絶望に生きた覚悟の戦士が幻想入り   作:高月 弾

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第16話 運命と破壊の吸血鬼達。

 

「んっ…ん~!はあぁ~~。」

 

ある人物が眠りから覚めたようで手を思いきり上へと伸ばし大きく伸びをする。

そして近くに人がいることに気づく。

しかしそのそばにいる人物はただの人ではなく、頭に獣の…黄色い猫耳のようなものをつけており、9本ものとても気持ち良さそうな黄色い尻尾を持っていた。

 

「あら?籃。どうしたのかしら?そんなに険しい顔をして、せっかくの綺麗な顔が台無しよ?」

 

そう言いながら肩に手を乗せる。

すると籃と呼ばれた人物ははっとして振り向き自分を呼んだ人物を見るやいなや、

 

「ゆ、紫さま!やっと目覚められたのですね!」

 

籃は目を輝かせながら紫のもとへと走りよる。

紫は籃にお疲れ様と声をかけながら頭を撫でる。

すると少し頬を赤くしながらうつ向く。

が、すぐに真剣な顔になり紫を見つめる。

 

「そ、そんなことより紫さま!大変なことが!!…そ、そういえばなぜ私が切羽詰まっていたのがわかったのですか?顔が見えなかったはずですが…」

 

籃は再び焦ったように話始めるが、疑問を思い出したように話のペースをゆっくりにした。

 

「そんなこと貴女から出ている雰囲気でわかるわよ。それで、大変なことってなに?」

 

籃はすぐに紫に話した。

少し前に起こった大きな異変を、そして今現在幻想郷がどういう状況になっているかを…

紫は始めこそあまり気にしていないような素振りだったが、とある人物が幻想入りした話になった辺りから紫の目は鋭くなる。

そして籃が話を終えると紫は顎を親指と人差し指で挟み考え込む。

 

「ねぇ、籃。その人物は本当に戦闘民族サイヤ人なの?」

 

「え?は、はい。本人はそう言ってました。」

 

紫はそれを聞くとまた深く考え込む。

冷静さを装っているが、その額からは冷や汗が流れていて、顔はわずかに険しくなっていた。

籃はそれを心配そうに見つめる。

その視線に気づいた紫はすぐに険しくなっていた顔を緩くして籃に少し笑みを見せる。

 

「ごめんなさい。こんなタイミングで冬眠なんかしちゃって。」

 

(なんで戦闘民族なんかが幻想入りを?いくら戦闘民族と言えど話通りの力ならこちらにこれるはずはない…それ以前にサイヤ人はあのクッソヤロウのフリーザに絶滅させられたはず。本当にサイヤ人なのかしら…)

 

「籃。今のサイヤ人の居場所は?」

 

紫がいきなり質問をしたので籃は少し反応が遅れる。

すこし慌てながらなにかを確認すると、

 

「今は、紅魔館で吸血鬼と接触、及び戦闘をしています。」

 

と答えた。それを聞いた紫は少し笑みを浮かべながら、

 

「さすが戦闘民族ね…籃!準備をしなさい!入念に…ね。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「お~いてぇ~。たっく、咲夜のやつ、もうちょっと丁寧に運べよな~。にしてもなんで私が本を盗り…じゃなくて借りやすい図書館なんかに運んだんだろう?まぁ私にしてれば嬉しい限りだぜ。」

 

そう言いながら近くにある本をひとつ盗ろうとする。

しかし、触れようとしたその瞬間、なにか手に電気のようなものが走り身体中に流れる。

魔理沙は驚きと痺れでひっくり返って倒れる。

意識をはっきりさせるように頭を左右に振り、もう一度立ち上がる。

そして再び本に触れようと…いや、先程のがなんなのかを確認する。

ゆっくりと本に指を近づける。

そして、触れる。

やはり先程と同じように電気が流れたような感覚になる。

よく見るとなにか特殊な力が本を…いや、本棚を守っているようだった。

魔理沙は触れた指の感覚を確かめると、

 

「これは魔法の結界じゃんか。パチュリーのやつなんで今日に限って結界を?」

 

「あなたが来るのがわかっていたからよ。」

 

どこからか人の声が聞こえてくる。

魔理沙は一瞬驚いたものの、その声の主がわかったようで声のした方を向きながら不満の声を垂らす。

 

「なんでだよ。今日悟飯が来るからか?」

 

やがて暗闇の中から一人の少女が出てきた。

レミリアにパチェと呼ばれていた人物だ。

どうやらこの人物がパチュリーと言うらしい。

 

