも『初花肩衝』『楢柴肩衝』などがあり、

その価値はあの『九十九髪茄子』

よりずっと上。

元は鎌倉討幕の英雄『新田義貞』が所有していた唐物であり、そこから村田珠光、三好と流れていったものである。

実は既に名物狩りによって『初花肩衝』を持っている信奈は残り2つを何とか手に入れようと三好の元領地にて探させていたものなのだ。

この3つを揃えし者は天下を取ったも同然とまで言われる程の名器中の名器である。

 

 

「こっ.....これをどこで?」

 

「三好長慶はんが死んだ後、

これは三好三人衆が持ってたんやけど上手いこと騙くらかしてうちが頂いとったんや!

でも、松永はんに盗られそうで怖かったさかい、持っとる事をずっと隠してたんや。

えろぉ~すいません」

 

「これの価値は貴方とて充分知ってるでしょう?何でわたしに?」

 

「うちみたいな小物が持ってったって

『宝の持ち腐れ』や。

そら、喉から手が出るくらい惜しいんやけど、こんなんうちが持ってたらそのうち欲深な阿呆に殺されますわ!

それに、うちのわがまま聞いてくれた信奈はんのためと思たら自然に出す気になれましたわ」

 

 

それを聞いて、信奈は飛び上がって村重に抱きつく。

 

 

「ありがとう弥助!あなたは最高の家臣よ!」

 

「信奈.....はん?」

 

「前に貴方の事『役立たず』って言った事を恥じるわ、本当にごめんなさい!」

 

 

涙を流しながら信奈が言う。この村重の忠誠心がここまで信奈を感動させたのだ。

 

 

「そんな、泣かんといてや.....

うちまでもらい泣きしてまうやん」

 

 

村重まで涙を流してしまった。この2人には史実からは想像も出来ない絆があったのだ。

 

 

「若狭に就けば勝家達と一緒に上杉と相対する事になるわ。お願いできるわね?」

 

「モチのロンや!

ここまでしてもろた以上この荒木村重!

一肌も二肌も、どうせなら全裸にでもなって織田家に仕えまっせ!」

 

「私はエロザルを飼ってるから全裸だけは勘弁ね」

 

 

こうして荒木弥助村重は若狭の新大名となった。

 

 

 

 

 

 

 

 

その光景を天井裏から見ていた二つの影..........

 

 

「面白い事聞いたね」「ね!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

場所は打って変わって坂本城。

今日は新たに明智家に入った勘解由小路天竜を歓迎する為に他の家臣達の前に紹介しているところだった。

しかし、この天竜。

最初から明智家臣団の者と馬が合わなかった。

それもそのはず、天竜は信奈やその他家臣の前で『明智家臣団には良い者がいない』と、堂々と言い放ったのだ。それが彼らにも伝わり、この結果になったのだ。

 

 

「織田様の人買いにも困りましたな。

相楽殿なら兎も角、こんな輩まで雇うとは.....」

 

「それは信奈様への不満ですか?」

 

「そっ.....それは滅相も!」

 

「皆の者、信奈様への侮辱はこの明智十兵衛光秀が許さないです。

だから天竜も、これ以上家臣らと歪み合うのはやめやがれです」

 

「私は何も.....

ただ、この者らは智将光秀殿に『金魚の糞』の如く付いて行くのみで、自らは何もしていないと申したまで」

 

 

天竜が又もや家臣達に挑発的な言動をする。これには流石の家臣達の堪忍袋の緒が切れた。

 

 

「聞いていればいい気になりおって!

ここで手打ちにしてくれる!」

 

 

前側に座っていた4人程が、

一斉に刀を抜いたのだ。

だがそれは十兵衛が驚く間も無く

制止される。

天竜の隣に座っていた4人の弟子達が目にも留まらぬ速さで家臣達の喉元に切先を置いたからだ。

 

 

「天竜様に刃を向ける者は、

この左馬助が許さない!」

 

「や~い、小次郎三番~」

 

「嘘をつくな!ニ番は私だぞ!」

 

「どっちでもいい.....うざっ」

 

 

それでいてこの余裕である。

 

 

「もういい。鞘を収めなさい」

 

 

そう言われると4人は速やかに引いた。

当然、明智家臣団達は言葉も出ない。

 

 

「私の弟子達にも劣っていて名将を語るのですか?」

 

「何を!?何も知らぬ分際で!」

 

「知っていますとも.....斎藤利三殿?」

 

「むっ!?」

 

「他に右から池田輝家殿、

妻木広忠殿、奥田景綱殿、

おぉ!後ろにいて気づかなかったが、

細川藤孝殿までいらっしゃる!

