天翔ける龍の伝記   作:瀧龍騎

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また題名変更しました。時間を空けちゃうと、書きたい内容も変わってしまいますからね。


第九十六話 対馬開戦

対馬が明に占領された。対馬は長崎県に属する島。廃国置県(言わば廃藩置県。しかし藩はない為、こういう名称をしている)されてからは『厳原県』と改称され、その後、『伊万里県』や『三潴県』との間を転々し、最終的に長崎県に参入された県。それが奪われた。本土から目と鼻の先である。これはつまり、本土を効率よく攻撃できるチャンスを明に与えてしまったということなのだ。

 

 

「おい.........何やってんだよ」

 

「何が?」

 

「何がじゃねぇよ!対馬が取られたって.....それ本気で言ってるのか!?」

 

「あぁ」

 

「じゃあ何でそんな呑気でいられるんだ!対馬が取られたなんて異常事態を!これでいつ明が攻めてくるか分からないんだぞ!?」

 

「別に対馬が奪われることなど珍しくもない。鎌倉時代、文永の役、弘安の役が起こった元寇では最大の戦地だ。神風のお蔭で元軍及び属国の高麗軍を追い払えたものの、その際には一時的にでも対馬が占領されたと言っても過言ではない」

 

「今は日本史などどうでもいい!すぐにでも兵を出すべきだ!隆景に声をかけ、海軍を出動させる!」

 

「待て。勝手な真似は許さん」

 

「ふざけるなっ!!自国を守る為に抗って何が悪い!!人の心を持たぬクズは消えていろ!!」

 

「はぁ〜............あのなぁ、良晴」

 

 

天龍は大きく溜息を吐いて言う。

 

 

 

「俺が安安と対馬を取られると思うか?」

 

 

 

「はぁ!?だって対馬は明にもう.....」

 

「おい義智!」

 

「はっ!」

 

 

天龍に呼ばれ、若い青年が現れる。

 

 

「宗義智(そうよしとし)に御座います」

 

「そ、宗って.....」

 

「宗義智。宗家の20代目当主。元対馬の領主だ」

 

 

知ってる。宗家は 12世紀頃に対馬国の在庁官人として台頭し始め、現地最大の勢力阿比留氏を滅ぼし、対馬国全土を手中に収めた頃から、対馬にて長い歴史を持つ一族だ。しかも宗義智は、対馬国の大名だけではなく、本来ならば江戸幕府の対馬藩藩主となっていたはずだ。しかし版籍奉還の影響でその権利を失い、元大名として江戸に来ていた。今は華族令により、伯爵の地位を得ている。

 

 

「対馬の民の移動は既に済んでいます。必要な物資も既に移動済み。閣下の指示通り、三月前から実施し、明軍占領の前には完了しています」

 

「よろしい。計画通りだ」

 

「まっ、待てよ。それって」

 

 

まるで明軍の対馬占領を予期していたかのようだ。

 

 

「そうだよ。あえて明軍を誘い込んだんだ。無人になった対馬へな」

 

「ど、どうして?」

 

「一箇所に固める為だ。敵対する明の軍船は今までずっと日本海や東シナ海を転々と巡っていた。だがだ。この俺様と海軍中将の九鬼嘉隆と小早川隆景の包囲作戦によって明の軍船軍を一箇所にて捕らえることができた。対馬という鳥籠を使ってな」

 

「海軍大臣俺なんだけど!?」

 

「陛下に統帥権借りちゃいました♡」

 

 

 

 

関白軍太閤軍間の東西戦争が勃発する直前に何者かによって誘拐された方仁こと今上天皇。終戦後、両軍が総動員する事によって日本中を捜索。仮に国外へ連れ出されたとなると捜索は難航。もし殺されたとなれば、国の一大事となる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

結果から言ってしまえば、彼女は見つけられた。九州筑前のとある民家にて発見される。犯人は男女10数名の※クリスチャンのだった。

※(サタン教発足後、キリスト教から改宗しようとしない者らとサタン教キリシタンとを区別する為)

 

かなり衰弱はしていたが彼女は無事保護。命に別状はなかった。その後の尋問、拷問によって計画の立案者を吐かせようとするものの、誰一人として自白する者はいなく、7日もしないうちに全員死亡。死因は原因不明の心臓麻痺。真実は謎に包まれた。

天龍が御所にて見つけたというフランシスコ会の十字架。この誘拐事件にザビエル一味が加わっているかは、未だ解らず終い。俺があの日抱いた彼女は一体何者だったのかも.....

