これからもどうぞよろしくお願いします。
《日番谷side》
「君臨者よ 血肉の仮面・万象・羽搏き・ヒトの名を冠す者よ 焦熱と争乱 海隔て逆巻き南へと歩を進めよ!
波動の三十一:赤火砲!!」
「浦山!!」
「おぅ!!」
―――ズシャッ!!!!
目の前の虚の仮面が真っ二つに割れ、蒸発するように消えた。
「っしゃあ!」
「よし、お前達の班もいいだろう。」
「「「ありがとうございました、朽木三席。」」」
つい最近会ったばかりの三人で、初めて行った討伐演習。
性格もバラバラで、浦山と俺の性格は正反対。
―いつも笑っていて、明るい浦山
―そんなに笑わないが、上品で真面目なルキア
そんな俺ら三人の息は、なかなかぴったりだった。
「日番谷も浦山も凄いのだな。私なんか、剣は全くできない。」
「大丈夫だって、ルキアさん!俺だって、鬼道は無理だし!」
「俺も苦手だな。」
―――俺ら三人、また組めたらいいな。
―――日番谷はA組なのだから、難しいのではないか?
―――あっ!くっそー!!いいもん!俺はルキアさんと組めるもんねーだ!
―――……ルキアならA組にすぐ来れるんじゃねぇか?
そんな他愛のない話をしていた。
それが楽しかったのか、……はたまた無事に演習をこなせたことに安心していたのか……。
本来なら気づけた。
霊圧探知能力が他人よりもずっと高い俺なら…!気づけたはずだった。
「!?浦山!!後ろだ!!」
最初に気づいたのはルキアだった。それでも遅かった。
俺の手に温かい液体が降ってきた。
―――ナンダコレハ
ルキアが上を見て、すごく怯えていた。
―――ドウシテ?
上を見た。巨大な虚がいた。その爪の先には人が刺さっていた。
「浦……や………ま?」
―――ドウシテ、ナンデ。アソコニイルノハダレ?ウラヤマ??ソンナワケナイ。ダッテタンナトコロニイルノハ……オカシイ……ヨ?
「俺が……?」
俺が気づかなかったから?
俺が気づいていたら浦山は死ななかった?
―――オレノセイデ……シンダ??
「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!?!?!!!」
「日番谷っ!!」
ルキアに呼ばれた気がしたが、俺の意識は暗闇に吸い込まれて……
『………、……う、…ぞう!』
誰かが……呼んでる?
『小僧っ!!』
『お前はっ!氷輪丸!?』
次に目が覚めた時には、先ほどとは全く違う場所。
あたりは吹雪で、多分、雪山の中。目の前には巨大な氷の龍がいた。
『どこだよ……ここ。』
『ここはお前の精神世界だ。』
『……セイシンセカイ?』
『まぁ、ここがとこがなどは、どうでもいいことだ。
小僧、力が欲しいのだろう?』
『……力?……チカラが??』
『そうだ。
お前に力が無いばかりに、仲間が死んだのではないのか?』
『!!』
そうだ、俺がもっとつよければ……。
もっと力があれば……、浦山は死ななかった。
『私を使え。』
『なっ!?』
『私を抑えるな。
私を解放すれば、もう一人は守れる。お前が一番わかっているのではないのか。』
俺にはまだこいつを操ることは出来ない。
だから、愛友もこの石を渡した。
でも……
『その石を壊せ。
そうすれば守れるのだ、お前の大切なものを。
簡単だろう。』
―守りたい――失いたくない―――コロサナキャ
「愛友……、ごめん。」―――パリンッ
……俺が弱いから。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
「……。」
「どうかなさいましたか、総隊長殿。」
現世で日番谷が抑制石を割ったのと同時刻、尸魂界。
1期生が現世に向かった穿界門の、入口付近の屋根の上に、二人はいた。
「いえ、なんでもありません。
それよりも、こんなところに呼び出して、何の御用ですか、藍染副隊長。」
総隊長の愛友と五番隊副隊長の藍染惣右介。
「丁度いいタイミングです。僕がお聞きしたかったのは、彼の霊圧のことです。」
「彼とは。」
「もちろん、現世にいてもここに伝わる程の霊圧を放っている、日番谷くんのことですよ。
今の彼の状態は危険だ。止めに行かなくてよろしいのですか?」
そう、氷輪丸の力を解放してしまった日番谷の霊圧は、尸魂界まで伝わっていた。愛友の結界がなければ、平隊士や流魂街の者はあてられてしまうほどの霊圧だった。
「今回は朽木三席にも同行してもらっています。
よほどのことがない限り、大丈夫だとは思いますよ。
例えば……誰かが故意的に虚を送ったりしていなければ……ね。」
「……まるで僕が何かしていると言いたいようですね。」
「そんなことはありませんよ。
それに、今市丸隊長補佐にも現世に向かってもらっています。きっと穏便に住むはずですよ。」
「ほぉ……、市丸隊長補佐が…ですか。」
藍染は怪しく、薄く微笑んだ。
しかし、それを見逃すほど、総隊長は甘くはなかった。
「自分の力に自惚れすぎないほうがいい。」
「!?」
「いつか自分の身を引き裂いてしまう前に……、視点を戻す事も大切だと思うよ。」
普段は幼く、総隊長にも関わらず、末っ子のような存在である愛友。
藍染は、愛友のこんな姿を初めて見た。そして、改めて彼女は総隊長なんだと認識せざるを得なくなった。
「(一瞬でここまで霊圧を上げるとは……、それも僕の周囲にだけ…。)」
「……。」
「話は終わりましたか?では、失礼しますね。」
次の瞬間には、いつも通りの雰囲気をまとった愛友に戻っていた。
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「貴様は……一体誰だ……。」
「何言ってんだよ、ルキア。
日番谷冬獅郎に決まってんだろ。」
そうルキアの方を見て言った日番谷の周りで、凍りついた巨大虚が砕けて散った。
「それは……斬魄刀……なのか、、、?」
「あぁ、お前らの世界ではそう言うらしいな、俺たちのことを。」
「な……何を言っているのだ。」
ルキアはパニクっていた。
いきなり日番谷の雰囲気が変わったと思ったら、巨大虚の集団に突っ込んでいき、全てを一掃してしまったのだ。
「日番y「死にたくないよぉぉぉぉぉ!!」!?!?」
「……吉良??」
「……!?」
「阿散井……、雛森っ!?」
そう言って日番谷は、ものすごいスピードで去っていた。
ルキアは、はっきりと見た。去っていく前の日番谷を……。
それまでエメラルド色の瞳をしていた日番谷の瞳が、
赤く焦点の合っていない瞳に変わったのを……。