絶望に生きた覚悟の戦士が幻想入り   作:高月 弾

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遅くなりました。
大学に入りバイトが忙しく時間が割けません。
本当に申し訳ありません。
ですが失踪する気は毛頭ありませんので完結は必ずさせます!
それまで遅くなるとは思いますがよろしくお願いします!


第20話 戦闘終わってまた戦闘?鬼VS宇宙人

 悟飯と魔理沙は空を飛んでいかずに歩きで博霊神社を目指していた。

これは悟飯ご希望でゆっくりと風景を見ながら行きたいとのことだった。

幻想郷はまさに自然と共存している世界と言えるような世界だったことに悟飯は感心していた。

元の世界では人造人間のせいでほとんど意識されてはいなかったが、急速な都市発展のせいで自然に残された場所が失われていっていたのだ。

悟飯は幼い頃こそは山にすんでいたものの、ある日を境に都市に住むようになってからは山とのその差に驚きを隠せなかった。

が、ここならばどちらかと言えばパオズ山に近い雰囲気を感じていた。

だからこそこの今の状況にも何処か懐かしさすら感じていた。

その時、悟飯の足下を五人の小さな子どもたちが走り抜けていった。

その子供たちは一見普通に見えるがそのうちの三人は背中から鳥の羽や氷の羽を生やしており、また一人は触角のようなものが生えていた。

 

「なぁ魔理沙。あれも妖怪なのかい?特にあの青い子と緑色の髪の子は珍しい…というか初めて感じる気だけど…」

 

と魔理沙に質問をする悟飯。

魔理沙はその質問を意外そうな目を向けながら返答した。

 

「あぁ、あいつらは妖精って言うんだぜ。ほかの三人は妖怪だが…悟飯の言う気ってやつは相手の種族の違いさえ分かっちまうのか?」

 

「まぁある程度ならね。それに妖精の二人の気は特に特徴的だったから。なんか…自然と同調してるみたいな。」

 

 

間違っていない。

妖精は自然がなければ生きていけない。

そういった存在であり妖精は自然その物と言っても過言ではなかった。

悟飯の言う気、便利すぎて少し悟飯や美鈴を羨ましいと思った魔理沙。

まだ午前中だからか道ですれ違うのは小さな妖怪や妖精ばかりでいたずらこそするもののほとんど害はなかった。

そうこうしているうちに悟飯と魔理沙は人里に着いた。

悟飯は人里に入るときまた安心したような笑みを見せていた。

魔理沙にはそれが人造人間達に破壊された街しかほとんど見ることが出来なかった悟飯がこの景色にそれほどの安心感を秘めているのが理解できていた。

が、

 

(悟飯が普段から嘘をついているようには見えないけど…まだ数回しか見ていないこの人里にはいる瞬間のこの顔が…これが唯一悟飯の心の底からの感情だって思えるぜ。サイヤ人が本当に紫の言う通りなら、きっとこんな顔はしない…絶対にあいつの嘘に違いないぜ…!)

 

そう思いながら悟飯と人里を歩いて行く。

するとなにやら人だかりの出来ている場所が合った。

それも店に並んでいるのではなくなにかを囲うように集まっているように見えた。

 

「あそこに少し行ってみても良いかな?」

 

悟飯が魔理沙にそう聞くが、魔理沙はむしろなぜ聞くのかと質問を返してきた。

よくよく考えれば魔理沙と悟飯なら本来立場が上なのは師匠である悟飯だ。

が、悟飯の性格上他人を第一に考えるためどうしても他人優先の行動になってしまうのだ。

そうこうしながらも人だまりの方に歩み寄っていき何が原因なのかを確かめる。

するとその中からは聞き覚えのある声が聞こえていた。

 

「すると浦島太郎の前に鯛やいろいろなお魚さん達が出てきて踊りを踊って見せてくれました。」

 

「あっ、アリス!」

 