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「統帥権、奪ったの間違いじゃ.....」

 

「失敬だな。ちゃんと陛下直々に許可を頂いたぞ?ただ、他の誰にも邪魔されない2人きりの場所でコッソリ頂いただけだ。陛下には説明だけして、特にあの方自身の意見は聞いてないがな」

 

「ほとんど強奪じゃねぇか!」

 

 

太閤時代と一切変わってねぇ。

 

 

「こんなの.....史実の戦前の軍部と同じだろ。今から軍部が天皇を支配してるようじゃ、この国の未来も真っ暗だな」

 

「おい、陛下ぐらい付けろ。彼女を呼び捨てとはいい度胸だな」

 

「あん?お前だってプライベートじゃあ、彼女のこと方仁って.....」

 

 

天龍のその何気ない台詞がただの軽いツッコミだと思っていた良晴は、同じく軽くあしらう気で返すが、振り返って見た彼の視線は至極殺気の篭ったものであったのだ。

 

 

「俺はともかくとして、貴様如きが陛下を軽く見るな。虫唾が走る。貴様ら庶民共は陛下からは遥か下の分類であることを忘れるな」

 

 

まるで自分は彼女らと同じ位に位置する存在のような発言。いや、事実そうなのだろう。彼は正真正銘、神から生まれた存在。同じく神の子たる天皇と同格。それ以上と取っても過言ではない。

 

それに天龍は方仁を、『彼女の人柄を敬え』ではなく、『天皇という、彼女の血筋に敬え』と言っているかのような。

 

右翼だとか愛国主義だとかの茶地な思想ではなく、それのみによって突き動かされているような.....そう、まるでロボットだ。

 

 

「すっ、すまん!口が過ぎた。俺が悪かったよ」

 

「分かってくれるならいいさ。俺も感情的だったようだ。考えてみれば、お前も俺と同じような存在だしな」

 

(.....同じような存在、か)

 

 

天龍はまた朗らかになる。アマテラスが言った通り、彼は正常ではなくなっているのかもしれない。

 

 

 

そして、この俺も.....

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「話、続けて下さいです」

 

 

天龍と良晴が喧嘩腰になってしまった事によって、説明のタイミングを失ってしまった義智がオロオロしていると、それを見兼ねた十兵衛が話を戻す。

 

 

「はっ、はい!此度の対馬作戦においてですが、曲名瀬軍医総監によれば、新兵器の実験へと活用するとの事ですが.....」

 

「あぁ、玄朔から聞いてるよ」

 

「確か官兵衛も関わってなかったっけその新兵器。何て名前なんだ?」

 

「正式名称、

Mobile Action Grace Active Robot Aero‐type。

通称『MAGARA』です」

 

 

義智が淡々と答えた。

 

 

「...........は?」

 

「『MA・GA・RA』です」

 

「聞こえてるよっ!マガラってアレだろ!?真柄ちゃんだろ!?何だよ、ついにロボットになっちゃったのか!?」

 

「厳密にはサイボーグだ。より使い易く、より強い個体を求めた結果完成してしまったのだ。当初としては量産も計画していたが、何分コストが高くてな。まだまだ改良の余地がありそうだ」

 

「そんなのどうだっていいよ!!てか、官兵衛からも聞いてないよ!?」

 

「そりゃそうだ。吸血鬼に関する資料を渡したことを条件に買収したんだから。こっちには利休もいるしな」

 

 

あんのマッドサイエンティストめ!

