「京! 捉えたで!」
京都を早紀さんの運転する高速ヘリで出発してしばらく、ようやく見えてきた目的の新幹線を見つけた早紀さんが後ろに乗るオレに声をかけてきたので、オレも膝に乗せるレキを避けて目線をズラして前方を見ると、長く伸びた線路の先に、キンジ達が乗る新幹線が走っているのを確認できた。
「それでどないする? 京ならその子抱いたまま乗り移ることもできそうやけど」
「ギリギリまで並走しながら近寄ってくれればできる、はずです。やったことないですけど……」
「京夜さん。先頭車両の上にキンジさんがいます」
早紀さんとどうするかを決めてる最中、突然レキが前方を見ながらそう言うので、オレも目を凝らすが、遠くに何か影がある程度しかわからない。
しかしレキが言うのだから間違いないだろう。
「他に2人。昨夜私もスコープから確認したココという少女です」
「……2人?」
「2人です」
そう言うレキが至って普通なのでそうなんだろうが、ココが2人?
――ガコッ!
その事実に少し考えようとすると、いきなりレキが副座のハッチを開け放って身を乗り出すので、風を受けながらもそのレキの体を支える。
「そのまま支えていてくださると助かります」
次にそう言ってきたレキは、身を乗り出した状態でドラグノフを構えて、前方の先頭車両の上にある影に狙いを定めて、タァン! タァン! 2発の銃弾を放った。
それが何を狙ったかはオレにはわからないが、先頭車両の上の影が動くのが見えたので、おそらくココの体のどこかを撃ったのだろう。
「キンジさんを助けました。次は1人戦闘不能にします」
淡々と結果を述べるレキは続けてまた1発撃ってから身を引っ込めてオレの膝に戻る。
「アキレス腱を掠めるように撃ちました。1人はもう立てないでしょう」
「京、その子なにモンやの? 今度狙撃のコツ教わりたいわ」
「視力が6.0あれば努力次第ですね」
「アホか!」
レキの狙撃の腕を初めて生で見た早紀さんが驚きを隠せない声でそんなことを言ったので、冗談半分に答えてツッコませてからまた意識を集中させる。
「いま近付けるさかい、はよ乗り移りや! どうやらチンタラやっとる場合やないみたいやしな……」
ハッチが開いてることでバッサバサうるさい音に負けないように叫んだ早紀さんは、それで新幹線と並走しながら最後尾へと降下を始め、近付ける限界まで近付く。
だが、それを拒むように見えてきたのは、トンネル。
その上は山だから、早く乗り移らないとヘリが山に激突してしまう。ヤバイ!
オレはレキに首に腕を回すよう指示して左手を膝裏に回して支えて副座から身を乗り出し下を確認。
高さ的には2メートルない。ここまで近付ける早紀さんの操縦テクには驚かされるな。
そして空けた右腕の新作ミズチ、初披露目。
その中に備わるアンカーボールを取り出して新幹線の屋根に投げ下ろしてくっ付けて固定。
これで最悪落下は防げるはず。しかし固定してられるのはわずか8秒。
「早紀さん! ありがとうございました!!」
「はよ行き!」
そうして早紀さんに感謝を述べてから躊躇なく新幹線の最後尾に飛び降りたオレは、しっかりとレキを抱いたまま静かに着地。
アンカーボールのワイヤーも巻き取り完全に乗り移りに成功。怖かったぁ。
それからすぐに新幹線はトンネルへと突入して、離脱した早紀さんも無事にUターンで切り返したのが確認できたのでひと安心。
トンネルへと入ったことで気圧が変化し肺が破裂しそうな感覚を覚えるが、今は事件解決が優先。
「レキ、トンネルを抜けたら肩車で先頭車両まで突っ走る。両腕が空くから援護できるよな?」
「はい、問題ありません」
「決まりだ」
トンネルの天井にぶつからないように身を屈めた状態でレキとの打ち合わせを終えたオレは、本来なら絶対安静のレキの体を気遣ってどうするべきか考えて出した案で了承してくれたことにホッとしつつ、どこまでレキにやらせるかも迷う。
