天翔ける龍の伝記   作:瀧龍騎

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すみません!本当ならばもっと早くに投稿できた
のですが、失敗して消滅してしまったため、
急遽書き直してました。少し質が落ちている
かもしれませんが、ご了承下さい。


第十七話 天竜と旧友

「あふんっ♡」

 

「...........」

 

「やんっ♡」

 

「..........」

 

「気持ちいいです天竜様♡」

 

 

 

 

 

 

 

 

「変な声出してんじゃねぇよ!!」

 

 

 

興福寺、順慶宅。

紀伊での南蛮蹴鞠大会での話を彼女にすると、ずるいずるいと喚いたため、特別サービスとして耳掃除してやる事に。今になって後悔している。

 

 

「ちっ.....女は耳掃除すると皆こんな反応するのか?」

 

「そういえば.....孫市さんにも耳掃除されたんですねぇ」

 

「まぁな」

 

「どんな感じでしたぁ?」

 

「うっ.....」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「はんっ♡天竜はんのが入ってるぅ!♡」

 

「..........」

 

「やぁ!♡もっと突いったってぇ♡

 

体がよじれてまうぅぅぅ♡

 

奥に♡奥に♡奥に当たるぅぅぅ♡」

 

逝くっ!♡逝ってまうぅぅぅ!!♡

 

はあああぁぁぁぁぁぁん♡♡♡♡」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「うるせぇ!!!」

 

 

バシンッと孫市の頭にチョップを食わす天竜。もちろん耳掃除だ。途中で孫市がふざけ始めたため、我慢の限界に達した天竜である。

 

 

「もう止めだ止めだ!やってられねぇ!」

 

「ただの冗談やん。もっとやったってぇや」

 

「だめだ。お前は俺を男として見てないんじゃないか?」

 

「ん?天竜はんはうちを女と見てくれるのかいな」

 

「俺が見ないとでも?」

 

「助平やな」

 

 

己の膝に女性の頭を乗せ、この会話である。

 

 

「さっき連絡あったで」

 

「何っ!?」

 

「雨陰千重洲陀の完全な複製に成功したそうや。これからドンドン量産するそうや」

 

「よしっ!よしっ!思ってたより早いぞ!同時進行でこれも頼む!」

 

 

天竜は懐からS&Wを取り出して彼女に見せる。

 

 

「天竜はんの考えは読めんわ」

 

「報酬は何でも出そう!言ってくれ!」

 

「じゃあ天竜はんには、うちの旦那になってもらうしかないな!」

 

「いいぜ」

 

「な~んちゃっ.........................え?

 

..........ええええええぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!?」

 

「何を驚く?お前から言ったんだろう?」

 

「いや、良晴はんみたく断られるかと.....」

 

「それはあいつに見る目がないだけだろう。俺はお前みたいな可愛い子は見逃さないがな」

 

 

可愛いといわれ、顔が真っ赤になる孫市。おそらく初めてなのだろう。

 

 

「うちの何処かがええんや?

やっぱ尻か!うちの美尻か!」

 

「綺麗な形ではあるが、別に尻は.....俺は内面がかな」

 

「内面?」

 

「一緒にいて退屈しない。むしろ楽しい」

 

「う~!なんか信用できひん!

うちと結婚したいなら証拠見せてみい!」

 

 

いつ立場が変わった?

 

 

「それ次第で結婚してやらんでも..........んっ!?」

 

 

天竜は孫市の頭を膝に乗せたままで彼女の唇を奪う。

 

 

「勘違いすんな。俺がお前を貰ってやるんだ。感謝しろ」

 

「..........」

 

「ただし側室までな。正室は埋まってるから」

 

「...........」

 

「お前にやってもらいたい事がある。結婚の条件だ」

 

「条件?」

 

「孫市。お前達雑賀衆はいつまで傭兵でいるつもりだ?」

 

「いつまでって.....」

 

「紀伊で特に戦力を持っているにも関わらず、下につく事しかせずに、紀伊を放置している」

 

「それは.....」

 

「大名という王がいないせいで中途半端な力を持った国人らが各地を支配し、税率もバラバラ。無法地帯となっている」

 

「..........」

 

 

普段は歩くスピーカーの孫市も、キスに動揺してしまい、会話の主導権を取られてしまっている。

 

 

「それらを変えられるのは雑賀衆だけだ。俺はそう思ってる」

 

「うっ.....うちは!」

 

 

孫市は起き上がって天竜に抗議しようとするが.....

