天翔ける龍の伝記   作:瀧龍騎

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あっさりアクバル殺しちゃったけど、もしかしたらイスラム教の読者に命を狙われそうで怖いです。

今更気づいた昔の誤植。
人斬り事件→辻斬り事件
姫巫女のセリフに漢字がある。(原作は全部平仮名)


第八十二話 日ノ本の国と大日本帝国

アクバルの死亡後、彼の親衛隊達が天龍とサリームを捕らえようと突撃してくる。だが天龍はアサルトライフルを召喚し、親衛隊を虫けらの如く薙ぎ払った。

 

 

「控えよ下郎!この愛苦しい顔が目に入らぬか!」

 

「「「!!?」」」

 

 

天龍が叫ぶ。

 

 

「ここにおわす方を何方と心得る!

ムガル帝国皇帝、サリーム陛下あらされるぞ!」

 

「「「はっ、ははあああぁぁぁ!!!」」」

 

 

残りの兵達が全員土下座する。

ほとんど水戸黄門だ。

 

 

「いっちゃんやってみたかったのさ」

 

「大儀であるぞジャパニーズ!

予定とは違ったが、これで朕が真の皇帝じゃ!」

 

 

全身が返り血で染まったサリームが無邪気に抱き着いてくる。

 

 

「いや、アクバルとの関係に蹴りをつけたのはあんたさ。俺はその手助けをしただけに過ぎない。

それより、ジャパニーズなんて呼び方やめてくればいかね。ちゃんと名前で呼んでくれ」

 

「呼ぶも何も、ぬしは朕に名乗っていないではないか」

 

「ありゃ?そうだっけか?」

 

「名を名乗れ。ジャパンの王よ」

 

「ふっ」

 

 

天龍は微笑し、名乗る。

 

 

 

 

「俺の名は、ウラディスラウス・ドラグリア。

気軽にウラドと呼んでくれ」

 

 

 

 

「うむ。宜しく頼むぞウラド!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

それはサリームの処刑が始まる前夜。

 

 

「よう、サリーム」

 

 

吸血鬼の壁抜け術で彼女の牢に侵入する。

 

 

「あぁ!!貴しゃ.....むぐぐ!!?」

 

 

慌てて叫ぼうとするサリームの口を塞ぐ。

 

 

「馬鹿!見つかったらどうする気だ!

折角立てた計画がパーになるだろ!」

 

 

小声で話す。

 

 

「うむぐっ.....五月蝿い五月蝿い!!

朕を裏切って父上と組んだくせに!!」

 

「知ってたのか」

 

「さっき牢人が嫌がらせのように伝えてきた!

所詮、みんな父上のような大きな力を持った者に惹かれるんだ!朕のような弱者はみんなからハブられる運命なのじゃ!」

 

 

サリームが泣き叫ぶ。信頼していた家臣のアブル・ファズルに裏切られた事が余程ショックだったのだろう。続けて俺まで裏切ったなんて聞かされれば、人間不信にもなる。

 

 

「勘違いするなサリーム。俺は別にアクバルと組んだわけではない。奴を油断させる為にあえて組むと言い、裏でお前と改めて組んで、奴を騙し討ちしようと考えての行動だ!」

 

「五月蝿い五月蝿い五月蝿い五月蝿い!!!

そんな優しい言葉で言いくるめて、再度朕を騙して裏切ろうとしているのだろう!アブルと同じじゃ!朕の味方なんて1人もいないんじゃ!!」

 

「サリーム.....」

 

 

天龍はサリームを抱き寄せた。

 

 

「なっ.....」

 

「可哀想に.....可哀想なサリーム」

 

 

そう言って彼女の頭を撫でてやる。

 

 

「まだまだこんなに小さいのに、もう負の境地にいるだなんて.....君はなんて可哀想なんだ」

 

「.....うっく.....ぐすん.....」

 

 

いつしかサリームもまた天龍に抱き着いていた。サリームは天龍に亡き母親を重ねていた。そもそもサリームが反乱を起こしたのも、母が亡なったにも関わらず、何の労いも見せなかったアクバルに嫌気をさしての事だったのだ。

 

 

「俺が君を裏切ると思うか?

俺は金や土地、名誉なんかには興味はない。

ましてやアクバル如きに惹かれると思うか?

