ジャック・ザ・リッパーの血の呪いで覚醒した羽鳥の猛攻をギリギリのところで踏ん張って耐えながら、どうにか馬乗りして動きを止めることに成功する。
しかし度重なったダメージが羽鳥を拘束する力を奪い取ってしまい、あと10秒ほどで逃げられるのは確実。
その短い時間で渾身の頭突きをお見舞いしてほんの少しだけ時間を稼いで、どうすればいいかまとまらないままの言葉で心の奥底へと引っ込んでしまった羽鳥本来の意識を覚醒させようとする。
前はこれで呼び起こすことができて事態を終息させられたが、今回は羽鳥の覚醒の度合いが違いすぎて可能性が低そうに思える。
どうにかオレの言葉が届いてくれ。そう願う気持ちで頭突きのダメージに怯んでいた羽鳥を見ていると、額から血を流しながらも未だにその顔からは不気味な笑顔は消え失せることなく存在し、滴った血を舌で舐めとる様は狂気を孕んでいた。
「うるさく吠えるな肉が。やかましくて耳が腐る」
「腐っても構うかよ。お前が嫌がることをし続けてでも叩き起こすぞ羽鳥!」
「あー、こいつは保存とかどうでも良いな。2度と雑音が出ないように、グチャグチャにしてやるよ!」
「羽鳥フローレンス!」
「私は服部・J・フローレンスだ! 2度と間違えるな生ゴミがぁ!」
……ダメだ。
これだけ近くで叫んでもオレの言葉はフィルターがかかっているのか、単なるノイズとしてしか認識されず、名前にのみまともな反応をするも、羽鳥フローレンスであることを否定する拒絶で返される。
しかもそこで回復が完了したかオレの拘束の緩さから瞬発力のみで腕を動かして抜け、右腕の関節を捻り切るほどの勢いで極めてくるから、ほとんど反射的に捻った方向に体を回して腕を抜く。
そのせいで羽鳥の上から退く形になり、オレが退いた直後にすぐ横に片膝立ちしたところを足蹴にされてバランスを崩され、オレを蹴った反動で後退しながら立ち上がってしまう。
対してオレは蹴られたことで同じような挙動でリカバリーしようとしたら、腕にも足にさえ自分の体を持ち上げるだけの力が残っていなくて仰向けで倒れてしまった。
──ヤバい。
それを頭を考えるよりも全身が感じ取って、痙攣まで始めていた手足に鞭を打って羽鳥から距離を取ろうとする。
幸い羽鳥からは武器を取り上げているから、仕掛けるにしても肉弾戦しかほぼないとわかっている。
わかっているのに今のオレと羽鳥ではその身体機能の差に大きな開きが出来てしまっていて、速攻で切り返してきた羽鳥は前進と同時に砂をすくって煙幕代わりにオレへとぶつけてきて、腕が咄嗟に動かなかったせいで目を閉じてしまった。
その一瞬の視界の封鎖が仇となって真正面から一気に距離を詰めた羽鳥が立ち上がりかけていたオレの胸に掌底を撃ち込んで倒しにかかり、踏ん張ろうと体を起こしにいったオレの膝を足蹴にして跳躍。
その際に空中でムーンサルトを切りながらオレの顎に手をかけて背後へと回り貼りつかれる。
さすがに羽鳥の重さで体を支えられなくなって後方に倒れてしまったが、どうせ倒れるならと羽鳥を思いっきり砂浜に叩きつけようとしたら、顎にかけられた手がグイッと持ち上げられてオレの頭が一番最初に落ちる位置へと誘導されてしまった。
結果、オレは頭を戻す力を振り絞ることになってほとんど普通に倒れることになってしまい、オレが倒れて下敷きにされた羽鳥は離れることがなく、むしろより密着して両足を腰に回して腕は首へと回されてチョークスリーパーをほぼ完璧に極められた。
絞め技にはチョークスリーパーとスリーパーホールドがあるが、その大雑把な違いは頸動脈を絞めるか呼吸器を絞めるかだ。
羽鳥が今やっているチョークスリーパーは頸動脈を絞めるため、絞め続けられると脳へ血がいかなくなってかなりアッサリと落ちる。
苦しさで言えば呼吸器を絞め続けるスリーパーホールドが死ぬほど苦しいから、チョークスリーパーなのは気持ち的には優しさがあるように思えるが、今回はどっちだろうとオレが落ちた時点で終わり。
「ガッ……ハッ……」
「さっさと落ちろゴミクズが」
