天翔ける龍の伝記   作:瀧龍騎

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本編が追いつかなかった為、また番外編挟みます。
量は多いですが、気軽に読んでくださいね。


番外編3

7話   お料理対決

これは、前回に引き続きお誕生日会のお話。今回は秀俊である。

長浜城にて羽柴兄弟が集結する事なる。

 

 

「チキチキ!

お料理対決~!

パフーパフーパフー!」

 

「........................は?」

 

 

突然の天竜の提案である。

良晴の頭上に???が出る。

 

 

「知っての通り、シンは痩せの大食いだ!」

 

「知らないけど.....」

 

「うわ~.....知らないんだって。

兄としてどうなの?」

 

「秀吉殿は嫌いだから気にしないなのです」

 

「お~。シンはいい子だなぁ」

 

「こら!俺の評価下げるんじゃねぇ!」

 

 

良晴は、直家の一件から天竜に対し、不信感を覚えている。その天竜に招待されたのは癪だったが、義妹の誕生日会と言われては、断ればますます嫌われそうなので、出席する事に.....

秀俊は天竜の膝の上で幸せそうに座っている。さっきまでは、若返った天竜に対し、ねね共々戸惑っていたが、今は完全に慣れてしまっている。今までは親子ともとれる年の差があったが、それが縮まった事で、より関係が深まったようだ。

 

 

「天竜の言う通りだ!

こんな可愛い妹達をほっぽいて.....

貴様に兄を名乗る資格はない!!」

 

 

ねねを膝に乗せた青蘭が言う。

 

 

「弟に嫌われてる貴方が言いますか!?」

 

「何!?

姉ちゃんの事、嫌いなのか!?」

 

「いや.....青蘭の前の記憶が戻ってしまって.....嫌いにはなってないけど、正直ちょっとウザい」

 

 

ガーーーンΣ(゚д゚lll)

 

 

「ねねは蘭姉さま、大好きですぞ!」

 

「辰も蘭姉さまは好きなのです」

 

「あ~~~!!!

お前らホントに可愛い!!」

 

 

青蘭と2人が出会ったのはつい先程だ。天竜に妹がいると知った彼女は招待もされてないのに、突然やって来た。始め、目つきの悪い彼女に、ねねも秀俊も怯えていたが、彼女が思ったより優しく、また女同士という事もあって、ほんの1時間くらいで仲良くなっていた。

天竜の実姉という事もあり、羽柴兄弟の新たなメンバーとして迎え入れられたのだった。

 

 

「小っちゃくて、可愛くて、いい匂いして、素直で、妹で、兄姉思いで、妹で、ホンットに可愛い!!」

 

 

「妹で」が2回あったな。

 

 

「食べちゃいたい.....」

 

 

シスコン属性が開発されてる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「よし!これからお料理対決を行う!

立会人は我が専属料理人の黄黄!」

 

「ヨロシクアル!」

 

「...........」

 

 

また変な人増えてる.....

 

 

「規則は至って単純!

お互いに秀俊の為に料理を作り、

満足させた方が勝つ!

それだけ!」

 

「..........まぁ、そんなことなら」

 

 

良晴も彼なりに準備をする。

 

 

「優勝商品は、秀俊から頬への口付けだ!」

 

「維持でも勝って下さいまし天兄さま!!」

 

 

それは、天竜にキスしたいのと、良晴にキスしたくないの両方の意味が籠っている。

 

 

「頑なにショック.....

審査員がこれじゃあ勝ち目なくない?」

 

「誰がどっちの料理を作ったのかは秀俊には公表しない。それをしてしまうと、確実にお前が負けるからな」

 

「くっ!」

 

 

自信満々に言ってるのが腹が立つ。

 

 

「用意始メアル!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

チーム良晴。

アシスタントは五右衛門。

 

 

「何を作るでござるか?」

 

「う~ん。何がいいかな~?」

 

「秀俊殿の好物はありますか?」

 

「..........知らない」

 

「とても兄とは思えぬでごじゃる」

 

「すまん.....」

 

 

ねねと違って好かれない妹を好きになれるかというととても難しい。だが、今はそんな事は言ってられない。

以前の料理対決のように揚げたこ焼きで行くか?いや、これはもう古い。当然、秀俊も食べただろう.....