 

 

「俺が娶りたいのは聞き分けのいい妻だ。お前はただ首を縦に振るがいい」

 

「..........」

 

「いいな孫市。...........やれ」

 

「..........」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「死にさらせ~!!」

 

「何っ!?」

 

 

ドーーーーンッ!!

 

 

孫市が突然八咫烏を取り出し、天竜に向かって発砲したのだ。

 

 

「ぐわぁっ!」

 

 

その勢いで真後ろに吹っ飛び、壁に激突する天竜。

 

 

「痛っ!」

 

「やっぱ死なんやな。納得」

 

「おっ.....俺を殺そうとしたのか!?」

 

「ちゃうよ?うちの旦那になるのは鉄砲で死なん屈強な男って判断しとるからな!」

 

「..........」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

防弾チョッキ着ててよかったぁ。

着ているとはいえ、至近距離で撃たれればかなりの衝撃とダメージだ。

 

 

「これが孫市節か。参ったよ」

 

「天竜はん?」

 

 

天竜は孫市に近づき頭を撫でてやる。

 

 

「改めて頼む。お前しかいないんだ」

 

 

それを聞いて孫市がパァーと明るくなる。

 

 

「任せとき!そっちも宴の準備は任せるで!」

 

「信貴山城で盛大なやつを開いてやるよ」

 

 

そうして2人は再び口付けをした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして5日後。話は興福寺に戻る。

 

 

「で、さっき使者さんが来たんですかぁ?」

 

「うっ.....うん。4日で丹波を落とした俺が言うのもあれだが.....」

 

 

まさか5日で紀伊が統一されるとは思っていなかった。

 

 

だが半分は順慶が終わらせたようなものだった。紀伊のもう一つの巨大勢力は根来寺。順慶が交渉中だった組織だ。興福寺側がいくら交渉しても、見てももらえなかった。だが、天竜が雑賀衆と同盟を組んだ事で、根来寺の勢いが萎えたのだ。その隙をついて、順慶は一気に強気に出て、交渉を続けたのだ。それにて、大和と根来寺の不戦条約を確立。高野山とも同様の規約を結んだのだ。同時に、重要人物の引き抜きも行っていたという。自分達がサッカーで遊んでいた間にそこまでの事を熟していたかと思うと、頭が上がらない。

そんな穴あきチーズのような根来寺に雑賀衆が敵対したのだ。紀伊最大の戦闘組織が攻めてきたとなれば、手も足も出ずに、直様白旗を挙げたという。

国人らもだ。打倒天竜を叫び、一部の秀でた国人同志が同盟を組んだりもしていたが、国人のなかには雑賀衆も混じっている。そこから仲間割れが生じ、ただの烏合の衆となってしまった。抵抗はしたが、極短時間で鎮圧されたという。

ここに姫大名、雑賀孫市が誕生したのだった。

 

 

「これで孫市さんは紀伊の大名ですかぁ

.....................はっ!?」

 

「気づいたか藤勝」

 

「天竜様は悪魔のようですね」

 

 

まぁ、魔王の子孫だし.....

 

 

このための結婚なのだ。いわゆる政略結婚だ。面倒な紀伊の統一事業を全部孫市に任せ、孫市を妻にする事で紀伊国を結納品として頂く算段である。本当に悪魔のような手法だ。

 

 

「でも孫市さんが素直に紀伊国を渡してくれるでしょうかぁ?」

 

「俺が結婚してやるんだ。渡さない訳ないじゃないか」

 

「まぁ、自信たっぷり」

 

「お前も結婚してみるか藤勝?」

 

「お断りしまぁす。天竜様の妻になったら命がいくらあっても足りません。愛人で充分でぇす」

 

 

愛人はいいんだ.....

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「紀伊国?ええよ!」

 

 

やっぱりくれた。彼女は大名としてより、天竜の妻となる事に満足しているようだ。

 

 

「この南蛮風の婚儀装束ええなぁ!

