天翔ける龍の伝記   作:瀧龍騎

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あぁ、オリジナルストーリーに走りすぎて、『信奈の野望』オール無視の今日この頃。


第二十五話 魔力封印解除

第二十五話

信貴山城、天竜室にて。

外の景色を見ながら煙管を咥える彼は布団で横たわる女性に問いかける。

 

 

「こんな褒美でよかったのか?

望みさえすれば土地だろうが、金だろうがくれてやったのに.....」

 

 

彼女は胸元を布で隠しながらゆっくりと起き上がる。

 

 

「私は天竜様の忍、天竜様の影です。

土地も金銭も必要ありません。

こうして天竜様のご寵愛を受けれただけでも充分過ぎる程幸せにございます」

 

「むぅ.....」

 

「天竜様は刺客であった私の命を助けただけでなく、行く手の無くなった私に居場所を与えてくれました。これ以上の恩恵がありましょうか?」

 

「あれはお前が久脩達に術をかけられ、操られていたんだ。お前には罪はない」

 

「しかし無意識とはいえ、無実の市民や子供達を殺すという呪縛から救って貰いました。感謝してもしきれません」

 

「むっ.....むぅ.....」

 

 

普段、恨みを買う事の多い天竜は恨みには慣れっこだが、こうも感謝されると、なんだか歯がゆい気持ちになる。

 

 

「人斬りとして対峙した相手が天竜様で本当によかった.....」

 

 

そう、凪の正体は以前堺に現れた4人組の人斬りのうちのたった1人の生き残りなのだ。久脩らに「恍惚の術」をかけられた彼らは、堺にて人斬りを起こした。理由は天竜をおびき出す為。ところが、4人はあっさり天竜の前に敗北する。すると、「排水の呪い」もまた受けた彼らは全身から血を霧のように噴き出し、次々に絶命。最後に残った凪のみ、辛うじて救う事が出来た。

数ヶ月かけて凪を療養。全快した彼女を信奈の下に間者として潜り込ましたのだ。凪が反天竜派という事を知った信奈はすぐに凪に信頼を置いた。後は計画通り。

凪は天竜の情報を信奈に教える.....そう見せかけて虚報を伝え、反対に信奈側の情報を天竜に伝えていたのだ。

 

 

「だが、俺は結果的に君を死んだ人間にしてしまった。前々からの計画とはいえ、悪い事をしたと思っている」

 

「先程申したように私は忍、影です。元々表舞台には出てくる事のない人間です。気にしておりませぬ」

 

 

それを聞いた天竜は、ゆっくりと彼女に近づき、後ろから抱き寄せる。

 

 

「てっ.....天竜様!?」

 

「君程の人物を影に置いておくのは惜しい。君は表に出てくるべきだ」

 

「表に?」

 

「あぁ!

今天竜軍にはお前と阿吽の3人しか忍がいない。俺はこれを一世一代の隠密部隊に編纂したい!そしてその長としてお前を迎えたい!」

 

「私を!?」

 

「あぁ!

強さだけなら阿吽かもしれぬが、

頭脳戦ならお前の圧勝だろう!

長に相応しいのは強さより、頭に良さだ!お前の判断でどんどん引き入れるがよい!伊賀でも甲賀でも風魔でも!信用でき、使える者はどんどん採用せよ!

お前はもはや影ではない!表に立ち、天竜軍の武将として取り立ててやる!それが今回の褒美とする!」

 

 

その天竜の思いを受け、凪は涙を流す。

 

 

「あっ.....有難き幸せ。

これ程私を認めて下さるとは.....」

 

「武将であるなら、忍としての名の『凪』以外に新しい名が必要だな!

..............................よし決めた!」

 

「新しい..........名前.....」

 

「お前の名前は.....」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

摂津、港場にて。

信奈に命令された通り、滝川・九鬼軍と共に水路にて攻めるため、兵を集めた天竜。

だが、ここでとある問題が起こる。

 

 

「はぁ!?

