7月17日。土曜日。
突然のバンシーの訪問からアストゥリアス州に行くこととなったオレは、早急に出来る限りの準備を進めてから16日の夜に空港に近いアビレスに到着しそこで1泊。
翌朝の今日は声をかけた仲間達の進捗を確認してから、ビオドの町に近い港湾都市ヒホンに移動。
今月はヒホンが奉納品をクエレブレに献上する月らしく、それを翌日に控えた今はそれらしい動きや話を見聞きしていた。
改めてここアストゥリアス州のドラゴン信仰の根深さを認識しながら、決戦の前にクエレブレに会いたいと思うものの、さすがにこの時期にクエレブレのところへ船で近づくことは出来ないと漁師達に言われて足止めを食らう。
そりゃ自分がクエレブレの住処付近に近寄ったせいで、300年も続いた海の安寧がなくなるかもしれないとあっては、恐ろしくて二の足を踏む。
オレもここで暮らしてたら絶対にやらん。アストゥリアス州に住む人全員を敵に回すってことだからな。生きていけなくなるに等しい。
「そうなると……だ」
そんな無茶なお願いはできないし、船を借りるってのも後々に貸したことを咎められたりがあるかもだから避けたいところ。
ヒホンはクエレブレの住むエルボサ島まで少し遠いし、ヒホンよりずっと近いアビレスからでも直線距離で10kmほどは離れてる。
最短で向かうならやはりビオドの北端、カボ・ペーニャス灯台付近から行くべきか。あそこからなら1km程度の海上移動で済む。
問題はその移動を現地民に目撃されないようにしなきゃいけないのと、手漕ぎボートにせよ準備には街の人間の協力が必要になることで、それも無理な相談ということだ。最悪、街から追い出されるぞ。
あまり街をうろついてNに捕捉されるのもいただけない……というのは動きを読まれてる時点で考えないことにして、朝の進捗報告からもうすぐ合流になる百地さんと待ち合わせ。
資金面で余裕がないオレとは違って組織で動いている分、いくらか都合のつく百地さんなら何とかしてくれると信じてオープンテラスのある飲食店で昼食ついでに待つと、特技かはともかくあまりに自然と街並みに溶け込む百地さんを視界に捉える。
仕事柄スーツなどを着る機会が多そうな百地さんだが、今回はかなりラフで年相応な服装に徹底している。
観光客でもビジネスマンでもなく、この街に住む人に紛れるような自然体な初老の男性を演じる百地さんは、アイコンタクトでオレとどう接するかを示し合わせる。アドリブだが、どうにかなるだろ。
話だけなら1分もあれば十分なことから、必要な情報だけを聞き、百地さんに伝えることをリストアップ。
よし来いと自然体で昼食にありついていたら、百地さんはスペイン語でオレと誰かを間違えるようなことを言いながら向かいの席に座ってきて、オレは心底不思議そうな顔で応対。
そこからペラペラとスペイン語を捲し立てる百地さんにさらに困惑しながら、とりあえず英語でスペイン語がわからない旨を伝える演技をする。
どこで誰が見てるかわからない以上、小声だろうと直接の会話は控えたいと思っていたオレは、話しながらテーブル下で百地さんの足を踏んで和文モールス。
角度的にほぼ1方向からしか見えないのでそこへの警戒だけして、早急に海を移動できる小型の乗り物を手配してほしいことを伝え、百地さんも頃合いを見て必要な情報を拡散すると報告してから、乗り物に関しては午後6時に再度落ち合うタイミングで用意しておくと返答。
さすがICPO。頼りになるぜ。
最後に落ち合う場所だけ伝えてから、表上の会話で人違いをしていた旨の謝罪を述べた百地さんはそそくさと席を立ってどこかへと行ってしまい、やれやれな顔で見送ったオレもほどなくして店をあとにして、他の仲間の進捗を確認していった。
期間的にもギリギリなタイミングで、集められたメンバーはオレと百地さんを含めてもわずか4人となった。
あとは百地さんの情報拡散でどうなるかくらいで、基本的にはその4人でシャナの逮捕までいく算段を立てなきゃならないわけだが、正直厳しい。
何せ集まった面子の役割が丸被りで、前線なんてオレ1人だけという、隠密職を矢面に立たせる必要があるちぐはぐ具合。やってられるか!
