緋弾のアリア~影の武偵~   作:ダブルマジック

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Bullet15

 6月13日。ついに潜入作戦開始の日が来た。

 どうやら貴族であるアリア様のメイド化が予想以上に大変だったらしいが、オレはノータッチだったからよく知らん。

 しかしこれから2週間も館に潜伏するとか、気が狂うかもな。

 アリアとキンジは姿を晒していいからいいが、オレは姿を晒さずに2週間だ。

 そんなわけで朝早くからモノレールの駅で待ち合わせしていたアリアとキンジと一緒に、理子の到着を待っていた。

 

「キーくん、アリア、キョーやん、ちょりーっす!」

 

 そんなオレ達に理子の声が聞こえ、一斉に声がした方を向くと、そこにはオレが顔だけ知る人物がいた。

 

「……カナ?」

 

「あれ? キョーやん、カナちゃんを知ってるんだ」

 

「いや、京都にいた時に挨拶程度だがな」

 

「……り、理子……なんで、その顔なんだよ!」

 

 カナの顔をした理子とオレが話す横で、何故か動揺するキンジがそんな質問をする。

 カナと知り合いか?

 

「くふっ。理子、ブラドに顔が割れちゃってるからさぁ。防犯カメラに映って、ブラドが帰って来ちゃったりしたらヤバいでしょ? だから変装したの」

 

「だったら他の顔になれ! なんで……よりによってカナなんだ!」

 

「カナちゃんが理子の知ってる世界一の美人だから。ちょっと『ゆきゆき』と迷ったけどぉ。それにカナちゃんはキーくんの大切な人だもんね。理子、キーくんの好きな人のお顔で応援しようと思ったの。怒った?」

 

 ゆきゆきって、幸姉か?

 ずいぶん親しい呼び方だが、今は反応しないでおくか。

 

「……いちいち……ガキの悪戯に腹を立てるほど俺もガキじゃない。行くぞ」

 

「心の奥では喜んでるくせにぃ」

 

 それでキンジは理子と一緒にさっさと改札に向かっていき、オレとアリアはポカーンとしていた。

 

「な、何。急にどうしたのよキンジ。理子が……ずいぶん美人に化けてきたけど、これ、誰なのよ。ねえ――キンジ、理子! ちょっと! 誰なのよそれ! ねぇ――カナって誰よっ!」

 

 叫ぶアリアだが、キンジも理子もまったく取り合わない。

 さすがにそれはないんじゃないか、お前ら。

 そしてオレ達はそのままモノレールに乗り、降りた先からタクシーで目的地の紅鳴館まで来たわけだが、その間カナに変装した理子とキンジが話しっ放しで、それをアリアが不安そうに見ていて、それをさらに遠目に我関せずに徹していたオレと、空気は良くなかった。

 潜入前に大丈夫か? このチームはよ。

 

「の、呪いの館……って感じね」

 

 紅鳴館を見たアリアの第一声にキンジも同じ気持ちなのか引きつった顔をしていた。

 オレは2回目だからもうリアクションは取らん。

 

「さて、キョーやんはお外で待機ねぇ。アリアとキーくんから合図があったら中に侵入。んで、完サポよろしくぅ!」

 

「あいよ」

 

 それからオレは管理人に挨拶に行く3人とは離れて、物陰に身を隠して合図を待つことになったのだが、やはり管理人とやらの顔は確認しておきたかったので、門の前で理子達と話をしている管理人を遠巻きに確認してみた。

 ん?

 あいつは……小夜鳴(さよなき)か?

 武偵高の救護科の非常勤講師で、女子生徒から『王子』とか呼ばれてるメガネ、長身、長髪のイケメン。性格も優しいときてる野郎だな。

 まぁ、女癖が悪いとか聞いたが、本当かどうかは今はどうでもいいか。

 てか、管理人が小夜鳴となると、アリアもキンジも顔が割れてる気がするが、大丈夫かこの作戦。

 などと思っていたが、小夜鳴はそんなオレの予想を裏切って、すんなり3人を中へと招き入れていった。

 あれ? オレの考えがおかしいのか?