「そうよ。だから貴方に盗まれないように結界を作っておいたのよ。」

 

「だから盗ってないっていってるのぜ!私は死ぬまで借りてるだけだぜ!」

 

「何をいってるんです!!それが盗みなんでしょうが!!」

 

パチュリーの横からもう一人の少女が出てきた。

その少女は頭に小さな黒い羽、背中に大きな黒い羽を生やしていた。

髪は赤みの強いピンク色で腰まで延びるまっすぐだった。

とても怒っているようだが全く怖さがなく、むしろ怒っている姿が可愛らしいと思えるほど威圧感がなかった。

 

「そんなに怒るなよ小悪魔。こんちわ~。」

 

「あ、こんにちわ…ってあなたなんかに挨拶は必要ありませんよ!この泥棒ネズミ!!!」

 

「それは言い過ぎなんだぜ!」

 

二人の言い争いが始まってしまい一人取り残されたパチュリーはため息を吐きながら、近くの椅子に上って本を読み始めた。

 

(…レミィ、本当に彼を殺すつもりなのかしらね。)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

【バキッ!!!】

 

レミリアの拳が悟飯の顔を完璧に捉えた。

悟飯はその威力に吹き飛ばされていき、地面に転がりながらゆっくりと止まる。

そして立ち上がるがその様子はとてもふらついていて、体もボロボロだった。

そこに追い討ちをかけるようにレミリアの手刀が悟飯の肩に槍のように突き刺さる。

レミリアはすぐに悟飯から離れる。

悟飯は小さな呻き声を上げながら片膝を付く形で傷口を押さえながら座り込んでしまう。

 

「フフッ…あなたなんて所詮こんなものよ。あのときは侮っていたけれども今度はそうはいかないわよ。さぁ、早く絶望に歪む顔を見せなさい!」

 

レミリアはそう言いながら悟飯の顔をみる。

しかしその顔には一切の闇がなかった。

ただひたすらに、レミリアだけをみていた。

レミリアにはそれが気に入らなかった。

心の底から憎しみが湧いてきた。

 

「孫悟飯!!なぜこの状況でまだそんな顔をする!!なぜ諦めない!なぜ絶望をしない!!いまのあなたに勝ち目なんてないはずよ!!!」

 

レミリアが怒りに声を荒上げながら悟飯を指差し問いかける。

すると悟飯は傷口を押さえたまま再び立ち上がる。

そして、

 

「レミリア。君が本当に俺の命を望むなら俺はそれを受け入れる。好きなだけ殺ればいいですよ。だけど、こんなことでは絶望なんてしません。俺は…これ以上の地獄を見てきました。そんな世界を生きてきたからこそ、本当の絶望を知りました。それほどでなければこれは絶望でもなんでもない。」

 

そう言った。

が、その言葉はさらにレミリアの怒りに火をつけた。

 

「ほざくなあぁぁぁああ!!!!!」

 

激しい怒号とともにすごい速さでレミリアは悟飯に接近し右拳を振りかぶり、全力で振り切る。

悟飯はそれをまともに喰らい吹き飛ばされて壁に激突する。

ズルズルと音をたてながら壁に寄りかかるように倒れるとも座るとも言いがたい体制になる。

そこにレミリアが追い討ちを仕掛ける。

すごいスピードであっという間に悟飯の目の前へと迫り来る。

悟飯はそれに一切の抵抗を見せず迫り来るレミリアを瞼を半分ほど開いた状態で見つめる。

レミリアの手から自身の身長よりも大きく見える真っ赤な槍が出てくる。

その槍で悟飯を貫くつもりなのだろう。

槍が悟飯の目の前に迫る。

その瞬間いきなり目の前に咲夜が姿を表す。

あまりに唐突なことに悟飯は目を見開き、咲夜を見つめる。

レミリアも目を見開き、槍を止めようとするがあまりにも唐突かつもう止めを差すつもりで振りかぶったためもう止められない。

咲夜もろとも貫かれる!誰もがそう思った。

 

【ドガアァァァァアアン!!!】

 

激しい音をたてながらレミリアの槍は壁を貫いた。

そのあまりの威力に壁は耐えきれずに槍を受けたところを中心に直径50cmほどの穴が開けられていた。

が、その槍には血が一滴もついておらず、レミリアの周辺にも二人の死体はなかった。

レミリアが自分の背後に目を向ける。

すると数メートル離れたところに咲夜と悟飯がいた。

咲夜が…従者である咲夜が自身の主であるレミリアの行動に逆らったのだ。

しかしレミリアはそれにからに怒りをたてるわけではなく信じられないと言わんばかりに咲夜を見つめる。

 