……などという文句もせっかく応えてくれたメンバーに言えるわけもないから進めるしかなく、そこはオレが腹を括るしかない。はぁ……
「で、だ」
とにかく作戦はもう始まってるので止まれないなら突き進むのみと約束の時間にアビレスへと戻り、待ち合わせの本屋へと立ち寄って百地さんを待とうとすると、その百地さんは先に本屋に入って出てくるところでオレとすれ違い。
その際に手配してくれた乗り物のキーと何かを書かれたメモを手早く渡され、オレも必要であろう情報を書いたメモを百地さんへと渡し、それらの交換を1秒とかけずに終了させる。
初めて会った時も思ったが、百地さんはデスクワーク中心のICPOにいるにしては、この手の技術が並ではないから、経歴を洗えば何か出てきそうな気がする。
ただ全面的な味方である百地さんを疑うような行為に今は意味が全くないから、個人的な興味は横に置いておきつつ、少しだけ本屋を物色してから適当な移動をして渡されたメモを確認。
メモには用意した乗り物の置き場所と、明日に備えてオレが集めた2人と顔合わせをしておくことが書かれていたので、Nに監視されてるのがオレだけを前提にして裏で動いてもらう分には問題ないかとメモを燃やして廃棄。
日が完全に落ち切る前にどんな乗り物かを確認すべく指定されたアビレスの北東の外れに行き、舗装道路からあえて外したところに放置されてある4輪バギーを発見。
近寄ってキーを挿し込めばピッタリ合ったのでこれで間違いないが、1人乗り用にしても少しゴツいな。
いや、水陸両用なら浮きに使う部分は必要だから多少の肥大化は仕方ないのか。あとはエンジン音だが……
闇夜に紛れて移動するにしても周囲に音を撒き散らすようでは意味がないから、しっかりと確認するようにキーを挿し込みエンジンをかけると、エンジンの特徴的な音は出るにしてもそこまでうるさくない。
これなら100mも離れれば耳を澄ますでもしない限りは周囲の音に紛れてくれそうだ。
そうと決まったら燃料がほぼ満タンなのを確認して、急いでビオドの北端、カボ・ペーニャス灯台のある海岸を目指していった。
ビオドも明日の奉納に備えた動きが夜でも見受けられたから、そちらに気取られないように中心部は避けて灯台近くまで行き、そこからは波の音と闇夜に紛れてバギーで海岸から海上へと乗り出し、クエレブレのいるエルボサ島の洞窟にまっすぐ向かう。
クエレブレのおかげで夜の海でも危険な生物がいないとわかってると安心感が違うな。ライトすら点けずに進めるのはクエレブレ様々だ。
本来なら想像以上に怖いはずの夜の海の上でも月明かりだけで障害もなくすいすいと進むことができたオレは、クエレブレの住む洞窟の前でバギーを降り、ここまで来れば安心だと実体化したバンシーと共に洞窟の奥へ入って、そこで身を丸めて鎮座するクエレブレと対峙。
「何用だ、人間」
「シャナとぶつかる前に少しだけ話を聞きたくてな。話したくないならそれでもいい。尋ねるだけ尋ねさせてくれ」
言葉を発するだけで威圧感たっぷりなクエレブレの迫力は身を丸めた状態だろうと関係なく凄みがあり、本能的に後退しそうになる。怖いわぁ……
だが今は敵ではないとわかっているから気を強く持って踏み留まり、わざわざここに来た理由を述べる。
シャナとの対決を明日に控えたこのタイミングでわざわざ来たなら、つまらないことを聞きに来たわけではないと察してくれたっぽいクエレブレは、質問を了承するような沈黙でオレを受け入れる。
「明日、オレはシャナをNから引き剥がしてクエレブレの元に戻す。それは依頼された通りに遂行する。だがそのためにオレはシャナについてもう少し知るべきだと思ったんだ。シャナがクエレブレと決別……いや、クエレブレの元を離れてまでNの目指す世界を望むのか。それを理解せずにぶつかったら、オレは力で強引に引き剥がすしかなくなってしまう」
