天翔ける龍の伝記   作:瀧龍騎

107 / 124
また遅れました。
ちゃんと更新日時を決めないとですね。


第八十七話 信濃戦争

信濃にて始まった天下分け目の決戦。天龍軍が放った土砂崩れの罠により良晴軍の中枢は崩された。その佳境に天龍軍11万がなだれ込む。半兵衛の術によって全滅を避けられた良晴は生き残りの兵達を引き連れ、天龍軍にぶつかる。狙うは豊臣天龍が首一つ。奴さえ倒せれば、残りの連中などどうとでもできる自信があった。その良晴の自信が、過信であるかは定かではないが.....

 

 

 

 

こちらは罠を逃れた先遣隊。

 

 

「あぁ!我に七難八苦を与え給え! 」

 

「また言ってるよ。馬鹿の一つ覚えなのよさ」

 

「我に七難八苦を与え給え〜(笑)」

 

「正則殿も清正殿も五月蝿いですぞ!!」

 

 

軍の先頭を馬で駆ける3人。山中鹿之助、福島正則、加藤清正。彼女らこそ良晴軍が先頭隊長。絶望的な状況を切り開く関白軍のエースなのだ。それぞれ身の丈以上の長さの槍を振り回し、天龍軍兵を一網打尽に討ち果たしていく。その時。

 

 

「そこの連中待った!」

 

「「「!?」」」

 

 

そこに立ちはだかった一人の軍服の姫武将。特有の緋色の軍服を着用。六連銭を型どった家紋の、これまた緋色の陣笠を頭に装着する全身赤尽くめの戦士。

その名も真田幸村。信濃の支配者。天龍軍エース。

 

 

「真田幸村か。相手にして不足なし!」

 

「ゆっきーちゃんじゃん。お久!」

 

「お久」

 

 

鹿之助以外は全く緊張感がない。

 

 

「あら、市松っちゃんと虎っち!お久!」

 

 

緊張感がないのは幸村もだった。どうやら3人は友人関係らしい。

 

 

「大変だよのね。互いの主君が喧嘩おっ始めちまったもんで、市松達まで巻き込んでよ〜。戦は嫌いじゃないけどゆっきーとぶつけられるのはマジ勘弁なのよさ〜」

 

「同意。兄者、空気読んでない」

 

「だよね~。正直、こちとら防衛戦と言いつつ、隙あらば侵略も許可されてるわけで.....何人知人を斬ればいいんだか」

 

「あの〜」

 

 

勢い余って置いて行かれる鹿之助。

 

 

「でも殺すけどね!」

 

 

幸村の瞳に殺気が篭った。

 

 

「そうこなくっちゃね」

 

「抹殺を開始」

 

「..........」

 

 

鹿之助には理解し辛かった。彼女達には偽りなき友情が存在する。しかし、この戦場においては別だ。戦場で敵として向かい合った以上、その相手は敵。殺すべき相手。槍で刀でその身体を貫き、斬り裂き、その首を斬り落とす獲物となるのだ。彼女達はそれを理解している。だが、悲しんだり憎み合ったりはしない。互いにただ楽しむ。戦場の、殺し合いの雰囲気を楽しむ。ただそれだけなのだ。

ただ、仕える主人が違っただけなのに。

楽しむ為に、主人の為に、手柄の為に、殺されない為に、殺す為に殺す。殺したいから殺す。殺すという行為そのものが快楽。使命にして目標なのだ。

 

 

「待った。ここは某にやらせて頂きたい」

 

「えっ?最近全く活躍所がなくて、九州でも鬼女にぶっ飛ばされ、役柄がただのマゾの雌豚に成り下がったあの鹿之助先輩が!?」

 

「どこで覚えたのかそんな言葉!!」

 

「お兄ちゃん」

 

「殿ぉ.....」

 

「先輩、ドンマイ(笑)」

 

「〜!!!」

 

「そっちも大変そうですね。山中鹿之助さんでしたっけ?尼子家の猛将さん」

 

「その通り!念願であった尼子家の再興は最早叶わない願い。ですが、今の主君は豊臣良晴秀吉。今こそは彼の天下取り手伝いできる事こそが今の私の使命!」

 

「んー、その関白さんの敵が主君である私としては複雑な気持ちですけど」

 

「とりあえず先輩に殺されとけなのよさ」

 

「これは決闘ではなく誅罰」

 

「ありゃりゃ〜、本当に戦では敵扱いですね、これ」

 

