天翔ける龍の伝記   作:瀧龍騎

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最近、不定期更新になってますね。
本編が大分ごたついてきているいるので、小休止をはさみました。でも、今後のフラグが混ざってたり、混ざってなかったりするので、捉えるとすれば、84,5話ですね。


番外編7

16話 京極竜子

 

これは賤ヶ岳の合戦が始まる数日前の事。柴田軍に対抗する為の軍隊を大坂に集結させているさなか。そんな時期に良晴は数人の護衛を連れて大坂の町を巡回していた。

 

 

「ひえっ!?関白殿下様や!」

 

「あのお優しかった殿下様も変わったのう」

 

「太閤殿下様の影響やろか?」

 

「次の魔王め.....」

 

「平和になったばかりの天下を再び乱しおって」

 

 

良晴が通る度に民の噂話が聞こえてくる。

 

 

「くっ!お兄ちゃんの悪口ばっかり言ってるよ!あの下人共を引っ捕らえて来るのよさ!」

 

 

福島市松正則が言う。

ちょっと頭の弱そうな喋り方が特徴だ。

 

 

「視線、五月蠅い。奴ら駆除したい」

 

 

加藤虎之助清正が言う。

何故か片言の面倒臭い日本語が特徴だ。

 

 

「落ち着けお前ら。俺らは一応真の平和を得る為に行動を起こしたんだ。それこそ、力なき民を守る為にな。なのにお前らがその調子だとなぁ」

 

「お兄ちゃんを蔑んだ時点で、奴らに生きる価値なんてないのよさ!」

 

「激しく同意。お兄ちゃんのお人好し、異常」

 

「お前らが三成ちゃんと仲悪いの、単なる同族嫌悪な気がしてきたぞ」

 

「あいつなんかと一緒にするんじゃねーのよさ!」

 

「賛同。三成、排泄物と同義」

 

 

難儀だなぁ三成ちゃん。

 

 

そんな時だ。1人の女性が良晴達の前にフラフラと出てきてしまう。

 

 

「そこの女、邪魔よ!どくのよさ!」

 

「私達ここ通る。貴方、障害物」

 

 

俺の妹分達がこんなに口が悪いわけがない。

 

 

「すみません。こっちの方がどきますね」

 

「お兄ちゃん!」

 

「兄者阿呆。でも、嫌味なし。ポッ(*´艸`*)」

 

「いっ、市松もお兄ちゃんが好き!」

 

「はいはい」

 

 

良晴も2人の扱いには慣れている様子だった。

 

 

「あのう?貴方は?」

 

 

その女性が聞いてくる。

 

 

「.....豊臣秀吉だ」

 

「あぁ、やっと会えました」

 

「ん?」

 

 

彼女はよく見れば、月下美人と言えるような美貌を持っており、見ているだけでこちらがドキドキしてしまう。

 

 

「きっ、君は?」

 

「ふふっ、京極竜子です」

 

「ふぇっ!?」

 

「「ん?」」

 

 

護衛の2人には分からなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

大坂城本丸。部屋で二人きりの良晴と彼女。

京極竜子。史実では、京極高次の妹として生まれる。母は浅井家の人間であり、浅井長政は叔父にあたるという。始めは若狭守護、武田元明の妻になる。元明は本能寺の変後明智光秀に付き、従軍したものの、山崎の戦いにて討死。竜子を含めた一族は勝者であった秀吉に捕虜として連れ去られ、その際に秀吉の側室になったとされる。生きる為に、夫の仇の女になったのだ。境遇が似ており、従姉妹同士でもあった浅井三姉妹とは仲が良かったらしい。

 

ところがだ。この世界では本能寺の変も山崎の戦いも起こってはいない。夫である武田元明と仲睦まじく暮らしているはずだ。にもかかわらず、彼女は何故ここに?

