絶望に生きた覚悟の戦士が幻想入り   作:高月 弾

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お久しぶりです…
今回は後書きに今後のことが書いてあるので確認お願いします。


第21話 変幻自在の身体。悟飯起死回生の一手

萃香は地面にたたきつけられる。

すぐに起き上がり頭上を確認するが既に悟飯の姿は見当たらない。

が、萃香はすぐに自身の右の頬に手の甲を向けて持ってくる。

すると次の瞬間恐ろしい速度で悟飯の拳が萃香の右の手のひらへと叩きつけられた。

萃香の表情は先ほどの攻撃を受けてから険しいものへと変わっていた。

すぐに悟飯に向けて右拳を構えるが再び萃香の視界から悟飯が消える。

咄嗟に顔の横に左腕を構えるとそこに悟飯の鋭い突きがとんできた。

片手では押さえきれないと判断した萃香は右手で左腕を内側から押さえて防ぎきる。

萃香が反撃しようとしても悟飯はすぐに消えてしまい、早く鋭い一撃が萃香をとらえてしまう。

萃香はそれに対して防御することで精一杯の状況になっていた。

 

「ちっ!!」

 

萃香は悟飯の攻撃を防御してすぐに反撃をせずに一度スゴいスピードで距離を取る。

しかし悟飯の姿が見えない以上距離を取ったところで反撃のチャンスにはならなかった。

萃香が着地して構え直した瞬間背後から何かの気配を感じ取る。

振り向こうとするがそれよりも先に、

 

「遅いぞ!!はぁ!!!」

 

悟飯の蹴りが炸裂する。

蹴り飛ばされた萃香はそのダメージに怯むかと思いきや、すぐに結界を強く蹴り出して悟飯の方へと超スピードで突撃してくる。

右拳を高く振り上げ、そして強く振り下ろす。

悟飯はそれを紙一重で躱す。

が、その凄まじい一撃は結界全体を揺るがすほどのエネルギーを持っていた。

その衝撃に悟飯は僅かに怯む。

その一瞬を萃香が見逃すはずもなく、すぐさま鋭い蹴りを突き出す。

悟飯は右手でそれを受け流すが先ほど同様凄まじい力が結界を揺るがし、悟飯自身にもその衝撃が伝わる。

 

(直接受け止めてないっていうのに、ここまでの衝撃が伝わってくるなんて…なんてパワーだ…っ!)

 

悟飯はすぐさま萃香と距離を取り離れる。

が、萃香も逃がすまいと一瞬にして距離を詰める。

萃香が再び拳を振り下ろすがそこには悟飯の姿はなく、萃香の視界にもとらえることが出来なかった。

悟飯が萃香から10㍍ほど離れた場所に現れる。

萃香はゆっくりと悟飯の方へと振り返る。

悟飯もゆっくりと構え直す。

先ほどまでの激しい攻防から一転、お互いに動き出さない静かな状態へと変わる。

お互いの頬に汗が伝う。

その静寂がある言葉によって破られる。

 

「本質は…強大な力…。」

 

それに反応した萃香はすぐさま悟飯に突撃する。

右拳を突き出すが悟飯はそれをしゃがんで回避する。

が、それを読んでいたのか萃香は既に左拳を振り上げていた。

悟飯も素早く反応し、右側へと数㍍ほど跳躍して回避する。

萃香の拳は結界へと直撃し、全体にスゴい衝撃を与える。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「なっ…なんてパワーだよ…。ここまで衝撃が伝わるなんて普通じゃないぜ…。」

 

魔理沙がそのあまりの凄まじさに信じられナイトばかりに首を横に振っていた。

それはアリスも似たような様子でただただ呆然と結界内を見つめるだけだった。

霊夢は結界を少しでも強固にするため霊力を結界に流し込んでいた。

が、結界の強度は生成時にほとんど決まる。

生成時の霊力が強く結界のレベルが高ければ高いほど強度は増すが、あとからの補強は生成時と比較して半分ほどにしか強度を上げることが出来ない。

 

(…あいつら…少しは手加減ってものを知りなさいよ!!にしても…)

 

霊力を込めながら霊夢は結界内の二人の戦いに目をこらす。

 

(あれが鬼の本気の戦闘…いや、本来の姿というべきかしら。そして、それと互角【以上】の戦いが出来るサイヤ人。)

 

そして紫との会話を思い出す。

 

(相手を殺せる覚悟よ。)

 

今の萃香と悟飯の戦いを見ているとそれを実感せざるを得なかった。

 

(あれほどの相手を私は殺せるの?いや、そんな必要なんてない…悟飯さんはそんなことをしなくても…)

 

【甘えてる。】

 

(!!?)