その声に驚いたようにアリスは視線を向けるとそこには悟飯がいた。

アリスは軽く会釈をするとすぐに手元の作業に戻ってしまった。

 

「浦島太郎はそれを見ながらとてもおいしい豪華な食事を楽しんでいました。」

 

と語り始めていた。

それをよく見るとアリスは人形を使って小さな劇を行っていたのだ。

いわゆる人形劇という物だ。

それを見た悟飯も子どもたちと同じように人形劇を見始めた。

魔理沙も悟飯が止まってしまったため仕方なく人形劇の干渉を始めた。

話の内容は【浦島太郎】と言う物語で多くの人が知っている物語だった。

子どもたちも全員がその物語を知っていたらしくこの後の物語を予測させるクイズもほとんど全員が正解していた。

演劇が終わると子供たちはアリスにお礼を言ってからそれぞれ解散していった。

悟飯と魔理沙はアリスの元へと近づいていった。

 

「アリス。これが前に言っていた人形劇だね?」

 

「えぇ、まさか悟飯さんが来るとは思ってなかったけどそれより驚いたのは魔理沙ね。魔理沙はこういった物は興味がなさそうだから。」

 

アリスは少し意地悪そうな笑みを浮かべながら魔理沙にそう言った。

アリスの言葉に少しむっとしながら、

 

「私だって別見ようと思って止まったわけじゃないぜ。悟飯が止まったから仕方なく私も止まっただけだ。」

 

と返した。

するとアリスの後ろから上海が出てきて悟飯の胸に飛び込む。

すると上海は悟飯の胸に頬を擦りつけてくる。

悟飯はそれに笑みを見せながら上海の頭を優しくなでる。

すると上海は気持ちよさそうにさらに悟飯に甘えるように密着する。

すると魔理沙は物珍しそうに上海を見ながら、

 

「へぇ、珍しいじゃないか。上海が人に懐くなんて。それもかなり仲が良いみたいじゃないか。何かあったのか?なぁアリス。」

 

そう言うが最後の方は意地悪そうな笑みをアリスに向けながら話していた。

 

「そうね。確かに上海がここまで人に懐くなんて珍しいのよ。その理由が分かると助かるんだけど、上海は悟飯さんのことを聞くと楽しみとか会いたいとか、そんなことしか言わなくなるのよ。」

 

そう言いながら困ったように二人を眺める。

どうやらアリスにも上海があそこまで悟飯に懐く理由が分からないらしい。

魔理沙はがっかりしたようなそぶりを見せてからつまらなそうにその光景眺めていた。

すると悟飯は上海の頭をなでながらアリス達の元に歩いてきた。

そして先ほどの人形劇の話をし始めた。

悟飯ももちろんその話は知っている。

その簡単な話を聞きながらある人物のことを思い出していた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「悟飯ちゃん。えれえ(偉い)学者さんになるためにはしっかりと読書もしなきゃならんべ。」

 

「はい!お母さん!」

 

「んだ。それじゃあ今日はこの【浦島太郎】を読むだ。しっかりと聞くんだぞ?」

 

そう言いながら女性は浦島太郎を読み始めた。

これは過去の記憶、悟飯のまだ幼き頃の記憶の片鱗だった。

悟飯は小さい頃は母親であるチチが学者にするべく様々な勉強をしていたのだ。

それは悟飯がまだ4、5歳だった頃からスパルタに教えてきたのだ。

だが、悟飯はある時を境にその母親とも会わなくなってしまった。

 

「くっ…うっ…うわあぁぁぁぁぁぁぁあああ!!!!!」

 

【ボオォォォォオ!!!】

 