 

その時、2人組の騎馬武者がその場に合流する。

 

 

「呼びましたか?」

 

 

騎馬武者の1人が問う。

 

 

「呼んでないですけど?」

 

 

幸村が答える。

 

 

「あら、そう。でも争いの火種を感じ取って来た甲斐はあったようですね。私も混ぜさせてもらいませんか?」

 

「えぇ〜!全部私の獲物ですよぉ!?」

 

「先輩の頼みは聞くものですよ?」

 

「ブー!」

 

 

その騎馬武者は首に数珠を掛け、幸村と同じく十文字槍を所持している。

 

 

「宝蔵院流..........まさか筒井順慶殿!?」

 

 

鹿之助が言う。

 

 

「あら、合戦にはあまり出向かないこの私ですが、この戦装束だけで分かる方がおられるとは」

 

「いや、小田原攻めの仏鬼伝説は有名なので.....」

 

 

小田原攻めにおいて、今まで溜めるに溜めたストレスを一気に爆散させ、北条兵を文字通り鬼のように斬り殺した事件があった。

 

 

「では私はそこの牛っ子を相手にしようかしら?」

 

「市松を?」

 

「じゃあ虎子の方はこの子にお願いしようかしら」

 

「むむっ?」

 

 

もう1人の騎馬武者。その者は見るからに異質であった。何しろ背中に、身の丈サイズの大太刀を2本も背負っているのだから。一本は長さ五尺三寸、約175cmの太刀。兼ねてより彼女が愛用していた太刀だ。もう一本は同じく五尺三寸の大太刀、『真・備前長船長光』。本来の持ち主であった佐々木小次郎の死後、彼女の師である天竜より引き継がれたこの太刀。本来は三尺、1mあまりであったのだが、彼女用に鍛え直されたのだ。

そう、人造人間・真柄直竜の為に。

 

 

「ばぶ〜」

 

「「「..........」」」

 

「まだ赤ちゃんなんですか順慶殿?」

 

 

3年前に松永久秀によって、姉川の戦いにて戦死した真柄直隆と真柄直澄の亡骸を繋ぎ合わせて造られた人造人間。それが真柄直竜。しかし、ご主人様になった天竜になかなか懐かない上に、命令違反を繰り返した為に、天竜もぞんざいに扱ってきたが、次第に、その思考が幼体化。幼児退行していったのだ。そして現在に至っては完全に赤ちゃん思考にまで戻ってしまった。

 

 

「天龍様いわく、一度赤子まで後退したのだから、心はこれから成長するみたいですね。一応身体だけは大人なので、ちゃんと天龍様の夜の御相手もされてるようですね。思考が赤子の娘まで相手にするなんて、あの御方の性癖は底がしれませんがね」

 

「身体だけはどんどん成長してくくせにですね!何ですかこの胸!!赤子には蛇足です!」

 

「ばぶぅ!?」

 

 

幸村が直竜の胸を強引に揉む。

 

 

「天龍様が貧乳好きでなければ、切り取って自分の胸にくっつけたいですよ全く!」

 

 

幸村は身長のわりに貧乳だ。スレンダーと言うべきか。

 

 

「はーい!ちゃーん!」

 

「しかも、はーい、ちゃーん、ばぶしか話せないし.....」

 

「あぶぶぶぶぶぶぶ.....」

 

「あっ、新しい言葉」

 

 

その次の瞬間だ、清正が槍を持って馬で突っ込んでくる。そして、瞬きもする間もなく槍の切先を直竜の胸に刺した。

 

 

「お前、隙ありすぎ」

 

「あぶぅ?」

 

「!?」

 

 

確かに心臓を突き刺した。にも関わらず、その赤ん坊少女はニヤリと微笑した。そして。

 

 

「ちゃーん!」

 

 

ヌルリと背中の大太刀を両刀抜き、二刀流にて上段より構える。

 

 

「ちゃんと忠告したではありませんか」

 

 

隣りで順慶が言う。

 

 

「彼女は"人造人間"であると」

 

「HAAAAAIIII!!!!」

 

「くっ!?」

 

 

清正は緊急回避で馬からわざと落馬した。残された馬は直竜の大太刀によって、頭から真っ二つに両断されてしまう。

 

 

「この子はかの医療の奇術師、"曲名瀬玄朔"の最高傑作。人造人間。天龍様のお言葉を借りるのなら『さいぼおぐ』なるもの、鋼の装甲で固めた心臓は槍でも鉄砲でも貫けません!」