俺が惹かれるは君だけさサリーム」

 

「ジャパニーズ?」

 

 

天龍はサリームに口付けをする。

 

 

「んん!!!?」

 

 

更には舌を絡め、そのまま押し倒す。

 

 

「んん!.....れろっ.....やめっ.....!んあっ♡」

 

「これでもまだ信じてくれないか?」

 

「はぁ.....はぁ.....はぁ.....」

 

 

目が蕩け、女の顔になるサリーム。

 

天龍は見た目こそ美少年だが、それでも年の差は10歳くらいはありそうな構図だ。実年齢なら500歳差ぐらいだ。完全にロリコンである。

 

 

「俺と契約を結べ。我が愛しいサリーム」

 

「..........うん」

 

 

コクリと頷くサリーム。

その後、明日の予定等を彼女に伝える。その間ずっと惚けた表情で天龍を見つめるサリームであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「朕のものとなれウラド!」

 

「突然ですね」

 

 

アクバル殺害の翌日。

天龍は改めて、玉座に座るサリームのもとを訪れる。側に氏郷と宗麟を連れて。

 

 

「朕はウラドが気に入った!ジャパンの宰相をやめて、我がムガル帝国の新たな宰相となるがよい!」

 

「お断りします」

 

「にゃっ!!?」

 

 

即答だった。

 

 

「駄目...........なのか?」

 

 

捨てられた子犬のような表情で見つめてくる。

 

 

「勘違いをしないで頂きたい。

俺は故郷でもある日本を捨てるのができないだけだ。だからこそ俺は、大日本帝国とムガル帝国双方の宰相を務めたいと考えている」

 

「「「えっ!!?」」」

 

 

これにはサリームだけでなく、氏郷や宗麟も驚愕した。

 

 

「ちょっとウラド!!二君に仕える気!?」

 

「ウラド様!それはDanger(危険)です!」

 

「問題ない!俺がルールだ!」

 

「それが一番危険よ!!」

 

「うるさいなぁ」

 

 

天龍は家臣2人を引き寄せ、耳元に囁く。

 

 

「俺がなるのは、宰相という名の『総督』だ」

 

「「!?」」

 

 

その一言で2人は理解した。

 

 

 

 

「サリームよ!」

 

「ん?」

 

「俺と結婚しろ!」

 

「はにゃ!!?」

 

「この馬鹿!ハショり過ぎよ!!」

 

「いいから任せとけ.....

サリームよ、俺は考えたのだ。始めは大日本帝国とムガル帝国が同盟を組めば勝てない相手はいないと高を括っていた!だが!だがだ!!

ただの同盟ではそれも難しいと気付いた!

大日本帝国とムガル帝国が一つの国に!

同じ国にならなければ!」

 

 

ほとんど演説だ。

 

 

「ジャパンとムガルが.....同じに?」

 

「その通り!これぞ『日印併合』!

それを成す為にも、我らの結婚が必要なのだ!

俺と結婚しろ!皇帝サリーム!!」

 

「はいします」

 

「おぉふ...........即答だな」

 

「日印併合か。面白い考え方じゃ。ここで歴史を一新し、新たな道に進むのも一興である。

ぬしと朕の未来も.....

よし!国の名を変える!」

 

「いきなりっすね」

 

「うむ!何もかもを一新するのじゃ!

ウラドよ!いい案はあるか?」

 

「インダス川から取って、インド帝国は?」

 

「おぉ!!斬新であるな!

よし!朕は今日からインド帝国初代皇帝じゃ!」

 

「..........」

 

 

天龍には馴染み深すぎて今更感が半端ない。

 

 

「この際、改名もしたいぞ!」

 

「ジャハーンギールはどうっすか?」

 

「おっ!なんか格好良いぞ!」

 

「意味は『世界を征する者』っす」

 

「なんと!素晴らしい!!」

 

「は・は・は」

 

 

段々天龍の目が死んできている。

ちょろイン過ぎてやってられないのだ。

 

 

「んで、サリーム」

 

「こら!改名した意味がないではないか!!」

 

「いいじゃん。こっちの方が可愛いし」

 

「可愛い.....♡」

 

 

完全にデレている。本当にちょろインだ。

 

 

「話を戻すが、俺一回日本に帰るな」

 

「えっ!?何で!?朕達の甘い夫婦生活は!?」

 

「インドの残りの領土を手に入れる為にはもう少し兵力が必要なんだ。その為にも、一度日本に戻る必要がある。"任せてきた政策"がどのようになっているかも気になるしな」

 

「むぅ.....」

 

「待っててくれサリーム。いい子に皇帝としていられたら、先日の続きをしてあげるよ」

 

「♡♡♡!!!」

 

「は・は・は」

 

 

なんか、かえって心配になってきた。

 

 

「ベルお前、インドに残ってサリームの監視.....じゃない。補佐をしてやってくれ」

 