超サイヤ人への覚醒。

人造人間達が現れて次々と仲間が殺されていってしまった。

それはまさに地獄のような世界、人造人間達はその悪夢から逃げることも許さない。

しかし悟飯は逃げることが出来た。

超サイヤ人への変身を果たしたベジータは、人造人間達との戦いの末命を落とす。

しかし、その時にベジータは自身は一人で戦うと言い残し生き残ったクリリンとヤジロベー、そして悟飯を遠ざけた。

結果としてその三人は生き残ることが出来たのだ。

悟飯は師のピッコロが死んだことに絶望した、そしてベジータの気が消えたことにも…。

クリリンも圧倒的な実力を持っていた二人が殺された事に絶望していた。

が、諦めなかった。

唯一残った悟飯とともに修行をした。

チチが何度も戦う事なんてやめてくれと悟飯に泣いて頼み込む。

しかし、悟飯はそれに頷かなかった。

いや、頷くなんて出来るわけが無かった。

師匠や仲間達を殺した人造人間達を許せるはずが無かった。

それにクリリンがチチに向かって土下座をしながら頼み込んでいたのを悟飯は物陰から見ていたのだ。

 

「チチさん!!お願いします!俺に悟飯の修行を続けさせてください!!!悟飯は…あいつは【俺たち】の最後の希望なんです!あの悟空の血を引く…最強の血を受け継ぐサイヤ人の戦士なんです!!!」

 

「ダメだダメだ!!!悟飯ちゃんをそんな人殺しの前に出すわけにはいかねぇだ!!!悟飯ちゃんは私の大切な…悟空さの残した息子なんだ!!!絶対にそんなことはさせられねえ!!」

 

そのあと二人が何を言ったのかは覚えていない。

けれど、二人の言葉が自分の中で激しく衝突し合っていたのは覚えていた。

けれど彼は戦うことを選んだ。

その後人造人間達によってクリリンさんが殺された。

クリリンさんは人造人間達が暴れてるのに気づいた僕を気絶させヤジロベーさんに遠くに運ばせたのだ。

クリリンさんは一人で人造人間達に挑んでいき…殺された。

目の前が真っ白になった。目が覚めたらそこにはヤジロベーさんしかいなかった。ヤジロベーさんに何を聞いてもただうつむくだけだった。

すぐに探しに行った…けれど何も見つからなかった。

死体すらも…

泣いた。

ひたすらに泣いた。

それだけしか覚えていない。

あの時間違いなく悟飯自身の何かが変わっているのは覚えていた。

そして、目覚めたのだ。

悟飯の中の【超サイヤ人】が…

そしてその日から悟飯は家に帰らなくなった。

超サイヤ人になってすぐに人造人間達に立ち向かったが歯が立たなかった。

だからこそ自分を鍛えるために、お母さんに甘えないために、自ら戦場に生きることを決意したのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(…母さんは…無事だろうか…牛魔王おじいちゃんも…生きているだろうか…。)

 

「…ん……………は……ん……悟飯さん!」

 

突然の声にはっとして目を向ける。

するとそこにはアリスと魔理沙が心配そうにこちらのことを見つめていた。

どうやら昔のことを思い出している間にアリスの話が終わってしまっていたようだった。

 

「ご、ごめん二人とも。少し考え事をしちゃってたよ。」

 

そう言いながら笑みを作る。

分かりやすかった、あまりにも分かりやすかったのだ。

アリスと魔理沙にもそれが作り笑いであることはすぐに分かった。

だからこそ黙ってはいられなかった。

 

「何かあったの?」

 

「そうだぜ。何かあったなら話せば少し楽になるかもしれないぜ?」

 

そう言われた悟飯の顔が僅かにこわばる。

少し考えてからこう話し始めた。

 

「実は…今日元の世界に帰ろうと思っているんだ。まだ…紅魔館の手伝いとか、皆への償いだったりとか…まだ足りないかもしれないけど、僕は帰らなきゃいけないんだ、人造人間達を倒すために…あいつらを破壊するために…!」

 

その悟飯の顔に二人は恐怖を感じる。

あの顔だった。

初めて悟飯の対峙したときのあの怒りの顔だった。

あの時よりは激しくない物のそれでも恐怖を感じるくらいには怒りを感じることが出来た。

がすぐに少し寂しそうな顔になり、

 

