緋弾のアリア~影の武偵~   作:ダブルマジック

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400年の愛編
Slash55


 

 7月15日。木曜日。

 無人島サバイバルから生還して、その傷もほぼほぼ完治した今日この頃。

 医者からも余程のことがなければ大丈夫だと太鼓判を押してくれて、武偵病院をあとにした放課後。

 療養中は戦闘やらに発展しそうな依頼はせずに探偵科のような仕事で捜索系をこなして小遣い稼ぎをしてきたが、ようやく制限なく動ける。

 焦らずに療養に努めたおかげで、調子もこのところ安定して良好。今からでも少しハードな依頼をこなせるかもしれない。やらないけど。

 そんな込み上げてきたやる気は明日から出していこうとまっすぐに帰宅して、装備の整備をしてさっさと寝ようかなぁとリビングに入ったら、

 

「よう京夜。ちょっとぶりぃ」

 

「……何でいるんだよ」

 

 なんか、いた。しかもここにいるべきじゃない奴。

 脱色したような白髪に深紅の瞳をした見た目は完全に幼女の姿。しかし中身は5000歳を越えるババ……死神バンシーだ。

 

「愛しの京夜に会いに来たんだよ? って、言っとけば可愛いか? ガハハッ」

 

「可愛くないし嬉しくもなんともない。遊びに来たとか言ったら殴ってたところだ」

 

 我が物顔でソファーでくつろぐこいつは、現在進行形でNにその身を狙われている関係で、先月にアストゥリアス州にいるドラゴン、クエレブレの元へと身を隠していた。

 Nの視点では今、バンシーは土御門陽陰が捕らえていることになってるが、いつどこでそれが嘘の情報とバレるかわからないから繋がりを絶ってたってのに、自分から来るとかバカなの? 死ぬの?

 そんな状況だったから呑気にふざけるバンシーに軽く殺意すら湧いて拳を握ってしまったが、まさか5000歳のババ……人生の先輩が何の用もなく危険を冒して接触してくるかと疑問が生じて落ち着く。

 ただおふざけを継続されても面倒臭いから、あからさまに「真面目にやらないと怒るぞ」と表情に出してやり、空気くらいはさすがに読めるバンシーもおふざけはそれだけでソファーから飛び起きて空中であぐらをかく姿勢に移行。ソファーでくつろいでいた意味とは。

 

「まずはそうだな。あれから成果はあったのか」

 

「進捗を聞きに来たのか? だとしたら何もない。シャナに関しても上海での一件以来は会えてもいないから、クエレブレにももう少しかかりそうだと伝えてくれ」

 

「そうかそうか。なら丁度良い。シャナに関してならこれからなんとかなるかもしれんぞ」

 

「はっ? 流れが見えないんだが……」

 

 空中では無重力のような状態なのか、話しながらのバンシーはゆっくりと回転して上下左右前後の概念がない感じ。

 そのせいでいま着ているワンピースのスカート部分がヒラッヒラしてこっちはイラッとするが、人間の羞恥心など微塵も持ってないバンシーに指摘するとからかわれるだけだから黙って話に集中。

 しかしその話も唐突でよくわからなくて、何がどうして丁度良いのか。

 説明が下手くそ過ぎるバンシーに順を追って話せと口から出かけたオレだったものの、そのオレを手で制して暗に落ち着けと諭すバンシーは、自分の説明不足を棚に上げて話を続けた。

 

「とりあえず行くとするか。アストゥリアスに」

 

「……だ、か、ら! 何でそうなるのか話せって言ってんだよこのババアが!!」

 

「俺をババア呼ばわりとは失礼だぞ! 呼ぶなら敬意を込めてバンシー様と呼べガキがァ!!」

 

「そう呼ばれたいならそれに値する態度で示せやコラァ!!」

 

 このババアは自分を不可視化できるから飛行機もタダ乗り出来るし良いけどな。こちとら「アストゥリアスに行くのか。よし行こう」なんて都合よくいかないんだよバーカ!