嘉隆が引きこもった!?」

 

「そうなのじゃ。

明での出来事があってから、海に出ると蛸の化物に喰われると恐れてしまってのう」

 

「要するにトラウマになってるわけね。どうしたもんかなぁ?」

 

「美少年のてんてんが頼めば治るかもしれぬぞ?くすくすくす」

 

「しゃ~ないな~」

 

 

そうして天竜は嘉隆が引きこもっている宿屋に訪れる。

 

 

「嘉隆~」

 

「ひっ.....天竜殿!?」

 

 

完全に怖がられてる。

 

 

「あんたがいないと船が動かせない。

折角作った『鉄甲船』も水の泡だ。

お願いだ。協力してくれ」

 

「『鉄甲船』が村上水軍に通用するとは限らない!もしかしたら前回よりも強い攻撃方法を用意しているかもしれない!」

 

 

その嘉隆の言い分に対し、天竜は深い溜め息をつく。

 

 

「呆れものだな。

俺が知っている九鬼嘉隆はこのような軟弱者だったか?海が怖くてブルブル震えるような臆病者だったか?」

 

「だって.....」

 

「貴様は何者だ嘉隆!!

九鬼水軍の長!

志摩の当主!

海賊大名!!」

 

「..........」

 

 

押しが足りないか?

彼女を堕とすのにとっておきの切り札は残っているが、これは.....

 

 

「また十兵衛にどやされるかな.....」

 

「え?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「嘉隆。結婚しよう」

 

「......................!?」

 

 

嘉隆はその言葉の意味の理解にしばらくの時を使い、理解した時にはすでに、茹でダコのように真っ赤になっていた。

 

 

「ひぇっ!?わっ.....わたしゅと!?

てゃんりゅう殿ぎゃ!!?」

 

「カミカミだが、理解したようだな。船を指揮をとってくれるなら結婚も考える」

 

「でっ.....でも!!

天竜殿は.....雑賀孫市と.....」

 

「孫市は側室だ。正室と違って側室なら何人も取れるだろう。当然お前も側室だ」

 

「側室.....」

 

 

正室ではなく側室という選択に迷う嘉隆。だが、天竜は彼女にそんな余裕を与えない。

天竜は嘉隆の後ろから抱きつき、左手で彼女の乳房を掴む。

 

 

「ひゃんっ!!?

てんりゃう殿!!?」

 

「何を迷ってるの?

『僕が』結婚してあげるって言ってるんだよ?選択する権利が君にあると思う?」

 

 

天竜は右手人差し指を嘉隆の口に挿入する。そして、くちゅくちゅと掻き回す。

 

 

「断っていいの?僕以外に君と結婚したいと思ってる男が他にいると思う?」

 

「んっ!..........あぁん!.....いや.....」

 

 

そうして次に、耳を甘噛みし、

首筋を軽く吸う。

 

 

「やん.....やめっ.....」

 

「僕には君が必要なんだ。

結婚しようよ嘉隆。

一緒に村上水軍を滅ぼそう」

 

「私も...........天竜殿がぁ.....あぁ.....」

 

「違うよね?

僕は君の旦那様、ご主人様だよ?

言い方変えないと」

 

「あぁ...........天竜さまぁ.....」

 

「光栄に思うんだね。僕が君の夫だ」

 

「あぁ.....嬉しい.....でしゅ...........」

 

 

天竜が両手を放した途端、嘉隆はその場に倒れこみ、うずくまってしまった。

 

やり過ぎたか?