 

 

「武田元明?誰ですそれ?」

 

 

大坂城に戻って早々、彼女がそう言い放った。

 

 

「すると何か?あんたはまだ未婚で、武田元明なんて全然知らない。今日は個人的に俺に用があって来たと?」

 

「はい♡」

 

「んで、俺に何の用なのよ。言っとくが俺は今、戦の準備で忙しいんだが?」

 

「はい♡私を性奴隷にして下さいませ?」

 

「.......................」

 

「殿下?」

 

「パーデュン?」

 

「?」

 

「すまないが、もう一回言ってくれ」

 

「この名称じゃ分からないですね。じゃあ言い直しますね。.....私を性欲処理の肉便器にして下さいませ」

 

「言い直して余計悪くなったぞ!?」

 

 

この時代に肉便器なんて名称があったのか!?

 

 

「ちょ〜と待つがよろし〜!!」

 

「待機、要求!!」

 

 

正則と清正が部屋に乱入した。

 

 

「そこの女!破廉恥だ破廉恥!お兄ちゃんのナニをアッーしていいのはあちきだけなんだらねっ!おめーはすっこんでろブスッ!」

 

「落ち着け市松!お前が喋ると話がややこしくなる!」

 

「女、城から帰る。兄者、私を娶る」

 

「虎之助も対抗してんじゃねぇ!」

 

 

 

「黙るがいいこの下女共が」

 

 

 

「「「!!!?」」」

 

 

竜子が突如暴言を吐く。

 

 

「関白殿下の好みの女性は私のような大人の肉体を持つ美女です。決して貴方達のような、年の割には発育の遅れた、雌の糞餓鬼が出る幕ではありません」

 

 

可愛い顔して口悪っ!?

こいつらといい勝負だな。

 

 

「なんりゃ、とこらぁ!」

 

「市松噛んだ.....ぷぷっ」

 

「うるしゃいぞ虎っち!!」

 

「おい、お前らいい加減に.....」

 

「おや?おやおやぁ?私から見れば惨めにびぇーびぇー喚く、小猿にしかみえませんわぁ〜!」

 

 

竜子のその言動に2人がプツリと切れた。

 

 

「にゃにお〜!!?

もうo(`ω´*)oプンスカプンスカ!!

殺しちゃうもんね〜!!!」

 

 

言葉こそ軽いが、その小さな身体より滲み出る殺気は尋常ならないものであった。『関白軍の若き猛牛』と呼ばれた次世代の姫武将、福島正則。

いくつになっても童心を忘れない彼女は、遊び感覚にて戦地で暴れる。戦場で誰よりも清々しき笑顔で敵兵を惨殺する野獣。一度暴れれば、誰も手がつけられない。

 

 

「そこの女、殺す。これ、決定事項」

 

 

『関白軍の若き猛虎』こと、加藤清正。

実は、織田の虎と呼ばれた前田利家こと犬千代の弟子でもある。この間やっと犬千代より与えられた朱槍を持つ。突破力こそは正則に劣っている。だが、戦術、戦略、財務、城作りなどをオールマイティに熟す順応性。更には戦闘時、凍てつくような彼女の冷酷な視線を前にすれば、戦いが始まる前に戦意が殺され、一網打尽にされる。

あの口調は犬千代の真似らしいが、あんま似てない。ちなみに、帰国子女だとか、言語障害だとかではない。ただの中二病だ。彼女には格好いい口調であると捉えられているのだろう。梵天丸みたいな邪気眼だけが中二病ではないのだ。

 

 

「やれるもんならやってみなさいな」

 

 

竜子が邪悪な笑みにて言う。

 

 

「殺すったら殺すのよさ!」

 

「抹殺開始」

 

 

だが、竜子の挑発は止まらない。

 

 

「いいからやれよ雑魚共」

 

「「死ね!!雌豚が!!」」

 

 

2人の声がハモる。そして、どこに仕込んでいたのか槍を取り出し、竜子に襲いかかった。

 

 

 

「いい加減にしやがれテメェらぁ!!!!!」

 

 

 

「「!!!?」」

 

 

良晴の怒号に2人の攻撃はビタリと止まった。

 

 

「分を弁えろよ餓鬼共!

