緋弾のアリア~影の武偵~   作:ダブルマジック

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「どうでしたか、私の夢の第1歩である蘭盛街は」

 

 劉蘭の護衛任務に就いて初めての夜。

 これから劉蘭のやろうとしていることを知り、その計画の先駆けとなっていたこの街、蘭盛街を見て回った感想をベランダのベンチに座って劉蘭が横から尋ねてくる。

 風呂上がりなのでベランダとはいえ女子特有の匂いとシャンプーの香りが意識を脱線させかけるが、真面目に尋ねている劉蘭に失礼なのでしっかりと意識をそっちに向ける。

 

「率直に言って、ここまで仲睦まじく雰囲気も良く運営できているとは思わなかった。生活の中での不満もその都度で解決してきたってのがよくわかった。やっぱり劉蘭は有能なんだな」

 

「私など皆に助けられてばかりで、その方々に返せるものが誠意でしかなかっただけです。今の蘭盛街があるのは、この街に暮らす人々の力があってこそなのですから」

 

「情けは人のためならず。そういう諺が日本にはあるぞ」

 

「情けは人のためにならない。甘やかしてはいけない、という意味ですか?」

 

「日本語ってのが難しいって言われる理由だな。人のためにしたことはいつか巡りめぐって自分のところへと返ってくるって意味なんだ。今の劉蘭みたいな在り方をそう表現する」

 

 軽く見て回った程度ではあったが、この蘭盛街が良い街であることは人々の表情からも十分に推し測れたし、観光客などの楽しそうな雰囲気も満足度が高い証明だった。

 その環境作りに尽力したのは他ならない劉蘭なのでそこを誉めたら相変わらずの謙遜が炸裂するが、オレの諺がお気に召したのか、小声で復唱してから小さく笑ってみせた。

 その笑顔にドキッとしつつも、すぐに笑顔から少し影を落とした表情に変わった劉蘭は、決して良い面ばかりではないと現実的な思考を自ら発する。

 

「ですがこうして街の人々が笑顔で過ごす一方で、今も満足に生活できず、苦しんでいる人々もいて、そういう人々の方が圧倒的に多いのです。決して手を抜いているつもりはありませんが、それでもどうしようもない現実があると、自分の無力さに憤りを感じてしまいます」

 

「……それはオレも常々感じるよ。自分に出来ることの限界ってやつを突きつけられて、個人としての力がこんなにもちっぽけなんだってな。でも劉蘭はそれをよくわかってて、迷うことなく今の道を選んだ。それは本当に苦しむ人達を思えばこそ出来た決断だって、そう思うんだけど、違ったか?」

 

「……どうでしょうか。私の行動原理は……以前にもお話ししたことがありましたが、少しでも京夜様に誇れる自分でありたいと願う気持ちからです。決して京夜様がおっしゃったようなことが動機ではなく、結果としてそうなっただけなのかもしれません」

 

「それはきっかけに過ぎないとも前に言ってたぞ。それに今をこうして頑張ってる劉蘭は、オレに認めてもらおうってだけで動いているのか? 何で今そうしているのか。本質はそこにあるんじゃないか?」

 

 おそらく劉蘭は他人に対して異常なほど弱音は吐かない性格で、本音を口にすることも珍しい。

 その劉蘭がオレに対しては素直な気持ちを吐き出してくれるのは、それだけオレに心を許しているってことなのだろうから、オレも親身になって応えてやる。

 ただオレなんかよりもずっと凄いことをしている劉蘭に偉そうなことは全然言えないため、言葉の多くは劉蘭を持ち上げるものになって、その言葉に少し照れるような仕草も見せつつの劉蘭は自分の気持ちに素直になって胸に手を当てて目を閉じる。

 

「……私は、この国をどこにでも誇れる国にしたい。日本の方が移住したいと思えるような、そんな国に。そのために私は動いている。そこに嘘偽りは……ありません」

 

「だったら迷うなよ。今の劉蘭を認めてくれる人はこの街にたくさんいる。劉蘭を必要としている人がもっとたくさんいる。今回の計画で救われる人がいる。誇っていいよ。劉蘭は立派で素敵な人だ」

