天翔ける龍の伝記   作:瀧龍騎

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第四話から最終話までの内容も頭に詰まっているのですが、書くとなると時間掛かりますね。さて、第三話でごゆるりとご拝謁下さい。戦闘シーンあるのでゆるりは出来ないかもしれませんが.....(^_^;)


第三話 シロとサル

私が教師として教えている歴史の授業はほとんどが真実だ。真実かどうかわかり難い歴史には様々な説を子供達に教えていた。受験に関係ないと、聞いてない子もいたが、反対に興味津々な子も多数いた。

でも近現代、特に世界大戦あたりの話やその後の外交の話には、他の教師の視線が邪魔でならなかった。

私は日本の悪い所と平等に外国の悪い所も知っている限り教えた。この後者が特に他教師からの批判が強かった。

C国の悪口を言うな!

R国の悪口を言うな!

A国の悪口を言うな!

いったい何を教えればいい?共産主義者の多いこの学校で私は真実を教える事にこだわった。

その結果、私は適当な理由をつけられ、転勤処分をくらってしまった。

私は知っている。

彼らが他国からの回し者だという事を.....

 

 

 

 

 

 

 

 

安土城をあとにした良晴は中国に戻る前に一度、北近江の長浜城に寄っていった。

ねねや留守役の家臣らに挨拶を済ませた後、

良晴は茶室に篭った。

そしてもう一人。

 

 

「いい茶室だな。

狭すぎず、広すぎず、程よい広さだ」

 

「利休に教えられてな。

あの2畳の真っ黒の茶室には驚いたけど.....」

 

 

天竜が茶客として来ていた。

良晴は利休の見よう見まねでお茶を出す。

 

 

「苦いな.....どれ、俺にやらせろ」

 

「だぁ!もぉ!

折角習ったんだから最後までやらせろよ!」

 

「お前がそう言うなら仕方ないが.....」

 

 

そこで良晴がくすくすと笑い出す。

 

 

「どうした。何が可笑しい?」

 

「いや、やっぱり先生なんだなぁって.....

一人称を「私」にしてペコペコ頭下げてるよか、ずっと先生らしいや」

 

「言うな阿呆.....」

 

 

しばらく2人の間に沈黙が走る。

 

 

「お前は凄いよ.....良晴」

 

「なっ.....なんだよ突然」

 

「俺はこの3年間で手に入れたのは、

塚原卜伝の弟子と天竜道場の長だけだ。

たった1年で一国の大名になったお前とは

月とスッポンだよ」

 

「先生だって.....

安土城の変と白夜叉の伝説はたった1日で全国に広まってるよ。俺なんか秀吉のおっさんの真似事でのし上がったようなもんだし」

 

「それでも高2の餓鬼がそうやすやすと出来るもんじゃない。それはお前の才能だよ」

 

「そっ.....そうかな~」

 

 

この時代で手柄をあげるのは結構一般的なため、改めて褒められると照れるものだ。

 

 

「知り合いなど一人もおらず、

ホームシックにかかった事もあったかもしれない。数々の戦で怪我を負ったかもしれない。

死にかけた事もあったかもしれない」

 

 

そう言われて良晴はふと、

金ケ崎の退き口を思い出す。

今でもその時の傷が疼いたり、

悪夢を見る事がある。

いつも別の事を考えたりして紛らわしていたが、こう掘り返されると.....

 

 

「お前は頑張ってるよ」

 

 

そう、この言葉だ。彼は生徒の頭を撫でながらこう言って励ますのだ。

彼は「頑張れ」とは決して言わない。

それではプレッシャーになってしまう。

『結果良ければ全て良し』

それが先生流の教育方法なのだ。

この時もまた、天竜は良晴の頭を撫でた。

 

 

「あっ.....あれ?」

 

 

良晴の瞳からふと大粒の涙目が零れ落ちる。

仲間のためには泣いても自分のためにはもう泣かないと決めていたのに.....