俺の目の黒いうちは勝手は許さねぇぞ!!」

 

「はっ、はいお兄ちゃん!!」

 

「御意のままに兄者!」

 

 

慌てて答える。良晴に怒りに恐怖し、従っているのだ。まるで躾をされた飼い犬のように。

 

 

「素晴らしくドスの効いたお声ですねぇ。任侠者に負けず劣らずの迫力ですぅ。ヤクザにでもなられたらどうです?」

 

「ふざけるな!一体何が目的なんだ京極竜子!」

 

「やっと本性が出ましたね」

 

「何っ?」

 

「ふふっ」

 

「ふぇっ!?」

 

 

次の瞬間だ。竜子が正則の首根っこを掴み、顔面から床の畳に叩きつけたのだ。

 

 

「いっ、市松!!?」

 

「痛ぁ〜い!!」

 

 

顔は真っ赤で涙と鼻水が出てるが、無傷だった。

 

 

「えいっ!」

 

「うっ!!?」

 

 

正則に気を取られた清正が背後に移動した竜子によって思い切り蹴り付け、飛ばされ、障子に頭から突っ込む。

 

 

「無念。ガクリ」

 

 

気絶したフリをしてるが、清正も無傷だ。

 

 

「くふふ.....」

 

 

市松達が頑丈なだけなのか、この京極竜子という女が絶妙な加減によってそれを成しているのか。竜子の余裕の表情からは後者と受け取れる。しかしそれが事実であるのなら、彼女に隠された力はどれだけあるのだ?

 

 

「京極家の家督は兄が継いだので、私は姫武将ではなく、一介の姫として育てられました。しかし、独自で武術も修得しておりますの。護身術ぐらいですけどもね」

 

 

嘘だ。この女の覇気は百戦錬磨のそれだ。

 

 

「強い姫はお嫌いかしら関白殿下?」

 

「.....いいや」

 

「そうでしょうね。色とりどりの姫武将を毎日美味しく戴いてるぐらいですから」

 

「..........」

 

「その末席に加えて頂ければ」

 

「断る」

 

「あれま」

 

「俺が抱く対象はあくまでも、俺が好きになれた女だ。俺を好きになってくれる女だ。そこに愛があるからこそ、俺は抱く。だがあんたには、それが当てはまらない。俺にはあんたが別の理由で俺に近付いて来たようにしか思えない」

 

「だったら、あちきも抱いてよお兄ちゃん〜!」

 

「同意!同意なの兄者!」

 

「俺を兄と呼ぶ奴を抱けるか!!」

 

 

もう復活した妹分共がぼやいている。

 

 

「ぷっくくくくくく.....」

 

「何が可笑しい?」

 

「だって、抱く対象に対して求めてるものが何かと思ったら、まさか"愛"と言われるなんて思いもしませんでしたもの.....今時、三文芝居でも古いですわよ?」

 

「何っ?」

 

「ただ性欲を解消する為、ただ"食欲"を満たす為に彼女らを貪り食っている分際で、何を格好つけてんだってお話」

 

「!!?」

 

 

今、食欲と言ったかこの女!?

 

 

「何故、それを知っている!?