 

 

「そうだ!秀俊はまだ子供だ!」

 

 

子供の大好きな料理を考えればいい!

子供の三大好物。それは、

ハンバーグ!

カレーライス!

ラーメン!

 

この3つの中で、国産の材料で作れる料理は.....

 

 

「五右衛門、ハンバーグ作るぞ!」

 

「はんばあぐ?」

 

 

実際、良晴の好物でもあった。

 

 

「五右衛門!玉ネギ用意!」

 

「はいでござる!」

 

「玉子用意!」

 

「はいでござる!」

 

「パン粉..........はないか。

代わりにおから用意!」

 

「はいでござる!」

 

「牛乳用意!」

 

「はいでござる!」

 

「挽き肉用意!」

 

「はいで...........挽き肉!?」

 

 

ペースが急に止まった。

 

 

「羽柴氏、挽き肉とは?」

 

「ん?あらびき作んだよ。牛とか豚とかの.....」

 

「羽柴氏、牛や豚の食用は仏教においてきゅんしされちぇるでごじゃる」

 

 

キュン死?

......................あぁ、禁止ね。

 

 

「.....................え?」

 

 

禁止されてるだとぉう!!!!?

 

 

「どうすんだよ!!

じゃあ食べれる肉って何!?」

 

 

「主に鳥肉でござる。

鴨とか、丹頂とか.....」

 

「ダメだダメだ!

鳥のハンバーグなんて..............

いや、待てよ?」

 

 

鶏のハンバーグだってあるんだ。

でもある材料は鴨肉。

いけるか?

 

 

「ウジウジ悩んでなんていられねぇ!

鴨でハンバーグ作るぞ!」

 

「はいでござる!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一方、チーム天竜。

アシスタント阿斗、吽斗

 

 

「「せ~んぱいっ!」」

 

 

アシであるはずの阿吽が五右衛門に抱きつく。

 

 

「阿吽!?

お前達は天竜殿の手伝いでは?」

 

「だってぇ、

手伝いはいらないって天竜が.....」

 

「先輩と遊んで来いだって」

 

 

阿吽がそれぞれ言う。

 

 

「でも!でも!

拙者も羽柴氏の手伝いをせねば.....」

 

「あとは焼くだけだし、行ってこいよ」

 

「うぅ.....では、仕方ないので行ってくるでごじゃる!」

 

「何して遊ぶ?」

 

「先輩とは久々だから楽しみ!」

 

 

白い頬を紅潮させながら後輩忍者2人に手を引かれる五右衛門。

だが、良晴はそれを見逃さなかった。

阿吽が五右衛門が見えない死角で邪悪な表情を浮かべているのを.....

 

 

「あの2人が1番天竜さんの邪悪さを受け継いでんだろんなぁ」

 

 

阿吽が言う「遊び」とは、何も鬼ごっこやかくれんぼではない。もちろん忍者の遊びである。

 

 

「「「土遁!!!」」」

 

 

3人が一斉に姿を消す。

 

 

「「「火遁!!!」」」

 

 

と思ったら3本の火柱が上がった。

このように、忍法を出し合って技を競い合っているのだ。

この火柱の大きさから実力は見て取れる。阿吽はほぼ同等。五右衛門はその倍ある。五右衛門が圧倒的ととれるが、阿斗と吽斗は2人で1人の双子忍者。力合わせれば五右衛門にも匹敵.....それ以上かもしれない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

終盤ごろ。

 

 

「そういえば、この勝負においては、仏教とか関係なしにするからな。黄黄を立ち会いにさせてるし.....牛豚の肉の使用は自由だ」

 

「言うの遅せぇよ!!!