 

天竜は嘉隆の唾液で濡れた人差し指をそっと舐めとる。

 

 

 

 

 

 

 

 

『九鬼嘉隆、調略完了』

巻物から嘉隆の名が消えた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『第二次木津川口の戦い』

前回の第一次での戦闘では、

村上水軍700隻、九鬼水軍300隻という倍近い戦力差の前に九鬼水軍は総崩れ。数で有利のの村上水軍の特攻攻撃の前に、大敗した。

特に村上水軍の使用した焙烙玉の前に、九鬼水軍の船は次々に炎上。すぐに沈没してしまった。

 

そこで嘉隆が用意したのが『鉄甲船』。船全面に鉄板を張り詰め、兎に角防御力を上げた。鉄砲はおろか、焙烙玉も防げるだろう。

それをたった6隻用意した。

600対6

この策略が吉と出るか凶と出るか。

 

 

 

 

 

「来た!」

 

 

九鬼水軍6隻に対面するように、

村上水軍600隻が出現する。

 

 

「大将船は分かるか?三成」

 

 

船頭にて三成が望遠鏡で敵方を探る。

 

 

「見えました!

村上武吉が乗ってます!」

 

「そうか!

大将の乗ってる船を早々に落としてしまえば、他の船も退くのう!」

 

 

一益が解釈する。

 

 

「はっ.....まさか。

武吉には1回殺された分の借りがある。ほんの数隻程度の撃退など、生ぬるい!」

 

 

天竜は邪悪な表情で叫ぶ。

 

 

「600隻全て撃沈させよ!

 

情けなど最早無用!!

 

見敵必殺!見敵必殺!

 

破壊!破壊!破壊だぁ!!!」

 

 

怒りのままに命令を下す天竜。

 

 

「副将軍、羽柴天竜秀長が命ずる!

 

村上水軍を壊滅せよ!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

三木城周囲にて。

 

 

「どうゆうことだよ!?」

 

 

三木城を包囲していた良晴が言う。それに答えるは天竜軍家臣、古田佐介。

 

 

「本件はこちらに内に移りました。改めて我が天竜軍が三木城を包囲します」

 

「何だと!?」

 

「むしろ今までが甘すぎたのです。敵に食糧を分けるなど、貴方は兵糧攻めの『ひ』の字も知らないのですか?」

 

「知ってるからこそだ!

足軽たちに戦もやらせず、ただ飢えさせて苦しめてじわじわ餓死させるなんて真似は.....」

 

「黙りなさい」

 

 

佐介の冷たい一言が良晴の言動を止める。

 

 

「兵糧攻めは篭る側か攻める側が諦めるまで続きます。数で勝る織田の軍なら、本気を出せばほんの数月で落とせたでしょう。

ですが、貴方の自己満足とも取れる行為で、いつまでも決着がつかない。いつまでも戦の緊迫感が双方に伝わる。

貴方の『戦を無駄に継続させる』

という行為がむしろ城内にいる者らを傷つける愚行だという事にまだ気づきませんか!」

 

「ぐっ.....!」

 

「だからこそ、この戦を極短時間に終わらせてやるのが定石と言えるでしょう。

だからこそ、これを.....」

 

「それは.....」

 

 

それは西洋の透明なビンに入った銀色の液体。

 

 

「水銀です」

 

「すっ.....!?」

 

 

いくら頭の悪い良晴といえど、水銀の事は知っていた。どれ程危険であるかを.....

 

 

「これを錬金術にて、三木城内にある食糧という食糧全てに仕込みました」

 

「何だって!?」

 

「そろそろ中毒を起こす頃でしょう」

 

 

その時、城から2人組の兵が出てくる。

 

 

「炊き出された糞虫が飛び出してきましたね」

 

 

天竜と似た邪悪な表情で佐介が言う。

 

 

 

 

男2人の言い分はこうだった。

『城内の者が集団食中毒を起こした。だから、体調が治るまで停戦を結びたい』という実に身勝手な言い分であった。

 

良晴はこれが佐介の策略であると気づく。水銀中毒は簡単に治るようなものではない。だからこそ、ここで停戦を結ぶ事で、戦を一時的に止めるものだと.....

