緋弾のアリア~影の武偵~   作:ダブルマジック

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魔剣編
Bullet7


 

 世の中唐突なことだらけだと思う。

 それをいかにして打開し道を切り開くかが、この世の中生きていくには大事なことだろうな。

 数日ぶりに戻ってきた武偵高。

 わざわざ長旅してまで依頼をこなしてきたオレ、猿飛京夜を待っていたのは、真っ先に自宅へ戻る権利もない教務科からの呼び出しだった。

 放課後に当たる時間帯に戻ってきたオレは、早く帰って戦妹である小鳥の作ってくれているあったかいご飯を食べてさっさと寝てしまいたい衝動を抑えつつ、教務科のとある個室へと赴いた。

 綴梅子。

 待っていた人物は、いつも通りの据わった目でオレを見ながら、タバコを吸っていた。

 

「おーう、お疲れさーん。長旅は楽しめたかな少年?」

 

「むしろ疲れが貯まって爆発寸前です早く帰してくださいお願いします綴先生」

 

 息継ぎなしで一息に言い切ったオレに対して、綴は表情1つ変えずに1服したあと話を始めた。

 

「用件はまぁ、当事者が来てからにはなるが、とりあえず期待してないが収穫を聞こうか」

 

 期待してないならわざわざ呼び出すなよ。

 明日にでも報告書を提出してやるんだからな。

 

「収穫はなし。目撃者及びその痕跡すらなかったです。ただ、気になるのは……」

 

「徐々に『ここ』へ近付いてきてる、か?」

 

 魔剣。超能力を使う武偵、超偵を狙う幻の連続誘拐犯。

 オレは昨日までその魔剣が引き起こしたとされている誘拐事件について極秘に調査しに行っていたわけだ。

 その魔剣の事件発生地点が、段々とここ武偵高に近付いてきてるのである。

 というか、それすらわかってたなら呼び出してまで聞くことじゃないっつーの。

 

「狙いはまぁ、おそらく……」

 

「星伽白雪」

 

 ……マジでこの人殴りたい! 1発でいいから全力で!

 ……そんなことしたらオレが死に目を見るに決まってるので、この怒りは後日まったく罪のない武藤に吐き出してしまおう。

 オレがそうして怒りのはけ口を決定したのと時を同じくして、個室にノックをして中に入ってきた人物がいた。

 噂をすればなんとやらだな。

 星伽白雪。

 我が東京武偵高が誇る数少ない優等生にして現生徒会長。そしてSSRの『秘蔵っ子』である。

 その白雪は中に入るや否やオレがいることに驚いた顔をして身を縮めた。

 

「おーし来たなー。おい猿飛ぃ。とりあえずお前はあっちな」

 

 白雪が来たのを確認した綴は目の前に座るオレに対して、左手の親指で部屋の後ろの隅をクイックイッと指して退かしにかかってきた。帰っていいですか?

 まぁさっさと帰さないところをみると、おそらく本題はこれからなんだろうな。

 オレは渋々椅子から立ち上がって白雪に席を譲ると、壁に背を預ける形で部屋の隅に移動した。

 それから綴は表情1つ変えずに白雪と話を始めた。

 

「星伽ぃー……おまえ最近、急ぅーに成績が下がってるよなー……」

 

 ああ、そういえば綴は白雪のクラスの担任だったな。

 それにしても白雪の成績が下がってるねぇ……

 

「あふぁ……まぁ、勉強はどぉーでもいぃーんだけどさぁ」

 

 どーでもいーのかよ。

 それから気付かないでいようと思ったが、無理だ。

 どうやらこの部屋には『2人』ほど、招かれざる客がいるらしい。

 伊達で諜報科に身を置いてないぞ。

 さてさて、いつ綴に教えるか。

 

「なーに……えーっと……あれ……あ、変化。変化は、気になるんだよね。ねぇー、単刀直入に聞くけどさァ。星伽、ひょっとして――アイツにコンタクトされた?」

 

「魔剣、ですか」

 