これは絹か?」

 

「シルクだ。特別に用意してやった」

 

 

孫市が未来風の結婚がしたいと言ったので、ウェディングドレスだけ用意してやった。

 

 

「シロ!!言いたい事は分かってる!!?」

 

「天竜!!これは私への侮辱ですか!!」

 

 

上司という事で信奈と十兵衛も来た。2人とも激怒している。

 

 

「おやおや。十兵衛の為に正室の席は用意してるよ?」

 

「いらないです!!(怒)」

 

 

散々モーションかけてきた男が急に結婚したら誰でも怒るだろう。

 

 

「そんな事より!!私は紀伊を侵略で手に入れろと命じたはず!それが何で孫市との結婚に繋がるのよ!!」

 

 

無理矢理の侵略であれば、雑賀衆や根来寺に阻まれ、天竜を足止め出来ると考えていたからだ。

 

 

「戦闘を最小限に留められたのだ。紀伊の戦力をまるごと手に入れられるという非常に崇高なやり方です。偉い方には分からないでしょうね」

 

「なっ!なんですって!?」

 

「そうだ!これで私は羽柴・明智軍に従軍できる命令を貰えるのですね?」

 

「わっ.....私は.....!!」

 

「貰えるのですね!!」

 

「..........!?」

 

 

この男.....

 

 

「...................わよ」

 

「おや?聞こえませんよ?」

 

「いいわよ!!

自由に毛利攻めしなさいよ!!」

 

「ふん。それでいい」

 

 

天竜はもう猫被りな態度は取ってない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その後、安土城に戻った信奈は畳にドンドンと怒りをぶつけていた。

 

 

「あぁ!!本当にムカつくわねあの男!!」

 

「だから言っていたでしょう。あの男は危険だと」

 

 

長秀が言う。

 

 

「ふん。私の誕生日にあのシロに抱かれたくせに、よく言うわ!」

 

 

相当きている。

 

 

「なっ!?私は抱かれてません!!

たとえ酔っていても私は断固として拒否するはずです!!....................たぶん」

 

 

「丹羽長秀は羽柴天竜に抱かれた」

という噂が近畿中を流れまくっていた。おかげで長秀の悪評は集まるばかりだった。今までが清楚なイメージだったために、このスキャンダル一つで一気に崩れ落ちてしまった。

「非処女・不純・淫乱」など散々である。

 

.....まぁ、噂を流した張本人は天竜であるが。

 

唯一酔ってなかった良晴に聞いてみたが.....

 

 

「すいません。止めようとしたけど、酔っ払った天竜さんに殴られて朝まで気絶してました」

 

 

結局真相は謎のままである。

 

 

「あいつのせいで外も出られないんですよ!!!零点以下です!!!」

 

 

彼女には珍しく激怒している。

 

 

「あんたも苦労してるのね。早くなんか対処しないとドンドン被害者が増えるわ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「では、やられる前にやりますか?」

 

「ひっ!?」

 

 

「やる」という言葉に何やら恐怖する長秀。だがそんな事はどうでもいい。

ある女の声が天井裏からし、その声の主が降りてくる。

 

 

「凪!!戻ってきたの!?」

 

「はい。早急に伝えたい事があったもので.....」

 

「伝えたい事って?」

 

「秀長殿は毛利方と繋がっています」

 

「!!!?」

 

「それだけではありません。仏教徒を操って各地で大規模な一揆を起こす可能性もあります」

 

「なんで仏教徒!?」

 

「信奈様は仏教徒の秀長殿への評価をご存知ですか?」

 

 

知っての通り、仏教徒は信奈を恨んでいる。色々あるが、原因は信奈の「廃仏毀釈」とも言える野蛮な行動だ。安土城の建築材料として、貴重な仏像ら没収し、砕いて木材や石材にしている。それに対し、興福寺や延暦寺は苦虫を噛み潰す思いをしただろう。そして、降伏した根来寺に対しても信奈は同様の支配体制を敷こうとしたのだ。そんな経験のない根来寺衆は今にも暴動起こす勢いだった。そこに仲裁に立ったのが天竜だ。彼は、元国人らが所有していた空城をいくつか所有していたので、その一部を解体し、材料に充てたのだ。お陰で、天竜はその浪費を代償に、仏教徒からの絶対的な支持を得たのだ。それは市民にも伝わり、すっかり彼は英雄になってしまった。

 

 

「うぅ.....私は批評ばかり溜まるのに、何で彼は英雄なんでしょうか?」

 

 

長秀が嘆いている。

 

 

「仏教徒は秀長殿こそ天下人に相応しいと叫んでるようですね」

 

「そんな.....」

 

「もし、仏教徒が秀長殿を擁立したら?