 

「ばぶ!」

 

 

すると、直竜の背中の肉繊維が変質を開始し、中からアサルトライフルが2丁出現する。

 

 

「吸血鬼の肉体!?」

 

「流石は山中鹿之助。ただの痛がり屋ではないようですね。その通り、この子の肉体改造において、吸血鬼の.....それもドラキュラたる天龍様の血肉を使いました。それによって、この時代の技術医術では不可能な改造が容易に成せたようですの。今、この子の体内には"48"の特殊兵装が埋め込まれてましてよ」

 

「うっへ〜!本物の化物とはああゆうのをいうのよさ」

 

「いえ、本当の化物は彼女を改造したという曲名瀬玄朔の方です!.....一体、どのような精神構造をすれば、かような非人道行為が成せるのか!」

 

「どっちも化物!駆除対象!!」

 

 

清正が駆け出す。

 

 

「ばぶ!」

 

 

直竜がアサルトライフルを筋繊維を器用に操り、清正方面に銃口を向け、発泡。アサルトライフル『AK-47』の毎分600発の弾丸が清正を襲う。清正は人間離れした瞬発能力によってそれを全て走って避ける。そして、清正は直竜を槍の間合いに追い詰める。

 

 

「じ、えんど!」

 

「ちゃーん!」

 

「うっ!?」

 

 

直竜が槍並みに長い大太刀を振りかざす。一太刀を避けられても、もう一太刀ばかりは避けられそうにない。清正は止むを得ず、後退する。

 

 

「HAAAAAAAIIIII!!!!」

 

 

直竜が左腕から火炎放射器を出現させ、清正に発射する。

 

 

「くっ!!.....こいつ、隙無し!!」

 

「虎っち!!」

 

「私を忘れてもらっては困りますよぅ!!」

 

「うっ!?」

 

 

正則を順慶が襲う。槍による鍔迫り合いが始まる。

 

 

「邪魔だのよ糞尼!!市松はこれから虎っちの救援に向かうのよ!黙って道開けろブスッ!!」

 

「口の悪い小娘だこと!!」

 

 

順慶の瞳が紅に染まる。

 

 

「ふえっ!?」

 

「驚きました?私も遂に眷属に成れましたの!まぁ、あの御方の愛人としての役目もありましたし、あの御方自身にはずっと反対されていたのですが、遂に!遂にやっと成れたのです!」

 

「便廃亜(ベンパイア)!」

 

「ヴァンパイアじゃボケェ!!」

 

 

順慶が正則を槍で押し出し、ふっ飛ばした。

 

 

「のわぁぁぁっ!!?」

 

「もう頭きた!!この小娘は殺す。何が何でも、是が非でも抹殺する!覚悟しろチビ餓鬼!」

 

「うぅ.....ま●こに槍突っ込んで奥歯ガタガタ鳴らすぞブスッ!」

 

 

不利な状況でも威勢だけは人一倍ある。

 

 

 

 

 

 

「なんか私達だけ遅れとっちゃいましたね」

 

「むむっ.....」

 

「じゃあ、ボチボチ始めましょうか」

 

「くっ.....!」

 

「ご安心を。私は彼女達のように肉体改造を受けたり、人外に転生なんて事はしておりません。只の人間ですよ?」

 

「むぅ......」

 

「.....でも」

 

 

気づいた時には遅い。幸村は既に目前にまで高速移動していた。

 

 

「誰よりも強いですよ?」

 

「うくっ!?」

 

 

清正同様に落馬して避ける鹿之助。案の定、鹿之助の馬は幸村の十文字槍によって首をかっさられた。

 

 

「ごめんなさいお馬さん。後で念仏を唱えてあげる」

 

「くっ.....!?」

 

「じゃあ、早急に終わらせますか。油断無く、躊躇い無く、殺される前に殺してあげますよ」

 

「このっ!」

 

「ふふっ」

 

 

鹿之助の槍による全力の突き。しかし、幸村はいとも簡単に弾いてしまった。

 

 

「何っ!?」

 

「これはどうです?」

 

 

すると幸村は、十文字槍をまるで棒切れでも持つように軽々と振り回し、鹿之助に驚異的な攻撃を浴びせ続ける。

 

 

「うぐっ!!」

 

「足元がお留守ですよ七難八苦!!」

 

 

