緋弾のアリア~影の武偵~   作:ダブルマジック

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 夾竹桃からの情報を得てかなめが間宮達と決闘をするという羽田空港まで羽鳥と一緒にやって来たわけだが、決闘の時刻は深夜0時。

 到着したのが11時とあってまだ余裕があったので、先に来ているだろう夾竹桃と会っておくかと車を出ようとしたが、羽鳥にガシッと肩を掴まれて止められる。

 

「待ちたまえ。今のうちにやっておくことがあるんだよ。どこかへ行くならそれを手伝ってから行きたまえ」

 

「オレは必要なかったんだろ? だったらお前1人でやれ……って言いたいが、ここまで連れてきてもらってるしな……無茶なことじゃないならやってやるよ」

 

 かなめの説得が目的だから、てっきり時間になったら勝手に出ていくものだとばかり思ってたが、その前に何か仕込むらしく、連れてきてもらった手前で拒否もできなかったからまた助手席に座り直すと、羽鳥は車をゆっくりと発進させて滑走路の見える位置にまで移動。

 そこで車を停めてエンジンを切った羽鳥は、続けて後ろのトランクを開けてオレに中の物をひと通り出せと指示し、本人は後部座席にあった物をせっせと車内でカチャカチャやり始める。

 出したのはパソコンと発電バッテリーと何かとを繋ぐ配線類。トランクから出てきたのは組立式のちょっと大きめのアンテナ。

 それを説明書もなしに1分とかけずに組み上げて車の上にセッティングした羽鳥は、そのアンテナと配線でパソコンとバッテリーとを繋ぎ、ヘッドホンを用意してから骨伝導タイプの小型インカムをオレへと放り、付けるように指示。

 

「取り急いで決闘場所であるF滑走路まで、なるべく隠密でここから近づけるルートを探してきてくれ。着いたらインカムを通してそれを伝えて、ついでに集音機の調整をするから、それが終わったら好きにしたまえ。インカムは一応パソコンの音声解析で拾った音も流すから、使用するかは自由だけど、ちゃんと返してくれよ。インカムもタダじゃないんだからね」

 

 それで言うだけ言って手でオレを追い払った羽鳥は、バッテリーを動かしてアンテナの調子を確かめ始めてしまい、人を顎で使うこいつに腹は立ったが事が終わるまでここに戻ってこなくていいならと自分に言い聞かせて指示通りにF滑走路までの道を探りながらその役目を完了。

 終わったら終わったでオレがインカムを使ってない体なのかぱったりと声が途絶えたインカムだったが、折角使えるなら使わせてもらうとして夾竹桃の捜索を始める。

 時間は到着からすでに30分経ったか。

 かなめが時間ギリギリに来る可能性もあるが、自分から呼んでおいて後から来るようなことはしなさそうなかなめなら、もう夾竹桃とぶつかっていてもおかしくはない。

 そう考えてとりあえず空港内へと足を踏み入れたオレだったが、入って早々に警戒していたら眠らされている警備員1人を発見。

 慎重に近寄って具合を診たが、呼吸も穏やかで外傷もないことから薬品で眠らされていると判断。

 他にも探せば何人も同じように眠っているので、こういった手間な考慮をかなめがするとは思えないし、決闘の場所は滑走路。

 空港内はあまり関係ないから、やったのは十中八九で夾竹桃だ。

 騒ぎを大きくしないためだろうから、マジで暴れるつもりらし……

 ――バババババババババババッ!!

 ……いな。

 と、次に毒手使いの夾竹桃がどんな派手なことをするのかと考えようとしたところで、その答えが音となって返ってきて苦笑。

 白雪も似たような物を使ってるせいであまり聞きたくないその連射音はおそらく機関銃の類いだが、かなめは先端科学の剣しか扱わないことからその音を発生させたのは夾竹桃だと判断。

 すぐに空港内に反響する連射音から場所を特定し隠れて移動する。

 機関銃の連射音が収まった頃にその発信源であるバゲージクレームまで辿り着けたはいいが、そこで見えたのは多銃身型の機関銃を銃身から切断され、無惨に床に転がされているのと、その横で力なく倒れる夾竹桃の姿。