悪夢から覚めて頬が濡れていた事もあったが、絶対に人前には見せなかった。

一年振りに出会った未来人だからだろうか、

天竜に励まされた事が半兵衛達に秘密を打ち明けた時くらい嬉しく感じた。

学校では生徒からの信頼が最も高かった日本史教師にして我らが担任勘解由小路天竜先生。

全く.....この優しさは相変わらずだ。

 

 

「ところで良晴。

お前、織田信奈と付き合ってるのか?」

 

 

飲もうとしたお茶を思わず吹き出してしまった。デリカシーが無いのも相変わらずだ。

 

 

「ちょっ.....何言ってんだ!」

 

「織田信奈がお前を見る視線と、

お前が織田信奈を見る視線に、

少しピンときたんでな。

お前ぐらいの年頃の男女の恋路なんて飽きる程見てるからな」

 

「うぅ~.....」

 

「しかもさっき彼女から念を推されたぞ?」

 

「何て?」

 

「『十兵衛は何かとサルと祝言挙げたがるから明智家に仕えるなら上手く制止してよね!

えぇと.....今2人に結婚されると織田家にとって非常に都合悪いのよ!!

いいシロ?

私とサルの事は関係ないんだからぁ!!』

.....と分かりやすいツンデレだったぞ。

モテモテだな良晴」

 

 

それが原因で「女難の相」になっている良晴には肩が重い。

 

 

「はっ.....はん!先生だって!

可愛い子6人も侍らせてるじゃんか!」

 

「あれらは俺の教え子だ。

お前と違って性的な目では見とらん」

 

「だっ.....誰が性的な目なんか!」

 

 

先生はしんみりとした話が嫌いだ。

そうなればいつもこんな冗談で場を沸かす。

これもまた先生流の教育方法なのだが。

 

 

「そういえば先生の弟子の.....」

 

「武蔵と小次郎か?」

 

「あぁ」

 

 

2人が急に真剣な顔つきになる。

 

 

「ちょっと五右衛門。席外してくれるか?」

 

「わかったでござる」

 

 

実は天井裏に隠れていた蜂須賀五右衛門。

 

 

「お前らもだ阿、吽。

外で良晴の忍の手伝いをしてこい」

 

「「わかったよ!」」

 

 

実は床下に隠れていた阿斗と吽斗。

 

 

「お互い考える事は同じか.....

あの2人も忍なのか?」

 

「あぁ.....双子の姉弟なのを利用して色々やってくれてるよ」

 

「姉弟?姉妹じゃなくてか?」

 

「どっちも女顔だからな.....

前に温泉に行って初めて知った」

 

「混浴かよ!」

 

 

武田信玄、勝頼、四天王、北条氏康とハーレム混浴した良晴が言えた口ではないのだが。

 

 

「娘を風呂に入れるような気持ちだ。

俺にとっちゃ6人共ガキンチョだ」

 

「他の子は兎も角、

佐々木小次郎はいい年頃なんじゃないか?

下手したら俺と同い年だろ?」

 

 

少年少女が多い天竜の弟子の中では一際目立つ佐々木小次郎。

良晴はつい湯船に浸かる小次郎を妄想してしまい、鼻の下が伸びる。

 

 

「向こうが羞恥心の欠片も出さなければこちらとて何も思わんよ」

 

 

天竜は良晴の想像以上に大人だった。

 

 

「小次郎もだが、問題は武蔵だ」

 

「そうそう。宮本武蔵が生まれたのって.....」

 

「史実では天正十二年。

織田信長が死んだ2年後だ」

 

「だとしたら生まれるの早過ぎないか?」

 

「だからだ。この世界は俺達が知ってる歴史とかけ離れすぎている。

性別も否、年齢も、歴史の進行速度もだ」

 

「そういえば梵天丸.....

伊達政宗ももう元服しちゃってるし」

 

「石山戦争、長篠の戦い共に起きず、

武田信玄存命か」

 

 

本願寺、信玄、梵天丸の件に良晴が関わっていると話すと、天竜はより一層難しい顔をする

 

 

「やっぱ、俺がいけないのかなぁ」

 

「う~む。『パラレルワールド』と言ってしまえば簡単だが、そうなってくると今後の行き先が俺にも良晴にも読めなくなってくる」

 

「だよなぁ~」

 

「まっ.....俺も最大限協力するからな。

未来人パワー見せてやろう!」

 

「今思ったんだけど、最強の未来人の先生がきた時点で俺の存在価値が無くなってる気が.....」

 

「よせよせ!照れるだろ?」

 

「いや、褒めてねぇよ!」

 

 

しんみり嫌いの先生はまた冗談で場を沸かした。

 

 

「協力したいのは本音だよ。

そのためにも明智光秀に仕えたんだからな」

 

「やっぱりそれが目的?」

 

「あぁ.....本能寺の変の犯人が明智光秀であるにしろないにしろ、彼女が重要人物であるのは決定的だからな」

 

「やっぱ.....先生は凄えや」

 

「ふっ.....」

 

 

理由はそれだけではないのだが.....