 なんだ。白雪本人にも話は通ってたのか。

 てっきり教務科がそれとなく警戒してるだけかと思ったが。

 

「それはありません。と言いますか……もし仮に魔剣が実在したとしても、私なんかじゃなくてもっと大物の超偵を狙うでしょうし……」

 

「星伽ぃー。もっと自分に自信を持ちなよォ。アンタはウチの秘蔵っ子なんだぞー?」

 

「そ、そんな」

 

 謙遜しやがって。まぁ、白雪らしいっちゃらしいが。

 

「星伽ぃ、何度も言ったけど、いいかげんボディーガードつけろってば。諜報科は……つーか、こいつが魔剣がアンタを狙ってる可能性が高いってレポートをこれから出すんだ。SSRだって、似たような予言をしたんだろ?」

 

 おい、オレのは極秘じゃなかったのか綴よ。さらっと言いやがって。

 ただまぁ、なんとなく綴の考えが読めてきたぞ。

 

「でも……ボディーガードは……その……」

 

「にゃによぅ」

 

「私は、幼なじみの子の、身の回りのお世話をしたくて……誰かがいつもそばにいると、その……」

 

 キンジ……1回死ね。

 オレが白雪に身の回りのお世話をされたら幸せすぎて死ぬぞ。

 小鳥で死なないのはまぁ……あれだ。線引きがしっかりしてるからだな。

 ……すまん小鳥。

 

「星伽、うちらはアンタが心配なんだよぉ。もうすぐアドシアードだから、外部の人間もわんさか校内に入ってくる。その期間だけでも、誰か有能な武偵を――ボディーガードにつけな。これは命令だぞー」

 

「……でも、魔剣なんて、そもそも実在しない犯罪者で……」

 

「これは命令だぞー。大事なことだから、先生2度言いました。3度目はコワイぞー」

 

 ……冗談に聞こえないのが綴の怖いところだ。

 さすが尋問科教諭。

 

「けほ。は……はい。分かりました」

 

 綴の吐いたタバコの煙にむせつつ、白雪は渋々ボディーガードをつけることを了承した。

 ――がしゃん!

 その時、この部屋の天井に備えられた通風口のカバーがぶち開けられ、そこから今まで話を盗み聞いていた神崎・H・アリアが、中のダクトから飛び降り、室内に降り立った。

 

「――そのボディーガード、あたしがやるわ!」

 

 その言葉のあと、盗み聞きしてたもう1人、キンジがダクトから落っこちてきて、アリアを下敷きにした。

 あーあ、綴へのチクリ情報がなくなっちまった。つまらん。

 そのまま隠れててくれりゃあ、明日にでも面白いことになったのに。

 

「き、きき、キンジ! ヘンなとこにそのバカ面つけるんじゃなうにゅえ!?」

 

 上から退かしてキンジに向かって怒鳴っていたアリアを、綴がキンジとまとめてネコ掴みして壁際に投げつけた。凄いな綴。

 

「んー? ――なにこれぇ?」

 

 それから不良みたいな感じで2人の顔を覗き込んだ綴。

 様になってるとか死んでも言えない。

 

「なんだぁ。こないだのハイジャックのカップルじゃん」

 

 2人を見て思い出したようにそう言った綴は、次にアリアとキンジの詳細なプロフィールをスラスラと述べ始めた。

 その中にはやはりオレのように普通なら知り得ない個人の弱みとも言える情報も含まれていた。

 本当にこの人に隠し事はできないな。

 せめて弱みを増やさないようにしないと。

 そしてプロフィール朗読という名の軽い暴露話を終えた綴は、話を本筋に戻すために頭を切り替えて改めて話を始めた。

 

「でぇー? どういう意味? 『ボディーガードをやる』ってのは」

 

「言った通りよ。白雪のボディーガード、24時間体制、あたしが無償で引き受けるわ!」

 

「お、おいアリア……!」

 

「……星伽。なんか知らないけど、Sランクの武偵が無料(ロハ)で護衛してくれるらしいよ?」

 

「い……いやです! アリアがいつも一緒だなんて、けがらわしい!」

 

 おっ?

