緋弾のアリア~影の武偵~   作:ダブルマジック

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Bullet129

 

「ゲストの迎えがこれどすか」

 

「ナメとんのぅ」

 

 眞弓さんと雅さんの協力を得て、エリア51への侵入が可能になり、そのための迎えの車が到着。

 しかしその車は軍用のもので、理子が言うにはハンヴィーとか言う汎用車らしい。これを元に作られたのがハマーだとかなんとか。

 一応は装甲車の部類なので、屋根部分に銃座とガトリング砲が搭載されていたが、送迎目的だからか今はそこに人は乗っていない。

 乗ってきたのも運転手と世話係みたいなのの2人で、この対応には眞弓さんが不満たらたら。日本語と無表情の線目なので相手には伝わってないが、雅さんがちょっと怪しい。

 まぁ何にしろ、この状況なら同乗も楽勝だな。

 そう思いながらすでに光屈折迷彩で姿を消していたオレと理子は、打ち合わせ通りにゲストらしく荷物を積み込むのを手伝えと2人に命令してくれて、ハンヴィーから降りた2人が眞弓さん達の荷物に意識を向けて完全にハンヴィーに背中を向けたタイミングで屋根の銃座に静かに飛び乗る。

 どうしても乗る時には重さで車体が沈むので、誤魔化し様のなかったそこを乗り切ってひと安心。

 したかったが、そういうことで乗り込んでからは下手に動けないこともあって、乗ってからどうなっても文句は言わない約束をしていた理子が、見えてるんじゃないのかというベストポジションでオレが座った膝の上にちょこんと綺麗に収まって座ってきたのだ。

 

「お前、狙っただろ」

 

「へへへぇ。キョーやんならこう座るだろうなって予想して乗り込んだのであった。特等席ぃ」

 

「マジで足が痺れるかもしれん……」

 

「理子そんな重くないんですけど」

 

 一応、乗り込む際にハンヴィーの両サイドからということは決めていたので、最小限の動作を考えればオレの収まり方はわかっただろうが、意図的に長時間の移動に向いてないポジションに座られるのは軽く殺意が湧く。

 だがもう動いて揺らすことも出来ないので、あぐらの上に座られてるのだけはキツいから、足を前に出させてもらって、その間に理子を収めて落ち着く。

 互いに光屈折迷彩を着ているのでなんだかいるのにいない不思議な感覚の中で、事前に買い込んでいた超がつく大量のチョコレートをハンヴィーに積んだ眞弓さん達も無事に乗車。バレては、いないようだ。

 ちなみにチョコレートは本当に必需品みたいなもので、これからアホほど雅さんのお腹に収まることになるだろう。

 そんなオレ達を乗せたハンヴィーはすぐに動き始めて、片道3時間ちょっとはかかる目的地、エリア51を目指して進路を取っていった。

 

「そういえばさ」

 

 道中。走ってしまえば割と会話は出来てしまうので、沈黙嫌いの理子がちょんちょんと腕をつついてから話しかけてきて、どうせ暇なので付き合ってやる。

 

「今回キョーやんが色金問題に熱心なのは何で?」

 

「アリアのためって言ったら信じるのか?」

 

「信じるよ。よくわかんないけど、アリアも放っておいたらヤバい感じなんでしょ? でもそれだけじゃない気がしたから」

 

「うーん…………別に他の理由はないんだが……お前のためにもなったりするのかもな」

 

「ん? 理子のため?」

 

 そういえばオレが結構すんなりジーサードの要請に応えたのは、理子からすれば不思議なことになるのかもな。

 と、言われてから気づいたが、理子の言う通り理由についてはアリアのためってのがほぼ全て。

 元々、宣戦会議でヒルダに好き勝手やらせて緋弾の殻金を奪われた責任がある。その殻金を元に戻すことは責任を果たすのと同義と思って頑張ってはいた。

 だが色金に意思があるとわかって、その対話を試みる段階になって思ったことがあった。

 それは理子の持つ色金合金。

 これもまた緋緋神が宿る緋緋色金とは違う瑠瑠神が宿る瑠瑠色金であることは言うまでもないが、同一異種のその瑠瑠色金の力を引き出している理子が『このまま無事でいられる可能性』も怪しいのではないかと思ったのだ。