 その後しばらくして理子だけが館から出てきてオレの元へと来ると、中での会話を手短に話してくれた。

 

「管理人は小夜鳴先生だったけど、作戦は特に問題なく実行。ブラドも来る気配はない。この後すぐキンジとアリアから合図があるはずだから、準備しておけ」

 

「了解。これからねずみのように住まわせていただきます」

 

「そして馬車馬のように働け。そうすれば約束は守ってやる」

 

「言うねぇ。だが、今は何も反論しないでやるよ。溜まった分は全部終わったらまとめて吐き出してやるから覚悟しろ」

 

「くふっ。えー! 理子怖ーい! キョーやん優しくしてぇ」

 

「言ってろ」

 

 それから理子は怪しい笑みを浮かべてどこかへと行ってしまい、オレは物陰からアリアとキンジの合図を待ち、それを確認してから迅速に館内に侵入し、これから2週間お世話になる屋根裏を占拠したのだった。

 そしてアリアとキンジは館内の防犯システムと小夜鳴の行動パターンを観察しながら、雑用係としての仕事をこなし、オレは当初の予定通りに防犯システムと小夜鳴の目を盗んで『とある作業』に精を出していた。

 で、あっという間に7日目の深夜2時。

 当初の打ち合わせにあった理子達との定期連絡の時間。

 それは3者間通話サービスを使った携帯で行われているわけだが、『3者間』なため、主要メンバー3人に携帯が渡り、どうしてもオレが参加できない残念仕様で文句を言いたくなる。

 そんなわけでオレはキンジの部屋に赴いてそれに参加してするわけで、今夜はキンジの部屋に赴いていた。

 

「――アリア、理子、聞こえてるか」

 

『聞こえてるわ。理子、あたしの声はどう?』

 

『うっうー! ダブルおっけー! そんじゃアリアから中間報告ヨロ!』

 

 テンションが1人だけ違う。何故か今はそのハイテンションがイライラする。

 

『……理子。あんたの十字架は、やはり地下の金庫にあるみたいよ。1度、小夜鳴先生が金庫に出入りするのを見たけど……青くてピアスみたいに小さい十字架よね? 棚の上にあったわ』

 

『――そう、それだよアリア!』

 

「だが、地下にはいつも小夜鳴がいるから侵入しにくいぞ。どうする」

 

『だからこその2人チームなんだよ、アリアとキーくんは。超・古典的な方法だけど――「誘き出し(ルアー・アウト)」を使おう。先生と仲良くなれた方が先生を地下から連れ出して、その隙にもう片方が十字架をゲットするの。具体的なステップは……』

 

 そうして理子は作戦を修正しながらオレ達にこれからの動きを指示していった。

 潜入10日目の夜。

 作戦も順調に遂行しつつ、その日も理子達と電話連絡をすることになっていたが、ずっと姿を隠したまま作業をしていたオレは予想通りストレスが溜まりまくり、どうにか発散させないと4日後の作戦決行のキンジ達が働く最終日まで持たない。

 そう思ったオレは、前回キンジの部屋に行って会話に参加したが、今回はアリアの部屋に行ってみた。

 理由はまぁ、3人のリアクションでも楽しもうと。

 

「きょ、京夜!? あんたなんでこっち!?」

 

 案の定アリアは電話連絡前に姿を現したオレに驚きつつ、ベッドから飛び上がる。

 しかし、過度に動いたり声を上げると小夜鳴に気付かれる可能性もあるため、必死に自分を制していた。

 

「野郎の部屋に夜中に忍び込むとか、萎えるだろ?」

 

「そういう問題じゃないでしょ! 今からキンジの部屋に……」

 

「おっ、時間だ。繋がないと何かあったと思われるぞ?」

 

「あんた最初から狙ってギリギリの時間に来たんでしょ。面倒だから余計な事言わないでよ」

 

「へいへい」

 

 それからアリアは携帯を取り出して理子達と繋いでいった。

 

『なぁアリア。猿飛がこっちに来てないんだが、そっちにいたりしないか?』

 