 アリアと白雪の間になにやら険悪な空気が。

 どうやらオレがいない間に何かあったらしいな。惜しい現場を逃したか。

 

「――あたしにボディーガードをさせないと、こいつを撃つわよ!」

 

 ボディーガードを断る白雪に対して、アリアはいきなり銃を抜きキンジのこめかみに銃口を当ててそう言った。

 おお、白雪の性格をよくわかってらっしゃる。

 案の定白雪は慌てふためく。

 しかし本当に撃つなよ?

 武偵法9条『武偵は人を殺せない』だ。

 その状況をニヤニヤ見ていた綴。あ、面白がってる。

 

「ふぅーん……そぉかぁー。そぉいう人間関係かぁー。で? どーすんのさ星伽は?」

 

「じ、じょ、条件があります!」

 

 キンジを人質にとられた白雪は、仕方なさそうに折れたが、タダでは折れないらしい。

 

「キンちゃんも私の護衛をして! 24時間体制で! 私も、私も、キンちゃんと一緒に暮らすぅー!」

 

「……プッ……アハハハハハ! 良かったなキンジ! 依頼人から直々のご指名だぞ! 白雪も大胆というかなんというか」

 

 それで今まで一言も発していなかったオレも耐えられず笑いながら言葉を発してしまった。

 それを聞いたキンジは魂が抜けたような表情をして、白雪はゆでダコみたいに顔を真っ赤にして俯いた。

 それから話は白雪がキンジの部屋に住み込んでアリアとキンジがボディーガードをする方向に決まり、3人はその準備のためそそくさと部屋を出ていってしまい、残りはオレと綴だけとなった。

 オレもキンジ達と一緒に出ていけば良かったんだが、そこはまぁ、あれだ。空気を読んだ。

 

「話は大体わかったなぁ、猿飛。まぁ、当初の予定とは違った形にはなったが……」

 

「オレもキンジとアリアと協力して白雪のボディーガードをする……ってことなら、3人を帰す前に話しますよね?」

 

「聡いな。お前には2人とは別行動で星伽のボディーガードを頼む。はっきり言ってしまえば『保険』だ。神崎や遠山、あと護衛対象の星伽にもバラすなよ。もちろん単位はそれなりにやる」

 

 要するにアリアとキンジが表立って白雪のボディーガードをして、オレが裏でそれと感付かれないように2重でボディーガードをするということだ。

 そんなことをする理由はないに等しいが、今回は魔剣の影がちらついている。

 用心するに越したことはないといったところか。

 教務科の過保護ともとれるが、オレも楽観視はしたくない。

 一応魔剣を追ってる者として断るのもおかしな話だしな。

 そんなわけで今回は真面目にやるさ。

 それに目立たない役回りはオレも得意だ。

 今回はオレの本領発揮といったところか。

 

「了解です。ただ、白雪が危険だと判断した場合はアリア達と結託しますが、問題ないですよね?」

 

「お前も武偵だろ? 判断は任せる。はい、お話終了ぅ。帰ってよし」

 

 ……もう怒りすら湧いてこない。

 さっさと帰って小鳥の作ってくれてる美味しいご飯を食べて寝よう、そうしよう。

 思ったオレは、タバコを吸う綴を見ることなく部屋を出て、まっすぐ帰宅して待ちわびていた小鳥に少しだけ付き合ってやってから、すぐに夕飯を食べてその日は眠りに就いた。

 翌日、さっそくキンジの部屋に自分の荷物を運ぶという白雪の迅速すぎる行動に半ば呆れつつも、武藤が何故か無償でその荷物を軽トラで運んできたので、とりあえず武藤のキモい善意な行動は無視しつつ白雪に話しかけた。

 

「部屋に運ぶの手伝うぞ。どうせ暇だしな」

 

「えっ? あ、ありがとう猿飛く……あっキンちゃん!」

 