お前は何者だ?天龍の手の者か!?」

 

「ふふふ。さて、どうでしょうかね」

 

 

竜子はスクッと立ち上がったかと思うと、出口の方へスタスタと歩いて行ってしまった。

 

 

「まっ、待て京極竜子!!」

 

「出直しますわ。いずれ、月の綺麗な晩に」

 

 

そのまま部屋を後にする。良晴が慌てて追いかけようとしたが、部屋を出た時には、既に彼女の姿はなかった。

 

 

「あの女は.....一体」

 

 

疑問だけが不気味に残った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

三日後、大坂城。

 

 

「ふふ〜ん♪ふ〜ん♪」

 

 

黒田官兵衛が自室の化粧台にて身を整えていた。

 

 

「よし、バッチリだね」

 

 

普段の彼女は女らしく化粧をする事なんて、まずない。だが今日は"あの日"なのだ。

 

 

「さ〜て!官兵衛ちゃんが行っきますよ〜♪」

 

 

超上機嫌だった。

官兵衛が向かった先は良晴の部屋。

 

 

「ふふふ」

 

 

前に記述した通り、良晴は魔力補給の方法として、食人よりも性行為を頻繁に行っている。人狼となった彼が唯一残している優しさもそこに該当するだろう。

その性行為であるが、一般人と行為に及ぶ際、体内の気力の大半を良晴に吸収されてしまう為、対象となる女性は例え体力のある姫武将だろうとも、たった1回でバテてしまうのだ。しかし、人狼化は大量に魔力を消費する為、それだけ性行為の回数も必要になる。それ故に良晴は多くの女性と関係を結ぶ破目になった。ちなみに、相手が男性でも問題はないのだが、良晴はあえてそれを避けている。

 

だが例外は存在する。それは対象の女性が術師の場合、妖怪の場合だ。これらは元から体内の魔力が多く、性行為で魔力を吸われても、大きな問題にはならないからだ。

その為、半兵衛や官兵衛は良晴の相手になる回数が多い。官兵衛は最近になって陰陽術の修行を再開した半人前ではあるが、『術式回廊』はきちんと存在するので問題はない。半兵衛とは、魔力補給とは別に、房中術によって真逆に魔力を送ったりもしており、魔力循環を行う仲だ。

実は妖怪である後鬼とも関係を持っているのだが、この場ではあえて伏せておこう。

 

話は戻る。

 

 

「ふふふ〜ん♪」

 

「ご機嫌ですね。何か良い事でも?」

 

「へへへ。今日は久々に良晴が相手を..........へ?」

 

「くふふ」

 

 

官兵衛が振り返り見たものは、光る紅い瞳。

 

 

『帰って眠りなさい。今日は貴方の番でなくてよ?』

 

「.....シム。帰って、寝る。今日はシメオンの番にあらず」

 

 

催眠術によって、虚ろな目の官兵衛は来た道をスタスタと引き返してしまった。

 

 

「さてさて、夜這い夜這い♡」

 

 

 

 

 

 

その女が良晴の部屋に入室する。

良晴は布団に入りながら、呑気に漫画を読んでいた。

 

 

「来たか官兵衛。お前と協力して修得した召喚術だけど、わりと順調だぜ?とりあえず、『ドラグナーボール』を召喚して読んでるんだけど、一度読んだ事ある漫画しか召喚できないんだよねぁ。こんな事なら、餓鬼の頃にもっと読んどきゃよかったぜ」

 

「今だって餓鬼なくせに」

 

 

その女性は"官兵衛の声で"言う。そして良晴の布団に潜り込んでいく。

 

 

「おいおい。今日はやけに積極的だな」

 

「くふふふ」

 

 

女は良晴の下半身を弄びだす。

 

 

「うっ、ちょっ.....官兵衛!お前急に上手くなったな」

 

「それはどうも」

 

「えっ?」

 

 

聞こえたのは官兵衛の声ではなかった。慌てて掛布団をひっぺ返す。そこにいた女は、京極竜子だった。

 

 

「へ?...........へ!?」

 

「ひょんあんふぁ」

 

 

モノを咥えながら挨拶。

 

 

「うわぁぁぁっ!!!?」

 

 

慌てて竜子を引き離した。

 

 

「あら、乱暴な方」

 

「ふぅ.....ふぅ.....ふぅ.....」

 

 

良晴は恐怖した。人狼であるはずの彼がだ。京極竜子からは何か邪悪な気配を感じていた。少しでも油断すれば喰われてしまいそうに。そんな女がだ、文字通り己の急所を握っている。そんな状況で恐怖するなという方が無理だ。

