天翔ける龍の伝記   作:瀧龍騎

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また題名の変更を行いました。
最近暑くて暑くて...


第九十五話 良晴の"しせん"

その男はまた問いかける。

 

 

「..........しはる」

 

 

血だらけの身体で彼は問いかける。

 

 

「良晴.....」

 

 

彼は自分に語りかける。彼の妻はもう自分の手によって殺されているというのに。

 

 

「良晴.....」

 

 

彼は呼びかける。魔と化した息子に。己もいつ殺されてもおかしくないというのに。無防備の体制をあえて見せている。

 

 

「良晴.....」

 

 

そうして彼は笑顔を向けた。剣を振りかざした息子に向かって。

 

 

『死ね。ヒューマン』

 

 

意識とは裏腹にそんな台詞が出てきた。全く望んでいないのに。

 

 

「良晴.....」

 

 

そして、彼は言った。

 

 

 

 

「俺も母さんも.....何があろうとお前の味方だからな」

 

 

 

 

(そんな.....父さん、俺は.....!!)

 

『ほざくなゴミめ』

 

(違う!俺はそんな事は思ってない!!)

 

『とりあえず死んどけ』

 

「良晴.....」

 

 

そして剣が振り下ろされる。

 

 

 

「頑張れ」

 

 

 

その言葉を最期に相良敏晴は絶命する。

 

 

(やめろぉぉぉぉぉぉ!!!!!!)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「っ.....!?」

 

 

それをキッカケに良晴は目を覚ます。

 

 

「チッ.....またこの夢か」

 

 

又もや悪夢で目を覚ます。悪夢を見るのは久方ぶりだ。金ヶ崎の退き口の時も悪夢は見ていたが、克服して以降は見る事もなくなっていたのに、また.....

 

 

「フン...............あ」

 

 

手にタバコを召喚し、火を付けてようとする時に気付く。

 

 

「ん..........んん」

 

 

隣りに信奈が眠っていたのだ。

 

 

「しゃーないな」

 

 

良晴は布団を出てそのまま部屋を後にする。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

墨俣城。時の美濃合戦にて設立された一夜城をベースに建てられた良晴の支城である。

 

 

「フゥー.....」

 

 

部屋の外の窓際にてタバコを吹かす。数年前までなら吸う気にもならなかったタバコだが、今では完全なニコチン中毒になっているようだ。

 

 

「フゥー.....」

 

「けほっ!けほっ!.....殿、けほっ!」

 

「半兵衛か?すまん。今消すよ」

 

 

半兵衛の登場に、慌ててタバコを消火し、吸い殻を携帯灰皿に入れる。

 

 

「い.....いえ、そのままご一服されても良かったですのに」

 

「病人の前じゃ吸えねぇよ」

 

「病気はもう治りました」

 

「そうだっけか。すまんすまん」

 

「いえ.....」

 

 

病気の完治に良晴との肉体関係がある為か、半兵衛は顔を赤らめている。

 

 

「お部屋で吸われないのですか?」

 

「生憎と身重のママさんが寝てるんでね」

 

「あぁ.....」

 

 

信奈はもう臨月に入り、見た目からも妊婦であることがよく伺えた。

 

 

「信奈様も変わりましたね。姫武将制度が廃止される前に自ら戦から離れたせいか、とても奥ゆかしい方になられました」

 

「ん〜.....今でもガミガミ言う所は変わらねぇぜ?怒ったら胎教に良くないって言ったら、余計に怒るんだ」

 

「フフッ.....」

 

 

 

 

そう。姫武将制度は廃止された。もとい、武家社会が終わりを告げたのだ。領地、地位等を全て朝廷に返還させた事により、日本中の武士が一斉に無職になった。これが大きな波紋を生んだのだ。元大名は全員都心部の政府に集められ、逆に政府の息のかかった信用できる人物らを知事として各地の新設された都道府県に送る。早い段階でこれを実施した為に、他勢力が力をつける前に日本の統治が果たせたのだ。