 それを見下ろすようにして科学剣を持つかなめが白い布の兵器を2つ、自分の周りに漂わせていた。

 

「…………だから非合理的だって言ったんだよ。こうなるのは予測できただろうが」

 

 そうして物言わぬ夾竹桃に吐き捨てるように言ったかなめは、倒れる夾竹桃の襟首を掴んで持ち上げるとそのまま肩に担いで滑走路の方へと足を進めていった。

 夾竹桃のあの様子から生死の方は判別がつかなかったが、オレもこれで忍の末裔だ。

 毒にも色んな種類があるのは知ってるし、毒使いの夾竹桃なら、その中に自分を仮死状態にする毒も調合して扱ってるはず。

 殺される前に死んでしまえば殺されずに済む。

 夾竹桃の生死については生きていることを信じるしかないとして、かなめが戦闘力を発揮したことは事実で、本格的に間宮達が危ないと判断したため介入もやむなしと決断。

 かといって始めからでしゃばって場をかき乱すのもリスキーなので、勝算が低いのもわかってるのに決闘に応じた間宮達がどう対抗するかを見てから状況に応じて援護する感じでいく。

 どうしてもの時は出ていくしかないが、なんか知らんが自信ありげな羽鳥もいるしそっちもまぁ、信用してやらんでもない。

 そんな行動を決定してから空港の屋上へと足を運んで、かなめの移動した滑走路を見える最前席――すぐに現場に行けるように柵を越えて縁に座る――を確保。

 深夜なので明かりは地面から出ている誘導灯だけが頼りだが、ないならないで暗所でも目が利くように鍛えてあるから急に明かりが消えない限りはすぐに順応できる。

 それで準備万端にしてから時間を確認すると、もう0時まであと5分ほど。

 来るならそろそろだなと建物の下の方を覗いていると、すぐに1つの影が建物から出てきてまっすぐにF滑走路まで歩いていく。

 が、間宮1人か。他の仲間は……と周囲をゆっくりと見回してみたが、さすがに暗いため遠くまで目は利かず断念。

 しかしF滑走路に近付く存在が間宮だけなのは確かだ。

 でもまぁ、話で聞いただけだから未だに半信半疑だが、非公式でもあの元イ・ウーの夾竹桃を逮捕した実力、ちょっとだけ期待してるぞ。

 じゃなきゃ今こうして静観という選択肢は始めからなかったんだからな。

 時刻は深夜0時。

 結局F滑走路には間宮だけが姿を現した。

 先に待っていたかなめはそこに停めてあったトラックの上から間宮に声をかけたようで、羽鳥が用意した集音機と音声解析がしっかりとその声を捉えてインカムから鮮明に流してくる。

 遠くて状況をはっきりと認識できないから会話を拾えるのは助かる。礼は言わんが。

 

『何人連れてきてもいいって書いたけど?』

 

『そっちこそ……大好きなお兄ちゃんと一緒じゃなくていいの?』

 

 意外と強心臓なのか、間宮はかなめに対して言葉を返すようなことを言ってみせるが、それにかなめは答えない。

 ただ、集音機でも捉えられない声が雑音として入ってきたっぽいのはあって、何か言ったらしいことは察しがついた。

 

『あたしは米軍(アーミー)の施設で育った。お兄ちゃんと組んで最強の兄妹になる計画だった』

 

 その雑音の後にすくっとトラックの背に腰を下ろしていたかなめが立ち上がり科学剣も持ちさらに間宮を見下ろす。

 

『でも……それが……うまくいかなかった。だからもうヤケ。暴力も解禁。誰でもいいから八つ当たりさせてよ。こういうザコでもいいよ』

 

 言いながら足で横に寝かせていた夾竹桃をトラックから蹴り落としたかなめ。

 慌てて全身で受け止めた間宮に言い聞かせるように剣を避けて遠距離で戦った夾竹桃が愚かだったと理解させる。

 が、そこは周知だからいいとして、直前のかなめの言葉で羽鳥の推測が正しかったことが判明したのは大きい。

 アルカナム・デュオ。

 それが意味するところのキンジとかなめ双方のHSSによる強化計画。

 それが失敗したことは明らかで、何がどう失敗だったかはいくつかの推測でしかわからないが、かなめにとって計画の失敗は他がどうでもよくなるくらいに重要なものだったということだ。