 

 

「なっ、ななな!!何であんたが!!?」

 

「申したでしょう?月の綺麗な晩に会おうと」

 

「まだ3日しか経ってねぇし!それにまだ三日月だ!」

 

「あら、三日月でも月は綺麗ですわよ?」

 

「ふぐぐぐ.....」

 

「んじゃ、頂きますねぇ」

 

 

再び下半身に手を伸ばしてくる。

 

 

「だからやめろって!あんた怖い!!」

 

 

このままだと女性不信になる!

 

 

「あんたは何なんだ!何が目的なんだ!?」

 

「勿論、殿下の肉便器になろうと.....」

 

「嘘つけ!!そんな態度微塵もねぇだろ!!」

 

「あら、バレました?」

 

 

隠す様子もない。

 

 

「でも、男と女が裸で床にいるのです。やらないというわけにはいかないでしょう?」

 

「うえっ!?」

 

 

いつの間にか服をぬがされていて、竜子も裸だ。

 

 

「さぁ〜、夜はまだ長いですわよ♡」

 

「らめえええぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「アアアアアァァァァーーーーー!!!!」

 

逆レイプされた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ぐすっ、ぐすっ、酷いよぉ.....」

 

「女々しいわね。それでも人狼なのかしら?」

 

「だってぇ...........ん?」

 

「あ.....」

 

「今あんた何つった!?」

 

「あちゃー」

 

「何でお前が俺の正体を知っている!?」

 

 

それだけではない。良晴はいつも以上にリフレッシュしていた。それだけ多量の魔力を吸収したのだ。にもかかわらず、竜子は全く衰えている様子が見受けられない。

 

 

「あぁ、私はなんて慢心家なのだろうか。いつもこの油断が、己も周囲も巻き込む。さしずめ、私は魔性の魔女ね」

 

「誤魔化すな!」

 

「え〜!言いたくないです〜!」

 

「ふざけんなよ!このままじゃ犯され損だ!」

 

「いいじゃない。時代はFreeSEX。いつまでも古く考えずに、どんどんやりまくるべきなのよ!レイプだって、相手が感じれば合法よ!」

 

「話をすげ替えんなっ..........ん?」

 

「.....またやっちゃった」

 

 

なんか竜子の台詞がこの時代の人間にマッチしていない。まさかこいつ.....

 

 

「あんた......未来人か?」

 

「ミライ?それはどこの国ですの?それとも料理?私は今、沢山戴いてお腹いっぱいです」

 

「今更そんなボケいいから!!」

 

 

絶対にこいつ未来人だ!

 

 

「あぁ!私はなんて愚かなのか!SEXの余韻で判断力がシッチャカメッチャカに!こんな私の愚行に幾万もの人物に迷惑を被ったか!私はさしずめ、迷惑な世界のノイズ!」

 

「さっきから何だ!!それ、知ってる気に食わない奴思い出すからやめろ!」

 

「それって太閤殿下?」

 

「よく分かったな.....あいつだっていつもそうだ。やってる時は自信満々に下劣な行為を繰り返し、終わって被害が大きくなってから、

やれ『俺はなんて酷い行為をしてしまったんだ』とか!

やれ『さしずめ、俺は邪悪な魔王か』だとか!

ウザいだけなんだよ!きっと読者も同意見さ!」

 

「自身の罪を反省できるなんて、立派じゃないですか」

 

「違う!ただただ自分を憐れむだけで反省なんかしてないんだ!だから同じ事を何度も繰り返す!!あんなのはただのアピールさ!