もう出来上がる所だぞ!!?」

 

 

このような点で汚いのが嫌いだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「「出来た!」」

 

 

良晴、天竜が同時に料理を完成させる。

 

1品目は良晴のハンバーグ。

黄黄が秀俊の前にそれを出す。

 

 

「初めて見る料理なのです」

 

 

秀俊の興味は充分惹いているようだ。

秀俊は良晴と天竜を交互に見る。

どちらが作った料理か見定めてるのだ。

 

 

「シン。とりあえず食え。

品定めはそれからにしろ」

 

「はっ.....はいなのです!」

 

 

箸で器用に切り分け、口に運ぶ。

 

 

「ほふっ!中まで熱いなのです!」

 

 

一口一口ふーふーしながらパクパクと口に運ぶ秀俊。ねねがそれを羨ましそうに眺めていると、切り取った肉片をねねにも食べさせてあげた。2歳年上のお姉さんだけある。

「美味しい」などの感想は無かったが、とりあえず満足させたようだ。

 

 

「鴨肉でハンバーグを作るとは.....

発想の展開だな」

 

「誰かさんのせいでね.....

天竜さんは何を作ったの?」

 

 

その時、秀俊の前に天竜の料理が運ばれる。

 

 

「何だあれ!?」

 

 

特に変な料理という訳ではない。

至ってシンプルなチャーハンだ。

問題はその量だ。

 

例えるならば富士の山。

とても10歳の少女の食べきれる量じゃない。それをあえて天竜は出したのだ。

すると、秀俊はハンバーグの時とは打って変わって眼を輝かせながら、与えられた杓子(レンゲの事)を手に、猛スピードで口に放り込む。

 

 

「どうゆうこと!?」

 

 

この変わり様は異常だ。

そんなにチャーハンが好物なのか?

 

 

「シンはな、味が分かんねぇんだ」

 

「は?」

 

「料理の醍醐味である味が分からない。だから秀俊は兎に角、胃の中を一杯に満たす。それが味ありであろうと無かろうと、関係ない」

 

「どうゆう事だよ!?」

 

「シンは味覚障害者だ」

 

「は!?」

 

 

以前も、信奈の誕生日の食事の際、三成が作らせた塩抜きの味なし料理を平気でパクパク食べていた。

 

 

「あれ以来、気になって医者に調べさせた。そしたら予想通り。シンの舌は、甘味、苦味、酸味、辛味の全ての味覚が機能してなかった。あるのは触覚や痛覚ぐらい.....」

 

「なんだよそれ.....」

 

「だからそれからは、シンの食事にはいつも気をかけるようにしていた。味などはどうでも良くても、毒入りの料理を気づかずに飲み込んでしまうかもからな。信用できる料理人に任せてた。これからは黄黄に任せようと思う」

 

「ちょっと待てよ!?

それを知ってるアンタは適当に作ったチャーハンを大量に作ればいいだけじゃないか!!

そんなのを利用して作られた勝利を手に入れただけだろう卑怯者!!」

 

 

そのような障害を持つ弱い立場の秀俊を利用した事が良晴には許せない。

 

 

「何を勘違いしている?」

 

 

天竜はため息をついて、チャーハンを少しだけ小皿に取って良晴に渡す。

 

 

「食え」

 

 

良晴は渋々それを受け取る。

そして、杓子で掬って口に運ぶ。

こんなの、味なしに決まって.....

 

 

「!?.......................何だよコレ!?」

 

 

良晴の様子が一変する。

 

 

「美味しい.....メチャクチャ美味いぞ!?」

 

 

てっきり味なしの、消しゴムのような味のチャーハンを予想していたにも関わらず、その予想を大きく反して美味しかった。というか絶品だった。

 

 

「黄黄に習ったチャーハンを俺風に、日本風に味付けしてみた。正直の所自信作だ」

 

「ちょっ、ちょっ、ちょっと待ってくれ!!あんたさっき.....」

 

「確かにシンは絶品料理だろうが、

味なし料理だろうが変わらない。

だけど.....味なし料理を食わせるなんて可哀想過ぎるだろう?

だから、俺はシンには絶品料理を食わせてやるようにしてる。味覚障害だって関係ない。俺の意志として、シンに美味いもんを食わせてやりたいんだ」

 

「.....天竜さん」

 

「この勝負の勝利は実際のところどうでもいい。全てはお前のためだ」

 

「俺のため!?」

 

「お前、シンの事何も分かってなかっただろ.....教えてくれなかったは理由にならんぞ?お前が知ろうとしなかったからだ。

人生には、知らず知らずに他人の不幸を見逃している事がしょっちゅうある。お前さんが心の底から正義の味方を目指すんなら、それらにも気をかける事だ」

 

「天竜さんも正義の味方を目指してんのかよ?」

 

「正義の味方?

