緋弾のアリア~影の武偵~   作:ダブルマジック

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Bullet147

 

「くっそが……」

 

 そんな悪態が出てしまうほどの急所攻撃にイラッとしながら、陽陰が出してきた自らの強化コピー式神との距離を一定に保って回避し続ける。

 陽陰が出してきた照魔鏡なるもので映し取られ、そっくりそのままのオレのスペックに式神のマシマシのステータスのコンボは厄介すぎる。

 同じ攻撃を繰り出したとしてもこっちが負けてしまうとか正直やってられん。

 だからといって腐っても式神の攻撃が止まるわけもないので、繰り出された横腹への抜き手のフェイントからの逆の手による目潰しを紙一重で首を振って避けて、その腕を取って一本背負いでカウンター。

 しかし式神は投げられる途中で取られた腕を強引に引っこ抜いてオレのほぼ真上からのし掛かるように背中を押して倒そうとする。

 ただ倒れると潰されてマウントを取られる危険があったので、式神の加えた下方向の力に少し抗って前へと倒れ、頭を内側に入れて丸めて足裏もうまく使って前転しながら式神を前に蹴り飛ばしてやる。

 それによってのし掛かられることは防いだものの、吹き飛ぶ瞬間に背中に拳を叩き込まれてちょっとむせるが、背中の防御力は人体でも高い方なので普通に痛いレベルで戦闘にさしたる支障はない。

 オレよりもさらに前に吹き飛んだ式神は同じような前転からの起き上がりで難なくリカバリーし振り向いてきて、オレも前転を1回に留めて後転からの倒立で立ち上がり次の攻撃に備えた。キツい……

 

『狙えるポイントからズラされる』

 

 今や孤軍奮闘の模様になったオレ達は、姿の見えない仲間がどういう状況なのかをインカムからしか把握できない。

 だから羽鳥達も必要な情報だけをインカムに通してくれていて、今も遠くの方で何かの崩れる音が響いてからセーラの声が聞こえ、陽陰と強力な式神を相手にするセーラは余裕がなさそうだ。

 

『すまないセーラ。及ばないかもしれんが私が援護する。京夜達は一刻も早く再合流してくれ。超能力抜きで剣術のみは私も精神力より先に体力が持たないかもしれん』

 

『式神の尻尾には気をつけたまえ。直撃すれば太い綱で叩かれたような衝撃になるはずだ』

 

『あの男がまた何か言ったらリピートしろ。こちらにも変化があるかもしれん』

 

 陽陰のいるところの光源が少し遠くてセーラへの攻撃がどんなものなのか把握してないが、ジリ貧になってるセーラの援護は接近中だったジャンヌがしてくれるようで、何をするかわかったもんじゃない陽陰の言葉を拾える存在はありがたい。

 策士としての才能に秀でたジャンヌだが、剣術もかつてオレ達を苦しめた実力がある。そう簡単には崩れないだろう。

 

「それでも……総力でかかる方がいいし、な!」

 

 そのジャンヌにも大仕事があるので、前線に立たせる時間は極力は少なくしてやりたい。

 そのためにも目の前の自分を倒すしかないが、光源から離されたせいで元々が黒い物体の式神は夜の闇に紛れるように動き、こちらの意識的な死角を攻めてくる。

 今もインカムにちょっと集中しただけで足下の小石を最小の動作で蹴り上げて目に飛ばしてきて、予備動作が見えにくくて回避が遅れて顔には小石が当たってしまった。

 顔っていうのは攻撃された際に隙が出来やすく、特に視覚を刺激する攻撃は普段からそのほとんどを頼る人間には致命的な隙を生む。

 相撲における猫だましなどがそれになるが、それに近い攻撃で死角を意図的に作り出した式神は低い姿勢から地面を縫うように接近して低姿勢からの蹴り上げで的確に顎を撃ち抜きにきた。

 が、ここまでの動きはオレがよくやる奇襲そのものだったので、ほとんど勘で下から来ることを予知してワイヤーを取り出し、バック宙と同時に蹴り上げてきた右足首にワイヤーを巻きつけてやり回避。