『俺は大変な事をしてしまった。これは俺も望んでいなかったんだ。やらないといけない事なんだ。俺もまた被害者なんだ。こんな俺って、可哀想でしょ?』

ってな!虫が良過ぎんだよ糞が!!」

 

「ちっ!」

 

 

竜子は舌打ちの後、良晴の顔面を殴った。

 

 

「痛ったぁ...........なっ、何すんだよ!!」

 

「いや、なんかムカついたから」

 

「はぁ!?」

 

「私から言わせれば貴方もウザいわ。

『天龍を倒す事は自分の指名。これは正義の行い。天龍を殺す悪い事だけれど、自分は正義だからやってもいい』

そんなのただのアカ派の主張じゃない。

アカ派って知ってる?日本赤軍とか連合赤軍とか、自分を特別な存在と思い込んで、平気でテロリズムを起こし、多くの民間人を殺し、ただただ馬鹿みたく暴れる異常者集団。貴方はそれと同類。

今度の戦争なんてまさにそう。色々な屁理屈こねてるけど、結局はただの私情じゃない。せっかく平和になった世を何でまた戦乱に戻したの?

まぁ、太閤殿下が気に食わなかったのはまだ分かるわ。でもそれならば、何で彼と直接対決しなかったの?何で戦争なんて、無駄に被害が広がる方法を取ったの?」

 

「それは.....」

 

「答えは一つ。勝つ自信がなかったから。だから協力という名目で他人を巻き込み、安心感を得た。平和を崩した罪も、大勢で協調した事により軽くした。口八丁で皆を誤魔化し、騙して、自分のエゴに、修羅道に無理矢理引き込んだ。とんだ大悪党よ。そういう貴方に対してうってつけの言葉があるわ」

 

「なっ.....なんだよ?」

 

「『魔王』」

 

「っ.....!?」

 

「貴方は立派な魔王。豊臣秀長に継いでいて、愚かで、醜く、下劣で、極悪な.....皆の嫌われ者。第六天魔王」

 

「.....うるさい」

 

「んん?」

 

「五月蠅い五月蠅い五月蠅い!!!

五月蠅い五月蠅い五月蠅い五月蠅い五月蠅い五月蠅い五月蠅い五月蠅い五月蠅い五月蠅い五月蠅いぃぃぃ!!!」

 

「あらあら、魔王の称号は偉大すぎたかしら。今の貴方は魔王にすら成り切れない、ただのちゃちな小悪魔。虎の威をかる狐ならぬ、サタンの威をかる淫猥なインプ」

 

「手前ぇ!!!!」

 

 

良晴が右腕だけを人狼化させ、竜子の細い首を掴む。

 

 

「だからこそです」

 

「!?」

 

「.....完全には"こちら側"ではないからこそ、貴方はまだ戻れる。魔王と蔑まれる地獄の道ではなく、元の人間としての道へと軌道修正ができる。.....貴方はまだ選択の余地があるの!私と違ってね。

だからよく考え直して。貴方に相応しい生き方はきっとあるはず。

魔王としての生き方は辛い上に虚しい。.....結末はいつだってBADENDなのだから」

 

「あんたは.....」

 

 

その時だ。

 

 

「 此の竹葉の青むが如、此の竹葉の萎むが如、青み萎め!またこの塩の盈ち乾るが如、盈ち乾よ!また此の石の沈むが如、沈み臥せ!」

 

 

呪文の詠唱と共に、部屋の外から熱風が吹き荒れ、京極竜子のみを吹き飛ばした。

 

 

「ちっ!」

 

「大丈夫ですか良晴さん!」

 

「半兵衛!?」

 

「官兵衛さんが何故か催眠術に掛かっていたのでまさかと思い、式神を飛ばして確認しました。予想は当たりました!」

 

「式神!?」

 

 

半兵衛は懐から用紙を取り出し、良晴に渡す。

 

 

「これは?」

 

「京極家にて調べました。それが本物の彼女です」

 

 

そこに描かれていたのは京極竜子の人相書。しかし、それには目の前にいる月下美人ではなく、おかめのようなガマガエルのような、小太りの女性の絵が描かれていたのだ。

 

