天翔ける龍の伝記   作:瀧龍騎

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原作の新作が出てますが、それがこの作品にも影響が出ますね。私の作品の上杉謙信は、原作でも登場回数が少なかった頃に、オリジナルで作ったキャラなので、あそこまでハッチャケたキャラだとは思ってもいませんでした。
一応、自分の作品の上杉謙信で通す予定です。

指を鋏で斬ってしまい、痛くて文字が打てず、更新が遅れました。



第八十三話 決戦前夜

「できれば殺さないでほしい」

 

「何っ?」

 

 

上杉謙信が言う。

 

 

「お前、まだ天龍に」

 

「違う!私ではなく卯松の為だ」

 

「.........」

 

「知っての通り、卯松は豊臣秀長の娘だ。にも関わらず、私はあの子を愛してしまった。それ故に私はあの子を諦める事ができず、私は秀長の義娘にならざるを得なかったわ。秀長が死ねば、卯松はきっと悲しむ。

あの子を天涯孤独にはしたくない!だから.....」

 

「黙れ!」

 

「!?」

 

「俺はあいつに両親を殺された」

 

「えっ!?」

 

「それだけじゃない。奴は数え切れない量の人間を、奴の野望の為に殺された。そんな奴を生かせだと?馬鹿も休み休み言え」

 

「しっ、しかし!」

 

「二度は言わぬ!天龍は殺す!

場合によっては奴ら一族郎党皆殺しにする!」

 

「そんな!」

 

「大切な妹まで殺されたくなければ、俺の目に付かぬように隠しておくんだな!俺はよしみで鬼であるお前を見逃しているが、それ以上庇うのは無理であると思え!」

 

 

おかしい.....天皇陛下は神通力のようなもので人の心を読めるはず。なれば、この良晴の野蛮な精神も読み取れたはず。陛下は知ってて見逃したのか?それとも、何か別の方法で神通力を逃れた?

そう謙信が思った矢先。

 

 

「謙信、お前は江戸を攻めろ」

 

「江戸を?」

 

「元は関東管領職を持つ上杉が持つべき領土だ。この際に征服して構わない。幸い今の関東の管理は甘いからな。そのまま征服してしまえ」

 

「さっきまでと言っている事が逆ではないですか!これでは豊臣秀長と全く同じでは.....」

 

「俺のやり方に文句があるのか?」

 

「っ.....!」

 

 

良晴が尖い眼光をぶつける。

天龍の紅の瞳とはまた違う、青銀の瞳で.....

 

 

「お前が二言か上杉謙信?」

 

「.....いえ」

 

「では、言われた通りにしろ」

 

「承知しました、殿下.....」

 

 

良晴がその場を去る。

 

 

「貴方は.....何処へ向かうつもりなの?」

 

 

見えなくなった彼に対して、そっと呟く。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

関東武蔵国、とある茶室。

 

 

「..........」

 

 

京都にはとある茶人の茶室がある。

その名は『待庵』。

わずか2畳に満たない狭い茶室。だが、実際に入った者しか感じられない独特な雰囲気を醸し出す茶室であるのだ。

しかしその茶室の持ち主である茶人は、後に天下人となる者の怒りを買い逃亡した為に、待庵はその天下人の命にて破壊されてしまった。

この武蔵にある茶室。彼女の弟子達が天下人の目を誤魔化してまで密かに作り上げた、今は無き待庵を忠実に再現した茶室。親しみも込めて、この茶室もまた『待庵』とよばれている。

 

 

「..........ふぅ」

 

 

茶道具の手入れを終え、一息つく茶人。そこへ。

 

 

「宗匠、お客人が」

 

「.....ふんふん」

 

「いえそれが..........お客人は太閤殿下でして」

 

「っ.....!?。.....(ついにこの時が)」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「相変わらず狭い入り口だな」

 

 

待庵の入り口は屈まなければ入れない程狭い。当然、帯刀したままでの入室はできない。この茶室に入る時は、士農工商誰だろうと、丸腰でなくてはならないのだ。

 

 

「まるで処女の膣口だな」

 

「...........」

 

 

いきなりのセクハラ発言だ。

 

 