逆に秀長殿が仏教徒を利用したら?

秀長殿の軍と仏教徒の連合軍に勝てる自信はお有りですか?」

 

「..........何が言いたいの?」

 

「暗殺の準備は出来ております」

 

「暗殺!?まだ何もやってないのに!?」

 

「何かやられてからでは遅いのです!やらずに後悔するのなら今こそ!!」

 

「私も賛成です姫さま!

ついでに私の悪評も削いで貰いましょう!」

 

 

信奈はよくよく考えた末、

 

 

「......................条件があるわ」

 

「はい」

 

「彼の妹のねねと秀俊。

そして特に弟の良晴にはバレないようにして!お願い!」

 

「承知!」

 

 

そう答えて凪は出て行った。その瞬間、信奈に大きな後悔が襲ってきた。

 

 

「こんな事.....良晴達にバレたら殺されるわね」

 

「姫さま.....」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

播磨、姫路城。

 

 

「いや~!まさか天竜さんが結婚するなんてなぁ」

 

 

信奈達の陰謀など知りもしない良晴は、素直に天竜の再婚に感心していた。彼自身、詳しく知りもせずに天竜の妻の事を十兵衛に話してしまった事を気にしていたのだ。

 

 

「にしても孫市姉さんとか~。

いつから付き合ってたの?」

 

「付き合ってないけど.....」

 

「は?交際0年で結婚ってあり得るの!?」

 

「この時代じゃあ珍しくないだろう」

 

 

政略結婚だし。

 

 

「ちっ......!」

 

「十兵衛ちゃん.....」

 

 

十兵衛が舌打ちをする。心の片隅でも惚れてる男の馴れ初めなど聞けば、腹が立つだろう。

 

良晴自身、天竜が十兵衛にモーションをかけている事は知っていた。それに対し、十兵衛が満更でもない事も.....

良晴はもう信奈一筋と決めているので、十兵衛が別の恋を見つけた事にホッとしていた。

 

 

「先輩は私がこんな男に取られてもいいんですか!?だから私を貰って下さい!!」

 

 

そうでもなかった。

 

 

「見込みのない男と逆に求めてくる男。どちらと結婚するのが特か君なら分かるだろう?」

 

「うるさいです!孫市と結婚したなら奴と乳繰りあってればいいんです!!」

 

「そうか~。十兵衛は嫉妬してるんだなぁ」

 

「だっ.....だだだだ誰が嫉妬なんか!!」

 

「可愛いな十兵衛は!」

 

「うるさ~い!!

...........ふん!私と先輩は口付けは済ませました!だからお前が付け入る隙なんてないですぅ!」

 

「それは本当か良晴!」

 

「うん。とりあえず十兵衛ちゃん黙って」

 

「ふん。なら!」

 

 

 

 

ズキュュュュュュュュュン!!!

 

 

そうして天竜は十兵衛にキスをする。

 

 

「~!!!!!!!!?」

 

 

顔を紅のように真っ赤にした十兵衛はその場に倒れてしまった。

 

 

「ちょっ.....天竜さん!?」

 

「良晴はもう、信奈以外はいいんだろう?」

 

「う~ん。ちょっと後悔...........じゃない!!俺はもう信奈しか求めない!!............う~ん」

 

「なら俺は信奈以外の全員を貰ってハーレムを作るとしよう!」

 

「そんなぁ~!!」

 

「冗談だ」

 

 

全然冗談に聞こえない。実質、天竜さんが1番秀吉に近いかもしれない.....