あまりに鮮やかで手すら挟み込む余裕がなかったから、頸動脈は完璧に極められて血流が停止してしまっているのがわかる。
このまま何も出来なければ10秒と持たずに意識を失うと確信できる状況でしかし、オレに出来ることは皆無。
羽鳥を背負ったまま倒れた状態から体勢を変えるのは残った力で考えても不可能に近く、発勁も羽鳥を下敷きにしてる以上は一瞬怯もうと些細な足掻きにしかならないし、その一瞬を活かせるほどオレに余裕がない。
そうこう考えるほど頭が回らなくなって視界まで揺らいできたところに、羽鳥の絞める力が増して一気に意識が遠退く。
だがオレはこの状況で打てる手をまだ残していることに気づいていた。
使いたくない。使ったら終わりだと言い聞かせていたが、もう無理だ。ここで落ちたら終わりなら、あとで死ぬほど謝って全ての責任を負ってやる。だから許せよ、羽鳥。
薄れゆく意識の中でそうやって羽鳥へと謝罪したオレは、半ば無意識でショルダーホルスターに収まるブローニングに手を伸ばして抜き、ほぼ真後ろにいる羽鳥を撃つために自分のシャツを捲り、腹を露出させ致命傷にならないようにオレごと撃つ。
──ぐぅぅうううううッッ!
声にならない声というのはこういうことかと、自らが撃って負ったダメージに苦悶の表情を浮かべながら、羽鳥のチョークスリーパーが緩んだ隙を逃さずに頭を抜き、ついでに緩んだ両足も振り払って横へと転がる。
自分で開けた風穴に砂が付いたりしないように注意しつつ流れ出る血の量からヤバい気配を感じるも、羽鳥も羽鳥でオレの体を貫いてなお羽鳥の横っ腹を貫いた銃弾によって初めてその顔から笑顔が消えて、同じように傷口に砂が入らないように立ち膝になって止血を試みていた。
「こんな……ところで、この傷がどういう結果になるか……わからないほどバカなのか……ゴミが……」
「はぁ、はぁ……わかってて、やったんだバカが……」
内臓に当たる軌道では撃ってなかったから致命傷にはならないが、止血をしっかりしないとどのみち致命傷になるのは確実な一撃で、さすがの羽鳥もこの状況で攻撃に回るほどの余裕はなかったようで、止血に使えそうなものを探して、着ていたシャツを脱いで止血をする。
オレもオレで同じような状況だから同様にシャツを脱いで止血に使うが、こんなのは気休めにしかならない。
止血に手一杯で動けないオレをよそ目に自分の治療を優先した羽鳥は、立ち上がって自分のコートやらが落ちている場所へと移動してしまい、ここから動けもしないオレは羽鳥が戻ってきたらどうすべきかを考えるしかない。
羽鳥も十分な治療など見込めないはずだが、オレを殺すだけなら向こうにはサブマシンガンが落ちてる。オレを殺してからベースキャンプに行く余力があれば、なんとかなるかもしれない。
これは詰んだか……オレの助かる道は……
時間にして5分程度だったか。
オレの出血は依然として止まることはなく、あと持っても10分あるかどうかくらいで意識も朦朧としてきた。
思考すらまともに出来なくなってきたところに止血を終えてコートを羽織って羽鳥が戻ってきて、その手にはオレを殺すための拳銃が持たれているのがわかった。
止血と言っても近くで見れば出血を抑えるくらいの処置でシャツにはジワジワと血が染みてきているのがわかり、本格的な処置は出来なかったんだろう。
それでもオレを殺すことを優先してきた羽鳥の執念のようなものは恐ろしく、放っておいても死ぬだろう状況でもオレに拳銃を向けてきた。
「まったく、自業自得のくせにまだ足掻くのか、ゴミ」
「……ははっ。いつもの羽鳥にも……ゴミとは言われたことなかったんだが……なかなかクルな……」
「大丈夫さ。もうそんな感情も抱くことはない。お前はここで死ぬ」
「……死ぬ?」
あとは引き金を引けば終わり。
そうなったにもかかわらず、それをせずに何故か口を開いた羽鳥は、ここで初めて会話が成立する。
そしてオレはこの状況で羽鳥がオレを『人扱い』したことに疑問を覚えた。
こうなった羽鳥は男を人として認識しないし、そう扱いすらしない。
それなのにどうして今、オレは死ぬだのなんだと言われている?