「……それではダメなのか」
「クエレブレもわかってるだろ。その方法でシャナを取り戻したところで、シャナはきっとまたNにすがる。シャナを本当の意味で取り戻すなら、シャナの心もNから引き剥がさなきゃならない。だから教えてくれ。クエレブレとシャナ。2人が過ごした何百年という時間の、かけがえのない思い出を。そこにシャナを取り戻すヒントがあるかもしれない」
オレはクエレブレからシャナを取り戻す依頼を受ける際、シャナの名前と超能力を用いない素顔の特徴などをクエレブレからいくつか聞いていた。
だから上海で再会した時にその名を呼ぶことでクエレブレとの繋がりをシャナに認識させ、あわよくば動揺してくれるかと思った。
しかし実際にはオレがクエレブレのために動いていることを知ってもシャナは揺るがずにNに身を置き続けている。
その意思の強さ。想いが全てクエレブレのためだと言うなら、きっと何かのきっかけがあったはずなんだ。
それを紐解くにはシャナと共に生きてきたクエレブレから過去を聞かなければならないとあって、ギリギリのタイミングだろうとここに来なければならなかった。
クエレブレもシャナを大切に思うからこそオレに依頼をしてくれたわけで、真の意味でシャナを取り戻すためと聞いて少しだけ思考したクエレブレは、自分達の過去話とあってか、決して張るような声色ではなく静かに、しかししっかりと聞き取れる調子でその出会いから話し始めた。
「……シャナと出会ったのは今から約400年ほど前になる。当時の俺は人間など下等な生物と蔑み、人間中心の世の中に悪態をつきながら、決して人間に見られることなくこの周辺の海を定期的に食い荒らしていた。その都度、人間は俺の行いを『龍神様の怒り』だなどと言って騒ぎ、畏れ、そして愚かで馬鹿なことをしていた」
「愚かで馬鹿なこと?」
「龍神の怒りを静めるために、人間を1人、生け贄として海に放り込んでいたのだ。まったく以て理解に苦しむが、俺の食事は1度で大量に摂取し間隔を空けるからな。人間達からすればそれで怒りが治まると錯覚していたのだ。だから当時、ひと月の間隔で人間が海へと放り込まれていた」
「カカッ、人間ってのは存在を認知してもいねーのに神様だのなんだのを信じて時々、突飛なことをするよな」
「自然への恐怖とか説明できない事象に対して、たとえ偶像でも『誰かのせい』にすることで納得しようとしてたんだよ。そうしなきゃ成す術のない事柄に人間ってのは簡単に心が壊れるからな」
そうして始まった話の冒頭は、まだクエレブレが神格化されていない頃の生活と周囲の環境について。
その気性からしてクエレブレはアストゥリアス州に身を置き始めたのが400年ほど前なのだろうことがうかがえ、住みにくくなった土地を転々としていたっぽい推測が立つ。
そんな災害みたいなクエレブレに対しての人間の行動にケタケタと笑うバンシーと理解できないクエレブレに、それらしい理由で少しくらいは納得がいくようにして、2人もそうなのかといった具合の雰囲気を出した。
「シャナは……そんな人間の愚かな行為の犠牲者だった。ただの偶然だったのだろうが、ある時この洞窟にシャナは流れ着いた。季節は冬。極寒の海を流れてきたシャナは虫の息だった。今にも消え入りそうな命の灯火を見て俺が抱いた感情は、哀れみと静かな怒り。こんなにも弱い生物が何故、今の世界を掌握しているのか。なぜ俺がこんな身を隠して生きねばならないのかという、な」
「……クエレブレも、タイミング次第ではNに身を置いてたかもしれなかったのか」