槍の柄を掛けられ、鹿之助は尻餅をつく。

 

 

「おのれっ!!」

 

「あっははははははははははは!!!」

 

 

同じ十文字槍でも筒井順慶のものとは明らかに違う。宝蔵院流を主体とする彼女の槍術とは明らかに。この真田幸村の槍術に型はない。何の流派もない。全て我流。

故に読めない。

殺し合ってみてればよく分かる。読み合いにおいては、型に嵌っているからこそ繰り出せる強さも存在するが、型に嵌っているからこそ読み易いというものもある。処が奴は我流。変幻自在。己の気分でコロコロと戦い方を変える。

そうか。この真田幸村という姫武将は、何処かの道場に通っただとか、師匠に教わったとかで強くなったわけではないのだ。あくまで実戦。足軽から始め、コツコツと戦場で己の技量を高めたのだ。それが、天竜という悪魔と出会って自分に合った確たる戦い方を見つけ、ここまで強くなったのだ。

 

だがそれは、凄い話でもない。極々普通の事なのだ。今時なら誰でもやってる。特に下級武士なら皆だ。だが、それでも。この真田幸村という姫武将が大名として、一軍の将としてまでその技量を高める事が出来たのは、言う間でもなく、彼女の才能による所が大きいのであろう。戦う為に生まれてきた存在。神童。あの魔王天龍と同じ天才。

 

 

「羨ましくも思うぞ真田幸村。この山中鹿之助とて己の半生を戦に投じてきた。だが、それは一筋の才能には遠く及ばない。私の幾千万もの努力とて、天才である其方から比べれば、露ほどものであるのなだな。お前も太閤も、真の天才だ」

 

 

鹿之助は幸村を褒めた。あくまで心に思っている事を率直に述べ立てた。しかし、幸村は.....

 

 

「..........何ですかそれは?侮辱のつもりですか?」

 

「何っ?」

 

 

幸村は憤怒の表情を浮かべている。

 

 

「自分には才能が無い?お前は天才だぁ?巫山戯んなって話ですよ!!」

 

「えっ!?」

 

「私が努力をしてこなかったとでも?そんなわけあるはずが無い!私はここまでに至るまで、ありとあらゆる努力をしてきた!土を、泥を啜ってでも這い上がってきた。それを『天才』などという安直な言葉で綴られるなど、甚だ腹立たしい!かような言葉で簡単に見切りを付けられるなど、只々憎らしい!

これは天龍様も言っておられた!」

 

 

 

『天才という言葉は"天から与えられた才"と書く。つまりそれは、それまでの努力が全て無きものとされるものなのだ。それは最早、差別に等しい。更にだ。天才という言葉を使う事で努力を怠った者が諦める際にも使われる。才能なんてものは誰にだってあるものだ。だが、それを見つける事が最も難しい。せっかくの才能も使えなければ、見つける事ができなければ、それは無いに等しい。凡人と呼ばれる者だって努力はしていよう。だが、努力の方向を間違えている。才能を活かせる努力が出来ずにいる。しかし、これには"運"も関わってくるから、仕方ないと言えば仕方ないのかもしれない。

それでもだ。努力した者こそが才能を得られる事には違いない。かくゆう俺も、努力によって這い上がってきた人間だ。だからこそ俺は、何も知らぬ他人に天才などと呼ばれる事を、著しく嫌う』

 

 

 

「それを聞いてこの幸村、心を入れ替えました!私もまた天才と呼ばれる事を嫌おう!だからこそ、先程の発言を撤回して頂きたい!!」

 

「...........すまなかった。何も知らずに、過ぎた言葉を申したよ。謝ろう」

 

「ふ〜ん..........あっ、でもこんな事も言ってましたよ?」

 

「?」

 

 

 

『でも.....それでもいるんだよ。文字通り、神により才能を与えられ、その才能を使い熟す、努力だけではどうやっても超えられない、本当の天才って奴がな』

 

 

 

「その人物は鹿之助さんもよくご存知の御方ですよ」

 

「.....まさか!」

 

 

それこそ、天龍が唯一無二の宿敵とする人物。

 

 

「さぁ、無駄話はここまでです!お互いの軍も佳境に入っています。ここでさっさと決着を付けましょう。さっさと殺し合いましょうよ!」

 

「.....うむ。私も全力で向かわせてもらう。これが私、山中鹿之助の乾坤一擲の行末とならん事を!我に七難八苦を与え給え!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

遅れて現れるのが主人公。英雄というものだろうか。だとすれば、俺はその役割を心から降りたいと思う。そして、ただの一般人としてでいいからやり直したい。そう思う。

 

 

「しっ..........鹿之助」

 

 

良晴は遅れた。遅すぎた。天龍の土砂崩れを利用した罠をなんとか潜り抜けてきた良晴の目に入ったものは.....