 移動に金はかかるし、ロンドン武偵高にはそれなりの理由がなきゃ単なる欠席扱いでマイナスだし、そもそも何で行かなきゃいけないのか不明なまま飛行機に乗れるかよ!

 っていうのは余さず口に出してキレ散らかしてバンシーとの喧嘩に発展。

 物理的にはオレの圧勝だし、このマンションは現在シルキーの支配下でバンシーも不可視化はできても物質の透過は出来ないので、関節を極めるオレから逃れられず苦悶の表情を浮かべている。ぐはは、苦しめ。

 能力に関しても戦闘方面には秀でていないっぽいから喧嘩になったら一方的でちょっと可哀想にもなるが、手加減したらしたでその隙を突いて嫌なことをしてくるから手は抜かん。骨があるのか知らんがヒビよ入れ!

 そんなプロレスまがいの喧嘩でバンシーが声にならない声を出し始めたところで、異変を察知したシルキーがやって来て、その光景を見るなり念動力でオレをバンシーから強引に引き剥がして、さらに2人共の姿勢を正座にして床へと下ろす。

 あれぇ、おかしいなぁ。シルキーの念動力ってマンションの綺麗さに比例して強くなるはずなんだけど、明らかに腕も足も引きちぎれるくらい強かったんですが……

 そこから導き出される答えとしては、もうすぐこのマンションに移り住んで2ヶ月になる段階で、すでにほぼ全ての部屋の整理整頓を終えてしまったということ。

 始めこそシルキーを受け入れがたい雰囲気というか、マンション全体がざわついていたのは気づいたが、それもシルキーの家事スキルの前では騒動どころか感謝が大きくなって普通に受け入れられてしまった。

 あとはシルキーがいる手前で部屋を汚く使えないという圧力で住民の意識改革が成されたからか、こうしてシルキーも強力な超能力を取り戻して維持できるようになってしまったわけだ。

 

「お2人ともお元気なのは良いことですが、もう少し平和的な話し合いをしてくださいませんか」

 

「「すみません」」

 

 これはこのマンションに攻め込む時にはまず、ロケットランチャーでも撃って壁を破壊しないと。

 とかなんとか戦闘面での本気の突破口を思案しちゃうくらいシルキーが怖かったが、逆にこのマンションのセキュリティーレベルが下手な監視カメラや警備員などを導入するよりも高いのは賃貸としては良物件になったんだよな。

 こりゃ『死神が住むマンション』から一転して『人件費なしのメイドが住むマンション』って噂が立って家賃が上がる日も近いかもしれん。

 せめて留学中は上がるなよ! 絶対だぞ!

 そんなシルキー様と対立したら追い出されるので格上のはずのバンシーも威圧感に負けてオレと一緒に素直に謝罪し、大人しくなったオレとバンシーに満足したシルキー様もどうしてそうなったのかを尋ねて今度は緩衝材としてそばにいてくれる。ありがてぇ。

 

「バンシー様、お急ぎの案件であるならば、なおのこと京夜様へのご説明はするべきかと思われます。飛行機もすぐに乗られるわけでもありませんし、ご納得した上で行かれる方が準備もしやすいのではないでしょうか」

 

「うむぅ……確かに準備はしておくべきだったか」

 

「何でオレの文句で納得しなくて、シルキーの話で納得するのかはこの際ツッコまないでやるが、納得したなら何でアストゥリアス州に行く必要があるのか話してくれ」

 

 最初からちゃんと話していればこんな無駄に等しい時間の浪費もなかったけどな!