はっ......まさか!」

 

 

そこでまたあの邪悪な表情になる。

 

 

「俺は悪の敵だよ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その後、案の定秀俊が選んだのは無駄に量が多く、無駄に美味いチャーハンに決定。満足気に天竜にキスする秀俊だった。

その夜、遊び疲れた秀俊とねねは青蘭と一緒に就寝。天竜の話が気になって眠れない良晴はふと縁側に出る。すると、そこには月明かりに照らされ、煙管を咥えて一服している天竜が。

 

 

「未成年が.....しかも元教師が喫煙かよ」

 

「精神年齢は27だからいいの」

 

「ふん。都合がいいこって.....」

 

 

良晴は天竜の隣りに座り、月を眺めながら言う。

 

 

「あいつら不幸にしたら俺が絶対許さねぇからな」

 

「ふっ.....不幸になどさせるものか。

 

....................何をしてでも」

 

「..........」

 

「それにしてもいい三日月だ」

 

 

その後、2人は何もしゃべらずに只々、月を眺めていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

8話   温泉での出会い

今日は織田家臣団にて慰安旅行。

ちと休み過ぎな気もするが、温泉に入ってしまえば関係ない。特に女子連中は大きく、豪華な露天風呂に大満足していた。

 

 

「市、だいぶ大きくなったわね。

調子はどう?」

 

「順調ですお義姉様。

今年中には産まれる予定だそうです」

 

 

温泉には妊娠中の市もいた。

温泉で療養する為に、夫婦でやって来たのだ。ちなみに信澄は良晴と一緒に山猿用の動物風呂である。

本来なら混浴であったが、信奈の命令で弾かれてしまったのだ。

 

 

「うぅ.....信奈様も柴田殿も市殿も丹羽殿も皆、豊かそうで羨ましいですぅ」

 

 

十兵衛がぼやく。彼女も決して貧乳ではないのだが勝家達と比べてしまうと、ちと物足りない。

 

 

「貧乳の良さが分からないのはまだまだ未熟」

 

 

身体的に未熟な犬千代が独自の自論をとく。

 

 

「私も羨ましいですが、大きい方は肩が凝りやすいと聞いてます。くすんくすん」

 

「まぁ、男にとってはおっぱいなんて煩悩の塊でしかないからね」

 

 

両兵衛が語る。

 

 

「べっ.....別にいいじゃないの!

私だって六に比べたら、ちょっとって思うし.....というか六がデカすぎなのよ。所詮脂肪の塊よ」

 

「そんな姫さま~!」

 

「あははははははは!」

 

 

今日の信奈は機嫌が良かった。何故なら、今回の旅行に天竜が来ていない。というか呼んでないのだ。その分、十兵衛の元気は無かったが.....

 

 

 

 

 

 

 

そんな時。

 

 

「三成と吉継は?」

 

「夜に入るんだと。あの2人って根本的にあたしらと距離取ってるからな」

 

「気に入らない。あの2人は最近天竜様にベタベタしすぎ!」

 

「まぁまぁ、折角集まったんだから温泉楽しもう!」

 

 

何やら湯気の奥から聞き覚えのある声がしている。信奈達が気になり、そこへ近づいてみるとそこには、なんと天竜家臣団の少女達が揃っていたのだ。

 

 

「あんた達!?」

 

「「「信奈様!?」」」

 

 

お互いの存在に驚く。

いたのは、左馬助、武蔵、小次郎、順慶である。

 

 

「筒井順慶!?」

 

「お久しぶりですねぇ信奈さん」

 

 

以前は対立していた2人である。

 

 

「天竜の家臣になったていうのは本当だったみたいね」

 

「えぇ、貴方と久秀さんのせいで取られたままの筒井城を返して下さったのは天竜様ですのでぇ」

 

 

含みのある言い方だ。

彼女が半陰陽だという事は天竜しか知らない。この温泉でも、ずっと身体に布を巻いて隠してしまっているので、気づけた者は1人もいない。

 