行き場を失った多くの武士は選択を迫られた。下級武士は農家や商人と共に平民として働き、上級武士は羅卒及び『巡査』として警察機関に属する者もいれば、軍人として改めて刀を振るう者もいたのだ。

野武士というものもまた取り締まわれ、日常生活での帯刀が禁止された以上、そのような行政機関に入隊することを余儀なくされたのだ。

 

 

 

 

「とはいえだ。警察も軍も、武家社会時代の御偉いさん方が上位に付く以上、やっぱり元姫武将が統治することになるんだよね」

 

「それは仕方ありませんね。それがコチラとアチラの最善の譲歩だったのですから」

 

「きっと俺じゃあ纏められなかっただろうよ。その変はアイツに感謝しなきゃな。アイツのカリスマスキル異常だし」

 

「えぇ、少なくとも世代が変わるまでは従来通り姫武将に実権があるでしょうね。廃止された以上、これ以上姫武将が増えることもありませんから」

 

「あぁ、男尊女卑ってわけじゃないが、女子が力を付けるにはちと時代が早すぎたんだ。確かに女は強い。男以上に生物として優れている。男以上の団結力を誇るだろう。女に国を任せればその国は確実に強国になるだろう。.....だが、何処かで男との均衡を保たなければ、その国は滅びる」

 

「.....えぇ、確かにそうかもしれません。殿.....じゃない。『閣下』も賢くなられましたね」

 

 

半兵衛が軽い皮肉を言う。

 

 

「フン。アイツの入れ知恵さ。それと閣下はやめてくれ閣下は.....ナチスの総統みたいじゃんか」

 

 

地位が無くなったのは俺や天龍も例外ではない。摂関制度もまた廃止され、俺の関白職も奴の太閤職も無くなり共に再就職。内閣が設立されていない現状においては、天龍は陸軍大将。俺は海軍大将。称号は共に『元帥』。それまでは殿下と呼ばれていたものが、今では閣下だ。ランクこそ下がったが、この国における立ち位置はさほど変わらない。

 

 

「まぁ、新政権が誕生したとはいえまだ序章の序章。赤ん坊みたいなもんだ。キチンとした規律で守らなければ、いつ旧政権やら外部の脅威に襲われるか分かったもんじゃない」

 

「えぇ.....」

 

「まぁまぁ、ゆっくりじっくり時間を立てて行こうじゃないの。本来ならば数世紀後の政策だ。経験も無ければ歴史もない、ろくに準備をする暇さえ与えられなかったようなその場しのぎで作った政策など、大きく膨れ上がった所でそんなもの、ゴミ袋のビニールよりも薄く脆いものに過ぎん。詰め込めれば詰め込める程に層は薄くなり、そこから亀裂が走る。あとはゲロ臭いゴミだめを一気にばら撒くだけさ。そうだろう半兵衛?」

 

「ま.....まぁ、間違ってはいませんが、その.....口が悪過ぎます。ここの所酷いですよ?」

 

「ん〜、俺は普通に喋ってるつもりなんだけどなぁ」

 

 

確実に天龍近づいている。それは自覚できた。

 

 

「それはそうと半兵衛。いい所に来た」

 

「は?」

 

「信奈の安定期も終わってしまって、俺も溜まっているんだ。どうだ?朝までしないか?」

 

「.....そこだけは似ないでほしかったです。2人も奥方がおられるというのに.....」

 

「しゃーないだろ。信奈は妊婦だし、虎寿丸(島津義久)は九州だしな。大っぴらに妾なんて作ったら信奈が五月蝿いしよ」

 

「義久殿は何故九州に?」

 

「あぁ、甥っ子が産まれたんだと。えと、弟の歳久の娘だそうだ。本当なら、義久は大坂から出られない誓約だったんだけど、天龍との和睦以降はそこらへん、緩くなってるしな。とりあえず虎寿丸だけ行かせたんだ。俺は政策で忙しいし」

 

「だからって何で私と.....他の方となさればいいではないですか」

 

「そんな事言わずにさぁ、やろうぜ?」

 

 

半兵衛を壁際に追い詰め、壁ドン。これで落ちない女はいない。

 