しかしキンジのところに行くまでは止まらないだろうレキに少し諦めもある。
なるようになるしかない、か。
そうしてトンネルを抜けて新幹線の先頭車両を改めて見ると、400メートルくらいあるな。
肩車した状態でこの距離を走り切れるか心配になったが、言った以上やるしかない。
それでちょっと抵抗はあったが、レキの股の間に頭を通して一気に立ち上がり、脇の下にレキの両足を挟んで固定して腿に手を添えて安定感を高める。
しかし軽いなコイツ。ちゃんと食うもの食ってるのか心配になる。
というか足柔らかいし頭の後ろが落ち着かない。
と、どうでもいい感想が浮かんだところで頭を切り替えて先頭車両目指して走り出したオレは、その上でドラグノフを軽く構えるレキが怖がってないかと思ったが、足も震えてないし、走り出してからは自分でバランスを取る挙動が伝わってきた。
時速300キロくらいの新幹線の屋根の上で肩車されながら走られるなんて、常人なら失神するって。
そんなレキの強心臓に感心しつつ、慎重に素早く先頭車両へ向けて歩を進めていく。
先頭に近付いていくと、オレの目でもキンジとココの区別がつくようになり、先ほどレキが撃ったココかはわからないが、車両の中央に立つキンジと、車両前方にいるココが見えて、もう1人のココの姿は確認できない。
「レキ、もう1人いたんだよな? まだいるか?」
「どうやらこちらの狙撃を逃れるために死角へ逃げたようです。それより射程圏外とはいえ威嚇射撃をされていますので、無力化します」
走りながら視力が優れるレキに現状を尋ねると、抑揚のない言葉でそう返してきてドラグノフを構え、威嚇射撃をしているココの銃を撃ち手放させることに成功。銃はどうやら線路に落ちたらしい。
これで撃たれる心配はなくなったか?
「もう1人も先頭の方に身を隠しました。おそらくまだ武器を隠し持っています。こちらが近付いたところを迎撃するつもりでしょう」
「オレは新幹線の上で銃弾を避けるなんて離れ業出来ないぞ。だからキンジのフォローはレキに任せてオレは中に行く。現状がさっぱりだしな。だけどレキも無理はするなよ」
「約束はできませんが、死なないようには努力します」
……それでもいいか。努力してくれるなら。
1両がだいたい25メートルの車両を14両分。距離にして350メートルは走り抜けた地点。
キンジのいる先頭車両まであと1両と迫ったところで、やっとキンジの表情まで見えるようになったオレは、そのこれ以上こっちに来るな。
という必死な表情を読み取ったが、おそらくレキを心配してだろう?
だがオレが止まったって、レキは止まらないさ。だから悪いな、このまま行かせてもらう。
そうして先頭から2両目の中央くらいまで歩を進めたオレだったが、ここでまさかの事態。
1両目と2両目を繋ぐ接続部分の辺りから、シュバッ! とまばゆい緋色の光が
つまり接続部分が切断され、先頭車両と切り離されたのだ。
「あの光……それにこんな離れ業出来るのは白雪しかいないな……」
キンジと一緒に乗っていた白雪の顔を思い出しつつ、これがキンジの策であろうことも理解したオレは、愚痴っても仕方ないと諦め、レキの腿から手を離してミズチの収納から両端に分銅のついたワイヤーを2つ取り出して2両目の先頭まで来ると、2本のワイヤーを離れていく先頭車両の巻き付きそうな場所に巻き付けて、2両目と繋ぐと、意を決してそれを実行。
綱渡りのように2本のワイヤーの上を駆け抜けた。
「猿飛くん!?」
2両目の接続部分から、白雪の声が聞こえてきたが、今は無視。後ろなんて見てたら死ぬ。
「これは……死ぬっての!」
ワイヤーの長さはまだたわむほど余裕があるが、これ以上車両間の距離が開けばプツンと容易く切れるだろう。急げ!
