絶望に生きた覚悟の戦士が幻想入り   作:高月 弾

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常識はずれとは果たしてどこからどこまでの事なのだろうか…


第二章 幻想郷という世界
第8話 お互いに常識はずれた物


 

「んっ…!」

 

一人の女性が布団から起き上がり、腕を上に伸ばしながら大きく伸びをする。

そしてそれを終えると近くにある赤と青の服に着替えた。

それは永琳だった。

普段よく目にする赤と青の服を着て、まだ朝早い時間だが活動を始めようとしていた。

まずは姫と呼ばれる人のようすを確認。

次に患者の確認をしに行った。

魔理沙の部屋にはいると、魔理沙はまだ寝ているようで、特に怪我などを苦しんでいる様子はなかった。

それを確認した永琳は悟飯の部屋に向かい扉を開けた。

が、そこの布団は畳まれていて、すでに悟飯の姿もなかった。

 

「…まさかもうアリスに謝りに行ったのかしら?」

 

そう考えたが、そうではないのだとすぐに推測する。

 

(いや、家を知らないのだから行けるはずがないわね。悟飯さんはなにか力を感じることができるようだけれどもあれだけ記憶が曖昧ならその力を覚えてるとは考えにくいし…)

 

永琳は月の頭脳と呼ばれるほど頭が回る。

こういう問題に直面してもすぐに冷静に対処することができる。

 

(…とりあえず、この中を探せば会えるでしょう。)

 

そう考えた永琳は残りの確認をすると共に悟飯を探すことも始めた。

永遠亭内を全て確認したが悟飯の姿はどこにも見当たらなかった。

 

(…どこに行ったのかしら?…外の空気でも吸っているのかしら?)

 

そう思いながら魔理沙と悟飯が戦った庭へと歩いていった。

庭の扉を開けると眩しい朝日と同時にある光景が目に入ってきた。

それは悟飯がトレーニングをしている光景だった。

あの山吹色のズボンに青色のインナーを来ている状態で、腕立て伏せをしていた。

悟飯は片腕がないため右腕だけの腕立てになる。

それを早いスピードでやっていた。

それを見た永琳は声をかけようとしたがそれをやめ、悟飯の様子を眺めていた。

1分ほど過ぎただろう。

一人の少女が永琳のもとにやって来た。

優曇華だ。

 

「おはようございます、師匠。」

 

優曇華が永琳に挨拶をする。

すると永琳はおはようと返したあとに優曇華の耳元でなにかを伝える。

すると優曇華は驚くのと同時に真っ青になりどこかに走っていった。

するとそのとき、

 

「やぁ、永琳。おはよう。」

 

と、悟飯が永琳の近くにやって来た挨拶をした。

 

「あら。おはよう。怪我をしているに精が出るわね。」

 

と皮肉混じりに挨拶を返す。

 

「は、ははっ…もう傷は大分よくなったよ。普通のトレーニングならほら、さっき見ていたように完璧さ。」

 

「あら?気づいていたのね?」

 

「当たり前だよ。さっき永琳のところに来ていたのは優曇華かい?」

 

「そうよ。優曇華のことがわかったのもあなたの言う【気】ってやつかしら?」

 

「あぁ、そうだよ。それのことは朝ごはんのときに話すよ。」

 

「えぇ、そうしてもらうわね。それで、まだ続けるのかしら?」

 

「あぁ、もちろん。もしかして相手してくれるのかい?」

 

 

「私なんかに頼むのかしら?」

 

と永琳は笑いながら答える。

しかし次の言葉に表情が固まる。

 

「だって…力を隠しているようだけど、永琳さん。あなたかなりの強さを隠してますよね?」

 

その言葉を聞いた永琳は目を鋭くさせ、悟飯を睨む。

が、その目は相手を威圧するようなものではなく相手を見定めるかのような目付きだった。

 

「…そうね…確かに力は出していないけれども強くなんてないわよ。」

 

そう言いながら永遠亭の中に戻り歩いていく。

 

「あまり無理してトレーニングしちゃダメよ?」

 

「わかってるよ。ありがとう。」

 

そう言いながら悟飯は格闘の空動きを始めた。

数分後、優曇華は永遠亭内を駆け回っていた。

 

「起きなさい!!てゐ!!」

 

優曇華が寝ているてゐの耳元で大きな声をあげる。

てゐはそれに気づいてゆっくりと優曇華の方に目を向ける。

 