「だから、アリスや魔理沙達にもまだ全然お詫びとか出来てないのが悔しくさ…本当にごめん。」

 

そう言いながら謝る。

それを聞いた二人は少し焦りながら、

 

「そ、そんなことで謝らなくても良いわよ。家の片付けとかも手伝ってもらっちゃったし…」

 

「そうだぜ!私の家なんてかなり散らかってたから本当に助かったんだぜ!おっと、でも帰る前に修行の計画とか教えてくれよ。自分なりに続けたいからさ。」

 

二人の反応は悟飯は戸惑っていた。

二人のことだから直接的には嫌みを言わないとは思っていたがまさか逆にここまで謙虚に、魔理沙に至っては本当に十分だと言っているようにも聞こえるほどに言われるとは思っていなかったのだ。

 

「ご、ごめん。ありがとう…っ!」

 

そう言いながら深く頭を下げた。

二人の前で初めて嘘をついた。

いや、嘘とまでは言い切れないのかもしれないが悟飯は確かにその思いがあるのも事実だ。

しかし、本当に心に秘めていたのは元の世界に対する感情が大半だった。

その後悟飯達は今までの数日のことを振り返りはなしながら博霊神社へと向かった。

そしてたどり着いた悟飯達だったが霊夢が何処にも見当たらずに悟飯は困ってしまっていた。

すると魔理沙が懐から1円玉を取り出した。

悟飯はそれに対して問をかけるが魔理沙は「まぁ見てろ。」と返すとそれを賽銭箱に向けて投げた。

 

【チャリーン!】

 

小さな音が響くと同時にドタドタと何かが走ってくるような音が聞こえる。

そして音がしてから僅か1秒ほどで神社の扉が大きな音を立てながら開かれ中がから霊夢が飛び出してきた。

悟飯はその様子を見て目を丸くする。

アリスと魔理沙はまるで見慣れているかのように軽く挨拶をする。

すると霊夢は少し睨み付けるように魔理沙を見た後に悟飯を見つけるやいなや大きなため息をつく。

そしてアリスと魔理沙、そして悟飯を小さく睨み付けるとまた大きなため息をついた。

 

(…俺は何もやってないんだけどなあ…)

 

心でそう呟く悟飯をよそに魔理沙は霊夢に向かって元気に挨拶をする。

アリスも軽く挨拶をする。

悟飯も霊夢に対して礼儀正しく挨拶をする。

そんな三人を見て3度目の大きなため息をつくと頭をかきながら神社の方に向かって誰かを呼ぶような手招きをした。

 

(…そろそろ来るとは思っていたけど…面倒くさいわねぇ…)

 

「れ、霊夢さん。実は…」

 

「あぁ、分かってるから言わなくて良いわ。元の世界に戻りたいんでしょ?それについても話があるけれどその前にちょっとあんたに会いたいってやつがいるのよ。」

 

悟飯は少し驚いた表情を見せる。

霊夢は恐ろしいほど勘が鋭い…いや、悪い予感だけならば下手をすれば1種の未来予知とも言えるほどに鋭いのだ。

霊夢に呼ばれたであろう人物が扉から出てくるが、その姿を見た悟飯は思わず首をかしげた。

が、魔理沙とアリスは目を丸くしていた。

 

「レイム~?」

 

とても小さな子どもだった。

が、見た目には似合わない大きな角の生えた子どもだった。

するとその子どもは悟飯を見ると目を輝かせながら走り寄ってきた。

その子どもは物珍しそうに悟飯を眺めながらぐるぐるとその周りを回り始めた。

その様子を少し困ったような様子を見せながらも微笑む悟飯。

しかし次の瞬間悟飯の顔は一気に変わった。

即座に後方に飛び退くとその女の子から距離を離した。

すると霊夢、アリス、魔理沙の三人は少し驚いたような様子を見せ、女の子は瞳を怪しく光らせた。

少ししてから悟飯は自分のしたことに気づく。

 