 

その声に驚く。

自身の耳ではなく心に直接響いてくるその声。

その正体は分からなかった。

が、その声はひたすらに霊夢に話しかけてくる。

 

【あいつの力を目の当たりにして、力が及ばないと確信したから殺す必要がないと思い込みたいだけでしょ?】

 

(そ、そんなことないわ!!)

 

そんな声をかき消すように叫ぶ。

が、その声は決して消えることはない。

 

【目の前にいるのはサイヤ人。数々の星を滅ぼしてきた戦闘民族よ?なら警戒しなければならない相手。そしてそう言ったのは他でもないあなた自身よ?】

 

(だから警戒を…!【今していたかしら?】っ!!!)

 

 その言葉に霊夢の言葉は止まってしまう。

 

【今あなたは孫悟飯なら殺さなくても大丈夫と思ったわね?それこそがあなたの油断よ。いえ、正確に言えば悟飯は殺せないから敵対したくない、って事を自分の都合のいいようにねじ曲げたものかしらね?】

 

(い…いい加減にして!!!)

 

そう叫んだ瞬間意識が心から現実へと一気に引き戻される。

そして結界内の衝撃や音が一気に霊夢に伝わってくる。

再び意識を結界の補強へと集中させる。

 

(…そんなこと…)

 

が、その心での会話を拭いきれているわけではなくどこか不安のある状態が続いていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

右に躱した悟飯に対してすぐに距離を詰めて接近する萃香。

しかしそんな萃香に対して悟飯はある言葉を放った。

 

「確かに君のスピードは凄まじい。だけどそれは純粋に速度があるだけで、真のスピードじゃないよ。」

 

萃香が接近するのに合わせて悟飯も距離を詰める。

萃香は左足で回し蹴りを繰り出すが悟飯はそれを受け流すと右肘で萃香の左脇腹を捉える。

萃香は一瞬怯むがすぐに右拳で反撃しようとする。

が、その怯みを悟飯が見逃すはずもなく、左足で足払いをする。

完全に体制を崩してしまった萃香。

 

「確かにスゴいスピードだけどその本質はその恐ろしいほどのパワーだ。なら、君は細やかな動きにスピードを加えることが出来ない。」

 

悟飯はさらに体制の崩れた萃香の背後へと回り右拳を振り上げた。

体制の崩した上でのさらに無防備の背後からの攻撃。

萃香には躱せる方法などなかった。

はずだった。

悟飯が拳を振り下ろすとそこから萃香の姿はまるで消滅でもするかのように消えてしまった。

 

「なっ!!?」

 

悟飯の拳は結界へとたたきつけられる。

そのパワーは凄まじく結界全体がミシミシと音を立てる。

 

「あのバカっ!!補強してなかった結界なら下手すりゃ壊れてたわよ!!」

 

と怒り狂ったような叫び声を上げる霊夢だがそれは悟飯には届かない。

悟飯はある場所を向く。

するとそこにいなかったはずの萃香が突然現れる。

 

「今のは躱せないはずだ。一体どうやって躱したんだ?」

 

悟飯は萃香を睨み付けながらそう質問した。

萃香は挑発的な笑みを浮かべながら、

 

「この幻想郷には能力を持ったやつがうじゃうじゃといるんだよ。私の今の力も能力さ。まぁ教えやしないけどね。」

 

そう言いながら再び萃香の姿が消える。

悟飯はすぐに気を探り始める。

が、結界内にいるせいか中々見つけることが出来ない。

そう探っている時、背後に何かの気配を感じる。

すぐにすぐに左足で後ろ回し蹴りを繰り出すがそこにあったはずの気配は消え、蹴りは空を裂くだけだった。

が、そこである物を目にする。

 

(…霧か?)