 

 

「それはともかくとして、だ。良晴、お前も見に来るか?」

 

「見に来るって?」

 

「いや、一応改良したマガラの性能を見ときたくてな。俺等も対馬に行くんだよ。お前も来るか?」

 

「............行く」

 

「よし。じゃあのんびりもしてられん。さっさと出発だ」

 

 

天龍が会議を終わらせて対馬へ発とうとするが。

 

 

「ちょっと待つです天龍!今日は会議が終わったら暇になるから"子龍"と遊んでくれるという約束はどうなりましたですか!?」

 

「あ~、ごめん。仕事入っちゃったわ」

 

「そんな!?天龍は明との戦争と実の息子、どっちが大事なんデスか!!」

 

「勿論君達家族さ。だからこそ戦争に勝って君達を守らなければならない。だから戦争に行ってくるわ」

 

「ムッキ〜〜!!そんな格好付けたところで、ただの屁理屈なのはとっくにお見通しなんですからね!!子龍が父親の顔を忘れても知らないデスから!!」

 

「分かった分かった。帰ったらいっぱい遊んでやるから。それまで待っててちょ」

 

「絶対デスからね!また破ったら今度こそ離婚デス!!」

 

「へいへい」

 

 

いつも通りの2人を見た気がする。夫婦生活ももう4年になるが彼女らはいつも変わらない。あるとすれば家族が増えたことだろうか。

 

勘解由小路子龍(しりゅう)。

 

天龍と十兵衛の間に産まれた息子。

苗字が勘解由小路なのは、父親が勘解由小路に苗字を戻したからである。

 

 

天龍は織田家臣団に取り入る為に、柴田勝家と丹羽長秀、明智光秀から一字ずつ貰い、羽柴秀長と名乗った。そして、関白や太閤となった事で、苗字を豊臣へと変えた。ところが摂関制度が廃止され、豊臣を名乗る必要がなくなった。それにより、旧姓の勘解由小路に戻したのである。なんだかんだで、旧姓が気に入っていたのかもしれない。

一方俺はというと、同じく豊臣姓を捨てたのだが、旧姓の相良ではなく、天龍と同じく勘解由小路姓を名乗っている。理由としては、まだ義兄弟の関係でいた方が今後の政策を進める上で、色々と都合がいいのだとか。未だ反政府組織が残っている現状では致し方ないのかもしれない。相良の姓を捨ててから長い為か、勘解由小路になっても、特に嫌悪感はしなかった。ただ、署名が一々面倒くさい。

 

 

勘解由小路良晴。少々語呂が悪いが、これが今の俺の名前だ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

対馬上空。大日本帝国陸軍大将専用硬式飛行船『ワイヴァーン』内にて。

 

 

「なんだかんだでこの飛行船に乗るのも初めてなんだよな。気球とは大分違うんだよな。飛行機しか乗ったことないもん」

 

「この飛行船は軍事用だ。都市爆撃だってできる。風船なんかと一緒にするな」

 

「うん、凄い船だってのは分かるよ。なんだか、某アニメ映画の『ゴリアテ』みたいだもん」

 

「あれは空中要塞ラピュータの為のかませ役みたいなもんだろ」

 

「言われてみればそうかな。

見ろ!人がゴミのようだ!てか?」

 

「ちょっと似てて腹立つな」

 

「なんでだよ!」

 

 

天龍と良晴が盛り上がるが、周りは誰も付いていけない。

 

 

「宜しいですか閣下?」

 

「おぉ、玄朔。どった?」

 

 

日本陸軍軍医総監、曲名瀬玄朔。

 

 

「はい。今作戦についての報告をさせて頂きます。今回新しく改装したマガラの実験内容についてです。真柄直竜の脳を改造して製作したAIは自律思考型です。よって、明軍兵士との戦闘を通してその戦闘能力を向上させる予定です」

 

「自律思考型かぁ。本能のままに暴れる赤ちゃんモードも好きだったんだけどな」

 

「あの状態では細かい作戦まで実行できません。世話役を務めていらした筒井中佐も大変苦労されてましたし」

 

 

筒井順慶。陸軍での階級は中佐。

 

 

「まぁいいや。マガラはもう出せるの?」

 

「前田少将殿が現地にて囮役を行って下さっているお陰もあり、明軍は作戦予定地に集結しております。いつでも作動可能です」

 