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あの~いいですか?」

 

 

そんな3人のゴタゴタの中に1人の少女が現れる。良晴は、その子に認識があった。

 

 

「弥九郎!!?」

 

「お久しぶりです良晴さん」

 

 

備前・美作の大名、宇喜多直家の娘である秀家に仕えている。堺商人、小西ジョウチンの娘だ。

 

 

「どうしたんだよ一体.....」

 

「直家様からの密書を預かって参りました」

 

「直家から!?」

 

 

 

 

密書にはこう書いてあった。

 

『羽柴良晴秀吉

黒田官兵衛孝高

羽柴天竜秀長

以上3名に備前、岡山城まで来て欲しい。

毛利方にバレぬよう、旅籠を用意させたので安心してほしい』

 

今まで多くの人を謀殺してきた男に安心してくれと言われても信用できないが.....

 

 

「なんで天竜さんの名前が入ってんだよ!?」

 

 

そんな良晴の叫びも届かぬ所で。

 

 

「久しいな弥九郎!もう問題は起こしてないだろうな!」

 

「もう!堺での事は忘れて下さい!」

 

 

天竜が弥九郎の頭を撫で、それを恥ずかしそうにしている。後から官兵衛に聞いたが、弥九郎が備前の方に逃げて来たのは堺で問題を起こしたからなのだとか。それに天竜が関わっていたとは.....

 

 

「どうゆうこと天竜さん??」

 

「あぁ。俺が宇喜多家の客将だった頃からの知り合いなんだ」

 

「..........................え?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

備前、岡山城。

 

 

「おぉ!!久しぶりじゃねぇか天竜!!」

 

「そっちこそな直家」

 

 

会って早々、旧友のような挨拶を交わす2人。

 

 

「お前さえ残ってくれりゃあ、毛利共にへこへこ頭下げる事なんてなかったのによう!よりによって織田なんかに付きやがって!」

 

「俺にだってやることはあるんだ」

 

 

どうやらほんの少し前まで天竜は宇喜多家に厄介になってたらしい。織田と毛利の対立が起きる前に離れたとか.....

 

 

「シム。どうやら彼の悪どさは宇喜多直家の受け入りだったようだね」

 

「私も初耳でした」

 

 

官兵衛や、天竜の付き添いでついて来た三成が言う。

 

 

「おぉ、官兵衛!足はもう大丈夫か?」

 

 

彼自身、心残りにしていたらしい。

 

 

「誰かさんのせいで、木の棒のようになってたけど、今はこの通りだよ」

 

 

官兵衛は健康な足を見せる。

 

 

「うぅ.....すまねぇな」

 

「む?」

 

 

人に謝る直家に違和感を覚える官兵衛。

 

 

「今日はどうしたんだよ直家」

 

「あん?羽柴良晴かよ.....なんで来てんだ?」

 

「はぁぁぁ!?お前が呼んだんだろ!!」

 

「はっ、冗談だよ。

お前ら飯食ってけ。そろそろ昼だろ」

 

「シム。確実に何か入ってるね」

 

 

普段の行いが悪いと何においても信用されない。

 

 

「その前に先生に挨拶して来てもいいか?」

 

「ん?あぁ。行ってこい」

 

 

天竜が言う。

 

 

「天竜さんの先生って.....」

 

「あぁ」

 

 

 

 

 

 

「塚原卜伝先生だ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「お久しぶりです先生」

 

「..........」

 

「ここは涼しく過ごしやすそうですね」

 

 

返答は無かったが、天竜は続けた。

 

 

「先生に教わった剣術と.....人生について。先生はまだ未熟だって怒るでしょうが、これでも成長したんですよ」

 

「..........」

 

「貴方は私にとって最高の教育者でした」

 

 

涙を流す天竜。後ろの良晴、官兵衛、三成の3人は唖然とし、弥九郎と直家は思いつめた表情をしている。

 

 

 

 

天竜が話かけていたのは卜伝の墓石だったからだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

墓石があった寺から城に戻る途中の事。

 

 

「落ち着いたら墓を鹿島に移そうと思ってる。今あそこの支配してるのは佐竹家だっけ?気楽に行けねぇだろ?」

 

「.....うん」

 

「俺の実父が糞みてぇだったからなぁ.....先生が俺の第2の親だったなぁ。学べる事はいっぱいあった。お前にも会わせたかったぜ」

 