「いるわ。でも京夜はあたし達の反応見て楽しみたいだけみたい」

 

 おっ? 察しがいいなアリア。まさにその通りだ。

 キンジの質問にオレを睨みながら答えたアリアは、その後オレの思惑に嵌まるのを避けるように、夜這いだ密会だなどと騒ぐ理子を黙らせ話を進めていった。

 

「理子、キンジ。マズいわ。掃除の時に調べたんだけど……地下金庫のセキュリティーが、事前調査の時より強化されてるの。気持ち悪いぐらいに厳重。物理的な鍵に加えて、磁気カードキー、指紋キー、声紋キー、網膜キー。室内も事前調査では赤外線だけってことになってたけど、今は感圧床まであるのよ」

 

『な……なんだそりゃ……』

 

 聞いたオレもなんだそりゃ、だ。

 感圧床って確か、床に負荷がかかったら警報が鳴るんだよな。

 もはや室内に入るのにも飛ぶ羽がいるぞ。オレ達に鳥になれというのか?

 

『よし、そんじゃプランC21で行くかぁ。キーくん、アリア、キョーやん、なんにも心配いらないよ。どんなに厳重に隠そうと、理子のものは理子のもの! 絶対お持ち帰り! はうー!』

 

 ははっ、さすが怪盗の一族だ。厳重と聞いても燃えるとはな。

 

『んで、いま小夜鳴先生とはどっちの方が仲良しになれてるのかな? かなかな?』

 

『アリアじゃねーの。お前、新種のバラにアリアとか命名されて喜んでたもんな』

 

「よ、喜んでなんかないわよっ。何言ってんの? バカなの?」

 

『おいアリア、気をつけろよ? 小夜鳴には、女関係で悪いウワサがある』

 

「別に……悪い人には見えないけど?」

 

『いや。俺には少し怪しく見えるぞ。少なくとも、あまり好きじゃない』

 

 あー、また始まったよ、夫婦喧嘩が。はい我関せずモード。

 

『おお? おおおー? 痴話ゲンカってやつですか?』

 

「『違う』わよ!」

 

 こんな会話に割り込む辺りは理子らしい。

 オレは死んでもお断わりだが。

 

『じゃあ、とりあえず先生を地下金庫から遠ざける役目はアリアで決まりね! どう? できそう?』

 

「……彼は研究熱心だわ。おびき出しても、すぐ研究室のある地下に戻りたがると思う」

 

『夜もいつも起きてるし……いつ寝てるのか全くわからん。何の研究をしてるんだろうな』

 

「こないだちょっとお喋りしたとき聞いたけど……なんか、品種改良とか遺伝子工学とかって言ってたわ」

 

『キーくん、アリア。じゃあ時間でいえば、何分ぐらい先生を地下から遠ざけられそう?』

 

『アイツの普段の休憩時間の間隔から見て、まぁ、10分ってとこだろうな』

 

『10分かぁー。なんとか、15分がんばれないかなぁ。たとえばアリアがー、ムネ……は無いから、オシリ触らせたりして。くふっ』

 

「バ、バカ! 風穴! あんたじゃないんだから!」

 

『おおこわいこわい。まぁその辺は理子が方法考えとくよ! じゃ、また明日の夜中2時にね! 理子りん、おちまーす!』

 

 言いたいことだけ言って消えた。

 理子らしいが、この後はけ口になるのはオレなんだぞ。

 

「キンジ、ちょっと聞きたいんだけど」

 

 ん?

 キンジとまだ話すのかアリア。

 

「……仮に、あくまで仮によ? あたしがあのバラのこと、喜んでたように見えてたとしたら、ね? どうしてあんたが不機嫌になるのよ」

 

『……別に不機嫌になんか』

 

「なってるじゃない」

 

『そんなこと、お前に関係ない』

 

 ……お前等は不思議な関係だよな。

 互いに内に秘めてるものを出そうとしない。それがパートナーであっても、だ。

 

『切るぞ』

 

「ちょっと待ちなさいよ。この流れでついでに聞いとく。――カナって誰。……あんたの……その、昔の……いわゆる、えっと……も、元カノ、とかだったり……するの?」

 