 

悟飯が蹴りを繰り出した場所には気配のあった物の代わりに霧のような何かが立ちこめていた。

がそれはすぐに消えしまう。

元々悟飯達は気で相手の居場所は行動だったりを探ることが出来る。

が、悟飯は気を持たない人造人間達と戦っていたため通常の戦士達よりも視力と動体視力が段違いに高くなっていた。

そのため僅かなその霧も見逃さなかった。

再び姿が消えたため気を探る。

すると今度は自身の右側により鮮明に気を感じることが出来た。

 

「そこだあ!!!」

 

悟飯が鋭い正拳突きを、突き出すがそこにはまた先ほど同様に霧があるだけだった。

そして逆に左側から強い衝撃を受ける。

悟飯は大きく吹き飛ばされて結界の壁に激突する。

頭を抑えながら立ち上がり、確認するとそこには萃香の姿があった。

悟飯はそれを見てなぜか笑みを浮かべた。

そして萃香の前まで歩いて行くと、

 

「来いよ。」

 

そう言った。

萃香はそのセリフに驚いたように目を丸くするがすぐに先ほどの挑戦的な笑みを浮かべると、

 

「当たり前だよ。」

 

そう言って再び姿を消した…いや、霧になって消えた。

そう、悟飯はこの仕組みに感づいたのだ。

 

(萃香さんの能力は恐らく自身の姿を霧のように分散させることが出来る能力。恐らく能力その物がそれというわけではないだろうが少なくとも自身を霧にする事が出来る能力であることは確かだ。ならば…)

 

先ほどと同じ状況になる。

再び悟飯の背後に気が現れる。

悟飯はそれにすぐさま反応し振り向くのその霧に向かって気合い砲を放った。

今度の霧は散乱することなく結界の底へとたたきつけられる。

悟飯はすぐに振り向くともう一度気合い砲を放った。

 

「はあぁ!!!」

 

「なっ!?」

 

霧になっていた萃香は気合い砲で散乱することなく壁に叩きつけられる。

そして霧から元の身体へと治る。

が、その萃香には左腕だけがなかった。

 

「やはり、身体を霧にするだけでなく一部を切り離して使えたみたいだな。」

 

「気づくのが少し早すぎるよ戦闘民族。」

 

そう言いながら身体のほこりを払う。

そして始めの一撃で結界の底に叩きつけられた霧を自身の左腕に集めるとそれが腕に変わった。

そしてまるで独り言のような小さな声で話し始めた。

 

「私の能力は【密と疎を操る程度の能力】って言ってね、中々面白い能力なんだよね…。」

 

そう言うと萃香の身体はどんどん巨大化していく。

その光景には流石の悟飯を驚きを隠せるはずもなく目を見開いてそれを見つめるしかなかった。

結界の半分を占めるほどの大きさになると巨大化が止まる。

そして底にいる悟飯を萃香が睨み付けると恐ろしく思えるほどの笑みを浮かべるとその巨大な足を持ち上げて悟飯を踏みつぶそうとする。

悟飯はすぐさま離れるが何しろ元々さほど広くはない結界をさらに半分まで制限されてしまったのだから悟飯の行動できる範囲が異常に狭くなってしまう。

さらに巨大化した分破壊力も上がっており、拳一発で結界全体が音を立てているのが分かった。

 

「まさかこんなことが出来るなんて…本当に幻想郷の人たちはスゴいな…!!」

 

「そりゃあそうさ!なんてったってここは幻想郷!あらゆる種族が共存する理想郷と言って良いんだからね!」

 

そう言いながら拳を振り回す。

一振りで辺りに凄まじい風を巻き起こし、悟飯の行動を制限する。

その風圧は悟飯でさえも油断すれば吹き飛ばされそうになるほどだ。

再び萃香の拳が悟飯へと迫る。

先ほどのように躱すがその悟飯の表情からは余裕を一切感じられなかった。

その恐ろしい風圧は悟飯の身体を強く押さえつけて自由に行動できなくしていた。

なんとか躱すことが出来たものの、その凄まじい風圧に吹き飛ばされる。

すぐに空中で受け身を取るが、何度も拳を振るわれただに結界内では凄まじい乱気流のようになってしまっていた。

そんな中でもまるで何も感じないかのように萃香の拳が悟飯に向かってから振り下ろされる。

凄まじい風圧に動けなくなってしまった悟飯は躱せないと判断するとすぐに腕を自身の前に持ってきてガードをする。

が、その凄まじい拳は悟飯を捉えると結界へと叩きけた。

 

「ぐっ!!」

 

悟飯の背中で結界がミシミシと音を立てているのが分かった。

とてつもなく重い一撃だった。

その一撃は悟飯に確実なダメージを与えていた。

萃香が拳を上げると解放された悟飯は片膝をつきそのダメージに顔をしかめる。

 