「.....うん」

 

 

卜伝は、天竜との武者修行にて各地を回っていた。

(因みにこの時寄った堺で弥九郎と出会う)

ところが、中国地方に入る辺りで調子を悪くし、備前で落ち着いた時には、起き上がる事もできなかったという。卜伝の療養中は直家の下で働いていたのだとか。

 

 

「だけど、先生はそのまま.....」

 

「天竜様は卜伝殿が亡くなられて備前を離れたのですか?」

 

 

三成が聞く。

 

 

「あぁ」

 

「..........」

 

 

良晴は思った。天竜の恩師は既に死んでいた。天竜は今でも彼を尊敬している。もし、天竜が死んでしまったら、自分は何を思うのだろうと思いつめてしまったのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

食事の席にて。

そこには秀家も出席していた。

 

 

「俺は毛利方と手を切ろうと思ってる」

 

「「なっ!?」」

 

 

驚いたのは官兵衛と三成。天竜と良晴はそれを知っていた為、さほど驚きはしなかった。

 

 

「だが、問題はそこじゃねぇ。今、毛利方は上月城に集まってる」

 

「「そうか!宇喜多軍と羽柴・明智軍で挟み撃ちに出来る!」」

 

 

三成と官兵衛が同時に気づく。

 

 

「三木城はどうするんだ?お前が発端だろ?」

 

「あぁ、三木城はお前らで片付けろ。火は付けたが、消すのは俺にゃあ無理だ。別所は完全に織田に敵対してる。兵糧攻めを続ければ落とせるだろう」

 

「シム。それは無理だね。誰かさんが敵に塩を送るせいで、いつまでたっても堅城のままだ」

 

 

それを聞いて天竜が良晴をジロリと睨む。

 

 

「それとだ。天竜。個別で話す事があるから後で俺の部屋に来い」

 

「あぁ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「まぁ、飲め!」

 

 

直家は天竜の湯呑になみなみと酒を注ぐ。

 

 

「秀家はお前を兄のように慕ってたからなぁ。会えると聞いて喜んでたぞ?」

 

「そうか.....」

 

「でも、死んでも秀家はやらねぇからな!」

 

「分かってるよ」

 

「しかし、あの羽柴良晴が来る事にまで喜んでたなぁ.....くくくく。あいつ暗殺してやろうか?」

 

「.....直家」

 

「ん?」

 

「今日はよく喋るな?」

 

「...........まぁな」

 

 

天竜はゆっくりと湯呑を床に置く。

 

 

「もう...........長くねぇんだろ?」

 

「..........」

 

 

直家は他の者の前では机上に振舞っていたが、直家の顔色は青白く変色し、肉質も良くなく、窶れていた。くまも目立ち、この異変に気付いていた者が他にもいたかもしれない。

 

 

「俺はどうなっちまうんだろうな」

 

「尻はす」

 

「ん?」

 

「大腸や直腸で悪性の腫瘍が増殖し、人体を死にいたらしめる、不治の病だ。通称は『癌』。お前の血便はそのためだよ」

 

「なっ.....何でお前が俺の病に詳しいんだよ!?」

 

「陰陽術と医術の混合。術をかけた癌細胞を人体に意図的に摂取させ、術師の思い通りに操る秘術」

 

「なっ.....」

 

 

そうして天竜の表情が一変する。

それは直家すらも身震いする程、凶悪な顔に。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「1年前にお前に癌を植え付けたのは俺だ」

 

「なっ.....!!!?」

 

 

直家は慌てて立ち上がる。

 

 

「お前にはこの時期に死んでもらわなきゃいけねぇんだよ。なのに予知しても、どうにもお前は健康のままだ。だから.....」

 

 

天竜もゆっくりと立ち上がる。

 

 

「俺が歴史の帳尻を合わせた」

 

「っ.....!!」

 

 

そうしてついに直家が爆発した。

 

 

「天竜ぅぅぅぅぅぅっっ!!!!!!!!」

 

 

直家は懐から短筒を取り出して天竜に向けようとする。だが、彼は足を振り上げ、それを跳ね飛ばす。

 

 

「手前ぇぇぇぇぇ!!!!!!」

 