 そんな状態のかなめと羽鳥がどう話し合うつもりなのかは見当もつかないが、未だ姿を見せないということはタイミングを図っているのか、はたまたかなめの状態を分析しているのか。

 などなど考えていたら、インカムからF滑走路付近を飛び立つ飛行機のうるさい音が流れてきてインカムを取りそうになるが、向こうで瞬時にボリューム調整したのか一瞬で済んだのでそのままにしていたら、その飛び立つ飛行機の翼から流星のごとく落下してトラックに立つかなめへと突っ込む1つの影があり、直前で跳躍し躱したかなめのいたトラックの背に激突。

 小規模の爆発を生んで荷台に穴を穿つ。

 それをやった人物は遠目からでは分かりにくいが、女子生徒。

 武器らしきものを持っていないので素手であれをやったことになるが、そんなことが出来る間宮の仲間はいなかったはずなので、外部協力者の類いか。

 その人物は華麗に間宮を跳び越えて着地したかなめをすぐに追撃し、それを迎撃するのに持っていた科学剣を水平に振ったかなめだったが、

 

『科学剣破れたりッ!』

 

 なんと右の肘と膝で上下を挟んで水平斬りを白羽取りして止めた女子生徒。

 あれは凄いな。オレにはできん。

 そこから不意を突くようにして小ジャンプからギュンッ、と軸回転した女子生徒だが、それがどんな意味があるかわからなかったが、かなめが怯んだところを見るに仕込み武器でもあってそれで攻撃したのだろう。

 その怯んだ隙を狙って間宮が銃を抜いてかなめを撃つが、さすがにその程度は隙という隙にはならず白い布が射撃線に立ちはだかって全弾弾いてみせた。

 

磁気推進繊盾(P・ファイバー)はあまりの扱いの難しさに不良品とされた次世代UAV。使いこなせるのは米軍でもあたしだけ』

 

 結果として大したダメージもなく2人の攻撃をしのいだかなめは、あの白い布の正式名らしき名前を言って説明しながら、これも高性能であろういつかのヴァイザーをつけていよいよやる気を見せ始める。

 

『計画通り運用できなかったあたしも……不良品。グレてやる。お前、あかりの親戚辺りか? なんとなく似てるよ、頭の悪そうなとことかさ』

 

 インカム越しからでも伝わってくるかなめのプレッシャーを感じつつ、スカートの中から新たに5つも磁気推進繊盾を出してきた様に戦慄。

 合計7つとなった磁気推進繊盾が、かなめの背中の一点から伸びるように扇状に広がって、鋭利な先端を全て間宮達に向けた。

 それを見てもまだ何か策があるのか、銃を収めた間宮が素手でかなめへと突っ込み、それに遅れて間宮の親戚らしい女子生徒が突撃。

 間宮は独特な突進から右手を目一杯突き出した攻撃で磁気推進繊盾の先端とぶつかるが、これといった変化は起こらなくすぐにその右手を磁気推進繊盾に絡め取られて後ろへと投げ飛ばされてしまい、その間宮を受け止めて飛行機に乗り込む際に使うタラップに激突してしまった女子生徒。

 間宮は無事のようだが、女子生徒の方は遠目には動きがないので気を失った可能性がある。

 そんな2人に対して磁気推進繊盾を独立させて先端を間宮達へ向け、自らも科学剣を両手持ちで右腕を引き絞り切っ先を間宮達に向ける構えを取るかなめ。

 見ただけでそれが攻撃特化の構えなのはわかるが、これはマズそうだな……

 

『謎の転校生は、学校中に友達を作り強固な軍事基盤を築きました。友達になれなかった主人公ちゃんは、ケンカの末に命を落としました――』

 

 かなめもこれで終わると判断したのか、そういう筋書きで間宮が死ぬんだと言い放つが、このままだと本当にその通りになりそうだ。

 そう思って屋上の縁から立ち上がってミズチを用意したのだが、その間に立ち上がった間宮が周囲の誘導灯を撃って明かりを消してしまい、直前で気付いて目を閉じて暗所用に視界を切り替えられたが、やはりちょっと見えにくくなってしまう。

 なので先程よりも集中して動きを観察していると、銃を収めた間宮がどこにも繋がってないタラップを最上段付近まで登って着けていた頭のリボンを外してしまう。この状況でまだ何かあるのか?