 

「ふんっ!三好と組んでいつまでも暴動を起こしてたからでしょ!自業自得よ!」

 

 

順慶はそれを笑顔で返したが、湯船の中で拳をギリギリと握りしめ、耐えている事を天竜家臣団の者が気づく。

 

 

「それくらいにしたらどうです信奈様。今は双方とも慰安旅行の最中です。いがみ合いはやめましょう」

 

 

天竜家臣団の1人がそう言って止める。信奈は彼女初めて見る人物だと認識していたが、また新しい女だろうと納得する。

 

 

「ふん。あんた名前は?」

 

「朧と申します」

 

 

やはり聞いた事がない。

 

 

「あ~。あんたらいるって事は天竜もいるの?」

 

「えっ.....あぁ.....まぁ.....」

 

 

小次郎があやふやな答え方をする。

奇しくも信奈一行も天竜一行も別々に旅行を計画して同じ温泉に来てしまったのだ。

 

 

「ちっ!折角の旅行が台無しじゃない!」

 

「「「...........」」」

 

「姫さま!」

 

 

長秀が慌てて止める。天竜家臣団の前でこんな発言は命取りであるからだ。

 

 

「まぁまぁ、ここで会えたのは何かの縁です。仲良くしましょう」

 

 

また朧という人物が言う。

信奈は初見であるにも関わらず、何処かで会ったことがあるのではないかと思案する。

 

 

「きっ!」

 

 

ギリギリと左馬助が歯ぎしりをしながら信奈を睨みつける。

 

 

「それに、貴方は天竜を勘違いしている」

 

「勘違い?」

 

「彼こそ、民を思い、国を救おうと考えている人物は他にいない。旧体制の破壊ばかりを唱える貴方と違ってね」

 

「何ですって!?」

 

「日本を世界に向けさせるのは良きこと。ですが、まだ向く意識が持てない者を力で排除したり、蔑ろにするのは角違いだ。それらの意見も尊重した上で、双方に納得のいく解決策を見つける。実力行使のみの貴方とは大違い。それが天竜との大きな違いです」

 

「ぐぐぐ.....言わせておけば」

 

 

そうして朧は邪悪な表情でとどめを指す。

 

 

「お前のような愚者に天下などとれませんということです」

 

「このっ!!言わせておけば!!」

 

 

信奈が今にも飛びかかりそうだったのを勝家が慌てて止める。

 

 

「申し訳ありませんが出て行ってもらえませんか?これ以上の姫さまへの暴言は死罪に値します」

 

 

長秀が静かに語る。

 

 

「それもそうですね。皆さんそろそろ出ましょう」

 

 

布を首にかけた朧が湯船から出る。顔もかなりの美人であったが、スタイルもなかなかである。

 

 

「覚えておきなさいよ。朧」

 

「覚えられる範囲でなら」

 

 

そうして朧一行は出て行ってしまう。

 

 

「どうしたのよ十兵衛?」

 

 

思えば、朧一行と会ってから一言もしゃべらずに俯いている。

 

 

「いや、まぁ...........その.....」

 

 

言えない.....言えるはずがない.....

あの朧という少女の正体が.....

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

........................................天竜だなんて

 

 

 

 

 

 

「天竜様!」

 

「今は朧だよ」

 

「そっ.....そうでした朧様!」

 

 

風呂から戻ってきた皆に三成が駆け寄る。

 

 

「お前達は寝る前に入るのだろう?

俺も付き添ってやろう」

 

「あっ.....ありがとうございます!」

 

 

後ろで弟子達がまたブツブツ文句言っていたが、朧は気にしない。

 

部屋に戻った彼女は窓辺にドカッと座り込み、そこから煌びやかに光る月を見る。

 

 

「いい満月だ。こんな身体でなきゃ、

さらにいいんだが.....」

 

「朧様.....」

 

「ツクヨミと一体になり、若返ってから.....俺の身体は日に日に変化していっている。満月の夜のこの変化も.....」

 

 

朧と天竜は同一人物であった。

満月の日が訪れる度に、身体が男性のものから女性のものになるのだ。恐らく、ツクヨミが女であるためだろう。

なんとなく順慶の気持ちが分かる気がする。

 