「……なぁフローレンス。お前はどうして人を殺す?」
「人? 私が殺しているのは生きる価値もない醜いゴミだよ」
「そうか……じゃあお前はそのゴミを殺すだの、生きる価値だの、生き物として扱ってるのは、何でだ?」
「ッ……黙れよゴミがッ」
「起きてんだろ羽鳥……だったらさっさと元に戻れよ……」
「元に、戻る、だと? 私は! 私が! 服部・J・フローレンスだ!」
そこでいつ撃たれるかわからない緊迫の状況ながら賭けに出たオレは、会話が成り立つことで羽鳥へと逆上したりしないように話しかける。
フィルターが取れかかってるならオレの声も認識できるかもとわずかな希望で話をするが、未だに覚醒したジャック・ザ・リッパーの血が荒ぶっていて、奥に引っ込んでいる羽鳥は出てきそうにない。
だが羽鳥本人も自分の行動と言動に違和感は感じてきたか、情緒はかなり不安定になりつつある。
「お前は! 元に戻るだのと言うが! お前が私の何を知ってる!」
「……知らないさ。お前の過去も、思考も、何もかも。オレが知ってることなんて、羽鳥フローレンスっていう人間を構成する数%に満たないものだろうよ。だがな……」
ここで撃たれる覚悟をしたオレだったが、意外にも逆上しているのにオレへと問いをぶつけてきた羽鳥に対して、オレは説得しようとかそんなことも考えず、もはやそんな打算なんて出来ないくらいの出血のせいなんだが、思っていることをそのまま言葉にしてしまう。
「……オレが知る、羽鳥フローレンスってヤツはな……自分がどんなに苦しくても、どんなに辛い思いをしても、人を助けようとする人間なんだって……知ってるんだよ……決して今のお前みたいに……壊すことを楽しむようなヤツじゃないん……だよ……」
あー、ヤバい。いよいよ意識が保てなくなってきたぞ。
まだ倒れるな……あと少し。あともう1度だけ、オレに口を開かせろ……
「世界中の誰もが……今のお前を悪人だと言おうと……オレが……オレだけは最後まで……味方でいてやる……柄じゃない、が……信じてる……から……お前が……殺したくて、殺したわけじゃ……ない……って……」
ああ。落ちたな。死んだかぁ。死んだのか? よくわからんな。
この思考は夢でしているのか? それとも死ぬ間際の走馬灯みたいなやつ?
1度だけ死んだことがあるとはいえ、その時には眠るように死んだからこんなことを考えたこともなかったが、みんな本来はこんな風に死んでいくのかね……
いや待て猿飛京夜。たとえ夢だとしてもこうして思考している猿飛京夜という存在はどこにある?