やり方は野蛮だが、良策だ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

......................と思った矢先。

 

佐介が2人組の内の片割れを斬り伏せたのだ。

 

 

「ひっ!?」

 

「そちらから裏切った分際でよくそんな事がほざけますね。

この死んだ片割れの首を持って、貴方の大将の所に戻り、伝えなさい。

『城内に広がっているのは食中毒などではない。致死性の高い猛毒だ。早くに解毒しなければ全員死ぬ。そうなりたくなければ直ちに開城せよ。それ以外の答えは聞かぬ』と.....」

 

「ひっ.....ひぃ!!?」

 

 

男は一目散に城内に戻って行った。

 

 

「............」

 

 

良晴は唖然とし、声も出せなかった。天竜軍家臣の少女達は皆、こうも恐ろしい者達となってしまっているのか!?

 

 

「今頃、鳥取城も同じ状況でしょう。

大谷殿は強いですから」

 

 

同時刻、吉継による鳥取城の兵糧攻めが行われていた。

 

 

「今作戦において、天竜様の名はまた全国へと轟きます」

 

「どうゆうことだよ!!

おかしいだろこれ!!」

 

「?」

 

「天竜さんは一益ちゃん達と一緒に船攻めろと命じられたはず!なのにこんな勝手に.....」

 

「『天竜様は.....』です」

 

「!?」

 

「それはあくまで天竜様への命令です。私達家臣団には関係ない。何をするも自由です..........まぁ、これも天竜様に命じられての事ですがね」

 

「認めねぇ.....絶対に認めねぇ!!

天竜さんが副将軍といえど、

信奈は右近衛大将だ!

信奈の命令には逆らえない!」

 

「ざ~んねん♬  

天竜様は征夷大将軍様の署名

を預かってますぅ」

 

「それだって、信奈の方が.....」

 

「それと~

大御所、足利義元様。

前将軍、足利義輝様。

管領、今川氏真様。

関白、近衛前久様。

以上5名の署名のもとに、天竜様の全ての行動は保証されてます♬

ですので~、これを破棄できる人物はたった1人。

姫巫女様のみですね。

要するに破棄は不可能ですね~。

あははははははははははははははははははははははははははははははははは!!!」

 

 

無邪気な笑い方にもかかわらず、

邪悪さばかりが伝わる。

 

 

「近衛.....まで!?」

 

 

天竜は関白すらも支配したというのか!?

 

 

「くそっ!!」

 

 

良晴は佐介を置いてその場を離れる。

 

 

「おやぁ~?

愛しの信奈お母さんに言いつけに行くんでちゅか?いいですよぉ?

泣き虫なお子ちゃまは母の胸の中でおっぱいでもしゃぶってなさ~い」

 

 

良晴に聞こえるように大声で言う。

これが古田佐介の本性。

天竜と同等の邪悪さを持ち、

彼に負けず劣らずの策謀を考えつく。

 

 

「おや?これは.....」

 

 

本陣にて佐介がとある計画書を見つける。それは、鹿之介が以前考えたものであり、『川の水を堰き止め、濁流を自軍に流し込む』という謎の自滅作戦。

 

 

「これは.....このままではおバカな作戦ですが応用すれば.....

ふくくくくくくくくくくく.....」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「撃てー!!撃てー!!

撃って撃って撃ちつくせー!!!

一発でも残してみろ!

残った玉の数だけ減給だ!!」

 

 

九鬼水軍の操縦員やその他乗組員の女達を除く狙撃手などは皆、天竜軍の精鋭だ。九鬼水軍6隻から流星の如き弾丸が村上水軍600隻を襲う。その威力は凄まじく、一撃で村上水軍の軍船を撃沈させるものもある。敵も反撃を試みて、焙烙玉を撃ち込むが、鉄甲船の強靭な装甲を前に、燃やすことすら出来ずにいる。

 

 

「すっ.....すごいのじゃ.....

