問題児たちが異世界から来るそうですよ?~月の姫君~   作:水無瀬久遠

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十五章 迷宮へいざ

 

――――境界壁・舞台区画。“火龍誕生祭”運営本陣営。

割れる様な歓声を耳に、カグヤはその舞台裏で身体を固くしていた。

 

それはもう、見ているこちらが緊張してしまう程のガチガチ具合。

流石に、これには帝も笑ってしまった。

 

 

「おいおい、舞師であるお前がこの程度で緊張してどうすんだよ」

 

《ま、舞を披露するのと、ギフトゲームに参加するのとでは、全くの別物です!!》

 

 

むぅと唸る妹に、苦笑が浮かぶ。

こんな愛らしい姿を晒すのは、家族だけ。

まだコミュニティが無事だった頃は、からかわれる度に頬を膨らませていた。

パタリ、と帝が尻尾を揺らす。

 

 

「平気だって。お前は昨日話した通りにしてくれればいい。選手は俺、サポーターがお前。だから、無理に戦おうとせず、ただ作戦通りにしていてくれれば、十分だ」

 

《う、上手くいきますか?》

 

「大丈夫だって。ほら、そんなに肩に力をいれるな。ゲームを楽しむ事だって、大事な仕事なんだぞ?」

 

 

ほれほれ、と尻尾でペシリペシリと叩けば、カグヤは少しだけ困った様に、でも安心した様な表情で頷く。

 

 

《それで、帝。“ウィル・オ・ウィスプ”の対策は、如何しますか?》

 

「抜かりない……と、言いたいところだが、早々に奥の手を見せる結果になると思ってる。もし、相手の選手がコミュニティのリーダーだった場合は、速攻で勝負を決めるつもりでいく」

 

《……兄さんでも、やはり厄介だと思う相手なんですか?》

 

 

少しだけ不安そうに首を傾げる。

兄の実力を知るからこそ、こうまで言わせる敵に、カグヤは不気味な違和感を感じていた。

帝はん~、と考える素振りを見せ、普段通り快活に笑って見せた。

 

 

「いや、奥の手を見せるなら長期戦は避けたいだけだ。そうでなきゃ、この姿でも軽ぅく優勝してやんよ」

 

《……もう、それでは他の選手の皆様に失礼ですよ?》

 

「はいはい」

 

 

軽く諌め、カグヤが笑う。

ちょっとした雑談で、彼女の緊張も和らいだらしい。

ゲームに呼ばれるまで、後少し。

もう少しだけ、他愛ない会話を続けるか、と帝は尻尾を軽く振った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

☆★☆★☆

 

舞台の真中で、黒ウサギがクルリと回り、入場口から迎え入れる様に両手を広げた。

 

 

『それでは、入場していただきましょう!!第一ゲームのプレイヤー・“ノーネーム”の春日部耀!!』

 

 

三毛猫をジンに預け、通路から舞台に続く道に出る。

大きな闘技場に出た瞬間、彼女の登場に、会場からは割れんばかりの歓声が耀を出迎えた。

 

 

「春日部さん!!頑張って!!」

 

 

運営側のバルコニーより、飛鳥が大声でエールを送る。

耀はそれに応える様に手を振ると、黒ウサギがいる舞台へと登っていく。

 

 

『続きまして!!“ウィル・オ・ウィスプ”のアーシャ=イグニファトゥスです!!!』

 

黒ウサギが別の入場口を示す。

その瞬間―――耀の眼前を高速で駆ける火の玉が横切った。

 

 

「YAッFUFUUUUUuuuuuu!!」

 

「わっ………!」

 

『お嬢!』

 

 

ドスン、と耀は堪らず仰け反り、尻もちをつく。

頭上を見れば、火の玉の上に腰かけている人影があった。

強襲した人物―――“ウィル・オ・ウィスプ”のアーシャは、ツインテールの髪と白黒のゴシックロリータの派手なフリルのスカートを揺らしながら、愛らしくも高飛車な声で嘲笑た。

 

 

「あっははははははははは!見て見て見たぁ、ジャック?“ノーネーム”の女が無様に尻もちついてる!ふふふ。さあ、素敵に不敵にオモシロオカシク笑ってやろうぜ!」

 

「YAッFUFUFUUUUUUUuuuuuuu!!」

 

 

ドッと観客席の一部からも笑いが起きた。

対戦相手であるアーシャ以外にも、栄えある舞台に“ノーネーム”が立つ事を不満に思っている者達がいたのだろう。

しかし、そんなものを気にする春日部耀ではない。

寧ろ、彼女の視線は火の玉の中心に見えるシルエットに釘付けだった。

 

 

「その火の玉………もしかして、」

 

「はぁ?何言ってんのオマエ。アーシャ様の作品を火の玉なんかと一緒にすんなし。コイツは我らが“ウィル・オ・ウィスプ”の名物幽鬼!ジャック・オー・ランタンさ!」

 

「YAッFUUUUUUUuuuuuuuuu!!!」

 

 

アーシャが腰かけている火の玉へ合図を送る。

すると火の玉は取り巻く炎陣を振りほどいて、姿を顕現させる。

その姿に耀のみならず、観客席の全てが暫し唖然となった。

轟轟と燃え盛るランプと、実体のない浅黒い布の服。

人の頭の十倍はあろうかという巨大なカボチャ頭。

 

バルコニーで飛鳥が本物のジャック登場に興奮している中、舞台ではアーシャが耀を見下して嘲笑っていた。

 

 

「ふふ~ん。“ノーネーム”のくせに私達“ウィル・オ・ウィスプ”より先に紹介されるとか生意気だっつの。もう一匹なんて、狼とかマジ笑える!私の晴れ舞台の相手を指せてもらうだけで泣いて感謝しろよ、この名無し」

 

「YAHO、YAHO、YAFUFUUUuuuuuuu~~~~~♪」

 

 

尻もちをついたまま、立ち上がる気配の無い耀を嗤い続けるアーシャとジャック。

至近距離で見ている黒ウサギは、もう堪忍袋に火が付く手前。

もし、彼女が審判の役割を担っていなければ、その場で烈火の如く激怒していたことだろう。

黒ウサギが、アーシャに向かって注意しようと口を開いた―――――その時だった。

 

 

 

シャン.....♪と涼やかな鈴の音が会場に響く。

誰もがその音色に言葉を失い、まるで水を打った様にシン……と静まり返る。

その中を、シャン、シャシャン、と一定のリズムで響き渡る鈴の音。

その音の原因を黒ウサギはいち早くウサ耳で感知すると、持ち直した笑顔で入場口に手を差し伸べる。

 

 

「三人目のプレイヤー!!同じく“ノーネーム”の月影帝!!!」

 

 

その声と共に会場を旋風が包み込み、その刹那―――

 

 

「さぁて、派手にいくか」

 

 

楽しげにククッと笑う声。

誰もが意味が分からないと戸惑う中、風が止むと同時に舞台に現れた影二つ。

 

 

《皆様!!ご機嫌麗しゅうございます!!!》

 

 