 すぐにワイヤーの片端に分銅を付けて近くの木の幹に投げて巻きつけて拘束を完了。

 これで動きを封じられたか。と思ったのは一瞬で、ワイヤーが突っ張らない位置で立ち上がった式神は強引にその右足を振り回して足首から先をカット。

 そのカットされた足を蹴り飛ばしてオレにぶつけてきて、巧妙に爆発の時間もコントロールして強く弾いても十分な距離が稼げずに爆発に巻き込まれてしまうのを把握。

 しかし死の回避が発動しなかったならば即死することはないはずなので、決死の覚悟でほぼ真上に弾いてからしゃがんで制服を被って頭を守って丸くなり、直後に物凄い衝撃と熱が襲ってきてどうしようもなくなる。

 

「……………ぶはっ!」

 

 熱気を吸い込むと危ないので呼吸を止めてやり過ごし、爆発が収まってから起き上がって呼吸を再開したが、ここは完全に迂闊だった。

 死を回避した安堵から状況判断が鈍り、ワイヤーの拘束を抜けた式神の接近からの全力の蹴りを立ち膝の状態だったオレの胸の中心を捉えて吹き飛ばしてしまう。

 あまりの衝撃で受け身すら取れずに後ろへと転がってうつ伏せに倒れたオレは、今ので心臓を止められたことがわかってしまう。

 心肺停止してすぐに意識が飛ぶことはないが、3秒も止まれば危険域になるため、なんとかして再び心臓を動かさないと……ダメ……な……ッ!

 そうこう高速思考したせいで早くも脳への異常が来て意識が飛びかけたものの、無防備状態のオレを追撃してきた式神がさらに蹴りを放ってオレをサッカーボールのように吹き飛ばし、その衝撃で奇跡的に心臓が活動再開して意識が戻る。

 しかしノーガードで受けたダメージは相当ヤバく、全身に芯から痺れるような感覚が残り、口からも血を吐き出してしまっていた。

 なんとか今度は受け身を取って地面を転がりリカバリーして立ち上がれたものの、痺れで感覚が鈍ってしばらくは細かい調整ができなさそうで、ワイヤーを取り出すのも厳しいかもしれない。

 

「くっそ……羽鳥以来だぞ。こんなギャグみたいなダメージ……」

 

 相手にしてみてわかったが、オレって敵にするとクソ過ぎるな。

 マジでこの状態のオレを相手にしたヒルダには帰ったら謝っておこう。洒落にならん。

 相性の問題もあるんだが、オレは基本的に急所攻撃は心得てても即死攻撃がほとんどないから、肝心の死の回避が今回は仕事をしない。

 それは死という概念がないだろう式神も同じだろうが、そうなると手加減の一切ないステータス上乗せの向こうの方が自力で勝ってしまう。

 

「…………ああ。そうか。そうだった」

 

 そこまで考えてからオレはふと思い至る。

 相手は式神。武偵法9条の及ばない云わば陽陰の武器の1つだ。

 なら、こっちが手加減してやる必要なんてないじゃないか。

 

「…………ふぅー」

 

 ゆっくりと息を吐いて呼吸を整えるのと同時に意識を沈めていき、相手との戦力の差を冷静に頭で反復。

 向こうはオレのコピーとはいえ丸腰。

 身体能力は軒並み向上してるが、まともにやり合いのはオレのスタイルじゃない。

 コピーにはさっきやってたが、その辺のものを武器にする武器術もあり、森林地帯には式神が雪を取り除いたせいで武器がてんこ盛り。ここは注意したい。

 だがこっちには強力な単分子振動刀にワイヤー、クナイ、その他ちょっとの武装で固めてある。これらをフル動員すれば勝機はある。

 

「…………来いよ猿真似」

 

 そんな挑発で上下する感情があるとは思わないが、これはオレが『切り替える』ためのスイッチのようなもので、そこからのオレはもう相手に対しての容赦はない。

 完全に目は据わってるだろうオレの変化に勘づいたように、さっきまでの攻撃的な姿勢から迎撃体勢になった式神には何か本能でもあるのか、こちらが仕掛けるのをひたすらに待つ感じだ。

