練りに練った作戦でついに土御門陽陰をオレ達の前に引っ張り出したまでは良かったが、規格外すぎる超能力に攻略の糸口をなかなか見つけられず足踏み。
羽鳥達の分析で陽陰がすでに式神らしき見えない何かを操っていて、そいつの出す炎が攻撃に向くと厄介極まりない。
「さて、やるにしても数がいるのは面倒だな。『こいつ』も万能ではないから……ん」
そして陽陰も本格的にオレ達を排除にしかかろうと雰囲気を変えたのだが、この間にもセーラの矢が陽陰を狙い、見えない式神が炎で防いだところは変わらない。
だがその炎の出力が今までより少し落ちたので、陽陰もそれに気づき言葉を切る。
「ちっ。やはり季節と時間の関係で『朱雀』を降ろしたのはベストではなかったな。銀氷の魔女が面倒になるが力の出せる『玄武』にするか」
その変化自体は予測の範疇だったような口振りの陽陰は、コートに突っ込んでいた手を抜いて見えない何かに触れ、言うように式神に変化を加えようとするので、なんだかわからないが止めるべきと思ったオレと羽鳥と趙煬はほぼ同時に手裏剣を、銃弾を、槍撃を陽陰に放つ。
位置関係では陽陰を三角形で囲んだ形だったので、かなり対処は難しい攻撃だったはずだが、これも全て見えない式神に阻まれてしまった。
しかしここでもセーラの矢が活躍し、ジャンヌの氷の超能力も乗ってる矢が見えない何かに突き刺さり、そこからパキパキと周囲を凍らせて上腕と思われる部分が氷に覆われ見えるようになる。
その上腕の大きさから見えなかった式神の全長をおおよそ割り出すと、3メートルはあるな。しかも閻よりもガタイが良い。拳だけで50センチはあるぞ。
「直接受けると面倒だ。これ以上あの矢は食らうなよ」
そうして観察していたら、式神の変化が終わったようで……いや、炎を使えば凍結なんて問題ないはずなのにそのままにしてることから、観察の前より完了してたのは間違いないか。
『陽陰は何をした? 直前に喋っていたことを教えろ』
「時間がどうだ季節がどうだとか、朱雀を降ろしただの、玄武にするかだの。四神ってやつが関係してるのか?」
『時季と朱雀……玄武……』
戦闘の合間にジャンヌの質問が飛んでオレが即座に答えてから思考してくれるのだが、その前に周囲からゾゾゾゾゾッ! と地鳴りのような微震動が発生。
何事かと警戒を強めて構えていると、この森林地帯にあっただろう雪が吸い寄せられるように大量に降り注いできて、陽陰の近くにいる式神の掲げられていた腕の上で集まり、うねりを上げながら溶けて大きな水の塊になる。大きさは……直径10メートルほど。
「マジかよ……」
「炎の次は水か。忙しいね」
「呑気なことを言ってる場合か」
これほどの量の水を操る式神も大概だが、それを苦もなく扱う陽陰が化け物。
想定外の連続で再び思考が止まりかけるが、それを許すほど陽陰も甘くなく、見える分マシになったが水の塊から散弾のように放たれた水がオレ達を急襲。
各々ですぐに回避行動に入って直撃したやつはいなかったが、外れた水の弾丸は近くの木の幹に深い穴を穿っていたので、威力は銃弾と同じかそれ以上だ。
『……四神ではない。それよりももっと土御門陽陰と関わりのあるものだ』
セーラの矢も放たれてはいたのだが、厄介だと話したジャンヌの超能力が効いてるのか、塊から少しだけの量を抜き取ってそれを矢の防御にあてがって、その水はたちまち凍りつき地面に落ちるがそれで終わり。矢が通らないのは変わらない。
だがここまでの考察で何か閃いたらしいジャンヌの声を聞きながら、嵐のように撃たれる水の弾丸を全力回避し続ける。巧妙が見えるか?