 なーんて思っても大人だから口にはしないで、ソファーに座り直してわずかばかりの毒を吐き、話す気になったらしいバンシーにターンを回してやると、オレの上からの態度にムッとした表情をしながらもシルキー様が控えておられるから突っかかっては来ずにまた宙に浮いて漂いながら口を開いた。

 

「クエレブレがアストゥリアスで信仰の対象になってるってのは、もう調べてたんだよな?」

 

「ああ。だからこそクエレブレの存在を確信して見つけられたわけだしな。まぁ見つけたせいでシャナに罠を張られもしたんだが」

 

「んじゃあの辺りの人間が月に1度、クエレブレに供物として食糧を奉納してるってのも知ってるわけだろ?」

 

「まぁな。クエレブレ本人からも聞いてるし、その供物をシャナが町に変装しながら住み続けてクエレブレに届けてたってのも……」

 

 説明するとなると割と親切というか丁寧なバンシーがクエレブレについてオレがどの程度で把握してるかを問うので素直に答えていく。

 そして話の肝となるであろう事柄に話しながら気づいたオレが言葉を切れば、察しが良いオレにバンシーもニヤリとする。

 

「もうわかったのか。ガキにしては勘が良いな。これは本当に最初から話していれば良かったか」

 

「……来たのか。シャナがアストゥリアスに。クエレブレの近くに」

 

「姿は見せなかったが、来たことは間違いない。その証拠に……」

 

「先月の供物がクエレブレの元に届いた、か?」

 

 一応の確認で相違がないことも確かめて、それで先月にシャナがクエレブレの供物を今の住処に届けたことがわかる。

 オレ達を罠に嵌めるためにシャナは何百年と姿を変えながら隠れ住んでいた町から離れてNの拠点に身を移したから、オレもその可能性は低いと思っていた。

 だが冷静に考えても、シャナはオレとクエレブレが今も繋がっている可能性を知りながら行動を起こしたことになる。罠である可能性は高い。

 

「……次の供物を届ける日はいつなんだ?」

 

「今は毎月第3日曜日の夜と決められている。今月の第3日曜日は……3日後だ」

 

「呑気に準備してる暇もないか……何故もっと早く伝えに来れなかった?」

 

「準備ってのは長けりゃその分で外に漏れる可能性も上がるもんだぞ。向こうにこっちの動きを悟られねぇためには時間的猶予は作るべきじゃねぇ。ってのがクエレブレの考えだった」

 

 そうと知っていて次もシャナが来る保証は全くないし、仮に来てもシャナ1人である可能性も低い。

 それなら準備にいくら時間をかけたところで大差ないような気もするが……

 いや……クエレブレはもう少し先を見ているんだ。

 

「……Nにも些末事に人員を多く割けない事情があるはず。先月にオレと羽鳥を嵌めた時も引き際はあっさりしてたし、オレや他の邪魔な連中を消せれば良しくらいの認識なら、出来る限り最低限の戦力を投入したいだろう」

 

「俺は戦いは専門外だ。要はクエレブレの考えがお前にはわかったのか」

 

「さっきオレが言ったみたいに、こっちが準備万端で待ち構えた場合、こっちの戦力をわずかでも上回る戦力を向こうが投入してくる。だが余剰戦力に余裕もない向こうに、こっちの戦力がギリギリまでわからないような対処をすれば、向こうも最適な戦力を割くことが出来ないってことだよ。まぁオレとクエレブレの繋がりを前提にしてるなら、オレの人脈の限界がある分で戦力の推測はされてるだろうがな」

 

「だがその対策にも穴はあるだろうよ。俺でもわかる重大な、な」

 

 Nはあの羽鳥すら余計な手間をかけて手駒に欲するほど人員に余裕がないのは明らか。

 その上で世界の変革を成そうとする動きに無駄を省かなきゃならないのは明白で、モリアーティとて戦力の捻出は余計な労力だろうよ。

 とはいえだ。ここまで読めれば根本的に破綻する問題もあることにも気づける。

 バンシーでさえ気づいたんだから大して深く考えなくてもわかることだが、オレでさえ読める戦局をモリアーティが読めないわけがないんだから、そもそも無駄な戦闘は避けるべきで、Nはアストゥリアス州に赴かない選択をするだけでオレ達を空振りさせられるんだ。つまりシャナの動きを止めるだけで良い。