「どっこいしょ!」

 

 

だらしなく胡座をかく天龍。利休は黙ってそれを眺める。この茶室は壁、床、天井全てが黒く塗られており、茶道具も黒。利休の服装も黒。窓も閉められており、天龍の白軍服と、利休の白い肌だけが目立つ。利休に至っては顔だけが目立つので、まるで生首が宙に浮いているかのようだ。

 

 

「久しぶりだな千利休。3年半ぶりだ」

 

「.....(えぇ)」

 

「どうしてた?はじめっから関東にいたわけじゃねぇんだろ?」

 

「.....(各地の大名のもとや、商人のもとにて鳴りを潜めていました。しかし、貴方の手が及ぶたびに移動する羽目となりました)」

 

「まるで親権者が死んで、面倒を見るのが嫌な為に、遺族連中にたらい回しされる哀れな子供だな。最終的にその子が行く先は大抵の場合、施設だ」

 

「.....(何が言いたいのですか?)」

 

「お前はもういらない子なんだよ」

 

「!?」

 

「確かにお前の茶人としての地位は未だ高い。だがだ。今やお前は豊臣家に楯突いた愚か者。天皇に匹敵する発言権があるこの俺の敵となった。この国の敵となったのだ。そんな爆弾をいつまでも匿いたい奴なんざ、ほとんどいねぇだろうなぁ」

 

「っ.....!」

 

「ふんっ」

 

 

冷静だった利休の様子が変わる。

 

 

「.....(茶番はいい!さっさと私を殺すがいい!今日はその為に来たのだろう!?)」

 

「いいや、殺さない」

 

「.....(女子は殺さないという主義か!?それとも、別の使い道で私を利用する気か!?)」

 

「そうじゃない。お前が俺の㊛だからだ」

 

「.....えっ?」

 

 

利休がつい声を出す。良晴の言う通り、その声色はアニメ声優のように綺麗で。

 

 

「すまんな、ちょっとしたドッキリだ。

何しろ"思い出すのに"3年半もかかってしまったんだ。本当はもっと早くに迎えに来る筈だったのにな。予定が狂って、その分だけお前に負担をかける羽目になった。本当にすまないと思う」

 

「天.....龍?」

 

「帰ってこい与四郎。今の俺にはお前が必要だ」

 

 

次の瞬間、茶道具を放って天龍のもとへ突撃した。何をするのかと思えば、彼女はそのまま天龍に抱き着いたのだ。天龍もまた彼女を受け入れる。

 

 

 

 

 

 

「うわああああああああああああああああああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!」

 

 

 

 

 

 

利休は泣いた。必死に天龍にしがみつき、涙も鼻水も垂らし、顔をくしゃくしゃにしながら、大泣きした。天龍は穏やかな表情で彼女の頭を撫でてやっていた。

彼女が泣き止んだのは約10分後の事である。

 

 

 

 

 

 

 

「そんなに嬉しかったのか?」

 

「当たり前。この3年半、"天龍の敵の役"を演じきるのは苦痛だった。信奈とも絶縁されるし.....」

 

「悪かったよ。でもこれからはずっと一緒だ」

 

「ふふっ♡」

 

 

 

 

 

 

 

 

読者も混乱しているだろう。

話は天龍がまだ天竜で、織田家中だった頃に戻る。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「.....(私が天竜の子供を人質にとる!?何で!?)」

 

「織田を倒す為だ。これを気に俺の地位を最下位に落とす事で、織田家中に不信感を抱かせるのだ。期を狙って俺は武田、上杉、北条のいずれかに亡命するだろう。だが、織田家中の不信感はそのままだ。

やがて俺は他家にて出世し、下剋上にてそのまま家を乗っ取ってしまうだろう。それを繰り返し、自軍をどんどん膨れ上がらせる。その上で再び織田とぶつかる。

だが、その頃の織田家中の連帯感はほとんど無い。

倒すのは容易だ。

お前には俺が抜けた後の織田にて、織田家の連帯感を潰してほしい。あくまで陰ながらな?」

 

「.....(はぁ)」

 

「それとだ。俺はこれから今の内容の記憶を消す」

 