 

「京夜様……ありがとうございます」

 

 そこから出てきた言葉は紛れもない劉蘭の本音。

 人のためにと頑張れる劉蘭はオレという存在などなくても始めからそう動ける人物だったと、オレは信じている。

 その劉蘭の歩みを止めようとするNを、オレは許さない。

 なんだかクサイ台詞もいくらか言ってしまったような気がして恥ずかしくなってきたが、オレに励まされた劉蘭はお礼を言った後にスッとオレの手に自分の手を添えて顔を赤らめてオレを見る。

 

「それでその……わ、私のことはこれから……蘭、と呼んではくれませんか? 劉は日本の名字と同じなので、もっと京夜様に親しみを込めて呼んでいただけたら嬉しいな、と……」

 

「あっ、そうか。語呂も良かったから気にしたことなかったけど、劉蘭はフルネームになるんだよな。ちょっと慣れない感じはあると思うが、これからはそう呼ばせてもらうよ、蘭」

 

「はぅぅ……」

 

 何やら恥ずかしいことを言うつもりなのは態度からも歴然だったからオレも変に身構えたが、言われたのは今後の呼び方について。

 たぶん理子達は普通に名前で呼ばれていることに対して思うところがあったのだろうが、ずっと言い出せなかったんだろうと察して、そのお願いを快く受け入れて呼んでみたら、それだけで頭から湯気を出して爆発した劉蘭にオレも動揺。

 こ、これは慣れてくれるんだろうか……

 そう思わずにはいられない劉蘭の反応に介抱すれば接触が増えてますます劉蘭が暴走するので、仕方なくメイファンさんを呼んでベランダからベッドに運んでもらって事なきを得た。そこまでなりますかね、あの子はもう……先が思いやられますよ。

 時間が解決してくれるはずの問題なのは間違いないが、メイファンさんに運ばれていく劉蘭を見て思ったことは、オレも負けていられないってこと。

 同い年の劉蘭があれだけのことをしようとしていて、自分にはその力がないと足を止めて諦める。そんなの、最高にカッコ悪いからな。

 この日はもう劉蘭がダウンしてしまったので、オレもメイファンさんと交代で休憩しながら護衛を続けて過ごし、悩みもいくらか吹き飛んだうちに功夫も試みてみたが、やはり初日で何かを掴むまでには至らず、交代を告げに来たメイファンさんにも「その調子やと3日は無理やな」と苦言を呈させれてしまったのだった。

 

 翌日。

 明日に控えた幸姉との会合に備えて、ココ4姉妹と猴が昼頃に蘭盛街に到着するという。

 そういえば何故ココ達が来るのかまでは聞いていなかったので、その辺のことをノートパソコンで取引先とやり取りしていた劉蘭に尋ねてみる。

 

「あまり内部事情を話すのも如何なものかと思いますが、京夜様は無闇に口外はしないと信じて話します。実は最近になって静幻の状態が芳しくなくなりました」

 

「それは急なことなのか?」

 

「いえ……静幻の病はずっと以前から発症していたものですから、それ自体は最近のことというわけではありません。当時は武闘派だった静幻が今のように前線を退いたのもその病が原因ですしね」

 

「そうなのか。その話を絡めてきたってことは、諸葛のやつは……」

 

「持ってあと半年といったところだと余命宣告を受けました。ですがそれもそもそも奇跡に近いのです。本当なら静幻はもっと早くに……」

 

 ココ姉妹と猴の話に諸葛が絡んできて、さらに余命宣告の話まで飛び出したとなると、こっちもすぐに察することが出来てしまう。

 今は香港藍幇のトップに据えられている諸葛が病に倒れてしまって、余命幾ばくもないとなれば、浮上するのが次代のトップに誰を据えるかということ。

 去年の末に香港で『極東戦役』のうちの戦いでココ姉妹が諸葛の指示を無視してオレ達と交戦。

 その結果ココ姉妹は敗北しその位階を下げられて諸葛と劉蘭に逆らうことすら出来なくなっていた。

 だがその好戦的で野心的な性格はともかくとしても、まだ14、5歳ながらも曹操の子孫としての血筋は優秀で、そこは劉蘭も認めているほど。

 