あれだあれ。よく言われる魂がどうのとかあれ。心がどうだとかその辺の。
うわぁ、頭悪い語彙力のなさ。
要はあれよ。こうして思考してるのが猿飛京夜だっていう自覚がある以上は、まだオレが猿飛京夜であるという何よりの証明であって、つまり……
「生きてるのではないだろうか」
「その自覚があるならそれ以上は頭も体も使ってくれるなよ。足りない血がさらに減って今度こそ死ぬよ。まぁ死にたいなら止めはしないけど」
そこで意識が覚醒したっぽいオレが最初に見た景色は、緩やかに流れる雲がある青空。
それで自分が仰向けで寝かされていることを認識し、次いで認識したのはすぐ横から聞こえた羽鳥の声。
しかし頭はまだぼんやりとした感じで全身には力がほとんど入らないのと、血が満足に通っていない感覚で今の状態が危険と隣り合わせなことも自覚。
その状態でも首だけは動かして見るべきものを見ると、まずはオレの銃創はほとんど完璧に処置されていた。
止血も済んでちゃんと包帯を使ったものは医療の知識で的確にされているから、隣にいる羽鳥がやってくれたと見るべきだ。
そしてその隣に腰を下ろしていた羽鳥は、しっかりとズボンと靴を履き直して、オレのジャケットを拝借して着ている。
ロングコートはオレが倒れた位置からほとんど動かせなかったからか、シート代わりにしてオレと羽鳥が横になったりしている。
「……どのくらい寝てた?」
「2時間17分。現在時刻は14時8分だ」
「……状態は?」
「それは君のかい? それとも私の?」
こうして一時でも平穏があるということは、オレが意識を失っていた時に羽鳥は元に戻ったと見るべきなのだが、それが安定してるかどうかはわからないので、その辺でまず確かめる質問をぶつけると、オレが聞きたいことはわかっててそんな返しをしてきたことから、精神的な余裕はあると見て良さそう。
何がきっかけで戻ったのかはわからないまでも、とりあえずNの思惑は阻止することはできただろうと安堵して口を閉ざして空を見ていると、隣の羽鳥も疲労からか横で寝始める。
「……私は君が思うほど良い人間ではないよ」
「……聞こえてたのか」
「君はうるさすぎるくらいだ。たとえ防音設備が完璧な部屋に閉じ籠っても、それすらぶち破る声でわめき散らしてきそうなほどにはね」
オレの隣で寝るとか拒絶反応が出そうなほど嫌だろうに、それを我慢してでも横になりたかった羽鳥の疲労もピークを過ぎてるってことで納得しつつ、意識を失う直前の言葉が羽鳥に届いていたとわかる言葉に少し嬉しくもあり恥ずかしくもあった。
が、やっぱりトゲがある言い回しにイラッとする。ホントいつも通りになったなコイツ。
「……私は、一生この血の呪いからは逃れられないと、そう思っていた。そして今回のこれで思い知ったよ。『アレ』もまた、私の本質なんだとね。人を助けようとする偽善的な私も私ではあるけど、同時に人を殺して悦に浸ろうとする私も、どうしようもなく私なんだよ。二重人格とかそんな話じゃない。アレも私が望む私の姿なんだ」
嫌味を言えるほどの余裕があるとしっかりと示したところで、一拍置いてからトーンを少し落とした羽鳥が自虐とも取れる発言をしたことでオレも真顔になってしまう。
オレからすればあの変わり様は二重人格とかの方がしっくりくるくらいには別人なのに、羽鳥はあれすらも自分の本質なんだと認めてしまったみたいだ。
それは違うと断言してもいいと率直に思ったものの、それを許さない羽鳥の雰囲気に圧されて言葉を発することが出来ない。
「私はあの私が反吐が出るほど嫌いだよ。人を人とも思わずに無惨に壊す様は、私が殺めた6人よりも何倍も残虐だ。だけど私はそれを止めることもしなかったし、あの6人が死んだ時、心の奥底では『当然の報いだ』と納得してしまっていた。そんな私は、武器を持つべき人間ではないんだよ……」