「あ.....aye,aye,sir」

 

「(#^.^#)」

 

 

終始ゴキゲンなサリーム皇帝だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

帰りの飛行船にて。行きの操縦士だった宗麟がいないので、急遽氏郷に運転方をレクチャーし、彼女にさせる。

 

 

「全く.....なんで3人でしか来なかったのよ。わざわざ、不器用な私に.....」

 

「いや、後ろの倉庫にいっぱいいるよ?」

 

「えっ?」

 

「ただ棺桶に入って寝てる。もしムガル帝国が俺等を襲った時の保険として持ってきたんだ」

 

「じゃあなんで起こさないのよ」

 

「吸血鬼とはいえ、元は足軽とか農民とか頭の悪い連中だから、使い勝手が悪いんだよ。琉球征伐でよく思い知ったよ。ほっといたら非戦闘員まで殺そうとするし」

 

「全く.....」

 

 

溜め息の後、氏郷が再び問う。

 

 

「今回の貴方はらしくなかったわね。あんな幼女の為だけに皇帝を殺すような賭けに出るなんて。まぁその後、サリームを傀儡皇帝にして、実質ムガル帝国を.....いえ、インド帝国を植民地したのは貴方らしいと言えば貴方らしいけれど」

 

「結果だけを想定して、あくまでムガル帝国を征服する為だけに、あの小娘を利用するだけ.....」

 

「..........」

 

 

「当初はそう予定してた」

 

 

「?」

 

「俺はあの小娘に同情していた。

この500年を生きた大吸血鬼がだ」

 

「同情?」

 

「あの子はある意味天涯孤独なんだ。

愛すべき母を早くに失い、父からは愛されない。政治の道具程度にしか思われず、彼女に近付く人間は皆、彼女の血筋が目的。真に彼女を思ってやれる人間なんて一人もいなかった。

なんとなく、俺に似てるんだよ。

それでも尚、彼女は諦めなかった。

幼く、知識もなく、人を疑えないからすぐ騙される。それでも彼女は行動を起こした。それもまた馬鹿な行動であるが、それが俺にはとても美しく見えた。

同時に思ったよ。こいつは俺が守りたいってな」

 

「.....ウラド、貴方って情に弱くない?」

 

「そうか?」

 

「そうよ。普段は誰にでも強気で、人の幸福よりも有益を優先するような文字通りの魔王なのに、弱い立場の者を前にすればメシアのそれになる。私の時だって.....」

 

「むぅ.....」

 

「まぁ、ある意味では貴方のいい所ね。普段からそれなら言う事なしなんだけどね」

 

「ふっ、それでは世界征服はできまい」

 

「それもそうね。本当に可笑しいわ。魔に染められる事に幸福を感じるなんて。昔の私が知ったら殺されるわ」

 

「その時はまた守ってやるさ」

 

「ふふふ.....」

 

 

 

 

そんな時、天龍に電話がかかる。

それを受けた彼は急激に顔を青ざめた。

 

 

 

 

「どうしたのよ?」

 

「ベルとサリームが宗教論争始めて、大喧嘩してるらしい」

 

 

サリームはイスラム教徒だ。

 

 

「ちょっ、それやばいんじゃないの?ベルフェゴール.....処刑されたりなんかしない?」

 

「吸血鬼だから心配ないだろうけど、それ系の知識持ってる奴がいたらやばいな。これが原因で同盟破棄もあり得るし」

 

 

 

「「............」」

 

 

 

「「まぁ、いっか」」

 

「まっ.....まぁ!サリームは俺にメロメロだから婚約破棄にも繋がるような事はしねぇだろうしなぁ!」

 

「そっ、それもそうね!」

 

 

まるでなかったかのように無理矢理誤魔化し、禍根を残したままの帰国をする2人だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

越後にて。

 

 

「それはどういう意味だ謙信?」

 

「申したままの意味です関白殿下。我ら上杉軍は逆賊秀長の討伐には参加しません。貴方様の傘下に入るつもりも毛頭ありません。独自に動かせて貰います」

 

「いい度胸だな。俺は既に天皇陛下より天龍討伐の下知を頂いている。貴様ら各々の大名を従える権利もな!これは勅使であるぞ!それに従わないとは何事か!!」

 

「..........変わったわね豊臣良晴」

 

 

2人は以前、肉体関係を結んだ事がある。だが、謙信が処女で有り続ける事に拘った為、それは菊門にて行われた.....