 

「…………いや、来るよ。少なくともシャナだけは」

 

「根拠はあるのか?」

 

「根拠なんてないさ。ただオレは信じたいだけだよ。クエレブレとシャナの、絆ってやつをな」

 

 事の全容はそんなところで、何かを起こすにしても空振りの可能性の方が高い以上、動くやつも徒労を覚悟しなきゃいけない。

 そこから考えるにICPOの百地さんに声をかけたとして、イギリスのMI6レベルが動くかどうか怪しい。

 バチカンも話くらいは聞くかもだが、急な要請に応えるまでのレスポンスが悪い気がする。

 先月に会ってるカツェが所属する魔女連隊もオレ個人でどうこうできる規模じゃない。

 何よりどうあがいても金銭面での問題がネックになって、ほぼボランティアみたいな参加を促さなきゃならん。命を懸けるんだから条件が無理すぎる。

 ただ1つだけ確信に近い何かを感じているオレは、今回の件で空振りはないと信じていた。

 Nに協力する動機がクエレブレにあるシャナなら、たとえ罠とわかっていたとしてもクエレブレが困る事態は避けたいはずで、こちらにとって好都合な解釈をすれば、シャナが尻尾切りにされる可能性もありえる。

 それはまぁ希望的な観測としても、シャナのクエレブレへの愛が本物であると信じるオレの夢見がちな根拠に対して、愛情に関して理解に乏しいバンシーもキョトンとした顔をしてからケタケタと笑う。

 

「カッカッ。良いねぇ、そういう男と女の愛ってやつは、どの時代でも輝いてるからな。なら行くんだろ。アストゥリアスによ」

 

「その前に出来るだけの準備はする。発つのは明日か明後日になるが、バンシーはどうする?」

 

「あっ? まさか事が終わるまでここにいろって言うんじゃねぇだろうな? 俺も行くぜ。事の顛末ってのをこの目で見届けてぇからな」

 

「物好きかよ……間違ってもNに存在を悟られるな」

 

 我ながらクサいことを言ったもんだが、バンシーはそんなオレを笑ったわけではなく、おそらくは性別という概念のない側からの興味から面白いと感じたんだな。

 それはいつかのテルクシオペーのような理解できないからこそのあれで、バンシーもこれで男女の愛というものに興味があるんだ。

 付いてくるのも、どうせ止めたところで不可視化されてしまえばオレに付いてきているかもわからなくなるし、止めるだけ無駄なら説得は諦めて、さっさと動き出した方が堅実。さぁて、ここから時間との勝負だ。

 

 アストゥリアス州でシャナを迎え撃つことは決定したものの、問題は誰を使えるかということもあり、とりあえずオレよりも動かせる人が多いだろう百地さんには連絡をしておき、空振りの可能性も考慮して動いてもらう。

 ここは情報を提供することで無償で動いてくれる信用があるからいいが、あとは情報だけで誰が動くか。

 そう考えた時に思い浮かんだのは、根は正義の味方なジーサードで、先日の単分子振動刀の件でちゃんとラインを確保してれば良かったと本気で思いながら、仕方なくまたキンジにメールをしておく。

 時差から考えて向こうはもう深夜を回ってるから、返信は数時間後になるだろうなと別の線も考え始めたのだが、意外や意外。返信は電話という形で1分とかからずに返ってきた。早くね? 張ってたの?