そして世界広しといえど、時速300キロオーバーの場所で命綱なしでワイヤー渡りした奴はいないだろうな。しかも肩車までしてるし。
そしてワイヤー渡りの間に、レキの足を脇から外して左の手の平に両足を乗せて、右手は再びアンカーボールを準備。
足場のワイヤーはあと3秒くらいで切れそうだ。
「行け! レキ!」
それを見越してオレは伸びきってしまいそうなワイヤーに力を込めて左手を上に持ち上げて、レキを先頭車両の屋根に向かって投げ飛ばす。レキもすぐに察して、腕が伸びきったタイミングでジャンプした。
――プチンッ!
それとほぼ同時に足場だったワイヤーが切れて、オレは微妙に先頭車両に手の届かない位置で落下するが、それより早くアンカーボールを車両の上部に投げつけて速攻でモーターを回転させて巻き取り、地面に足が付く10センチ手前で車両に手が届き難を逃れた。
それに安堵しつつ後ろの遠退いていく車両を見ると、白雪がホッと息を吐いているのが見えた。
まぁ、これで白雪の安全は確保だな。風雪ちゃんとの約束は守れた。
オレの意図ではなかったが。
「あんたも無茶するわね。あたし、あんな芸当生まれて初めて見たわよ?」
後ろの車両を見ていたオレは、不意に後ろ。先頭車両の切断部分から声がしたので振り返ると、そこには腰に手を当てたアリアが呆れ顔で立っていた。
何で乗ってるんだ? 別にいいけど。
「おやおや、これはこれはアリアさんではないですか。お久しぶりですね」
「ああ、そういえば最近会ってなかったわね。って、今はそんなことどうでもいいの! あんたなんでレキと一緒に……」
「いやね、頑固なレキさんが行く行く利かないから保護者として同伴しないとって思いまして」
「そーおーじゃーなーくーてー!」
「オレに何ができるかはわからないけどさ、助けに来た。それで答えになるか?」
冗談を言ってる場合でもなかったのだが、オレも命がけの綱渡りしたあとでクールダウンしたかったのでアリアで少し遊んだが、冗談の後の言葉で「ふ、ふーん。そう」などと言って少し嬉しそうにしたのが表情からわかった。何で喜ぶ?
そのあとアリアはオレと場所を入れ替わって、うんしょうんしょと上に登ってキンジとレキの援護に行ったので、オレはとりあえず車両内部へと入ってみる。
「おおー! キョーやんの登場だー! キャー! 理子の王子様ー!」
「…………さて、他に乗ってる人は運転手だけか?」
なんだか入ってすぐの座席にオレの悪友らしき奴が座っていたが、それは見なかったことにして進もうとすると、ガシッ! と座ったままの理子に腕を掴まれて捕獲された。
いやな、いつだかにアリアと一緒に呉に行くとかなんとか言ってたから、そのアリアが乗ってるならもしかしてとか思いはしたけど、本当に乗ってるとは思わなかった。
乗ってても絶対後ろの車両に避難してると思ってたし。
「キョーやん! 緊急事態であります!」
「なるほど、わかった。だから離せ。オレも暇じゃない」
「わかってないよ! 絶対わかってないよキョーやん! ホントに緊急事態なんだよ!」
いや、ホントに緊急事態ならあなた男口調になるでしょ。だから手を離せ。
しかし何で理子は座席から『立ち上がらない』んだ?