「…なぜその男を守った。その男は私に傷を負わせ!貴方を殺そうとしたのよ!!なのになぜ今その男をかばったの!」

 

レミリアが手にした槍を消してから咲夜に問いかける。

 

「レミリアお嬢様。確かにこの男、孫悟飯はお嬢様に傷を負わせ、私は殺されかけました。」

 

「なら!「しかし!」!?」

 

レミリアがなにかを言う前に咲夜がそれを遮り言葉を発する。

 

「いえ、だからこそ私は孫悟飯にこの紅魔館で働かせたいのです。それこそが償いだと思います…」

 

咲夜のその信じられない言葉にレミリアは一瞬唖然とするが再び悟飯を見るとその顔に憎しみが戻る。

咲夜が主であるレミリア自身に意見を述べたことは決して怒ってはいなかった。

が、孫悟飯を生かしておくことはレミリアにとっては屈辱そのものだった。

レミリアは頭の中で必死に整理した。

自身の考えと、咲夜の考え、そして、どうあるべきかを…

そして答えは出た。

 

「失望したわ、咲夜。確かに以前から自分で思ったことをしなさい。自身の思ったことを言いなさい。と言ってきたけれど、まさかその初めての言葉が他人のために、それもこんな男のために発言をするなんてね。以前のあなたならそんな甘さはなかったと思うところよ。」

 

それを言われた咲夜は僅かに顔を濁らせる。

そしてなにかを喋ろうとしたがそれよりも先にレミリアが言葉を発した。

 

「わかったわ。そこまであなたがその男になにかを感じるのなら…生かしたいのなら、孫悟飯を殺さないであげるわ。」

 

「お、お嬢様!「けれども!」!?」

 

「少しでも私たちに害を及ぼすのならすぐに殺すわよ。」

 

そう言いながら咲夜と悟飯に背を向ける。

咲夜に人差し指を向けた。

咲夜はそれを見るとなにかを理解したかのように頷き、悟飯の方に視線を戻した。

 

「悟飯さん。すこし手をあげてください。座ったままで大丈夫なので。」

 

そういわれたので言われた通りに腕を上にあげてバンザイの体制になる。

すると気づいたときには体には包帯が巻かれていた。

悟飯は突然の出来事に驚いて後ろに倒れて頭を打つ。

咲夜は逆にそれに驚きながら悟飯を起こし、手当てをする。

悟飯が咲夜にその瞬間移動のような力について聞くと、咲夜は時を操ることができるのだといった。

どうやら時を操るといっても時を止めたり、すこしだけ戻したりすると言うようで、未来にいったり、過去にあった出来事に干渉できるわけではなかった。

時を止めて治療してくれたようで痛みとかはほとんどなかった。

治療が終わったところで丁度レミリアが戻ってきた。

それを確認するとその目からは憎しみが完全ではないが消えていた。

とりあえずは安心しても良さそうだった。

 

「レミリアさん。今回のことは本当にすみませんでした。咲夜さんにはここで働くと言いました…レミリアさんにもなにかさせてください。お願いします!」

 

そう頭を下げるがレミリアは言葉を発することはなく、小さくため息をつく。

そして、

 

【ドゴォ!!!】

 

悟飯の腹に拳を突き立てた。

深くめり込み悟飯はその痛みに目を丸くして座り込む。

咲夜が慌ててそばにより驚きながらレミリアをみる。

 

「これで済ませてあげるわ。もうこれ以降は一切気にしないわ。私は…誇り高き吸血鬼なのだからね。」

 

そう言いながら目を強く瞑ってから瞼を開く。

するとその目からは憎しみが消えていた。

悟飯は腹を押さえながらあることを考えていた。

 

(…誇り高き吸血鬼か…まるで、「ベジータ(さん)みたいだですって?」!!?)