『陰陽師である土御門陽陰が操っているのは、陰陽道にある十二の神、十二神将。もしくは十二天将と呼ばれるものだろう。十二の神はそれぞれで子から亥の十二支と合致し、五行の属性と季節と方角の振り分けがあるのだ』
「すまないが、分かりやすく、まとめて、くれない、か!」
『要するにだ。現在時刻がもうすぐ深夜の0時になるが、時間にして子の刻となるそこに冬の季節をあてがられた十二天将が玄武なのだ。つまりベストの能力をその式神に宿している可能性が高い』
「突破口は?」
『力の弱くなる丑の刻まで持ちこたえ……』
「「「却下だ」」」
どうやら陽陰の式神の能力に関しての見当がついたようで、今の玄武を降ろした状態は力のピークらしく、それを削ぐには丑の刻となる午前1時以降まで粘るしかないとか言われて、現在進行形でピンチのオレ達はインカムが故障しそうなシンクロでツッコむ。
全部がインカムに通ってないが、1つでもジャンヌの耳に届けばいいだろ。
「作戦会議もいいが、俺のこれを止めるつもりなら全力で考えろよガキ共」
その様子を再びコートのポケットに手を突っ込んだ陽陰が見て煽ってくるが、ここでイラついて仕掛ければ陽陰の思う壺。
それがわかってる羽鳥と趙煬――陽陰は日本語だが雰囲気で――も下手に仕掛けには出ない。
『丑の刻はダメ』
しかしこうも水の超能力が強力だと時間稼ぎが得策にも思えてきたところで、唐突にセーラが言葉を発してそれはダメだと言う。
「何でだ?」
『ジャンヌの推測はたぶん正しい。なら丑の刻の神は
「……つまり今よりも厄介なものを出される可能性があるってことだね」
「ならば水を使うとわかってるあれをどうにかする方が現実的だな」
「時間稼ぎの次は時間制限かよ」
セーラの話によるとジャンヌの話した十二天将の一番が丑の刻に出てくるかもってことで、陰陽道の五行で特別枠とされてる貴人とやらを相手にする方が厄介だという。
それなら目に見えて水を操る玄武を倒す方が何か浮かぶだろうと満場一致で丑の刻までの決着に合意し、集めた情報から式神の打倒を思案し始める。
式神の水の弾丸は確実に水球の総量を削っているはず。なんだが、目に見える変化がなくて全力回避の中で羽鳥と趙煬を見ると、その近くに着弾した水の弾丸は雨粒レベルの水滴で水球へと戻っているのがわかる。
「水の弾丸であの水球が無くなることはないっぽいな。目に見える減量はジャンヌの凍らせてるやつだけだ」
「らしいね。となるとあれを分離前に凍結させられれば活路はあるかな」
「そんな大きな力が使えるのか?」
『…………溜めるのに少しかかるが、一撃なら可能だ。だがそうなるとここから一切の超能力での援護はできんぞ』
式神自体の戦闘能力も不安はあるが、まずは主武器の水を奪ってしまおうとジャンヌの超能力を頼りに一発勝負に出ることになる。
しかしそうはなっても問題は出てくる。
「問題はどうやってそれを当てるかだが……」
「ジャンヌの一撃のリーチは?」
『すまないがセーラの矢では耐えきれないレベルだから、私も出なければならない。10分ほどは時間を稼げ。その間に隙も作れるようにも頼む』
その一撃の役目を負うジャンヌもどうやらこちらに来るようで、その間に式神に攻撃を当てる方法を探しておけとか丸投げって感じの言葉に窮地の中でさえオレ達はちょっと苦笑いをする。
陽陰戦で超能力者が近づくのは得策ではないと作戦前に告げた本人がその危険を冒してまでやると言うのなら、オレ達も踏ん張らなきゃ男じゃない。
まぁ2名ほど女だがそんな細かいことはどうでもいいとして、とにかく見えない式神の死角やらを探るために各々が回避の中でやれることをやってみる。