当然それに愛はなく、良晴は生きる為。

謙信は豊臣に忠誠を見せる為に差し出したまで。とはいえ、一般の男女の関係ではない事に変わりはない。

 

 

「昔の貴方はそのような事を言う人ではなかった。誰にでも優しく、暴力を嫌い、己を犠牲にしてでも多くの命を守ろうとした。私はそれを尊敬していた。そんな貴方が何故?」

 

「妹可愛さに奴の義娘に成り下がり、ここ3年半何も出来ずにいるようなお前に言われたくはない!」

 

「っ.....!?..........それは」

 

「あの軍神はどこにいった?」

 

「平和になったこの国には最早、軍神は必要ない」

 

「それは偽りの平和だ!この国は、あいつに都合良く利用される為だけに征服されただけだ」

 

「天下統一とは本来そういうものよ」

 

「違う!!あいつのやり方は人間のそれを超えている。あいつが天下人になってやろうとしている事を、お前が知らないわけがない!」

 

「...........」

 

「奴がインド飛んだ後、奴の代行を務めたのは秀秋。だが実質、支配しているのはあの石田三成だ。俺も驚いたよ.....」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

大坂城にて。

 

 

「役職の廃止!?」

 

「はい。日本各地の大名、その家臣、下級武士に至るまで、多くの者らが持っている役職は全て廃止します。正確には、全ての役職を天皇陛下に返還させるのです」

 

「馬鹿な!!そんな事をすれば各地で暴動が起きるぞ!?」

 

 

それは武士だけでなく、公家衆もだろう。

 

 

「その為の対策は既にあります」

 

「!?」

 

「まず各地の大名に、領民と領土を天皇陛下に返還させます。次に大名を国知事に任命します。その上で国を廃し、県を置きます。それから国知事を失職させ、代わりに非世襲の県知事を送る事で中央集権を確立させるのです」

 

 

俗に言う、廃藩置県と版籍奉還だ。

この場合は廃国置県であるが。

 

 

「更に、身分制度も一新させます。

公家、元大名を華族。武士を士族。

農民、商人、職人は平民。穢多非人も平民に入れます。

従来の士農工商から四民平等に変えるのです」

 

「四民.....平等」

 

「武士が力を独占する時代は終わるのです」

 

 

それは三成の悲願でもあった。

 

 

「更に、律令制を廃止します」

 

 

この日本を千年近く支えた律令制の廃止。

 

 

「ここで欧州を習い、憲法を公布するのです。

それまでは国ごとがそれぞれ決まりを作ってきましたが、これにより、日本国全体の決まりを作るのです。

それにあたり、立法、行法、司法は分断します。

立法は大谷吉継が、司法は私が。

そして行法には天龍様が就きます」

 

 

立法と司法が行政の息がかかっているとなれば、独裁と変わらないじゃないか。

 

 

「役職を返還するにあたって、天龍様も太閤ではなくなります。当然、貴方も関白ではなくなる。天龍様は行法において内閣を設立し、『内閣総理大臣』となるのです。天龍様が大日本帝国の宰相となるのです」

 

 

大日本帝国.....今までの日ノ本の国は消滅し、天龍の独裁政権が誕生するというのか!?

 

 

「全部天龍の命令か?」

 

「はい」

 

「間違ってはいない.....間違ってはいないさ。

いずれ日本はそうなるべきだ.....

だが早すぎる!ゆっくりと馴染ませなければ、国民は誰も付いて来ないぞ!?」

 

「その対処は容易ですよ」

 

「何っ?」

 

「逆らう者は全て排除すればいい」

 

「なっ!?.....それじゃあ独裁だ!!」

 

「天龍様に刃向かう者に生きる価値はない!」

 

 

駄目だ.....早く何とかしないと。

 

 

「俺は認めないぞ!そんな政策。

陛下に直々に掛け合って、止めさせてやる!」

 

 

良晴はその場を後にする。

 

 

「ふっ.....今更動いたって、もう無駄ですよ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

京都御所にて。

 

 

「誰でおじゃるか!この聖域に汚らしい格好で!」

 

 

麻呂言葉の公家が出てくる。死んだ近衛を思い出す。

 

 

「退け!陛下に用がある!」

 

「無礼な!陛下に用などと..........って、関白殿下!?」

 

「陛下のもとへ案内しろ!」

 

「はっ、はいでおじゃる!!」

 

 

良晴は腐っても関白だ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「きたか、さがらよしはる。いまはとよとみひでよしだったか?」

 

「..........」

 

 

良晴は黙って頭を下げる。昔とは大違いだ。

 

 

「陛下.....どうか俺の話を聞いてほしい」

 