 つまりアリアの緋緋神化と同じ現象。瑠瑠神に意識を乗っ取られる『瑠瑠神化』を起こす可能性もなくはないことに気づいてしまった。

 

「杞憂で終わればそれでいいんだが……当事者なしで事を進めるのも良くないと思ったから、お前も連れてきたのかもな」

 

「こういう時にフワフワしたこと言うのはキョーやんらしいっていうか。教える気が全然ないよねぇ」

 

「確信がないことは」

 

「言わないんでしょ。いいよもう。理子のために動いてくれてるだけでちょっと嬉しいし。それで理子を働かせてるのはマイナスですけどねぇ」

 

「へいへい。ポンコツで悪ぅございましたね」

 

 だが璃璃色金が人の感情を好まなかったり不干渉であったりとあるので、璃璃神のように瑠瑠神が無害の可能性は十分にある。

 現にこれまで理子は瑠瑠神からのコンタクトらしきものも受けてないようだしな。

 だが今後もそうである確信だってないわけだから、どのみち理子と瑠瑠神は対話をする必要はあると思う。

 もしかしたら瑠瑠神さえその気なら、理子の持つロザリオからでも対話が出来そうだが、それが出来ないから璃璃神がレキを動かしたのかもしれない。

 推測だらけでどうにもまとまらないが、やることは明確で変わらない。

 エリア51に入って瑠瑠色金を手に入れる。

 オレが考えてるのは全てその後のことだ。後のことを考える前に今はそこに至るまでのことに集中しなきゃならない。

 

「そういやこの光屈折迷彩って、動力とかあるんだよな」

 

「調べたからわかるけど、かなり燃費良いよ。1日くらいならフル稼働でも大丈夫だと思う。それ以上は怪しいけど」

 

「ってことはあと22時間ちょっとか。その前に片付けばいいが……」

 

「それは高望みっすよ兄貴。中のセキュリティー次第で難易度が変わってきますからねぇ。だからどこかで節約できるタイミングは見つけておかないとね」

 

「だからその兄貴の設定なんなの? 泥棒の子分的なのならお前が姉御になれよ」

 

 集中ついでにふと思ったことを口にしたオレに対して、新規装備のチェックに余念のない理子は自分の見解を述べてくれたが、昨日からの兄貴呼びが気になってツッコミ待ちだったそこに思わず触れてしまい、そこから無駄も無駄な兄貴、姉御論争を勃発させてしまった。

 

「見えてきたよ、魔王の城が」

 

「最終ダンジョンってか」

 

「燃えますなぁ」

 

 ハンヴィーに揺られて約3時間ちょっと。

 日も沈みかけた頃に前回はあえなく撤退させられた地点も抜けてうっすら見えてきたエリア51。

 士気を高めるように理子がらしく言葉を発したので、折角だからオレも乗りつつ静かに集中力を高めていく。

 エリア51へと入ってからまず最優先は敷地内のマップの確保。これがなきゃ目指すべき場所もわからずに右往左往する羽目になるから重要だ。

 そのために最短のルートはおそらく、眞弓さん達について回ることで、その辺は段取りとしてあるから、とにかくハンヴィーを降りてからは緊張の連続だ。

 そんなエリア51へと何事もなく入っていったハンヴィーは、そのまま眞弓さん達が案内されるのだろう敷地の施設の前にまで移動して停車。

 この頃には日も沈んで多少の違和感は暗闇が隠してくれる中、施設の明かりでハンヴィーが照らせれて影ができ、そこからまずヒルダがスルリと降りてハンヴィーの下へと移動。

 いくら影になれるヒルダでも、隠れ蓑にする影がなければただの黒い物体なので、光屈折迷彩を使ってるオレ達にはついて回れない。

 だからこれからハンヴィーから降りる眞弓さんの影に潜んでもらうということ。

 そしてオレと理子は眞弓さん達の降りるタイミングに合わせて逆側へと飛び降り、素早く眞弓さん達の横をキープ。

 これが難しくて泣きそうで、降りる時に車体に負荷をかけられないため、蹴った勢いでする飛び降りという行動に矛盾が生じる。

 それを可能な限り実現できそうなやり方がローリングなので、銃座の枠に背中をつけてのローリングで眞弓さん達の降車に合わせて2人でせーのでハンヴィーから滑るように降り、音もなく着地。