 ああ、それはオレも気になってた。グッジョブアリア。

 

『それこそ――そんな事、お前には関係ないだろ』

 

「――そうね。関係ないわね。誰にだって……触れられたくない過去はあるもの。自分でもなんでか分かんないけど、今のは……ちょっと踏み込みすぎたわ。あたし、理子がカナって子に変装した時のあんたの態度、ヘンに……気になってたの。でも、もう聞かないよ。ごめん。謝る」

 

『別に謝らなくていい。俺も……ちょっと言い方がキツかったかもしれん。ごめんな』

 

 それからキンジとの通話を切ったアリアは、力なくベッドに横になりオレに背中を向けた。

 

「……ねぇ京夜。ちょっと耳と口だけ貸して」

 

「カナについてか?」

 

「…………」

 

「沈黙は肯定したとみるぞ」

 

 オレは言ってからベッドに背を預けて床に座り、対面せずに話を始めた。

 

「オレがカナとは1度会ってるって前に話したよな?」

 

 それにはアリアは答えない。

 あくまでオレが勝手に話してる風を装いたいらしい。別にいいがな。

 

「イギリス育ちのアリアに言ってもピンと来ないだろうけど、オレは真田信繁……有名な通り名では真田幸村を先祖に持つ真田家。その側近の家の長男で、京都にいた頃は毎日その家に入り浸ってたんだよ。んで、その真田家の次期当主になるはずだった人を訪ねてカナが来ていたんだ」

 

「なるはずだった?」

 

 おっと、いらんこと話したな。アリアも食い付くなよ。

 

「そこは今はどうでもいいな。んで、その時にカナとは短い会話をしたが、あの人には圧倒的な『存在感』と、微かな『違和感』があったよ。それが何かはわからないが、こっちに来てわかったことは、あの人はキンジとどことなく『似てる』ってことだ。雰囲気というか、なんというか、な」

 

「それ、どういう……」

 

「おっと、よい子は寝る時間だ。てなわけで布団が恋しいわたくしめをベッドに入れてはくれないですか? んで、今夜はアリアと一緒に寝ようかな」

 

「バ、バカ! なに言ってんのよ! そそそんなこと許すわけないでしょ! は、早く戻りなさいよ!」

 

 やっぱりアリアはこっち方面に弱いな。追及を逃れるのも楽だ。

 

「へいへい。ではわたくしめは寝心地最悪な屋根裏に戻りますよ。あと最後に、カナとキンジはたぶん、彼氏彼女とかそんな関係じゃないと思うよ。男のオレから見たら、キンジの反応はそういうのとは少し違ったからさ」

 

「え……」

 

 それだけ言い残したオレはさっさとアリアの部屋から出ていって、自分の寝床である屋根裏へと戻り床に就いたのだった。

 そして作戦決行の最終日。

 キンジ達が館を去る1時間前の午後5時。

 作戦通りアリアが小夜鳴を地下室から外の庭に誘き出して、帰りの荷物を整理するフリをしていたキンジと、すでに撤退準備を終えたオレが動く。

 そして今いる場所は遊戯室のビリヤード台のそば。

 

「聞こえるか理子。これからモグラが畑に入る」

 

 オープンフィンガーグローブ、赤外線ゴーグルなどの特殊部隊さながらの装備をしたキンジが、ビリヤード台の裏に張り付けた携帯を中継機にしたインカムをテストする。

 そしてこのタイミングでオレに携帯が支給されたのだが、おせーよ! と本気でツッコミたくなった。

 思いつつオレはビリヤード台の下の床板を取り外しキンジに道を譲る。

 

「モグラさん、どうぞおくつろぎください」

 

「改めて思うが、これも猿飛がやった方が良くないか?」

 

『キョーやんは連日の潜伏と作業でお疲れなのでぇ、手元が狂うかもなのです。だからぁ、キーくんよろよろ』

 

「らしいよ?」

 

「お前のことだろ。ったく」

 

 キンジはそれだけ言って諦めたようにビリヤード台の下にあった穴へと入っていった。

 