「確かにあんたの言う通り、鬼の本質は力だよ。だけどね、それだけじゃ幻想郷(ここ)を支配するなんてとても出来やしないさ。いくら力が強くても相手に当たらなきゃ意味ないし、ましてや弾幕が存在する以上接近戦ってのはふりでねえ。馬鹿正直なだけじゃ恐れられたりはしないよ。」

 

そう言いながら鋭い目を悟飯に向ける。

悟飯はその視線に対して笑みをこぼす。

先ほどまでとは違い、今度は挑戦的な笑みだった。

 

「確かに…ただでたらめに拳を振るってたわけじゃないようだし、今の一撃でその乱気流さえ消し飛ばしてた。」

 

そう言われた萃香は少し驚いたように目を丸くするがすぐに声を上げて大笑いし始めた。

 

「アハッハッハッハッハ!流石だよ!こんな早くに見抜かれるなんてさ!!」

 

「あぁ、これでも小さい頃は色々と親に勉強を教わってたからね!分析だったりは得意なんだよ。」

 

そう言いながら気を解放して白い炎のようなオーラを纏う。

悟飯は萃香に向かって飛び出していき、萃香は悟飯に向かって一歩踏み出す。

 

「「はあぁぁぁぁぁぁあああ!!!!」」

 

互いが互いに向かって全力の拳をぶつけ合う。

辺りに凄まじいぶつかり合いは強力な衝撃を放ち、結界の外にいる霊夢達にも伝わってくる。

 

「なっ!結界からこんなところまで衝撃が伝わってくるのかよ!?」

 

「そ、そういう問題じゃないと思うわよ!」

 

魔理沙とアリスがその衝撃にふらつきながらそう言うと霊夢が、

 

「そうよ!結界は音は通すけれども衝撃やダメージを通さないようにしてるはずなのにそれを越えてくるって事は完全にもう私の許容範囲じゃないって事よ!!」

 

霊夢の悲痛な叫び声…いや、確かに悲痛な部分もあるのだが霊夢の顔を見る限り悲痛と言うよりは…

 

「…お、鬼もう一人いるんだぜ…。」

 

最早怒りで我を忘れそうなほどの怒号にも感じられた。

 

「ぐあ!!」

 

「うおっと!!」

 

悟飯はその衝撃に大きく吹き飛ばされて壁に激突する。

一方萃香は後ろに大きく一歩後ずさっただけだった。

それを見た魔理沙達は改めて鬼の恐ろしさを痛感していた。

言葉にこそ表さないものの三人の身体は小刻みに震えていた。

悟飯が立ち上がると萃香はまだまだ楽しそうな笑みを浮かべながら拳を振り上げる。

 

「そろそろ力の差が出てきたんじゃないか?でもこれだけ楽しめるなんて思ってすらいなかったよ!!次はもっと楽しませてくれよ!!!」

 

そして拳を振りかざすが狙いを定める悟飯の顔を見た萃香の目は見開かれる。

 

(父さんみたいな事も言うんだな…。戦いが好きで…強いなんて…。)

 

悟飯は笑みを浮かべていた。

瞳こそは影で隠れて見えなかったがその頬にはえくぼがくっきりと見えていた。

 

「【オラ】に二度同じ手は通用しないよ。」

 

そう言った悟飯が萃香の視界から消える。

萃香の拳は空を裂き、標的を見失ってしまう。

萃香はすぐに悟飯を探し出そうとするがそんな時後ろから大きな叫び声が聞こえてくる。

 

「はあぁぁぁぁぁぁあああ!!!!」

 

次の瞬間、大きな音とともに萃香は右膝の後ろにとてつもない衝撃を受ける。

悟飯が右の膝裏を蹴り飛ばしたのだ。

バランスを崩すまいとなんとかこらえようとする萃香だがすぐに悟飯は左脚にも回り込み同じように左の膝裏に回し蹴りをたたき込む。

両足を崩された萃香はもちろん耐えられるはずもなく地面に尻餅をついてしまう。

すぐに萃香は自身の背後を確認するがそこに悟飯の姿はなかった。

 

【バチバチッ!!】

 

萃香の頭上からなにやら火花のような電気のはじける音のような何かが聞こえてくる。

すぐさま振り向く。

右手の掌をデコのまえに持っていき、その掌には強力なエネルギーが込められているのが分かった。

悟飯だった。

萃香が何か行動を取ろうとするがそれよりも先に大きな叫びが辺りにこだまする。

 