「.....(えっ?)」

 

「正確には記憶の封印だ。これからするのは全力の自作自演だからな。成功率を高める為にも必要なんだ。記憶が欠けている事すら忘れているから、当然、自分で封印を解除する事はできない。誰かこの秘密を知っている、能力の高い術師に封印を解いてもらわねばならない」

 

「.....(それは)」

 

「そう、お前だ。始めは敵として俺に対立し、時期を見て俺の記憶を取り戻させてほしいんだ。

だが危険もある。俺はお前が息子を誘拐した極悪人にしか見えていないからな。下手をすればそのまま殺してしまうかもしれない。だからなんとしてでも生き残ってくれ、その為に俺に攻撃する事は構わない。ちょっとやそっとじゃ俺も死なねぇから全力でやってもいい。

あれだったら仲間を増やしてもいい。過激派キリシタンの蒲生氏郷とかが利用できそうだしな。当然、この事は内緒にしてだ。とりあえずは、ガスパールカブラルの策略とでも誤魔化しておけ」

 

「.....(分かった。でもそんなに上手くいく?)」

 

「いくさ。俺が何日かかって作り上げた計画だと思ってるんだ?3日もかかったんだぞ?」

 

「.....(3日.....)」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ところがどっこいだ。箱館海戦の時に記憶を取り戻すはずが、良晴やレオの猛攻が思った以上に激しく、十兵衛までやって来て、俺も調子に乗っちまったせいで、記憶を取り戻す機会を失ってしまった。

ようやく取り戻せたのは、天竜と朧が融合した時の事で、それでようやっと封印が解けたんだ。それまでずっとお前に負担をかける事になってしまった。本当にすまないと思うよ」

 

「いいの。それでも貴方にもう一度こうやって抱きつく事ができた。私の方こそ感謝を示したい」

 

 

箱館海戦にて利休が発動した、巨大な黄金の剣。これにより、天竜の操る黒船を真っ二つにした事から、利休が天竜を良晴ごと殺そうとしたという現実が、それを目撃した誰もが実感した。しかし真実では、あれこそが封印解除の術であったのだ。本来であれば天竜はあれで記憶を取り戻す予定であったが、避けてしまった為に、その後3年半封印され続ける羽目になってしまったのだ。

 

 

「計画通り」

 

「だいぶ狂ったけどね」

 

「言ってみたかっただけさ」

 

 

 

 

全ては自作自演。

天竜が破滅させられたのも、

彼の息子、拾が人質に取られたのも、

織田家中の絆が粉々に壊されたのも、

全ては彼の策略。

 

 

 

 

「これで私も、枕を高くして寝られます」

 

 

そう言いながら、胸の十字架を逆十字に返す利休。

 

 

「それで?私の役目は各地の大名に接近して、豊臣秀吉に対抗しうる有力な軍隊を集めるってとこ?」

 

 

良晴蜂起の知らせは既に天龍にも届いている。

 

 

「いや、その逆だ」

 

「えっ?」

 

「良晴側に付いた大名に接近して、蜂起を止めさせてほしい。お前お得意の話術でな」

 

「どうして?戦しないの?」

 

「状況が悪過ぎる。俺が発案した新政策のせいで、多くの大名に不安が募っている。恐らくは、数多くの大名が良晴に付く。一方、俺は個人の兵しか出せない。精々、真田軍と関東軍、北海道軍ぐらいにしか協力を頼めん。毛利と長宗我部は望み薄だろう。

戦争に参加しない大名を計算に入れても、良晴軍と我が軍の勢力は五分五分。勝つにしろ負けるにしろ、被害の規模は尋常ではない。双方に多大な死傷者が出るに違いない。これから作り上げる政府に必要な人材まで失われてしまう。デメリットしかない」

 

「確かに.....何故こんな事態に」

 

「そもそも!陛下が良晴に戦争を起こす許可を与えた理由が分からない!彼女は誰より戦争を嫌っていた。数多く死傷者が出るのは分かっている事なのに、陛下がそんな事を許すわけがない!絶対に!」

 

「では何故?」

 

「昨日、陛下に真意を問う為に御所へ向かった。しかし、御所には悪魔除けの結界が張ってあった。強力のな。数時間かけて結界を除去する頃には、陛下は御所から消えていた。公家衆に聞いてもオロオロ麻呂麻呂するばかりで役に立たん。多分、陛下が何者かに誘拐された」

 

「結界の触媒は?」

 

「こいつだ。御所の屋根にあった」

 

「これは.....フランシスコ会の十字架!!」

 

「やはりか」

 

 

天龍は十字架をギチギチを握り締め、そのまま潰してしまう。

 

 

「フランシスコザビエル!!