 

「お断りします」

 

「ありゃ?」

 

 

予想外。フラれてしまった。

 

 

「むぅ〜つれないなぁ半兵衛ちゃん.....お兄さん寂しいよ。しくしく」

 

「女の子に対して節操がなさ過ぎれば、周りはどんどん離れていくことを良晴さんには知ってほしいです」

 

「うぅ、あの心優しかった半兵衛は何処へ」

 

「それは、性欲処理の相手として都合の良い相手だったということですか?」

 

「ちっ、違います.....!!」

 

「ど〜ですかね〜?」

 

「うぅ、お前は意地が悪くなったな」

 

「黒くなった主人を律する為には必要なんです!」

 

「うひー」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『それは困るのぉ。その小僧にはとことん黒くなってもらわねばならぬでありんすのに』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「「つっ.....!?」」

 

 

2人のじゃれ合いを割くように、唐突に奴は現れた。

 

 

『こんばん〜わぁ』

 

「アマテラス!!」

 

「天照大御神様.....」

 

 

この国における全知全能の神、アマテラス。

 

 

『良い月でありんすのう。そうは思わぬかや?』

 

「お前が現れなければさぞ綺麗であったろうな。だが今の俺の目には、目の前の汚物のせいで歪んで見える」

 

『くひゃははははははははは!!!!見ぬうちにまた強くなったのではないかや?益々興味がそそるでありんすよ』

 

「黙れよアマテラス。その口を裂かれたくなければな」

 

『口を閉ざしたいのに、切り開くとはコレいかに?』

 

 

その言葉を発した直後、アマテラスは良晴によって口をこじ開けられ、頬を裂かれ、無様に下顎を垂らす。方仁こと天皇や滝川一益と同じ姿形の彼女の口を裂くことに、良晴は何の躊躇いも無かった。

 

 

「コイツでどうだ神様?これでもまだ気味悪く笑うのか?」

 

 

アマテラスの頭を掴みながら言う。

 

 

『が.....あ".....ぐか".....あ".....ひ"ゃ".....』

 

「っ.....!?」

 

 

 

『くひゃひゃひゃひゃひゃははははははははははははははははははははははははははは!!!!!』

 

 

 

「チッ!」

 

 

下顎をぶらぶらと垂らしながら笑うアマテラス。良晴は彼女をその場に投げ捨てた。

 

 

『痛いではありんすか小僧よ。神へのこれ以上の冒涜もあるまいて』

 

「今度はその嫌味たらしい目玉をくり抜くぞアバズレめが」

 

『ふっくくくくひゅひゅひゅ.....』

 

「何しに来た太陽神。昼の神が俺に何の用だ。夜の神の仔なら今は岐阜城にいるぞ?」

 

『いやいや、わっちは貴君に用があるのだよ。え?そうであろうよ"地の神の仔"よ』

 

「...........」

 

『見たんだろ?記憶を。己が親を糞のように喰い殺す様を。え?どうなんだい?』

 

 

アマテラスの様子が変わる。いや、これが奴の本性なのだ。

 

 

「見たさ。俺の中には神がいる。お前らの弟の"スサノオ"がな」

 

『そこまで知ってるなら理解してるだろ?このわっちが何故に貴君のもとへとワザワザ足を運んだか』

 

「...........天龍の後釜か?」

 

『当た〜り〜♪。ぶっちゃけ天龍でも良かったのだが、アレはもう駄目じゃ』

 

「駄目.....だと?」

 

『アレは最早、生への未練を失っている。希望も夢も存在しない。心が存在しない。ただ、そこに存在しているだけ。アレはもう、そんな状態さ。アレはもう使えない。使ったところで、何一つ得られるものはなくなってしまった。面白くなくなってしなった』

 

「面白い.....だと?」

 

『退屈は神を殺す。天龍はわっちの渇ききった心を潤すのには十分過ぎる程に十分過ぎた。いい暇潰しだった。だがそれも悠久の闇へと消え去った』

 

「何が言いたいんだよ」

 