割れんばかりに響かせる『声』。

次の瞬間、会場は今までにない程の歓声が怒涛の様に押し寄せる。

 

 

「は、“箱庭の歌姫”だぁぁぁぁぁあああああぁぁぁぁぁ!!!!」

 

「カグヤ様ぁぁぁぁあああああぁぁぁぁあああぁぁ!!!!」

 

 

「うぉぉぉぉおおおおぉぉぉぉお!!!!俺の人生に一片の悔い無しぃぃぃぃいいいいいいいぃぃぃぃぃいいい!!!!」

 

 

「え?カグヤ?」

 

 

流石に、これには耀も驚いたのだろう。

もうアーシャとジャックの存在などすっかり忘れてしまった様に、目を丸くしてカグヤを凝視する。

カグヤは、美しく袖を舞わせつつ、全観客に向けて優雅にお辞儀した後、バルコニーにいる来賓へと高らかに微笑む。

 

 

《サンドラ様、本日は“サラマンドラ”頭首襲名、おめでとうございます!!この良き日に、参加させて頂ける事、我ら“ノーネーム”一同心より御礼申し上げます!!》

 

「我ら兄妹、このゲームをサンドラ様へ捧げます!!どうぞ、楽しんで観賞して下さいませ!!」

 

 

彼らの宣言に、会場の熱気はピークへと達する。

カグヤは舞う様に軽くステップを刻み、扇を広げると笑んだ。

観客の目がカグヤへと集中する中、帝はコソリと離れると耀の傍に寄り、ククッと笑う。

 

 

「お前、いつまで無様な姿を晒すつもりだ?」

 

 

カチン、と耀の琴線に鋏が触れる。

耀は無表情のまま立ち上げると、軽く土を払った。

 

 

「客引きの為にカグヤを利用する帝には、言われたくない」

 

「はいはい………それで?お前のサポーターは誰だ?飛鳥…はバルコニーだから、レティシアか?それともジン?」

 

「ううん。私は一人で出るの」

 

「…………何?」

 

 

ふんっと顔を背ける耀。

先程までふざけた調子だった帝の声が、最後の方から雲行きが怪しくなる。

悪戯じみた笑みはみるみる也を顰め、その表情に苛立ちと侮蔑に違い色が浮かんだ。

流石に、この変化には驚いたのか、少しだけ耀の表情に驚きが映る。

 

 

「……帝?」

 

「………そうかい、そうかい。そりゃ、いい。お前がそのつもりなら、()()()()()なんて、甘い考えは持たない」

 

 

低く唸る様にそれだけ言うと、彼は耀に見向きもせず、スタスタとカグヤの横へ戻っていく。

興奮冷め止まぬ中、黒ウサギが静止を促すと、宮殿のバルコニーに手を向けて厳かに宣言する。

 

 

『―――それでは第一ゲームの開幕前に、白夜叉様から舞台に関してご説明があります。尚、もう一人のプレイヤー“ラッテンフィンガー”は、コミュニティの不祥事により、第一ゲームを欠席するとの連絡を受けております。ギャラリーの皆様は、どうかご静聴の程を』

 

 

刹那、会場かあらゆる喧騒が消えた。

バルコニーの前に出た白夜叉は、静まり返った会場を見回し、緩やかに頷いた。

 

 

 

白夜叉が挨拶を始めた時、帝がクンッとカグヤの舞衣装の裾を引く。

 

 

《……?兄さん、どうしました?》

 

「カグヤ、作戦変更。――()()()()()()

 

《え………?》

 

 

訳が分からない、と戸惑うカグヤ。

だが、それ以上は何も語らず、帝はただ白夜叉を見上げるだけ。

一体、どういう事なのだろう。

混乱したまま、再度帝へと問おうとした時。

 

 

パン!と会場一致で柏手一つ。

その瞬間―――――全ての世界が一変した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

☆★☆★☆

 

 

変化は劇的だった。

プレイヤーの足元は虚無に呑まれ、闇の向こうには流線型の世界が数多に廻っていた。

その世界の一つに、鷲獅子と戦った舞台があった事に気づく。

 

(これは……白夜叉の………?)

 

耀はほっと肩から力を抜く。

これが、白夜叉のゲーム盤であるなら、不安に思う事は何もない。

暫しの浮遊感の後、バフン、と少し意外な着地音。

見れば下地は樹木の上だ。

 

 

《……アンダーウッド》

 

 

辺りを見渡し、カグヤが呟く。

上下左右、その全てが巨大な樹の根に囲まれている大空洞。

どうやら、ここがゲーム会場らしい。

帝は足元を確かめる様に、軽く踏みしめ、感触を確認する。

 

(固くも弾力がある……それでいて、空間には湿度も十分)

 

 

帝があれこれ確認している間に、アーシャと耀は険悪なムードを更に最悪なまでに発展させ、既にアーシャは臨戦態勢を整えている。

隣で少し不安そうにあうあうしているカグヤを尻目に、はぁ、とこれ見よがしに帝は溜息を零した。

 

 

「これだから………おい、餓鬼共(ルーキー)。少しはプレイヤーらしくしたらどうだ?これだから、ゲームの基本も知らない餓鬼共と一緒は嫌なんだよ」

 

《み、帝!!》

 

 

止めるのか、と思いきや、彼は平然と火にガソリンは愚か、ダイナマイトを投げ入れる。

勿論、二人の敵意は一遍に帝へと向かう。

空気が針の莚へと変わった瞬間、突如発生した切れ目より黒ウサギが、姿をのぞかせる。

そして、ホストマスターによって作成された光輝く“契約書類(ギアスロール)”を振りかざした黒ウサギは、書面の内容を淡々と読み上げる。

 

 

 

『ギフトゲーム名“アンダーウッドの迷路”

 

 

・勝利条件 一、プレイヤーが大樹の根の迷路より野外に出る。

      二、対戦プレイヤーのギフト破壊。

      三、対戦プレイヤーが勝利条件を満たせなくなった場合(降参含む)

 

 

・敗北条件 一、対戦プレイヤーが勝利条件を一つ満たした場合。

      二、上記の勝利条件が満たせなくなった場合。』

 

 

 

 

「――――――“審判権限(ジャッジマスター)”の名において。以上が両者不可侵で有る事を、御旗の下に契ります。お二人とも、どうか誇りある戦いを。此処に、ゲームの開始を宣言します」

 

 

黒ウサギの宣誓が終わる。

それが開始のコールだった。

全員が距離を取りつつ初手を探る。

勝利条件が複数ある以上、明確な方針が欲しかった。

だが、すぐに帝はそれを止める。

相手を舐めている訳ではなく、彼にとって方針は一つだけなのだ。

 

 

「カグヤ、頼んだ」

 

《……本当にいいんですね?》

 

 

少しだけ困った様に笑って、許可を促す。

彼はそれ以上なにも言わなかったので、作戦を本当に変更したのだろう。

諦めた様に扇を広げる。

 

明確な動きを見せたカグヤに、アーシャと耀が緊張した面持ちで構える。

 

 

《―――誘いなさい、芭蕉扇》

 