「じゃあココ達は次の香港藍幇を?」

 

「私はそうなってほしいと思っております。去年にはあのような強行に及びはしましたが、才覚は確かなものです。まだ若いので上を納得させるには色々と方便は必要になりますが、4人が力を合わせれば問題はないでしょう」

 

「あの悪ガキどもの教育も請け負うとか劉蘭も物好きやで」

 

 つまりは今回の会議にココ姉妹も参加させて藍幇上層部の空気などを学ぶ機会を設けたわけだ。

 劉蘭がそうであるように、そういうところで踏ん張るにはそれなりの強心臓はないとプレッシャーに押し潰されるものだから、潰れるのは今のうちってことだろう。

 そのココ姉妹と面識があるっぽいメイファンさんは好き好んでやることじゃないと笑うが、劉蘭は諸葛を香港藍幇のトップに据えた責任もあるはず。無責任はプライドが許さないといったところか。

 

「そういえば会議ってのはどこでやるんだ? まさかここでやるなんてことはないだろうし」

 

「本来ならば事前に本部のある北京か、どの支部で行うか通知があるのですが、今回は上海支部なのです。会議自体は年に4度行われる定例会議とは別物でして、日時がある程度決まった定例会議でタイミングとして挙げにくい案件が複数ある場合の処置なのです。場所に関しては元帥の動向次第と、そういうことです」

 

「複数ってことは蘭クラスの提案がもう1つ2つあるってことなのか」

 

「私ほど大規模なものはここ10年を見てもありませんよ。おそらく各支部で力関係に影響を及ぼす程度のものでしょう。内部での争いも苛烈なので」

 

「その辺を考えんのは劉蘭の担当やないからな。上海支部には大将もおるさかい、中将やと意見する程度や。ちなみに大将は合わせても5人しかおらん」

 

「北京、上海、南京(ナンキン)西安(シーアン)成都(チェンドゥ)の5都市に1人ずつおりますよ。中将は各支部に最低1人はいますから、全体では20人ほどになります」

 

 とりあえずココ姉妹が来る理由については納得したので、迫る会議とやらの開催場所についてもついでに尋ねておくと、意外にもここ上海らしいので護衛としては会議まで出来る限り蘭盛街にいてくれれば守りやすいな。

 まぁそうも言ってられない立場にあるのは今の話で地位的な問題からもわかるから、幸姉との会合も含めて気を張らないと。

 そうした雑談しながらでも仕事はこなす劉蘭の有能さはさすがだが、これ以上は邪魔だろうと身を引いておきつつ、この仕事部屋からは出ないと聞いてオレもココ姉妹と猴が来るまでの間は功夫に時間を費やすことにする。

 あと2日しかない現状、メイファンさんに言われた通りにしていたら可能性すら見出だせずに終わるのは確実だからな。

 その覚悟でソファーで座禅を組んで集中し始めたオレに対して、劉蘭もメイファンさんもなるべく物音を立てないように気を遣ってはくれるが、人がいる空間で音がしない方が不自然なので2人には普通にしてもらうようにお願い。

 えっと……気の流れは血液と似たもので、全身に伸びる気脈を感じ取り、そこを流れる気の循環を……

 

「なぁ劉蘭。趙煬はいつ来るんやったか」

 

「予定では4日後になるはずですが、役者や映画監督との人脈作りは焦ってはいけませんからね。趙煬には『ファンみたいなテンションは抑えるように』とは言い聞かせてます」

 

「……ん? 趙煬って今そんなことやってんの!? 話が進むの早くないか!?」

 

「こーらアホンダラ。集中せんかい」

 

「仕事もアクション俳優に徐々にシフトしていくと思いますが、まだどちらかというと見る側の気持ちが強そうですよ」

 