 

そう言うと、その神は歪んだ笑顔で言う。

 

 

 

 

『天龍の寿命が尽きようとしている』

 

 

 

 

「「なっ!?」」

 

『とはいえ彼奴めは病にもかからぬし、魔力が尽きることもない。だが、彼奴の命は尽きる。彼奴がそれを臨んでいるから.....』

 

「どういう意味だ」

 

『さぁな。死を臨む以上、わっちは彼奴を求めることもない。水辺に浮く"肴"とピチピチと跳ねる"肴"なら、後者を選ぶであろうて?』

 

「チッ.....天龍がグレた理由も分かるよ」

 

『クスクスクス.....神は皆死にたがりなんだよ。わっちだってそうさね。だが天龍は人一倍一早く投了したがってるがね』

 

「じゃあさっさと首を括れ。死んどけ!」

 

 

不気味に笑うアマテラスはその後、こんな台詞を吐いた。

 

 

 

 

『神は皆、意味のある死を臨んでいる。だから自殺したって意味は無いんだよ。ましてや、わっちは天龍以上に死に難いんだよ。【誰かに倒されなければ死ねない】のが天龍で、【誰かに座を押し付けなければ死ねない】のがわっち。そんな時に神の因子を中に持つ貴君のような存在がいれば、これ以上の説明もいるまい』

 

 

 

「俺が天龍を殺し、お前は神の座を俺に押し付けるってか?本来は天龍がなるはずだった神の座に」

 

『おうとも』

 

「はぁ.....神ねぇ」

 

 

 

すると良晴は右手に手榴弾を召喚する。

 

 

 

「オゥりゃッ!!」

 

 

安全ピンを抜いたそれをアマテラスの胸に突き入れる。

 

 

『いやん』

 

「神だとかの訳の分からん話は俺には専門外でな。俺は巻き込まんでくれよ。天龍あたりとやっといてくれ。今の俺にはどの道天龍は殺せないよ。実力的にも.....精神的にもな」

 

 

そう言い、良晴はアマテラスを墨俣城の外へと放り投げた。

 

 

『それでも貴君は選ぶさ。これはもう、500年も前に決められていたこと。貴君はその為だけに作られた傀儡なのだから』

 

 

そう言い残し、アマテラスは爆散する。

 

 

 

 

「分かんねぇよ。身体の中に神がいるなんて言われても.....両親と血が繋がってなかったり、天龍と本当の兄弟だったり、両親を俺が殺してたり.....一度にバラし過ぎだよ.....そんな一度にどうやって受け入れればいいんだよ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

直後、天井裏から蜂須賀五右衛門が落ちてきた。忍者の制度も意味を成さなくなった今、彼女はいわゆる女スパイだ。

服装も良晴の命令で、着物からラバースーツに変更している。とても不満だそうだった。

 

 

「ちゃっ!ちゃがら氏ぃ!?今のばくはちゅは!?」

 

「おぉ〜小六!いい所に来た。今夜の相手をしてくれ」

 

「ふぇっ?」

 

「だって〜半兵衛が相手してくれなおんだもん」

 

 

イヤらしく半兵衛を見る。

 

 

「先の今でよくそんな行動に出れますね.....はぁ、良晴さんらしいと言えば良晴さんらしいですが」

 

「交ざる?」

 

「拒否します!」

 

「いけず。いーよいーよ今日は小六と遊ぶんだい」

 

「え?えぇ?」

 

 

五右衛門は混乱していた。

 

 

「そうですか。では奥方を起こしてきましょう」

 

「なっ!?」

 

「閣下がこうもだらしないのであれば、かような荒療治も必要でしょう」

 

「.....半兵衛」

 

 

良晴の声色が低くなる。

 

 

「この俺を怒らせてただで済むと思うなよ?お前のような小娘如き、力でどうとでもできるのだからな」

 

「どうぞご勝手に」

 

「へ?」

 

 

 

「貴方がそのような下劣な行為をなされないのは存じていますから」

 

 

 

「むぅ.....」

 

「では、お休みなさい」

 