 

前田利家。海軍での階級は少将。

 

 

「よし来た!例の装置も使えるな?」

 

「はい、可動できます」

 

「例の装置?」

 

 

その時だ。玄朔の助手に連れられ、全身を鎖や拘束具によって巻かれたマガラが現れる。

 

 

「おいおい、なんだこりゃ」

 

「改装が済んだばかりで、調整が不十分ですからね。操作できることが確信するまではこうして運ばねばなりません」

 

「え~、可哀想だろうがよぉ」

 

「んー!んん〜!!」

 

 

猿轡までされていて、喋ることを許されない。

 

 

「可哀想も何も、コレは兵器です!一歩間違えれば私達がコレの餌食となってしまうんです!閣下にはそういう点をもう少しご理解を.....」

 

「えいっ♪」

 

 

天龍がマガラの拘束具にデコピンをした所、それらが全て紙のように破け、粉砕してしまった。

 

 

「あうぅ...............あ"ああああぁぁぁ!!!」

 

 

マガラが肩甲骨を変質させ、それを新たな2本の腕にする。そしてそれを、天龍の身体に巻き付ける。

 

 

「閣下!!」

 

「あ"あ"ああああぁぁぁ!!!」

 

「いけない!.....なれば、マガラを私自らの手で破壊せねば.....」

 

 

玄朔が爪を鋭い凶器へと変質させ、マガラに攻撃しようとしたその時

 

 

 

 

「パパァ!!!」

 

 

 

 

「「「..........ん!?」」」

 

「パパァ!♡.....パパァ!♡」

 

 

マガラが天龍に抱き着き、頬を擦り寄せる。周りはおろか、天龍まで困惑している。

 

 

「パ〜パ♡」

 

「おい、俺はいつからコイツの父親になったんだ?」

 

「かっ、可能性としてはですが、マガラを改造するに当たって使用した閣下のドラキュラとしての細胞に反応しているのではないかと.....閣下の細胞にて誕生した生体兵器であるので、閣下の娘であると取っても、過言ではありません」

 

「パパァ♡パパァ♡パパァ!♡」

 

「おい、良晴」

 

「なんだ天龍」

 

「コイツめちゃくちゃ可愛いんだけど!」

 

「あぁ!.....アンタがめちゃくちゃ羨ましい!」

 

 

盛り上がる変態2匹。

 

 

「何だこれは!?これが親子プレイというやつか!?血筋関係が一切関係ない他人同士だからこそ得られるこの高揚感!枕営業をする変態社長共の気持ちが分からなくもない!」

 

「あぁ、しかもパパ呼ばわりだろ!?最高のシチュエーションじゃないか!是非、彼女に学校の制服を着させて改めて言わせてみたい!.....否、言ってほしい!」

 

「これが.....日本の代表ですか..........」

 

 

玄朔が不甲斐無い変態閣下2人に頭を抱える。

 

 

「じゃっ、じゃあ!俺のことは"お兄ちゃん"と!」

 

「オニィ.....たん?」

 

「ぐはっ!」

 

 

良晴のハートが撃ち抜かれる。

 

 

「じゃあ次は良晴お兄たまと.....」

 

「やめんか変態!!」

 

 

玄朔に刀の鞘で殴られる。

 

 

「お前、海軍の元帥相手に容赦ないのな」

 

 

天龍が呆れているものを言う。

 

 

「自身の作品をオモチャにされれば流石に怒りますよ。度が過ぎるようでしたら....."注射"しますよ?」

 

「なっ、何それ?」

 

「吸血鬼や人狼の細胞、血液に反応して作用し、化学反応を意図的起こさせて、破裂させる薬です」

 

「どういうこと!?」

 

「つまりはです。閣下方に打てば、身体の中から爆発して、臓物を撒き散らすことになるんです」

 

 

 

「「申し訳ございません!薬はどうか打たないで下さい!!!」」

 

 

 

天龍は頭を下げ、良晴は土下座する。

 

 

「こんな光景、国民が見たら哀しむわね」

 

「レオ.....」

 

 