 

服に飾られた鈴が鳴る。

扇を三度煽ぎ、風が空間を吹き抜ける。

荒れ狂う風の海。

その中で、耀とアーシャが飛ばされまいと足を踏ん張る。

 

だが……ふと、耀の頭に疑問が浮かんだ。

前回の“ペルセウス”とのゲーム。

あの時、カグヤが使った風はこんなにも穏やかだっただろうか。

打撃を受け、痛みを負っていた自分は、必死に柱にしがみ付き、それでも本能的に大惨事を予想していた筈だ。

なら、彼女の風の穏やかさはプレイヤーへの攻撃、とは思えない。

それならば、彼女達の目的は……

 

 

「っ……しまった!!」

 

 

頭に浮かぶ回答。

耀は慌てて鷲獅子より受け取ったギフトで、旋風を巻き起こし、カグヤの風を乱しにかかる。

だが、その時には既に遅かった。

 

 

《……マップの暗記を完了しました、兄さん》

 

 

カグヤ本人が風を霧散させ、淡いため息を混ぜた『声』で帝に告げる。

その瞬間、アーシャには驚きの、耀には悔しげな色を帯びた。

 

 

「カグヤの風を使って、迷路を攻略にかかるなんて……」

 

「気づくのが、遅いんだよ馬ぁ鹿」

 

 

ククッと帝が喉の奥で笑うと、素早くカグヤを背に乗せ、疾走する。

そう、彼女は初めから攻撃や牽制の為に芭蕉扇を振るった訳ではない。

彼女は、『()()()()()』と告げていたのだ。

つまり、あの風はカグヤがマップを覚える為に使った風。

 

すぐさま疾走する帝を追う耀。

アーシャは、いきなりスタートした“ノーネーム”二人を暫し唖然と眺めた後―――――ハッと我に返る。

そして、その後に残ったのはどうしようもない怒り。

 

 

「ふざけんなよ……“ノーネーム”風情!!とことんアーシャ様を無視するっていうなら、加減なんざしねぇ!!行くぞジャック!樹の根の迷路で人間と狼狩りだ!!」

 

 

「YAHOHOHOhoho~~!!」

 

 

怒髪天を衝くが如くツインテールを逆立てさせて猛追するアーシャ。

その視線の先には、自分より少し早く走り出した耀の背と、それよりももっと奥に見える狼の姿がある。

アーシャはその背中に向かって叫んだ。

 

 

「地の利は私達にある!焼き払えジャック!」

 

「YAッFUUUUUUUUuuuuuuuuuu!!」

 

 

左手を翳すアーシャ。

ジャックの右手に提げられたランタンとカボチャ頭から溢れた悪魔の業火は、瞬く間に樹の根を焼き払って耀と帝を襲う。

 

 

「しっかり捕まってろよ」

 

《はい……っ!!》

 

 

兄の背にしっかりと摑まり、姿勢を低くする。

それを帝は感じると、すぐさま複雑に通路を変え、業火の追随を防ぐ。

耀も最小限の風を起こし、炎を誘導して避けている。

 

(避けた?……いや、あの狼はともかく、女の方は違う!今の風………コレがコイツのギフトか…!?)

 

アーシャはジャックの業火の軌道が逸れた事に舌打ちする。

帝の背からチラリと背後へと視線を向け、そっと帝へ耳打ちする。

 

 

《次の枝を潜って、右へ。………帝、相手の事なんですが》

 

「分かってる。あのカボチャ頭は兎も角、プレイヤーの娘は大した事はなさそうだな」

 

 

少しだけ不安そうなカグヤへ、帝はその指示通りの進路を取りつつ、軽く頷く。

 

――――Will o' wisup(ウィル オ ウィスプ)Jack o' lantern(ジャック オー ランタン)の伝承。

前者の伝承は、無人の場所で突如、青白い炎が生まれる現象。鬼火と云われるもの。

後者の伝承は、彷徨う死者の魂が形骸化された逸話。所謂幽鬼と云われるもの。

 

しかし、この二つの伝承には、それぞれに共通した逸話が残っている。

 

 

《伝承では、双方共に『名も無き悪魔が篝火を与えた』となっていますよね?つまり、相手は……》

 

「あの娘は、コミュニティのリーダーとは違う。あそこのリーダーは、『生と死の境界に現れた悪魔』であり、篝火を与えた悪魔だ。その火力にしては、弱弱し過ぎる。多分、あの娘はコミュニティのリーダーが引き入れた地霊の一種だと推測する。だが………あのカボチャ野郎だけは、別格だぞ」

 

 

疾走しつつ、背後の様子を窺う。

距離としては、かなり引き剥がしてはいるが、それでも相手は耀と六桁コミュニティ。

油断しても勝てる、と言う訳ではない。

 

 

「あーくそ!ちょろちょろと避けやがって!三発同時に撃ち込むぞジャック!」

 

「YAッFUUUUUUuuuuuuu!!」

 

 

アーシャが左手を翳し、次に右手の右手のランタンで業火を放つ。

先程より勢いを増した三本の炎。

だが、それに対して帝も耀もギフトを発動する気配なく、スルリとすり抜けて見せた。

 

 

「……な………!?」

 

 

絶句するアーシャ。

カグヤは少しだけ眼を丸くすると、ちょいちょい、と帝の耳を引く。

 

 

《帝、今のは……》

 

「微かに燐の臭いがした。多分、俺ですら感じるんだから、耀も理解しているだろうさ。相手は()()()()()()とかを利用して、攻撃してきてる」

 

 

そもそも、耀が風で炎の軌道を逸らした時に、帝の中には微かな違和感があった。

炎は風に煽られれば、更にその威力を増す。

勿論、炎以上の強風に見舞われれば、炎が消える事もあるが、耀が使ったのは本当に最小限の風のみ。

それでも、炎の軌道が逸れた、というのであれば、それは炎を誘導していた可燃性の何かを彼女の風が払った、と考える方が自然だ。

 

つまり、アーシャが利用しているのは天然のガスや燐を発火前に霧散させているという事。

 

彼らの動きで、アーシャは種を見破られた事を察し、悔しげに歯噛みする。

 

 

「くそ、やべぇぞジャック……!このままじゃ、逃げられる!」

 

「Yaho……!」

 

 

走力では俄然、耀と帝が勝っている。

人間を乗せているというのに、どれだけ走っても彼の速度は落ちてはいないし、耀に至っては豹と見間違う健脚を駆使して、見る見る帝との差を詰めにかかっている。

そして、双方共にこの迷路の正しい道を把握している、と仮定して間違いないだろう。

これでは、迷路の意味がない。

 

アーシャは離れていく二人の背中を見詰め―――諦めた様に溜息を吐いた。

 

 

 

「………くそったれ。悔しいが後はアンタに任せるよ。本気でやっちゃって、()()()()()()

 

()()()()()()

 

 

え?と耀が振り返る。

まさか、とカグヤが息を呑む。

遥か彼方にいたジャックの姿はもうそこにはなく、気が付けば帝の進行方向、その前方に霞の如く姿を顕現させたのだ。

巨大なカボチャの影に、慌てて帝がバックステップで後方へと距離を取る。

 