全ては奴の策略か!

陛下を騙り、良晴を騙して擁立し、

影より戦争を起こそうとしている!

この日本を手の平で弄び、神にでもなったつもりか!」

 

 

怒りのままに畳を殴る。しかも、そのまま床をぶち抜いてしまった。

 

 

「ザビエルよ。未だ会った事はないが、貴様程ムカつく糞ったれは他に見た事がないぞ!!」

 

「.........」

 

「利休、ザビエルに会った事は?」

 

「一度だけ。でもすぐに距離を開けられ、それ以降は。恐らく内心を悟られたんだと思う」

 

「そうか。そこは近日まで会っていたというレオやベルに聞かなきゃならんな」

 

「うむり。でもまずは豊臣秀吉との戦争を」

 

「あぁ、あの馬鹿をなんとかする。最悪の場合、奴と戦争しざるを得なくなるかもしれない。その時は全力で叩き潰す」

 

「戦うの?」

 

「1番手っ取り早い戦勝は圧倒的力で叩き潰してやる事だ。長引かせず、苦しませず、短期間の間に確実に征服する。勝つ事こそが最善の策だと、俺は思うよ。殺意の持つ相手に話し合いなどそもそも無駄だ。その根底を断ち切ってしまえばいい」

 

「殺すの?」

 

「その時にはな。良晴は考えられる、唯一俺を殺せる人物だ。だが、死ねばそれまでの奴だったという事さ」

 

「ふむ」

 

「んま、悔いの残らない結果を出したいものだ。俺ならまだしも、自分が原因で不幸な者が現れるなんて、良晴にはまだ感じさせたくないしな」

 

「ふむり」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その時だ。待庵の屋根が吹き飛ばされる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「「!!?」」

 

「天竜!!!」

 

 

そこにいたのは柴田勝家。織田家家老、戦闘隊長である。

 

 

「勝家?」

 

「.....!?(何故貴方が!?)」

 

 

勝家は憤怒の表情で睨み付けてくる。

 

 

「全部聞いたぞ!お前が利休と組んで、自作自演の大芝居をし、我らが姫さまに悪名を押し付け、結果的に織田を没落に追い込んだ、貴様の下劣な行為を!!」

 

「盗み聞きしてたのか?なら理解してるはずだ。陛下が誘拐され、良晴がその犯人に騙され、戦争を引き起こそうとしている。今はそちらを対処すべきだ」

 

「五月蝿い五月蝿い!!それはあたしが盗み聞きしている事を事前に察知して、お前特有の虚報を流したに違いない!!」

 

「うわぁ.....」

 

「.....(脳筋)」

 

「黙れぇぇ!!いつもいつもあたしを馬鹿にしやがって!もう許さない!!」

 

 

勝家が槍を構え、先端を天龍の腹部に突き刺す。

 

 

「ふぐっ!?」

 

「!!(天龍!!)」

 

「うらあぁぁぁっ!!!」

 

 

天龍を突き刺したまま槍を振り回す勝家。衝撃で天龍は近くの大木に叩き付けられた。

 

 

「柴田殿正気か!彼は太閤殿下だぞ!!」

 

「お前、そんな声だったのか。これはあたしと奴の因縁を付ける為だ。織田の家臣としてじゃない。あたし自身の意志で、あいつを殺す。それに天竜さえ死ねば、良晴も戦を起こさずに済む。その次はお前だ千利休。

お前はボコボコに殴った後、姫さまの前に引き釣り出した後、土下座させてやる!」

 

「くっ!」

 

「覚悟しろ外道共!!」

 

 

 

 