今日はまた何故この坂本城に?」

 

「むっ?......むぅ.....」

 

 

まだ自己紹介すらしていなかったというのに天竜は家臣達の名をスラスラと当て、あろうことか客として紛れていた藤孝にも気づいたのだ。

 

余談だが彼は元総理、

細川護煕の先祖でもある。

 

 

「いい加減にしやがれです天竜!

これ以上暴れるなら、

こちらにも考えがあるです!」

 

「ほう?何の?」

 

 

天竜は懐から突然拳銃を取り出し、

十兵衛に向けたのだ。

一同が立ち上がるが、天竜の弟子達が刀に手をかけたので迂闊に動けない。それに下手をすれば十兵衛が撃たれてしまう。

見たことの無い形ではあったが、それが鉄砲である事は誰もが分かった。鉄砲の恐ろしさを知っているのは織田の中で明智家が一番だろう。

 

 

「うっ!?」

 

「気が狂ったか勘解由小路!!」

 

 

斎藤利三が叫ぶ。

 

 

「.....何がです?

光秀殿、これは信奈様に差し上げた物と同種の拳銃です。どうぞ差し上げましょう」

 

 

そう言って拳銃の向きをくるりと変え、柄の方を十兵衛に向ける。

十兵衛が恐る恐る手に取ると、

何事もないかのように銃を手渡した。

その光景の後、

数十秒間誰も口を出せずにいると、

 

 

「『丹波』.....良晴に援軍を出すために交渉を一度閉じられたとか.....」

 

「はっ.....はいです」

 

「私が取ってみせましょうか?

『丹波』を」

 

 

一同が驚いた顔をみせる。

 

 

「不可能だ!光秀様とてあれだけの労をきした丹波を貴様なんかが.....」

 

「占領不可能と言われた安土城を、

現に私は取ってみせた。

八上城如き朝飯前だろう!」

 

「ですが、敵は八上城だけではないです。

今までの交渉も所詮は口約束。契機とみれば他の城も立ち上がるかもしれないです!」

 

「心配御無用。策は用意してまする。

殿は兵と馬を用意して下されば結構です」

 

「山城攻めに.....馬?」

 

「兵は鉄砲隊がいいですね。

何人出せますか?」

 

「.....相楽先輩のためにも残す必要があるので千人程しか.....」

 

「充分!馬も同じ数だけ用意して下さい。

あっ.....鉄砲はいりません」

 

「はぁ?」

 

 

聞いていた者全員が呆れる。鉄砲隊は借りるのに肝心の鉄砲はいらないと言うのだから.....

 

 

「鉄砲は良晴の為にとって置いて下さい。私の策が上手くいけばかなりの短時間で丹波は落ちます」

 

「どれくらいかかるのだ?

半年か?一年とでも言うか?」

 

 

利三が意地悪く聞くのに対し、

天竜はこう答えた。

 

 

 

 

 

 

「まさか、七日で充分!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「天竜様.....」

 

「おう、ハルか!遠慮せずに入ってこい!」

 

 

数時間前に『祈祷をする』と言ったまま小屋に入ってしまった天竜を左馬助が呼びにくる。

 

 

「これは!」

 

 

小屋中に鉄砲が詰まさっていたのだ。

しかもただの鉄砲じゃない。

 

 

「火縄銃だとこの戦では勝てない。

だからここは未来の銃でいく」

 

「これは?」

 

「名付けて、

『雨陰千重洲陀(ウィンチェスター)』だ!」

 

「これが.....未来の鉄砲?」

 

「あぁ、まぁ.....ウィンチェスターも古い銃ではあるが、それでも火縄銃の何倍もの効力がある。

しかも弾は元込め式、ここは実用性が特に高い『M1897』を用意したぞ!

装弾数5発で連発が可能!

ノーマルとソードオフを半分ずつ用意したから近距離と遠距離で分けて使えるぞ!