「ぞんじておる。てんりゅうのことだろう?」

 

「えっ?」

 

「あやつがいままでのひのもとのふうしゅうをはかいし、まったくべつのあたらしいよをそうぞうしようとしていることを.....」

 

「.....ご存知だったのですか?」

 

「それをきょかしたのは朕ぞ」

 

「なっ!?」

 

「このくにはかわるじきなのかもしれぬ。たこくのものらがこのくににおおくおとずれ、こうりゅうがさかんになってきた。からやらおりにとじこもるのはもうやめるべきであるとおもう」

 

「陛下.....」

 

「.....いま朕のなかにはややこがいる」

 

「!?」

 

「てんりゅうとのこじゃ」

 

「そういう.....事だったのか」

 

 

良晴は理解した。何故天龍が、従来の『姫巫女』という名称から『天皇』という名称に変えたのか。それは簡単な事だ。

 

天龍は自分の子供を天皇にする気なのだ。

男女どちらでもいいように、天皇と。

 

首相となった後も莫大な権力を得る為に、皇族の一員になるつもりか。

 

 

「奴はそれを?」

 

「しらぬ。これをしるせしは朕とぬしのみ」

 

「.....そうか」

 

 

 

 

 

 

良晴は正親町天皇を押し倒した。

 

 

 

 

 

 

「..........」

 

「天龍によって汚された貴方を.....俺の手によってもう一度汚す」

 

「とよとみひでよし.....」

 

「陛下の中にいるのは天龍の子供じゃない。"俺の子"だ!」

 

「またいくさをおこすのか?てんりゅうによっておさめられた、このひのもとで」

 

 

そう言って、彼女は良晴のほほに触れた。

正親町天皇の特殊能力、触れた者の思考を読み取る力。

双子の妹の一益も、触れる事で相手の本音を吐き出せる。

天照大御神の子孫だけに宿る神秘の力。

 

 

「もう偽らない.....

そうさ!俺がこれから起こすのは戦争だ。俺のせいで多くの人が不幸になり、多くの人が死ぬだろう」

 

「..........」

 

「これは俺の意地だ!

天龍を倒したいという欲望によるものさ!

言い訳なんかしねぇ!誰かの為だとかじゃなく、俺自身の誇りかけて、俺は天龍という強大な目標を打ち倒したいんだ!一人の男として、己の人生の全てを賭けたい!」

 

「それでこのせかいにこんらんをもたらすとしても?」

 

「その後の世界は俺が支配する!」

 

「!」

 

「俺はこれからこの世で一番の重罪人になるだろう。争いの種を生んだ、戦争犯罪者にな。だからこそ俺はその全ての罪を受け入れるつもりだ。その贖罪として、俺は奴の意志を継ぐ!」

 

「そのもくひょうにまよいはあるか?」

 

「ない!」

 

「..........ふっ」

 

 

天皇は微笑する。

 

 

「ここまでげんどうとしこうがいっちするとは.....

そのかくごはほんものとうけとった。

よかろう。朕はぬしのみかたとなろう」

 

「本当か!」

 

「朕をおしたおすようなおのこなど、てんりゅうをのぞけばぬしだけじゃ。ただしげんきゅうするが、朕はてんりゅうのみかたでもある。それだけはゆずらぬ」

 

「分かってる」

 

「ではぞんぶんにあばれるのじゃ。ばあいによってはそのつみ、朕がかぶってやってもかまわぬ」

 

「それはだめだ!絶対にさせられねぇ!」

 

「ふふっ、つくづくにておるの。ぬしもあやつも」

 

「..........」

 

「どうした?だかぬのか?」

 

「えっ!?」

 

「朕にかくごをみせるのじゃろう?

なれば、そのたぎるおもいもすべて朕にはきだせ」

 

「..........分かった」

 

「ふっ」

 

 

彼女は目を閉じた。

 

 

「では、失礼致します」

 

 

良晴は彼女に口付けをする。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「それ程の覚悟をもっていたの.....」

 

 

良晴から全てを聞かされる謙信。

 

 

「もう一度聞くわ。貴方の目指すものは?」

 

「天龍を倒して、俺が次の天下人になる!」

 

「..........そうですか」

 

 

謙信は跪く。

 

 

「虎千代.....」

 

「脆弱ながらもこの上杉謙信。

豊臣良晴秀吉様に協力致します」

 

 

上杉謙信が初めて人に頭を下げる。

 

 

「ありがとう.....感謝する」

 

 

 




なんかもう...凄い展開です。


次回予告
開戦前夜
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