「お手洗いに行きたいの! これ死活問題なり!」
「……お前、そこから『動けない』のか?」
「運転室の前の洗面室。そこにツァオ・ツァオの気体爆弾『
「確かに漏電して誤爆されでもしたら問題だな」
「理子もう限界なのー! 助けてキョーやん!」
なるほどな。だから真っ先に逃げる性格の理子がここにいるわけか。
ツァオ・ツァオってのは確か幸姉も言ってたな。おそらく上にいるココのどっちかだろう。
状況説明だけは真面目に言った理子が再びいつもの調子でそわそわし出したので、これは本気でトイレに行かせないとヤバイ気がしてきた。
よく見れば近くにジュースの空パックがたくさん落ちてるが、どんだけ飲んでんだコイツは……
「理子。サバイバルでは痕跡を残さないために自分の排泄物をペットボトルとか袋に入れてやり過ごすんだが……」
苦肉の策として座席に備えてあった袋を持ち出しながら言ってはみる。
「キョーやん……そういう趣味があったんだね。ううん、理子は気にしないから大丈夫だよ。それを含めてキョーやんのことを愛せるから!」
よし大丈夫そうだ。
たとえそうでなくても漏らしたら自分も死ぬんだから膀胱炎になってでも耐えるだろう。
オレはそう判断し理子を突破して先頭の運転席まで移動。
そのついでに爆泡とかいう爆弾がある洗面室の窓を覗くと、確かにドアは開かないし、よく見れば蛇口やコンセントなどの酸素に触れそうな穴は塞がれていて、小型の爆弾が窓に設置されていた。
気体爆弾とか言ったか。目視じゃわからないが、この密封具合ならこの空間にすでに満たされているのだろう。
爆発による規模は、現物を見てないからなんとも言えないが、たぶん桁外れのものと考えていいだろうな。
それを確認してから運転室に入ると、そこにはアリアと理子と一緒に呉に行っていた武藤が、運転席に着いて操縦をしていた。
コイツも運がないな。キンジといると事件に巻き込まれるからな。
「おお猿飛。キンジが喚いてたぜ? 何で来たんだってよ」
「お呼びじゃなかったってか? 悪いね、オレも事情があったってことで許せ」
まぁ、オレが来たこと自体にではなく、何でレキを連れてきたのかってことだろうが、それで助かってんだから文句は言うな。
「状況はだいたい理解したが、この新幹線は減速すると爆発するのか?」
「それより質が悪いぜ。3分おきに10キロ加速しないと爆発しやがる。もうすぐ機体の速度限界に達するし終点も近いから、ヤバイぜ?」
そう話す武藤は笑ってみせたが、そんな状況で運転手をやらされて狂わない辺りはさすがと言わざるを得ないな。
思いつつ武藤を見ると、耳にインカムらしきものを発見し、それをちょっと拝借。これでキンジ達と会話ができるか。
それでインカムを耳につけてると、突然運転室に影ができ、トンネルにでも入ったかと思うがそうではなく、新幹線の上をヘリが並走している。その影響で暗くなったのだ。
そしてそのヘリを、オレも知る顔の人物が操縦していた。
「ここにも分身の術を使う奴が……」
ココである。
あのヘリがこれに乗ってるココ2人の救助用だとすると、ココは3人いることになる。
もうどれがオレの知るココなのかさっぱりわからん。
そしてヘリに乗っていたココはどうやら上に飛び乗ってきたらしい。そんな音がしたしな。
「キンジ、アリア。援護するか?」
『運転室からどうやってだ?』
『任せるわ。京夜を信頼してるから』
「突然出てきても撃ったりするなよ?」
上の状況はイマイチわからないが、ここ最近のアリアとレキの仲の悪さは噂になっていたので、おそらくこの状況下でもギクシャクしてるだろうことはアリアとレキの性格から予想できる。
原因はキンジらしいが、女で問題抱えるのがキンジだし、そこも納得してる。
そこでオレはここにいてもやれることがないので、キンジとアリアにそう告げてから武藤に車両のドアを開けるように頼み、その開け放たれた先頭側のドアの前に移動して理子から借りた手鏡を外に伸ばして、その反射する鏡面を利用してキンジ達のだいたいの位置を確認。
角度的な問題で、真上辺りにいるココは確認できなかったが、そこは何とかしよう。
そしてドアの上部の手がかけられそうな部分を見つけて軽く懸垂をして安全を確認――ドアが開いてる時点で安全ではないが――し、インカムから聞こえる会話を頼りに機をうかがう。
『アリア、レキ。俺は信じる。2人が、心の奥では……お互いを信じてることを信じてる』
インカムから聞こえたキンジの声から、2人がやはりギクシャクしてたことを理解し冷や汗が流れるが、どうやら何かするみたいだな。
オレは手鏡を突き出しながら、鏡面からキンジ達を観察。
『――さぁ、仲直りの握手だ』
暗くて鏡面からでは細かな動作は見えないが、そう言ったキンジは何かを真上に投げて、両隣にいたアリアとレキに何かして屈み、途端、アリアとレキの位置がぐるん!