『こちらキンジ。モグラはコウモリになった』

 

 ――モグラ・コウモリ(モール・バット)――

 理子が考えたその作戦は、地上階から金庫の天井までモグラのように穴を伝って到達し、ちなみに穴はオレが掘った。

 そしてその天井から、コウモリのように逆さ吊りになったキンジがお宝を頂戴するといった具合だ。

 

『あと7分だよ、キーくん』

 

 当初の作戦予定時間は10分。

 アリアの頑張り次第では15分だが、期待はできないため猶予はない。

 しかし、しくじれば警報が鳴ってドボン。まさに極限状態だな。

 それから金庫に辿り着いたキンジが、赤外線の網をカメラから見える映像から曲線で伸ばせる針金のレールを繋げる指示を出す理子に従って、十字架へと迫っていく。

 実際はオレには見えてないが。おそらくそうなってるはずだ。

 1分、2分、3分と理子の「A7、F23」などの接続レールの番号だけが聞こえ、時折庭にいるアリアの様子を見ながら経過を待つ。

 

『よし、フックを下ろす』

 

 ようやく十字架まで届いたらしいキンジからそんな報告が来るが、時間はもう3分ない。

 しかも外は都合悪く雨が降ってきた。これはマズい。

 

「理子、今からアリアの救援(ヘルプ)に行く。1、2分だが時間を稼ぐから、なんとかしろ」

 

『キョーやんさっすが! いま理子も言おうとしてた!』

 

「んじゃ頼むぞ」

 

 オレは言ってから携帯を切り館の裏から出て素早く表に回り傘を差し、あたかも偶然その前を通りかかったかのように庭にいるアリアと小夜鳴を発見し話しかけた。

 

「ん? おいアリア! なんだお前、どっかに実習に行くって聞いてたが、花嫁修行か? しかも小夜鳴先生と一緒」

 

「きょ、京夜!? なんでここに……」

 

 その「なんでここに」は演技のリアクションなのか素のリアクションなのかわからんな。

 

「おや、君は確か……猿飛君ですね。こんな場所に来るなんて、何かの依頼ですか?」

 

「まぁ、小遣い稼ぎで迷い猫探しを。三毛猫の雄っていうんで報酬が良いんですよ。これで案外余裕ないですし。小夜鳴先生はこちらにお住まいで?」

 

「ええ、まぁそんなところですかね。おっと、雨が強くなってきてしまいました。神崎さんも風邪を引いてしまってはいけませんし、そろそろ中に戻りましょうか。猿飛君も良かったら」

 

「いえ、オレは依頼をこなしに行きますよ。情報は新鮮さが命ですからね。情報が古くなる前に動かないと時間もかかりますから」

 

「そうですか。猿飛君とはゆっくり話をしてみたいと思っていましたが、またの機会としましょうか」

 

「小夜鳴先生も、可愛い生徒においたとかしちゃダメですよ? 男連中からは良い噂を聞きませんし」

 

「ははっ、気を付けましょう。さ、神崎さん中に入りましょう」

 

「あ、はい。京夜、今度会ったら風穴!」

 

「それは勘弁! じゃあな」

 

 最後のアリアのは演技だな。まぁ、打ち合わせなしでやったにしては上出来だな。

 そうして館の中へと戻っていった2人を横目で見ながらオレも館から離れてすぐに携帯を繋いだ。時間にして1分34秒。雨が降ってる中ではずいぶん持たせた方だろう。

 

『キョーやんありありー! おかげでミッションコンプリートぉ!』

 

「そうじゃなきゃ困る。んで、オレは今回依頼主様のご期待に沿えたかな?」

 

『くふっ。そうだね。期待通りといったところ。まぁ、それはアリアとキンジにも言えることだけど』

 

「そうかい。だが依頼は達成だ。報酬はきっちり貰うぞ」

 

『まっかせなさーい! 理子りんは約束は守りまーす!』

 

 それからすぐに携帯を切ったオレは、そのあと任期終了で館から出てきたアリア達と合流して、理子と合流するために、横浜ランドマークタワーへと足を運んでいった。


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