外務大臣、蒲生氏郷。

 

 

「馬鹿やってないで、さっさと出撃させたら?」

 

「助かります蒲生様.....」

 

 

氏郷の助けによりマガラが解放され、出撃の準備がなされる。

 

 

「どうやって出撃させるんだよ?」

 

 

良晴が問い、氏郷が答えた。

 

 

「この飛行船に搭載されているカタパルトによって射出するのよ」

 

「カタパルトってぇと、飛行甲板?」

 

「いや、投石機の方だ。分かりやすく言うならば、パチンコ。スリリングショットと言うべきか」

 

 

天龍が説明する。

 

 

「えっ!こんな上空から落とすの!?この高さから落ちても平気なくらい丈夫なのか?それとも、羽根が生えてて飛べるとか?」

 

「いえ、羽根は生えてませんが飛行は可能です」

 

 

玄朔が答えた。

 

 

「それってどういう.....」

 

「どうでもいいが玄朔よ.....アレは彼処で何をやっているのだ?」

 

「えっ?」

 

 

マガラが1人無言でコックピットの扉の前に立ち、そのまま扉を引き千切るように破壊し、外へと飛び出してしまう。

 

 

「えええぇぇぇぇぇ!!!??」

 

「こりゃ、躾が必要だな」

 

 

飛び出したマガラはそのまま落下するのかと思いきや、腰の辺りが変質し、そこからエンジン及びプロペラが飛び出し、回転。そのままマガラは滑空する。

 

 

「何.....アレ?」

 

「戦闘機のエンジンだ。当初はヘリコプターのようにホバリングさせる予定だったが、今一つ速度に欠けてな。太平洋戦争末期に登場した日本の戦闘機『震電』の仕組みを思い出して、アレに搭載したんだ」

 

「..........なんか、スト魔女思い出した」

 

「震電と同じく、改造次第でジェットエンジンも搭載できるぞ?」

 

「ここって戦国時代だったよなぁ!?」

 

「良晴よ。時代の流れというものは哀しいものだ」

 

「いい話風にまとめんな!!」

 

「それよりだ。マガラが地上に着陸したぞ」

 

 

ガラス窓から眺める天龍ら。数百メートル先の状況ではあるが、彼らの視力にはそのような距離など、関係ない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「うぅ〜?」

 

「※ナッ、ナニモノカ!?」

 

 

※翻訳済み

 

 

「コノ女、空カラキタゾ!?」

 

「トイウカ、天にウカブアノ船ハ!?」

 

「おいちゃんたち、だえ?」

 

「「「!!?」」」

 

「パパァをイジメるの?パパァのてき?パパァが嫌いなの?パパァを殺す?マガラの為にすっごく頑張って、一生懸命やってくれてるパパァを殺すの!?」

 

 

彼女の様子が変わる。

 

 

 

 

「そんなわけないじゃない!!!」

 

 

 

 

「「「っ.....!?」」」

 

「そんなのヤダ!そんなのヤダ!!

パパァはわたしの!おいたんたちなんかに渡さない。渡すもんか!パパァは殺されちゃいけないの。殺されちゃうなんてヤダァ!!そんなのヤダァァァ!!!」

 

 

マガラの腹部が変質し、中からM134ミニガンの砲塔が飛び出す。

 

 

「ねぇ分かる?分かるよねぇ?分かってるでしょ?」

 

「「「............!???」」」

 

 

明兵らは困惑している。

 

 

「分かるよねぇ?」

 

「「「..........」」」

 

 

 

 

 

「"分かったら返事くらいしなさいよ!!!!!"」

 

 

 

 

 

マガラの瞳が吸血鬼の如く紅く染まり、戦闘形態に移る。

 

 

「死んじゃえ!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あれって正常なん?」

 

「いえ、異常です」

 

 

天龍の問いに玄朔が冷や汗をかきながら答える。

 

 

「随分とめちゃくちゃやってんね」

 

 

ここからでも下が地獄絵図となっているのが理解できる。マガラに搭載されたミニガンが明兵をボロ雑巾の如く薙ぎ払い、生き残った連中は肩から飛び出た大太刀によって斬り払われる。武器を投げ、逃げ出した兵は左肘から露出した火炎放射器にて焼き払う。