「やっぱヤダ」

 

「えっ?.......きゃぁっ!?」

 

 

半兵衛の真後ろに高速移動し、そのままお姫様抱っこをする。

 

 

「決めた。今宵は半兵衛ちゃんの再教育!一晩じっくりやってやる!小六、お前も手伝え!」

 

「ちょっ.....しぇちゅめいを求みましゅ!」

 

「下ろしてください〜。・゚・(ノД`)・゚・。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「大丈夫.....大丈夫よ」

 

 

良晴の部屋の扉に寄りかかり、彼の伴侶である彼女は独り言を言う。

 

 

「あいつは私を裏切らない.....だから私もあいつを信じないと.....あいつの女癖は今に始まったものゃないしね」

 

 

別の女性と関係を重ねる夫を、彼女は赦した。

 

 

「でも.....もしかしたら...........あっ」

 

 

その時、胎内にて赤子が腹を蹴った。

 

 

「そうだよね。お父さんをしんじてあげなきゃね。一緒に頑張ろうね.....」

 

 

赤子の名前はもう決まっていた。男子でも女子でもいいように。平和を願った両親に付けられた。

 

 

「早く産まれてきなさいよね、和(かず).....」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

翌日、岐阜城。

 

 

「聞いてくれよ良晴ぅ〜。仙千代がレオタード着てくれないんだぜ!?」

 

 

唐突だった。

 

 

「やっぱ㊛スパイならレオタードだろ!絶対似合うはずなのに着てくれないんだぜ?」

 

(同志よ.....)

 

「にしても何でレオタードなんだ?体操選手じゃあるまいし」

 

「何言ってんだ。㊛スパイはともかくとして、㊛怪盗と言えばレオタードだろ。それでEDではシルエットのみで踊るんだ」

 

「お前はいつの時代の人間だよ」

 

 

少なくとも平成の世では自分とは10年しか変わらないはずだ。

 

 

「断然、瞳派だな」

 

「俺は愛ちゃんかな」

 

「お前も見てんじゃねぇか」

 

 

キャッツ●アイはわりと好きだ。

 

 

「猫目もいいけど、俺は都市狩人の方が好きかな」

 

「もっこりリョウさんか」

 

「俺は香ちゃん派」

 

「フン。野上冴子をおいて他にいるまい。にしても香ちゃんか。愛といい、本当に勝気なキャラが好きなんだな」

 

「うるへ」

 

「話が変わるが、仙千代にレオタードを着させたいのだが、何か案はないか?」

 

「うちじゃ、ラバースーツなんだけどな」

 

「ほう、悪くない。検討しよう。ボンテージは如何なものだろうか?」

 

「ボンテージってなんだっけ?」

 

「コレだよコレ」

 

 

天龍がボンテージを召喚する。

 

 

「肌の露出多くね?」

 

「ボンテージにも種類がある。なんならこのタイツを合わせたタイプによって肌も隠せる」

 

 

あぁ、『運命』って厨二アニメの旧版で見たことあんな。確かボンテージ桜とか名称ついてたな。

 

 

「それじゃあ、黒すぎてボンテージの利点消してんじゃねえのか?」

 

「フッ、青二才め。肌の露出をあえて減らすことによる想像力の拡大、更にはタイツから見える"透け"が一層のエロスを掻き立てる!これこそが至高!」

 

「なるほど!是非うちでも採用を検討したい!」

 

「うむ。しかしテストをせねばなるまい。.....えぇと、丁度いいマネキンはっと...........おい三成!」

 

「ふえっ!?」

 

 

遠くで聞こえないふりをしていた石田三成が急遽呼ばれる。

 

 

「ちょっとこのボンテージスーツを着てくれ。そんでもって被写体になってほしい。なぁに、給料なら上乗せして出そう。ついでに、この新発売予定のネグリジェも.....」

 

「こんなド変態ぃぃ!!!」

 

 

突如として、天龍が後ろから木刀で殴られる。

 

 

「痛ったぁ.....」

 

 