 

悟飯の心で考えていたことを当てられて思わずレミリアを見る。

するとレミリアは笑いながら、

 

「あら、図星だったようね。」

 

「な、なんで…まさか心を読む程度の能力を?」

 

そう悟飯が言うとさらにレミリアが笑い声をあげる。

 

「フフフッ!そんなんじゃないわ。私は【運命を操る程度の能力】を持ってるの。と言っても血を飲んで相手の過去を探ったりたまに未来が見える程度の力だけれどね。初めの異変のときに付着した血を飲んであなたの過去をすべて知ってるわよ。」

 

そう言いながら自身の親指をなめるレミリア。

悟飯はその能力に驚きながら、そして自身の考えを見抜いたレミリアの賢さに目を丸くしていた。

その時、

紅魔館の床が大きく音をたてながら壊れた。

いや、下からなにか強い力を着けて貫かれたといった方が正しいだろう。

貫かれた床からは大量の粉塵が舞っていて何が起きたかわからなかった。

はずだった。

が、その煙のなかには何者かがいることがその場にいるレミリア、悟飯、咲夜にはわかった。

そこから放たれる圧倒的な威圧感。

そして全身の肌が感じ取っている凄まじい殺気、そして背筋が凍るような怒り。

それを放つ誰かがそこにいるのは明確だった。

やがて煙が晴れていき、そこにいる人物の姿が露になる。

金色の髪に、赤を主体としたフリルのついたスカートと白い襟と袖に黄色いネクタイのようなものをつけた紅い服、そしてまるで太い木の枝に無数のカラフルな宝石をつけたかのような羽。

その姿を見たレミリアが震える声で名前を呼ぶ。

 

「ふ、フラン…どうして…」

 

その声に気づき、悟飯はレミリアの方を見る。

するとレミリアの瞳には僅かだが恐怖が見てとれた。

再びフランと呼ばれた人物に目を戻す。

するとフランが被っている帽子にはどこか見覚えがあった。

雰囲気も僅かだが誰かに似ている気がする。

 

「レミリアさん。あの子はいったい何者なんだ?」

 

悟飯がフランのことを見ながら質問をする。

しかしそれに答えたのはレミリアではなく咲夜だった。

 

「あの方は…レミリアお嬢様の妹様です。」

 

咲夜の声も震えていた。

フランに対して恐怖を覚えているのだ。

妹?ならばなぜこれほどのことをしているのか、なぜいきなり床を吹き飛ばすなんてことをやったのか。

悟飯は訳がわからなかった。

するとゆっくりとフランの口が動き出す。

 

「ズルいよ…私が部屋にこもってるなかお姉さま達は上でスゴく楽しそう。下の部屋まで聞こえてきたわよ。とても楽しそうな音と声が…」

 

(楽しそうな?壁を突き破る音だったりレミリアのあげた怒号が楽しそう?何を考えているんだ。)

 

「ふ、フラン!そうではないの!これは遊んでいたわけではないのよ!」

 

レミリアが必死に否定し、咲夜もその台詞に重ねてフランをなだめようとする。

しかし、フランの瞳の憎しみは決して消える様子を見せない。

なぜこれほどの怒りを秘めているのか悟飯には全く見当がつかなかった。

次の瞬間フランが目の前から消える。

悟飯ははっとしてすぐに気を探る。

すると気とはまた違うなにかとてつもなく大きな力をすぐそばで感じる。

すぐにそちらに目を向けると、そこには危険を察知して1歩後ろにステップをとるレミリアとそれに対して正面から手刀を突き刺そうとするフランがいた。咲夜はあまりのスピードにまだフランを見つけられずに振り向こうとしない。

悟飯自身もそのスピードついていけたが、それもギリギリついていけた程度だったためレミリアの救済に行けなかった。

レミリアはステップをとったことによりフランから距離を離し手刀を避けるが、フランはそこに無理やり深い1歩を踏み出してきた。

無理やり踏み出したため軸が大きくふらつき、全体重がその1歩にかかっているためかわされたら確実に反撃を受けるであろう。

が、レミリアは完全に不意を突かれた中咄嗟の判断で初撃を回避した。

そのギリギリの中でまさか捨て身で攻撃に来るなど予想していなかった。

そして、フランの手刀はレミリアの腹深くに突き刺さる。

レミリアは口から血を溢しながら、フランの勢いに押されて思いきり吹き飛んでいく。

そこにはじめて気がついた咲夜が振り向き、レミリアの名前を叫ぶ。

悟飯も大声でレミリアの名を叫ぶとすぐにレミリアからフランを引き剥がそうとする。

しかし、

 

(な、なんだこの力!?こんな小さい体のどこにこんな力が!?それよりもこのままじゃレミリアが壁に激突する!)