「…ご、ごめんよ!き、君がいやだとかそういうわけじゃ無かったんだ!!」

 

必死に謝る。

が、周りの人たちはどうも悟飯の想像していた様子とはかなり違った。

 

「いや~こりゃあ随分な実力を持った人みたいだねぇ。」

 

女の子は大きく笑い声を上げるとすぐに霊夢に目線を向ける。

すると霊夢はため息をつきながらこう説明した。

どうやらこの子は【萃香】と言うらしくこの幻想郷に住む鬼の種族のうちの一人らしい。

鬼はかつてこの幻想郷を支配するほどの実力持っており、その力は未だ衰えていないという話も聞いた。

そして肝心な部分がここである。

 

「お、俺と戦いたい?」

 

萃香は悟飯と弾幕勝負ではなく肉弾戦で戦いと申し出てきたのだ。

幻想郷のルール、弾幕ごっことは一体何処へ行ったのやら…。

もちろん悟飯は始めは拒否をした。

これから元の世界に戻り、人造人間達と戦わなければならないのに少しでも無駄な力の浪費は控えたかった。

だが…

 

(あれほどの気…この幻想郷に来て…いままでで1番大きな力を隠している気だった…。この人(鬼)は…かなり強い…!)

 

大きな力を隠しているであろう萃香を前に悟飯は興味を持ってしまっていた。

結局、萃香の勢いに負けて悟飯は霊夢の創り出した結界の中で対決をすることになってしまった。

 

「ルールは単純。相手を殺したら負け、戦闘不能になったら負け、降参したら負け、結界を破壊しても負け。この四つのうちのどれかでも相手に取らせれば勝ちよ。」

 

霊夢の言葉に無言で頷く悟飯とは対照的に、元気に返事をする萃香。

やはりどう見てもただの小さい子どもだった。

が、悟飯の先ほど感じた気は間違いなく本物だったことは理解していた。

二人は静かに霊夢の創り出した結界の中に入っていく。

それを外から心配そうに見つめるアリスと霊夢。

しかし魔理沙の様子だけは違い、何処か楽しそうな期待を込めた目をしていた。

 

「…あなた、なんで楽しそうにしてるのよ…」

 

あきれ顔でそう聞く霊夢に魔理沙は笑みを見せながら、

見れば分かると答えた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

お互いに結界内に入り正面を向き合い対峙する。

悟飯は挨拶を済ませると、すぐに構えを取る。

萃香は挨拶を言われたことに少し戸惑いながらもそれにおう!と返事をしてから悟飯に対峙し直した。

 

(構えないのか…?)

 

「それじゃあ…始め~。」

 

霊夢のかけ声(やる気なし)が神社にこだまする。

次の瞬間、萃香はスゴいスピードで悟飯に急接近する。

予想を超えるスピードに悟飯は僅かに反応が遅れる。

萃香は拳を力一杯振り上げて悟飯の顔めがけて振り下ろした。

が、悟飯はなんとかそれを紙一重で躱す。

萃香は大きな音を立てながらゆっくりと静止する。

すると先ほどとは全く違う笑みを悟飯達に見せた。

その笑みは…

 

「よく躱したなぁ。あれでも私の中でのかなりのスピードを出したつもりなんだけどねぇ。」

 

(…戦いを楽しんでいるときの父さんと同じ眼だ…)

 