 多少の揺れはあったが、ここは雅さんが大袈裟に飛び降りてくれて不審に思われずに済んだ。ナイスアシストです。

 

「それにしてもお腹が減りましたなぁ」

 

「空腹やでぇ。アイムハングリー」

 

 ヒルダも見たところ無事に眞弓さんの影に潜んだようで、大量のチョコを運ばせて施設の中へと足を踏み入れつつ、食事の要求をする2人は、わざわざ入り口を開けたところでスローペースになって会話へと持ち込み、オレ達が中に入る余裕を作ってくれて、ひと足早く中へと侵入し、それから案内で移動する眞弓さん達についていった。

 

「ガキどすなぁ」

 

「ガキやなぁ」

 

「会って早々に辛辣な言葉だね」

 

 さすがに空軍基地なだけあって内部も面倒臭そうな電子ロックやら鉄の扉やらと入ったことを後悔するセキュリティーだが、この辺のセキュリティーを見ても参考になるかはわからないし、瑠瑠色金がこんな地上の施設にあるとも思えない。

 そういった考えは理子も同じのようで、互いに姿が見えないからぶつかるのを防止するため、ハンヴィーを降りてからずっと手を繋いで存在を認識しながら、指信号(タッピング)で会話していた。

 指信号もそれなりに意識が向くので、様々な情報処理で割と手一杯の状態で眞弓さん達が目的地に到着し、管制室っぽいそこで呼びつけてきた人物と対面したのだが、開口一番で爆弾を投下。

 普通に日本語だったが向こうも理解があるようで、普通に会話が成り立っていたが、怒ってる様子がないそいつは余裕の態度を崩さない。

 だが眞弓さん達の言うように、そいつはガキと表現するに相応しいだろう容姿で、マッシュルームカットの頭は特徴的。

 鼻が高く、そこに金縁メガネをかけ、歯には矯正器具をつけている白人の少年。

 スーツを着てはいるが、なんとなくスーツに着られてる感はあるそいつは、あの眞弓さんを前にしてもどこか見下したような態度が見え隠れしていた。

 

「ともあれ、ボクの招待に応じてくれたことには感謝しよう。マッシュ=ルーズベルト。これから君を完膚なきまでに叩きのめす相手の名前だからね、しっかり覚えてくれたまえ」

 

「やる前から勝った気でいる人間ほど、世間では負けるってジンクスがあるんやけど」

 

「ボクが、負ける? 冗談でも笑えない。これはボクの能力が優れていることを証明するためのデモンストレーション。つまりボクが勝つことが大前提なのさ」

 

 見るからにインテリ系でインドアなマッシュと名乗った少年は、相手への敬意など微塵も見えない挨拶で握手を求めてきたが、その手を取ることもなく雅さんはアッカンベーして返す。

 どっちが年下かわからない態度の違いだが、元から見下し目線のマッシュは握手を求めておきながら、ハンカチを取り出そうとしていた手を戻して手間が省けたとばかり――あからさまな汚いものを触ったから拭くという行為だ――に挨拶を終えると、無駄話もしたくないのか本題を切り出してきた。

 

「すでに君からの要望に応えた機材と場所は用意してある。何をするのか理解したなら、すぐにでも始めてくれ」

 

「お膳立ては出来とるってわけやな。それで私は何をすればエエんや?」

 

「ルールは簡単さ。事前にボクがここのサーバーを掌握。厳重なセキュリティーシステムを組み込んで電子の要塞を築いておいた。君はこの要塞からボクに関するプロフィールを抜き取って、提示すればいい。1度でもセキュリティーに引っ掛かって発見されたら君の負けだ」

 

「時間制限はあらへんのやな?」

 

「そんなリミット程度でミスを誘発しても仕方ないからね。存分に時間を使ってくれたまえ。そしてボクの方が優秀である事実を受け入れて跪くのだね」

 