慣れれば片手でのレバーアクションも可能だ!」

 

 

と、天竜はいわゆる

『シュワちゃん撃ち(スピン・ローディング)』

を左馬助に披露する。

 

 

「あの.....天竜様?」

 

「おぉ~すまんすまん。

つい熱くなってしまった。男はこう銃や刀には熱くなってしまう性質があるようだな。またいつぞやのように良晴と語り合いたいなぁ!」

 

「..........兎に角!これだけの新鉄砲があればきっと八上城を落とせますね!」

 

「うんや、無理だろうよ」

 

「は?」

 

「問題なのは八上城の城主、

波多野秀治を屈服させなければまず、開城しないだろう。それに彼は黒井城にて一度光秀を裏切って騙し討ちしようとまでした奴だ。

明智が鉄砲を使う事を知っている相手に最新式鉄砲を見せつけたところでなんの効果も無い」

 

「.....はい」

 

「そこでだ!普段なら敵を待ち構えて撃つという動作が基本の鉄砲がだ、自ら攻めて来たらどうする?」

 

「というと?」

 

「俺の策は『騎馬鉄砲隊』!

これで秀治をビビらせてやる!」

 

「おぉ~!!」

 

 

ウィンチェスターは二千丁用意した。

兵に二丁ずつと弾をありったけ持たせて馬に乗せ、山を駆け上がり、城を包囲する。

敵は古風の刀槍だからまず負けん。

火縄銃は懐に入り込まれたならかなり危険だが、ウィンチェスターは至近距離でも充分に使用可能なのだ。

 

 

「ですが天竜様、織田の痩せ馬で山を駆け上がれるでしょうか?

それに、姉上から借りた兵に『雨陰千重洲陀』なるものをを使い熟せる者はおりませぬ。

たった七日でどうやって?」

 

「馬は何とかさせる。兵はこれから三日間、騎馬鉄砲術を教え込む」

 

「たった三日間ですか!?」

 

「うん。明日はウィンチェスターの試し撃ち。

二日目は馬術も合わせての練習。

三日目で全てを完璧に仕上げる。

翌日には開戦だ!」

 

「そんな無茶な!」

 

「これくらいの不可能を可能にしなければ古臭い明智家臣達を納得させる事など出来まい。

まぁ、任せておけ!

時にハル、俺はこれから出かけなきゃならん。

明日の昼には戻るからそれまでに兵の点呼を済ませといてくれ!

武蔵達も呼べよ?

もしまたあの二人が喧嘩始めたらゲンコツしていいから!」

 

「はぁ.....」

 

 

翌日の正午、帰還した天竜の前には一千の兵と4人の剣豪が集まった。

モチロンそのうち2人の剣豪はゲンコツ済みである。

さて、ここから天竜の怒涛の丹波攻略ラッシュが始まるのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

場所変わって、相良御一行が中国への移動中の馬車にて。

 

 

「なぁ、半兵衛」

 

「何でしょうか官兵衛さん」

 

「半兵衛はあの陰陽師の事どう思う?」

 

「どうとは?」

 

「シム。彼の技はまさしく賀茂流の陰陽術。

土御門と違えど、安倍流の君から見てさ.....」

 

「くすんくすん。

とっても怒りっぽい人でした」

 

「そうじゃない!術の方を言ってるんだ!」

 

「くすんくすん。ごめんなさい」

 

「ここら一体の龍穴は、

君と前鬼が閉じたんだろ?

なのに.....何で彼はあんな強力な

陰陽術が使えたんだ?」

 

「くすんくすん。

安倍流も賀茂流も龍穴から得る

『気』を術に変えます。

蘭奢待でかろうじて『気』を得ている私と違い、天竜さんは.....」

 

「やっぱりあの指輪だろうね」

 

「官兵衛さんもそう思います?」

 

「シム。恐らくあの指輪が龍穴の役目を果たしている。もしくは.....」

 

「指輪そのものから、

大量の『気』を出している?」

 

「シム。あれが何なのかじっくり研究したいね」

 

「はい..........きゃあ!.....何?」

 

「寂しいにゅ。遊んでくれにゅ」

 

「すねこすりさん、

突然だったのでびっくりしました」

 

「すねこすり。

シメオンと半兵衛は大事な話の途中だ。

もう少し静かにしていてくれ」

 

「にゅ~.....」

 

「どうした?何かあったか?」

 

「相良良晴には関係ないよ」

 

「なんじゃそりゃ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

天竜軍の一日目が終わった。

皆鉄砲隊なため、

『雨陰千重洲陀』に興味を示していた。

だが生憎、それを使いこなして的にまで弾を届かせるのまで成長したのは十兵衛の才能を受け継いだ左馬助だけだった。

 

 

「本当に大丈夫なのでしょうか?」

 

「丈夫丈夫!明日は今日より早くに始めるぞ!