てんてんが持ってきた最新型の大砲は.....これが雑賀衆の力なのか?」

 

「まぁな」

 

 

『アームストロング砲』

天竜によって12門用意され、それぞれの船に2門ずつ搭載されている。天竜が召喚したオリジナルを元に雑賀衆が量産したものだ。

史実では、1855年のイギリスのウィリアム・アームストロングが開発した大砲。ライフルのように後装式であるため、連射性が従来のものより数段に高い。射程距離も数倍とある。日本では、1868年の戊辰戦争において初めて実践投入された。

弾丸は砲弾と榴弾を使用。榴弾は敵の下に届いた弾丸がその場で爆発し、無数の粒状の弾丸を散弾ようにばら撒く。

だが、この時代の技術では治金技術が未熟な為、榴弾が敵に届く前に爆発する可能性があったため、そこは利休や佐介による錬金術で補強している。

 

 

「凄い.....凄すぎるわ!!」

 

「どうやって使ってるの!?」

 

 

他の乗組員の女子達ががその光景を見て驚く。この時代の大砲は火縄銃と同じく先装式。後装式のこの大砲は彼女らには新世界の兵器に見えるだろう。ウィンチェスターが基本装備の天竜軍は慣れた手付きでアームストロング砲を操る。

 

 

「横に付かれました!!」

 

 

アームストロングの大砲を逃れ、至近距離まで近づいてきた敵の軍船。そうして、今にも乗り込んで来ようとする。

 

 

「ガトリング砲用意」

 

 

天竜の静かな命の後、

聞こえて来たのは想像以上の爆音。

 

 

 

バルバルバルバルバルバルバルバルバルバルバルバルバルバルバルバルバルバルバルバルバルバルバルバルバルバルバルバルバルバルバルバルバルバルバルバルバルバルバルバルバルバルバルバルバル!!!!!!!

 

 

まるで数百人の鉄砲隊の一斉掃射のような爆音。乗り込もうととして来た村上水軍の船員を次々に蜂の巣にする。

 

 

「きゃあ!」

 

「惨い!」

 

 

女子らにはきつい光景だっただろう。それもそのはず、1865年にアメリカで製作されたガトリング砲だが、その残虐性から始めから導入しようとした国は少なく、率先して導入したのは日本ぐらいだろう。

 

 

「くひゃひゃひゃひゃひゃひゃ!!!

粉々に弾き飛ばせ!!

糞虫のように!

ボロ雑巾のように!

ゴミ屑のように!!」

 

 

その時、瀕死の状態の村上水軍兵士が天竜の足元にすがりつく。

 

 

「ガヒュッ..........助け.....」

 

 

「そして.....泣き叫べ!豚のように」

 

 

天竜はその兵士の脳天にマグナムの弾丸を撃ち込んだ。

 

 

「ぽけ~~~」

 

「どうしたのじゃくっきー?

ボケっとして.....」

 

「あぁ.....素敵.....私の......天竜様ぁ.....」

 

「趣味悪いのぉ.....」

 

 

天竜によるセクハラ以降、ずっと天竜に見惚れてしまい、なんだかんだで結局天竜が指揮を取ってる始末だ。

 

 

「やっと半分といったとこか」

 

 

既に300隻の軍船が撃沈している。対して九鬼水軍側の損害は0だ。

 

 

「大変です天竜様!村上武吉の乗った軍船が退却します!」

 

「あぁ!?ふっざけんな!!

俺様から逃げられると思うなよ武吉!

召喚術!!」

 

 

天竜の肩に担がれるように現れたのは、孫市の特性大鉄砲よりもさらに大きい.....

 

 

「『ハルコンネン』!!

高速徹甲弾の威力を特と味わえぃ!!」

 

 

背の低い少年天竜比較すれば、その大きさがよく分かる。なにしろ彼の背丈並みにあるのだから。

 

 

「うらぁぁぁ!!!!」

 

 

『徹甲弾!』貫通性能が限りなく高い、大型銃火器から放たれたそれは、武吉の乗った軍船の後部から貫くようように削ってゆく。

 

 

「うし!止まった!