 

「嘘」

 

「嘘じゃありません。失礼、お二方」

 

 

ジャックの真っ白な手が、耀を巻き込む様にして帝共々薙ぎ払う。

咄嗟にかわそうとしたが、それでも間に合わない。

 

 

《きゃっ……!!?》

 

「カグヤ!!」

 

 

樹の根の壁へと吹き飛ぶ際、カグヤの手が帝の背より離れる。

慌てて手を伸ばすが、狼の四肢では彼女を抱く事も出来ず、全員揃って叩き付けられる。

意識が飛びそうになる程の衝撃に、軽く眩暈や嘔吐感に襲われ、耀が咳き込む。

 

 

「っ……!?」

 

「カグヤ、無事か!?」

 

《大丈、夫……で、す》

 

 

すぐさま近寄るが、カグヤの顔色は芳しくない。

それもそうだろう。

彼女は箱庭出身者であり、普通の人間に比べれば丈夫な方ではあるが、それでも普通の少女なのだ。

こうした、荒事になれている訳ではないのだから、本当であればこの痛みでも失神しておかしくはないだろう。

帝から見ても、妹が気絶していないだけ、もうこの場で褒めてやりたいくらいだ。

 

 

「さ、早く行きなさいアーシャ。このお嬢さんと狼は私が足止めします」

 

「悪いねジャックさん。本当は私の力で優勝したかったんだけど………」

 

「それは貴女の怠慢と油断が原因です。猛省し、このお嬢さんや狼のゲームメイクを少しは見習いなさい」

 

「………あ~~、くそ。全くだぜ」

 

 

声を上げたのは、帝だった。

その語調は酷く苛立ち、怒りすら感じさせる。

だが、その怒りが向くのは……己自身。

 

 

「全力でやる……って決めてたんだ。相手が如何に()()()()()だからって、油断していい理由にはならねぇよな……!!!!」

 

 

酷い苛立ちと焦燥感。

それは、全て己の甘さへと向かう。

今にも自分自身へ噛み付こうとする様な気迫ある兄へ、カグヤが慌てて宥める。

 

 

《帝……ほら、私は大丈夫ですから》

 

「大丈夫なもんか。お前、頬に血がついてる」

 

 

え?とカグヤが目を丸くし、自身の頬を撫でる。

そこには、確かに痛みを伴う傷が一つ。

だが、この程度の傷であれば、それこそ一日経過すれば痕すら残らず消えている事だろう。

 

それでも、帝の苛立ちが止まらない。

 

 

「クソが…!女の子の顔に傷だと……」

 

《に、兄さん?落ち着きましょう?げ、ゲームからお話が逸れている様な気が…………》

 

「ゲームより!!嫁入り前のお前の顔に傷がついた方が、一番の問題だ!!!!」

 

 

いや、どう考えてもゲームの方が大事だろう。

呆然とするジャックとアーシャとは違い、耀は無表情で溜息一つ。

“ノーネーム”にとって、帝のシスコンは今に始まった事ではない。

 

だが、ここで固まっていては勝てる勝負も勝てないだろう。

逸早く復活したアーシャが慌てて走りだそうとする。

慌ててその背に追い縋る耀。

 

 

「ま、待っ」

 

「おっと……待ちません。貴女達は此処でゲームオーバーです」

 

 

ジャックが言う。

そして、ランタンから篝火を零す。

その僅かな火は樹の根を瞬く間に呑み込み、轟轟と燃え盛る炎の壁となった。

先程までとは比にならない圧倒的な熱量と密度に、耀は息を呑む。

 

帝はスゥ..と眼を細め、ジャックを睨んだ。

 

 

「やっぱりな、()()()()()って訳か」

 

「ヨホホ~~♪狼さんのご想像通り。私はアーシャ=イグニファトゥス作のジャック・オー・ランタン()()()()()()()。貴方方が警戒していた存在―――生と死の境界に顕現せし大悪魔!ウィラ=ザ=イグニファトゥス製作の大傑作!それが私、世界最古のカボチャお化け……ジャック・オー・ランタンでございます♪」

 

 

陽気な笑い声を上げるジャックだが、カボチャの奥の瞳には先程までとは違う炎が灯っている。

明確な意思と魂。

そして威圧感。

その存在感に、カグヤは小さく身を震わせた。

 

 

(ジャック・オー・ランタン………これが、この世に生み出された不死なる怪物……)

 

 

勝てない……

そう、カグヤは思った。

このまま、例え兄と耀が協力しあったとしても、現状として勝てると思える要素が一切カグヤには思い浮かばない。

 

……今のままでは。

 

 

「―――カグヤ!!」

 

 

鋭い声に呼ばれ、ビクッとカグヤの肩が跳ぶ。

慌てて顔を向ければ、そこにはジャックを睨んだままの帝の姿。

その瞳には、敵意がありありと浮かんでいるというのに、彼の口元は楽しげな笑みに彩られている。

 

ああ、そうだった、とカグヤは内心で呟く。

 

月影帝は―――兄は昔から、()()()()()()のだった。

カグヤは痛む体を無視し、ゆっくりと立ち上がる。

 

 

《呼びましたか?兄さん》

 

「悪いが、緊急時の作戦に切り替える。頼めるか?」

 

《……兄さん。昨日話し合いましたよね?その作戦は、()()()()()()時のみに発動する、と》

 

「丁度いい肩慣らしになるだろ?それに……今日は凄く良い予感がするんだ」

 

 

ニシシ、と笑う兄に、自分の声等殆ど届いてはいないのだろう。

カグヤは溜息を一つ零し、淡く苦笑すると静かに首を縦に振った。

 

 

《分かりました。――――――カードを》

 

 

差し出されたカグヤの手。

帝はその仕草へ待ってました、と言わんばかりに笑みを濃くし、自身のギフトカードを彼女へ差し出す。

 

 

「穢れぬ乙女に忠誠を、暗き闇へ光の刃を」

 

 

静かに紡がれた言葉。

カグヤは呆れた様に困笑をし―――丁寧に、彼のギフトカードへと口付ける。

宛ら、自身へと忠誠を誓う騎士へ、その思いに応える姫君の様に。

 

 

―――次の瞬間

 

 

「え……っ!?」

 

「よ、ヨホホ…?」

 

 

眩い閃光が世界を白に染め上げる。

慌てて眼を庇う耀。

だが、ジャックはその光景に只ならぬ気配を感じ取ったのだろう。

すぐさま、光の中心―――帝がいた場所へとランタンの篝火を差し向ける。

 

地獄を体現せし赤き業火。

そんなものを受ければ、死体すら残らずに炭となって地へと返るだろう。

 

 

「っ!帝!!カグヤ!!」

 

 

耀の声が響く。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「――――呼んだか?」

 

 

炎が一瞬にして凍る。

驚く程に冷静な声と共に、耀が見ていた世界が一瞬にして氷結で彩られていく。

気が付けば、自分の吐く息が真っ白に変わっていた。

肌を指す冷気に、耀の脳裏で警鐘がなる。

 