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ねぇ、五右衛門さん」「五右衛門さん」

 

「なっ.....何でごじゃるか?」

 

 

茶室に誰かが近づかないよう見張る五右衛門と阿斗、吽斗。

 

 

「五右衛門さんって格好いいね!」「ね!」

 

「にゃっ.....にゃんでごじゃるかとちゅじぇん!」

 

「これから先輩って呼んでいい?」「いい?」

 

 

耳まで真っ赤になる五右衛門。

今まで川並衆(ロリコン)の者に尊敬される事はあったが、同業の忍から敬れる事などなかったのだ。

 

 

「よっ.....呼びたいなりゃ、

かっちぇにすりゅがよい!」

 

「わーい先輩!」「先輩!」

 

「むぅぅぅぅ」

 

「可愛いぜ親分」「可愛いぜ」

 

 

死角から真っ赤な五右衛門を視姦する川並衆。

 

 

「おっ?随分仲良くなってるな」

 

 

話を終え、茶室から良晴らが出てくる。

 

 

「相楽氏.....拙者、

忍をやっててよかったでごじゃる」

 

「そりゃ〜良かったな」

 

 

そこで天竜が良晴に耳打ちする。

 

 

「気をつけれよ良晴。

阿、吽は人を惹きつける天才だ。

あの愛嬌で皆虜にしちまう。

かつてあの2人に騙されて全財産、

はたまた命を無くしちまった奴も大勢いるからな。御宅の忍が喰われねぇよう精進しておいた方がいいぜ?」

 

 

見ている光景は2人の後輩が先輩とじゃれあっているようにしか見えないが、裏でそんな事があるかと思うとゾッとする。

五右衛門は兎も角、川並衆が騙されねぇように気をつけねぇと。

っと誓ったそばからあまりの可愛いさに悶えながら死角から出てくる川並衆を見て、

これはダメだ。思う良晴だった。

 

 

「あの潜入力が欲しくてな、手配されて処刑されそうになってた所を助けてやったんだ。

一応恩は感じてるみたいだが、いつ裏切られるかわかったもんじゃない」

 

「そりゃお気の毒様」

 

 

そんな時だった。

 

 

「やい!かでのなんとか天竜!

私ともう一度勝負しろ!」

 

「犬千代とも」

 

 

そこには全身武装で仁王立ちする勝家と犬千代がいた。

 

 

「勝家も犬千代も、越前に帰ったんじゃなかったのか?」

 

「そいつと決着つけないと気が済まないだ!

サルは邪魔すんな!」

 

「犬千代も激しく同意」

 

「我らは既に織田の同志。

戦う理由など無かろう」

 

 

天竜がもっともな事を言う。

 

 

「うるさい!お前の噂と共に私の落馬の噂も広まってるんだ!

払拭するにはお前を倒すしかない!」

 

「右に同じ」

 

 

左側に立っている犬千代まで意気込んでいる。

 

 

「では公認試合ならいいか。

良晴、立会人を頼むぞ」

 

 

天竜までやる気になってしまった。

 

 

「ちょっ.....怪我するからやめとけって.....」

 

「ふん!

そいつが今更引いた所で意味はないぞ!