 

『かなめちゃん。かなめちゃんは友達の意味を間違えて覚えてる。どこかで悪い大人が嘘を教えたんだと思う。1つ約束して。この戦い、もしあたしが勝ったら……やりなおそう。転入してきたかなめちゃんは、みんなと本当の友達になるの。友達ってどういうものか分からなければ、まずはあたしとなろう』

 

『友達? 今こうして戦ってるのに?』

 

『うん。友達って、ぶつかり合う事もあるものだから』

 

 あまり信じられないが、話を聞く限りでは間宮はまだ勝つ気でいる。

 そして勝ったら本当の友達になろうと。

 そんな間宮の馬鹿みたいな言葉にどうせ勝てないからと承諾したかなめ。

 それを聞いてから間宮は『イ』の字になるように腕を緩く広げてみせてから、目を疑う現象を起こし始めた。

 光ってるのだ。

 比喩とかそういうのではなく、明らかに間宮の体から発光現象が起きている。

 どんな原理かはわからないが、超能力者ではなかったはずの間宮がそんなことをしたのでかなめも仕掛けるタイミングを逃してその動向を警戒するようになると、発光する間宮に向けてバッ、バッ、バッ、バッ。範囲を絞った巨大照明が空港の屋上などから4つ伸びて間宮を照らすと、照明を受けた間宮は淡い発光から強い発光へと変化し近くをまるごと照らすほどに。

 その光で暗視機能でもついていたヴァイザーが仇になったのか乱暴に外したかなめは、磁気推進繊盾を前で重ねて光を遮って再び科学剣を構えて今度は何かされる前に仕留めるように前傾姿勢へと変化。

 間宮が何をする気かは未だわからないが、かなめの注意くらいは一瞬でも散漫にするべきと判断してクナイを3本取り出して、光源でハッキリと距離も割り出せたので風向きも計算に入れてクナイを投擲。

 どこから投げたかわからせないためにほぼ真上から落下するような軌道でかなめの近くに落ちるクナイは、ザッ、と踏み込もうとしたかなめの手前に1つ。磁気推進繊盾に2つが命中。

 もちろんダメージなど皆無だが、突然の攻撃に踏み込んでいた足を元に戻してキョロキョロと周囲に目を向けたかなめ。

 その間に気絶していたと思っていた女子生徒がタラップの最上段で間宮の後ろに立って「これだけで終わるワケないだろっ」とかなめに言い放つと、引き絞った左手を間宮の背中へと撃ち込む。

 

(おおとり)は大将首を取るために編み出された――友情のツープラトン技だッ!』

 

 掌打を撃ち込まれた間宮は、纏っていた光を胸元へと収束させたのと同時に、着ていた制服が何かの力でバラバラに引き裂かれて下着姿になるが、収束した光は弾丸のようにかなめ発射されて直進。

 それを磁気推進繊盾を3重にしてガード。さらに科学剣も前に突き出したかなめだったが、それを嘲笑うようにすり抜けた光の攻撃はかなめの周りでバチンッ! と弾けて炸裂し制服を破壊。

 どれほどのダメージだったかは全くわからないが、間宮と同様に下着姿になったかなめはその場で倒れてしまい、光を放った間宮も気を失って女子生徒が抱き止めてお姫様だっこで運び、気を失ったかなめを倒したと判断してそれ以上なにもせずにその場を離れていった。

 

「…………終わったみたいだぞ」

 

 正直よくわからないことの連続で理解が追い付いていないが、結果としてかなめが倒されたことは確かなので、インカムを通して羽鳥にそう報告してやる。

 すると少しの沈黙の後にインカムから反応が。

 

『そのようだね。さすがアリアの戦妹といったところかな』

 

「一応、放置はできないから寄ってみるが、お前はどうする?」

 

『君があられもない姿のかなめに何かしないか心配だから私も行くよ』

 