 なら望み通りに仕掛けてやるから、ちゃんとしのいでみせろよ。仮にもオレのコピーならな。

 とかなんとか考えられるうちはオレもまだ切り替えに失敗してると思うが、体の方は無駄な力みもなく痛みを気にせずに動かせそうだ。

 そうして動いたオレの初動は単分子振動刀の抜刀。

 距離的に抜いたところで仕方ないわけだが、抜いた直後にオレはその単分子振動刀を投擲。

 単分子振動刀はやや上から下に抜刀するため、投擲に繋げると下手投げの形になるが、切り裂くのに用いる単分子振動刀を突き刺すように使ったところで威力は発揮されない。

 しかしだ。オレは投擲の時に右腕のミズチのアンカーを単分子振動刀の柄の先端に取りつけてやった。

 そうなればこれはもう投げナイフのような軌道では迫らず、すかさずワイヤーを巻き取りつつ右腕を上手く振るえば刃が式神を切り裂くってわけだ。

 名付けて『単分子振動刀ウィップ』。

 その単分子振動刀ウィップでまずは式神の首を切り飛ばしてやり、ぼとりと落ちた頭は式神の足下で爆発。すると思ったが、直前で蹴り飛ばしてオレと式神の間で頭は爆発し視界が遮られる。

 戻ってきた単分子振動刀をキャッチして収めながら爆心地を突っ切るように走り、同時に閃光弾を右斜めへと放り炸裂させる。

 そうすることで閃光弾が作り出した式神の影で位置を確認でき、オレは爆炎に紛れて奇襲が可能。

 式神には視覚があっても目眩ましは効かないのはわかってるので、それを踏まえて爆炎を抜けて頭が再生した式神に全力の飛び蹴りを食らわせて仰け反らせることに成功。

 続けてクナイを3本、額と両肩に投げ刺して後ろへと重心を傾け、踏ん張っていた足をミズチのアンカーを取りつけて引っ張り転倒させる。

 しかし式神も倒れた反動を利用して後転倒立で立て直し、アンカーのワイヤーを引っ張り出す力で抗ったので、壊されては困るからワイヤーの巻き取りをやめてアンカーが取れてから回収。

 その隙に刺さっていたクナイを抜いて右手の指に挟んで持ちつつで接近してきた式神は、爪のようにクナイを振るってオレの頸動脈を狙う。

 狙い通り『凶器』を手にした式神は最も殺傷力のある攻撃を仕掛けてくれたので、死んでいた死の回避が復活してその攻撃をバックステップで躱して、返しの引っ掻きも加速する前に肘を殴ることで阻止。

 そこから流れるように合気道の要領で左足を払い、右側頭部を掌打で撃ち体が横に回転する攻撃で式神を倒し、倒れる前に右手首を左手で掴んで右手で単分子振動刀を抜き肘から先を切断。

 力を失った右手をすぐに倒れる式神の少し上に放り、滑り落ちたクナイを素早く回収し大きくバックステップ。

 途端、式神のいる地点は爆炎に包まれて何も見えなくなる。

 

「誘爆で倒せるなら苦労はないが」

 

 それでも倒したという感覚はなかったので、おそらく完全ではないものの爆発に対する耐性はある――極力だが爆発を避けてる節があったしな――から、やはり幸姉の言っていた4分割以上の細切りにしなきゃダメだな。

 

『はぁ、はぁ……すまん。手短に伝える』

 

 どうなってるかもわからない爆心地に突っ込むのは得策ではないと判断して呼吸を整えながら構えていたら、インカムからジャンヌの戦闘中と見られる息の荒い声が聞こえてきて、先ほどの趙煬の言葉を実行して陽陰の言葉を伝言してくれる。

 

『私達の……「協力者」が割れてしまった……はぁ、はぁ……今、陽陰はその協力者に襲撃を……始める……』

 

 その言葉を聞いた瞬間、オレの脳裏には遠くロンドンの地でのんびり過ごしているであろうメヌエットの顔が浮かび、顔から血の気が引く。

 