 オレにお礼を言い切る前に、男子寮のロビーから出てきたキンジを発見した白雪は、そこで笑顔満開。

 とりあえずお礼を言うなら最後まで言え。

 

「キン……遠山?」

 

 その様子を見た武藤が頭の上に?マークを浮かべながら呟く。

 なんだ、何も知らないで荷物運びを請け負ったのか武藤よ。

 

「あ、あのね武藤くん。私、今日からキンちゃ……遠山くんのお部屋に住むの」

 

「――き、キンジのっ?」

 

「言っておくが、仕事だからな。俺は白雪のボディーガードにさせられちまったんだよ。アリアのせいでな。言いふらすんじゃねーぞ」

 

 聞いた武藤は口をあんぐり。プッ、アホ面が。

 しかしまぁ、今のでなんとなく武藤が荷物運びを無償でやった理由がわかった。

 頑張れ武藤。オレは応援してるぞ。

 などと武藤にささやかなエールを贈りつつ、オレはキンジ達と一緒に軽トラから荷物を降ろして部屋に運んでいった。

 しかしだ。

 オレがわざわざこんな面倒なことを勧んで手伝うような行動をするように思うだろうか。

 答えはノー。

 普段のオレならせっせと働くキンジ達に「頑張れー」と横でずっと言うだけに留まるだろうな。

 嫌な奴と思いたければ思え。オレはそういう奴だ。

 ならどうして手伝いなんて面倒なことを自らやろうとするのか。

 それはオレなりのボディーガードの『準備』のため。要は仕込みだな。

 アリアやキンジ、そして本人にも気付かれずにボディーガードをするとなると、やはりそれなりに工夫が必要になってくる。

 例えば盗聴器や隠しカメラ。

 これらをキンジの部屋に仕掛けるにしても、ボディーガードはまず住居のセキュリティーを上げるため、事前に仕掛けておくと取り外されたりする。

 アリアなんかは特に顕著な例だな。

 事実、荷物を運んだキンジの部屋で、せっせと警戒網を張り巡らせているアリアがいた。

 というか何で部屋が戦場跡地みたいになってるんだ?

 人の住む場所ではなくなってるぞ。特にリビング。

 

「何やってんだ」

 

 そんなせっせと働くアリアに対して、キンジが問いかけると、アリアは手を動かしながら即答する。

 

「見れば分かるでしょ。この部屋を要塞化してるのよ」

 

「すんなよ!」

 

「なに驚いてるのよ、武偵のくせに。こんなのボディーガードの基礎中の基礎でしょ? アラームをいっぱい仕掛けて、依頼人に近づく敵を見つけられるようにしておくの。ちょうどいろいろぶっ壊れたし、やりやすいわ」

 

「ぶっ壊したんだろ」

 

「OK。あとは天窓ね」

 

 凄いスルースキルだ。さすがアリア。

 しかしそのちっさい身体じゃ天窓なんか届かないだろ。

 思ったオレは案の定四苦八苦するアリアの代わりに天窓に探知器をつけてやった。

 

「あ、ありがとう京夜。で、でも別に届かなかったわけじゃないんだからねッ!」

 

「はいはいわかってますよ……っと。ほい終了。次は何するんだ?」

 

「次は台所ね。というか、なんで京夜がいるのよ?」

 

「お手伝いであります」

 

「嘘ね」

 

 間もなく否定された。まぁそうなんですがね。

 しかしそんなキッパリ否定されると少しヘコむ。

 

「まぁ手伝い半分、用件半分ってなところだ。依頼先での土産があるんだが欲しいだろ?」

 

「物によるわよ」

 

 などと話してるうちにキンジと白雪が玄関で話をしていたが、そこは世間話だろうから気にしないでおくか。

 

「ちょっと待ってな。今オレの戦妹が持ってくるはずだからよ」

 

「あんた戦妹なんていたのね。少し意外だわ」

 

「オレも意外だわ」

 

「フフッ、なにそれ」

 

 なにやらアリアのツボに入ったらしい。面白かったか?