まずはオレが回避と同時にクナイと閃光弾を投げ放って、視角のある相手かを見極める。
炸裂した閃光弾の光からの間髪入れずのクナイが陽陰に迫ったものの、完全に目を閉じていた陽陰にクナイは当たらず、見えない式神の左腕らしきものに弾かれてしまう。
つまり式神に目眩ましは効かないってことか。
「もう1つわかった。こっちの攻撃がいくらか陽陰に迫れば、あれの攻撃頻度も落ちる」
「あれにも思考回路と呼べるものがあるんだね。攻撃のリソースを削って防御にリソースを回した結果だ」
だが収穫はそれだけでなく、オレの攻撃が迫った時に式神の水の弾丸がその数をいくらか減らしたのがわかり、それに気づいた羽鳥と趙煬も次の考察に移る。
次に動いた趙煬は、今まで回避していた水の弾丸を動きを止めてその長槍を振り回すことで弾いて防御しつつ、なんと正面を切って歩いて接近。
近づくに連れて着弾速度も上がるが、重そうな長槍を振り回してるとは思えない槍捌きでその全てを弾いて、これには陽陰も「ははっ」と称賛するような笑いを漏らす。
「ふんっ!」
そして陽陰まであと5メートルほどにまで近づいたところで、ジャンヌが凍らせた上腕を目印に趙煬がその掲げられていた腕に一閃。振り回していた勢いを利用して一撃を放つ。
しかしこれも左腕らしきものが長槍を弾き防御されてしまい、趙煬もすぐさま迫った水の弾丸を躱すために後退を余儀なくされ……
などと回避しながらに見ていたオレとは違い、趙煬の攻撃に追撃するように羽鳥が陽陰に発砲し間隙を縫い、さらに別方向からセーラも陽陰を射抜こうと矢を放つ。
間隔としては趙煬の槍が弾かれた瞬間に羽鳥とセーラの攻撃が陽陰に迫った感じだったが、左腕らしきものも間に合わないタイミングでも攻撃は陽陰に届くことなく弾かれる。
「何に弾かれたかわかったかい?」
「……しなりのあるものだった、かもしれない」
「俺にも風切り音が聞こえた。太さは直径で30センチはあるな」
『尻尾がある。猫みたいに長いやつ』
その様子をほとんど余裕がなかったのか、攻撃が止んでいた中で見ていたオレと待避しながらの趙煬と目の良いセーラでほぼ意見が一致。
どうやら式神には二足歩行に加えて長い尻尾も備わってるようで、あれを掻い潜って陽陰に攻撃を通すのは並の波状攻撃では無理そうだ。
「人材の寄せ集めにしては動きが良いな。協調性があることに驚くと同時に、少々だがこれの手も足りん。このあとに緋緋のやつに使おうと思っていたが、致し方あるまい」
ジャンヌの攻撃を通す算段もまともにできないまま、再び式神の水の弾丸に攻め立てられるオレ達だったが、先ほどの攻防を見て心境に変化があったっぽい陽陰が、ここにきてまた新たな一手を繰り出そうとコートのポケットからその手を抜く。
当然、何を出されるかわかったもんじゃないので一斉に陽陰を攻撃するが、それ故に単調になった攻撃は全て式神に弾かれてしまう。
その間に陽陰は1枚の札を取り出して人差し指と中指でそれを挟んで目の前に立てるように掲げると、何やら陰陽道の呪文のようなものを一節ほど唱えてみせる。
すると持っていた札がカッ! と一瞬だけ光を纏って、それに嫌な感じがしながらも光が収まった陽陰を見ると、なんと札だったはずのものが少し装飾を施した大きな丸鏡に変化していた。
『……ッ! 逃げろッ!』
それを見るや否やインカム越しにセーラが叫んだのだが、具体的に何からどう逃げればいいのかわからなかったオレ達は、とにかくこの場からは離れようと大きく後退しようとする。
「そら、貴様らの全てを『映してやる』」
鏡を手にした陽陰は、逃げようとするオレ達を笑いながら、その手の鏡を順番にオレ達に向けて鏡面を光らせる。