と入れ替わって、先頭の方にレキ。後ろの方にアリアとポジションを変え、次には上で数発の発砲音がして、真上辺りから「
思うが早いか、手鏡を車内に軽く放って両手でドア上部を掴むと、逆上がりの要領で車両の上に足からのうつ伏せのスライディングみたいな感じで滑るように上がり速攻で立ち上がると、目の前には車両先頭の斜面から落ちそうになっていたココがいた。
「キョーヤ!」
「お前はどのココなのかね?」
そんな問いに答える前に、落ちそうだったココはその民族衣装の袖から桃色のスモークを出して煙幕を張り、ばっ! と新幹線から飛び降りて、パラシュートのようなものであっという間に後方へと流れていった。
捕まるくらいならって感じか。というかオレなんにもしてないな。
自分の活躍のなさに苦笑しつつ、近寄ってきたレキと一緒にココが乗っていた並走している無人ヘリを見ていたのだが、あれどうやって動いてるんだろうな。
と思っていたら、まもなく最高速に達しようとする新幹線についていけなくなったのか、徐々に後ろへと後退していき自動で着陸していった。
そういや幸姉がツァオ・ツァオは天才技師とか言ってたから、あれにも凄い改造がしてあったんだろう。
そして流れるように車両後方を見ると、アリアがガウガウしながら残り2人のココをワイヤーで締め上げ終わったところだった。
これで犯人は確保だな。残すは……コイツだ。
考えながら足場の屋根をコンコンと足の爪先で叩いてから、ひと仕事終えたキンジと目を合わせて作戦会議開始。
と思ったのだが、その前に仲直りしたアリアとレキが向き合った。
「……かっ、勘違いしないことね、レキ。さっきのは……体が勝手に動いただけよっ」
「――私も、体が勝手に動いただけです」
「お前らまだそんなこと言うのかよ。素直じゃないなぁ」
「「京夜(さん)は黙って(ください)なさい」」
ほら、仲良しじゃないか。キンジもそれには苦笑い。
「
「ココ達の負け違うヨ。爆泡でみんな吹っ飛べ! バーカバーカバーカ!」
なんだか気を抜きかけのオレ達を見て、縛られたココ2人が現実に戻す言葉で罵倒してきたので、オレはそれぞれの顔を睨んでやるが、怯むことなくバカバカ言ってくる。
ガキか! そういやガキだったな。
「どうやらお前ら2人とも、オレにプロポーズしてきたココじゃないな。だとするとさっきのがオレの知ってるココか」
その反応からオレの知るココがさっき離脱したココだとわかったオレは、オレの言葉で目を丸くするキンジとアリアをよそ目に改めてコイツらの京都での不可思議な行動の正体を暴く。
比叡山での高速移動は、それぞれのココが行動したことにより可能となったもの。容姿がそっくりの3姉妹ならではの戦術と言ったところか。
目撃情報を集めれば瞬間移動にも捉えられてしまうわけだ。
3姉妹だなんて誰が予想できる。そんな常識破りな戦術がオレ達を混乱させた。見事だった。
「お前達戦うしか能無い。ココ達とは違うネ」
「キンチお前、ドジでグズでノロマな亀ネ。キョーヤはバカだが、あまり言うと
狙姐?
ああ、逃げたココか。オレそんなに好かれてるのかよ。
何でだ? あの子に特別なにかした覚えがないんだが……
「バカで結構。バカなくらいでないと武偵なんかやってられないからな」
「京夜! それだとあたしまでバカみたいじゃない!」
「失礼ですね、京夜さん」
罵倒に対して罵倒じゃなくなる言葉で返したら、味方から文句が飛んできたのでオレはもう黙る。なんなんだお前ら。
何故か対応だけで疲れてしまったオレは、1つ大きな息を吐いてから、この新幹線に近付いてくるもう1つの新幹線を後方に発見した。
おいおい、キンジさん。手回しが良すぎませんか?
それを見て何故か余裕を見せていたキンジを見ると、オレの視線の意味に気付いたキンジは、それで笑って見せてきたのだった。
「そうだな。俺は1人じゃ何もできない。でも、俺『達』は何でもできる」