「マジか……今のうちにサイン貰っておこうかな……いてっ」

 

「余裕やなぁ自分。そないな感じなら明日にでもテストしたるけど、どうする?」

 

 メイファンさんに言われたことを反復して感覚に神経を集中し始めたところで、普通にしてとは言ったがあまりに普通に雑談を始めた劉蘭とメイファンさんの話につい耳が反応して、趙煬が映画界に身を投じていることを知る。

 オレが趙煬が本当はアクション俳優になりたいことを聞いたのが2ヶ月ほど前だったし、それを知るのは劉蘭くらいのものなはずだが、そんなにトントン拍子で話が進んでいたのか。

 と、完全に趙煬のことで頭がいっぱいになっていたオレの頭にメイファンのチョップが炸裂し、テストの期限を縮める発言までされてしまうとオレはもう切り替えるしかなかった。

 

 功夫に関しては今夜また集中し直すことにして、劉蘭の仕事が一段落したところでココ姉妹から上海に到着した連絡が入り、出迎えるために蘭盛街の南出入り口の方へと足を運ぶ。

 時間も調度良いので合流したらまずは食事にしようと、移動の途中にメイファンさんが飯店の方に寄って席を予約。

 昨日も食べた飯店なので味は保証されてるからオレも何を食べるか今から少し迷うな。

 そんな少しフワフワとした気持ちがありながら出入り口の前で待っていると、小柄な体躯を利用して1台のタクシーに乗ってきたココ姉妹と猴が到着。

 アリアを黒髪にして民族衣装を着させたような容姿のココ姉妹は、やはりパッと見では全く区別がつかなくて、オレを見て真っ先に反応したのが狙姐(ジュジュ)で、1人だけ眼鏡をしているのが機嬢(ジーニャン)だということしかわからん。猛妹(メイメイ)炮娘(パオニャン)は……どっちでもいいか。

 

「京夜ー!」

 

「ぐえっ!」

 

 ココ姉妹に関しては追々見分け方は考えるとして、最後にタクシーを出てきた猿っぽい雰囲気のある武偵高のカットオフ・セーラー服を着た少女、猴がオレと目が合うなりいきなりタックルしてきて抱きつかれる。

 その勢いはラグビー選手並みだったが、体重の軽さのおかげでダメージは少なくて済んだ。挨拶が過激ですよ猴さん……

 

「どうしてキョーヤいるネ」

 

「劉蘭呼んだか?」

 

「逢い引きアル!」

 

「大事な時に何やってるネ」

 

「どうして京夜がいるですか?」

 

「逢い引きじゃないが、オレもメイファンさんと同じく蘭の護衛をな。急なことだからサプライズになって悪かった」

 

 開幕から先制パンチをもらったが、なついてくる猴を少し離しつつオレがここにいるのを疑問に思ったココ達に答えておく。

 ただその理由にというよりもオレが劉蘭を名前で呼んだことに女子らしく反応して「キョーヤが」「劉蘭を」「蘭って」「呼んだヨ」と言葉を分けて驚かれる。

 そのせいでまだ慣れてない劉蘭がまた顔を赤らめてフリーズ気味になって、面白がったココ達がニヤニヤしながら劉蘭をこれでもかと攻め立てると、なんかオレが入り込めない女子空間が形成されてしまった。

 

「ホンマうるさいわこのガキどもは」

 

 ココ達に攻められて珍しく反撃できずにいる劉蘭を見かねてメイファンさんが助け船を出しココ達を掴み上げると、引き剥がすように4人まとめて近くに投げ飛ばすと、身軽さを見せつけるように4人ともが華麗な身のこなしで着地して横一列に別々のポーズで並んでみせた。あれ前に香港で見たなぁ。何だっけ。四神のポーズだっけ。

 

「それじゃあ京夜もしばらく一緒にいられるですか?」

 

「だな。少なくとも会議が無事に終わるまではそうなる」

 

「蘭盛街はもう見たですか? まだなら猴が案内するですよ! 日本では猴がお世話になったですから、こっちでは猴がお世話するです!」

 