 

続いて直家は小太刀を取り出す。

そうして天竜の左手を突き破った。...........だが、

 

 

「あぐっ!!?」

 

 

直家が突然吐血し、それ以上は進まなかった。

 

 

「癌細胞を肺に増殖させた。息がしづらくて辛かろう」

 

「てっ.....手前ぇぇ.....」

 

 

天竜は傷付いた己の手の平を見る。

 

 

「この傷はお前だ直家。傷として俺と共に生涯生きるがいい」

 

「ちっ.....くしょう......」

 

 

直家はその場に仰向けに倒れこんだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「これは.....遺言状か?」

 

 

机に置いてあった書状を見つける。

 

 

「それは.....それだけは.....」

 

 

必死に手を伸ばすが、直家の思いは伝わらない。

 

 

 

『宇喜多家の家督は秀家に譲る。

だが、秀家はまだ幼少だ。そのため、秀家が成長するまでは備前・美作を俺が信用する、別の者に任せる事にする。

その相手とは.....』

 

 

 

「ほう。面白いな」

 

 

 

 

 

 

『その相手とは、羽柴良晴である』

 

 

 

「くくくく。そこまであいつに浸透したか。お前にしては珍しい」

 

「くっ.....くそ.....」

 

 

天竜は遺言状に呪文をかけた。

すると、記載されていた「羽柴良晴」の名が、なんと「羽柴天竜」に変わってしまったのだ。

 

 

「なっ!?」

 

「これでこの国と秀家は俺のものだ」

 

「天竜ぅぅぅぅぅっ!!!!!」

 

「うひゃひゃひゃひゃひゃひゃ!!!!」

 

 

その甲高い笑い声を聞いて直家はある事を思い出す。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「は?笑い方と『姫武将殺し』を教えろだぁ?」

 

「あぁ。1番相手を馬鹿に出来る笑い声はお前が1番だからな」

 

「あのなぁ。剣術や射撃なら兎も角、笑い方って.....それに『姫武将殺し』」

 

「男なら女を口説きてぇもんだろ?」

 

「うひゃひゃひゃひゃひゃ!!!

やっぱお前面白れぇや!

いったい誰を口説くんだよ?」

 

「姫巫女様」

 

「は!?」

 

「冗談だよ」

 

「脅かすんじゃねぇよ.....」

 

「秀家だ」

 

「手前ぇ殺すぞっ!!」

 

「くすっ。冗談だよ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「手前ぇぇ.....秀家だけは.....秀家だけは.....」

 

「安心しろ。あの子だけは悪いようにしない。ちゃんと守ってやる」

 

「うぅ...........」

 

 

直家は立ち去ろうとする天竜に向かって、意地でがんを飛ばす。

 

 

「天竜ぅぅぅ.....俺らは悪だ.....どうしようもない程にな.....」

 

「...........」

 

「だが、悪は絶対に報われねぇ.....

碌な死に方しねぇ.....

天竜.....お前もな!」

 

 

天竜がパチンッと指を弾くと、直家の腹部からブチンッという嫌な破裂音がし、そうして大量の血便が流れ出した。

 

 

「ぐがっ...........!!?

..........あばよ悪友.....

先に.....地獄で待ってるぜ.....」

 

 

そうしてそのまま直家はこときれた。天竜は直家のもとに近寄り、開いたままの彼の目蓋を閉じた。

 

 

「天国逝きを願うぜ.....悪友」

 

 

天竜はスクッと立ち上がる。

 

 

「アマテラス.....いいな」

 

『心配せんでも、宇喜多直家の魂はわっちの作った黄泉.....天国へ送り届けるでありんす』

 

「ならいい」

 

 

天竜は廊下に出る。

 

 

「誰か!!誰か来てくれ!!」

 

 

その大声に反応し、良晴達が駆け寄ってくる。

 

 

直家よ.....俺はまだまだ止まれねぇんだよ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「計画通りにな、村上武吉」

 

「あぁ」

 

 

 




孫市との結婚。皆さんは想像できましたか?
さらにそこから、信奈側との完全対立。
彼はいったいどうなるのか!?
次回予告
天竜危機一髪
~彼の命を狙う黒い影~

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