 そんな話をしながらアリアの手伝いをしていると、白雪も荒れ果てた部屋の掃除を開始。テキパキと作業を進めていく。

 ……嫁に欲しいな。

 世の男性諸君も良妻賢母には少なからず憧れるだろ?

 つまりオレの思考は正常なのだよ。そう思いたいがな。

――ピーンポーン。

 各々が作業に没頭する中、不意に鳴った部屋のチャイム。

 わざわざチャイムを鳴らすってことは、小鳥か。

 真っ先に対応したのは白雪。それに続く形でオレも玄関へと赴く。

 案の定訪問者は小鳥で、白雪は初対面の小鳥に少し戸惑ったが、オレが説明することでことなきを得、中へと招いた。

 

「は、はじめまして先輩方。わ、私は京夜先輩の戦妹の橘小鳥と申します。以後お見知りおきを!」

 

 小鳥は中に通されリビングに入るなり礼儀正しく正座し深々とお辞儀をしつつアリア達に自己紹介をした。律儀だな。

 

「小鳥。指示したものは持ってきたな?」

 

 自己紹介を済ませた小鳥に対して、オレはさっそく用件を済ませにかかる。

 

「はいッ! 指示通り部屋から持ってきました!」

 

 小鳥は言った後、一緒に持ってきた割と大きな荷物を広げた。

 

「あっ! そ、それは……!」

 

 荷物の中身を見たアリアは、突然表情が一変。デレッとしていた。

 

「アリアにはこれ、『ももまん10個入りパック』。好物だってキンジから聞いたから買ってみた」

 

 言いながらアリアに袋詰めにされた冷蔵保存用ももまんセットを手渡す。

 

「ありがとう京夜! ももまんももまんももまんももまん……」

 

 そんなに好きなのか、ももまん。

 

「キンジはこれな。『魔除けの御守り』」

 

「何でだよ! ってか魔除けの御守りっていうよりむしろ魔を招き寄せそうな外観なんだが!」

 

 次にキンジに魔除けの御守りを渡したのだが、まぁキンジが言うように一般的な御守りの形状ではあるが、その色合いがこの上なく暗く、『魔除け』と書かれた部分なんか血文字っぽい。

 我ながらベストチョイスだと思う。キンジもナイスツッコミだぜ。

 

「白雪にはこいつだ」

 

「えっ? 私にも?」

 

 残った物を白雪にプレゼント。

 それはクッションほどの大きさの白いライオンのマスコット人形――なんでもレオポンというらしい――で、昨日小鳥に渡したら抱き心地が最高らしい代物だ。

 本当は小鳥が欲しがったのだが、こいつはちょっとダメだ。

 こいつは『この部屋になくてはならない』。

 白雪は最初、貰うのを躊躇ったが、オレがリビングにでも置いといてくれと言うと、少し笑って貰ってくれた。

 

「レオポン! レオポンだわ!」

 

 そこでももまん天国から戻ってきたアリアが、巨大レオポンに気付き白雪から強奪。そして胸に抱え込んでしまった。

 

「……アリア。それは白雪への……」

 

「やあやあ、ボクはパパレオポンさ。息子よ、元気にしてたかい? 元気だったよ。パパは一段と大きいね」

 

 ……え……なんか1人人形劇が始まってしまったぞ。

 アリアが元々持っていた携帯ストラップの子レオポンも持ち出して始めた人形劇。もう勝手にしてくれ。

 

「満足したら白雪に返せよ? さて、用件も済んだし、オレ達は戻るか。行くぞこと……りぃ!?」

 

 そして自然な流れで自分の部屋に戻るため立ち上がろうとしたオレは、その襟首を後ろから掴まれ止められた。

 

「まだやることはあるんだから、最後まで手伝いなさい!」

 

 止めたのはアリア。

 そのまま人形劇を続けてくれればいいものを、オレが戻ると聞くと我に返ったらしい。

 そんなわけで結局、オレとなぜか小鳥まで、夜まで部屋の要塞化と片付けに付き合わされたのだった。


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