「…うるさいうさ…まだ朝早いのになんで起こすんだうさ…」

 

そう言いながらまた眠ろうとする。

それを揺らしてやめさせる優曇華。

さらにそうしながら大声でてゐに言った。

 

「もう悟飯さんが起きてるのよ!!!早くしないと間に合わなくなるわよ!!!」

 

その言葉を聞いたてゐの目がだんだんと大きくなっていく。

そして飛び起きながら、

 

「もっもう悟飯が起きてるうさ!?まだこんな時間なのにうさ!?」

 

「そうよ!!だから急いで!!」

 

それを聞いたてゐは先程の優曇華のように永遠亭の中を駆け出していった。

優曇華はてゐとは別の方向に走っていった。

そんな中、永琳は研究室(?)ような場所に入り薬の調合などをしていた。

そして悟飯は、トレーニングを続けていた。

そして、てゐと優曇華は多くの兎(鈴仙)達をつれてある場所に集まっていた。

そして慌ただしく走り回っていた。

 

「早くするうさ!!昨日みたいなことになったらまたとんでもないことになるうさ!!急ぐうさ!!」

 

「はいぃ~い!!」(不特定多数)

 

「まさか悟飯さんがこんなに朝早く起きるなんて思わなかった…」

 

兎達がここまで焦っているのは理由がある。

それは昨日の夜に遡る。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「迷惑をかけてごめんなさい。」

 

悟飯は鈴仙達にも謝っていた。

マスタースパークとかめはめ波のぶつかり合いの時に、鈴仙達は吹き飛ばされてしまった。

それの謝罪をしていたのだ。

鈴仙達は初めは険悪な雰囲気だったが真剣に謝る悟飯を見て許す気になったようで、悟飯を攻めたり愚痴を言ったりすることはなかった。

ここまでは問題ではなかったのだ。

問題はその少しあとに起きたのだ。

 

「悟飯さん。魔理沙。夕御飯にするからいらっしゃい。」

 

「分かりました。いまいきます!」

 

「おっ、了解だぜ。」

 

二人は待っていたかのようにすぐに部屋に向かった。

そして、

 

「「「いただきます!!」」」

 

これが悲劇の始まりだった。

 

【ガツガツガツガツガツガツガツ】

 

「………。」

 

「………。」

 

永琳と魔理沙は御飯を食べていた手が止まる。

そして二人の視線の先には、圧倒的な早さで御飯が無くなっていく光景が目に写っていた。

しかも一人の手によって。

 

「永琳さん。この御飯本当においしいですね!!」

 

悟飯が顔に満面の笑みを浮かべながらそう言う。

 

「えっえぇ…それならよかったわ。其れを作ってるのは優曇華だから後で優曇華に言った方がいいと思うわよ。…おかわりしたかったらいってね…」

 

「本当ですか?ならおかわりお願いします!」

 

そう言いながら茶碗を差し出す。

永琳はそれを受け取り御飯を盛る。

すると悟飯はまたとても早いスピードで食べ始めた。

永琳もそれを見ながら飯を食べ始めた。

魔理沙もその後にゆっくりと食べ始めた。

数分後、すでに始めに出された食べ物はすでになくなりかけていた。

魔理沙と永琳はすでに食事を終えているが悟飯のスピードは全く落ちない。

すると永琳が調理場に行き、

 

「優曇華。もっと料理作ってちょうだい。」

 

「えっ、大分作ったんですけど足りませんでしたか?」

 

「えぇ、かなり余るようにつくっていいわよ。」

 

「??分かりました。」

 

そう言うと優曇華は追加の料理を作り始めた。

永琳が戻ってくるとすでにテーブルの上にあった食べ物はなくなっていた。

 

「二人はもう食べないんですか?」

 

「わ、私は大丈夫だぜ。」

 

「私ももう十分だわ。」

 

「そうなんですか?なら俺もここら辺でやめといた方がいいかな。」

 

そう言いながら箸を置こうとする悟飯に永琳が少し厳しい目付きで、

 

「なに言ってるの?患者が遠慮なんかするものじゃないわ。それに早く治さなきゃいけないのにそんなことしてたら余計に長引くわよ。」

 

それを言われ少し考えた悟飯は、まだ食べることにした。

が、その一言が永遠亭に最大の悲劇をもたらせた。

 

【ガツガツガツガツガツガツガツ】

 

すでに食べはじめて20分位が経過していた。

が、悟飯の食べるペースは一向に落ちることを知らない。

優曇華が必死に作った大量の料理をあっという間にたいらげてしまう。

それも、おいしい!おいしい!っと言われるものだから作るのをやめるわけにもいかない。

他の兎達にも手伝わせているがそれでもやっと悟飯のスピードと五分五分だった。

さすがに見かねた永琳が、

 

「悟飯さん。それぐらいにしておいたら?明日の文の食べ物がなくなっちゃうわよ。」

 

となだめた。

すると悟飯は、

 

「…【ゴックン】そうですね。腹八分目と言いますし、これぐらいにしておきます。」

 

(こ、これでもまだ八分目なの!?)