「お前が言う因縁とは何だ?数年前にお前を張り倒した事か?それとも、いつも泣くまでSEXしてる事か?それとも.....」

 

 

 

 

「なっ!?」

 

 

大木に叩きつけたはずの天龍が全く別の場所に座り、でニヤニヤと眺めている。

 

 

「それに天竜じゃなくて天龍だ。未だに無知なのか。脳筋も大概だな」

 

「お前ぇぇぇ!!!」

 

 

再び槍を突いてくる。天龍は前回と同じく、捌きの体制にてそれを受け流そうとする。

 

 

「ふんぬっ!!!」

 

 

しかし勝家は、右脚を地面に突き刺す形でその突撃を停止し、それを軸に回転。そのまま天龍の真横から槍を振るう。

 

 

「何ぃっ!!?」

 

 

天龍がそれに気づき、防御の姿勢に入っても遅かった。西洋では『ハルバート』と呼ばれる勝家の斧槍が天龍の左腕を抉るように斬り裂いた。

 

 

「がぐっ!!?」

 

 

骨と筋肉のお陰で急所は免れるが、左腕は再生せずにどんどん腐っていく。

 

 

「ちっ、銀製か。知恵を付けたな」

 

「ふふん♪」

 

「ふんっ!」

 

「いっ!?」

 

 

天龍は左腕を引き千切る。その後、そこから新しい腕を生やす。完全にピ●コロだ。

 

 

「化け物め!」

 

「その化け物に抱かれたお前は何だ?同じく化け物か?それとも豚か?」

 

「ぶっ殺してやる!!」

 

「面白い。ヤってやるよ六」

 

 

愛槍の方天画戟を召喚し、構える。

 

 

「これがお前の希望だろ?」

 

「ハハッ!お望み通りだ!」

 

「ん?」

 

「へ?」

 

 

次の瞬間天龍は勝家の真後ろに回り込み、槍を振るう。勝家は慌てて地面に伏せる事で回避する。

 

 

「不意打ち卑怯だぞ!!」

 

「だってお前が妙な言葉使うから.....」

 

「五月蝿いぞ馬鹿!」

 

「そら、もういっちょだ」

 

「っ!?」

 

 

今度は天龍が突撃してくる。

勝家はカウンターで槍を突き出す。

 

 

「この鳥頭!」

 

 

天龍は槍の柄を地面に突き刺し、身体を空に浮かす。そうして勝家の槍の突きを躱す。さらに回転をかけて槍を降下。その回転力を利用し、勝家の側頭部を蹴り飛ばす。

 

 

「うぐあぁっ!!!」

 

「.....(凄い)」

 

 

瞬時に勝家の戦闘術をコピーし、更に上回った形にて応用。確実に仕留めにいった。やはり天龍は戦闘面においても、天性の才能を持ち合わせている。

 

 

「糞っ!!」

 

 

再び槍を突く。

 

 

「ヒャッハー!」

 

 

ひらりと躱し、クロスカウンターのように槍の柄を突く天龍。それは勝家の装着していた鉄の鎧すらも砕き、胸を突く。

 

 

「がぁっ.....!?」

 

 

息が詰まる。

 

 

「くひゃっ♪」

 

「ぎっ.....!?」

 

 

至近距離に近付き、頭突きを食らわす。ただの頭突きではなく、勝家の額を割る程の衝撃波となる。

 

 

「ふっ!」

 

 

今度は勝家の背後に周り込み、羽交い締めにする。

 

 

「ぐっ!?」

 

「モミモミ〜♪」

 

「うあぁ!!」

 

 

右手で乳房を、左手で股間を掴む。

 

 

「どうした六〜?あの夜を思い出したか〜?」

 

「うわぁ!離せぇ!!」

 

「ダーメ♡利休!待庵借りるぞ!」

 

「.....ふん(汚れないようにちゃんと布団引いてね)」

 

「OK」

 

「嫌だぁぁ!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ふぅ.....」

 

 

待庵からやや離れた木陰にて、利休は自ら淹れた茶を啜り、くつろいでいる。

 

 

 

一方。

 

 

 

「ひっくっ.....えぐ..........うぁ.....ひっくっ.....」

 

 