私はもうぶっ飛ばす事しか考えてない!」

 

「お前に言ってんだ勝家!」

 

「はぁ?」

 

「かまわん良晴。売られた喧嘩は買う主義だ」

 

「それ、教育者の台詞か?」

 

 

手荷物を地に置き、構えを取る天竜。

だが、そこでも勝家の怒りを買う。

 

 

「何故武器を持たない!」

 

「戦なら兎も角、

力比べなら武器を持たずとも結構。

それで誇りを傷つけたなら謝るよ」

 

「馬鹿にするなぁ~!!」

 

 

愛用の槍を振り回しながら突っ込んでくる。

それを天竜は、極めて冷静に待ち構える。

それはコンマ1秒の出来事であった。

流れるように右側に捌いた天竜は、

槍の側面に手を添える。

すると、真っ直ぐに突かれたはずの槍は左側の逸れるに逸れ、そのまま1回転しながら勢いのまま転倒する勝家。

 

 

「うぇっ!?今何した!」

 

「もう終わりかな?」

 

「なめるなぁ!」

 

 

起き上がると同時に槍を突く勝家。

予測できていた天竜はいとも簡単にそれを掴む。

 

 

「何っ!?」

 

 

その瞬間勝家の攻撃は完全に止まる。

勝家は槍を引こうとしたが引けず、

逆に押そうとしても押せず終い。

その時、天竜は掴んでいた手をパッと放し、勢いで勝家が前のめりになった所を天竜が再び捌く。

すると勝家の身体は空中で一回転をし、

そのまま地に尻餅を着く。

天竜は勝家が思わず放し、空に上がった槍を天竜は掴み、そのまま倒れた勝家に切先を向けた。

 

 

「どうして.....身体が勝手に.....」

 

「この時代にはまだ合気道はない。

食らった相手はさぞ不思議だろう」

 

「合気道?」

 

「次は犬千代」

 

 

犬千代は一度落ち着き、

頭の虎の被り物を外す。

 

 

「もう生き返らせない」

 

 

さっきの事が相当怖かったのだろう。

 

 

「別に陰陽術を使うつもりはなかったのですが」

 

「いく!」

 

 

天竜は勝家の槍を捨て、再び構える。

朱槍を構え、

勝家同様に突っ込んでくる犬千代。

ただしその姿勢は異様に低かった。

元々背の低かった犬千代がさらに屈んだのだ。身長180センチの天竜には少々きつい相手かもしれない。だが、

 

 

「その攻撃は武蔵で慣れてるよ」

 

 

武蔵もまた背の低い剣士だ。

天竜は何でもないように空に飛び上がる。

 

 

「予想通り」

 

 

天竜の裏をかいた犬千代は空に逃げた天竜に槍を突いただが、そのさらに裏をかいた天竜は槍を器用に避けながら犬千代の顔に掌を伸ばす。

 

 

「勁(けい)!」

 

 

天竜は犬千代の遥か後方に飛んでいた。

天竜の着地の3秒後、

彼女は仰向けにゆっくりと倒れる。

 

 

「功夫も初めてだろ」

 

「う~ん..........ん!」

 

 

フラフラになりながら起き上がった犬千代の小さな鼻から一筋の鼻血が.....

良晴が痛そうな苦い顔をしている中、天竜が慌てて犬千代に駆け寄る。

 

 

「すまない!

怪我をさせるつもりはなかったのだが」

 

「..........死ね」

 

 

天竜が着物の袖口を破って犬千代の鼻を押さえようとした時。

その一言と共に朱槍を振る。

だが紙一重でかわした為、髪の毛の先を切っただけで済んだが、避けてなければ.....

それより良晴は普段は聞かない犬千代の暴言にガクガク震えていた。

そして、天竜の顔つきが一変する。

 

 

「感心しないな.....謝る相手に対して」

 

「黙れ」

 

 

突如立ち上がり、槍を連続して突く犬千代。

 

 

 

「教育が必要のようだね」

 

 

「死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね!!」

 

 

 

 

『玉よけのヨシ』のごとくヒョイヒョイ

避ける天竜。

突くたびに暴言を吐く犬千代。

それを見てブルブル震える良晴。

殺れ!殺れ!と野次を飛ばす勝家。

じっと試合を見つめる五右衛門。

ブチ切れする犬千代にハラハラする川並衆。

試合をケラケラ笑いながら見る阿斗、吽斗。

実はいるのに入るタイミングを失い木の影に隠れる明智十兵衛光秀。

異様な光景が長浜城下に広がる。

だが、それも一瞬で決着が着く。

 

 

 

「梵(ぼん)!」

 

 

 