そう思いながら再び構え直す。

萃香も八重歯を見せながら笑うと再び突撃体制を取る。

一瞬の沈黙。

またもそれは萃香によって破られる。

萃香はさっきとまるっきり同じように突撃してきた。

一度そのスピードを躱されてる相手に同じ攻撃を二度続けて行うのは愚策だった。

悟飯は紙一重で躱すと萃香の手首を掴み思い切り投げ飛ばす。

そしてそこに向かって気合い砲を放った。

空中で体制を立て直そうとした萃香だがそれよりも先に悟飯の気合い砲が直撃し、そのまま結界の壁に激突した。

が萃香は少し後頭部を押さえるだけでほとんどダメージは無いように見えた。

そして悟飯の方を見ると再び笑みを見せる。

次の瞬間萃香から醸し出す雰囲気が一気に変わった。

悟飯もその様子に思わず身震いをしてしまった。

結界の外にいる霊夢達にはいまいち感じられないが同じ空間にいる悟飯はビリビリと伝わってくる萃香の威圧感に驚きを隠せなかった。

咄嗟に悟飯は飛び出した。

攻撃させてはならない、と悟飯の勘がそう言っていたのだ。

悟飯は右腕を振りかぶるとそのまま思い切り萃香に向かって突き出した。

萃香もそれに対して左拳を力一杯ぶつける。

結界の外に響き渡るほどの轟音と結界を揺るがすほどの強力な衝撃波が二人の拳から放たれる。

二人はお互いに笑みを見せながら力勝負へと持ち込んだ。

 

「…な、なんてでかい轟音だよ…。結界の外までこんなでかい音が届くなんて、中じゃ一体どうなってんだよ…。」

 

魔理沙が驚愕しながら呟くようにそう言うと、霊夢が

 

「音は別に遮るようにはしてないわよ。その方が二人の実力をより正確に見極められるから。」

 

と結界を見ながら答えた。

 

(それよりも…結界が揺さぶられるほどの威力がこんな始めの方で出せるなんて…。いくら私が割と本気で結界を作ってると言ってもこんな馬鹿みたいな力そう何発も受けてられないわよ!!)

 

お互いに互角の力で均衡が続く。

が、悟飯は自分の手を引き萃香の体勢を崩す。

そして再び手首を掴もうとするが、萃香は体勢を崩しながらも無理やり悟飯に一歩踏み込み右手を大きく振り回した。

悟飯はそれに反応できずにモロに左頬に喰らい、大きく吹き飛ばされる。

萃香は体勢を立て直すと吹き飛ばされている悟飯に向かって地面を一蹴りして超低空の跳躍をして突撃する。

悟飯も体勢を立て直して地面に足をつけてブレーキをかける。

すぐに視線を萃香に戻すが萃香は既にすぐ目の前に迫っていた。

萃香は右拳を悟飯の腹に向かって思い切り突き出す。

悟飯は辛うじて右手で受け止めようとする。

が、攻撃が思っていたよりも重く受けきれないと判断した悟飯は辛うじてその攻撃をいなした。

萃香は壁に大きな音を立てながら着地すると、すぐさま壁を蹴り出して悟飯に迫り来る。

悟飯は一度距離を取って体勢を立て直すため、空中へと飛び上がる。

萃香の拳は初めて悟飯をとらえることなく空を裂く。

萃香は止まるとゆっくりと悟飯を見上げる。

悟飯はゆっくりと降りてきて地上に足をつける。

想像以上だった。

萃香が強い者だと分かってはいた。

だがこれほどまでの力を有しているとは思っていなかったのだ。

だが悟飯の顔は困惑するような様子はなく、むしろ…

 

「萃香。君は実力をまだまだ隠してるだろ?俺に見せてくれよ。君の力を!」

 

そう言いながら楽しそうな笑みを浮かべる。

萃香もそれにつられて笑みを見せる。

 

「そういうことは今のあたしの力に圧倒してからにしな!!!」

 

そう言いながら真っ正面から突撃してくる。

今度は悟飯もしっかりと構えた状態で立ち塞がる。

 

「そうだね。ならまず…!」

 

そう言いながら悟飯は萃香の目の前から消えた。

萃香は驚きながら周りを見渡すが悟飯の姿は見当たらない。

すると自分の頭上から声が聞こえてきた。

 

「その恐ろしいスピードから攻略するよ。」

 

そう言いながら萃香の後頭部を思い切り殴りつけた。

 




鬼VS宇宙人ですが…あれ?悟飯が弾幕勝負するのいつ?

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