「魔閃光!!!!!」

 

萃香の身体すらも覆い隠すほどに巨大なエネルギー波が無防備な萃香に襲いかかる。

その凄まじいほどの大きさのであるため光も恐ろしく強く、結界内はまばゆい光で最早見ることが出来なくなっていた。

 

「けっ…結界の中が何も見えないぜ!!」

 

「あれほどの強大なエネルギー波をまともに受けたらいくら鬼でも…!」

 

全身に魔閃光を喰らう萃香は直撃であるがためか、全く抵抗できないほどに追い込まれつつあった。

 

(…マズい…。このままじゃあ完全にやられる…!!)

 

力を振り絞り自信の巨大化させていた身体を元の大きさに戻す。

すると萃香へのダメージは確実に軽減されていることが自身にも手に取るように分かった。

 

(魔閃光を受ける面積を減らしてダメージの軽減か?だけど魔閃光の威力は変わらない以上萃香さんは動けない!!)

 

が悟飯は萃香の変化を気にとめることなく魔閃光を放ち続ける。

結界にも限界が近いようでいやな音が徐々に大きくなっていく。

次の瞬間結界内に強い衝撃が走る。

驚いてすぐに萃香の気を確認する。

すると萃香は右拳を前につい出した状態になっていた。

凄まじい拳圧で魔閃光を押し返したのだ。

とはいえ流石に1発では完全に推し勝つことは出来ずに再び魔閃光が萃香へと迫り来る。

萃香は次に左拳を握り締めてめいっぱいの力を込める。

結界に足の指の力だけで傷が入るほどのパワーを全身から奮い立たせる。

 

「うっ…らあぁぁぁぁぁあああああ!!!!!」

 

凄まじい一撃が先ほどの一撃で不安定になった魔閃光を貫き結界へと叩きつけられる。

凄まじい轟音が辺りに響き渡り、霊夢達は流石にこれ以上は危ないと判断してすぐさま結界に向かって走り始める。

萃香は拳圧をぶつけた場所を確認するがその視界に悟飯を捉えることは出来なかった。

目を見開く萃香だがそのすぐ真下に何かの存在を感じる。

もう目で見る必要すらもなかった。

 

(孫悟飯か!!?)

 

魔閃光と拳圧のぶつかり合いによって二人の間に生じた力でお互いの姿は確認できなくなっていた。

それを利用して拳圧が魔閃光を貫くタイミングに合わせて萃香の懐へと高速移動したのだ。

萃香は悟飯を確認するよりも先に反射的に右拳を突き出した。

萃香は何をするよりも先に反射的に悟飯に対して反撃しようとしたのだ。

しかし悟飯はそれを左に紙一重で躱す。

右頬をギリギリで掠めずに完全に躱した悟飯はそのまま萃香の頭をわしづかみにする。

そして悟飯は気を解放し、そのまま力一杯に結界の底へと萃香を叩きつける。

 

「あっ…ぐがぁ…っ。」

 

「はあぁぁぁぁぁぁぁああああ!!!!」

 

萃香は悟飯の手首を掴んで引きはがそうとするが、悟飯の腕は全く動かない。

 

【ゴシャッ!】

 

「「!!?」」

 

次の瞬間結界に嫌な音が響く。

ついに結界が二人の戦闘についてこれなくなり、致命的な傷が入ってしまう。

それに驚いた悟飯の手から力が抜ける。

その一瞬の好期を萃香は見逃さなかった。

すぐに右手の手刀で悟飯の肘窩(ちゅうか)を叩き悟飯のバランスを崩す。

がそれでもまだ悟飯の手は萃香の顔を離さなかった。

すぐに萃香は左手で悟飯の右手首を思い切り握り締める。

その力は凄まじく悟飯がその痛みに怯み掴んでいた手の力が緩む。

そのまま左手で悟飯の右手を顔から離すと同時に悟飯の胸ぐらを右手で掴む。

悟飯も体勢を立て直そうとするがそれよりも僅かに萃香の方が早かった。

 

「おらあぁぁぁぁぁぁああああ!!!!」

 

今度は萃香が悟飯を結界の底に叩きつける。

それと同時に結界に響き渡る嫌な音。

そしてついに、

 

【バキバキバキッ!!!】

 