「カカッ、その頃のコイツは俺達の界隈じゃ悪名だけが轟いてたからな。なぁ、大食漢?」
「元の体躯と容量が違うだろう。貴様にとって食事は『他者の命』なのだろうが、俺には人間と同じように胃袋が存在する。食べねばいずれ飢えて死ぬ」
その人間の愚かな行為の犠牲者がシャナだったと話すクエレブレは、その頃にNの思想に賛同するような意思を持っていたことも話す。
それが何故、今のように穏やかとも言える生き方を選んだのか興味が深まるが、荒れていたという頃のクエレブレをバンシーが茶化して話が逸れかけてしまう。
その中でささやかな反撃のようにバンシーの食事に触れたクエレブレに、一瞬だが表情を歪めたバンシーをオレは見逃さなかった。
死神バンシーが何をエネルギーとして生き長らえているか、その辺は曖昧にされていたが、他人の命ときたか。
ただこれは本人が話さないなら触れるべきではないと無言で通し、バンシーもさらに茶化して自分のことを話されるのを警戒したか、自ら脱線した話を戻しクエレブレに主導権を渡した。
「……きっかけはそんな感情をシャナにぶつけ、ささやかでも気晴らしをしたかっただけだった。死にかけて意識もほとんどなかったシャナに俺は自らの血を少量飲ませてやった」
「ドラゴンの血を? それは意味が……あったから、今もシャナが生きてるのか」
「俺のような種には……稀に他種族に対して劇薬となる作用を促す要素がある。俺の場合はその血を体内に取り込ませることで、肉体の成長と老化を著しく遅らせる代わりに、人としての機能の大部分を失わせる。今のシャナは寒さや暑さといった感覚も、空腹や睡眠欲といったものも消失して、それらによる死因も影響を受けなくなっている」
「それでシャナは助かったのか」
『いや、助かるなどと思っていなかった』
「京夜、クエレブレの血は人間の身体を根本から作り変える。その時に生じる痛みは想像を絶し、万全の状態の人間が取り込んだところでほぼ100%の人間がそれに耐えられず死に至るぞ。それを死にかけてたシャナが取り込めるはずもなかったんだ」
「確率にして万が一といったほどだったはずなのだ。俺はもがき苦しむ人間の断末魔を聞ければそれでいいと思っていた。その後にせめてもの情けで死体を食ってやろうと、そんな腹積もりでいたのだが……シャナは最初こそ身体が作り変わる激痛に悲声をあげた。しかしすぐにその悲声も発しなくなり、そしてシャナはその痛みを乗り越えて生き残った。まったく、今にしても奇跡以外の何物でもなかった」
瀕死のシャナがどうやって生き残ったのかは割と衝撃を含む内容となったが、クエレブレとバンシーが言うように助かる可能性なんてないに等しかったのなら、シャナからすればクエレブレは救いの神。命の恩人ってことになる。
クエレブレも奇跡だなんだと話しながらも、昔はどうか知らないが今はそれが嬉しかったことのように声色を明るくしていた。
「結果として助かったシャナはその後はすぐに気絶し、翌朝に目覚めた時に初めて俺を認識したのだが、ここでもシャナは予想外の反応をした。普通なら目の前にドラゴンなどいようものなら恐怖のあまり失神しそうなものを、シャナはどう処理するか困っていた俺を見て一言『美しい』と言った。こんな威圧的な体躯の俺を見てだぞ? 逆に俺が驚かされたよ。どうにもそれで食う気も失せてしまった俺は、人としては死に生まれ変わったシャナとしばらくの間、一緒に過ごすことにした」
「おっ? ようやく惚気話が始まるか。カカッ」