 

 

 

幸村に討たれた直後の山中鹿之助の姿だった。

 

 

 

「鹿之助ぇぇぇ!!!」

 

 

良晴が慌てて彼女に駆け寄る。それに乗じて幸村が下がった。

 

 

「鹿之助!しっかりしろよ鹿之助!」

 

「うぐっ...........殿.....ぉ」

 

「鹿之助ぇ!!」

 

「殿.....戦に勝ったの.....ですか?」

 

「えっ?」

 

 

彼女は十文字槍によって胸を突かれた。それにより、見るからに致命的な量の血液がダラダラと流れ出している。それだけではない。頭部にも大きな切傷がある。そこからは、血液以外に脳と思われるものまで垂れている。ハッキリ言って死ぬ寸前だ。よくこんな状態で戦えたものだ。

 

 

「殿.....が来れた.....という事は.....戦に勝ったのですね?.....太平な日の本が来たのですね」

 

 

脳へのダメージにより、記憶が混乱している。

 

 

「あのな..........鹿之助」

 

「はい.....」

 

 

真実を伝えなければならない。しかし、希望に満ちた眼差しの鹿之助を裏切る事となる。散々苦悩した挙句、俺はなんとか口を開いた。

 

 

「戦は.....」

 

「はい.....」

 

 

 

すまない鹿之助。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「大勝さ!俺が率いる関白軍がドアーッと関東まで流れ込んでよう!天龍軍の奴らを追い詰めたんだ!天龍の奴も暴れたんだけど、俺が直々にぶちのめしてやったんだぜ?見せたかったなぁ!

お陰様で、俺の天下取りは大成功さ!

皆が.....皆が待ちに望んでいた平和が来たんだ!」

 

 

 

 

 

「それは.....おめでとう.....ございます」

 

「鹿之助!お前のお陰だぞ?お前がいなかったらこの勝利は掴めなかったんだ!お前の.....お前が俺の役に立てたんだ!」

 

「.....殿」

 

「だから!............これからも.....俺の側にいてくれよ.....」

 

「殿.....泣いておられるの.....ですか?」

 

「えっ?」

 

「駄目ですよ............これからは皆が笑って暮らせる世を作るのでしょう?.....その殿が............泣いていては.....示しがつかぬ.....ではありませんか」

 

 

弱々しい手付きで涙を拭ってくれる。

 

 

「そっ、そう.....だな!...........こうか?」

 

 

無理に笑顔を作ってみせる。

 

 

「やっと.....笑ってくれた。.....殿は笑っているお顔が一番魅力的なんですから、いつも.....いつも笑っていて下され.....」

 

「あぁ!」

 

 

彼女の手を握り締め、力強く頷く。

 

 

「尼子家再興のは叶いませんでしたが.....これでも...........いいですよね....."殿"」

 

 

これは恐らく、既に亡き尼子の殿を言っているのだろう。

 

 

「七難八苦...........承りました.....」

 

 

そう言い終わり、彼女はだらりと垂れてしまった。

 

 

「.....鹿之助?」

 

「...........」

 

「冗談やめろよな.....何でお前が.....」

 

 

勝家に続き、鹿之助までも.....

 

 

 

 

「うあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!」

 

 

 

 

泣いた。泣きじゃくった。戦地のど真ん中にもかかわらず、良晴は号泣する。戦闘を行っていた正則達も両軍の兵達まで、動きを止める。そして.....

 

 

「そうさ...........勝たなきゃ」

 

 

突然泣き止んだかと思うと、ボソリとつぶやき、幸村に視線を向ける。

 

 

「かっ、仇討ちでもするつもりですか?いいでしょう!相手にとって不足はありません。いざ!」

 

「真田...........幸村」

 

 

良晴は言った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「俺の側につかないか?」

 

 

 

 




鹿之助死亡会でした。
姫武将の死亡インフレが止まりません!
自重せねば。
そして何故か幸村を勧誘する良晴。
次回予告
姫武将の叫び
〜戦わなければ得られないものもある〜

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。