 殴りてぇ……

 マッシュが口を開く度に眞弓さんと雅さんの額に怒りマークが追加されていく恐怖映像を見つつも、今回の怒りは同意できるので恐怖はマッシュへの怒りに変換。

 自分の実力を全く疑ってないマッシュの鼻っ面は雅さんがへし折ってくれるのを期待しつつ、眞弓さん達とはこれ以上の会話はしたくないのか、用意したとかいう場所に案内するように言ったマッシュは、別件の仕事があるのかどこかへと行ってしまったが、その先にあった大きめのモニターの1つに見覚えのあるものが映って目を疑った。

 スクール水着みたいなコスチュームを着た少女。今はゴッテゴテのユニットを装備されて整備中みたいな雰囲気があるが、あれは宣戦会議の時にいたLOOと呼ばれたロボットだ。

 てっきりアリアに駄目にされていたゴテゴテの超ロボットがLOOで、中から出てきた少女は操縦者だと思ってたが、少女の顔に生気がないところを見るに、あれも人型のロボットってところか。

 そうなるとあのLOOとかいうロボットはジーサードの言っていた超先端科学兵装とかってあれなのかもしれないが、今のオレと理子では裏工作で破壊とかも出来ないので野放しにせざるを得ない。

 だがこの管制室っぽいところの落ち着きからして、まだジーサード達が突撃をかましてきた様子はないので、一足早くエリア51には到達したようだが、ここからの戦いが厳しいのが現実なので気は緩めない。

 そうしてちょっとだけ情報を整理していたら、理子に行くよと手を引かれたので、再び集中して移動を始めた眞弓さん達についていった。

 雅さんの要求に応えたという場所は、ディスプレイが3つあるパソコンとそれを乗せるデスクがドンと中心にある部屋で、脇にはくつろげるようなソファーベッドやらもあったが、そっちはおまけ程度。

 白い床と壁と天井で割と落ち着かない、というよりも物がないので殺風景な空間がオレとしては集中力を削ぐ感じだが、雅さんは目の前にパソコンがあればそこにだけ集中できる強者だから気にしてない様子。

 それでさっそく自分の空間作りを始めた雅さんがパソコンに向かう中で、眞弓さんは案内してきた人に食事を要求したのだが、その量たるや相手が若干引くレベル。

 その要求に一応は了承して引っ込んでからは、眞弓さんもそれまではソファーで用意されていた雑誌類を流し読みしたりで時間を潰していく。

 

「雅、そっちもエエどすけど、周りはどないですのや?」

 

「おお、忘れとった。ちょっと待っとってやぁ」

 

 その間に何やら指示する眞弓さんの言葉で作業中だった雅さんが中断して、持ってきていた金属探知機らしきもので部屋の中をぐるっと回って、それらしき反応がないことを確認。

 

「オッケーやで」

 

「そうですか。ほな京夜はんと金髪はん、出てきてエエどす」

 

 雅さんの両腕の花丸オッケーが出たところで雑誌を閉じた眞弓さんが、この部屋なら光屈折迷彩を脱いでもいいことを言い、一応は用心深い理子が部屋に入った時から別行動で探索していたが、その理子が我先に光屈折迷彩を脱いで隅っこから姿を現したので、オレも続いて光屈折迷彩を脱いで小さく息を吐く。息も足音も殺すのは神経を使うからな。

 

「雅にはこれからクラッキングでここの全体図を引っ張り出してもらいますが、それがどのくらいかかるかわかりまへん。やから今のうちに休んでおきなはれ。食事も多めに頼みましたし、雅の暴食を差し引いても腹八分にはなりますやろ」

 

「ありがとうございます、眞弓さん」

 

「あっぶねー。理子そろそろ腹の虫が鳴るところだったから、ハラハラしてたんだぁ」

 

「もし鳴ったそん時は、私がテヘペロッてやるつもりやったから感謝しや」

 

「おっしゃあ! ありがとうみやっち!」

 

 ぐわっし!