 

「み、かど………?」

 

 

彼を呼ぶ声が、頼りなく響く。

それもそうだろう。

耀の目の前にいたのは、サラサラと手触りのいい毛皮を持った銀狼ではなく――――――青年が立っていた。

月光の様な白い髪を後ろは短く切り揃え、モミアゲはそれと対照的に胸近くまで長く伸ばし、左側には淡蒼いメッシュを入れている。

身に纏うのは、ブーツとダメージ加工したジーンズ、そしてYシャツと黒のベスト、赤い紐と月のブローチで出来たループタイという、これまたアンバランスな出で立ち。

 

彼は空色と菫色のオッドアイを楽しげに細め、小さく笑む。

 

 

「まさか、この程度で終わり……なぁんて事はないよな?カボチャのお化け」

 

「月光の様な銀髪……空色と菫色のオッドアイ………まさか、」

 

 

言葉を詰まらせるジャック。

その時、遥か前方より悲鳴にも似た声があがった。

 

 

「あ、アーシャ……!?」

 

「クク………流石に、俺もコミュニティの看板を背負ってるもんでな。此処で、アンタとやり合ってる間に、ゴールされたら困るんで捕獲させてもらった」

 

 

分かるだろ?と、青年が足元で凍る樹の根を右足で何度か踏んで見せる。

つまり、彼女はこの冷気によって足を凍らされている、と判断すべきだろう。

ポカン……と耀が目を丸くする。

 

 

「え?……み、帝…なの……?」

 

「んぁ?おいおい、この場でボケられても、ツッコミしないぜ?」

 

「だ、だって、帝は狼で………」

 

「………ああ、そうか。お前らって、俺の姿を全く知らなかったんだったな。悪い悪い」

 

 

ニシシ、と笑う彼は一応は謝る素振りを見せたが、全く悪いとは思っていないだろう。

流石に、誰もついていけていない状態なので、帝はニッと笑うと高らかに宣言する。

 

 

「そうだ。俺が月影帝!嘗て“箱庭の御子”と呼ばれた存在、“竹取物語”に所属する分家にして、最後の生き残り!!月影一族より『帝』の名を襲名せし存在!―――それが、俺だ」

 

 

ふふん、と得意げに笑うが、箱庭に来て間もない耀にとってはよく分からない話。

だが、ジャックは違う。

その瞳には、驚きと畏怖、そして嫌悪が映る。

 

 

「…まさか、こんな最下層のゲームに元三桁のコミュニティが参加しているとは、思いませんでしたよ。しかも、貴方の様な残虐凶暴なプレイヤーがいるとは………生きていたのですね?“血染めの魔王殺し(ブラッディ・ナイトメア)”」

 

「………懐かしい名前で呼んでくれるな、不死なる化物」

 

 

今まで楽しげだった声が、一瞬だけトーンを落とす。

その瞳に映るのは寂しさと悲しみ、そして後悔。

だが、その色もすぐさま消え失せ、傲慢な程の自信だけが映る。

 

 

「それで?お前は前方で拘束状態の地精を守りつつ、俺の妨害をする、でいいのか?」

 

「地精…?」

 

「おやおや……お見通し、ですか?」

 

「当たり前だ。“ウィル・オ・ウィスプ”の炎は紛う事なき悪魔の炎。それを態々人間にも理解できる様に、()()()()()()()()()()()()()()()()んだからな」

 

「え……?」

 

「流石は、と言うべきでしょうね。よく、我々について調べていますねぇ」

 

 

ヨホホ~♪と笑うジャック。

だが、耀だけが話に取り残されている。

 

 

「……カグヤも分かってた?」

 

《あ、いえ……私も帝に聞いた程度です。でも…伝承の内容にしては、霊格が少し弱いかなぁ…程度には感じておりました》

 

 

淡く苦笑しつつ答えるカグヤ。

耀も、相手がリーダーではない以上、アーシャが生と死の境界に具現する悪魔ではない、位は分かった。

だが、それ以上についてはよく分かってはいなかった。

 

はぁ、と帝が溜息を零す。

 

 

「ゲームにおいて、名前、能力、伝承は必須条件。()()()()()()では、一生かかっても上のコミュニティには勝てないぞ」

 

「………帝は、アーシャの正体が分かってたの?」

 

「燐を使ってる辺りで、な。何度も言うが、“ウィル・オ・ウィスプ”は伝承通り悪魔の炎。その発火に燐や天然ガスは不要。なら、彼女は何故それを必要としたのか………理由は至極簡単。アーシャは悪魔ではない。彼女は何かしらの霊体だったのを、リーダーが引き取った。燐や天然ガスを使える辺りで、大地の精霊となり力を付け始めた………で?どうだ?ジャック」

 

「………悔しい程に聡明ですね、帝殿?」

 

「お褒め頂き、光栄でございます」

 

 

悔しげに言うジャックへ、帝は紳士らしく丁寧に頭を下げる。

その仕草は、完全に相手を馬鹿にしている様にしか見えない。

 

 

 

 

「………でも、どうして、」

 

「おいおい、これ以上俺を失望させたいのか?耀。“ウィル・オ・ウィスプ”について、調べが甘すぎるだろ。彼奴らは報われぬ死者の魂を導く功績によって、霊格を得ている。それならば、アーシャと呼ばれる彼女は、何かしらの天災や事故で死んでしまった魂だろうさ。だから、お前らのリーダーは引き取った………それが、当たり前であるかの様に」

 

「ええ、そうです。我ら蒼き炎の導を描きし旗印は、無為に命を散らした魂を導く篝火。救済の志は、神々に限られた領分ではないのです―――!!」

 

 

ジャック・オー・ランタンは己が旗印を誇る様に腕を広げ、高らかに宣言してみせる。

その姿は、彼がどれだけ自分のコミュニティを誇っているかが、よく分かった。

だからこそ、帝は静かに首に下がったループタイの月を模したブローチを握る。

 

 

「……このゲームでは、創造系ギフトが主。だから、俺は自分に宿るギフトは一切使わない。今、俺が使えるのはこのブローチとピアスのみ」

 

「……あれ?帝が持ってた創造系ギフトは、“神を喰らう大狼(フィンリル・ラグナロク)”だけじゃないの?」

 

《いえ……》

 

 

不思議そうに首を傾げた耀へ、カグヤが苦笑する。

 

 

《帝が神を喰らう大狼(フェンリル・ラグナロク)を使い出したのは、狼になって以降です。……あのギフトは帝が人間だった時に常備していたモノ。そして、兄さんがコミュニティで生きていく為に必須だった物です》

 

「コミュニティで生きていく為に……必須?」

 

《はい。それは―――》

 

「カグヤ。お喋りは其処までにしておけ」

 

 

厳しい声音で、カグヤをたしなめる。

今はゲーム中であり、耀と帝は同じコミュニティだったとしても、現在は敵同士。

相手に自分の情報を売る事は、自殺行為の様なモノだ。

カグヤもそれを理解したのだろう、少しだけ不満そうな表情をしたが、渋々頷く。

 