と言いつつも彼にはダメージというダメージはなさそうだった。いや、瞬時に回復したと言うのが正しいか。

 

 

「三成をそんな阿呆なことに巻き込むなデス!公式会議の場で何やってるデスか!!」

 

「うぅ.....感謝します姐様」

 

 

彼の正室.....いや、時代が変わった今は正妻か?天龍の正妻の明智光秀。通称、十兵衛。なんだかんだで三成とは仲が良い。というより、他の家臣と仲が悪い三成との橋渡し役をやっている。史実の北政所のようだ。

 

 

「いやいやこれも重大なんだぜ?コスチュームとは言わば全ての団体の顔にあたる部分だ。服装がダサければそれだけで周囲の印象は下がるし、モチベーションも上がらない。それは影の存在である彼女等にも同等に言えるものだ。だからこそ、それを決めるこの会議はやらなくてはならない。否!必定なの.....」

 

「..........」

 

 

無言で木刀を構えられる。

 

 

「ごめんなさい。私が悪かったです」

 

 

奥さんを怒らせたくないのか、天龍はすぐに根負けしてしまった。世界最強は十兵衛だったのか?

 

 

「でもよぉ、建前で公式会議なんて大それたもんを毎月やってはいるが、大して話し合うことなんてないんだよな。政策は全部こっちで作ってるし、そっちにはちょっとの確認だけ頼んで採用しちゃうし.....ぶっちゃけ会議やる意味だよ?少なくとも、内閣が出来上がるまでは必要なくね?」

 

「いいかれやれデス!!」

 

「うわっ、木刀振り回すなって。産後で鈍ってるからって、俺にやつ当たるなよ。分かった分かった。建前だけだけどとりあえずやりますかね」

 

 

天龍は書類を取り出す。そして、わざとらしい敬語で案件を読み始めた。

 

 

「えっと、連絡事項です。

・憲法の完成度が約7割ぐらいです。来年には完成するそうで、それに合わせて国会も開けます。

・あと国民統制のために、新しく戸籍を設けます。今年の干支が壬申なんで『壬申戸籍』と呼称しましょう。とはいえ、国中の調査なんで時間はもうちょいかかりますがね。

・反乱分子について。親衛隊の皆さんが頑張って粛清してるんで大丈夫です」

 

 

ナチスかよ。因みに三成がこの国のラインハルト的な働きをしているそうな。

 

 

「・そちらから出されていた普通選挙法導入案は却下。まだ日本には早いです。

・あと憲法は、明治憲法をベースに戦後憲法の良点等も入れつつ、私のオリジナル憲法にする予定です。

・インドの大友宗麟から連絡。インド大陸の統一が完了したようで、遠征に出してた我が日本軍が帰ってきます。しかもサリーム.....インド(傀儡)皇帝のジャハーンギールさんがついでに来日するようなんで、準備してください。

・あっ、今日の晩ご飯はラーメンです。

・明に対馬が落とされました。

・ラーメンは特製の豚骨ラーメンです。

以上です」

 

 

 

 

 

 

 

「......................ん?」

 

 

 

 

 

 

 

なんか変な文章が混じってなかったか?

 

 

「天龍.....今なんて言いましたデスか?」

 

「ラーメンは豚骨」

 

「違うデス!!もっと前です!!」

 

「スパイの制服はボンテージ?」

 

「何処に戻ってんデスか!!」

 

「明に対馬を落とされたことか?」

 

「「っ.....!?」」

 

 

彼はサラリと通したが、これは途轍もない緊急事態であった。何故なら対馬は長崎県の目と鼻の先。日本国領土だ。そこを敵国に取られた。これ以上に危険なことがあろうか?

 

 

 

日本国が再出発して最初の難題である。

 

 




アマテラスとの会話シーンは内容を意味深にし過ぎかつ、フラグっぽい何かを詰め込み過ぎてわけ分かんなくなってます。もうちょい綺麗にできなかったかなぁ。
良晴はもはや別人です。経験したものがものなんで暗黒面真っ盛りですよね。
次回予告
対馬開戦
〜時の始まり〜

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