その鏡に写っただろうオレも羽鳥も趙煬も直視だけは避けようと顔やら何やらを咄嗟に隠したものの、陽陰の笑いは止まらなかったので無意味だったのか。
『何人が映された?』
「たぶん、3人とも」
「かな」
「だろうな」
『……手強いのが出てくる』
何が起きたのかすら理解してないオレ達に、インカム越しに緊張の声を出すセーラ。
一体いまのが何なのか。
その答えを明確に言わずにこれから起こるだろう事態を述べるセーラにはハッキリしてもらいたいが、答えについては陽陰がすぐに示してくれた。
――最悪の形でな。
「俺は強い人間ってのが割と好きでな。それが何故かわかるか?」
ひとしきり笑った陽陰は、その手に持つ鏡を片手で抱えるように持ち替えると、そんな疑問をオレ達に投げかけながら空いた手に別の札を3枚取り出してみせる。
「……お前の趣味がイメージコレクションだからだろ」
「それもある。が、どんな形であれ強い人間ってのはその力を振るいたがるものだからだ。権力、暴力、財力、などなど、それらを業のままに振るう人間は愉快で堪らない」
本当に悪趣味な陽陰の答えに、水の弾丸が飛んでこない中で立ち止まって聞いていたオレ達は胸糞悪くなる。
陽陰はそんな人間達をいつも我関せずで見て、時にいたずらのようにそそのかして操ってきたのだ。
こいつが好きだという人間は詰まるところ自分自身なんだろうな。
自分の持つ力を好き勝手に振るって世界を裏で揺るがす姿なき犯罪者。ナルシストめ。
「だが俺は純粋に武力を持つ人間は総じて高い評価をしている。お前らのような……特にそこの神龍のような武力は、ダイレクトに俺の養分になるからな」
「……奴は俺を見て何を言った?」
いつ水の弾丸が襲うかわからないため、ずっと身構えていたオレ達に余裕の語りをする陽陰が日本語で話すもんだから、それがわからない趙煬は雰囲気だけで自分のことを言われたと察してオレ達に翻訳を促す。
それをそのまま伝えると、相当に気に入らなかったのか、インカムを通さなくても聞こえてきそうな舌打ちをして「気に食わん」と小言。
「では美味しい養分となってくれたお前達に褒美だ。たっぷりと堪能して……」
そうした長い語りを終わらせてようやく動きを見せた陽陰は、その手の札を鏡の前にかざして何かを唱えると、その鏡が光を放って札を照らして、その光を受けて発光した札を陽陰はそれぞれ1枚ずつオレ達の前に投げ込む。
するとその札は光を放ちながら大きくなり、形を変え人の形を作り出すと、光が収まったそこには、いつか見た黒い影のような式神が立ちはだかった。
さらに陽陰はその式神の1体に趙煬の持つ長槍と同じサイズの言霊符で作った槍を持たせて、趙煬の前の式神がそれを構えるが、その構えは趙煬と瓜二つ。いや、全く同じ。まるで鏡写しのよう……
「無惨に死ね」
と、オレがそれにピンと来そうになった瞬間、言葉を途中にしていた陽陰が残す言葉を言い切って死刑宣告。
それと同時に目の前の式神も動き始めてオレ達に襲いかかる。しかも速いぞ。
「ちっ! 羽鳥! 趙煬! わかってるな!」
だがオレ達も知る限りの陽陰の能力への対処法は通達済み。
この式神は幸姉がちゃんと攻略法を見つけて、香港で迎撃に成功している。
それを踏まえて羽鳥と趙煬にも各個撃破の策は練るように言ってあったので、実際に出てきた際にはオレの合図でそれかどうか判断する手はずだった。
なので今の掛け声に応答はなかったが、届いてさえいれば問題はな……
「……なっ!? くっそ!!」
ないのだが、他の問題が発生した。
襲いかかってきた式神はこっちの意識の隙を突くような素早い接近から的確に急所を打ち抜く打撃を放ってきて、それを捌こうと体術に切り替えたのだが、式神の力が想像よりも強くて捌くことすら出来ずに強引な回避を強いられてしまった。