 

「……さてっと、お話はこんなもんで満足したか?」

 

 

ゆったりと笑みを浮かべ、帝が一歩前へと出る。

その手には徐々に強い冷気が集まりだし、一振りの日本刀を作り出す。

帝はそれを強く握り締めると、その切っ先をジャックへと付きつける。

 

 

「ゲームのルールに乗っ取るなら、相手のギフトの破壊、及び迷路攻略。お前が俺の進行方向を妨害すると言うなら、俺はお前を破壊する以外に勝利条件を満たせない」

 

「貴方に、私が壊せると?聖人ペテロに烙印を押されし不死の怪物―――このジャック・オー・ランタンが。」

 

「破壊出来ないまでも………再起不能にはさせてやるよ」

 

 

静かに宣言する声と共に放たれた、圧倒的な敵意。

彼はそう宣言した以上、ジャックを再起不能にさせるのだろう。

暫し二人は睨みあい………先に折れたのはジャックだった。

 

 

「……どうやら、貴方が現れた時点で私の負け、と思った方がよさそうですね」

 

 

戦意を喪失した様に腕を下げるジャック。

その姿に帝は刀を霧散させると、小さく苦笑した。

 

 

「そうしてくれると、俺としても有り難いかもな。流石にギフトとはいえ……アンタを破壊するのはちょっと、な」

 

「…………」

 

「……えっと、どうかしたか?」

 

 

あれだけお喋りだったジャックに黙り込まれ、帝が首を傾げる。

 

 

「いえ。………風の噂で耳にしていた事実とは、大分違う方なのですね、帝殿」

 

「噂って…………いや、それは多分事実だ。俺がこうして、平和にゲーム出来ているのは彼奴らや、今の仲間達、それからカグヤが俺の傍にいるからだよ」

 

 

少しだけ寂しげに笑み、どこか懐かしそうに言葉を紡ぐ。

その姿には、彼がどれだけ前のコミュニティを大事に思っていたのかが、よく窺える。

帝は一度深く息を吐くと、カグヤへと振り返る。

 

 

「カグヤ、道は?」

 

《あ、は、はい。右斜め前の根に沿って走れば、ゴールに辿り着ける筈です》

 

「了解。じゃ、後始末を頼んだ」

 

 

帝はヒラヒラと手を振ると、カグヤが示した根を疾走する。

その速さは狼だった時と全く変わらぬ俊足。

残されたカグヤは、芭蕉扇を握り直す。

 

 

《……耀様は、ギブアップなさりませんか?》

 

「うん……私は帝を追うよ」

 

《では、私は耀様を足止めさせて頂きます》

 

「……カグヤが?」

 

《ほぇ?当たり前じゃないですか。兄の足なら、ゴールするまで五分くらいでしょうね。それまで、私は耀様をここへ留めて置けば、十分にサポーターとしての仕事をこなした事になります》

 

 

ニコッと笑うカグヤは、もう怪我の自己治癒が終わりに近いからだろう。

帝があれ程話していたのは、多分カグヤの自然回復を待つため。

なら、未だにダメージの残る自分が追うのは、厳しい。

それに、と耀は自分の前に立ちはだかったままのジャックを見る。

耀は彼に対して、今までの敵の中でも強敵だという事を肌で感じていた。

そのジャックが、帝との直接対決を避けた。

 

つまり、彼にはそれだけの実力がある、という事だろう。

 

 

(……なんか、悔しいな)

 

 

首にかかったペンダントを握り締め、耀は現状を納得させていく。

普段から一緒にいる彼は、今まで自分達に切り札を見せた事がなかった。

つまり、彼にとって今までのゲームはどれも、呪い(ギフト)の制限があっても大丈夫だと判断出来たモノだったのだ。

 

それに……カグヤはこう言った。

力を使うのは魔王が現れた時、だと……。

 

自分も、帝が本気で潰しにかかった時点で………負けは確定していたのかもしれない。

そう思える程に、彼の敵意は凄まじいモノがあった。

耀が暫しペンダントを見詰めていると、空間が霧散した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

☆★☆★☆

 

会場は、まるで夢から覚めた様な静けさだった。

ゲームの決着がついた瞬間、会場の舞台はガラス細工の様に砕け散り、円状の舞台に戻ってきていた。

呆然とする観客達。

その中で一人、黒ウサギは何事もなかった様に終了を宣言する。

 

 

『勝者、月影帝』

 

 

ハッと観客席から声が上がる。

次に割れんばかりの歓声が会場を包んだ。

その声に、勝者である帝は静かに手を上げて応える。

 

おおと声が上がる舞台の中心に立ち尽くす耀。

その隣にはカグヤとジャックが静かに近寄る。

 

 

「一つ、お聞きしても?」

 

「………。何?」

 

「今回のゲームには、一人まで補佐が許されています。帝殿ならばカグヤ嬢が、アーシャには私がいた様に。同士の手を借りようとは思わなかったのですか?」

 

「…………、」

 

 

耀は質問には答えず、静かに空を仰いだ。

その姿に、カグヤが少しだけ怒った様に眼を細めた。

 

 

《耀様、帝はゲームが始まる前に私に言いました。徹底的にやる、と。帝が怒った理由が分かりますか?》

 

「………怒ってた?」

 

《はい。私もビックリする位に。今回のゲームには、耀様にも十分に勝機のある内容だったと私は思います。………でも、それは耀様の補助にジンやレティシアといった仲間達がついた場合のみ、です》

 

「…………」

 

「私からも…余計なお節介かもしれませんが………貴女の瞳は、少々物寂しい。コミュニティで生きていく上で、誰かを頼るシチュエーションというのは多く発生するものです」

 

「別に、皆と仲が悪い訳じゃ、」

 

《それでも……単独行動ばかり取られては、私達は不安になります。耀様が私達を信用してくれていないのでは、と》

 

「そうですね。貴方は今まで、単独行動で傷を負う様な事はありませんでしたか?」

 

 

ぐっ、と耀は黙り込む。

それは手痛い指摘だった。

 

 

“フォレス・ガロ”のガルドと戦った時、一人で挑んでいたならば、死んでいたと思われる結果だった。

あの時、カグヤが庇ってくれたからこそ、自分はこうして五体満足でコミュニティの為にギフトゲームへと参加出来るのだ。

“ペルセウス”の時の様な総力戦なら兎も角、借りるべき力を借りていなかったのは、彼女の怠慢とも言えるだろう。

察したジャックが優しく諭す様な声音で言う。

 

 

「協調と一口で言っても、それらは積み重ねる事でしか実感出来ない様なモノです。お若い貴女にはまだ分からないでしょうけど……ああいや、どうにも説教臭い。カボチャだけにお節介な性分で!貴女の様に物寂しい瞳の子供を見ると、一声掛けずにはいられないのですよ。………彼にも、本当であれば声を掛けたいのですが」

 

「彼?………帝に?」

 