半壊した待庵で天龍に犯された勝家は啜り泣いていた。

 

 

「何をそんな悔しがる?俺とお前の実力の差なんて目に見えていたじゃあないか。今更そんな」

 

「.....違う。あたしだって分かってた.....ぐす.....あたしが悔しいのは今の今までお前を良い奴だって信じてた事だ」

 

「..........」

 

「確かにお前は姫さまを裏切った。織田を陥れた。石田三成に命じて、武士の権力をことごとく奪った。

でも、お前の民に対する優しさは本物だった。

家臣には家族のように接した。

敵に厳しく、味方に優しい。

そんなお前の人間性に、あたしは惚れていた。

なのに.....なのに.....

信じてたはずのお前が.....」

 

「貴様如きが俺を語るな。

人間が人間を理解するなどそもそも不可能だ。

人間の考えは常に変化する。

考えがまとまってない方が実は一番普通なのさ。

何年も何年も同じ事しか考えられない奴なんて、それこそ気持ち悪い。俺は世界を征服し、その世界を俺を殺せた人物に献上しようと考えていたが、場合によっては俺がそのまま支配しようとも考えている。目の前にある真実が全て本物であるとは言えないのだよ」

 

「えぐっ.....そんな.....」

 

「それとだ.....」

 

 

耳元で囁く。

 

 

「俺はドレッドノート級のサディストだ」

 

「!?」

 

「お前さんの涙に欲情した。また食わせろ!」

 

「そんな.....もう身体が持たない」

 

「安心しろ。今度のは性行じゃない。"食事"だよ」

 

「えっ?」

 

 

天龍が勝家の首に齧り付いた。

 

 

「ああああああああぁぁぁぁ!!???

うああああああああああああぁぁぁぁぁ!!!」

 

 

勝家が悲鳴をあげる。だが天龍は止まることなくゴクゴクと吸血を進める。

 

 

「ああああぁぁっく!!!

はああああああああぁぁぁぁぁぁあん♡」

 

 

悲鳴が喘ぎ声に変わる。

 

 

「知っているか?人間は吸血鬼に吸血される時、絶頂に近いものを感じる。まぁ、理由は暴れて吸血行為を邪魔される事を防ぐ為だがな。

癖になるだろ?中にはこれを求めて自ら吸血鬼の餌になる異常者もいるようだ」

 

「ああああああああぁぁぁぁぁぁん♡

はああああああああぁぁぁぁぁぁあん♡」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

翌日、大坂城。

 

 

「なっ.....!?」

 

 

大坂城は天龍不在のうちに実質、良晴に占拠されていた。天龍に忠誠を誓う者らは城を離れ、逆に良晴派の家臣達が集まっていた。

そこに、天龍が堂々と現れたのだ。

 

 

「どうだ良晴。世界一の巨城を支配する気分は?」

 

「天龍!!」

 

「おっと、COOLにいこうぜ糞餓鬼。

俺と戦争したいんかい?じゃあしてやるよ!」

 

「んだとっ!?」

 

「だが、お前の相手は俺じゃあない」

 

「何っ!?」

 

「こいつだ......」

 

 

 

 

天龍の影から現れたのは、柴田勝家。

 

 

 

 

「勝家!!?」

 

「六、命令だ。あの糞餓鬼の戦争に付き合ってやれ、殺しても構わん」

 

「はい。御意のままに、我が主」

 

 

勝家の目は紅に染まっていた。

 

 

「天龍ぅぅぅ!!!!貴様ぁぁぁぁ!!!!」

 

「お前が始めた戦争だ。落ち度はお前にある。

全てはお前の責任だ」

 

 

そう言い、2人は姿を消す。

 

 

「おおおぉぉぉのおおおぉぉぉれえええええぇぇ!!!」

 

 

良晴は嘆き苦しんだ。そして、天龍に対する憎悪をさらに積み重ねる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

決戦の場は、賤ヶ岳。

 




拾事件の真相が天竜の自作自演という事実。
勝家が魔墜ちしました。
そして裏で暗躍する。ザビエル。
次回より戦争開始。
次回予告
賤ヶ岳の戦い
〜敵は勝家〜

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