今の内にぐっすり寝ておけ!」

 

「むぅ.....」

 

「それと、兵達には俺が指定した場所で固まって寝るように伝えておけ。一千人全員だ!」

 

「.....?」

 

 

左馬助は不安で一杯であった。

いくら尊敬する天竜とはいえ、とてもあと2日で騎馬鉄砲隊が完成するとは思えなかったのである。

翌日、まず午前中は昨日のおさらいから始まった。昨日の今日で何が変わるのだろうと思いながらも修行を始める。

するとどうだろうか。昨日まで撃ち方も侭ならなかった鉄砲隊が正確に的に弾を当てるまでに成長しているのだ。

本人達も己の成長ぶりに驚いている。

おまけに2日前に天竜がやって見せた

『シュワちゃん撃ち』まで器用に熟す者までいるのだ。一体何が起きたのだ?

 

 

「よし!今日は騎乗も合わせてやっていく!

もう少しの辛抱だぞ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その日の夜、

左馬助は昨晩と同じ気持ちに晒された。

確かに未だに雨陰千重洲陀を使いこなせない兵はいなかったが、騎乗となると話は別。

流鏑馬に似たようなものであり、

1日そこらで上達するものではない。

あと1日修行日があるが、それでも何とかならなければ恐らくこの戦は負ける。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「よし!今日は修行の最終日だ!

軽く確認したら早めに休んでいい。

明日は実戦だからな!」

 

 

左馬助は目を見開いた。

それは昨日と同じ現象が起きていたのだ。

鉄砲隊一千人全員が騎馬鉄砲を完璧に熟しているからなのだ。

馬がどれだけ早く駆けようとも正確に的に命中させる事ができている。

 

 

「天竜様、さては何かしましたね?」

 

「流石にばれたか.....

実は少しだけ術を使った」

 

「騎馬鉄砲が上手になる術ですか?」

 

「そんな術なんてねぇよ。暗示だ。暗示」

 

「暗示?」

 

「人間の行動の大半は『反射』を除けば、

全て脳が支配している。

もしこの脳に、

『自分は雨陰千重洲陀が使える』

という記憶を与えられたらどうなる?」

 

「雨陰千重洲陀が扱えると?」

 

「その通り!

それを『雨陰千重洲陀』

『騎馬鉄砲隊』

と二回に分けて与えたんだ」

 

「でもいつそれを..........あっ!」

 

「兵達を一箇所で固まって寝かせたのはそのためだ。脳を弄くり易いのは寝ている時が一番だからな。

『西部劇』と『欧州の騎馬鉄砲隊』

の映像を夢として流したんだ。

まぁ、欧州では『雷怖瑠(ライフル)』を使うんだがな」

 

「何故、雨陰千重洲陀に?」

 

「それは.....俺が好きだからだ!」

 

「(~_~;)」

 

 

 

 

 

元々、日本の騎馬鉄砲隊の原点は伊達家である。

長篠の戦いを見て鉄砲の需要を知った政宗が家臣らと協力して作り上げたのが騎馬鉄砲隊。

織田の鉄砲隊と武田の騎馬隊を組み合わせたようなものだ。

ところが完成したのは、関ヶ原の戦いの後であり、実際に活用される事はなく、資料も多くは残っていないため伝説と化してしまった部隊だ。

それをこの天竜がいち早く作り上げた。

さらに、伊達の騎馬鉄砲隊は移動して、停止してからの発砲というのに対し、彼の部隊は移動しながらの発砲を可能としている。

おまけに連発式のウィンチェスターだ。

確実に伊達の上を行っている。

 

 

「今は暗示で仮初めの部隊だが、

いずれ本物の部隊にしてやる。

それも一千とは限らず、

五千、一万と広げてやるさ。

この日の本で最強なのはこの天竜軍だ!」

 

「やはり貴方は素晴らしいです」

 

「昨日まで疑心暗鬼だったのはどこの誰かな?」

 

 

左馬助は顔を真っ赤にする。

彼女は昨日までの己を恥じた。

何を疑っていたのであろうか?

この世で最も信頼する彼を.....

さぁ、準備は整った!

合戦は今!

敵は八上城の波多野秀治!

いざ、参る!

 




ウィンチェスターは「ターミネーター2」のあのシーンを見て、「これいい!」と思って採用しました。
グルンッ!ガチャッ!バンッ!あの動作格好良過ぎ!
別にミリオタでもガンオタでもないのにあのシーンは痺れます!分からない方はすみませんf^_^;)
次回予告
丹波平定(後編)!
~跪け!これが天下の軍、騎馬鉄砲隊なり!~

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