 

なんとか力を込めてフランをレミリアから引き剥がす。

引き剥がされたフランは血のついた手をなめながらその憎悪に飲まれた瞳をレミリアに向けていた。

なんとか引き剥がすことに成功したが勢いを殺すことができずにレミリアと悟飯は壁に激突した。

大きな音をたてながら壁は砕けた。

完全には壊れなかったがもう使い物にはならないようだった。

すぐに咲夜が時を止めてレミリアのもとに急ぐ。

レミリアの傷は想像以上に深く、すぐに治るような傷ではなかった。

しかし、

 

「ふ、フランは…私が止めるわ。手を出さないでちょうだい…」

 

そう言いながらフラフラと立ち上がる。

それを悟飯は全力で止める。

 

「ダメだ!そんな傷を負ったまま戦ったら殺されるぞ!あいつは本気でレミリアを殺しにかかってきたんだぞ!」

 

そう叫ぶがレミリアは、

 

「これは私の問題よ。外の人間が口を挟まないで。」

 

そう言いながらフランに向かって飛んでいく。

しかしその途中でフランが弾幕をはり、レミリアのことを撃墜する。

悟飯と咲夜はすぐにレミリアのもとにいくが、すぐそこに向かってフランが飛んでくる。

フランは回りには目もくれずレミリアだけを狙って手刀を振りかぶる。

レミリアはやはり初めの一撃があまりにも重かったようで弾幕を1度受けただけでもう虫の息だった。

それをかわそうとするが、レミリアは自身の体を思うように動かせない。

フランの手刀がレミリアの体を切り裂こうとした瞬間、フランの視界からレミリアが姿を消す。

手刀は虚しくも空を裂き、音のみが響いた。

ゆっくりとフランが気配の感じる方へと目を向ける。

するとそこにはレミリアを抱えた悟飯が左膝をつく形で軽く座りこんでいた。

 

「な、何をするの…孫悟飯…これは私たち姉妹の問題よ…!」

 

レミリアは痛みに我慢しながら必死に体を起こそうとする。が、無情にも体は力なく膝から倒れる。

すると悟飯が咲夜にレミリアのことを守るように指示をする。

すぐに咲夜は飛んできてレミリアの体を支える。

レミリアはまだフランを何とかしようともがく。

が、咲夜に押さえられて全く動けない。

 

「私に…やらせなさい…!私の問題なのよ!」

 

声に力がこもる。

しかし、悟飯の返答はレミリアの期待していたものとは全く違ったものだった。

 

「目の前で誰かが殺されそうになってるのを、そのまま見ていることなんてできない。それがあなたの意思に背こうとも、見殺しになんかしません。」

 

そう言いながらフランのいる高さまでゆっくりと飛び上がった。

二人の高さが同じになる。

するとフランが狂気に満ちた笑顔を見せながら、

 

「なに?今度はあなたが私のおもちゃになってくれるの?簡単に壊れたりしないでね?けど、壊すのも楽しいからそれでもいいけど。」

 

そう言いながら鋭い八重歯を光らせる。

悟飯は構えをとりながら、

 

「壊す?そんなことさせるわけないだろ…ふざけるな!」

 

気を解放した。

その様子にはなにかを隠しているようにも見えた。

そして、怒りがこみ上げていることもわかった。

 

「…お嬢様。無理をなさらないでください。」

 

そう言いながら手当てをする咲夜。

レミリアは悟飯をすこし興味があるかのような目で見つめていた。

先程までの憎しみのみの目とも、あまり興味を示さないものとも違った。

まるで新たな発見をしたかのような目だった。

 

「あの悟飯でも怒りを感じることがあるのね。けど私は殺されたわけでもないのに何故怒ってるのかしら?」

 

その時、レミリアはなにかを思い出したかのような声をあげる。

咲夜はそれにすこし驚いてレミリアを見ると、

 

「咲夜…よく見ておきなさい。孫悟飯の怒りのパワーを…」

 

咲夜も悟飯に目を向ける。

空中で対峙する炎のような白いオーラを纏う悟飯と狂気を撒き散らしながら紅き目を光らせるフラン。

その二人の様子はまるでそこだけ別空間に取り残されたかのような雰囲気だった。

 

 




ついに初めて本当の怒りを見せた悟飯。
しかし、怒りではフランも全くひけをとらないほどのものだ。
それに怒りだけでなく狂気すらも持ち合わせるフランに悟飯はどう対抗するのか?
次回をお楽しみに!








【作者の泣き言】
見てもいいものじゃないからブラウザバックした方がいいですよ。


















なんかいつもみたいに想像が膨らみませんでした…話が引き延ばしっぽくなってしまってるかもしれません。勉強の疲れからか前ほど頭にアイデアが上ってこない…自身が情けない…やっぱり休載にするべきなのかな…

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