 

「これが本物の京極竜子って事は.....こいつは?」

 

「偽者です。素性を偽って、殿に何をする気だったのですか!?」

 

「あちゃちゃのちゃ。せっかく領地を大坂から遠ざけたのに、軍師として単身で大坂に来てるんじゃ意味なかったなぁ。官兵衛ちゃんは出し抜けても、君は流石に無理か」

 

「貴方はまさか.....」

 

「とりあえずは退散するわ。良晴君に魔力あげすぎて私でも一応疲れているの。ここで貴方と術比べする余裕もないわ」

 

 

すると竜子の足元が霧のように崩れ、段々と消えていく。

 

 

「まっ、待ってくれ!あんたは一体!?」

 

「いずれ分かる日が来るわ。その時まで御機嫌よう」

 

 

竜子は霧となって消えてしまった。

 

 

「半兵衛、あいつが誰か分かったか?」

 

「えぇ、まぁ」

 

「マジか!?教えてくれ!!」

 

「いえ、自分で気づいた方がいいと思います。多分彼女は.....あの方はきっと、良晴さんの最大の目標となる方でしょうから」

 

「???」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

大坂城二の丸の屋根の上。二つの影あり。

 

 

「終わったの?」

 

 

天龍軍外交官、蒲生氏郷が言う。

 

 

「えぇ」

 

 

京極竜子の身体が変質し、男性体になる。

 

 

「お疲れ様ウラド」

 

「あぁ」

 

 

京極竜子は天龍になっていた。

 

 

「m(_ _;)m」

 

「どうしたの?」

 

「気づいたら.....良晴とSEXしちまってた」

 

「自覚なかったの!?」

 

「女体化時は女としての意識が確立してるから、男としての意識はふっ飛ばされちまうんだ。だから、本能でオスを求めてしまった.....」

 

「うわぁ.....」

 

「そんな目で見るなレオパルド」

 

「いや、でも!英雄色を好むって言いますし!今の世の中、男色も珍しくないですよ!?キリスト教は同性愛禁止ですけど.....」

 

「下手な敬語がむしろ腹立つ!!」

 

「うぅ.....」

 

「男と睦むのは別にいいんだよ。前から高虎や吽斗とだって関係持ってたしな。勿論、女体化時にな?」

 

「それをさも当たり前のように語られても.....」

 

「問題なのは相手が良晴だからだ!

生徒だし、弟だし、美少年じゃねぇし、猿だし、性格悪いし、言う事聞かないし、可愛くないし、不潔だし、ウザいし、俺の事嫌ってるし、猿だし、キモいし、猿だし、猿だし、猿だし.....」

 

「後半全部悪口ね」

 

「ふむぅ」

 

「そんな嫌いな相手なくせに、今回は何であんな、救済者みたいな役回りをしたのさ?」

 

「俺は嫌われてるけど、俺はあいつの事嫌いじゃないぜ?」

 

「?」

 

「本当は俺を反面教師にしてほしかった。なのに、今のあいつは俺を後を追っちまってる。このままじゃ、あいつもまた滅びの道へ進む。そうなる前に、対処が必要だった」

 

「まるで先生ね」

 

「ふっ、何を今更.....」

 

 

天龍は微笑する。

 

 

「人生を先に生きているから先生なんだ。先に学んでいるんだ。だからこそ、後から生まれる者を導くのは、先に生きる者の義務なんだよ。皆の先生として、父として、母として」

 

「ふふっ、そうね」

 

 

これにて京極竜子事件は終結する。

 

 

 

 

「機会はまだまだある。お前の教育はまだ序章であるぞ生徒の良晴君?」

 

 

 

 




BL気持ち悪い?そんな事はありません。天龍は男性であると同時に女性でもあるので、今回はただの逆レイプ話です。

ちなみに牛娘と虎娘のモデルは、
福島正則はイリスマキナ(笑)
加藤清正はチャイカ(笑)

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