 

「それにしても顔はあまり変化されてないんですね」

 

 

元々女顔だからだ。

 

 

「喧嘩売ってんのか?」

 

「いやっ!滅相も!!」

 

「ふっ.....」

 

 

家臣団のものは当然この真実を知っており、最近は一緒にいることが多い十兵衛も知っている。当然驚き、同情の念などが惑い、複雑な表情をしていた。

 

 

「ツクヨミか.....いつか決着つけなきゃな」

 

 

再び満月を見る。

 

 

「本当に良い満月だ。

今日は他にも良い満月を沢山見れたがな

くくくくくくくく.....」

 

「女性化しても、助平心は相変わらずですね」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

9話   錬金術師

堺。とある茶屋にて、お馴染みの連中にて茶会が開かれていた。参加者は天竜、利休、佐介、道薫。

 

 

「あぁ~。平和だねぇ」

 

 

お茶を啜りながら天竜が語る。

天竜が副将軍になり、そのつてで毛利の進軍を食い止めた。つかの間ではあるが、次の戦まで休息が訪れる。

 

 

「平和ですねぇ」

 

「平和やなぁ」

 

「..........(コクリ)」

 

「暇だ。なんか面白い事ないか?」

 

「............(フルフル)」

 

「ん~.....」

 

 

また静寂が訪れる。

 

 

「そういやお前、錬金術師だよな?」

 

「...........(コクリ)」

 

「誰に習ったんだ?西洋の魔術だろ?」

 

「...........」

 

「日本に来てた欧州の錬金術師に習った?」

 

「..........(コクリ)」

 

「一体誰だ?」

 

「...........」

 

「なっ.....なんだと!?」

 

 

今までのゆったり感が嘘のように天竜が驚愕し、利休に問い詰める。

 

 

「その人は今どこにいる!?」

 

「...........」

 

「堺にいるだって!?

今すぐ探しにいくぞ!?」

 

「Σ(・□・;)」

 

「どこ行くんや天竜はん!?」

 

「何をそんなに慌てて.....」

 

 

佐介、道薫を置いて天竜は利休の手を引いて出ていってしまった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

堺にて。

 

「いた!あれか!?」

 

「..........(コクリ)」

 

「すまん!そこの人!!」

 

「ん?」

 

 

その人物は天竜に気づき、振り返る。金髪に碧眼の40代くらいの白人男性。それにお付きとして、こちらも金髪碧眼の10代くらいの少女がいる。

 

 

「私が何か......................利休!?」

 

 

利休に気付いたその男は利休に気づき驚く。日本語はフロイス同様に上手いようだ。

 

 

「昨日ぶりですね~。

お便器でしたか?」

 

 

お元気と言いたいのか?

日本語は難しいようだ。

 

 

「おや?そちらは?」

 

 

彼が尋ねてきたため、天竜は自ら名乗る。

 

 

「俺は羽柴天竜秀長と申します。

サンジェルマン伯爵」

 

「ん?何故私の名を?」

 

「貴方の名は有名だからな。

利休から聞いて驚いた」

 

 

 

『サンジェルマン伯爵』

16世紀末から18世紀末の約200年間ヨーロッパ各地に出没した謎の錬金術師。記録によれば、最初は1710年ヨーロッパに突如現れ、その後数十年間の間にたびたび姿を表したが、一切年をとってないように見えたという。前世の記憶とそれに関連する知識がある、あるいは、常軌を逸した長寿をもたらす秘薬をもち、その結果2000年とも4000年ともいう驚異的な記憶を有していたといわれる。また貴石・宝石の類いにも非常な関心をもって多くを所有していたといわれ、ダイアモンドの傷を消す秘法を身につけていたとされる。

 

 

 

「『3000歳の怪人』『不老不死の化物』

色々呼び方がある」

 

「化物とは少々失礼なお人だ」

 

「すまない。

だが、貴方には聞きたい事が山ほどある」

 

「ほう?」

 

「あんた.....実際の所、何歳なんだ?」

 

「..........」

 