天竜が犬千代の腹部に掌を当てる。

その瞬間犬千代は真後ろに吹っ飛んだ。

吹っ飛んだ先には勝家がおり、

うまい具合に受け止められた。

そのお陰で地に叩きつけられる事はなかった。

それも天竜の計算の内だろう。

だが、衝撃は凄まじかったらしく、

犬千代は既に気絶している。

 

 

「これで実力の差がわかったでしょう。

さっさと己の持ち場に戻り、

使命を果たすがいい!」

 

「くそっ!!」

 

 

犬千代を抱えながら涙目で走り去った。

残された天竜は息切れをしながらそこに座り込む。さすがに体力の限界だったらしい。

良晴が恐る恐る近寄る。

 

 

「メチャ強いのは知ってたけど、

あれ異常だろ.....」

 

「あれでも抑えてたんだ.....

本気を出せば出す程.....

彼女らに負担を掛けて.....しまうし.....

ふぅ。ムキになる.....からね」

 

 

天竜はゆっくりと立ち上がり、明後日の方向を見つめる。

 

 

「確実に嫌われたな」

 

「うん」

 

「丹羽長秀からの印象も悪いままだな」

 

「うん」

 

「まぁ、いいや。その件については策あるし.....」

 

「うん?」

 

「まぁ、それはまた今度でいいか。阿!吽!帰るぞ」

 

「「わかったよ」」

 

 

可愛いステレオが返事をしながら天竜の元へかけて行き、振り返りざまに。

 

 

「「またね先輩!それからおじちゃん達もね!」」

 

「うっ.....また会おうでごじゃる」

 

「「「可愛いぜぇ.....」」」

 

 

あいつら、そろそろやばいな。と良晴。

 

 

「おぉ!光秀殿!

居らっしゃるとは知らず失礼を!」

 

「うっ.....うん。まぁ.....」

 

 

天竜に見つけられる十兵衛。完全に引いている。

 

 

「またな良晴!私達は一度、

山城に寄るそうだ!次は中国でな!」

 

「おっ.....おう!」

 

 

気軽に返したが、良晴は天竜について考える。

さっきの格闘術といい、

陰陽術といい、未来人離れもとい、

明らかに人間離れしている。

そして、『安土城の変』にて天竜先生は多くの足軽を斬り殺したという。信奈はさほど気にしていなかったが、それは同じ未来人としては異常な出来事だ。

彼がこの時代に来てからの3年間.....

一体何が彼を変えてしまったのだろうか.....

良晴は自分から離れて行く天竜や十兵衛を見つめながら思った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その頃安土城にて.....

 

「やっと静かになったわね」

 

「今日はうるさ過ぎです!

特にあの天竜という男は零点です!」

 

「あんた本当にシロの事嫌ってるわねぇ」

 

「姫さまがお人好しなだけです」

 

 

苦笑いしながら半分冷めた名古屋コーチンを口にする信奈。

 

 

「ところでお決めになられたのですか?若狭の大名は?」

 

「えぇ。最近ゴタゴタしてたけどなんとかね」

 

「まさか!あの天竜という男では!?」

 

「そんなわけないでしょ!

ほら、あの子よ。

ずっと独立したがってたでしょ」

 

「彼女ですか.....

むぅ判断しがたいですね五十点です」

 

「大丈夫大丈夫!

私の判断なんだから.....梅千代!」

 

「はい信奈様」

 

「すぐに摂津に使者を出して。

『あんたを特別に若狭の大名にしてあげるわ喜びなさい』ってね」

 

「ははっ!.....してどなたに?」

 

 

 

 

 

 

信奈は窓の外の美しく見える夕日を眺めながら言い放つ。

 

 

「若狭の大名は弥助.....荒木村重に任せるわ!」

 

 

 

 

 

この信奈の判断が織田家を揺るがす事態に繋がろうとは、この場にいた誰にも想像出来なかった。

 




始めの方の文は天竜の未来での出来事を彼の視点で書いたものです。今後も続けますが、興味のない方は読み飛ばしても結構です。ですが時々、この文の中にこの時代での天竜の思いを密かに紛れ込ませている事もあります。読まなくても本文は理解できますが、興味を持ったなら読んでみて下さい。中には、天竜だけでなく、私個人の想いも含まれているかもしれません。長い文章拝読ありがとうございました。
次回予告
「丹波平定!
~明智家臣団ども、私に平伏すがよい!~

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