結界が音を立てて崩れる。

結界が崩れたことで体勢を崩した二人はすぐに互いに手を離して空中で回転し、体勢を立て直してから地面へと着地した。

悟飯は少し驚いたような顔をしながら萃香の方へと振り返る。

 

「萃香…なんで……、」

 

そう言いかけた悟飯だがとある怒号がそれをかき消す。

 

「何やってんのよあんた達はー!!!!!」

 

そのあまりの大きさに悟飯も萃香も唖然として霊夢を見つめることしか出来なかった。

その霊夢の表情はまさに鬼とも言えるようなほどに鬼気迫るものだった。

それを追うように後ろから魔理沙とアリスが追いかけてくるがそんなことは悟飯と萃香は気づかない。

 

「結界を壊すな…壊したら負けだっていったのに、そんなものお構いなしに馬鹿みたいに力思い切り奮って!!!あんた達には自重って言葉がないのかしら!!?」

 

と怒り狂ったように叫ぶ霊夢。

悟飯は何も言い返せずに目をそらし、萃香は俯く。

後ろからやってきた魔理沙とアリスがようやく追いついて霊夢をなだめるも、その怒りは凄まじいようで全く収まる気配はない。

そんな中である人物が話し始める。

 

「悟飯…!」

 

その言葉に気がつき振り向くと真剣な顔つきの萃香が悟飯のことをまっすぐに見つめていた。

悟飯もそれに返すように真剣な目つきになる。

 

「この勝負はお前の勝ちだ。結界を壊したのはあたしだからね。」

 

「なっ!?それは違う!結界に最初に壊れるほどの致命傷を与えたのは俺…「だが壊したのはあたしだ!!」…!?」

 

悟飯の言葉を遮るように萃香が強めに言い放つ。

 

(もしあの時結界が壊れてなくてもあの状況から逆転する手立てなんてなかった…!)

 

萃香は拳を握り締める。

弾幕勝負ではなく純粋な拳の、近接戦闘での勝負に鬼である萃香が負けを認めざるを得ない状況にまで追い込まれたのだ。

鬼としてのプライドがそれを許そうとは出来なかったが、それを認めないほど愚かではないと自身に言い聞かせる。

 

「あんたの勝ちだ…結界を壊したやつの負けなんだから、最後に壊したやつの負けなのさ…。」

 

萃香の顔は俯いてしまい悟飯には表情がよく見えない。

だが、萃香が何を思っているのか全く分からないわけではなかった。

 

「分かった…この【勝負】は俺の勝ちにさせてもらうよ。」

 

そう言いながら萃香に背を向ける。

一歩歩き出そうとしたとき、まるで何かを思い出したかのように少しだけ振り向く。

 

「でも【次は勝つ】よ。」

 

そう萃香に言った。

萃香は目を見開いて悟飯を見る。

悟飯は一切振り返ることなく霊夢のところへ行っていた。

なぜ悟飯が萃香に対して勝ったはずなのに次も勝つ、と言ったのかは萃香には完全には理解できなかった。

しかし、

 

「ははっ…おかしなやつだなぁ…。勝ったって言ってたのに次は勝つとか、お前面白いな!!!」

 

そう言いながら悟飯の背中に突撃していく。

突然のことに悟飯も対応しきれるわけもなく霊夢達に倒れ込む。

 

「次はあたしが勝つ!!悟飯にはもう二度と負けないよ!!!」

 

そう言いながら満面の笑みを見せる。

それを見た悟飯もつられて笑みを浮かべる。

 

(まぁ、次戦うときはあたしじゃなくて勇儀だから正確に言えば次の次か。)

 

その後萃香と悟飯は下敷きとなった3人にこっぴどくしかられたことは言うまでもない。

 

 

 

 

 




どうも!弾です!
前書きでも話しましたが、今回は今後のことについて少しお話が。
投稿ペースが酷い遅さであることは自覚しています。
大変申し訳ありません。
なんでこれを少しでも解消するべく、1話分の文字数を減らそうと思っています。
1話の内容がかなり薄くなりかねませんが投稿ペースを少しでも上げるつもりです。
これでペースやモチベが上がらないと…中々にこちらのメンタルやらがキツいので…
下手をすれば失踪とかも視野に入ってきます。
もちろんするつもりなどありませんが状況によってはせざるをえないことも事実です。
少しでもモチベーションやリアルの時間などが取れるように頑張りますので待ってていただけると幸いです。
これからも本作品をよろしく願いします。

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