「……シャナは俺に献身的だった。何もする必要はないと言っても自分で考えて俺のためにと勝手に世話を焼き、鬱陶しいと威嚇しても萎縮せずに次の世話を焼く。最初はそれが煩わしくて追い出してしまおうと何度も思ったが、たとえ理由が何であれ俺が助けてしまったシャナを人の世に戻し、その異常性で排除される未来は残酷に思えてしまった。だから極力無視して過ごそうと徹したのだ。しかしまぁ、シャナはめげない女だった。反応がなくなった俺にさえその好意が薄れることはなく、毎日毎日、他愛ないことを尋ねてきたり自分の話をしたり。そんなことを目の前で繰り返された俺はついに折れてシャナに付き合うようになった。話すようになった。そして気づけば共に笑うようになった。何百年かぶりに味わった心地よい感覚だった」
シャナは、クエレブレの孤独な心を共に過ごすことで救っていたんだな。
そしてシャナにとってクエレブレは人に見放されて孤独になったところを救ったヒーロー。或いは神と美化していたのかもしれない。
始めはどちらも好意があったわけではないのだろう。でもクエレブレとシャナは共に過ごすことでその絆を深めて、いつしか大切に思うようになった。種族の垣根を越えて。
理子とかが聞いたらきっと「純愛とかロマンチックー」なんて言うのかね。
「100年ほどの時を過ごし、シャナも俺に対して意見をぶつけるようになった頃だ。何の悪戯か、またこの洞窟に人間が流れ着いた。さすがにその人間は流れ着いた段階で息絶えていたが、それを見たシャナはこれ以上の生け贄を良しとしなかったか、俺に提案をしてきた。それが……」
「今の奉納と守護の関係だな?」
「シャナは自らを龍神の巫女と名乗って人里に舞い降り、俺の代弁として奉納品を納めるように言って、それが実際に納められたことで俺もアストゥリアスの海に守護をもたらした。そうして俺とシャナは今の平穏を得たのだ。シャナがいなければ、俺はまだ別の地に移り天災として暴れていたのだろうな」
「シャナが今の平穏を、か。だったら何でそれを崩すようなNに加担を……いや、シャナが元々人間だったなら、それは業。本能なのかもな」
「俺にとってより良い環境。それがシャナにとって俺の考えの上を行ってしまったのだ。俺が今のままで良いと考えを改めた矢先に、シャナが世界に対して憤りを覚え、そうであって欲しいと願ったところへNが来てしまった」
人間は楽を選ぶ生き物だ。
生活が豊かになる。楽になるならそれに越したことはないし、その可能性があるなら後の楽を取るために今の苦労を買って出る者もいる。
シャナはまさにそれであり、クエレブレが今よりも生きやすい世界になるならとNに身を寄せた。
全ての動機がクエレブレにあるのは話からも見えているが、シャナ本人がまだ何かを語ったわけではないのは確か。そこはまず会って確かめなきゃならないな。
そしてもう1つ。
「……どうしてクエレブレは、今の生活で良いと思うようになったんだ? そこが今回のすれ違いの肝な気がする」
「……俺はシャナに対して自分の本心というのを語ったことがない。それは……」
「お前がどうしようもなく照れ屋だからだろう。のう? カカッ」
世界へ憎しみに近い感情を抱いていたクエレブレが、食事こそ安定していても今もその身を隠さなきゃならない世界を許容し続けられるようになったきっかけは何だったのかを尋ねてみる。
するとクエレブレは今までの威圧的な雰囲気を一気に霧散させて、人間で言うところの恥じらいを見せ、すかさずバンシーが茶化していた。
そんなバンシーに反撃もできないほど図星を突かれたらしいクエレブレは、ぐぬぬといった雰囲気のまま言いかけた言葉を発して、それを聞いたオレは今回のシャナの説得が一気に現実味を帯びてきたことにニヤリとしてしまった。
──これは光明ってやつが見えたかもしれないな。