 

「お前にこんな早く反応されると困惑するんだが」

 

『兄貴は今ぐっすり寝てるぜ』

 

「その声……ジーサードか」

 

 しかも電話でわざわざ応答するってのも変な感じがしながら通話に応じてみると、その違和感は電話の相手ですぐに判明した。

 何故かキンジの携帯から聞こえたジーサードの声に疑問を抱くも、話がしたい本人が出てくれたなら好都合。

 ジーサードもキンジが寝てる発言からメールを勝手に見て通話してきたんだろうし、用件は書いてなかったから早く言えみたいな空気を察して挨拶もなしに本題を切り出す。

 

「……ってことで、3日以内にスペインのアストゥリアス州。ビオドって町に来れないか? 上手くいけばNのメンバーを捕まえることも出来るんだが……」

 

『あー、話としちゃ行きてェとこだがな……』

 

 頭は良いジーサードに1から10まで説明する必要はないなと要点を絞って話して、来られるかどうかを単刀直入に尋ねてみる。

 ジーサードの性格的に飛びついてきそうな話ではあったはずなのだが、話を聞いたジーサードはなんだか歯切れの悪そうな声で返答に困る雰囲気を出す。

 

『……今はタイミングが悪ィ。こっちもこっちで兄貴がぶっ倒れちまってるし、急に出てきた妹の事で手が離せるかもわかんねェからよ』

 

「キンジが倒れた? っていうか妹って急に出てくるもんでもないだろ。なに言ってんだ?」

 

『京夜もわかってんだろ。俺やかなめがロスアラモスで作られた人工天才だってのは。そこからまた俺ら……っつーか、金叉の遺伝子を組み込まれた人工天才が脱走してきたんだよ。脱走とも違うみてェだが、まぁそんな経緯で兄貴のとこに転がり込んできた。その妹のごたごたで兄貴が倒れた』

 

「相変わらずわけわからん一族だな……」

 

 どうやら向こうも向こうで現在進行形で問題が発生しているようで、しかもロスアラモスが絡む案件はろくなことがないのはジーサード達とのいさかいやアメリカでの事で実感している。

 どういう理由でそのキンジ達の新しい妹とやらが接触してきたかはわからないが、ジーサードが妹と認めている以上は、あのかなめさえ受け入れたキンジもロスアラモスと対峙しているはず。

 すでにぶっ倒れてもいるようだし、家族の問題を優先するのは当然とも言えるので今回はこっちが身を引こう。

 

「とにかくお前や仲間は来られないってことでいいな。こっちも急だったし、仕方ないさ」

 

『悪ィな京夜。行けねェ分はこの前の単分子振動刀のでチャラにしてくれや』

 

 えっ、マジで? なんか得したような気が……

 別に断ったからといって咎められることもないのに、ジーサードの方から詫びのように単分子振動刀の件を無償にしてもらえてラッキー。

 なーんて思ったが今回の件で言えば、ジーサードやロカ達に来てもらった方が何倍も頼りになったことを考えれば、オレ個人の損得勘定とかどうでもよくね? むしろ損してね?

 そうして誰に文句を言えるわけでもない結末に微妙な感情がモヤモヤしながらもジーサードの方から通話を切られてしまい、幸先の悪いスタートを切った仲間集めにため息が漏れる。

 数打ちゃ当たる理屈でやっているとクエレブレの配慮を無駄にすることになるから、なるべく空振りは避けたいと思いつつ、バチカンや魔女連隊にも話だけはと連絡。

 あとは最も現実的ではないセーラに話をしてみるも、案の定「仕事なら報酬を貰う」とのことで却下。

 あんな高給取りを雇う金なんてあるわけねーだろ。ふざけんな。

 まぁセーラはわかりきってたから別にいいとして、やっぱり確実に1人くらいは確定で助っ人が欲しいと頭を悩ませていると、先日にジャンヌが調べてくれた崇清花についての報告をして以来の幸姉からメールが届く。

 忙しい中で色々と調べてくれたんだろうとメールの内容を確認しながら、今メールしたなら時間的な猶予があるのだろうと踏んですぐにメールを送る。

 可能性は低いが……かなり低いし幸姉頼りになってしまうものの、もしも通ればもしかするかもしれないと淡い期待をして返信を待ち、オレもオレで来たる決戦に備えて装備を整えていく。

 今回こそ結果を出さないと、いよいよメヌエットからお叱りを受けかねないしな。気合いを入れないとだ。


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