 

 

「そもそも、今回の実験の目的って何だったのさ。あれじゃあ、前と変わんないだろ」

 

「いえ、自律思考型という事もあり、マガラは敵の戦闘方法を吸収する性質があるんです。以前までの狂戦士状態と違い、戦えば戦う程成長するように。この戦で、明兵の戦闘の"でーた"を得たかったのですが.....」

 

「最初っから実力差があって、教育にならないってか。しゃーないな」

 

「閣下?」

 

「ガキはほっといても身体の成長はするが、導いてやれる大人がいなければ、心の成長はいつまでもしない。奴のパパァとして、その責任は持たなきゃな」

 

「閣下!?」

 

「俺の本職は軍人でも政治家でもなく、『教師』なんでね」

 

 

そう言い、天龍はマガラぶち破った扉から飛び出して飛行船から落下していった。

 

 

「ああああぁぁぁ!!!?」

 

「俺も行ってくるわ!」

 

 

良晴も飛び出して行く。

 

 

「もぉぉぉ〜!!!なんで我が国の代表はどっちも自分勝手なんですかぁ!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

落下中の閣下2人。

 

 

「おぉ!お前も来たか」

 

「あんただけ行かせるわけねぇだろ」

 

「俺の背中は甘くはないぞ?」

 

「いつも言ってるだろ。闇討ちなんかしねぇ。前からぶつかって倒すだけだよ」

 

「じゃあ、タイマンできるまで精々強くなるこった。自律思考型なのはお前さんも同じだからな」

 

「あぁ、強くなってやるさ。あんたがこの世に未練を無くしていようと関係ない。俺があんたを追い越すまでは絶対に生き続けてもらう。何年かかるか分からないが、必ず追い越す。俺があんたを終わらせてやる」

 

「............ふっ、何年かかるのやら」

 

「そう遠くないかもな」

 

「戯け。俺の世界はそう簡単には手に入れさせんさ。まぁ、精々見様見真似に俺背中を追い続けるがいいさ。俺も貴様がしゃんとするまでは、おちおち寝てもいられん」

 

「おうよ!」

 

 

良晴は太刀を2本出現させ、二刀流に。

天龍は 『Pfeifer Zeliska』の二丁持ち。

 

 

「うっわ。なんだその化物拳銃」

 

「オーストリア製Pfeifer Zeliska。使用弾頭、600ニトロ・エクスプレス及び458ウィンチェスターマグナム。全長550mm。重量6kg。60口径のハンティング銃だ」

 

「それを二丁拳銃にするとか.....

お前はどこの旦那になるつもりだよ」

 

「いつかはあの拳銃も使ってみたいな。怪力を持つ吸血鬼の特権のようなものだ」

 

「全く.....」

 

 

良晴は微笑する。たった今殺すと宣言した相手と、こうもふざけ合う自分が可笑しかったのだ。以前までなら考えられなかっただろう。今まで数多くの宝を奪った天龍との会話。不思議と苦にはならない。そういう環境を、そういう時代を作り上げたからか。

 

 

天龍を殺す。

 

 

野蛮に聞こえるかもしれないその目標が、俺にとっては今一番の華なのだ。それは彼も同じ思いなのだろう。彼と2人で作ったこの国で、この時代で、生き残る方を決めるラストゲーム。アマテラスなど関係ない。スサノオなど知ったことか!これは俺の思い、俺のゲームだ。俺が動かし、俺が戦い、俺が終わらせる。

 

 

 

 

「パーティの開始だ」

 

 

 

 

地上はあとわずか。

どのような戦況になろうが、どのような地獄が生まれようが関係ない。俺はただ、超えるだけだ。この吸血鬼、勘解由小路天龍という存在を。

 

 

 

 

 

勘解由小路良晴の物語は今始まった。

 

 

 




打ち切りみたいな終わり方だけど、更新ペースが遅いだけでまだまだ続きます。
次回予告
功夫少女
〜中国からの刺客〜

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