 ……こいつ、ちゃんと見てんじゃねーかよ。

 てっきり音声のみで状況を探ってると思ってたが、無駄な報告したな。

 そう思いつつミズチを使って屋上から一気に降りてかなめが倒れるF滑走路まで歩いて近付いたオレは、磁気推進繊盾が自動かはわからないがかなめを守り続けるのを横目においてけぼりを食らった夾竹桃の具合をまずは確認しようとする。

 仮に仮死状態だったとしても、そのままでいられる時間には限りがあるし、それを過ぎれば本当に死ぬ。

 だから刺激が必要ならと思ったのだが、オレが触れる前に急にパチリと目を開けてすくっと上体を起こした夾竹桃は、まだ働ききってない頭で状況を整理し、

 

「あら、寝ていた私に何ヤラしいことをしようとしていたの? 本当に変態だったのね。それとも下衆とでも言うのかしら」

 

 第一声がこれである。無事ならいいんだよクソが。

 この言葉に何を返しても流されるかさらに弄られるかしかないのでスルーしておき、次に気絶するかなめの方を見るが、依然として磁気推進繊盾が展開され続けるのにちょっと違和感を覚える。

 これってかなめが操ってたから『自動では動かない』よな。

 

「どこから横槍が入ったかと思えば、お前かよ」

 

 その疑問に答えるようにいきなりオレに対して言葉を発したかなめは、磁気推進繊盾を下ろしてなんて事もないというように起き上がると、偉そうに腕を組んでオレを睨んでくる。

 

「仲間は何人連れてきてもいいんだろ? だったらセーフだろ」

 

 そんな高圧的な態度のかなめに戦う意思はないと見せつつ、下着姿で対峙されても困るので上着を投げて貸してやると、めちゃくちゃ不満そうな顔をしながら汚いものでも触るような手付きで仕方ないといった感じで上着を着たかなめは、

 

「お兄ちゃん以外の男の匂いとか不潔ぅ」

 

 そんな文句を垂れるが、下着姿のままは少し嫌だったのか、ちょっとだけ感謝する表情をオレに見せて、またすぐに仏頂面に戻る。

 

「その様子だとダメージはないみたいだが、『勝たなかった』理由は?」

 

「……お前には関係ないだろ。おせっかいとかうざいんだよ」

 

 それで気絶したフリをしていたかなめに、どうしてそんなことをして勝ちを譲ったのかと問えば、これは返答なし。

 言われて気付いたが、なんだかオレがおせっかいなおじさんキャラっぽくて嫌だな……

 

「勝ちを譲ったということは、かなめがあかりちゃんと友達になってみたい。そう思ったからに決まってるだろ。そこのおじさんは頭が悪くて仕方ないね」

 

 そう思った途端に、心底イラつく笑いと一緒に姿を現した羽鳥におじさん呼ばわりされて思わず先ほど投げて落ちていたクナイを拾って投げたら、いとも簡単に持ち手の部分でキャッチして投げ返してきやがったので、舌打ちして同様にキャッチし懐に戻す。

 さりげなくこういうこともできるのがさらにムカつくな。

 そのムカつく羽鳥は、図星を突かれて微妙な表情をしたかなめに1ダース箱入りのミルクキャラメルを放って渡すと、それをキャッチしたかなめはムスッとしながらそこから1つ取り出して口に放り込み口を閉ざしてしまった。

 

「ともかく、この件はかなめがあかりちゃんに敗北して一応の解決だ。負けた以上、かなめはあかりちゃんと友達にならないといけないし、女子生徒にかけた洗脳も本当の友達になる上では必要ないから解く。夾竹桃、君は君で目的があったようだが、それで納得してくれるかな?」

 

「ええ。かなめが金輪際あかり達に何もしないならね。ただ、あなたに場を仕切られてしまったことは不満。これ以上話すこともないし、先に帰らせてもらうわ」

 

 誰も口を開かないのを良いことに場を仕切って収拾し始めた羽鳥は、簡潔にまとめてこれにてお開きみたいな流れにし、夾竹桃も羽鳥が嫌いなのかさっさと退散。

 残ったオレとかなめももう面倒臭いみたいな顔をしてから撤収の流れに乗って、そのまま羽鳥の車で学園島の男子寮へと戻ったのだった。

 まぁ、何はともあれ事が大きくならなくて良かった、のか?


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