「彼も、貴女と同じく物寂しい瞳をしていました。いや……違いますね。疵付き過ぎてどうする事も出来ずにいる怯えた子供の瞳、でしょうか」

 

 

ヤホホ!と笑って濁すジャック。

カグヤは彼の指摘を受け、未だに壇上で声援を浴びる兄へと視線を向ける。

何時だって笑ってくれる兄。

その姿に、自分はどれだけ励まされ、プレイヤーとして努力出来た事だろう。

だが、それと同時に危うさすら感じていた。

 

 

《……ジャックさんの言う通り、ですね》

 

「……?カグヤ?」

 

《耀様、先程私が話せなかった事をお話します。帝が普段から常備している創造系ギフトですが、あの首に下げているループタイに使われているブローチと、普段は髪に隠れて見えませんが右耳に一つ、銀の星を模したピアスがあります》

 

 

見えますか?と問われ、注意深く見詰めると、確かに彼の右耳にキラリと光るモノがある。

形までは確かめられなかったが、多分それが帝が言っていたギフトだろう。

 

 

《ブローチは十五の月(ルミナス・ムーン)と言います。月がその姿を変える様に、あのギフトは自分と相手、両者が持つギフトを十五まで記憶する事が出来、使用する事が出来ます》

 

「…物真似のギフトって事?」

 

《そうです。ただし、その効力はオリジナルよりも多少威力、霊格共に劣るんだそうです。そして………一番兄が大事にしているのは、ピアスの方です。あれは新月の戒め(ルナ・レス)といって、霊格を墜とす為にあるギフトです》

 

「霊格を……?」

 

そこで、ふと耀に疑問が浮かぶ。

今日、帝と戦ってみて分かったのだが、彼にサポートが必要だったのだろうか。

勿論、カグヤのマップ攻略能力には耀も危機感を覚えたが、その後の戦闘や移動は帝が殆ど行っていた。

逆に、カグヤが居た事で彼には自由が拘束されてしまっていた様にも見えた。

 

 

《兄がこの箱庭で一番嫌悪しているのは、己と魔王です。強過ぎる力は、その制御を間違えば簡単に命を奪ってしまう。………私と兄さんがコミュニティに招かれた時、兄さんはずっと苦悩してました。強過ぎる力や自身が犯した罪に》

 

「………ねえ、カグヤ。帝って、何者なの?」

 

 

それは、純粋な質問だった。

カグヤとは、何度となく自身の事を話していた。

だが、帝はいつだって自分達には何も語らず、回答を先延ばしにしながら笑っていた。

それが、今まで気にならなかったのか、と問われれば答えに困るが、それでも彼が語るまでは黙っておくのがいい、と耀は思っていた。

 

しかし、こうして『敵』の立場になって、どれだけ彼を知らなかったのか、と思い知らされた。

 

 

《………それは、兄に聞いて下さい。もし、兄が耀様を認めているのであれば、きっと答えてくれる筈です》

 

 

短い回答。

だが、それ以上はカグヤは何も言わず、ゆっくりと帝のいる壇上へと歩いて行ってしまった。

一人残された耀は、ただ静かに二人を見詰める。

その時、後ろから不機嫌そうなアーシャがやってきた。

 

 

「おい、オマエ!名前はなんて言うの?出身外門は?」

 

「………。最初の紹介にあった通りだけど」

 

 

突き放す様に言う耀。

しかし、アーシャはそれでも喰らいついた。

 

 

「あーそうかい。だったら私の名前だけでも覚えとけ、この“名無し”め!私は六七八九○○外門出身アーシャ=イグニファトゥス!次に会う様な事があったら、今度こそ私が勝つからな!覚えとけよ!」

 

 

はい?と耀が小首を傾げる。

しかし、意図を問う前にアーシャはツインテールを揺らして、帝の方へと大股に歩いていく。

どうやら、彼らにも同じ事をするらしい。

 

ジャックがヨホホ!と笑って説明した。

 

 

「あの子、同世代の女の子に負けた事が無い子でしたから。ゲームそのものは帝殿の圧勝でしたが、貴女に対しても自分の力では勝てないと思っているのでしょう」

 

「それこそ、協調の勝利が云々かんたらだと思うけど」

 

「ヤホホ!いや、全くその通り!」

 

 

カボチャ頭の怪物は額をピシャリと叩き、一本取られたとばかりに哄笑を上げるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

☆★☆★☆

 

「………負けてしまったわね、春日部さん」

 

「ま、そういう事もあるさ。気になるなら後で、お嬢様が励ましてやれよ」

 

 

気落ちする飛鳥と、軽快に笑う十六夜。

だが、その瞳は真っ直ぐに帝へと向いており、どこか楽しげにも見える。

ふむ、と白夜叉が唸る。

 

 

「全く……ここで、大々的に自分の正体を明かすとは、帝もまだまだ子供だな」

 

「おい、白夜叉。帝が呪い(ギフト)を解除出来るって知ってたのか?」

 

「ふふ、当たり前であろう?あやつに解き方を教えたのは、他ならぬ私だからな」

 

 

えっへん、と胸を張る白夜叉。

その反応に、十六夜と飛鳥が怪訝そうに顔を顰めた。

 

 

「どういう事かしら?」

 

「うむ。帝が受けた呪い(ギフト)、“呪われし狼(ウルヴス・サーガ)”には、解除法が二つだけ存在しておる。一つは月の周期。これは、月の出ている間のみギフトの効力が弱まり、元の姿に戻る事が出来るというもの。これに関しては、帝自身も分かっていたようじゃな。

 

そして、もう一つ………それは、穢れ無き乙女の接吻だ!」

 

「せ、接吻?接吻って、あの………」

 

「ふふふ……そうだとも!!帝は女性にキスしてもらえば、いつでも元の姿に戻れるのだ!!」

 

 

ババーーーーン!!と効果音が聞こえる程のドヤ顔で言い放つ白夜叉。

それとは逆に、顔を真っ赤にしていく飛鳥。

 

 

「ふ、不純だわ!!破廉恥にも程があるじゃない!!」

 

「そうか?そういうベタな展開で、気が付けば愛が芽生える、みたいなフラグが簡単に立つ、御手頃設定じゃねえか」

 

「だ、だからって、女の子の唇をなんだと思っているのよ!!」

 

 

軽く流す十六夜へ、飛鳥が怒鳴る。

それもそうだろう。

飛鳥は人間である帝を見たのは、()()()()()()

そして、今までずっと頭の隅に残っていた唇の感触の謎が解き明かされたのだ。

その内容は、昭和女子代表の飛鳥にとって、屈辱的なモノ。

これを、大人しく聞いていろ、等とは出来ない。

 

 

「おいおい、たかが()()()()()()()位で、どうしてそんなに怒鳴るんだよ、お嬢様」

 

「か、カードでも、乙女の大事な唇が………え?カードに接吻?」

 

 

呆れた様に言う十六夜。

その言葉に、今まで騒いでいた飛鳥に急ブレーキがかかる。

 

 

「なんだ、おんし気づいておったか」

 