 

兎達は衝撃の事実に腰を抜かすしかなかった。

優曇華はその真実を受け入れる余裕すらなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そしていま。調理場にはすごい人数が入っていた。

優曇華を中心に急ピッチで料理が作られていた。

 

「こら!そこ!サボるんじゃないうさ!!」

 

てゐは兎(鈴仙)達に指示を出しながら回りを確認していた。

この料理の数は、調理場の1/3を占めていた。

が、このタイミングで悪夢のような台詞が優曇華とてゐの耳にはいる。

 

「大変です!!食物庫の中の食料が全てなくなっていまいました!!」

 

「「なっ!!?」」

 

まさか、この二回の食事の準備で食物庫の食べ物がなくなるなど全く考えていなかった。

いや、普通ならばあり得ないことだろう。

なんにしてももう料理を作ることはできない。いまある分で満足してもらうしかないのだ。

 

(…なんとかなるわよね?)

 

悟飯はトレーニングが終わったようで永遠亭を歩き回っていた。

するとまた永琳と会う。

 

「あっ、永琳さん。どこかへいくんですか?」

 

「薬の調合も終わったし食卓に向かおうかと思っていたところよ。」

 

「あっ、なら俺もいいですか?」

 

永琳はそっけなく返事を返すと先に歩き出す。

それを悟飯は追いかけていった。

食卓に行くまでに永琳から今の悟飯の体の傷の状況や、魔理沙の体の具合などを聞くことができた。

悟飯の傷はほとんど完治しているようであとは多少の痛みが少しの間残っているだけだろうと言った。

魔理沙の方もダメージはだいぶよくなったそうだ。

そうこう話しているうちに食卓につく。

永琳は魔理沙を呼んでくると言って部屋に向かおうとするが、

 

「おはようなんだぜ~。」

 

魔理沙があくびをしながら入ってきた。

 

「あぁ、おはよう。」

 

「あっ、悟飯…さん。ずいぶんと早いんだな。」

 

「あぁ、朝は早く起きてトレーニングをしているんだ。…あと悟飯でいいよ。呼びづらいだろ?」

 

と魔理沙が敬語を使うのが苦手そうなのに気がついた悟飯はそういった。

すると魔理沙は少し明るくなり、

 

「そ、そうか?ならそうさせてもらうぜ!」

 

と答えた。

そしてテーブルに魔理沙、永琳、悟飯、優曇華、てゐがつく。

そして、

 

「「「「「いただきます!」」」」」

 

そして食事が始まった。

テーブルにあった料理が次々と消えていく。

(主に一人の腹の中へと消えていく。)

朝だからと言って食欲がないと言うわけではないようだ。

 

「おっ起きてすぐによくそんなに食べれるなぁ…」

 

魔理沙がお皿を片付けながら呟く。

すると永琳が、

 

「あら。悟飯さんは起きたばかりではないわよ。」

 

「え?」

 

「もう一時間ぐらい前には起きていてトレーニングをしていたわよ。」

 

「そ、そんな朝早くに!?」

 

魔理沙はその時間に驚いた。

魔理沙自身は決して遅く起きるわけでなく、むしろ幻想郷の中では早起きな方であると言えるだろう。

それよりも一時間も早く起きていたのだから驚くしかない。

そして30分たち悟飯が食事を終えた。

今回は料理が足りたようで優曇華達が食べる料理が少しだけ余っていた。

するとお皿を片付けた悟飯がすぐに、

 

「魔理沙。早速なんだけど、アリスさんのところに連れていってくれないか?」

 

と聞いてきた。

どうやらすぐにでも謝りたいらしい。

すると少し考えた魔理沙がこういった。

 

「いいけど、1つだけ条件をつけていいか?」

 

「条件?」

 

「あぁ…私を弟子にしてほしいんだ!!」

 