 正直なところ、ここでひと息つけたのはかなり大きいので、眞弓さん達には感謝しかないが、豪快に手を取り合った雅さんと理子は本当に仲良しだな。

 

「それなら今のうちに……ヒルダ」

 

 何はともあれエリア51に侵入して最初のインターバル。ここで機を逃すのはいただけないので、理子とは違って意思疏通が難しいヒルダを呼び出して、眞弓さんの影からヌルッと出てきたヒルダは、夜になってきたこともあって割と元気そう。

 一応は面識がある眞弓さんと雅さんだが、改めて見るヒルダの登場にちょっと驚く雰囲気を出す中で話を進める。

 

「ヒルダ、次に食事を持ってきた人の影に潜んで、出来るだけ内部を探ってほしい」

 

「サルトビ、それが人にものを頼む態度でして? あなたに出来ないことを出来ちゃう私に、何か言うことは?」

 

「絶好調だなお前……どうか、内部の情報を引き出してきてくださいよろしくお願いしますヒルダ様」

 

「ほほっ。素直に跪くサルトビを見ると愉快で仕方ないわね」

 

 とても調子が良いヒルダはいつになく偉そうで殴りたくなるが、今はその怒りが別の方向に向いてくれてるので半分くらいは流しつつ、片膝をついて頭を下げると、それでご機嫌になったヒルダはオレの頭を日傘の先でペシペシ叩いて女王様気取り。やっぱり殴りてぇ。

 

「こらヒルダ。それ以上やったらクチ聞いてあげないからね」

 

「ほほ……ほっ!? ま、待ちなさい理子……これは一種のお遊びであって、決してサルトビを貶めたいとかそういうことではないのよ?」

 

「キョーやんが殴りてぇって顔したから止めるけど、その辺の変化に気づけるようにならなきゃ、ヒルダの方がりっこりこになるからね。魔臓の位置だってもう知られてるし」

 

 オレがそう思ったのとほぼ同時に理子がその通りにヒルダを叱るので、ちょっとビックリしつつ2人のやり取りを見ていたら、理子に強く言われたせいで小さくなったヒルダはそのままズルズルと眞弓さんの影に隠れてしまい、一応は頼み事が了承されたか確認すると、影で丸を示してくれる。

 

「また個性的な子どすなぁ」

 

「性根は悪いやつではないんですが、好き嫌いが激しくて」

 

「そこが憎めないんやろ? 京くんのドMぅ」

 

「えっ!? キョーやんヒルダのあれが好きだったの!?」

 

「何故そういう解釈になる」

 

 初めて見る絡みに割り込みもせずに見届けた眞弓さんからの感想はその程度で済むが、オレの言葉をどう解釈したのかアホなことを言う雅さんと理子に真顔でツッコんだところで、心臓に悪い部屋の扉がノックされたため、オレと理子は慌てて光屈折迷彩を着て姿を隠す。

 着いた頃から腹が減ったと言っていたからか、予想より早く食事が用意されて、マジで要望通りの量が部屋に運ばれてドン引き。大食いが3回に分けて1日で食べる量くらいあるぞ。

 戦慄の光景にオレは血の気が引くが、この半分以上がこれから雅さんの胃袋に収まる光景の方が戦慄かもしれん。それが出来ることを知ってるだけまだ衝撃が小さいのかもだが。

 ともあれ、頼んだ通りに退室していく人の影に移動したヒルダは、情報収集のために動いてくれて、その間にオレ達はエネルギー補給。

 

「それで雅さん。ここのマップを手に入れるまでどのくらいかかりますか?」

 

「ぶー……ぼべばばだばがばぶばぁ」

 

「ヒルダが何か収穫してくればこっちも動けるんですが」

 

「ぼばべ。ばぁぼべぇばぶびばばべばばび」

 

「よろしくお願いします」

 

 その食事中に雅さん当人にずばり質問をしてみたが、口一杯に食べ物を含んだ雅さんはそのまま喋ってやってみないことにはわからないと当たり前な返事で、それでも任せなさいと言ってくれるのは心強い。

 

「いや、何で会話が成立してるの……」

 

 そしてそんなやり取りに冷静にツッコんだ理子に、オレも雅さんも理子を見てほぼ同時に「なんとなく」と答えたのだった。


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