「当たり前だろ?と、いうより今のゲームでカグヤがカードにキスしてたのがばっちり見えたからな。つまり、彼奴が元の姿に戻る条件ってのは、彼奴が所有するギフトカードへ女性が口づける、って事でいいんだな?」

 

「あら?そうなの?」

 

「うむ。ただし、それには欠点があってな。()()()()()()()()()()()()。つまり、長い時は一週間でも、一か月でも、半年でも元の姿を維持できるが、最悪の場合は一時間や一分という事もありうる最終手段。そして、この解除法はペナルティも存在していてな。元の狼姿に戻った後、()()()()()()2()4()()()()()()()()()()()()

 

「つまり、本当にヤバくなった時だけの抜け道って事か?」

 

「そう思ってくれても構わんよ」

 

 

それにしても、と白夜叉は舞台へと視線を戻す。

業火と不死の烙印を持つ幽鬼ですら、帝を恐れ、自ら降伏する事を選んだ。

それに対し、白夜叉は臆病だとは思わない。

寧ろ、そうしてくれた事に内心でほっとしていた。

 

(全く……簡単に火が付くところは、昔から変わらんな)

 

そのせいで、最悪の事態を予測せねばならないこっちの身にもなってほしいモノだ、と白夜叉は内心で毒づく。

だが、それは杞憂であるとも思っている。

彼は、白夜叉が睨みを聞かせていた頃の『彼』ではない。

少しづつではあるが、仲間の為、プレイヤーの為を思い、ゲームでの立ち回りも変わってきている。

その姿を見る度に、まるで自分の子が成長していく様な心境となり、嬉しく思えた。

 

 

「………おい、白夜叉」

 

「……うむ?なんだ?」

 

 

名を呼ばれ、白夜叉の意識が十六夜へと向く。

だが、彼の視線は遥か彼方、箱庭の空に向けられていた。

十六夜は怪訝な表情で白夜叉に問う。

 

 

()()()()()()?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

☆★☆★☆

 

「……ん、今回は期待できそうだな」

 

 

帝は観客の歓声に応えた後、自身のカードを見て苦笑した。

彼の持つブラッディダークのギフトカードに刻まれた“呪われし狼”の文字。

それを塗りつぶす様に、デジタル文字の数字が時を刻んでいる。

彼が狼に戻るまでのタイムリミットを示すそれは、帝が人間に戻った瞬間から数えて十日と刻まれている。

 

つまり、今日から数えて十日間は人間で居られる、という事だ。

 

 

《帝?》

 

「十日間以内に魔王が現れてくれれば、俺としても問題ないんだが………カグヤ、火龍誕生祭って後何日だっけ?」

 

《日数ですか?えっと…………あれ?》

 

 

考える様に腕を組んだカグヤの視線に、見慣れない黒が映り込む。

不思議そうにそれを掴むと、黒い封書である事が分かった。

 

ゾクッとカグヤの背筋に寒気が奔る。

 

 

《う、嘘………》

 

 

黒く輝く“契約書類(ギアスロール)”。

それは、カグヤにとって二度と見たくはない真っ黒な思い出の産物。

顔を真っ青にして震えるカグヤへ、帝が慌てて彼女の肩を抱くと、その手に持った“契約書類”を開封する。

 

中には、こう書かれていた。

 

 

 

 

 

 

『ギフトゲーム名“The PIED PIPER of HAMELIN”

 

 

・プレイヤー一覧

    ・現時点で三九九九九九九外門・四○○○○○○外門・境界壁の舞台区画に存在する参加者・主催者の全コミュニティ。

 

・プレイヤー側・ホスト指定ゲームマスター

    ・太陽の運行者・星霊 白夜叉。

 

・ホストマスター側 勝利条件

    ・全プレイヤーの屈服・及び殺害。

 

・プレイヤー側 勝利条件

    

    一、ゲームマスターを打倒。

    二、偽りの伝承を砕き、真実の伝承を掲げよ。

 

 

宣誓 上記を尊重し、誇りと御旗とホストマスターの名の下、ギフトゲームを開催します。

 

                        “グリムグリモワール・ハーメルン”印』

 

 

天空より雨の如く降り注ぐ黒い封書。

その光景に、誰もが絶句し、恐れを抱く。

その空気は会場を飲み込み、膨張した空気が弾ける様に誰かが叫び声を上げた。

 

 

 

「魔王が………魔王が現れたぞオオオォォォォ―――――!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 





やっとこさ、ペスト登場まで来ました(汗)

今回は、耀との絡みがメイン………だったんだよね、きっと;;
我が家の最強問題児は、綺麗に原作クラッシュをしてくれました。

くそっ、何故出てきたんだシスコン狼←


さて、帝君が頼れる兄貴からシスコンダメ狼へジョブチェンジした事が、結構反響を呼びました。
え~~、頂く意見としましては、「けしからん!!もっとやれ!!!」




…………うん、彼のシスコンはこれからも健在です。
心配せずとも、もっと暴走させていくぜ!!!ヤッハァァァァァァァァ!!!←←


―――――――――コホン!!
沢山の方から、この小説のヒロインは飛鳥ですか~~的なお声をいただくのですが……そんな事はありません。
一巻目の“ペルセウス”との戦いで出てきた伏線は、ここで回収。
飛鳥にはもっと盛大に勘違いしてもらう予定だったのですが、これ以上引っ掻き回すと回収が困難だ(水無瀬の文才不足)と判断し、この程度で終了。

個人的には、まったく白夜叉が暴走してないなぁと少し寂しい気分←

それにしても、白夜叉よ。
何故、見えそうで見えないギフトなんてスカートにつけたんだ。
『見えそうで見えない』だなんて、全く萌える要素が皆無だろう!!?(ヲイ)

チラリズムなんて古い!!今時ならば、恥ずかしがる女の子の真っ赤な顔こそがエロいのだ!!!
よし、ちょっくら恥ずかしい恰好を女性陣に着せる的な番外編を書こうk(強制終了)



―――――暫くお待ちください―――



………うん、無理な事を書き過ぎた;;

いえね、ちょぉと久々にストライクな乙女ゲーにどっぷり入れ込んじゃいまして。
そのテンションが、未だにお話へ影響しちゃうという始末。

うぅ~~……だって、女の子がむっちゃ可愛かったんだもん。
今回の攻略キャラも、中々いい感じでイケムェンだし←←
それに、お話も中々丁寧でフルボイス。

水無瀬は断然オトメイトより、花梨エンターテイメント派です!!(言うべき事ではない)


……いや、オトメイトもやるけどね。
妹なんて、どっぷり薄桜鬼とか緋色の欠片とか、アムネジアに嵌ってるし。



あれ?後書きに関係ない事が沢山書かれてる気が………フッ、今更か(開き直った)


では、次回。

元の姿となった帝に襲い来る試練。

魔王の襲来とカグヤのトラウマ……

鳴り響く雷鳴は、希望へと繋がる切り札を齎すのだろうか……



待て、次回!!!!


てな感じに大ホラ吐いてみましたです、はい。
ペスト編はまだまだ続きますが、どうぞお付き合いください。


では、また

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