「キリストの誕生。

クレオパトラの様子。

それらを自ら見たように語り、

ルイ15世との謁見をし、

第二次世界大戦にも出没。

20世紀の日本にも現れた。

しかも未来の知識を過去で公表するなどという行為までしている。

どう考えてもただの長生きとは思えない」

 

「というと?」

 

「あんたは時空は行き来している。過去へも未来へも自由に行ける。それが3000年の絡繰だ。まぁ、多少は秘術で延命してるだろうが、精々200歳ぐらい。そうだろう!!」

 

「.......................流石は『朧組』組長、勘解由小路天竜。まるで名探偵だね」

 

「あんた!!俺を知ってるのか!?」

 

「君は気づかないだろうね。私がいつも近くで見ていた事を.....」

 

「近くで!?」

 

「君こそ年齢はいくつだい?

見た目通りではなさそうだけど?」

 

「..........身体年齢は17。

精神年齢は27だ」

 

「では神としての年齢は?

君の中の彼女は?」

 

「..........さぁな。5000歳か、

10000歳か、はたまた1億歳か.....

本人が語らねぇから分からん」

 

 

 

 

この男.....俺の中のツクヨミまで.....

 

 

「神の加護まで得ている君が私に何を聞きたいのだい?」

 

「..........あんたの持つ神薬の作り方」

 

「断る」

 

「早いな.....」

 

 

以前、芦屋道海に延命の術を教わったが、それでは老化や死までは止められない。

 

 

「君は不老不死を軽んじている。

不老の苦しみ。不死を苦しみを知らぬ君には神薬を与えても意味がない」

 

「ちっ!」

 

 

天竜には必要だった。

不老不死の力が.....

ある事を成し遂げる為に.....

 

 

「しかし、ある試練に合格すれば、教えてやらんでもない」

 

「何っ!?それは何だ!?」

 

「この子の世話を頼む」

 

 

伯爵が指したのは隣りの付き人である。

 

 

「この子は?」

 

「百年戦争を終わらせた女神様だよ」

 

「..............................は?」

 

 

『百年戦争』

フランス王位の継承とフランドル地方の領有その他をめぐって、フランス王国とイギリスが戦った戦争。中世の戦争の常として、戦闘は断続的に行われたものである。

当初フランスは劣勢であり、強敵のイギリスの前に、侵略されつつあった。だが、1429年に彗星の如く現れたとある少女の活躍により形勢が逆転することとなる。指揮官としてのカリスマ的才能を駆使し、数々の戦闘を次々に勝利。フランスの希望の星となった。

だが、フランス国王とは馬が合わなかった。このままでは、フランスがイギリスに勝っても、国王の勝利ではなく彼女の勝利にされてしまうと国王が勝手に解釈し、彼女を蔑ろにした。最終的にはイギリスへ売り渡し、彼女はその地で理不尽な形で裁かれ、業火の中で苦しみながら死んでいった英霊。

 

 

「ジャンヌ.........ダルク?」

 

「私を..........ご存知で?」

 

 

その美少女は首を傾げている。

 

 

「生き返らせたのか?」

 

「『反魂』は能力の高い術者の嗜みであろう」

 

「いったいどうして!?」

 

「その理由は君が見つける事だ」

 

 

すると伯爵は懐から金色の粉を取り出し、それを真上に振りまく。すると、黄金の霧が伯爵を包む。

 

 

「さて、私はそろそろお暇しよう!

次会うのは未来か過去かそれとも.....

また会おう天竜くん!!」

 

 

そうして霧のように伯爵は消えてしまった。というか後半、日本語ペラペラ喋ってたな.....最初のアレはキャラ作りか?

 

 

「..........?」

 

 

利休が話についていけず不思議な表情をしている。

 

 

「あの..........私はどうすれば?」

 

 

伯爵に詳しい話を聞かなかったのか、置いてけぼりにあった金髪碧眼の美少女は不思議な表情で天竜を見つめる。

 

 

「俺こそ今からどうすれば.....」

 

 

色々と任された天竜が1番複雑な表情をしていたのだった。

 




秀俊の味覚障害。
天竜の女体化。
サンジェルマン伯爵とジャンヌダルク。
次々にフラグ作り過ぎて、頭が沸騰中であります!

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