「違うだろ」
平静こそ取り戻していた羽鳥ではあっても、やはり心だけは弱りきってしまっていて、いつもの羽鳥からは絶対に出てこないだろう言葉が次々と出てくる。
そして自分に武器を持つ資格がないとまで言った時、オレは反射的にそれを否定した。
ほとんど割り込む形になったオレに言葉を切った羽鳥は、珍しくオレに面食らったような雰囲気で沈黙する。
「そんなお前だから武器を持つべきなんだよ。お前は自分の怖さを知ってる。人を殺す怖さを知ってる。そういう怖さを知ってる人間こそ、武器を持つべきなんだ。それに当然の報いだと思ったとか、そんなの同じことをされたらオレだってそう思う感情は湧くさ。それは人間だから仕方ないことだ。誰もが抱く感情を特別なものだって言うのは、背負いすぎだろ」
「だが私は……」
「だがじゃねぇ。お前も女なんだ。男に乱暴されたら本能が怖がるのは当然だ。怖かったんだろ。やめてと願ったんだろ。その当たり前を圧し殺すな」
羽鳥は自分に厳しすぎるところがある。
それが今回のことでより厳しくなって、人として当たり前の感情すらも重荷として背負ってしまって、このままでは武偵を自らやめると言い出しかねなかった。
その選択を止める権利はオレにはないが、止めたいと思う気持ちまで止められなかったオレの言葉に、ここまで保っていた緊張の糸が切れてしまった羽鳥は、普通の女の子のようにその目に涙を浮かべて泣き出してしまった。
「……またあんな思いをするんだって……そう思ったら怖くて体が動かなくなって……助けてって何度も何度も心の中で叫んだ……もうやだって……何度も……」
「それが普通だよ。悪かったな、そんな思いをする前に助けられなくて。あんな風になる前に助けられなくて」
「違う……あなたは悪くない……だってあなたは駆けつけて……助けようとしてくれた……なのに私が……弱かったか……がふっ」
本当に弱りきった時にだけ出てくる羽鳥の本音は、普通の女の子を思わせる口調にまでなって心に響き、そういう部分を普段は絶対に見せないからそのギャップは凄い。
そんな羽鳥をあやすように謝罪したりとしていたら、緊張の糸が切れたことで別の我慢も解けてしまったのか、突然吐血して苦しそうにし始める。
慌てて体を起こして羽鳥の容態を見ると、オレのジャケットを捲ってその事態の重さがわかる。
羽鳥は自分自身の処置を十分にできずに自分のシャツで止血をしたままだったのだ。
そもそもオレの体に巻かれる包帯はどこから持ってきたのか。そんなの考えなくてもわかるだろ。
羽鳥はこの状態でベースキャンプまで走り、数少ない救急キットでオレの治療をして、自分の分はなくなってしまったから応急処置で留めていた。
それを悟られないようにここまで痩せ我慢をしてきたことに気づかなかった。くそッ、このままだとヤバいぞ。
近くには救急キットの箱が開きっぱなしで置かれているのを発見して中を見るも、使えそうなものは全部オレに使ったみたいで羽鳥に使えるものはない。
羽鳥の出血はベースキャンプを往復したせいで全然止まっていないからか、シャツからは血が染み出始めていた。
とにかく血を止めないと失血死は免れない状況で、羽鳥も苦しさから逃れるように意識を手放してしまった。これで2度と目覚めなかったじゃ洒落にならん。
オレもオレで動けば傷が開いてまた出血して2人とも御愁傷様では話にならないので、この場で何とかしないとと頭をフル回転。
そんな時だった。
羽鳥を診るために背中を向けていた海からとてつもない気配がして、恐る恐る振り向いた先にいたのは、下半身を魚類のものへと変えたテルクシオペーが海面を足場に静かに立っていたのだ。
──おいおい、これはダメだろ……