「でっ弟子に?」

 

あまりに唐突なことなので悟飯はあっけにとられている様子だった。

が、その魔理沙の瞳はまっすぐで真剣だった。

そしてその雰囲気に重なったものがあった。

 

(トランクス…)

 

悟飯の頭にはある少年の顔が浮かぶ。

 

「悟飯さん。僕にもっと厳しい修行をつけてください!」

 

その少年はいまの魔理沙と同じように強い覚悟を秘めた瞳で悟飯に話していた。

 

(………)

 

悟飯は何かに思いふけるように少し目が虚ろになる。

しかし、少しして悟飯が目を一度閉じて、開く。

その瞳にはすでに覚悟が決まっていた。

 

「俺の修行は少し厳しいぞ?それでもついてくるな?」

 

悟飯が少し笑みを浮かべながらそう言った。

それを聞いた魔理沙が嬉しそうに顔を輝かせながら、

 

「もちろんだぜ!」

 

と、大きく答えた。

悟飯もそれに小さく頷き答えると、魔理沙に

 

「まぁ修行は明日からだ。今日はアリスさんのところにいかないとならないからね。」

 

と言う。

魔理沙はわかったぜ、と答えると準備するために自分の部屋に走っていった。

悟飯も準備のために永琳のもとに向かった。

そして永琳を見つけると悟飯が、

 

「なぁ、永琳。俺の道着の上持ってないか?」

 

「道着?あぁ、それなら姫様が直してくれたのがここにあるわよ。」

 

そういいながら山吹色の派手な服を悟飯に投げ渡す。

それを受けとると悟飯は嬉しそうに永琳に向かって、

 

「ありがとう!うわぁ、スゴいよ。完璧になおってる。」

 

と感嘆の声を漏らしながら感謝の気持ちを伝えた。

すると永琳は、

 

「直したのは姫様なんだから姫様に言いなさいよ。多分もう食卓にいるんじゃないかしら?」

 

そう言いながら歩いていった。

が、悟飯がそれを呼び止めて、

 

「ちょっちょっと待ってくれよ。俺、姫様なんて人にまだあったことないから誰だかわからないぞ?」

 

そう言って止めようとするが永琳は全く振り返りもせずに、

 

「多分みればすぐにわかるわよ。」

 

と答えてどこかにいってしまった。

悟飯はそれに戸惑い不安を感じながらも食堂へ向かった。

そして食堂についた悟飯。

そしてその場所をみると一人の女性が座っていた。

そしてその人の回りの空間だけがなにか別のものなのかと疑うようなものだった。

 

「あ、あなたが姫様ですか?」

 

悟飯が恐る恐る聞く。

それに気づいた女性が悟飯の方に振り向く。

その姿をみた瞬間、悟飯はこの女性が姫様と呼ばれている人なのだと確信した。

まるで吸い込まれるかのような赤い瞳。

風になびく宝石のような黒髪。

そして誰もが目を奪われるようなその姿。

まさに姫と呼ばれるにふさわしい美しさだった。

悟飯もその美しさに一瞬目を奪われる。

 

「そうよ。私が蓬莱山 輝夜よ。」

 

その言葉にはっとして、用件を思いだす。

 

「ど、どうも。輝夜さん。この青いインナーと山吹色の道着を直してくれてありがとうございます!本当に助かりました。」

 

「いいのよ。私の気まぐれだし。」

 

そう言いながら優しく微笑む。

悟飯はその姿に再び目を奪われる。

 

「それに…あなたからはなにか特別なものを感じるから私も興味が湧いたのよねぇ。」

 

そう言いながらいたずらに笑う。

が、悟飯はその中に自分になにかを向けられているのを感じた。

 

「今度は私のところに一人できてくださいな。是非とも話をうかがいたいわ。」

 

「…わかりました。用事がすんだらまた来ます。」

 

そう言いながら一礼して食卓を後にした。

輝夜も少し見送ってから食事を再び始めた。

 

(…あんな感じは初めてだな。この世界はやっぱり俺のいた世界と違うのか…)

 

そう思いながら永遠亭の出口へと歩いていった。

 

 

 

 




どうも、弾です。
いやぁ、もしかして進展遅いですかね?
多分少し早めるかもしれませんね。
果たして魔理沙は悟飯の修行についていけるのでしょうかね?
そして超サイヤ人の解放はいつになるのか?
それでは次回もよろしくお願いします❗

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