「ああ、ありがとな猴。何か困ったら頼ることにするよ」

 

 万能の武人『万武(ワンウー)』とか自称し、かつてはあのイ・ウーにも身を置いていただけあって、その実力は特技を分けた4人が合わさればオレをも凌ぐココ姉妹だが、なんだかこうして見るとギャグ要員にも思えてくる。

 そのココ達を無視するようにテンションがやたら高い猴がお尻の辺りから伸びる細長い尻尾をフリフリしながら見上げてくるので、純粋すぎるその瞳に勝てなかったオレはその頭を撫でながら対応。

 その後、どうにか復活した劉蘭が場を落ち着かせてとりあえず食事にしようと、さっきメイファンさんが押さえてくれた飯店へと向かい、みんなでワイワイ盛り上がりながら席へと着く。

 昼時ということで客もそれなりに席を埋めている飯店では、多少騒いだところで気にするような人もいなく、うるさいココ達やはしゃぐ猴を咎める人もメイファンさんくらい。

 姉妹なのに注文する料理は全くバラバラなのが意外だったココ達は、その理由を全員でシェアするから同じものを頼むメリットがないと説明し納得させられて、やっぱり総量は減るだろうと冷静なツッコミを入れておく。

 そこを突かれるとココ達も好きなものをたくさん食べたい欲が出たか、1品の奪い合いのジャンケンを繰り広げたりとあったが、いざ料理が到着すればやはり目移りするようでジャンケンの無効化が即決定し笑ってしまった。

 それで全員の料理が出揃うまではお預けにしていたので、最後のオレと劉蘭の料理が来たところでようやくのいただきます。

 日本の所作ではあるがみんなで手を合わせて「いただきます」を唱えて箸を持ち、いざ実食というところまで来て、異変が起こる。

 意外とオレも待ちきれなくて口に運ぶ手が早かったのもあって、誰よりも早く料理に手をつけたのだが、その手が急に口の前でピタリと動きを止めて口に入ることを拒否。

 これはオレの死の回避が発動した時の反応と同じだったため、今にも口に含もうとする劉蘭達も危険だと死の予感が察知し、しかし周囲に悟られないように皆に制止を呼びかけた。

 

「食べるな。料理に毒が盛られてる可能性がある」

 

 その呼びかけでギリギリのところで踏みとどまった一同は、サッと料理に視線を落としてからその手の箸を置き、メイファンさんは鋭い眼光で厨房の方に向かった。

 そしてオレはこの毒がオレ達の料理にだけ盛られたものなのかを確かめるために飯店の客を1人1人見て死の予感が発動するかを見るが、反応はなし。どうやらオレ達をピンポイントで狙ったもののようだ。

 さらに情報を集めるためにテーブルにある料理を一通り口まで運んでみて、死の回避が発動する料理を厳選してみると、驚くほど正確に劉蘭とオレの料理にだけ毒が盛られていることもわかった。

 

「明らかに蘭を狙った犯行だ。だが騒ぎ立てれば蘭盛街の評判に影響する。会議の前に問題が起きるのは良くない」

 

「暗殺者はそれも含めて狙っているのでしょう。おそらくは店の方に非はありません。毒を盛ったタイミングは相当に限られた時間に手際よく行われたと考えるべきです」

 

「だとするとこの店にいる。もしくはいた住民以外の観光客とかに紛れてた可能性が高いな。ココ。お前達の目ならそれらしいやつらがわかるだろ。ダメ元で探ってくれ」

 

『任せるネ』

 

「猴も、オレにはわからないが、この料理にあるかもな変な臭いを辿れないか試してくれるか?」

 

「あいっ。わかりました」

 

 相手は人間の心理をよくわかってる。

 信頼できる人で結束を高めようとする食事の席では、どうしても人に注意が向いて警戒が緩む。

 そこを狙い打つようにして仕掛けてきたのが誰かはまだわからないが、オレには少し確信に近いものがあるな。

 いるぞ。もうすでにこの近くに、Nのやつらが。


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