そのせいで体勢が崩れたオレは畳み掛けるように回避するしかない蹴りを放ってくる式神に成す術なく追い詰められて木を背にしてしまい、後ろに下がれないところに回し蹴りが炸裂。
かなり際どかったが、なりふり構わずにミズチのアンカーを木の太い枝に付けて咄嗟に上へと逃れたオレは、上がったついでにカウンターの蹴りを頭にぶち込んでやるが、体勢もままならないから威力が出ずに痛撃とはいかなかった。というか足が弾かれた。
「っていうかだな……」
この際、式神の強度に関しては仕方ないと割り切るにしても、今の攻防だけでこの式神の厄介さがハッキリとわかった。
『ハハハッ。まんまとしてやられたね』
『子供騙しの間違いだろう』
新たな式神の登場で陽陰から半ば強引に引き離されて空洞地帯から姿の消えたオレ達はインカムを頼りに情報収集に当たるが、羽鳥も趙煬も式神の正体に気づいたようで称賛やら悪態やらを述べる。
そんな2人の反応からもわかるが、オレの相手をする式神は的確にオレの動きをスムーズにさせない要所を攻めてきて、エグいくらい急所を突いてくる。
その動きはいつかのスカイツリーで見せたヒルダに対するオレの動きに似ている。いや、全く同種のものだ。
「養分ね……言ってくれる」
ミズチのアンカーで式神の届かない高さにいたので、割と冷静に分析できたが、ここでアンカーの粘着力が切れて落下。
それを待ち構えていた式神の掴もうとしてきた手を蹴り払って肩を足場に跳び前宙を切り、回し蹴りを放ってきた式神の足を単分子振動刀で斬り落として、小さい方を着地と同時に蹴り飛ばして爆発から難を逃れる。
足の一部を失ってバランスを崩し、再生までのわずかな時間で距離を開き構えたオレは、そこで確認のためにセーラに話しかける。
「セーラ。この式神はオレ達のコピーってことになるか?」
『そう。でもステータスは底上げされてるから劣化じゃなく強化コピー』
『となると……あの鏡に映された、時にコピーは完了していたわけ、だ。だからセーラは、あの段階で逃げろと指示を、出した』
『あれは
『何!? そんなものを何故やつが!?』
オレの相手をする式神がオレのコピーだという確認が取れ、戦闘中に発言してる羽鳥の推測からセーラがあの鏡について触れ、その名前を聞いた瞬間に移動中のジャンヌが驚きの声をあげる。そんな驚くことなのか?
『照魔鏡は化生の正体を暴き真の姿を映したり、その者の性質や本質を見抜く神代の代物だ。その筋の情報では日本の重要機関から盗まれていたらしいが、まさかやつが……』
「日本のって……まさか千代田区のあそこじゃないだろうな」
『そのまさかだ。とにかく、お前達の強化コピーを作られたとしても、何がなんでも全力で倒せ。セーラだけではやつの相手は荷が重い』
『ごめんジャンヌ。もう攻撃されてる』
照魔鏡ってのが凄い代物なのは雰囲気でわかったので、そこはもう置いておいて、とにかく今は目の前の自分のコピーを1秒でも早く倒して孤軍奮闘するセーラの援護に行かなきゃならない。
オレ達がいなくなったことで式神も余裕ができて遠間のセーラに攻撃を仕掛けることができてるようだし、誰か1人でも倒されれば容易く戦況が傾く。
「だとしても、強化コピー……自分を相手にするなんてな……」
急ぎたいのは山々だが、物言わぬ目の前の相手はオレ自身。つまりは弱点なんかもバレちゃってるわけだ。
加えてオレの場合、普段は武偵法9条やらの制限のおかげで本来備わった能力を100%で振るってないのに、向こうは全力で向かってくるわけで、さらにステータスが底上げされてる。
あれ、これかなりヤバくないか……