「ジャンヌ、お前が喋ったのか?」

 

『いや、先の真田幸音の香港での件と……今回ので……シャーロックに近い推理力を要する人物が……裏にいると読まれた……』

 

 柄にもなくちょっと焦ったオレは、そんなことあるはずもないのに反射的に失礼な言葉を返して、それにちゃんと答えてくれたジャンヌは陽陰が自らの導き出したことだと伝えてくる。

 だがそうなると陽陰は今からこの場から意識をヨーロッパの方に飛ばすことになるため、完全に無防備な状態となる。

 

「今のうちに陽陰を拘束できないのか?」

 

『それができないから……陽陰も余裕を見せて……やろうとしているんだろう!』

 

 だからチャンスでもある。と意見するも即答に近い形でちょっと怒鳴るように返されて返す言葉もない。

 つまり陽陰の式神がセーラとジャンヌの2人を相手にしてなお、陽陰を守り抜けるということ。

 

『キンキンうるさいよ君。可愛い友人の危機に焦る気持ちもわかるが、チャンスであることに変わりはないだろう』

 

『さっさと目の前の敵を倒せ。そうすれば総力戦で式神に対抗できる』

 

 戦闘中で喋る余裕がなかったのかと思っていた羽鳥と趙煬だが、らしくないオレの言葉を聞いて冷静にどうすべきを明確にしてくる。

 その言葉で混乱しかけていた頭がすぅっとクリーンになり、取るべき行動の最短を導き出す。

 陽陰の目がメヌエットに向いてしまったのは仕方ないとしよう。

 そのために向こうに飛ばす式神を操るため本人の意識がここからなくなる。

 メヌエットが襲撃される前にこっちの陽陰を捕らえれば結果としてメヌエットも救える。

 それを現実にするためには……

 

「目の前の敵を倒す、か。上等」

 

 乱れた思考を立て直して再び意識を沈めたオレは、ようやく晴れた煙の中から出てきた式神を見据えて、本格的にどう細切りにしてやろうか思考。

 

『どうやら……陽陰が意識を飛ばしたようだ……思ったより早い。急げ』

 

 急かすようなジャンヌの言葉が聞こえて、再び思考が乱れるかと思ったが、集中力は持続してむしろ本能的に式神を倒せる策が思いつく。動物的……

 オレがコピー攻略の算段が立ったところで、インカムからちょっとイッちゃってる羽鳥の笑い声が漏れ聞こえたが今はスルーし、危険も伴うが確実に倒す策を実行する覚悟を決める。

 その号令となるような4回連続の爆発音を聴覚が捉えた瞬間、まずは単分子振動刀ウィップで横凪ぎに払い式神の胴を寸断する一撃を放つ。

 当然、式神はバックステップでそれを躱して手元に戻ったのを見てから一気に接近してくるが、これは式神の接近を誘発するための隙を作っただけ。

 そしてオレならこれが罠である可能性を考えて別のアクションをして様子を見て懐に入るか決める。

 案の定、式神は走りながら掬うように小石を拾って筋力任せに小石の散弾をオレへと浴びせにくるが、そのくらいしかないだろうと読んで上着を脱いで前に放って散弾を防ぎ、ついでにブラインドとして利用する。

 ここで式神は姿なきオレを警戒して左右どちらかにスライドすると思うが、これも読んで分銅付きのワイヤーを両手で操り左右から挟み込むように投げ入れ逃げ道を塞ぐ。

 上手くいけばここで式神をワイヤーが捕らえて上半身だけでも拘束できるが、そう上手くいかないことは承知の上。

 

「肋骨の1本くらいはくれてやるよ」

 

 そして上着も落ちて前方の景色が見えると、ワイヤーは深く屈んだ式神をスルーして空振りし大きな円を描きながら戻ってくるが、その前にワイヤーを手放すことでそれを防ぎつつ、もう片方にも取り付けた分銅によってバランスを保ったワイヤーは回りながら式神の頭上を通過。