羅刹召喚!」

 

 

天竜の目の前に布団にて就寝中の黒鬼出現。

 

 

「おい起きろ!」

 

「へぶっ!?」

 

 

容赦無く頭を蹴って叩き起こす。

 

 

「戦中にぐーすか寝てんな!」

 

「昼間は動けないって言っただろう!」

 

「どうでもいい。兎に角、起きて俺を向こうの船までぶん投げろ。その分の力は分けてやる」

 

「私寝起きだぞ......?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「そ~~~らっ!!!」

 

 

通常の人間の十倍はあるであろう筋力によって天竜を担ぎ、4~50mはある距離をぶん投げる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「くっ!!船は動かんのか!!」

 

「駄目です!敵船から放たれた謎の弾丸により後部から中枢にかけてが損壊!ゆっくりとですが沈みかけてます!」

 

「くそっ!この船は捨て、別のに移る!こんなの戦じゃねぇ!こんな戦で死んでたまるか!」

 

 

次第に火の手が周り、慌てふためく船員達が右往左往してる中。

 

 

「た~けよ~し!!♬」

 

「なっ!?」

 

 

陽気な声を挙げながら天竜が飛んできた。そうして武吉らの目の前に着地する。

 

 

「ひっさしぶりだなぁ~!

村上武吉。元気してたかぁ?」

 

「やっぱお前か。この嫌らしいような戦の仕方.....昔から変わらねぇ。常に相手より優位な立場にいて、なおかつ圧倒的な戦術と力によって敵戦力を壊滅に追い込む。直家の下にいた頃から危機感を感じていた。死んだと思っていたが.....むしろ少し若返ったか?」

 

「色々あってね。一回死んだおかげで学んだ事も多くあった。それと新たに覚えた術もね.....」

 

「術?」

 

 

天竜はおもむろに懐へ手を伸ばす。それを警戒し、船員らは刀や弓や鉄砲の銃口を向ける。

 

 

「十字架.....?」

 

 

だが十字架にしては形に違和感を感じる。十字の下部がやや長いのが通常の十字架に対し、それは真逆。

 

 

「これは『逆さ十字』。ゼウスではなく、サタンを祀るもの。アンチの象徴だよ」

 

 

続いて彼はその手から例の指輪を外す。

 

 

「そんでもってこれが奴の触媒とも言える指輪。『天叢雲指輪』。又の名を『ヘルリング』。レア度S級ランクのプレミアもんよ~」

 

 

天竜が未来風の話し方し始めた為に、武吉らは話ついて行けない。

 

 

「まっ、久脩の馬鹿はコレを単なる霊力供給器かなんだかと勘違いしてたみたいだが.....

用方容量さえ守れば天下だって取れるような代物だとは夢にも思わなかっただろうなぁ。くくくくく.....」

 

 

彼は逆さ十字の上部の長い方に、指輪を引っ掛けた。そしてそれを.....

 

 

「!?」

 

 

飲み込んだ。

 

言葉通り、ゴクリと。

 

手の平並の大きさの十字架を、まるで飴玉のようにゴクリと喉を通してしまったのだ。

そして.....

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『我、神に反する者なり。

 

今上に存在せし、聖という聖全てを真向から否定する混沌なり。

 

我、闇を、悪を、死を象徴とする魔物なり。

 

そして、神を滅して世に真の秩序を取り戻せし革命者なり

 

Η Nari που πηγαίνουν εναντίον μας, ο Θεός. 

Το χάος Nari να μην υπάρχουν τώρα και στο εξής, και να αρνηθεί ξεκάθαρα το ιερό του συνόλου των ιερών. 

Οι δαίμονες Nari που συμβολίζουν το θάνατο, το κακό, μας, το σκοτάδι. 