 そこでまた4回の爆発音が聞こえるがこっちも生死の境をさ迷いそうな正念場なのでスルーしてワイヤーと一緒に接近したオレは、紙一重なタイミングでワイヤーをやり過ごした直後の式神の地を這うような回し蹴りを前方宙返りで躱して頭上を飛び越える。

 これと同時にちょっとだけ先を進んでいたワイヤーの先にアンカーを地面に撃って止めて着地。

 直後に回転の力を利用して立ち上がり左拳を全力で放ってきた式神の一撃を脇腹に受けて悶絶。

 気絶しそうなほどの一撃だったが、それを受けたのはあえてだ。撃ち切った拳にパワーはない。

 そうして止まった式神の腕を両手でガッシリと掴んで数秒。オレの後ろで塞き止められたワイヤーがアンカーのワイヤーを起点にぐるりと回ってオレと式神の胴に巻き付いてくる。

 しかしそれを意図的に狙ったオレは式神と一緒に巻き取られる前に掴んでいた腕を全力で下に投げて屈み、回ってきたワイヤーは式神の上半身だけを巻き取り腕の自由を奪い、間髪入れずに単分子振動刀を抜いて式神の両足首を切断して転倒させる。

 バランスを崩して倒れた式神にさらに畳み掛けるように単分子振動刀を振るって膝、腰、胸、首と4分割以上にぶった切ってやってから、ワイヤーが絡んでどうしようもなくなったミズチのアンカーのワイヤーを切ってその場を全力で離脱。

 離脱に有した時間は1秒あるかないかだっため、かなりの至近距離で式神の爆散に巻き込まれて、何度も地面を転がって木の幹にぶつかりようやく止まった。

 火傷も軽度だがいくつか出来ちゃったようで、拳を受けた脇腹も痛いとかのレベルじゃない。

 

「…………こんな勝利じゃ身が持たん……」

 

 だが式神はなんとか撃破に成功し、爆発によって舞い上がっていた制服の上着がヒラヒラと近くに落ちてきたのを起き上がって拾い、ボロボロのそれを気休め程度にまた着直して沈めていた意識を戻し切り替える。

 

「ここからは武偵、猿飛京夜だ。オレは武偵だ。武偵なんだ」

 

 切り替えていた時間が長かったので、もうすぐには元に戻らないだろうと思い、陽陰のいる場所を目指しながら自己暗示のように自分に言い聞かせておく。

 そういや理子にはもうこれをやるなって言われてたっけな。

 悪いな、理子。オレはそのお願いを聞いてやれなかったが、お前が言ってくれた『綺麗な手』ってやつは、ギリギリ守り抜いたよ。それで勘弁してくれ。

 光源が近づく中でふと、病院で理子が言っていたことを思い出して、それに対して言い訳のように謝罪するが、帰ったらちゃんと言葉にしようと思う。

 それで怒られて殴る蹴るがあっても、それは甘んじて受けよう。脇腹は防御しよう、うん。

 

「待たせた……な……」

 

 そうして再び空洞地帯に戻ってくると、すでに再合流していた羽鳥と趙煬はグロッキー寸前のジャンヌを庇いながら、見えにくい式神を相手に奮闘していた。

 いやね、戦闘中の爆発音で先に倒してたのはわかってたけど、何で2人ともかなりの軽傷で済んでるわけ? お兄さんもう自分の情けなさに挫けそう。

 

「遅いじゃないか。完全に遅刻だよ」

 

「2分程度の差で威張るな」

 

「お前ら元気すぎない?」

 

「式神とはいえ所詮は紙だからね。持ってきた薬品が色々と試せて楽しかったよ」

 

「敵を知り己を知れば百戦危うからずとはこのことだろう。自分の弱点など承知している」

 

「さいですか……」

 

 こっちが必死こいて撃破した強化コピーなのに、こいつらにとってはただの実験材料や練習台程度でしかなかったと聞くとマジでヘコむ。もうオレ休んでいいですかね。

 だがそんなことを思ってる暇はない。こうしてる今もメヌエットに危機が迫っているのだから。

 メヌエットを殺させやしないぞ、陽陰!


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