Στη συνέχεια, γίνεται επανάσταση είναι Shi Πάρτε πίσω τη σειρά του αληθινού κόσμου εν ριπή Θεού.....』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

天竜が謎の呪文を唱え始めた。

日本語で聞き取れたものもあれば、時にはよく分からない言語混ざり、それを聞いている武吉らにはチンプンカンプンだ。

天竜は今、隙だらけだ。今なら殺せる。そう分かっていても、誰も動けない。

不用意に攻めようとする者がいても、武吉自身がそれを止めさせたのだ。

それは似ていたから.....

あの月読命と同じ、嫌な雰囲気に.....

あの場から生きて逃げ帰ったからこそ分かる、真の恐怖。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『人間に身をやつした我なるが、

 

ここで魔の物に戻るとしようぞ。

 

我こそが、魔の仔なり。

 

サタンの身代りなり。

 

我の真名、

ドラクエル・バスティーユ・

ヘルライド・サタンが問う。

 

 

 

汝らは我を見たか?

 

Παρόλο που έχουμε κάνει Yatsushi ίδιος στα ανθρώπινα όντα,

 Προσπαθούμε να είναι πίσω στα πράγματα της μαγείας εδώ. 

Τι είμαστε, Nari απογόνους της μαγείας.

 Ο αποδιοπομπαίος τράγος Nari του Σατανά. 

Μάνα μας, 

Dorakueru Bastille, Hell Ride Σατανάς είναι να ρωτήσετε.

 

 Ye να μας δει;』

 

 

 

 

 

 

一瞬、焼き尽くされるような鋭い殺気が来たかと思うと、天竜の周りに邪悪な漆黒霧が立ち上る。

同時に、茶髪だった彼の髪は黒髪に、結っていた紐は千切れ、ざんばら髪に.....

白装束のような着物も変色。これもまた、漆黒に染まり、黒装束に.....

彼の瞳は血のように紅に染まり、

ギロリと武吉らを見下すように睨みつけている。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「つっ.....つっ.....」

 

 

恐怖のあまり武吉は喋ろうとする口が上手く回らない。

 

 

「月読.....命.....!!」

 

 

そう、ほんの数分まで美少年の姿であった天竜が、今ではあの月読命とほとんど同じ姿をしていた。

 

唯一違うといえば、それがまだ天竜の姿だという事だ。完全なあの女の顔ではなく、天竜の面影残しているという点。

 

 

「こっ.....こっ.....」

 

『こぉ~??』

 

「殺せぇ!!!!」

 

 

武吉の周りの鉄砲兵が一斉に天竜に向け、発砲する。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

それからいく時が経っただろうか.....弾という弾を撃ち尽くし、鉄砲がただの鈍器と成り下がった今でさえ、天竜はそこに立っていた。

邪悪な笑みを浮かべながら.....

 

 

『どうしたその程度か海賊?

飛び道具に頼るだけが貴様らの戦い方か?

あの時の威勢はどうした武吉?

我の手足を捥ぎ、

胸部から腹部にかけ、無数の刀を突き刺したように。

我に死の恐怖をもう一度与えてみよ。

どうした?早くやれよ。

Hurry!Hurry!Hurry!Hurry!Hurry!』

 

「お前.....本当に天竜.....か?」

 

 

それは.....

それまでの天竜の黒さが可愛く思える程の漆黒、混沌に満ちていた。

 

 

 

 

 

『おぉ!!

生きているとは本当に

素晴らしいなぁ!武吉ぃ!

くひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃ!!!!』

 




今回も長文になってしまった(泣)
本来なら今話だけで、武吉との海戦は終わらす予定でしたが、武器の解説に尺を使い過ぎてこんな結果に.....
さて、凪の正体と佐介の本性と天竜の変身の回でしたが、皆さん着いて来れてます?
次回予告
魔王の品格
~さぁ!!我を殺してくれる者は何処にいるのだ!!~

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